説明

麺類の製造方法

【課題】 茹で麺の流通過程における食感の低下防止。
【解決手段】 容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類、具体的にはうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でたものの製造において、生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトオリゴ糖、好ましくはマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオース、および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類、好ましくは大豆多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れる茹で麺類の製造方法。糖質は茹で麺類に対して0.1重量%以上2重量%以下となるように、糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液で接触処理を行ったものである。マルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオース、および/またはその還元糖からなる糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液であって、該糖質の含有量が3重量%以上17重量%以下である麺類の改質剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茹で後の時間経過に伴う麺の食感の経時的な低下を防止した茹で麺類、特に調理麺用麺類、または調理麺の製造方法とその製造に用いられる麺類の改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等で市販されている麺類は年々バラエティに富み多種多様な内容となってきている。それらの商品形態はおいしさと簡便さが重視された結果、食する前まで麺のみ個包装または小分けされ、喫食時にそのままダシ汁等と共に食する形態がその主流となっておりそのため麺は予め茹でた状態で供給されている。しかしながらそれらの麺は流通過程による時間経過により、茹で後すぐの適度の硬さ、弾力、歯応えや滑らかさが経時的に失われ、硬さが増したり、弾力性や滑らかさが失われるなどの食感の低下が認められている。そこで、この流通過程における茹で麺の食感の低下に関し多くの検討が行われている。
【0003】
これまで茹で麺の食感の維持に関しては、高アミロペクチン系澱粉と穀類とを使用し、使用量の5〜50重量%に相当する前者を予め加水、加熱して澱粉糊化物とした後、残余の澱粉、食塩、水等を加えて常法により生麺を作り、これを水分含量が50〜65重量%になるように茹で上げる方法(特許文献1)及び、穀粉50〜95部、澱粉5〜50部、糖アルコール1〜10部に加水して混捏した生地より製造した生麺を麺の水分含量が70%以下となるよう茹で上げまたは蒸し上げる方法(特許文献2)等が報告されている。さらに、4〜7糖類が糖組成の50%以上をしめるオリゴ糖をパスタサラダ用に用いられる食材であるマヨネーズ等と組み合わせて用いることで、高い水分含量のマヨネーズ様食品中の水分がパスタ類に吸水されにくくなり、その結果、数日保存後においてもサラダ全体の美観と食感が良好に維持されているパスタサラダが報告されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−31054号公報
【特許文献2】特開昭63−79569号公報
【特許文献3】特開2002−10745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2の方法はその効果については見るべきものがあるが実用的には茹で上げ時の水分含量調整の複雑さやその他の操作の煩雑さがあり、より簡便で効果的な方法が求められていた。また特許文献3の方法はパスタサラダ全体の外観と食感の維持が発明の主目的であり、流通販売時にパスタの周りに存在する高水分のマヨネーズ様食品中の水分がパスタへ移行することを低減したことで、サラダ全体の食感が維持されたものである。すなわち、この方法は、高水分の食品が麺の周りにはない状態で供給される水分移行の問題がもとより無い本願に係る茹で麺類等について記載したものではなく、さらに、茹で麺自身の変化に起因する流通過程の時間経過による麺の硬さの増加や麺の弾力性の低下等の麺の食感の低下に繋がる変化を防止する方法について記載したものではなかった。
【0006】
本発明は茹でた後の茹で麺の流通過程における茹で麺自身に起因する麺の食感の低下防止を可能とする簡便で効果的な方法を提供することを課題とする。また、その方法で得られる食感の低下に繋がる変化が防止された麺類とその方法に用いられる麺類の改質剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、うどん、そば、中華麺等の茹で麺に関し、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、生麺類を茹でた後に水切りした茹で麺に対しマルトオリゴ糖と水溶性多糖類を含有する絡め液を麺に接触させることで、流通条件下で数日保存後も食感が良好な麺となっていることを見出し、さらにマルトオリゴ糖の種類、濃度、水溶性多糖類の種類、濃度、絡め液の使用態様等を検討した結果、本発明の茹で後に流通過程を経た後も食感の良好な麺類の製造方法、麺類、そのような麺類を得るための麺類の改質剤を完成するに至った。
【0008】
本発明は、容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れることを特徴とする茹で麺類の製造方法を要旨とする。
【0009】
茹で麺がうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でたものであり、本発明は、容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、うどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れることを特徴とする茹で麺類の製造方法を要旨とする。
【0010】
マルトオリゴ糖がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるものであり、本発明は、容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、生麺類、より具体的にはうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるマルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れることを特徴とする茹で麺類の製造方法を要旨とする。
【0011】
水溶性多糖類が、大豆多糖類であり、本発明は、容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、生麺類、より具体的にはうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺類に対して、マルトオリゴ糖、好ましくはマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるマルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と、大豆多糖類である水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れることを特徴とする茹で麺類の製造方法を要旨とする。
【0012】
糖質が茹で麺類に対して0.1重量%以上2重量%以下となるように、糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液で接触処理を行ったものであり、本発明は、容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、生麺類、より具体的にはうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトオリゴ糖、好ましくはマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるマルトオリゴ糖と、水溶性多糖類、好ましくは大豆多糖類である水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れること、糖質が茹で麺類に対して0.1重量%以上2重量%以下となるように、糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液で接触処理を行ったものであることを特徴とする茹で麺類の製造方法を要旨とする。
【0013】
また、本発明は、マルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液であって、マルトオリゴ糖がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなり、該糖質の含有量が3重量%以上17重量%以下である麺類の改質剤を要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の絡め液による処理で製造された茹で麺は、0〜20℃にて3日または4日間保存後においても、本発明の絡め液で処理していないものに比べて弾力および硬さの面において良好であり、茹で直後の食感を維持する。
【0015】
本発明により、茹で後の時間経過に伴う麺の食感の経時的な低下を防止した茹で麺類または調理麺を提供することができる。流通過程による時間経過により、硬さが増し、弾力性が失われるなどの食感の低下がないうどん、そば、中華麺などの茹で麺類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明が対象とする麺は容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類であり、うどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる茹で麺が例示される。うどん、そば、中華麺が好ましいものとして例示される。本発明の製造方法の目的物は、うどん、そば、中華麺、そうめん、きしめん、スパゲッティなどの茹で麺そのものであって、調理後、室温、冷蔵(0〜10℃)で24時間以上経過しても良好な食感が維持される茹で麺である。
【0017】
本発明の絡め液は、糖質と水溶性多糖類を含有すること特徴とする。
【0018】
本発明の絡め液に用いる糖質はマルトオリゴ糖を含む糖質である。マルトオリゴ糖を還元して得られる還元糖でも同様の効果が得られる。マルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質としては、マルトペンタオース、その還元糖、マルトヘキサオースおよび/またはその還元糖を含む糖質が好ましいものとして例示される。マルトオリゴ糖および/またはその還元糖以外に、ショ糖や、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトヘプタオースなどのオリゴ糖、イソマルトース、イソマルトトリオース、イソマルトテトラオース、イソマルトペンタオース、イソマルトヘキサオース、イソマルトペンタオースなどの分岐オリゴ糖、さらに高分子の澱粉分解物が含まれていてもよい。
本発明の絡め液における糖質の含有量は、3重量%以上20重量%以下、好ましくは17重量%以下である。20重量%を超えると、甘みが付与されるので注意が必要であり、17重量%以下が好ましい。本発明においては、糖質がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなる糖質であって、その糖質を3重量%以上17重量%以下含有する絡め液が好ましいものとして例示される。
【0019】
水溶性多糖類としては、特に限定されないが、グアガム、ローカストビーンズ、タマリンドガム、タラガム、キサンタンガム等の加水分解物や、プルラン、ヘミセルロースを挙げることができる。好ましいものとして大豆由来の水溶性多糖類を挙げることができる。これらの水溶性多糖類は単品でもよし、複数組み合わせて使用することができる。水溶性多糖類の添加量は、その種類により異なり、後述するように粘度を指標にして容易に選択することができる。
【0020】
すなわち、本発明の麺類の改質剤としての絡め液の好ましい態様においては、マルトオリゴ糖および/またはその還元糖からなる糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液であって、マルトオリゴ糖がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなり、該糖質の含有量が3重量%以上17重量%以下である。例えば、下記の実施例において、糖質を10%、大豆由来の水溶性多糖類6%含有するよう調整した絡め液、マルトペンタオースまたはマルトヘキサオース10%に、水溶性多糖類としてプルラン6%またはグアガム分解物14%を含有する絡め液などを調製し用いている。
【0021】
糖質と水溶性多糖類以外の副素材として、調味料、pH調整剤、抗菌剤等を適宜添加することができる。
【0022】
絡め液は、上記の糖質と水溶性多糖類と水を十分に混合して製造する。なお、絡め液を製造する前に、上記の糖質と水溶性多糖類と必要に応じて副素材を粉体で混合しておくことができる。また、絡め液は高濃度液として製造しておいて、使用する前に希釈使用することができる。具体的には、2〜3倍濃縮液が例示される。糖質が茹で麺類に対して0.1重量%以上2重量%以下となるように、絡め液と接触させる。
【0023】
以下に、糖質としてマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースを水溶性多糖類とともに用いる絡め液を例にとって説明する。マルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースは、茹で麺に対して0.1重量%以上となるように絡め液と接触させる。それは、0.1重量%より少ないと麺の良好な弾性、硬さの保持効果が小さいためである。2重量%より多いと喫食時に甘味を感じるようになるため、2重量%以下となるように絡め液と接触させるのが好ましい。
すなわち、本発明の麺類の製造方法は生麺類を茹でた後に水切りした茹で麺類に対して、マルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなる糖質が0.1重量%以上2重量%以下となるようにマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなる糖質と、水溶性多糖類を含有する絡め液を接触させることを特徴とする。したがって、本発明の製造方法で生産された茹で麺類は、流通販売時に、茹で麺類に対しマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるマルトオリゴ糖を0.1重量%以上2重量%以下含有することを特徴とする。
【0024】
本発明の絡め液との接触処理は、常法により製造した麺類を加熱調理した茹で麺類を、必要に応じ水洗し水切りした後に行なう。方法は、特に限定されないが、本発明の絡め液を添加して、混合する方法と、本発明の絡め液に再度浸積して再度水切りする方法とを例示することができる。より具体的には、接触処理は、麺重量の1重量%以上10重量%未満、好ましくは、2〜5重量%の絡め液を茹で麺類に絡ませる方法、または、茹で麺類を水切り後に絡め液に浸漬しその後に再度水切りする方法のいずれかである。
【0025】
本発明の絡め液は茹で麺の表面と接触させるときの温度は工程で利用しやすい温度であればよく、通常0〜20℃である。接触時の温度範囲での粘度が5〜50mPa・sとなるように調整した絡め液を使用するのがよい。粘度は、B型粘度計(東京計器製)、ローターNo.1で測定することができる。絡め液の粘度が重要なのは糖質が茹で麺の表面に保持される必要があるからである。50mPa・sを越えると茹で麺と絡めるのが難しい。5mPa・s以下の場合は、麺類の表面に十分保持されない。水溶性多糖類の添加量としては、絡め液の粘度が上述の範囲となるように調整すればよい。
すなわち、麺に絡める方法を用いる場合、茹で麺に対して1〜10重量%、好ましくは、2〜5重量%の絡め液を添加して絡めるが、そのとき粘度は15〜35mPa・sが最も好適である。浸積する方法を用いる場合、水溶液の粘度は10〜20mPa・sが最も好適である。浸積前に十分に水切りして接触させるのが好ましい。
【0026】
また、本発明は、3重量%以上17重量%以下のマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなる糖質と、水溶性多糖類を含有する絡め液である麺類の改質剤を包含する。より具体的には、3重量%以上17重量%以下のマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなる糖質と水溶性多糖類を含有し、粘度が10℃下で10mPa・s〜35mPa・sである絡め液として使用する麺類の改質剤である。
【0027】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
試験例1〜4の試験で使用した糖質は以下の製品を用いた。
マルトオリゴ糖としては、マルトース(製品コード「130−00615」、和光純薬株式会社製)、マルトトリオース(製品コード「131−06544」、和光純薬株式会社製)、マルトテトラオース(製品コード「400519」、生化学工業株式会社製)、マルトペンタオース(製品コード「400517」、生化学工業株式会社製)、マルトヘキサオース(製品コード「400516」、生化学工業株式会社製)、マルトヘプタオース(製品コード「400515」、生化学工業株式会社製)である。イソマルトオリゴ糖としては、イソマルトース(製品コード「632−04081」、和光純薬株式会社製)、イソマルトトリオース(製品コード「400473」、生化学工業株式会社製)、パノース(製品コード「400554」、生化学工業株式会社製)、イソマルトテトラオース(製品コード「400475」、生化学工業株式会社製)、イソマルトペンタオース(製品コード「400477」、生化学工業株式会社製)、イソマルトヘキサオース(製品コード「400481」、生化学工業株式会社製)、イソマルトヘプタオース(製品コード「400483」、生化学工業株式会社製)である。デキストリンとしては、パノックスA、M−SPD、L−SPD(以上昭和産業株式会社製)、その他糖質としてテトラップ、テトラップH、トレハロース(以上株式会社林原生物化学研究所製)である。
【0029】
[試験例1]
(糖質の評価)
(a)絡め液の調製 (特に記載ない場合の%は重量%である)
上記で得られた糖質を10%含有するよう調整した水溶液を絡め液として調製した(比較例)。また、これら糖質を10%、大豆由来の水溶性多糖類としてソヤファイブS(不二製油株式会社製)を6%含有するよう調整した絡め液(本発明の絡め液)を調製して以下の試験に供した。
(b)麺類の製法
そば粉400g、強力小麦粉400g、タピオカ澱粉200g、粉末グルテン30g、乾燥卵白10g、食塩10g、水400gを減圧下(△0.09MPa)でミキシングし、通常のロール製麺によりそばを調製した(角22番:麺厚1.2mm)。これを、沸騰水で2分間茹でたのち、冷水で水洗した。水を切った後、容器に移し、茹で麺の重量100gに対して、3gの絡め液(糖質0.3g、水溶性多糖類0.3g、または、比較例;糖質0.3g、水溶性多糖類無添加)を添加し品温が約10℃の下で混合した。次いで、100mlのフタ付容器に小分けして6℃で3日間保管した後、専門パネラー5名による官能検査を行った。
【0030】
得られた官能検査結果につき保存後の麺の食感を以下のように評価した。
麺の弾力、硬さの2つの項目において本発明法で製造した麺と比較例に示した方法にて製造した麺とを比較したときの食感評価を、
弾力については、
弾力が非常に良好である。:◎
弾力が良好である。:○
弾力が普通である。:△
弾力が悪い。:×
硬さについては、
良好な硬さである:◎
やや良好な硬さである:○
普通の硬さである:△
不良な硬さである:×
のそれぞれ4段階で評価した。
得られた結果を表1に記載した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果から、水溶性多糖類無添加区では、弾性、硬さともに悪いことがわかる。添加区ではイソマルトオリゴ糖、デキストリンでは十分な効果がないが、マルトオリゴ糖では良好な結果であること、さらに、マルトペンタオース、マルトヘキサオースについては、弾性、硬さともに高い効果があり非常に良好なことがわかる。
【0033】
[試験例2]
(水溶性多糖類の評価)
マルトペンタオース10%に、水溶性多糖類としてプルラン(株式会社林原生物化学研究所製)を6%含有する絡め液、および、グアガム分解物であるサンファイバー(太陽化学株式会社製)を14%含有する絡め液を調製した。同様にマルトヘキサオースについても同様に水溶性多糖類を6%含有する絡め液を調製した。加えて、試験例1(a)で調製したマルトペンタオースまたはマルトヘキサオースを含有するソヤファイブSを添加した絡め液について、B型粘度計(東京計器製)でローターNo.1を用いて10℃下での粘度を測定した。また、試験例1と同様の官能試験を実施した。結果を表2に記す。
【0034】
【表2】

【0035】
何れの水溶性多糖を使用しても良好な結果であることがわかる。
【0036】
[試験例3]
(粘度の影響)
大豆由来の水溶性多糖類としてソヤファイブS(不二製油株式会社製)12%の水溶液を4段階(1〜10倍希釈)に希釈した液に、マルトペンタオース水溶液を終濃度10重量%となるように適宜加えて絡め液を調製した。各々の絡め液について試験例2と同様に評価を行い、加えて、保存期間4日のものについて官能検査をおこなった(表3)。
【0037】
【表3】

【0038】
[試験例4]
(糖質濃度の影響)
マルトペンタオースまたはマルトヘキサオースを1.7%、3.3%、17%、33%と、大豆由来の水溶性多糖類としてソヤファイブS(不二製油株式会社製)を6%含有する絡め液を調製して試験例2と同様に評価した。結果は表4に示した。ここで、マルトペンタオース、マルトヘキサオースの添加量は、対茹で麺の重量%で示した。この結果から、これらの糖質の対茹で麺に対する添加量は0.1重量%以上であればよいことが分かる。
【0039】
【表4】

【実施例2】
【0040】
コーンスターチ30重量%の懸濁液をpH6とした後、αアミラーゼを添加して105℃に10分間加熱処理して得た澱粉液化液を50℃に冷却し、さらにαアミラーゼと枝切り酵素を添加して40時間保持して、酸を添加し反応を終了させ、得られた糖化液について活性炭およびイオン交換樹脂による通常の脱色・精製を行い、所定濃度になるまで濃縮した。次にこれを原液にNa型イオン交換樹脂を用いて、マルトペンタオースとマルトヘキサオースを固形分当たり60%(34%+26%)含有する糖質を調製した。次いで調製した糖質を20%、ソヤファイブS(不二製油株式会社製)を6%含有する絡め液1を調製した。粘度は21mPa・s(12℃)であった。
中力小麦粉(「特初穂」昭和産業株式会社製)800g、タピオカ澱粉200g、食塩30g、水400gの配合で減圧下(△0.09MPa)でミキシングし、通常のロール製麺により生うどんを製造した(切刃角10番:麺厚2.0mm)。これを沸騰水で8分間茹でた後、およそ12℃の水で十分水洗し、水切りをした。次いで、茹でうどん100gに対して、絡め液1を3gを混合し、6℃で3日間、5日間冷蔵した後、実施例1の試験例1と同様に官能評価を実施した。その結果、3日目では茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに非常に良好であり、5日目においても茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに良好であった。この結果から、マルトペンタオース、マルトヘキサオース以外のオリゴ糖を含む糖質でも効果が発揮されることが分かった。
【実施例3】
【0041】
マルトペンタオースを16%、マルトヘキサオース14%を含有するオリゴ糖液(マルデックPH400:昭和産業株式会社製)を25%と、ソヤファイブS(不二製油株式会社製)を6%含有する絡め液2を調製した。粘度は26mPa・s(5℃)であった。
中力小麦粉(「特初穂」昭和産業株式会社製)800g、タピオカ澱粉200g、食塩30g、水400gの配合で減圧下(△0.09MPa)でミキシングし、通常のロール製麺により生うどんを製造した(切刃角10番:麺厚2.0mm)。これを沸騰水で8分間茹でた後、およそ12℃の水で十分水洗し、水切りをした。次いで、茹でうどん100gに対して、3gの絡め液2を混合し、6℃で3日間、5日間冷蔵した後、実施例1の試験例1と同様に官能評価を実施した。その結果、3日目では茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに非常に良好であり、5日目においても茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに良好であった。実施例2、3の結果から、マルトペンタオース、マルトヘキサオース以外のオリゴ糖をさらに含む糖質でも効果が発揮されることが分かった。
【実施例4】
【0042】
マルデックPH400を50重量%に調整して、この溶液30重量部に対して、粉末スポンジニッケルを1重量部添加して、温度:140℃,圧力:9MPaで、処理を実施した。ついで、活性炭およびイオン交換樹脂による通常の脱色・精製を行い、所定濃度になるまで濃縮した。次にこれを原液にNa型イオン交換樹脂を用いて固形分75%の還元糖質を得た。得られた還元糖質を実施例1の糖質に置き換えて得られた還元糖質25%と、ソヤファイバーS(不二製油株式会社製)を6%含有する絡め液2を調製した。絡め液を調製した。粘度は27mPa・s(5℃)であった。
中力小麦粉(「特初穂」昭和産業株式会社製)800g、タピオカ澱粉200g、食塩30g、水400gの配合で減圧下(△0.09MPa)でミキシングし、通常のロール製麺により生うどんを製造した(切刃角10番:麺厚2.0mm)。これを沸騰水で8分間茹でた後、およそ12℃の水で十分水洗し、水切りをした。次いで、生うどん100gに対して、3gの絡め液2を混合し、6℃で3日間、5日間冷蔵した後、実施例1の試験例1と同様に官能評価を実施した。その結果、実施例2と同様に3日目では茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに非常に良好であり、5日目においても茹で麺の弾性、硬さ、総合評価ともに良好であった。
【実施例5】
【0043】
マルデックPH400:昭和産業株式会社製)を20重量%と、ソヤファイブS(不二製油株式会社製を0.4重量%、1.5重量%、5重量%、8重量%含有する絡め液3〜6を調製した。
実施例3と同様に製造後水切りした茹でうどんを、18℃のそれぞれの絡め液に20秒間浸積した後水を切った。容器に移し蓋をして3日間冷蔵した後、実施例1の試験例2と同様に官能評価を実施した。その結果を表5に示した。
【0044】
【表5】

【0045】
この結果から、麺を浸積することでも、弾性、硬さ、総合評価ともに長期間保存しても非常に良好な茹で麺が得られることが分かった。絡め液の粘度が低いと茹で麺への付着量が少なく硬さの点で効果が弱い傾向があり、絡め液の粘度が高すぎると茹で麺への付着量が多くなり、水分が移行して麺が柔らかくなるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
流通過程による時間経過によっても、茹で後すぐの適度の硬さ、弾力、歯応えや滑らかさが維持されたうどん、そば、中華麺などの茹で麺を提供することができ、茹で麺の市場を拡大させる可能性が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に入れて商品として流通させる形態の茹で麺類の製造において、生麺類を茹でて水切りした後に、該茹で麺に対して、マルトオリゴ糖および/またはその還元糖を含む糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液を用いて接触処理を行ったものを容器に入れることを特徴とする茹で麺類の製造方法。
【請求項2】
茹で麺がうどん、そば、中華麺、そうめん、きしめんおよびスパゲッティからなる群から選ばれる麺の生麺類を茹でたものである請求項1に記載の茹で麺類の製造方法。
【請求項3】
マルトオリゴ糖がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなるものである請求項1または2に記載の麺類の製造方法。
【請求項4】
水溶性多糖類が、大豆多糖類である請求項1、2または3に記載の麺類の製造方法
【請求項5】
糖質が茹で麺類に対して0.1重量%以上2重量%以下となるように、糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液で接触処理を行ったものである請求項1ないし4のいずれかに記載の麺類の製造方法。
【請求項6】
マルトオリゴ糖および/またはその還元糖からなる糖質と水溶性多糖類を含有する絡め液であって、マルトオリゴ糖がマルトペンタオースおよび/またはマルトヘキサオースからなり、該糖質の含有量が3重量%以上17重量%以下である麺類の改質剤。