説明

麺類の製造方法及び麺類

【課題】 麺類に添加して製麺に必要な作業時間の短縮と食感改良を実現し、さらに抗菌作用を求める。
【解決手段】
小麦粉その他麺の原料を叩いたり、踏んだり、薄く延ばして帯状とする製麺工程で、麺の原料に燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、0.01重量%以上添加した麺類の製造方法及びこの方法で製造された麺とした。また、小麦粉その他の主原料に対して副原料を加え又は加えずに練りこみ、熟成時間をかけ、叩いたり、踏んだりし、薄く延ばして帯状とする製麺工程中で、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、麺の原料に対して0.01重量%以上添加し、練りこみ又は混合する麺類の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の製造方法及び製造された麺類に関するもので、製麺の作業時間の短縮と麺のコシ、弾力、粘りを与えて食感を改良し、さらに抗菌作用のある麺を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
麺類の製造には、従来から種々の方法が用いられてきた。主原料として小麦粉を用い、食塩やカン水などを混合して、練りこみ、熟成時間をかけ、叩きつけたり、押し付けたりして麺にコシ、粘り、弾力をつけるようにしている。
【特許文献1】特開2002−335893号公報 麺類の製造方法及び麺質改良剤 この例は適度の硬さ、弾力、歯ごたえ及び滑らかさがあり、喉越しが良い食感で且つ湯伸び、茹で伸びのしにくい麺類の製造方法である。平均粒子径が20μm以下の増粘安定剤を含有する麺質改良剤を開示している。
【特許文献2】特開平1−164659号公報 竹炭粉末入り麺類の製造法 竹材を1000℃以上で蒸し焼きして得た竹炭を粉砕し、粉末として、この粉末を小麦粉、そばなどの穀物粉に混入し、練り上げた後、薄く延ばして、その後、切り出して細い麺線に形成する方法を開示している。
【特許文献3】特開平9−154511号公報 麺改良剤、それを含有する麺類及び麺類の製造方法。ジグリセリンジ脂肪酸エステル及びリン酸塩からなる麺改良剤を含有する麺類を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
製麺には、一般的に主原料の粉に水分を加え、副原料としてでん粉などを使い、場合によっては食塩、カン水、アルコールなどを混合して、練り込み作業となり、熟成時間をとったり、叩きつけたり、踏み込んだり、押しつけたりしてコシ、粘り、弾力のある食感の良い麺とする。しかし、手動による作業時間はかなり長く、重労働である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1発明では、小麦粉その他麺の原料を叩いたり、踏んだり、薄く延ばして帯状とする製麺工程で、麺の原料に燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、0.01重量%以上添加した麺類の製造方法とした。
【0005】
第2発明では、製麺の工程で麺の原料に対して、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、0.01重量%以上添加し、練りこみ又は混合する麺類の製造方法とした。
【0006】
第3発明では、燻液が、原料を木材もしくは竹材を使い、混合することなく木材のみか、竹材のみを280℃〜500℃で乾留し、3層に分かれた中間層のみをフィルターにかけ、浮遊物や溶解タール分を除去したものとした。
【0007】
第4発明では、燻液中に香辛料抽出液を含有するものが、天然香辛料を燻液に浸漬し、加熱することなく常温下で静置し、親水抽出し、液相から抽出済みの天然香辛料を除去したものとした。
【0008】
第5発明及び第6発明は、上記製造方法で製造された麺である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、麺及び麺類に対し燻液又は燻液中に香辛料抽出物を含有するものを添加することにより、たやすく麺のコシ、弾力、粘りを与えて食感を改良し、作業時間の短縮及び静菌作用の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、燻液または燻液中に香辛料抽出物を含有するものであり、麺類用の食感改良効果があり、作業工程の簡素化を実現する。
【0011】
本発明の燻液とは、原料を木材もしくは竹材を使い、混合することなく木材のみか竹材のみであり、建築廃材等は塗料や防虫剤や白アリ防除剤など木材に由来しない化合物が混入する恐れがあるので、避けるのが賢明である。
【0012】
木材又は竹材を乾留して得られる。乾留液は3層に分かれ、上部に軽油質、中間層に燻液、下部にタール分となり、品質向上の為に中間層のみをフィルターにかけ浮遊物や溶解タール分を除去される。乾留する際の内部の温度は、ベンツピレン・ジペンズアントラセン等の有害物質の発生を防ぐ為、280℃〜500℃が望ましい。
【0013】
本発明でいう燻液中に香辛料抽出物を含有するものとは、
(i) 燻液で香辛料を抽出された香辛料抽出物を含有する燻液、
(ii) 香辛料抽出基原物質より水、エタノール、二酸化炭素若しくは有機溶剤で抽出して得られた香辛料抽出物又は水蒸気蒸留して得られた香辛料抽出物を燻液中に混合したもの
を含む。
【0014】
これらの内、燻液から造られる香辛料抽出物は、天然香辛料を燻液に浸漬し常温下(非加熱)で静置、親水抽出する。液相から抽出済みの天然香辛料を除去してできあがる。天然香辛料を燻液で抽出するため常温下で行なっても燻液の作用により香辛料を有効かつ確実に殺菌でき、加熱しない為に風味・旨味を損なうことなく生の天然香辛料が有する豊かな味わいを保持できる。
【0015】
このような天然香辛料としては、バジル、タイム、ガーリック、オニオン、ジンジヤーなどがある。
【0016】
本発明方法は、燻液または燻液中に香辛料抽出物を含有するものを、麺類の原料粉または原料水若しくは練り水に添加する工程を含む。
【0017】
主原料として小麦粉(強力粉・準強力粉・中力粉・薄力粉)、デュラム・セモリナ粉、大麦粉、はと麦粉、ライ麦粉、そば粉、米粉、とうもろこし粉、大豆粉、卵粉、やまのいも粉などの粉体に、燻液または燻液中に香辛料抽出物を含有するものを、原料粉または原料水もしくは練り水に加え練り合わせる。
【0018】
また本発明でいう麺・麺類は、上記の主原料に副材料のカン水、アルコール、食塩、油、卵、でん粉などを加えて混合し、場合によっては熟成時間をかけ叩いたり踏んだりしてから、さらに薄くのばし麺帯状にして製麺され生麺となる。その後、加熱・乾燥などの加工をしてパッケージングする。
【0019】
そして、常温・チルド・冷凍の状態で流通される生麺、生チルド麺、生冷凍麺、茹で麺、茹でチルド麺、茹で冷凍麺、蒸し麺、蒸しチルド麺、蒸し冷凍麺、乾麺、油揚げ即席麺、非油揚げ即席麺またはロングライフ麺などのことを指し、具体的には中華麺、そば、うどん、冷麦、そうめん、にゆう麺、きし麺、ビーフン、ちゃんぽん、冷麺、スパゲッティー、マカロニ、ペンネ、パスタ、餃子の皮、シュウマイの皮、春巻の皮、ラビオリの皮などである。
【0020】
燻液または燻液中に香辛料抽出物を含有するもの添加の方法は、液体またはオイル状もしくは粉末を、粉または水に加えて混合したり、ふりかけたり、まぶしたり、踏み込んだり、漬け込んだり、あるいは注入したりして使用する。また、添加される工程は、原料粉中、副材料添加後、練り水添加後、それらを混合中、熟成中、練り込み作業中、製麺中、加熱乾操などの加工中のいかなる工程中でも構わない。
【0021】
最も効率の良い添加方法は、燻液または燻液中に香辛料抽出物を含有するものを原料粉中か、副原料中か、原料水か、練り水中に添加する方法である。
【0022】
原料の総重量の0.01%の添加で麺のコシ、粘り、弾力が出易くなり作業工程が短縮できる。
【0023】
添加量を増すごとに、麺の食感はさらに強くなり作業時間もさらに短くなる。又、抗菌作用も増す結果となる。
【0024】
燻液等の添加方法は、中華麺、うどん、そば等に対して、液状の燻液を原料水もしくは練り水に混入させる。パウダー(粉末)の燻液は、原料粉に混ぜ合わせる。(パスタ他)。 オイル状の燻液は、副材料の油に混ぜ合わせる。例えば、そうめん製造で練り込み後、製麺の際に使う食用油に混入させる。
【0025】
燻液等の添加量は、総重量の0.01%から効果が表れるが、最大1%以内が望ましい。これ以上添加すると、商品の味・風味・香りなどに影響を与える可能性がある。
【実施例1】
【0026】
生中華麺に燻液を添加した例。
中華麺を下記に示す燻液の添加量で手打ちにて作成した。
従来の製造方法で燻液の添加なしを設けて比較した。
燻液の添加を総重量の0.01%と0.05%と0.1%の4種類とした。
練り込み作業時間は、適度にまとまり弾力が出来たと思われる時点で終了とし、その後、製麺し2分30秒間茹でた。
【0027】
官能検査:
調理直後に燻液を添加した3種類は、ブラインドをして添加なしの麺と比較テストした。訓練された5人のパネラーにより、コシ、弾力,粘り具合について評価した。(配合は下記参照)
【0028】
強力粉600g、薄力粉300g、水360ml、カン水(粉末)18g、合計 1278g
ヒッコリー・スペシャリティ社製
ゼスティ・スモーク A-6 (株式会社アルファーフーヅ販売)
作業時間 コシ 弾力 粘り
添加なし 20分 普通 普通 普通
0.01%(0.1278ml) 18分 軽くあり ややあり かすかにあり
0.05%(0.638ml) 16分 程よくあり 強くあり わずかにあり
0.1%(1.27ml) 14分 強くあり 力強くあり ややあり
【実施例2】
【0029】
実施例1と同じように、生中華麺を製造し、燻液としてゼステイ・スモークA・6(株式会社アルファーフーヅ販売)の添加なしと添加0.01重量%を静菌調査した。
【0030】
2検体を製造後14日間は冷蔵庫(5℃)に保管し、翌日の1日間は常温(15℃)で保管し、一般生薗数の分析をした(分析方法 標準寒天平板培養法による)。
【0031】
その結果、
添加なし : 1.3 x 106 /g(130万/gr)
添加 0.01% : 2 x 105/g (20万/gr)
細菌を押さえる効果が実証された。(日本食品分析センター 分析試験成績書 第2040382-001 及び第2040382-002)。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、麺類に添加して製麺に必要な作業時間の短縮と食感改良を実現し、さらに抗菌作用を求めた。従って、従来にない食感が得られ、新規な麺として産業上広く利用できる。
【0033】
燻製品として、従来からハムやソーセージ等が見られるが、この場合スモークすることによりハム・ソーセージの表面に薄い膜を造り商品を保護し、木の香ばしい香りをつけるものであった。燻液等の使用目的において、従来例とは明確に異なっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉その他麺の原料を叩いたり、踏んだり、薄く延ばして帯状とする製麺工程で、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、麺の原料に対して0.01重量%以上添加したことを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項2】
小麦粉その他の主原料に対して副原料を加え又は加えずに練りこみ、熟成時間をかけ、叩いたり、踏んだりし、薄く延ばして帯状とする製麺工程中で、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、麺の原料に対して0.01重量%以上添加し、練りこみ又は混合することを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項3】
燻液が、原料を木材もしくは竹材を使い、混合することなく木材のみか竹材のみを280℃〜500℃で乾留し、3層に分かれた中間層のみをフィルターにかけ、浮遊物や溶解タール分を除去したものである請求項1又は2記載の麺類の製造方法。
【請求項4】
燻液中に香辛料抽出液を含有するものが、天然香辛料を燻液に浸漬し、加熱することなく常温下で静置し、親水抽出し、液相から抽出済みの天然香辛料を除去したものである請求項1記載の麺類の製造方法。
【請求項5】
小麦粉その他麺の原料を叩いたり、踏んだり、薄く延ばして帯状とする製麺工程で、燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものを、麺の原料に対して0.01重量%以上添加したことを特徴とする麺類。
【請求項6】
燻液又は燻液中に香辛料抽出液を含有するものが、請求項3又は4に示したものである請求項5記載の麺類。