説明

鶏糞肥料の製造方法

【課題】発酵工程における悪臭の発生を防止して、短期間で鶏糞を肥料に処理する。
【解決手段】鶏糞肥料の製造方法は、水分率を25重量%ないし4重量%とする未発酵でアルカリ性の鶏糞を100重量部に、エリンギとマイタケとシメジとシイタケのいずれかを栽培して廃棄される酸性の廃菌床を10重量部ないし100重量部混合して発酵させる。
【効果】鶏舎から排出される鶏糞を乾燥させることなく、また発酵させることなく廃菌床を添加・混合して悪臭が発生しない状態とし、この状態で発酵させて速やかに鶏糞肥料を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏糞を発酵して肥料を製造する方法に関し、とくに、鶏糞に廃菌床を添加、混合して発酵させる肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏糞は、その処理方法として、屋外に設けた処理槽に投入して発酵させる方法、この発酵させた鶏糞を天日または火力乾燥させる方法、または発酵させることなく直接天日あるいは火力乾燥させる方法が採用されていた。ところが、これらの処理工程においては、非常な悪臭が作業環境の悪化を招き、また周囲の住環境に悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、処理されない鶏糞は、多量の水分を含んでいるので、扱い勝手が悪い欠点もある。さらにまた、天日乾燥させる方法は、広い乾燥場を要するのみならず、臭気や粉塵等が飛散して公害汚染となる。加えて、火力乾燥の場合は、多大のランニングコストと設備コストを必要とする欠点がある。
【0003】
ところで、鶏糞を発酵して肥料に処理する方法として、鶏糞に廃菌床を添加して発酵させる方法が開発されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2006−182579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞と、茸栽培に使用した不純物の無い廃菌床を混合し、さらに、この混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合して、混合物を所定の発酵条件下において完熟発酵して肥料を製造する方法が記載されている。
【0005】
以上の製造方法は、鶏糞の原形がなくなり、水分を15重量%〜18重量%とし、雑菌を無くし、臭気を減らし、さらさらした状態に完熟発酵させた鶏糞に廃菌床を添加して混合し、さらにこの混合物に、米ヌカ、フスマ、サンゴカルシウム、籾殻等の天然資材を混合して発酵させるので、鶏糞を完熟発酵させるまでに、周囲に著しい悪臭を発生する欠点がある。さらに、鶏糞を完熟発酵させた後、これに天然資材と廃菌床を添加して、さらに発酵させる、すなわち、鶏糞を発酵する第1の発酵工程と、鶏糞に天然資材と廃菌床を添加して発酵させる第2の発酵工程で肥料に処理するので、第1と第2の発酵工程を必要として、肥料の製造に手間と時間がかかる欠点がある。
【0006】
本発明者は、種々の試行錯誤を繰り返した結果、極めて簡単な方法で、周囲に悪臭を発生させることなく、単一の発酵工程で鶏糞を肥料に処理できる方法を開発した。すなわち、本発明の重要な目的は、発酵工程における悪臭の発生を防止して、短期間で鶏糞を肥料に処理できる肥料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の鶏糞肥料の製造方法は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
鶏糞肥料の製造方法は、水分率を25重量%ないし4重量%とする未発酵でアルカリ性の鶏糞を100重量部に、エリンギとマイタケとシメジとシイタケのいずれかを栽培して廃棄される酸性の廃菌床を10重量部ないし100重量部混合して発酵させる。
【0008】
以上の方法は、発酵工程における鶏糞の悪臭の有効に阻止できる。それは、水分率が高くて強いアルカリ性の鶏糞に、強い酸性を示す廃菌床を混合して中和して発酵させるからである。この方法は、水分率の高い鶏糞に廃菌床を混合して速やかに悪臭の発生を防止できる。とくに、本発明は、未発酵で水分率の高い鶏糞に廃菌床を混合して、混合した直後から悪臭の発生を防止できるので、鶏糞を発酵し、あるいは乾燥するなどの処理をすることなく、鶏舎から取り出した直後に廃菌床を混合して悪臭の発生を防止できる。このことは、鶏飼育に極めて重要である。それは、鶏糞の処理が飼育できる鶏の数を制限する要因となっているからである。従来の方法では、鶏糞を乾燥して悪臭の発生を防止している。この方法は、鶏糞を乾燥するための設備を必要とし、さらにこれを運転するためにエネルギーを消費することから、ランニングコストがかかり、このことが鶏糞の処理量を制限している。本発明の方法は、鶏舎から排出される鶏糞に廃菌床を混合して、速やかに悪臭の発生を阻止できる。さらに、廃菌床を混合された鶏糞を発酵させて肥料にできる。この方法は、極めて簡単な設備で多量の鶏糞を処理できる。しかも、鶏舎から排出して廃菌床を混合した後に悪臭の発生を防止できるので、発酵させて肥料にするための工程で悪臭の発生も防止できる。さらに、本発明の方法は、鶏舎から排出される鶏糞を発酵させることなく、これに直ちに廃菌床を混合して発酵させることから、短期間で鶏糞を肥料に処理できる特徴も実現する。
【0009】
本発明の請求項2の鶏糞肥料の製造方法は、廃菌床が、トウモロコシの茎と、米ぬかと、フスマとを含んでいる。この方法で製造された肥料は、おがくずを含まず短期間で優れた肥料となる。さらに、本発明の請求項3の鶏糞肥料の製造方法は、廃菌床が、おがくずを含んでいる。さらにまた、本発明の請求項4の鶏糞肥料の製造方法は、鶏糞と廃菌床とを混合した後、5日〜25日経過した後、かく拌する。
【0010】
さらに、本発明の請求項5の鶏糞肥料の製造方法は、鶏糞と廃菌床にBC菌を添加、混合して鶏糞を発酵させる。さらに、本発明の請求項6の鶏糞肥料の製造方法は、100重量部の鶏糞に対して、0.001〜0.5重量部のBC菌を添加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための方法を例示するものであって、本発明は肥料の製造方法を以下の方法や条件には特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0012】
図1の工程図に示す鶏糞肥料の製造方法は、鶏舎から排出された鶏糞に廃菌床を混合して発酵させる。鶏糞は、鶏舎から排出されて発酵や乾燥処理されてないもので、水分率を25重量%ないし40重量%とするものを使用する。廃菌床は、エリンギとマイタケとシメジとシイタケのいずれかを栽培して廃棄されるもので、強い酸性の廃菌床を使用する。廃菌床を鶏糞に添加して混合する割合は、100重量部の鶏糞に対して、10重量部以上であって100重量部以下とする。廃菌床の混合率が10重量部よりも少ないと、鶏糞の強アルカリ性を廃菌床の強酸性で中和できなくなって悪臭が発生する。したがって、廃菌床の混合量は、10重量部以上、好ましくは20重量部以上とする。また、反対に廃菌床の混合量が100重量部を超えると、肥料に含まれる鶏糞の割合が少なくなって、肥料として性能が低下する。したがって、廃菌床の混合量は100重量部以下、好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは50重量部以下とする。
【0013】
鶏糞と廃菌床は、さらにBC菌を添加して、より速やかに発酵できる。BC菌の添加量は、100重量部の鶏糞に対して、0.001重量部〜0.5重量部とする。BC菌は、添加量を0.001重量部よりも多くして、鶏糞と廃菌床の混合体を速やかに発酵できる。したがって、BC菌の添加量は、0.001重量部よりも多く、好ましくは0.005重量部よりも多くする。BC菌の添加量を多くすると、鶏糞肥料の材料コストが高くなる。したがって、BC菌の添加量は0.5重量部よりも少なくする。
【0014】
鶏糞と廃菌床とBC菌の混合体は、所定の日数経過すると撹拌して、より好ましい発酵環境とする。図1の方法は、15日経過する毎に撹拌して、45日で鶏糞肥料としている。撹拌された混合体は、表層部と内部とを均一に撹拌することで、全体を均一に発酵して鶏糞肥料にできる。とくに、多量の混合体は、表層部と内部とで空気に触れる割合が異なることから、一定の期間経過するごとに撹拌して、表層部と内部とを均一に空気に触れる発酵環境として、全体を均一に発酵できる。撹拌することで、発酵に関与する微生物に空気を補給して、微生物を活発にして、鶏糞全体を均一に発酵できる。図1は、約1トンの鶏糞を含む混合体を発酵させる工程を示している。この方法は、15日経過するごとに撹拌して、切返ししている。混合体を切返しする期間は、発酵させる鶏糞の量により変化し、鶏糞量が多くなると、切返しする期間を短く、鶏糞量が少ないと切返しする期間を長くできる。
【実施例1】
【0015】
1000kgの鶏糞に、300kgの廃菌床と、100gのBC菌を混合して混合体とする。鶏糞は、鶏舎から排出されて、乾燥させず、発酵させない未発酵なもので、水分率を30重量%とするものを使用する。廃菌床には、エリンギの廃菌床を使用する。
廃菌床を混合する前の鶏糞のアンモニア濃度を測定すると、200ppm以上であったが、廃菌床の混合された混合体は、廃菌床を混合して1時間後のアンモニア濃度が0ppmとなって、悪臭は発生しなくなる。
【0016】
混合体を発酵容器に入れて、15日経過した後、撹拌して切返しする。その後、15日経過する毎に撹拌して切り返し、45日で発酵された鶏糞肥料となる。得られた鶏糞肥料は、散布車で圃場に散布して肥料として使用される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の鶏糞肥料の製造方法は、鶏舎から排出される鶏糞を乾燥させることなく、また発酵させることなく廃菌床を添加・混合して悪臭が発生しない状態とし、この状態で発酵させて速やかに鶏糞肥料を製造できる。製造された肥料は、鶏糞に含まれる有効な有機成分を含み肥料として有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例にかかる鶏糞肥料の製造方法を示す工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分率を25重量%ないし40重量%とする未発酵でアルカリ性の鶏糞を100重量部に、エリンギとマイタケとシメジとシイタケのいずれかを栽培して廃棄される酸性の廃菌床を10重量部ないし100重量部混合して発酵させることを特徴とする鶏糞肥料の製造方法。
【請求項2】
前記廃菌床が、トウモロコシの茎と、米ぬかと、フスマとを含む請求項1に記載される鶏糞肥料の製造方法。
【請求項3】
前記廃菌床が、おがくずを含む請求項1に記載される鶏糞肥料の製造方法。
【請求項4】
鶏糞と廃菌床とを混合した後、5日〜25日経過した後、かく拌する請求項1に記載される鶏糞肥料の製造方法。
【請求項5】
鶏糞と廃菌床にBC菌を添加、混合して鶏糞を発酵させる請求項1に記載される鶏糞肥料の製造方法。
【請求項6】
100重量部の鶏糞に対して、0.001〜0.5重量部のBC菌を添加する請求項5に記載される鶏糞肥料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−269772(P2009−269772A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119358(P2008−119358)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(597103090)石井養鶏農業協同組合 (1)
【Fターム(参考)】