説明

鳥の巣撤去用具および間接活線工事用具

【課題】電柱などの高所に作られた鳥の巣を砕くことなく撤去することができるようにする。
【解決手段】鳥の巣Xを掬える長さを有し、互いの他端部が接離するように、一端部が連結される上爪2および下爪3を備え、さらに、上爪2および下爪3と同一長さの爪部材11,12が同一方向に並列される爪ユニット10を、上爪2および下爪3に取り付けるとともに、上爪2および下爪3の接離動作に応じて、爪部材11,12の互いの対向面12a,11aに対して進退するように、爪部材11,12の内部に補助爪15を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電柱などの高所に作られた鳥の巣を撤去するために使用する鳥の巣撤去用具に関し、詳しくは、複数の爪を上下に配置することによって鳥の巣を撤去するようにした鳥の巣撤去用具および間接活線工事用具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラスなどの鳥が電柱などの高所に巣を作ることがある。鳥の巣は、枯れ枝だけでなく、針金製のハンガーなどのワイヤーによっても作られる。このワイヤーが電線に接触すると短絡し、危険であるだけでなく、停電させることもある。そこで、鉄塔などに作られた鳥の巣を除去するための営巣材の収容具が特許文献1に開示されている。
【0003】
この営巣材の収容具は、V字形に配置された一対のバーの各基端部が絶縁材からなる操作棒の先端に支持され、両バー間に網が張られていることを特徴としている。この営巣材の収容具を使用して巣を除去するには、二人の作業員が鉄塔に登る。そして、一人の作業員が営巣材の収容具の網を巣の下側に差し出し、もう一人の作業員が棒などによって巣を突っつくことによって突き落とす。この巣が営巣材の収容具の網上に受け止められ、巣が碍子や電線などに引っかかることなく除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−4648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された営巣材の収容具は、棒などによって突き落とされた鳥の巣を網上に受け止めるものである。したがって、鳥の巣は、棒によって砕かれるため、効率的に撤去することができない。
【0006】
そこで、本発明は、電柱などの高所に作られた鳥の巣を砕くことなく撤去することができるようにした鳥の巣撤去用具および間接活線工事用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鳥の巣撤去用具は、鳥の巣Xを掬える長さを有し、互いの他端部1b,1bが接離するように、一端部1a,1aが連結される上爪2および下爪3を備え、さらに、上爪2および下爪3の接離動作に応じて、上爪2および下爪3の互いの対向面3a,2aに対して進退するように、補助爪15が配置されることを特徴とする。
【0008】
この場合、下爪3を鳥の巣Xの下側に挿し込むと、挿し込んだ下爪3に鳥の巣Xが引き寄せられる。すなわち、鳥の巣Xは下爪3に掬われる状態となって撤去される。一方、下爪3が鳥の巣Xの下側に挿し込まれた状態においては、上爪2が鳥の巣Xの上方に位置するようになるので、鳥の巣Xを上爪2および下爪3によって上下から挟み込めば、鳥の巣Xを砕くことなく、撤去することができる。また、上爪2および下爪3の接離動作に応じて、上爪2および下爪3の互いの対向面3a,2aに対して進退するように、補助爪15が配置されるので、鳥の巣Xがしっかりと作られている場合であっても、補助爪15が鳥の巣Xに噛み込むようになり、鳥の巣Xを確実に撤去することができる。
【0009】
また、本発明によれば、前記上爪2および前記下爪3は、前記上爪2および前記下爪3と同一方向に爪部材11,12が並列される爪ユニット10が、前記上爪2および前記下爪3の少なくとも一方に着脱自在に取り付けられ、前記補助爪15は、爪ユニット10の各爪部材11,12に配置されるような構成を採用することもできる。
【0010】
この場合、爪ユニット10が、前記上爪2および前記下爪3の少なくとも一方に着脱自在に取り付けられるので、鳥の巣Xに対して広範囲に亘って挟み込めるようになる。すなわち、爪ユニット10によって、鳥の巣Xを広範囲に亘って挟み込めるので、巣の枝やワイヤーなどを支承でき、鳥の巣Xを形崩れすることなく、撤去することができる。さらに、爪ユニット10の各爪部材11,12に、進退自在に補助爪15を配置するようにしたので、挟み込みと噛み込みとが同時に行われるので、しっかりと作られた鳥の巣Xであっても、容易に且つ確実に撤去できる。
【0011】
また、本発明によれば、前記上爪2,前記下爪3,前記爪ユニット10,前記補助爪15は、絶縁材料で成形される、もしくは、金属材料で成形された後、絶縁材料で被覆されるような構成を採用することもできる。
【0012】
この場合、上爪2および下爪3、爪ユニット10、補助爪15が、電線などの充電部へ接触することによる短絡を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る間接活線工事用具によれば、上述したいずれかの鳥の巣撤去用具Aを、間接活線工事用把持具Yの先端部30bに取り付けることを特徴とする。
【0014】
この場合、間接活線用具によって、鳥の巣撤去用具Aを遠隔操作して鳥の巣Xを撤去することができる。このため、作業者は、電線などの充電部を回避しつつ安全に鳥の巣Xを撤去することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鳥の巣を掬える長さを有し、互いの他端部が接離するように、一端部が連結される上爪および下爪を備えたので、上爪および下爪によって、電柱などの高所に作られた鳥の巣を上下から挟むことができ、該鳥の巣を砕くことなく、容易に撤去することができる。また、上爪および下爪の接離動作に応じて、上爪および下爪の互いの対向面に対して進退するように、補助爪を配置するようにしたので、しっかりと作られた鳥の巣であっても、補助爪が鳥の巣の内部に噛み込むことによって、確実に除去できる。したがって、鳥の巣が原因で停電などのトラブルが発生しないようにすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、鳥の巣撤去用具を、間接活線工事用把持具の先端部に取り付けるようにしたので、鳥の巣を撤去する際に、上爪および下爪並びに補助爪を遠隔から操作できるようになり、作業者が電線などの充電部を回避しつつ安全に撤去作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具における本体の側面図、(b)は、図1(a)の平面図。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具における爪ユニットの側面図、(b)は、左右に配置される爪ユニットの平面図、(c)は、図2(a)の背面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具を示す図であり、本体の両側に爪ユニットを取り付けた状態を示す平面図。
【図4】本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具における爪ユニットを示す図であり、上下の爪部材を閉じた状態を示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具における動作原理を示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係る鳥の巣撤去用具を、間接活線工事用把持具の把持部に取り付けた状態を示す図であり、(a)は、上下の各爪を開いた状態を示す側面図、(b)は、上下の爪部材を閉じた状態を示す側面図。
【図7】間接活線工事用把持具を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る鳥の巣撤去用具および間接活線工事用具の一実施施形態について図1(a),(b)〜図6(a),(b)を参照しつつ説明する。なお、図1(a)、図2(a)、図4、図6(a),(b)において、各図面を正面から見て、右側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の前側、左側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の後側、上側および下側を、本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の上側および下側とする。また、図1(b)、図2(b)、図3において、各図面を正面から見て、右側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の前側、左側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の後側、上側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の左側、下側を本体または爪ユニットあるいは鳥の巣撤去用具の右側とする。また、図2(c)において、図面を正面から見て、上下左右を爪ユニットの上側、下側、左側、右側とする。
【0019】
本実施形態に係る鳥の巣撤去用具Aは、本体1と爪ユニット10とを備えている。本体1は、図1(a)に示すように、側面視略V字形状を呈しており、鳥の巣を掬うことができる長さを有する上下一対の上爪2および下爪3が、外側に向かうにしたがって大きく開口するように、かつ、接離できるように配置されている。そして、上爪2および下爪3は、後述するリンク機構が作動できるように中空に形成されており、先端部に向かうにしたがって先細りの形状を呈している。また、本体1は、図1(b)に示すように、基端部(一端部)1a側が平面視矩形状を呈しており、先端部(他端部)1b側が平面視等脚台形状を呈している。この理由としては、後述する間接活線工事用把持具Yの一対の把持片35a,35bが挿脱しやすいように平面視矩形状に形成され、鳥の巣を掬いやすいように、かつ、挟みやすいように平面視等脚台形状に形成されている。そして、本体1の基端部1aに、後述する間接活線工事用把持具Yの各把持片35a,35bが挿入されてねじ止めされる(図6(a),(b)参照)凹状の取付部4が形成されている。さらに、基端部1aには、図1(a),(b)に示すように、爪ユニット10を固定するためのボルトBの挿通孔16が水平線H(長手方向の中心線x)に対して直交方向に形成されるとともに、爪ユニット10の位置決めを行うための位置決めピンが、基端部1aの両側面から外方(挿通孔16に平行)に向かって突設されている。一方、本体1の先端部1bに凹凸部、すなわち、鳥の巣を掬ったり、挟んだりした際の滑り止め5が形成されている。そして、本体1の取付部4に、間接活線工事用把持具Yの各把持片35a,35bが取り付けられた状態では、本体1の上爪2および下爪3が、間接活線工事用把持具Yの各把持片35a,35bの開閉動作に従動するようになっている。
【0020】
爪ユニット10は、図2(a)〜(c)に示すように、本体1の上爪2および下爪3と同一長さで略同一形状の上爪部材11および下爪部材12が同一方向に複数本(本実施形態では2本)並列されている。異なる点としては、爪ユニット10の基端部10a側が、本体1の基端部1aよりもやや大きい矩形状に形成されている点と、本体1の上爪2および下爪3の接離動作に応じて、上爪2および下爪3の互いの対向面3a,2aに対して進退するように、一対の補助爪15が前後に配置されている点である。そして、爪ユニット10の基端部10aは、長手方向の中心線x(水平線H)に対して直交方向にボルトBの挿通孔16が形成されるとともに、位置決めピンPが爪ユニット10の装着に対して邪魔にならないように、すなわち本体1と爪ユニット10とが密着するように逃げ孔17が形成されている。また、爪ユニット10の上爪部材11および下爪部材12の各先端部には、本体1の上爪2および下爪3と同様に、滑り止め18が形成されている。そして、左右の爪ユニット10が、本体1の左右の両側面に対して線対称になるようにボルトBによって装着される(図3参照)。なお、上爪2および上爪部材11の長さは、30〜35cm程度、下爪3および下爪部材12の長さは、25〜30cm程度、上爪2および下爪3に爪ユニット10が取り付けられた状態の幅寸法は、15cm程度になっている。特に、上爪2および下爪3に爪ユニット10が取り付けられた状態の幅寸法を、15cm程度とした理由は、腕金に配置された各碍子間が16cm程度で、碍子間に作られた鳥の巣に撤去するに際して、鳥の巣撤去用具Aを挿入しやすくするためである。
【0021】
この爪ユニット10の使用態様について具体的に説明すると、鳥の巣がしっかりと作られている場合は、爪ユニット10を使用することなく、本体1の上爪2および下爪3のみとする。そうすることで、下爪3が鳥の巣の下側に挿し込みやすく、上爪2および下爪3のみで鳥の巣を支承することができる。また、鳥の巣がしっかりと作られていない場合は、例えば、図3に示すように、爪ユニット10を、上爪2および下爪3の両側面にそれぞれ取り付け、櫛歯状に構成する。そうすることで、不安定に作られている鳥の巣を、上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12によって広範囲に上下から挟み込むので、巣の枝やワイヤーなどを支承できて、鳥の巣を形崩れすることなく撤去することができる。
【0022】
補助爪15は、図2(a)に示すように、側面視直角三角形状を呈し、図2(b)に示すように、平面視二等辺三角形状を呈している。そして、リンク機構20によって、爪ユニット10の上爪部材11および下爪部材12の互いの対向面12a,11aに対して進退できるように、回動支持されている。該リンク機構20は、上爪2および下爪3の基端部に配置された支点a1,a2に、水平線H(長手方向の中心線x)に対して直交方向に回動支持された第1リンク21と、上爪2および下爪3の長手方向に沿って配置され、第1リンク21の先端部に配置された支点b1,b2に一端部が連結されるとともに、補助爪15の一方の角部(図2(a)で見た場合、短辺と斜辺とで形成される角部)に配置された支点c1,c2に他端部が連結された第2リンク22とで構成されている。また、上爪2および下爪3の先端部に配置された支点d1,d2に、補助爪15の他方の角部(図2(a)で見た場合、短辺と底辺とで形成される角部)が回動支持されている。そして、上下の爪部材11,12には、リンク機構20(主として、第2リンク22)が駆動できるように、内部に駆動用スペースSが形成されている。
【0023】
したがって、図5に示すように、上爪2および下爪3が実線の位置から鎖線の位置へ回動すると、補助爪15の支点d1,d2が、上爪2および下爪3の回動軌跡に沿って移動するとともに、支点c1,c2が鎖線に示す位置へ移動する。この際、支点c1,c2の移動に伴って第2リンク22が鎖線に示す位置へ移動するとともに、第1リンク21が鎖線に示す位置へ移動する。すなわち、補助爪15は、上下の爪部材11,12の内面の下側から前側に60度程度回動することで、一点鎖線に示す後退位置(上下の爪部材11,12の内部)から二点鎖線に示す進出位置(外部)へ回動し、交差する位置で停止することになる。具体的に説明すると、補助爪15は、上下の爪部材11,12の内部に位置している場合(後退位置にある場合)は、図2(a)に示すように、短辺が水平線Hに対して直交方向に位置し、底辺が上下の爪部材11,12の内面の曲線に沿うように位置している。外部に位置している場合(進出位置にある場合)は、図4に示すように、短辺が水平線Hに対して交差するように位置し、底辺および斜辺で形成される先端部が、上下の爪部材11,12の互いの対向面12a,11aに対して進出して交差するように構成されている。すなわち、上下の爪部材11,12の先端部が交差することで、鳥の巣内部に確実に噛み込んで、鳥の巣を撤去できるようになる。
【0024】
そして、上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12を、ステンレスのような金属で形成されているときは、絶縁性のカバーによって被覆(図示せず)し、上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12が電線に接触しても短絡しないようにされている。また、上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12が、FRPやABSのような樹脂で形成されているときは、絶縁性のカバーで被覆する必要はない。
【0025】
つぎに、上述した鳥の巣撤去用具Aを間接活線工事用把持具Yの先端部に取り付けた間接活線工事用具について説明する。まず、間接活線工事用把持具Yの構成について、図7を参照して簡単に説明する。絶縁性を有する筒状の主軸30と、該主軸30の先端部30bに配置された把持部35と、主軸30の基端部30aに配置され、把持部35の開閉操作を手元で行えるように構成される操作機構部40とを備えている。
【0026】
主軸30は、円筒状を呈しており、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチックやポリエステル樹脂系強化プラスチックなどの変形し難くかつ絶縁性が低下しない部材によって形成されている。そして、その内部の両側には詰栓を行い、浸水を防ぐために接着剤にて表面をコーティング処理するなどの防水処理が施されている(図示せず)。そして、主軸30は、該主軸30の基端部30a側の開口端部に嵌着されたゴムキャップ31と、主軸30の中間部に嵌合固定された、感電事故を防止するために把持してよい部分とそれ以外の部分との境界を明確にするための安全限界つば32と、安全限界つば32の上方に降雨時の対策として嵌合固定された水切り用のつば(水切りつば)33とを備えている。そして、安全限界つば32、および、水切りつば33は、いずれも軟質性の合成ゴムから形成されている。
【0027】
把持部35は、主軸30の先端部30bから延出された円弧状の固定側把持片35aと、後述する操作軸43の一端部に連結されて、固定側把持片35aに対して接離するように構成された可動側把持片35bとを有している。
【0028】
操作機構部40は、回動支持されるとともに、つる巻きバネ41によって、常時元の位置へ復帰するように弾性付勢された操作レバー42と、上述したように、一端部が可動側把持片35bに連結されるとともに、他端部が操作レバー42に連結された、絶縁性を有する操作軸43とを備えている。そして、操作軸43の中途部に水切りつば44が嵌合固定されている。
【0029】
そして、操作レバー42を主軸30の基端部30a側に回動させると、操作軸43が斜め下方に移動して、可動側把持片35bが固定側把持片35a側に移動して、固定側把持片35aに当接する一方、主軸30の基端部30a側に位置する操作レバー42に対する力を緩めると、操作レバー42は、つる巻きバネ41の弾性付勢によって元の位置へ復帰し、可動側把持片35bが固定側把持片35aから離間する。
【0030】
また、間接活線工事用把持具Yの固定側把持片35aおよび可動側把持片35bは、図6(a),(b)に示すように、鳥の巣撤去用具Aの本体1の基端部1aに配置された取付部4に対して、軸方向に挿入されて、ねじ止めされるように構成される。したがって、間接活線工事用把持具Yの操作レバー42の操作によって、可動側把持片35bが固定側把持片35aに対して開閉動作するようになり、この開閉動作に従動して、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3、爪ユニット10の上下の爪部材11,12が開閉するようになる。
【0031】
つぎに本実施形態に係る鳥の巣撤去用具および間接活線工事用具の使用態様について図6(a),(b)を参照して説明する。なお、この鳥の巣撤去用具Aは、必要に応じて、ワイヤーなどを切断する切断手段、網や袋のような収集手段、埃を取るためのブラシのような掃除用具(いずれも図示せず)と組み合わせて使用される。
【0032】
まず、1人または2人の作業者が、一対の把持片35a,35bに、鳥の巣撤去用具Aの本体1が取り付けられた間接活線工事用把持具Y、切断手段、収集手段を携帯して、高所作業車のバケットに乗り、鳥の巣に近づく。そして、鳥の巣Xを作っているワイヤーが電柱の腕金に形成された孔に通されているような場合は、まず、このワイヤーを切断手段によって切断する。そして、収集手段を鳥の巣Xの下側に構え(図示せず)、図6(a)に示すように、鳥の巣撤去用具Aの下爪3を、鳥の巣Xの下側に挿し込む。収集手段を構える作業者と鳥の巣撤去用具Aを操作する作業者とは、同人であっても別人であってもよい。
【0033】
そして、上述したように、鳥の巣Xがしっかりと作られている場合は、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3のみを使用し、鳥の巣Xがしっかりと作られていない場合は、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3の両側面に爪ユニット10を取り付ける。いずれにしても、作業者が間接活線工事用把持具Yの基端部30aを持って、鳥の巣撤去用具Aの下爪3を鳥の巣Xの下側に挿し込むとともに、鳥の巣撤去用具Aの上爪2を鳥の巣Xの上方に位置させる。
【0034】
そして、作業者が間接活線工事用把持具Yの操作レバー42を操作して、図6(b)に示すように、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3、爪ユニット10の上下の爪部材11,12を近接させて、鳥の巣Xを上下から挟み込む。この際、爪ユニット10の上下の爪部材11,12の補助爪15が、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3の近接動作によって、爪ユニット10の上下の爪部材11,12の互いの対向面12a,11aに対して進出することになり、鳥の巣Xの内部に補助爪15が食い込むことになるため、間接活線工事用把持具Yの基端部30aを手前に引き寄せると、鳥の巣Xは電柱上から容易に撤去され、収集手段内に入れられる。
【0035】
この際、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12の間から鳥の巣Xを作っている枝葉が落下したとしても、この枝葉は、収集手段内に集められ、地上に落下することがない。さらに、鳥の巣Xを撤去した後の、腕金などは、掃除用具によって清掃される(図示せず)。
【0036】
また、鳥の巣撤去用具Aの上爪2および下爪3並びに爪ユニット10の上下の爪部材11,12は、電線や周辺機器の充電部から離間した位置で開閉操作しているため、安全に作業することができる。
【0037】
このように、本実施形態に係る鳥の巣撤去用具Aによれば、鳥の巣Xを掬えるとともに、上下から挟める長さを有する上爪2および下爪3が、外方に向かうにしたがって大きく開口するように上下に配置されるとともに、接離できるように構成され、さらに、上爪2および下爪3の接離動作に応じて、上爪2および下爪3の内面に対して進退するように、補助爪15を配置するようにしたので、鳥の巣Xを容易に且つ安全に撤去することができる。
【0038】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載した発明特定事項の範囲内において種々変更することができる。
【0039】
例えば、前記実施形態の場合、爪ユニット10の上下の爪部材11,12の内面に対して補助爪15を回動自在に支持するようにしたが、水平線Hに対して略直交方向に進退するようにしてもよい。
【0040】
また、前記実施形態の場合、間接活線工事用把持具Yの一対の把持片35a,35bに、鳥の巣撤去用具Aを取り付けた間接活線工事用具としたが、一体化されているものであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1a…一端部(基端部)、1b…他端部(先端部)、2…上爪、3…下爪、2a,3a、11a,12a…対向面、10…爪ユニット、11,12…爪部材、15…補助爪、30…主軸、30b…間接活線工事用把持具の先端部、A…鳥の巣撤去用具、B…ボルト、P…位置決めピン、S…リンク機構の駆動用空間、X…鳥の巣、Y…間接活線工事用把持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥の巣(X)を掬える長さを有し、互いの他端部(1b,1b)が接離するように、一端部(1a,1a)が連結される上爪(2)および下爪(3)を備え、さらに、上爪(2)および下爪(3)の接離動作に応じて、上爪(2)および下爪(3)の互いの対向面(3a,2a)に対して進退するように、補助爪(15)が配置されることを特徴とする鳥の巣撤去用具。
【請求項2】
前記上爪(2)および前記下爪(3)は、前記上爪(2)および前記下爪(3)と同一方向に爪部材(11,12)が並列される爪ユニット(10)が、前記上爪(2)および前記下爪(3)の少なくとも一方に着脱自在に取り付けられ、
前記補助爪(15)は、爪ユニット(10)の各爪部材(11,12)に配置されることを特徴とする請求項1に記載の鳥の巣撤去用具。
【請求項3】
前記上爪(2)、前記下爪(3)、前記爪ユニット(10)、前記補助爪(15)は、絶縁材料で成形される、もしくは、金属材料で成形された後、絶縁材料で被覆されることを特徴とする請求項1または2に記載の鳥の巣撤去用具。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の鳥の巣撤去用具(A)が、間接活線工事用把持具(Y)の先端部(30b)に取り付けられることを特徴とする間接活線工事用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223082(P2012−223082A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90275(P2011−90275)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】