説明

黒酢粉末の製造法

【課題】分散性と保存安定性に優れ、かつ黒酢の濃度を高めることができる黒酢粉末の製造法を提供する。
【解決手段】市販の黒酢を真空濃縮し、濃縮黒酢を準備する。濃縮は、真空濃縮で行うことができる。濃縮した黒酢は固形分濃度が65乃至85質量%である。市販の米粉を焙煎する。あるいは焙煎した米を粉砕して米粉にする。準備した濃縮黒酢と焙煎した米粉とを調合する。調合は黒酢に対し米粉を50乃至95質量%混合する。調合した黒酢米粉混合物を熱風乾燥後、粉砕する。粉砕は、好ましくは80メッシュパスの粉状まで行う。粉砕後、包装し、黒酢粉末製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒酢粉末の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒酢を用いた粉末状食品が知られている。黒酢粉末は、分散性と保存安定性に優れたものが求められている。従来、蒸発残分が10%以上になるよう濃縮された黒酢に米粉(膨化されているものを除く)を添加した後、凍結乾燥処理を行う黒酢粉末の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3720028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の黒酢粉末の製造方法では、黒酢の固形分換算量に対して1.5倍量以上の米粉を添加する必要がある。このため、黒酢の濃度が低いという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、分散性と保存安定性に優れ、かつ黒酢の濃度を高めることができる黒酢粉末の製造法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る黒酢粉末の製造法は、濃縮した黒酢と焙煎した米粉とを混合後、乾燥することを、特徴とする。
黒酢と混合する米粉を焙煎しておくことにより、黒酢がペースト状とならずに米粉によく分散し、混合される。製造した黒酢粉末は、保存安定性に優れる。
【0007】
前記黒酢は固形分濃度が65乃至85質量%であり、前記黒酢に対し前記米粉を50乃至95質量%混合することが好ましい。黒酢の固形分濃度を高めることにより、製品の黒酢の濃度を高めることができる。また、焙煎した米粉を用いることにより、米粉に対する黒酢濃度を高めることができる。
【0008】
黒酢は、米を1年以上かけて発酵、熟成させた酢である。黒酢は、市販のものを用いることができる。黒酢の濃縮には、加熱濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、膜濃縮、その他公知の濃縮方法を単独であるいは組み合わせて用いることができる。米粉は、米を製粉したものであり、上新粉、もち粉、道明寺粉、落雁粉、寒梅粉、白玉粉、求肥粉、乳児粉、その他市販の米粉を用いることができる。本発明において、米糠も米粉の範疇に含まれる。米粉は、白米粉、玄米粉、赤米粉、黒米粉、またはそれらの2以上の混合物であってもよい。赤米粉または黒米粉を用いることにより、黒酢と混合したとき色が濃く黒酢粉末らしい色の製品とすることができる。
【0009】
焙煎した米粉は、米を焙煎してから粉状にしたものであっても、米粉を焙煎したものであってもよいが、米を焙煎してから粉砕して粉状にしたものがより好ましい。焙煎する場合の米は、玄米でも精米でもよいが、玄米がより好ましい。米粉を焙煎する場合、米粉を前乾燥させてから焙煎することが好ましい。焙煎は、例えば、撹拌機付き直火釜で行うことができる。焙煎は、米または米粉に対し100乃至150℃、特に120乃至130℃の温度で行うことが好ましい。120乃至130℃で焙煎した場合、120℃より低い温度で焙煎する場合に比べて、米または米粉のデンプンをアルファ化しやすく、黒酢を分散させやすくなる。焙煎は、米または米粉がきつね色になる程度に行うことが好ましい。その場合、黒酢と混合したとき色が濃く黒酢粉末らしい色の製品とすることができる。混合後の乾燥は、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、赤外線乾燥、凍結乾燥、その他公知の乾燥方法を単独であるいは組み合わせて用いることができる。乾燥後の黒酢米粉混合物は、粉砕することが好ましい。
【0010】
本発明において製造した黒酢粉末には、コーンスターチ・じゃがいも粉・きな粉・小麦粉・その他の食用粉類、糖類粉末、コラーゲン粉末、酵母粉末、その他の粉状食品を添加してもよい。製造した黒酢粉末は、そのまま食品として利用されても、他の飲食品に添加して利用されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分散性と保存安定性に優れ、かつ黒酢の濃度を高めることが可能な黒酢粉末の製造法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
まず、黒酢を準備する。黒酢は、原料米を一次発酵、二次発酵、ろ過、調合、ろ過、加熱殺菌、容器充填の順で処理し製造することができる。こうして製造された市販の黒酢を真空濃縮し、濃縮黒酢を準備する。濃縮は、真空濃縮で行うことができる。また、焙煎した米粉を準備する。米粉には、玄米を製粉したものを用いることができる。準備した玄米その他の米を焙煎後、粉砕して粉状にする。あるいは、準備した市販の米粉を焙煎する。焙煎は、120乃至130℃の温度で行う。準備した濃縮黒酢と焙煎した米粉とを調合する。調合した黒酢米粉混合物を熱風乾燥後、粉砕する。粉砕は、好ましくは80メッシュパスの粉状まで行う。粉砕後、包装し、黒酢粉末製品とする。
【実施例1】
【0013】
市販の黒酢をBrix75%まで真空濃縮した。市販の玄米粉を一昼夜乾燥させ、撹拌機付き直火釜により5乃至10分間、120乃至130℃できつね色になる程度に焙煎した。玄米粉は、通常の米を粉砕したものと、赤米を粉砕したものとを準備した。焙煎した玄米粉を放冷し、袋詰めした。濃縮した黒酢60kgと、焙煎した玄米粉45kgとを混合し、2日間熱風乾燥させた。乾燥後、80メッシュパスの粉状に粉砕し、アルミ袋に密封して製品とした。製造した黒酢粉末は、玄米粉によく分散し、保存安定性に優れたものであった。
【実施例2】
【0014】
市販の黒酢をBrix75%まで真空濃縮した。市販の玄米を撹拌機付き直火釜により5乃至10分間、120乃至130℃できつね色になる程度に焙煎した。焙煎した玄米を粉砕して米粉を製造した。濃縮した黒酢8.75kgと米粉6.50kgとを混合し、2日間熱風乾燥させた。乾燥後、80メッシュパスの粉状に粉砕し、アルミ袋に密封して製品とした。製造した黒酢粉末は、米粉によく分散し、保存安定性に優れたものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮した黒酢と焙煎した米粉とを混合後、乾燥することを、特徴とする黒酢粉末の製造法。
【請求項2】
前記黒酢は固形分濃度が65乃至85質量%であり、前記黒酢に対し前記米粉を50乃至95質量%混合することを、特徴とする請求項1記載の黒酢粉末の製造法。



【公開番号】特開2012−44907(P2012−44907A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188830(P2010−188830)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(399060137)仙台味噌醤油株式会社 (2)
【Fターム(参考)】