説明

麺類の製造方法

【課題】添加物を添加することなく、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ食感及び保存性も良好な麺類が得られる麺類の製造方法を提供すること。
【解決手段】調理済みの麺類を、微細水滴及び湿熱水蒸気を含むアクアガスと接触させて加熱処理し、無菌下に密封包装する。好ましくは、調理済みの麺類を、アクアガスと接触させる前に、酸処理してpHを3.0〜5.5に調整する。また、上記アクアガスとして90〜180℃のアクアガスを用い、該アクアガスによる麺類の加熱処理時間を10〜60分間とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ食感及び保存性も良好な麺類が得られる麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジ等により再加熱調理して喫食される「容器詰めされた調理済みの麺類」は、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ麺類の食感が製造時と同様な良好な食感を有することが要望されている。調理麺のほぐれ性や食感を改善するために種々の方法、例えば麺質改良剤として各種の添加剤を添加することが提案されている。例えば、特許文献1には、麺質改良剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを麺類に添加することが提案されている。しかし、今般の健康や食の安全への関心などから、食品には添加物をなるべく添加しないことが望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−215543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、添加物を添加することなく、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ食感及び保存性も良好な麺類が得られる麺類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討した結果、麺類、好ましくは酸処理した麺類を特定のガスで加熱処理することにより、上記目的が達成されることを知見した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、調理済みの麺類を、微細水滴及び湿熱水蒸気を含むアクアガスと接触させて加熱処理し、無菌下に密封包装することを特徴とする麺類の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、添加物を添加することなく、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ食感及び保存性も良好な麺類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明が対象とする麺類は、電子レンジ等で加熱する、炒める等の再加熱調理をして喫食するように加工された、常温乃至冷蔵で流通される麺類である。麺類の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパゲッティ、マカロニ、うどん、そば、中華麺等が挙げられるが、本発明はスパゲッティに適用した場合に特に好ましい。
【0009】
本発明の麺類の製造方法を実施するには、好ましくは、調理済みの麺類を、アクアガスと接触させる前に、まず、酸処理する。
本発明で用いられる調理済み麺類は、茹でる等の通常の加熱調理によって喫食しうるように調理されたものであり、従来の容器詰め麺類の製造に用いられる調理済み麺類と同様のものである。
調理済みの麺類の酸処理は、麺類のpHが3.0〜5.5、好ましくは4.1〜4.7となるように行う。該酸処理の方法としては、特に制限されるものではなく、酸液に麺類を浸漬する方法、酸液を麺類に噴霧又は塗布する方法等、従来行われている麺類の酸処理方法を適用することができる。
【0010】
酸処理に用いられる酸としては、有機酸が好ましく、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等、食品に使用できる酸を適宜選択して用いることができる。酸液の酸濃度や処理時間等の酸処理の条件は、使用する酸の種類及びpH、酸処理前の麺類のpH、酸処理後の麺類のpHの設定値等により適宜設定することができる。
【0011】
次いで、酸処理した調理済みの麺類を、微細水滴及び湿熱水蒸気を含むアクアガスと接触させて加熱処理する。
このアクアガスは、例えば、特開2004−358236号公報の段落〔0019〕〜〔0022〕に記載されている加熱装置により発生させることができる。この加熱装置は、少なくとも、被加熱材料を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させて所定の方向に移送する水蒸気発生手段、を構成要素として含む。この加熱装置において、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させることにより、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる。そして、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させることにより、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下の組成を有し、90〜180℃の温度領域に保持されたガス成分で加熱室内部の空気を置換する。そして、この加熱装置は、該微細水滴と湿熱水蒸気で加熱室内の被加熱材料に上記温度領域で少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理するようにしたことを特徴とする加熱装置である。この加熱装置は、株式会社タイヨー製作所から商品名「アクアクッカー 加熱媒体制御型汎用的加熱装置」として市販されている。
【0012】
本発明におけるアクアガスによる加熱処理は、上記の市販の加熱装置を用いて行うことができる。該加熱装置を用いて麺類を加熱処理するには、該加熱装置の加熱室内に、調理済みの麺類、好ましくは上記の酸処理した調理済みの麺類を入れ、水蒸気発生手段で加熱した熱水及び/又は水蒸気を加熱室内に連続的に噴射して、微細水滴及び湿熱水蒸気を含むアクアガスを発生させ、該アクアガスと麺類とを接触させればよい。
上記アクアガスとしては、90〜180℃のアクアガスが好ましく、95〜150℃のアクアガスがより好ましい。アクアガスの温度が高すぎると、コゲが発生しやすく、またアクアガスの温度が低すぎると、保存性低下につながる。
【0013】
また、加熱室内に噴射する加熱した熱水及び/又は水蒸気の量は、加熱室の容積が例えば150〜200リットルの場合、好ましくは2〜4リットル/時間であり、より好ましくは2.5〜3.5リットル/時間である。アクアガスの発生量が少な過ぎると、コゲが発生しやすく、またアクアガスの発生量が多すぎると、アクアガス中の水分が増え過ぎて、食感が低下する傾向にある。
【0014】
アクアガスによる加熱処理時間は、好ましくは10〜60分間、より好ましくは10〜30分間である。該加熱処理時間が短すぎると、保存性低下につながり、また該加熱処理時間が長すぎると、表面が乾燥し過ぎたり、コゲが発生しやすくなる。
【0015】
アクアガスで加熱処理された麺類は、常法により無菌下に密封包装して製品とされる。このようにして製造された本発明に係る麺類は、喫食時の麺のほぐれが良好で且つ保存性も良好であり、しかも加熱処理による食感の低下がないばかりか、寧ろ食感が向上している。
【実施例】
【0016】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって何ら限定されるものではない。
【0017】
〔実施例1〜7〕
乾スパゲティを茹でて、歩留り220%の茹でスパゲティを得た。得られた茹でスパゲティを発酵乳酸0.8質量%、グルコン酸0.8質量%、食塩0.5質量%及び糖0.5質量%を含有する混合水溶液に1分間浸漬して酸処理し、pH4.2のスパゲティを得た。次いで該スパゲティを、株式会社タイヨー製作所製の加熱装置(商品名「アクアクッカー 加熱媒体制御型汎用的加熱装置」)を用いて、以下の表1に示す条件でそれぞれアクアガスによる加熱処理を施し、電子レンジ対応スパゲティをそれぞれ得た。
【0018】
【表1】

【0019】
〔比較例1〜6〕
実施例1で得られたpH4.2のスパゲティを、アクアガスによる加熱処理に代えて、以下の表2に示す条件でそれぞれ飽和水蒸気による加熱処理を施し、電子レンジ対応スパゲティをそれぞれ得た。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた電子レンジ対応スパゲティを室温で7日間保存した後、電子レンジを用いて調理し、微生物抑制効果を下記に示す評価基準に従って評価した。その評価結果を表3に示す。
また、これらの電子レンジ調理後のスパゲティを、喫食可能なものについて、10名のパネラーに喫食させ、その際の麺のほぐれ、及び食感(硬さ及び弾力)を下記に示す評価基準に従って評点させた。その評価結果(10名のパネラーの平均点)を表3に示す。
【0022】
(微生物抑制効果の評価基準)
○ :かびの存在がまったく見られない。
× :かびの存在が確認される。
【0023】
(麺のほぐれの評価基準)
5点:とても良くほぐれる。
4点:良くほぐれる。
3点:ほぐれる。
2点:ややほぐれにくい。
1点:ほぐれない。
【0024】
(食感(硬さ)の評価基準)
5点:硬さが茹でたての麺に近く、優れている。
4点:硬さが良好である。
3点:麺特有の硬さが感じられる。
2点:麺特有の硬さに劣る。
1点:麺特有の硬さに極めて劣る。
【0025】
(食感(弾力)の評価基準)
5点:弾力が茹でたての麺に近く、優れている。
4点:弾力が良好である。
3点:麺特有の弾力が感じられる。
2点:麺特有の弾力に劣る。
1点:麺特有の弾力に極めて劣る。
【0026】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済みの麺類を、微細水滴及び湿熱水蒸気を含むアクアガスと接触させて加熱処理し、無菌下に密封包装することを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項2】
調理済みの麺類を、アクアガスと接触させる前に、酸処理してpHを3.0〜5.5に調整する請求項1記載の麺類の製造方法。
【請求項3】
アクアガスとして90〜180℃のアクアガスを用い、該アクアガスによる麺類の加熱処理時間が10〜60分間である請求項1又は2記載の麺類の製造方法。