説明

麹菌の分生子形成に関与する遺伝子、及び、麹菌の分生子形成能を増大させる方法

【課題】固体培地培養及び液体培地培養での麹菌分生子形成数を増大させる方法を提供する。
【解決手段】以下の(a)又は(b)の蛋白質をコードするDNA:(a)Aspergillus oryzaeの特定の遺伝子由来のアミノ酸配列からなる蛋白質、(b)(a)のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質またはそれをコードするDNAの発現を阻害又は抑制することから成る、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麹菌の分生子形成に関与する遺伝子、麹菌の分生子形成能を増大させる方法、及び、該方法によって生子形成能が増大した麹菌等に関する。
【背景技術】
【0002】
アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)等の麹菌は様々な酵素類(蛋白質加水分解酵素、アミラーゼ類等)を産生・分泌し、その優れた澱粉糖化能力及び蛋白質分解力等により、醤油、酒、味噌などの醸造食品の製造に工業的に用いられている。しかしながら、このように工業的に利用されている麹菌には、その育種過程で分生子形成能が低下し、その取り扱いが困難な株が少なくない。
【0003】
近年、他の生物種同様アスペルギルス・オリゼのゲノム配列が明らかとなり(例えば、特許文献1参照)、遺伝子の機能的解析の重要性がますます高まってきている。例えば、特許文献1〜4に記載されているような、麹菌の遺伝子発現を制御する様々な転写因子の解析が行われてきた。一方で、ゲノム解析より明らかとなった麹菌の全遺伝子のうち半分はこれまでのに知られているものとは相同性の低い機能未知なものであることが判明した。これらの未知遺伝子の産物が麹菌において重要な役割を果たしていると考えられることから、より詳細に解明する必要が生じてきた。
【0004】
しかし、これまでの遺伝子解析は一つ一つの遺伝子の破壊株や高発現株等の作製を行い、表現型を観察することで遺伝子機能解析することが多く、全ゲノム上の遺伝子を対象にするのは困難であった。
【0005】
そこで、本発明者の一人である高橋は麹菌において大規模染色体欠失技術を開発した(特許文献5及び非特許文献1)。この技術では相同組換え頻度が上昇した株であるku遺伝子破壊株(特許文献6)を用い、少なくとも数百kbにおよぶ領域を一度に欠失させることが可能であり結果として数十個の遺伝子を同時に欠失する事ができる。この大規模染色体欠失技術を利用して、染色体上の様々な部位において大領域欠失株を作製することによって表現型が出る株をスクリーニングすることにより、工業上有用な宿主を育種することだけではなく、その原因遺伝子の存在範囲も特定できる。
【0006】
また、全ゲノム解析が完了したA. nidulansやA. fumigatusなどのゲノムと比較して、麹菌は特徴的に染色体上に二次代謝に関連する遺伝子などの生育に必須ではない遺伝子群(NSBs - non-syntenic blocks)が多く存在することが明らかになった(非特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−176602号公報
【特許文献2】特開2003−240号公報
【特許文献3】特開2003−70484号公報
【特許文献4】特開2003−235584号公報
【特許文献5】特開2007−222055号公報
【特許文献6】特開2006−158269号公報
【非特許文献1】T. Takahashi et al. (2006) Mol Genet Genomics. 275, 460-70
【非特許文献2】Tamano et al. (2008) Fungal Genet Biol. 45, 139-151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、麹菌における未知遺伝子の機能を解明することによって、麹菌の分生子形成を増大させる方法、麹菌の分生子形成に関連する原因遺伝子、及び該方法によって生子形成が増大した麹菌等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の大規模染色体欠失技術を利用して、7番染色体の主にNSBsの部分にフォーカスして大領域欠失株を作製することによって、AO090011000215を欠失した株で分生子形成能が増加することを見出し、これが麹菌の分生子形成に関連する原因遺伝子であることを特定した。更に、この遺伝子欠失した株は親株より2割以上プロテアーゼ活性が増加していることを解明した。これらのことから、このようにして得られた菌株が工業的に求められる、優れた形質を持つことが明らかとなった。以上の知見に基づき、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の各態様の発明に係るものである。
[態様1]
以下の(a)又は(b)の蛋白質をコードするDNA:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質。
[態様2]
以下の(a)、(b)又は(c)のDNA:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするDNA、
(c)(a)の塩基配列からなるDNAと80%以上の配列相同性を示す塩基配列からなるDNAであって、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
[態様3]
以下の(a)又は(b)の蛋白質:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質。
[態様4]
態様1若しくは2記載のDNA又は蛋白質の発現を阻害又は抑制することから成る、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
[態様5]
態様1若しくは2記載のDNAの上流に位置する転写調節領域を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
[態様6]
転写調節領域がプロモーターである、態様5記載の方法。
[態様7]
転写調節領域が配列番号39及び配列番号36で表される塩基配列を含むプライマーで増幅される断片に含まれる領域である態様5記載の方法。
[態様8]
態様1若しくは2記載のDNAの少なくとも一部を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
[態様9]
Ku遺伝子が抑制されていることにより相同組み換え頻度が上昇した形質転換麹菌を、染色体領域欠失用断片で形質転換させ、該染色体領域欠失用断片と該形質転換麹菌のゲノムとの間の相同組換えにより、該染色体領域を欠失させる方法を用いる、態様5〜8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
態様4〜9のいずれか一項に記載の方法により得られる、麹菌分生子形成能が増大していることを特徴とする麹菌。
[態様11]
更に、プロテアーゼ活性が増加していることを特徴とする、態様9記載の麹菌。
【発明の効果】
【0010】
本発明方法を用いることによって、麹菌の分生子形成能及びプロテアーゼ活性を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
麹菌とは、アスペルギルス属に属する微生物(菌類)の総称であり、その代表的な例として、既に記載したアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)及びアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)に加えて、特に食品・醸造分野で使用される菌としてアスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)及びアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等を挙げることができる。
【0012】
本発明の配列番号1で表される塩基配列からなるDNAは麹菌(Aspergillus oryzae)の7番染色体のNSBs部分に位置する「AO090011000215」遺伝子(機能未知)を含むものであり、以下の実施例に具体的に記載されるように、本発明者等が開発した大規模染色体欠失技術を利用して、麹菌の分生子形成に関与する遺伝子(原因遺伝子)として初めて同定されたものである。
【0013】
即ち、本発明DNAは配列番号2で表されるアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する活性を有する蛋白質をコードする。更に、本発明DNAがコードする蛋白質には、該蛋白質に加えて、配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列(上記アミノ酸配列と配列相同性を有するアミノ酸配列)からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する活性を有する蛋白質も含まれる。
【0014】
より具体的には、本発明のDNAは配列番号1で表される塩基配列からなるDNAである。ここで、「配列番号1で表される塩基配列からなるDNA」には、イントロンを含むゲノム由来のDNAに加えて、アミノ酸をコードする領域のみから成る塩基配列(すなわち、エクソン部分のみが結合された塩基配列)からなるcDNAも含まれる。このようなcDNAは、当業者に公知の任意の方法によって、本明細書に開示の塩基配列情報に基づき調製した適当なプライマーを用いて、麹菌のmRNAを鋳型としたPCR等により取得することが可能である。また、本発明のDNAは当業者に公知の任意の方法によって化学合成することも可能である。
【0015】
更に、本発明のDNAには、上記DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、及び上記DNAと約80%以上、好ましくは約95%以上である配列相同性を示す塩基配列からなるDNAであって、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするDNAが含まれる。
【0016】
ここで、ハイブリダイゼーションは、例えば、Molecular cloninng third.ed.(Cold Spring Harbor Lab.Press,2001)、又は、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al.,1987)に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0017】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度15〜900mM、好ましくは15〜600mM、さらに好ましくは15〜150mM、pH6〜8であるような条件を挙げることができる。
【0018】
従って、配列番号1で表される塩基配列を含むDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該DNAの全塩基配列との相同性の程度が、全体の平均で、約80%以上、好ましくは約95%以上である塩基配列を含有するDNA等を挙げることができる。
【0019】
2つの塩基配列又はアミノ酸配列における配列相同性を決定するために、配列は比較に最適な状態に前処理される。例えば、一方の配列にギャップを入れることにより、他方の配列とのアラインメントの最適化を行う。その後、各部位におけるアミノ酸残基又は塩基が比較される。第一の配列におけるある部位に、第二の配列の相当する部位と同じアミノ酸残基又は塩基が存在する場合、それらの配列は、その部位において同一である。2つの配列における配列相同性は、配列間での同一である部位数の全部位(全アミノ酸又は全塩基)数に対する百分率で示される。
【0020】
上記の原理に従い、2つの塩基配列又はアミノ酸配列における配列相同性は、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268、1990及びProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877、1993)により決定される。このようなアルゴリズムを用いたBLASTプログラムやFASTAプログラムは、主に与えられた配列に対し、高い配列相同性を示す配列をデータベース中から検索するために用いられる。これらは、例えば、米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイトにおいて利用可能である。
【0021】
上記のような塩基配列の配列相同性又はコードするアミノ酸配列の配列相同性を示すようなDNAは、上記のようにハイブリダイゼーションを指標に得ることもでき、ゲノム塩基配列解析等によって得られた機能未知のDNA群又は公共データベースの中から、当業者が通常用いている方法により、例えば、前述のBLASTソフトウェアを用いた検索により発見することも容易である。さらに、本発明遺伝子は種々の公知の変異導入方法によって得ることもできる。
【0022】
本発明DNAは麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードすることから、該蛋白質又はこれをコードするDNAの発現を阻害又は抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させることが可能となる。
【0023】
上記蛋白質の発現の阻害又は抑制は当業者に公知の任意の方法・手段により実施することが可能である。例えば、本発明のDNAの転写によって生成されるmRNAに対してRNA干渉及びアンチセンス等の方法を実施し、蛋白質への翻訳を阻害又は抑制することが可能である。
【0024】
又、上記DNAの発現を阻害又は抑制は、当業者に公知の任意の方法・手段により実施することが可能である。例えば、本発明のDNAの上流に位置する転写調節領域を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、その下流にある本発明のDNAの発現を阻害又は抑制することが可能となる。一般に、転写調節領域には、プロモーター等の各種転写因子が含まれていることが知られている。従って、このような転写因子の少なくとも一部を含む領域、例えば、実施例に記載されている、夫々、配列番号39及び配列番号36で表される塩基配列を含むプライマーで増幅される断片に含まれる領域を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、目的を達することが出来る。
【0025】
或いは、より直接的に本発明のDNA自体の少なくとも一部を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させることも可能である。
【0026】
上記のような、本発明のDNA又はその上流に位置する転写調節領域を欠失させる好適な方法として、特に、特許文献5等に記載されている方法、即ち、Ku遺伝子が抑制されていることにより相同組み換え頻度が上昇した形質転換麹菌を、染色体領域欠失用ベクターで形質転換させ、該染色体領域欠失用ベクターと該形質転換麹菌のゲノムとの間の相同組換えにより、該染色体領域を欠失させる方法を挙げることが出来る。
【0027】
「相同組み換え頻度が上昇した形質転麹菌」は、特許文献6に記載された方法で作製することが出来る。即ち、該形質転換麹菌は、Ku遺伝子を抑制することにより作製されたものである。これらの菌は、市販品として、又は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)等の公的寄託機関から入手することも可能である。
【0028】
「Ku遺伝子」は、例えば、Ku70遺伝子及びKu80遺伝子等の非相同組換え機構に関与する遺伝子である。その具体例として、特許文献5に記載されたような、アスペルギルス・ソーヤ由来のKu70遺伝子及びKu80遺伝子、並びに、アスペルギルス・オリゼ由来のKu70遺伝子及びKu80遺伝子を挙げることが出来る。
【0029】
本発明の形質転換菌において、Ku遺伝子の抑制は当業者に公知の任意の方法で実施することが出来る。例えば、Ku遺伝子破壊ベクターを使用してKu遺伝子を破壊したり、又は、Ku遺伝子のアンチセンス発現ベクターを利用するアンチセンスRNA法によって、Ku遺伝子を不活化することが可能である。こうして得られる形質転換菌は、このようなKu遺伝子の抑制に関する遺伝子操作が施される前の元の菌と比較して、相同組み換え頻度が顕著に上昇している。具体的には、少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも約60倍上昇している。
【0030】
このような形質転換菌の代表的な例として、特許文献6に記載されているAspergillus sojae ASKUPTR8株(wh, ΔpyrG, ku70::ptrA)、及び、Aspergillus oryzae RkuN16ptr1株を上げることが出来る。尚、Aspergillus sojae ASKUPTR8株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6に所在の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成16年12月2日付で寄託され、受領番号FERM P-20311が付されている。その後、平成17年11月17日付で特許手続上の微生物の寄託等の国際的承認に関するブタペスト条約に基く国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-10453が付与されている。
【0031】
本発明方法において、該形質転換菌の或る染色体領域を欠失させるために使用される染色体領域欠失用断片は、本明細書の実施例に記載のように、欠失させたい領域の両端の外側の領域と同じ塩基配列を有する一組の相同領域アームを含むことを特徴とする。この相同領域アームの長さは、欠失させる染色体領域等に応じて適宜選択することが出来るが、高い相同組換え頻度を得るには、或る程度の長さ、例えば、約1〜3kbであることが好ましい。尚、このような染色体領域の染色体上の位置及び大きさ、並びに該染色体領域の両端の外側の領域の塩基配列等は当業者に公知である。
【0032】
このような染色体領域欠失用断片は、欠失の対象となる染色体領域のいずれかの端の外側に位置する塩基配列をPCR等の適当なDNA増幅技術で増幅することにより相同領域アームを作製し、これらを当業者に公知の適当な方法で一つの断片に融合することによって容易に作製することが出来る。又、このような断片を適当なプラスミド中にクローニングすることによって、欠失用プラスミドを作製し、これを鋳型として使用して該断片を増幅することも出来る。
【0033】
更に本発明方法において相同組換えを利用して作製した染色体領域の欠失株を効率的に選択する目的で、上記の染色体領域欠失用断片の相同領域アームの間に当業者に公知の適当な選択マーカー遺伝子が含ませることが好ましい。このような選択マーカー遺伝子の例として、pyrG, sC 及びniaD等を挙げることが出来る。従って、本発明の方法で作製された、染色体領域の一部が欠失している形質転換菌は、培養過程において、このような選択マーカーを利用して容易に選択することができる。
【0034】
染色体領域欠失用断片による形質転換は、プロトプラストPEG法及びエレクトロポレーション法等の当業者に公知の任意の方法で行なうことが出来る。
【0035】
本明細書において、「麹菌分生子形成」とは、麹菌が分生子柄上に外生的に無性胞子すなわち分生子を形成するということを意味する。
【0036】
本明細書において、「麹菌の分生子形成能を増大させる」とは、上記の麹菌分生子形成を実質的に増大させることを意味し、本明細書の実施例に示した方法によって計数した麹菌の「分生子」が親株と比較して約1.6倍、好ましくは2倍以上になることをいう。またその結果として、目標とする分生子数例えば10個/gに達する時間が、24時間以上早くなることを意味する。なお、麹菌分生子の数は、例えば、本明細書の実施例に記載されているように、麹菌分生子から再生したコロニーを計数したり、又は、溶液中に分離した後の分生子濃度を測定することにより求めることができる。或いは、表現型の観察により親株と比較して有意に分生子形成の増大が認められることを意味する。
【0037】
なお、本発明の組換えベクターによる形質導入または形質転換の対象となる微生物として、麹菌以外の食品・醸造・化学・医療分野で使用される産業上有用な糸状菌等を用いても実質的に同様の効果を得ることができる。これらの菌は、市販品として、又は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)等の様々な公的寄託機関から入手することも可能である。
【0038】
本発明の麹菌を当業者に公知の任意の方法で培養することにより、より多量の麹菌分生子を効率的に取得することができる。例えば、本発明の麹菌を、固体培地若しくは液体培地で培養して麹菌分生子を取得することが可能である。このような生産方法における、培養系・培地の選択、培養温度・時間等の培養条件は、以下の実施例等を参考に、当業者が適宜設定することができる。
【0039】
本発明方法で得られる麹菌分生子形成能が増大していることを特徴とする麹菌は、更に、本明細書に記載の方法による測定でプロテアーゼ活性が、親株と比較して約20%増加していることを特徴とする。
【0040】
以下、実施例に則して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。尚、以下の実施例における各遺伝子操作の手段・条件等は、特に断わりがない限り、例えば、特開平8−80196号公報等に記載されている当業者に公知の一般的な方法に従い実施した。
【実施例】
【0041】
使用菌株:
Aspergillus oryzae E-F1 (ΔpyrG、Δku70)株を用いた。この株はA. oryzae RIB40株からpyrGとku70を破壊した株であり、相同組み換え頻度が上昇した形質転麹菌である。この株は、特許文献6(特開2006−158269号公報)に準じて作製した。
【0042】
使用培地:
(1)マルツプレート(8% Malz Extract, 2 mg/l CuSO4, 0.04 mg/l Na2B4O7, 0.87 mg/l FePO4, 0.95 mg/l MnSO4・5H2O, 0.8 mg/l Na2MoO4・5H2O, 8 mg/l ZnSO4, 2%Agar)
(2)DPY培地(dextrin 2%, polypepton 1%, yeast extract 0.5%, KH2PO4 0.5%, MgSO4 0.05%)
(3) CzapekDox(CD)最小培地(0.2% NaNO3, 0.05% KCl, 0.05% NaCl, 0.1% KH2PO4, 0.05% MgSO4・7H2O, 0.002% FeSO4・7H2O, 2% glucose, pH 5.5)
(4)再生培地(1.2MソルビトールCD)
(5)フスマ培地(フスマ、0.8 ml/g水)
【0043】
形質転換:
50mlファルコンチューブの中10mlのDPY液体培地に分生子を接種し、30℃で約20時間振とう培養を行い、菌体を回収した。回収した菌体を0.6M KCl bufferで洗浄し、1% Yatalase (Takara社), 0.5% lysing enzyme(シグマ社), 0.5% セルラーゼを含む0.6M KCl buffer中で30℃、3時間緩やかに振とうし、プロトプラストを調整した。得られたプロトプラストを1.2Mソルビトールbufferで洗浄した後、プロトプラストPEG法により形質転換を行った。形質転換体の再生は0.8% agarを含む1.2Mソルビトール-CD培地上で行った。
【0044】
サザンハイブリダイゼーション:
サザンハイブリダイゼージョンはHybond-N+のメンブレンフィルター(アマシャムファルマシア社)を使用し、一般的な方法によって行った。検出にはDIG Luminescent Detection Kit (ロシュ社)を使用し、メーカーの推奨する方法で行なった。Probeの作製はPCR DIG Probe Synthesis Kit (ロシュ社)によって行った。
【0045】
分生子計数:
マルツ寒天培地で培養して生えてきた分生子を0.01%Tween80溶液中に分離させ、回収された。血球計数板を用いて顕微鏡下で分生子濃度を測定し、その濃度の比較によって分生子形成を確認した。
【0046】
プロテアーゼ活性測定:
100mlの三角フラスコにフスマ2gと水1.6mlを混ぜたフスマ培地に、回収された107の分生子を均一に培養し、30℃にて3日間静置培養した。菌の増殖に伴う発熱で、菌が死滅するのを防ぐ目的で、培養21時間目にフラスコを激しく振とうして培養物を攪拌した。培養してから三日後、30mlの水を三角フラスコに入れ、攪拌する。室温で4hrs置いて、ミラクロスでろ過し、ろ液を3000rpm, 10分遠心した。上清を新しいファルコンチューブに移し、ミルクカゼイン法によりプロテアーゼ活性を測定した。上清サンプル200μl、水800μl、1mlのミルクカゼイン(メルク社)を順番に15mlチューブに入れ、30℃ 1hr反応させ、5%トリクロロ酢酸4mlを添加することで反応を停止させた。この混合液をNo.5Cのろ紙によりろ過し、ろ液1mlに対して、0.4M Na2CO3 5mlと5倍希釈されたフェノール試薬1mlを添加、30℃、30min反応させ、660nmで吸光度を測定した。
【0047】
直接欠失用断片の作製:
Fusion PCR法により直接欠失用fragmentを作製した。まず欠失したい領域である7番染色体のAO090011000204からAO090011000232までの両端の配列204と232番目遺伝子をそれぞれ約1kbの配列とpyrGマーカーを末端側相補できるようにprimersを設計した(表1)。KOD Plus DNA polymeraseを用い、A. oryzae RIB40のゲノムをtemplateとして、94℃、1min, 94℃、30sec→60℃、30sec→68℃、2min、30cyclesのPCR条件下でこの三つの断片を増幅した。次は増幅された三つの断片を混合し、両側のprimersを用いてFusion PCRにより一つの断片に繋がるように融合し、増幅した。Fusion PCRはLA-Taq polymeraseを用いて、94℃、1min, 94℃、30sec→60℃、30sec→72℃、4min、30cyclesの条件下で行った。 このように増幅された欠失用断片を電気泳動により確認し、形質転換に用いた。
【0048】
【表1】

【0049】
欠失株の作製と確認:
作製された欠失用断片をA. oryzaeの相同組換え頻度向上株であるA. oryzae E-F1 (ΔpyrG、Δku70)株に導入し、1.2Mソルビトール-CD選択培地に選択させた。このように取得された形質転換体に対してゲノムを抽出し、BamHI制限酵素により消化して0.8% Agaroseゲルで電気泳動した。電気泳動し終わったゲルをHybond-N+のメンブレンフィルターにトランスファーし、サザン解析を行った。プライマーsc011-204F(2260)とsc011-204R(3800)を使用して増幅した204番目のフラグメントをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションに用いた。実際に取得された6株の形質転換体を確認したところ、その中の5株が親株の5.4 kbのバンドに対し予想通りの3.9 kbのバンドが検出され、AO090011000204−AO090011000232の間の遺伝子が順調に欠失されたことが確認された(図1)。
【0050】
欠失株の表現型:
確認された欠失株と親株をマルツ寒天培地に培養して、表現型を観察した。それぞれ点培養、画線培養と一面培養して観察したところ、親株(図2、(a)及び(b)における左側の写真)と比較して、欠失株(図2、(a)及び(b)における右側の写真)の方はもっと密度が高い分生子形成が観察された。また、菌糸も親株と比べて多分岐が多く、しかも点培養の場合はコロニーの直径を測定した結果、欠失株は親株よりやや長かった。更に、実際に一面培養の場合の分生子形成を数えたところ、親株と比較して、約1.6倍以上増加していることが分かった(図2、C)。
【0051】
原因遺伝子の同定とその確認:
7番染色体のAO090011000204-AO090011000232の間で先ほど述べた欠失株の表現型を引き起こす原因遺伝子の同定実験を行った。トータルで28個の遺伝子の中で原因遺伝子を二段階で見つけるためにプライマーを表2のように設計した。
【0052】
この実験ではまずLA-Taq polymeraseにより増幅した204-232の欠失用断片をTOPO-TAクローニングkit (Invitrogen社)によってクローニングした。取得されたプラスミドを用いて、図4のようにIn-Fusion PCR cloning kit(Takara社)によってIn-FusionすることによりpyrGの末端側に210, 215, 220, 225, 230番目の遺伝子それぞれのプライマー(表2-1)により増幅された断片を挿入した。In-Fusionの具体的な方法はベクターを鋳型としてプライマーpyrG-F(4410)とpyrG-R(4390)を用いて、pyrGマーカーの末端側から反対向きに増幅する。また、インサートとしての210, 215, 220, 225, 230番目の遺伝子をそれぞれのプライマーにより末端側は増幅したベクターと16塩基相補するように増幅した。これらの増幅されたベクターとそれぞれのインサートをIn-vitroでIn-Fusion cloning酵素下で反応させ、インサートがベクターに導入されたプラスミドが形成された。このようにそれぞれの204-210, 204-215, 204-220, 204-225, と204-230の欠失用プラスミドを作製した。
【0053】
これらのプラスミドを鋳型としてPCRにより欠失断片を増幅し、E-F1株に形質転換を行った。取得された形質転換体に対して、まず表現型から親株と204-232欠失株と比較して、204-232の欠失株と同じような表現型の株を探した。その結果、204-220の形質転換体は取得されなかったが、ほかの204-210以外の株は全部204-232欠失株と同じ表現型の形質転換体を取得された(図3)。また、204-210と204-215欠失株に対してサザン解析により遺伝子型を確認した。まず、形質転換体と親株のゲノムをBamHI制限酵素により処理し、215番目の遺伝子をプローブとして、サザン解析を行ったところ、予想通りに204-210欠失株(レーン1〜3)は親株と同じサイズのバンドが検出され、204-215の欠失株(レーン1(右端))はバンドのシフトが検出された(図4)。以上の結果から、正しく欠失株が取得されたことが証明された。以上の表現型と遺伝子型両方で比較した結果、210-215の間に原因遺伝子が存在することが分かった。
【0054】
【表2】

【0055】
次に204-215の欠失用プラスミドを用いて、前と同様にIn-fusion法によりpyrG遺伝子の上流側にそれぞれ設計されたプライマー(表3)により増幅された215, 214, 213, 212, 211遺伝子の上流側の約1kbの配列を挿入した。このように、それぞれ215遺伝子のプロモーター領域、と215-214, 215-213, 215-212, 215-211部分を欠失させることができるようにプラスミドを作製した。これらのプラスミドを用いて、両側のプラスミドにより欠失用断片を増幅し、E-F1株に形質転換した。取得された形質転換体に対して、まず表現型を観察して、204-232欠失株と同じような表現型のものを探した。その結果、これらの取得された形質転換体では全部204-232欠失株と同様な形質が観察された(図5)。
【0056】
更に、挿入サイトの両側にあるプライマーsc011-215F(1290)とsc011-215R(3980)を用いてPCR確認した結果、親株の2.7kbのバンドに対し、215-215欠失株のほうは4.2kbのバンドが検出された。また、各株のゲノムに対して制限酵素PstIにより処理し、プライマーsc011-215F(1290)とsc011-215R(2250)により増幅した断片をプローブとしてサザン解析を行った結果、親株の4.2kbのバンドに対し、215-215欠失株は予想通りに3.1kbのバンドが検出された(図6)。この結果から、215番目の遺伝子のプロモーター領域を欠失させることにより分生子形成能が増加したと判断し、この215番目の遺伝子が麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするような原因遺伝子である可能性が一番高いと考えられる。
【0057】
【表3】

【0058】
プロテアーゼ活性の測定:
215遺伝子が原因遺伝子であることが確認され、次はこの破壊株を用いて親株と同様にフスマ培地で三日間培養して、プロテアーゼ活性を測定してみた。基質はミルクカゼインを用いた。測定した結果、親株と比較して、プロテアーゼ活性が20%ぐらい増加したことが分かった(図7)。以上のことから、この215遺伝子欠失株は分生子形成も増加し、プロテアーゼ活性も有意に向上したことから、工業生産に相応しい宿主として利用されると考えられる。
【0059】
AO090011000215遺伝子ORF欠失実験:
本当に215番目の遺伝子が原因遺伝子であるかどうかを確認するため、今回は215番目遺伝子のORF部分だけを破壊して、同じ表現型出るかどうかの実験を行った。表4は設計した215番目遺伝子ORFを欠失するためのプライマーである。まずはプライマーsc011-215F(1970)とsc011-215R(5010)により215遺伝子のORFを含む役3kbのバンドをEx Taq polymeraseによりPCRで増幅し、TA クローニングによりクローニングした。更に、上記のようにIn-Fusion PCR cloning kitを用いて、In-Fusionすることにより215遺伝子のORFを除いたベクターにpyrG遺伝子を挿入した。このように作製されたベクターを用いて、プライマーsc011-215F(1970)とsc011-215R(5010)により破壊用断片を増幅し、ku70破壊株に導入した。取得された形質転換体表現型を観察したところ、215ORF欠失株は204-232欠失株と似たような表現型が観察された(図8)。これらの形質転換体に対してPCRとサザン解析を行った。その結果、PCRにおいては、親株の3kbのバンドに対して、欠失株のほうは約4.3kbのバンドが検出され、サザン解析の場合は、215のプロモーター部分をプローブとして、BamHI制限酵素で処理した結果、親株の4.8kbのバンドに対し、欠失株のほうは予想通りの1.2kbのバンドが検出された(図9)。以上の結果から、215ORF部分は予想通りに欠失させたことが証明され、この215遺伝子が麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードする遺伝子であり、その発現を阻害又は抑制することにより麹菌の分生子形成能が増大する原因遺伝子であることが証明された。
【0060】
【表4】

【0061】
本発明遺伝子(AO090011000215)に関して知見:
この遺伝子に対して、相同性検索ソフトBLASTを用いて相同性検索を行った。また、「自動予測遺伝子産物配列」について、モチーフ検索ソフト(HMMER)を用いてモチーフ(Pfam)検索を行い、転写調節因子に関わるモチーフを含むと推定されるアミノ酸配列をコードする「自動予測遺伝子配列」を選択した。その結果、この遺伝子がHLH(helix-loop-helix) motifが存在し、 HLH DNA binding domain proteinであるタンパク質をコードしている可能性を示した。HLH DNA binding domain proteinは様々なdevelopmental pathwayに影響を及ぼす一群の真核生物転写制御因子として機能を働いている。A. oryzaeにおいてはゲノム情報から10個のHLH DNA binding domain proteinを有することが推測されたが、これらの遺伝子の機能に関する知見は麹菌においてはこれまで報告されてなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明で得られる麹菌からは多くの分生子が効率的に回収できるので、産業上有用な麹菌の増殖に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】AO090011000204-AO090011000232欠失株のサザン解析の結果を示す。
【図2】204-232欠失株の表現型と分生子数比較を示す。尚、 (b)における上の2枚及び下の2枚は、(a)における3日後に撮影した写真を、夫々、10倍、及び40倍に拡大したものである。
【図3】204-232欠失株の表現型の観察によるその原因遺伝子の同定の結果を示す。
【図4】各欠失株のサザン解析による遺伝子型の確認の結果を示す。
【図5】204-232欠失株の表現型の観察によるその原因遺伝子の同定の結果を示す。
【図6】215プロモーター欠失株のPCR及びサザン解析による遺伝子型の確認の結果を示す。
【図7】フスマ培養条件下で215欠失株のプロテアーゼ活性の増加を示すグラフである。
【図8】AO090011000215遺伝子のORF部分の欠失株の表現型の観察の結果を示す。
【図9】AO090011000215遺伝子のORF部分の欠失株のPCR及びサザン解析による遺伝子型の確認の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)の蛋白質をコードするDNA:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質。
【請求項2】
以下の(a)、(b)又は(c)のDNA:
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするDNA、
(c)(a)の塩基配列からなるDNAと80%以上の配列相同性を示す塩基配列からなるDNAであって、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質をコードするDNA。
【請求項3】
以下の(a)又は(b)の蛋白質:
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
(b)(a)のアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、麹菌分生子形成を阻害又は抑制する機能を有する蛋白質。
【請求項4】
請求項1若しくは2記載のDNA又は蛋白質の発現を阻害又は抑制することから成る、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
【請求項5】
請求項1若しくは2記載のDNAの上流に位置する転写調節領域を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
【請求項6】
転写調節領域がプロモーターである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
転写調節領域が配列番号39及び配列番号36で表される塩基配列を含むプライマーで増幅される断片に含まれる領域である請求項5記載の方法。
【請求項8】
請求項1若しくは2記載のDNAの少なくとも一部を欠失させ、又はその機能を阻害・抑制することによって、麹菌の分生子形成能を増大させる方法。
【請求項9】
Ku遺伝子が抑制されていることにより相同組み換え頻度が上昇した形質転換麹菌を、染色体領域欠失用断片で形質転換させ、該染色体領域欠失用断片と該形質転換麹菌のゲノムとの間の相同組換えにより、該染色体領域を欠失させる方法を用いる、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法により得られる、麹菌分生子形成能が増大していることを特徴とする麹菌。
【請求項11】
更に、プロテアーゼ活性が増加していることを特徴とする、請求項9記載の麹菌。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−261251(P2009−261251A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110631(P2008−110631)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2008年3月5日 社団法人日本農芸化学会発行の「2008年度(平成20年度)大会 大会講演要旨集」の第252ページに発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用をうけるもの)
【出願人】(000173935)財団法人野田産業科学研究所 (9)
【Fターム(参考)】