説明

麺用水分散性ほぐれ剤

【課題】本発明は、水に容易にかつ微細に分散し、麺類へのほぐれ性能を改善し、しかも、麺喫食時にスープ等の濁りが少ない麺用ほぐれ剤を提供する。
【解決手段】糖類あるいはアルコール類に、ポリグリセリン脂肪酸エステルとレシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有し、食用油脂を含有しない麺用水分散性ほぐれ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺類製造時、および、喫食時のほぐれ性を改善する麺用水分散性ほぐれ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺市場の開発においては麺の製造方法や包装形態の改良などのハード面と、多様化した消費者の要望に応えるべく、食感や風味の向上、商品の差別化、調理しやすい麺類開発などのソフト面の追求が必要である。また、麺類の種類を見てみると、生麺、即席麺、コンビニエンスストアに代表される調理麺、冷凍麺、ゆで麺やLL麺など多様化している。これに伴い、麺市場における新たな課題がクローズアップされ、特に、澱粉配合量の増加により麺線が付着し易くなることは大きな課題点の一つとなっている。麺線の付着は小麦粉などの原料粉中の澱粉が加熱により膨潤し、澱粉質が溶出することが大きく影響していると言われている。
【0003】
麺線同士の付着の課題を解決するために、麺類の加熱工程後、麺線に食用油脂、油脂調製物、増粘多糖類や乳化剤水溶液を噴霧する方法が行われている。
例えば、食用油脂にグリセリンおよびポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンおよびエタノールを配合した水溶性油脂調製物を使用する方法(特許文献1参照)、油脂にポリグリセリン脂肪酸エステル、大豆レシチンおよび酵素分解レシチンを配合した油脂組成物を使用する方法(特許文献2参照)が提案されている。しかし、これらの方法で使用される組成物は、油脂を含有しているため、水に分散させた際、濁りが生じ、麺喫食時にスープやめんつゆが濁る、スープの風味を損なうなどの問題がある。
その他、多糖類およびポリグリセリンを含有する品質改良剤を使用する方法(特許文献3参照)が提案されているが、本方法で使用される組成物は、スープやかけつゆへの濁りは小さいものの、水に分散しにくく工業的利用を考えると手間がかかる課題がある。
【0004】
また、(1)食用油脂および/または油溶性乳化剤、(2)親水性乳化剤、および(3)糖類および/または澱粉分解物を含有する水中油型乳化液を噴霧乾燥して得られる澱粉加工食品用改質剤を使用する方法(特許文献4参照)や、(1)アルコール、(2)モノ脂肪酸エステルを50重量%以上含むポリグリセリン脂肪酸エステル、および(3)糖類、糖アルコール、グリセリンおよびプロピレングリコールの一種以上を含有してなる食品の風味品質低下防止剤(特許文献5参照)が提案されているが、これらの方法で使用される組成物は、水への分散性には問題は無いが分散時の粒子が大きく麺喫食時のスープ等の濁りが生じるなどの問題がある。
【特許文献1】特開2005−323537号公報
【特許文献2】特許第3205135号
【特許文献3】特開2001−95514号公報
【特許文献4】特開2000−316504号公報
【特許文献5】特開2000−078947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水に容易にかつ微細に分散し、麺類のほぐれ性を改善し、しかも、麺喫食時にスープ等の濁りが少ない麺用ほぐれ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、糖類またはアルコール類に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ならびにレシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有し、食用油脂を含有しない調製物により目的が達せられることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
(1) (a)糖類またはアルコール、(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ならびに(c)レシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有し、食用油脂を含有しないことを特徴とする麺用水分散性ほぐれ剤、
(2) ポリグリセリン脂肪酸エステルがジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする(1)に記載の麺用水分散性ほぐれ剤、
(3) ポリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が50質量%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の麺用水分散性ほぐれ剤、
(4) グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸脂肪酸エステルである(1)に記載の麺用水分散性ほぐれ剤、
(5) 糖類が糖アルコールおよび/または単糖類であることを特徴とする(1)に記載の麺用水分散性ほぐれ剤、および
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の麺用水分散性ほぐれ剤を用いて製造した麺類、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の麺用水分散性ほぐれ剤を用いることにより、麺類のほぐれ性が改善され、水に容易に分散するため工程が簡素化され、また、製剤中に油脂を含有しないことから水溶解時の透明性が高く、麺喫食時のスープやめんつゆの濁りが少なく商品価値の高い麺類の製造を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の麺用水分散性ほぐれ剤は、(a)糖類またはアルコール、(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ならびに(c)レシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有してなり、食用油脂を含有しないことを特徴とする。
【0010】
本発明に用いられる糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類およびこれらの分解物や糖アルコールが挙げられ、これらの中で水に溶解する成分が好ましい。このような糖類として、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、デキストリンや、これらの糖アルコールであるソルビトール、マルチトール、オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、デキストリンアルコール、ラクチトールなどである。また、これらの糖類を2種類以上組み合わせて利用することもできる。また、使用する際のハンドリングを考慮すると、水に溶解した際、粘度が小さい糖アルコール、単糖類を用いることがさらに好ましい。なお、単糖類として、市販品のアミール(単糖類主体の糖アルコール(ソルビトール:約50%))なども使用することができる。
【0011】
本発明に用いられるアルコールとしては、例えば1価アルコールであるエチルアルコール、多価アルコールであるグリセリンなどが挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるポリグリセリンとしては、通常グリセリンに少量の酸またはアルカリを触媒として添加し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば約180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物が挙げられる。また、ポリグリセリンは、グリシドールまたはエピクロルヒドリンなどを原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩または脱色などの処理を行って良い。該ポリグリセリンとしては、グリセリンの平均重合度が通常約2〜20、好ましくは約2〜10のポリグリセリンが挙げられる。具体的には、例えばジグリセリン(平均重合度:約2.0)、トリグリセリン(平均重合度:約3.0)、テトラグリセリン(平均重合度:約4.0)、ヘキサグリセリン(平均重合度:約6.0)、オクタグリセリン(平均重合度:約8.0)およびデカグリセリン(平均重合度:約10.0)などが挙げられ、特にジグリセリンまたはトリグリセリンが好ましい。
【0013】
本発明において、上記ポリグリセリンを、例えば蒸留またはカラムクロマトグラフィーなど自体公知の方法を用いて精製し、単一成分の含量を高濃度化した高純度ポリグリセリンが好ましく用いられる。そのような例としては、例えばグリセリン2分子からなるジグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上である高純度ジグリセリン、およびグリセリン3分子からなるトリグリセリンの含有量が約50質量%以上、好ましくは約85質量%以上である高純度トリグリセリンなどが挙げられる。
【0014】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸など)が挙げられ、好ましくは炭素数12〜18の飽和または不飽和脂肪酸である。これら脂肪酸は一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノエステル体の含有量が約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上であるジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。このような組成のジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい製法の概略は以下の通りである。即ち、高純度ジグリセリンおよび/または高純度トリグリセリンと脂肪酸を原料として常法によりエステル化反応を行い、反応終了後、反応混合物中に残存する触媒(例えば、水酸化ナトリウム)を中和する。中和後、反応混合物を、所望により冷却して、約100℃〜180℃、好ましくは約130℃〜150℃に保ち、好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置する。未反応のポリグリセリンが下層に分離した場合はそれを除去する。上記処理後、得られたジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルを、好ましくは、更に減圧下で蒸留して残存する未反応のポリグリセリンを留去し、続いて、例えば流下薄膜式分子蒸留装置または遠心式分子蒸留装置などを用いて分子蒸留するか、またはカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出など自体公知の方法を用いて精製することにより、モノエステル体を約50質量%以上、好ましくは約70質量%以上含むジグリセリン脂肪酸エステルをおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルを得る。モノエステル体含量が低く、ジエステル体やトリエステル体が多い場合では、水へ分散した際、透明感が減少するため、麺類へ応用した場合、スープやめんつゆへの濁りが生じやすくなる。
【0016】
本発明に用いられるレシチンとしては、リン脂質を主成分としたものであれば特に限定されず、例えば大豆レシチンや卵黄レシチンなどが挙げられる。また、ペースト状のクルードレシチン、油脂分を除去した高純度レシチン、酵素で処理を行った酵素処理レシチン、抽出などにより特定の成分を高めた分画レシチンも用いることができるが、ハンドリングなどを考慮するとペースト状のレシチンを用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるグリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、グリセリン1分子に対して脂肪酸1分子と有機酸1分子がエステル結合した有機酸モノグリセライド、グリセリン1分子に対して脂肪酸2分子と有機酸1分子がエステル結合した有機酸ジグリセライド、またはこれらの混合物が挙げられる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する有機酸としては、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル無水酒石酸などが挙げられ、グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数8〜20の脂肪酸、より好ましくは、炭素数16〜18の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、α−リノレン酸などが好ましく挙げられる。これらの脂肪酸は、単独でもよく混合物であってもよい。これらのグリセリン有機酸脂肪酸エステルの中にあって、グリセリンクエン酸オレイン酸エステル(クエン酸モノグリセライド)がより好ましい。
【0018】
本発明に係る水分散性麺用ほぐれ剤の製造方法は特に限定されないが、例えばポリグリセリン脂肪酸エステルとレシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを50〜100℃にて混合・溶解後、50〜80℃にて糖類またはアルコールと共に攪拌することにより製造することができる。
【0019】
本発明に係る水分散性麺用ほぐれ剤中には、糖類またはアルコールが約60〜99質量%、好ましくは約80〜95質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが約0.1〜20質量%、好ましくは約1〜10質量%、レシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルが0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の量で配合され、均一に分散していることが好ましい。各成分の含有量は組成物全体が100質量%となるよう選択する。尚、本発明に係る組成物中には、本発明の目的を阻害しない範囲でショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)、ソルビタン脂肪酸エステル、または、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどの食品用乳化剤を加えることができる。
【0020】
本発明の水分散性麺用ほぐれ剤を製造する装置としては、特に限定されないが、例えば、攪拌機、加熱用ジャケット、邪魔板などを備えた通常の混合・攪拌槽を用いることができる。攪拌機としては攪拌翼を装備したもの、ホモミキサー、ローター式ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、連続式ホモジナイザー等いずれを用いても良い。攪拌翼の形状はプロペラ型、かい十字型、ファンタービン型、ディスクタービン型またはいかり型等のいずれを用いても良いが、装置の簡便性や攪拌効率を考慮するとホモミキサーやローター式ホモジナイザーが好ましい。また、本発明の目的を阻害しない範囲で乳化剤や蛋白などを併用して噴霧乾燥、凍結乾燥する方法や、混合機を使用した粉末化も可能である。
【0021】
上記の如くして得られる本発明の麺用水分散性ほぐれ剤を適用できる麺は、特に制限されないが、例えば、生麺、即席麺(ノンフライ麺など)、調理麺、冷凍麺、ゆで麺やLL麺などが挙げられる。これらのうち、ほぐれに課題の多い、ノンフライ麺、調理麺などへの応用が効果的である。
【0022】
本発明の水分散性麺用ほぐれ剤の使用方法は、特に制限されず、例えば、(a)麺生地を混捏する際に該水分散性麺用ほぐれ剤を添加する方法、(b)麺線を茹でる際に該水分散性麺用ほぐれ剤を添加する方法、(c)茹でた麺、あるいは蒸した麺に該水分散性麺用ほぐれ剤、あるいは該水分散性麺用ほぐれ剤の水分散液を噴霧する方法、(d)茹でた麺、あるいは蒸した麺に該水分散性麺用ほぐれ剤、あるいは該水分散性麺用ほぐれ剤の水分散液を塗布する方法、(e)茹でた麺、あるいは蒸した麺に該水分散性麺用ほぐれ剤、あるいは該水分散性麺用ほぐれ剤の水分散液を浸漬する方法、(f)茹でた麺、あるいは蒸した麺に該水分散性麺用ほぐれ剤、あるいは該水分散性麺用ほぐれ剤の水分散液を噴霧、塗布あるいは浸漬後、油熱や温風などにより麺中の水分を乾燥する方法などが挙げられる。
【0023】
本発明の水分散性麺用ほぐれ剤の使用量は、該ほぐれ剤の使用方法、麺類の種類あるいは流通形態、保管期間、期待効果の度合いによって異なるが、例えば麺生地に添加する方法では小麦粉などの穀粉100質量部に対して0.5〜5質量部、好ましくは1〜3質量部である。また、該水分散性麺用ほぐれ剤を浸漬、噴霧または塗布する方法では、その使用量は茹でた麺および蒸した麺に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
また、該水分散性麺用ほぐれ剤を水分散液として浸漬、噴霧または塗布する方法では、その濃度が0.5質量%以上、好ましくは2〜30質量%となるように水分散液を調製し、それを使用するとよい。水分散液の使用量は、その濃度を勘案して適宜調整すると良い。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を製造例、実施例および試験例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
[製造例]トリグリセリンオレイン酸エステルの製造
攪拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた反応釜にグリセリン20kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム20w/v%水溶液100mLを加え、窒素ガス気流中250℃で4時間グリセリン縮合反応を行った。
得られた反応生成物を90℃まで冷却し、リン酸(85質量%)約20gを添加して中和した後ろ過し、ろ液を160℃、400Paの条件下で減圧蒸留してグリセリンを除き、続いて200℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、ジグリセリンを主成分とする留分約3.7kgを除き、更に、240℃、20Paの高真空条件下で分子蒸留し、グリセリン1質量%、ジグリセリン4質量%、トリグリセリン88質量%、テトラグリセリン3質量%、環状ポリグリセリン4質量%を含む留分約1.5kgを得た。次に、該留分に活性炭を1質量%加え、減圧下にて脱色処理した後ろ過して、トリグリセリン混合物を得た。得られたトリグリセリン混合物の水酸基価は約1164で、その平均重合度は約3.0であった。
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、上記トリグリセリン混合物240g(約1.0モル)、およびオレイン酸(商品名:PM 810−RB、ミヨシ油脂社製)270g(約0.96モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%溶液10mLを加え、窒素ガス気流中240℃で、酸価12以下となるまで、約2時間エステル化反応を行わせた。得られた反応混合物を約150℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2gを添加して触媒を中和し、その温度で約1時間放置し、分離した未反応のトリグリセリン約40gを除去し、トリグリセリンオレイン酸エステル(モノエステル体含有量約42質量%)約440gを得た。
尚、モノエステル体の測定はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で行った。分析条件を以下に示す。
【0026】
〈HPLC分析条件〉
装置 高速液体クロマトグラフ(型式:LC−10AS、島津製作所社製)
検出器 RI検出器(型式:RID−6A、島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF−802、昭和電工社製)
2本連結
温度 40℃
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検液注入量 15μL
【0027】
以上の工程を3回繰り返しトリグリセリンオレイン酸エステル(モノエステル体含有量約42質量%)約1300gを得た。次に、該トリグリセリンオレイン酸エステルを、遠心式分子蒸留装置(実験機;CEH−300II特、ULVAC社製)を用いて蒸留し、温度約240℃、20Paの真空条件下で未反応のトリグリセリンなどの低沸点化合物を留去し、続いて温度約250℃、1Paの高真空条件下で分子蒸留し、留分として、トリグリセリンオレイン酸エステル(モノエステル体含有量約80質量%)約300gを得た。
【0028】
以下の実施例1〜6および比較例1〜5に、麺用水分散性ほぐれ剤の製造実施例を示す。
【0029】
[実施例1]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製;ソルビトール含量:約50%)465gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)10g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製、モノエステル体含有量:約80質量%)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品1)約500gを得た。
【0030】
[実施例2]
1リットル容ビーカーに果糖液糖(商品名:L−95、日本食品化工社製)460gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)15g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品2)約500gを得た。
【0031】
[実施例3]
1リットル容ビーカーにグリセリン(ミヨシ油脂社製)465gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)25g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)10gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品3)約500gを得た。
【0032】
[実施例4]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製)450gを仕込み、グリセリンクエン酸オレイン酸エステル(商品名:ポエムK−37V、理研ビタミン社製)25g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品4)約500gを得た。
【0033】
[実施例5]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製)435gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)15g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)25g、グリセリンクエン酸オレイン酸エステル(商品名:ポエムK−37V、理研ビタミン社製)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品5)約500gを得た。
【0034】
[実施例6]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製)465gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)10g、製造例で得られたトリグリセリンオレイン酸エステル(モノエステル体含有量約80質量%)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品6)約500gを得た。
【0035】
[比較例1]
菜種油に186gにレシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)2g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)4g、エタノール8gを溶解し油脂調製物(比較例品1)約200gを得た。
【0036】
[比較例2]
水194gに酸化澱粉(商品名:MS#6100、日本食品化工社製)2g、プルラン(林原商事社製)2g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)2gを約70℃で加熱攪拌を行い、糖−乳化剤調製物(比較例品2)約200gを得た。
【0037】
[比較例3]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製)475gを仕込み、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品3)約500gを得た。ここでの比較品4は粘度が高くハンドリングを考えた場合、好ましい性状では無かった。
【0038】
[比較例4]
1リットル容ビーカーに還元澱粉糖化物(商品名:アマミール、東和化成工業社製)475gを仕込み、レシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)25gを約70℃で加熱溶解後、還元澱粉糖化物に加えた。
ついで約80℃にて攪拌機(商品名:T.Kホモミクサー、特殊機化工業社製)で10000rpm、10分攪拌し、麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品4)約500gを得た。
【0039】
[比較例5]
100ミリリットル容ビーカーにレシチン(商品名:日清レシチンDX、日清オイリオ社製)10g、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO−100V、理研ビタミン社製)25gを約70℃で加熱溶解し、麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品5)35gを得た。
【0040】
[試験例1]
実施例1〜6で得られた麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品1〜6)、または比較例1〜5で得られた調製物もしくは麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品1〜5)を用いて、(1)室温下での水分散性を評価すると共に、下記方法によりノンフライ麺を製造し、該ノンフライ麺につき、(2)ほぐれ性および(3)スープの透明性を評価した。
[ノンフライ麺の製造]
(本発明の実施例品1〜6を用いるノンフライ麺の製造)
準強力粉(商品名:特ナンバーワン、日清製粉社製)700g、タピオカ澱粉(商品名:さくら、松谷化学社製)300gに粉末かんすい2g、食塩12g、水400gを配合し、ミキサーで10分混捏後、圧延、切出し(切刃#22丸、麺線厚み1mm)を行い得られた麺を蒸し器で10分間蒸し蒸し麺を得た。麺用水溶性ほぐれ剤(実施例品1〜6)1gを水20mlに分散した溶液を蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0041】
(比較例品1〜5を用いるノンフライ麺の製造)
例1
実施例1同様に蒸し麺を作製後、油脂調製物(比較例品1)2gを水20mlに分散した溶液を蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0042】
例2
実施例1と同様に蒸し麺を作製後、糖−乳化剤調製物(比較例品2)5gを蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0043】
例3
実施例1と同様に蒸し麺を作製後、麺用水溶性ほぐれ剤(比較例品3)1gを水20mlに分散した溶液を蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0044】
例4
実施例1と同様に蒸し麺を作製後、麺用水溶性ほぐれ剤(比較例品4)1gを水20mlに分散した溶液を蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0045】
例5
実施例1と同様に蒸し麺を作製後、麺用水溶性ほぐれ剤(比較例品5)0.07gを水20mlに分散した溶液を蒸した麺83gに均一に噴霧した。その後、熱風乾燥機により95℃で10分間、110℃で10分間乾燥しノンフライ麺を得た。
【0046】
[評価方法]
(1)室温下での水分散性評価
実施例1〜6と比較例1〜5の麺用水分散性ほぐれ剤の室温下での水分散性を評価した。
各種調製物の室温下での水への分散性は、水98gに対して麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品1〜6と比較例品1〜5)2gを添加し、水に分散する様子を以下に示す評価基準をもとに評価した。
◎:スパチュラで数回攪拌した際、調製物が分散する。
○:スパチュラで数回攪拌した際、調製物は完全には分散しない。
△:スパチュラで数回攪拌した際、調製物は分散するが、すぐに二層に分離する。
×:スパチュラで長時間攪拌しても、溶け残りがある。
【0047】
(2)ほぐれ性の評価
ほぐれ性については実施例品1〜6と比較例品1〜5を用いて得られたノンフライ麺に、熱湯350gを注ぎ、蓋をして4分間放置した後、箸で麺をほぐし、麺を持ち上げた際、塊がなくなるまでほぐれる時間を測定し、以下に示す5段階で評価した。
5:ほぐれるまでの時間が10秒以下
4:ほぐれるまでの時間が11〜20秒
3:ほぐれるまでの時間が21〜30秒
2:ほぐれるまでの時間が31〜40秒
1:ほぐれるまでの時間が41秒以上
【0048】
(3)スープの透明性評価
スープの透明感については、実施例品1〜6と比較例品1〜5を用いて得られたノンフライ麺に、熱湯350gを注ぎ、蓋をして4分間放置した後、麺を除き、2時間室温に放置した後、分光光度計(型式:U−3310、日立ハイテクノロジーズ社製)にて透過率の測定を行った。なお、評価は以下に示す基準にて評価した。
◎:透過率が75%以上
○:透過率が70%以上75%未満
△:透過率が65%以上70%未満
×:透過率が65%未満
【0049】
[結果]
結果は、下記表1の通りである。
【0050】
【表1】

表1に示す結果から本発明品は水への分散性、ほぐれ性およびスープの透明感に優れていることが認められる。
【0051】
[試験例2]
製造例で得られた麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品1)、または実施例4で得られた麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品4)を用いて、割子そばを製造し、得られた割子そばの(1)ほぐれ性および(2)めんつゆの濁り度合を評価した。
尚、麺用水分散性ほぐれ剤を用いることなく製造した割子そばを、コントロールとした。
[割子そばの製造]
(本発明の実施例品1を用いた割子そばの製造)
強力粉(商品名:オーション、日清製粉社製)500g、そば粉(商品名:金寿 月、日穀製粉社製)300g、澱粉(商品名:あさがお、松谷化学社製)200g、グルテン(商品名:エマソフトEX−550、理研ビタミン社製)40g、乾燥卵白(商品名:リケンランパクR、理研ビタミン社製)10g、塩15g、水320gを配合し、ミキサーで10分混捏後、圧延、切出し(切刃#20角、麺線厚み1.5mm)を行い得られた麺100gを2分30秒茹で上げ、流水で約30秒水洗し、水切りし、水切り麺を得た。製造例1で得られた麺用水分散性ほぐれ剤(実施例品1)1gを水5gに分散後、水切り麺に均一に噴霧し、容器に入れ割子そばを得た。
【0052】
(比較例品4を用いた割子そばの製造)
水切り麺の作製は実施例品1を用いた場合と同様に行い、比較例4で得られた麺用水分散性ほぐれ剤(比較例品4)1gを水5gに分散後、水切り麺に均一に噴霧し、容器に入れ割子そばを得た。
【0053】
(コントロールの割子そばの製造)
水切り麺の作製は実施例品1を用いた場合と同様に行い、水切り麺に水5gを均一に噴霧後、容器に入れ割子そばを得た。
【0054】
[評価方法]
上記実施例品1および比較例品4により得られた割子そば、ならびにコントロールの割子そばを5℃で2日間保存後、めんつゆ35mlをかけ、その際のほぐれ性、および、めんつゆの濁りの評価を行った。
【0055】
(1)ほぐれ性の評価
ほぐれ性については、割子そばにめんつゆをかけた後、箸で麺を動かし、麺線が1本ずつに離れるまでの時間を測定した。
【0056】
(2)めんつゆの濁り度合いの評価
めんつゆの濁りについては、上記ほぐれ性の評価後、めんつゆの濁り度合いを5人のパネラーの評点をもとに評価した。なお、評価は以下に示す5段階で評価し、平均値を評価値とした。
5:極めて良好(めんつゆが透明である)
4:良好(めんつゆが僅かに濁っている)
3:ほぼ良好(めんつゆが濁りが濁っている)
2:不良(めんつゆの濁りが大きい)
1:極めて不良(めんつゆが著しく濁っている)
【0057】
[結果]
結果は、下記表2の通りである。
【0058】
【表2】

表2に示す結果から本発明品はほぐれ性に優れ、めんつゆへの影響が少ないことが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の麺用水溶性ほぐれ剤は、麺類のほぐれ性向上に利用できる。また、本発明の麺用水溶性ほぐれ剤は、水に容易に分散するため工程が簡素化され、また、微細に水に分散するためほぐれ機能が効果的に発揮され、スープやめんつゆの濁りが少なく商品価値の高い麺類の製造に貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)糖類またはアルコール、(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル、ならびに(c)レシチンおよび/またはグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有し、食用油脂を含有しないことを特徴とする麺用水分散性ほぐれ剤。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルがジグリセリン脂肪酸エステルおよび/またはトリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の麺用水分散性ほぐれ剤。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステル100質量%中、モノエステル体の含有量が50質量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の麺用水分散性ほぐれ剤。
【請求項4】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸脂肪酸エステルである請求項1記載の麺用水分散性ほぐれ剤。
【請求項5】
糖類が糖アルコールおよび/または単糖類であることを特徴とする請求項1記載の麺用水分散性ほぐれ剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の麺用水分散性ほぐれ剤を用いて製造した麺類。