説明

鳥害防止具

【課題】横風に対する負荷を電線にかけない鳥害防止具を提供する。
【解決手段】鳥害防止具1は、各鳥害防止部材3が、これらの左右に配置された長尺部材5に引っ掛けられて、架空電線に対して所定間隔毎に配置される。そして、これら長尺部材5は、その並び方向に投影した投影面、すなわち、架空電線に対する横風に一致する方向の投影面でみると、架空電線を同方向に投影した投影面内に位置するように形成されている。そのため、この鳥害防止具1は、架空電線に取り付けても、横風に対する受風面積が大きくならないので、電線にかかる負荷を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線等に取り付けられる鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の鳥害防止具部材110を連結して構成される鳥害防止具100がある(特許文献1)。
この鳥害防止具100の各鳥害防止具部材110は、同心状に配置された大小2つの環状部111,112と、環状部111から環状部112に至る割目113を形成するとともにこれら環状部111,112を連結する一対の割目形成部114と、を有している。
【0003】
また、この鳥害防止具部材110は、環状部111の左右に位置する部分であって、環状部112の外縁部には、環状部112に対し折り曲げ可能な折曲部115が形成され、環状部112の内縁部には、環状部111に向かって突設された突起116が形成され、この突起116には、長孔117が形成されている。
【0004】
この鳥害防止具100は、折曲部115を折り曲げて、隣接する鳥害防止具部材110の長孔117に、折曲部115の鈎状に形成された先端を挿入して引っ掛けることで、複数の鳥害防止具部材110を連結し、このように連結した各鳥害防止具部材110の環状部111に割目113を介して電線を挿入することで、電線に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−24371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の鳥害防止具100は、折曲部115の並び方向に投影した投影面で見ると、架空電線の最上部Aが折曲部115の上辺Bより高い位置に位置し、これによって、折曲部115の下辺がDが架空電線の最下部Cよりも下方に位置することとなっていた。
【0007】
そのため、従来の鳥害防止具100を電線に取り付けると、電線が受ける横風の受風面積が大きくなってしまい、電線に負荷をかけることとなっていた。
そこで、本発明は、上記点に鑑み、横風に対する負荷を電線にかけない鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に記載の鳥害防止具は、架空電線を挿通する挿通孔が形成され、該挿通孔に架空電線を通すことで架空電線に対して揺動可能に取り付けられる複数の鳥害防止部材と、架空電線を挟んだ左右両側に配置されるとともに、架空電線から等距離離れた位置で、架空電線の長手方向に沿って平行に配置され、前記各鳥害防止部材が架空電線の長手方向に沿って所定間隔毎に掛けられる一対の長尺部材と、を備え、前記長尺部材が、当該長尺部材の並び方向に投影した投影面でみると、架空電線を同方向に投影した投影面内に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
この鳥害防止具は、従来の鳥害防止具100の折曲部115に相当する構成として、長尺部材を備えており、各鳥害防止部材は、この長尺部材に引っ掛けられて、架空電線に対して所定間隔毎に配置される。
【0010】
しかし、この長尺部材は、これら長尺部材の並び方向に投影した投影面、すなわち、架空電線に対する横風に一致する方向の投影面でみると、架空電線を同方向に投影した投影面内に位置する。
【0011】
そのため、本発明の鳥害防止具は、架空電線に取り付けても、横風に対する受風面積が大きくならないので、電線にかかる負荷を最小限に抑えることができる。
また、本発明の鳥害防止具は、長尺部材を上述したように形成することによって、鳥害防止部材が架空電線に揺動可能に支持される支点よりも低い位置に長尺部材の重心が位置することとなり、且つ、この支点の左右の等距離の位置に長尺部材が配置されることとなるので、鳥害防止部材が長尺部材の重みで回転してしまうことを防止し、架空電線に対し安定した状態で揺動可能に取り付けることができる。
【0012】
尚、架空電線とは、例えば架空電線であるが、これに限らない。
次に、請求項2に記載したように、請求項1に記載の鳥害防止具において、各鳥害防止部材は、平面形状に形成され、架空電線の長手方向に対して垂直に配置されるようにするとよい。
【0013】
このようにすると、各鳥害防止部材を電線に取り付けても、各鳥害防止部材の厚みによって横風に対する受風面積が大きくならないので、電線に負荷をかけることがない。
次に、請求項3に記載したように、請求項1,2のいずれか1項に記載の鳥害防止具において、長尺部材は、この長尺部材の長手方向に垂直な断面の形状がC型形状に形成されているとよい。
【0014】
従来の鳥害防止具100では、折曲部115が板状に形成されているので、風を受けて隣接する鳥害防止部材110同士が回転し、折曲部115がねじれて、鳥害防止部材110間の間隔が狭くなってしまう可能性があった。
【0015】
しかし、本発明の鳥害防止具は、折曲部115に相当する長尺部材が、断面C型形状に形成されており、隣接する鳥害防止部材が逆方向に回転しようとしてもねじれないので、鳥害防止部材間の間隔が狭くなってしまうことを防止できる。
【0016】
尚、長尺部材は、その長手方向に垂直な断面の形状が、Cの字に近い形状であれば、角が複数ある形状に形成されていてもよい。また、長尺部材は、その長手方向に垂直な断面の形状が、上下方向の幅よりも左右方向の幅の方が長い楕円等の流線形状に形成されていてもよい。
【0017】
次に、請求項4に記載したように、長尺部材が、断面C型形状に形成されている場合、鳥害防止部材については、先端部分を折り曲げて長尺部材の一端から長尺部材の長手方向に沿って挿入すると、該長尺部材に対して引っ掛けることができる左右一対の引掛部を有する形状に形成してもよい。
【0018】
このようにすると、複数の鳥害防止部材の各引掛部の先端部分を折り曲げて、その先端部分を各長尺部材の一端側から順次挿入すれば、複数の鳥害防止部材を、長尺部材の長手方向に順次押しながら長尺部材に対して引っ掛けることができる。
【0019】
また、このようにすると、当該発明の鳥害防止具を架空電線に取り付けたとき、引掛部の先端部分の長さ毎に、架空電線の長手方向に沿って鳥害防止部材を配置することができる。
【0020】
次に、請求項5に記載したように、請求項1〜4のいずれか1項に鳥害防止具において、鳥害防止部材は、架空電線に揺動可能に取り付けたとき、上方を向く側に鳥害防止部、下方を向く側に錘部が形成されていることが好ましい。
【0021】
このようにすると、当該鳥害防止具を電線に取り付けたときに、錘部が常に下を向き、鳥害防止部が常に上方を向くこととなるので、架空電線に対する鳥害を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の鳥害防止具の斜視図。
【図2】(a)鳥害防止部材の斜視図、(b)鳥害防止部材の正面図。
【図3】鳥害防止部材の正面図で、長尺部材5と組み合わされ、かつ、電線に取り付けられて、横風を受ける様子を示している。
【図4】鳥害防止部材の斜視図で、引掛部が折り曲げられた様子を示している。
【図5】鳥害防止部材を長尺部材に取り付ける様子を示した斜視図である。
【図6】従来の鳥害防止具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
尚、本実施形態の鳥害防止具1を構成する鳥害防止部材3は、架空電線に取り付けられるとき、図1に示すように、本体部30が架空電線の長手方向に対して垂直となり、錘部34が下方を向くように配置される。
【0024】
以下、上下方向及び左右方向というとき、図2(b)に示すように、錘部34が下方を向くように架空電線に配置されたときに、本体部30を正面からみたときの方向を示すものとする。
【0025】
本実施形態の鳥害防止具1は、図1に示すように、所定間隔毎に配置された複数の鳥害防止部材3と、これら鳥害防止部材3が引っ掛けられる一対の長尺部材5とを備えている。
【0026】
鳥害防止部材3は、図2に示すように、円板状に形成された本体部30(図2(b)の点線)の周囲に、一対の引掛部32、一対の錘部34、複数の針状部36(本発明の鳥害防止部に相当する)を有している。
【0027】
このうち本体部30には、架空電線を挿通する円形状の挿通孔31が形成されており、この挿通孔31は、架空電線の径より大きな径を有する円形形状に形成されている。
この挿通孔31は、本体部30の中心軸よりも下方に位置する軸を中心として円形形状に形成されている。
【0028】
また、この挿通孔31は、図3に示すように、鳥害防止部材3を引掛部32を介して長尺部材5に引っ掛けたとき、挿通孔31の上端と長尺部材5の上端とが同じ高さとなる大きさの円形形状になるよう形成されている。
【0029】
各引掛部32は、図2に示すように、本体部30の中心軸の左右に位置する本体部30の外縁部から左右方向に延設される形状に形成されており、また、本体部30に沿った面で見て、本体部30に近い部分(以下「近接部」という)32aが、長尺部材5の切目52(図1参照)よりも細く、先端部分32bが、長尺部材5の切目52より太く、かつ、長尺部材5内に挿入可能な太さに形成されている。
【0030】
また、各引掛部32は、図4に示すように、先端部分32bが近接部32aに対して折曲可能に形成されている。
各錘部34は、図2に示すように、本体部30の中心軸の下方に位置する本体部30の外縁部から下方に向かって八の字状に延設され、かつ、引掛部32及び針状部36よりも幅広な板状に形成されている。
【0031】
これら錘部34の中間位置には、架空電線を外部から挿通孔31の内部に挿入することが可能な割目34aが形成されている。
針状部36は、いずれも本体部30の外周縁から本体部30の径方向に沿って延設されており、このうち、引掛部32よりも上方部分に設けられた7本の針状部36は、一方の引掛部32から他方の引掛部32との間に等間隔に設けられている。
【0032】
また、針状部36は、左右の引掛部32と錘部34との間にもそれぞれ1本ずつ設けられており、これら針状部36は、引掛部32と錘部34との中間位置に設けられている。
次に、長尺部材5は、図1に示すように、長手方向に垂直な断面の形状がC字形状に形成された長尺状の部材である。
【0033】
この長尺部材5は、鳥害防止具1として組み立てられるとき、鳥害防止部材3の左右両側に配置され、これら長尺部材5の並び方向に投影した投影面の幅が、架空電線を同方向に投影した投影面の幅と同じとなる大きさに形成されている。
【0034】
このように構成された鳥害防止具1は、次のように組み立てる。
まず、図5に示すように、左右の各長尺部材5を、切目52が形成された面が対向するように配置する。
【0035】
次に、各鳥害防止部材3の引掛部32の先端部分32bを折り曲げ、この先端部分32bを長尺部材5の一端から長尺部材5内に順次挿入する。
すると、各鳥害防止部材3の長尺部材5が、長尺部材5の長手方向に沿って長尺部材5内で順次押されてスライドし、すべての各鳥害防止部材3が、引掛部32を介して長尺部材5に取り付けられると、長尺部材5の長手方向に沿って、先端部分32bの長さ毎に長尺部材5に引っ掛けられる。
【0036】
そして、このようにして組み立てた鳥害防止具1は、各鳥害防止部材3の錘部34に形成された割目34aを割って、この割目34aを介して各挿入孔31内に架空電線を挿入することで、架空電線に対して取り付けられる。
【0037】
以上のように構成された鳥害防止具1の作用効果について説明する。
本実施形態の鳥害防止具1は、上述したように架空電線に取り付けると、複数の鳥害防止部材3が引掛部32の先端部分32bの長さ毎に架空電線の長手方向に沿って配置される。
【0038】
このとき、錘部34が自重で下方を向くため、引掛部32より上方に配置された針状部36が上方を向くので、架空電線に留まろうとする小鳥を効果的に追い払うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、挿通孔31が、図3に示すように、鳥害防止部材3を引掛部32を介して長尺部材5に引っ掛けたとき、挿通孔31の上端と長尺部材5の上端とが同じ高さになる大きさの円形形状に形成され、また、長尺部材5が、その並び方向に投影した投影面の幅を見ると、架空電線を同方向に投影した投影面の幅と同じとなる大きさに形成されている。
【0040】
つまり、本実施形態では、長尺部材5は、長尺部材5の並び方向に投影した投影面、すなわち、架空電線に対する横風に一致する方向の投影面でみると、架空電線を同方向に投影した投影面内に位置する大きさに形成されている。
【0041】
そのため、本実施形態の鳥害防止具1は、架空電線に取り付けても、横風に対する受風面積が大きくならないので、電線にかかる負荷を最小限に抑えることができる。
また、本実施形態の鳥害防止具1は、長尺部材5を上述したように形成することによって、鳥害防止部材3が架空電線に揺動可能に支持される支点(挿通孔31の上端)よりも低い位置に長尺部材5の重心が位置することとなり、且つ、この支点の左右の等距離の位置に長尺部材5が配置されることとなるので、鳥害防止部材3が長尺部材5の重みで回転してしまうことを防止し、架空電線に対し安定した状態で揺動可能に取り付けることができる。
【0042】
また、本実施形態の鳥害防止具1は、架空電線に取り付けると、各鳥害防止部材3が架空電線の長手方向に対して垂直に位置するよう配置される。
そのため、本実施形態の鳥害防止具1を架空電線に取り付けても、各鳥害防止部材3の厚みによって横風に対する受風面積が大きくならないので、架空電線に負荷をかけることがない。
【0043】
また、本実施形態の鳥害防止具1は、長尺部材5が断面C型形状に形成されているので、この長尺部材5に各鳥害防止部材3を引っ掛けても、隣接する鳥害防止部材3同士が逆方向に回転してねじれ、隣接する鳥害防止部材3間の間隔が狭くなってしまうことを防止できる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、長尺部材5について、その並び方向に投影した投影面の幅を見ると、架空電線を同方向に投影した投影面の幅と同じとなる大きさに形成したが、架空電線の幅よりも小さい幅に形成してもよい。
【0045】
上記実施形態では、挿通孔31について円形状となるように形成したが、架空電線に対して揺動可能な形状であれば、楕円形状等どのような形状に形成してもよい。ただし、鳥害防止部材3が架空電線に揺動可能に支持される支点よりも低い位置に長尺部材5の重心が位置するよう、挿通孔31の大きさや位置、形状等、鳥害防止部材3や長尺部材5等の大きさや位置、形状等を決定することが望ましい。
【0046】
上記実施形態では、本発明の鳥害防止部に相当する構成として針状部36を備えているが、針状に形成されたもの以外のものでもよい。
また、各長尺部材5に縦列に長尺部材5を連結して、鳥害防止具1の長さを長くしてもよい。
【0047】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1…鳥害防止具、3…鳥害防止部材、5…長尺部材、30…本体部、31…挿通孔、32…引掛部、32a…近接部、32b…先端部分、34…錘部、34a…割目、36…針状部、52…切目。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空電線を挿通する挿通孔が形成され、該挿通孔に架空電線を通すことで架空電線に対して揺動可能に取り付けられる複数の鳥害防止部材と、
架空電線を挟んだ左右両側に配置されるとともに、架空電線から等距離離れた位置で、架空電線の長手方向に沿って平行に配置され、前記各鳥害防止部材が架空電線の長手方向に沿って所定間隔毎に掛けられる一対の長尺部材と、
を備え、
前記長尺部材が、
当該長尺部材の並び方向に投影した投影面でみると、架空電線を同方向に投影した投影面内に位置することを特徴とする鳥害防止具。
【請求項2】
請求項1に記載の鳥害防止具において、
前記各鳥害防止部材は、平面形状に形成され、前記架空電線の長手方向に対して垂直に配置されることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載の鳥害防止具において、
前記長尺部材は、当該長尺部材の長手方向に垂直な断面の形状がC型形状に形成されていることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項4】
請求項3に記載の鳥害防止具において、
前記各鳥害防止部材は、
先端部分を折り曲げて前記長尺部材の一端から前記長尺部材の長手方向に沿って挿入すると、該長尺部材に対して引っ掛けることができる左右一対の引掛部を有することを特徴とする鳥害防止具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に鳥害防止具において、
前記鳥害防止部材は、
架空電線に揺動可能に取り付けたとき、上方を向く側に鳥害防止部、下方を向く側に錘部が形成されていることを特徴とする鳥害防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−217378(P2012−217378A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85478(P2011−85478)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000139573)株式会社愛洋産業 (23)
【Fターム(参考)】