説明

鼻口腔排泄物の検体採取用具

【課題】インフルエンザウィルス判定キット等とともに併用されて、鼻汁、喀痰、唾液等の鼻口腔排泄物を、その後の検査等に供するために採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具に関し、菌やウィルスの外部への飛散、ひいては医療従事者等への二次感染を生じさせるおそれがなく、またティッシュペーパー等を別途準備する必要がなく、鼻汁等の鼻口腔排泄物の一次採取を行った後の余剰の鼻口腔排泄物を簡易且つ安全に拭き取ることのできる、検体採取用具を提供することを課題とする。
【解決手段】鼻口腔排泄物を検体として採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具であって、採取用具本体の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該採取用具本体の内面側から外面側に透過させない程度の非透過性のある非透過性素材で前記採取用具本体の内面側が構成され、且つ採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度に吸収性のある吸収性素材からなる拭取部が、前記採取用具本体の内面側の一部に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻口腔排泄物の検体採取用具、さらに詳しくは、たとえばインフルエンザウィルスの迅速診断薬として用いられるインフルエンザウィルス判定キット等とともに併用されて、鼻汁、喀痰、唾液等の鼻口腔排泄物を、その後の検査等に供するために採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウィルスの迅速診断薬として、現在多くのインフルエンザウィルス判定キットが市販されているが、その検査を行う際の検体採取の方法として、たとえば下記特許文献1に示すように、綿棒による採取が一般に行われている。しかし、この綿棒による採取方法では、痛みをともなう等、使用者に不快感を与えることとなっていた。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、鼻かみ用紙のような検体採取用具が市販されている。この鼻かみ用紙のような検体採取用具は、鼻かみ用紙本体の一面側に撥水加工がなされた構成からなるものである。
【0004】
そして、このような検体採取用具は、前記撥水加工がなされた面を内面側に配置した状態で、その内面側で鼻をかむようにして検体である鼻汁を付着させることによって検体の一次採取を行い、次に綿棒等の別の検体採取用具によって、上記鼻かみ用紙からなる検体採取用具の内面側に一次採取された鼻汁を、その内面側から剥離させて二次採取を行い、その後に検査測定用具による検査に供されることとなる。たとえば特許文献1に開示された簡易メンブレインアッセイ方法の技術であれば、捕捉試薬を結合させたメンブレインを備えたアッセイ装置等が検査測定用具に相当する。
【0005】
しかし、上記のような検体採取用具の内面側の撥水加工は、一般には鼻かみ用紙本体である紙系の素材に合成樹脂をラミネートする等によってなされるものであり、たとえばティッシュペーパー等によって鼻をかむ場合のように吸収性素材が鼻腔に接触するのではなく、撥水加工された面が鼻腔に接触することとなるので、使用者にはどうしても不快感を与えることとなる。そればかりか、撥水加工面では鼻汁を十分に吸収することができないため、一次採取として採取されなかった余剰の鼻汁がどうしても鼻腔に残存することとなり、これも使用者に不快感を与える要因となる。
【0006】
このような不快感を解消するには、紙系の素材からなる鼻かみ用紙本体の外面側を鼻腔に接触させて余剰の鼻汁を拭き取ることが最も簡易且つ迅速な方法であるが、余剰の鼻汁が鼻かみ用紙本体の外面側に付着することになるので、余剰の鼻汁中に含まれている菌やウィルス等が外部に飛散することとなる。菌やウィルス等が外部に飛散すると、医療従事者に二次感染を生じさせることとなるおそれがある。
【0007】
鼻かみ用紙の内面側に撥水加工がなされているのは、そもそも用紙の内面側で採取された鼻汁中に含有されている菌やウィルス等が、用紙の外面側に透過するのを防止するためであり、その意味でも用紙の外面側で余剰の鼻汁を拭き取ることは禁止されなければならない。
【0008】
この結果、使用者が不快感を解消するためには、別途ティッシュペーパー等を準備して余剰の鼻汁を拭き取らなければならず、不便で手間がかかることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−122372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、上記のような菌やウィルスの外部への飛散、ひいては医療従事者等への二次感染を生じさせるおそれがなく、またティッシュペーパー等を別途準備する必要がなく、鼻汁等の鼻口腔排泄物の一次採取を行った後の余剰の鼻口腔排泄物を簡易且つ安全に拭き取ることのできる、検体採取用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、鼻口腔排泄物を検体として採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具であって、採取用具本体の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該採取用具本体の内面側から外面側に透過させない程度の非透過性のある非透過性素材で前記採取用具本体の内面側が構成され、且つ採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度に吸収性のある吸収性素材からなる拭取部が、前記採取用具本体の内面側の一部に設けられていることを特徴とする鼻口腔排泄物の検体採取用具を提供するものである。
【0012】
採取用具本体は、表裏両片の一側縁部及び底縁部が閉鎖され、他側縁部及び上縁側が開口する2辺開口の袋状に形成することが可能である。
【0013】
このように袋状に形成された採取用具本体において、拭取部は、開口した上縁部側に設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述のように、鼻口腔排泄物を検体として採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具であって、採取用具本体の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該採取用具本体の内面側から外面側に透過させない程度の非透過性を有する非透過性素材で前記採取用具本体の内面側が構成され、且つ採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度に吸収性を有する吸収性素材からなる拭取部が、前記採取用具本体の内面側の一部に設けられているものであるため、使用者はたとえば鼻をかむ等の操作によって鼻汁等の鼻口腔排泄物を前記非透過性素材からなる内面側で採取し、採取された鼻口腔排泄物は、たとえば綿棒等の別の検体採取具で二次採取され、その後に検査測定用具等の検査に供されることとなる。
【0015】
この場合において、上記のような吸収性素材からなる拭取部が、採取用シート本体の内面側の一部に設けられているため、使用者は、非透過性素材からなる採取用具本体の内面側で、採取すべき鼻口腔排泄物を採取した後、採取されなかった余剰の鼻口腔排泄物は、同じ内面側の吸収性素材からなる拭取部で拭き取ることができ、ティッシュペーパー等を別途準備しなくても、簡易且つ迅速に余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができるので、使用者に不快感を与えることがないという効果がある。
【0016】
しかも、余剰の鼻口腔排泄物を拭き取る拭取部は、採取用シート本体の内面側に設けられているため、拭き取られた余剰の鼻口腔排泄物に含有されている菌やウィルス等が外部に漏洩、飛散するようなこともなく、医療従事者等への二次感染を生じさせるおそれもないという効果がある。
【0017】
さらに、採取用具本体を、表裏両片の一側縁部及び底縁部が閉鎖され、他側縁部及び上縁側が開口する2辺開口の袋状に形成した場合には、採取した鼻口腔排泄物が下方へ流れ落ちても、底縁部でその流下が阻止され、袋状部内で採取した鼻口腔排泄物を貯留させることができる。この結果、採取された鼻口腔排泄物に含有されている菌やウィルス等の外部への漏洩、飛散を一層確実に防止することができるという効果がある。
【0018】
さらに、袋状に形成された採取用具本体において、開口した上縁部側に拭取部を設けた場合には、採取後に残存する余剰の鼻口腔排泄物を拭き取る作業を一層容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態の検体採取用具の正面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のB−B線断面図。
【図4】図2のC部拡大断面図。
【図5】製袋前のシートの正面図。
【図6】折り曲げ及びシールによって製袋する状態を示す斜視図。
【図7】検体採取用具を展開した状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
本発明の検体採取用具は、上述のように、鼻口腔排泄物を検体として採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具であって、採取用具本体の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該採取用具本体の内面側から外面側に透過させない程度の非透過性を有する非透過性素材で前記採取用具本体の内面側が構成され、且つ採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度の吸収性を有する吸収性素材からなる拭取部が、前記採取用具本体の内面側の一部に設けられているものである。
鼻口腔排泄物等の検体が外部に漏洩するのを防止する観点からは、本発明の検体採取用具は、その全体にわたって非透過性素材で構成されていることが望ましいが、検体採取用具の全体が非透過性素材で構成されていなくても、要は、鼻口腔排泄物等の検体が外部に漏洩しないように構成されていればよい。そして、検体採取用具の一部に吸収性素材の層を設けることによって、本発明の検体採取用具とすることができる。吸収性素材の層は、鼻口腔排泄物を拭き取る作業を好適に行いうるように、その形状、大きさ、位置を適宜選択することができる。
【0022】
鼻口腔排泄物とは、鼻腔から排泄される鼻汁、口腔から排泄される喀痰、唾液等のものである。たとえばインフルエンザウィルスの検査であれば、鼻汁が検体とされる。他の検査においては、喀痰、唾液等が検体とされることがある。本発明の検体採取用具は、これらのいずれにも適用することができる。
【0023】
本発明の検体採取用具には、全体がシートの形態のままで構成されているもののみならず、シートを折り返して袋状に形成したような形態のものも含まれる。袋状に形成された形態のものとしては、たとえば矩形状のシートを1辺側で折り返して2つ折りするとともに、折り返された1辺側と隣接する辺におけるシートの一片と他片とを熱シール等を施すことによって、相互に対面する一片と他片との2側辺部を閉鎖するとともに、他の2側辺部を開口させたような形態のものとすることができる。検体が外側にもれないように上記のような熱シール等の溶着がなされるが、このような熱による溶着に代えて、圧着、或いは接着剤によって接着の手段を採用することも可能である。
【0024】
また、袋状の形状としては、矩形状のものに限らず、その使用時の側面が三角形、五角形、六角形、その他の多角形、台形、楕円形等の種々の形状とすることができる。さらに、上記のように2側辺部を開口させる場合、その開口部は鼻がかめる程度の大きさを有するものであることが望ましい。
【0025】
検体採取用具の採取用具本体は、非透過性素材と吸収性素材の2層の素材で構成することができる。非透過性素材と吸収性素材の各素材をそれぞれ別々に製作した後に貼り合わせて2層としてもよいし、非透過性素材と吸収性素材の2層を一体的に製作してもよい。
また、非透過性素材と吸収性素材の一方の層を製作した後、その層に他方の素材を設けることも可能である。たとえば、非透過性素材の所望の部分に吸収性素材を吹き付け等することにより、吸収性の部分を設けることができる。また別の方法として、非透過性素材の所望の部分を、吸収性を有するように加工することにより、吸収性の部分を設けることができる。たとえば、機械的に起毛加工すること等により吸収性を有するように加工して、吸収性素材とすることができる。これらの場合、吸収性素材とする部分は非透過性素材の片面又は両面の一部又は全体の所望の範囲とすることができる。
また、上記とは逆に、吸収性素材の所望の部分に非透過性素材を吹き付け等することにより、非透過性の部分を設けることができる。また別の方法として、吸収性素材の所望の部分を、非透過性を有するように加工することにより、非透過性の部分を設けることができる。たとえば、吸収性素材の好適な部分を熱処理する等により、非透過性を有するように加工して、非透過性素材とすることができる。これらの場合、非透過性素材とする部分は吸収性素材の片面又は両面の一部又は全体の所望の範囲とすることができる。
さらに、上記のような場合において、非透過性部分と吸収性部分の積層部分は必要に応じて2層を超える積層構造とすることが可能である。
ここで、「非透過性素材」とは、採取用具本体の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該内面側から外面側に透過させない程度の非透過性のある素材をいう。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製の素材を使用することができる。この非透過性素材とは、非吸収性と同義ではないが、鼻口腔排泄物を内面側から外面側に透過させないような上記合成樹脂製等の素材は、一般には、その鼻口腔排泄物の吸収性も低いものであり、そのために、かかる非透過性素材が配置された内面側と同じ面側に、吸収性素材からなる拭取部が設けることが必要となるのである。
【0026】
また「吸収性素材」とは、採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度に吸収性のある素材をいう。具体的には、パルプ素材を主原料とした紙類、吸収性繊維を使用した不織布等を使用することができる。
【0027】
拭取部は、採取用具本体の内面側の一部に設けられているものであるが、そのように一部に設ける手段として、非透過性素材で一面側が構成され、吸収性素材で他面側が構成されたシートを、前記非透過性素材からなる一面側が内面に配置され前記吸収性素材からなる他面側が外面に配置されるように折り曲げるとともに、前記吸収性素材からなる他面側の一部を、さらに内面側に折り曲げることによってなすような手段が採用される。
【0028】
以下に、本発明の検体採取用具のより具体的な構成について、図面に従って説明する。
【0029】
本実施形態の検体採取用具は、図1乃至図3に示すように、採取用具本体1の一片1a及び他片1bが、一側縁部の折曲部2にて折り曲げられて連設され、底縁部においては前記一片1a及び他片1bが熱溶着されることによってシール部3が形成され、上縁部及び他側縁部にそれぞれ開口部4、5が形成されることによって、上縁部及び他側縁部の2辺が開口した正面長方形状の袋状に形成されている。
【0030】
採取用具本体1は、図4に示すように、非透過性素材からなる内面側シート7と、吸収性素材からなる外面側シート8との2層のシートを貼着することによって構成されている。
【0031】
非透過性素材からなる内面側シート7は、上記のようにポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂で構成され、吸収性素材からなる外面側シート8は、上記のように針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、不織布等で構成されている。
【0032】
また、採取用具本体1の一片1a及び他片1bの上部は、図1及び図2に示すように、内側に折り曲げられて、余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる拭取部6、6が形成されている。
【0033】
このように採取用具本体1の一片1a及び他片1bの上部が内側に折り曲げられて拭取部6、6が形成されている結果、折り曲げられた部分においては、外面側シート8が内面側に位置することとなるので、採取用具本体1の内面側に位置する拭取部6、6の部分は、上記吸収性素材で構成されることとなる。
【0034】
このような構成からなる採取用具本体1は、図5に示すような1枚のシート9であって、上記のように内面側シート7及び外面側シート8の2層で構成されたシート9を、上部の折曲部10を介して下向き(内向き)に折り曲げて拭取部6を形成し、さらに、図6に示すように側縁の折曲部2を介してシート9を2つ折りすることによって採取用具本体1の一片1a及び他片1bを形成し、且つ該一片1a及び他片1bの底縁部を熱シールによって溶着することでシール部3を形成することによって、製造されることとなる。
【0035】
この場合、非透過性素材からなる内面側シート7が内面側に位置し、吸収性素材からなる外面側シート8が外面側に位置するように、シート9を2つ折りする。
【0036】
そして、このような構成からなる検体採取用具を使用する場合には、図7に示すように、一側縁部の折曲部2を手前側に位置させ、上縁部及び他側縁部の開口部4、5を開口させ、採取用具本体1の内面側に鼻口腔排泄物を付着させる。鼻口腔排泄物が鼻汁である場合には、鼻をかむような状態で鼻汁を採取用具本体1の内面側に付着させる。これによって、検体である鼻汁が、採取用具本体1に採取されることとなる。
【0037】
このようにして採取された鼻汁は、別の検体採取具である綿棒によって、採取用具本体1から採取されることとなる。つまり、鼻をかむような状態で鼻汁を採取用具本体1によって一次採取し、一次採取された鼻汁が、採取用具本体1から綿棒によって二次採取されることとなるのである。
【0038】
そして、二次採取された検体としての鼻汁は、その後の医療検査に供することができ、たとえばインフルエンザウィルス等のウィルス診断等に供されることとなる。
【0039】
この場合において、鼻汁が一次採取される採取用具本体1の内面側は、一次採取された鼻汁を、採取用具本体1の内面側から外面側に透過させることのないような非透過性の素材であるポリエチレン等の合成樹脂で構成されているので、採取用具本体1の内面側で一次採取された鼻汁中の菌やウィルス、たとえばインフルエンザウィルス等が検体採取用具本体1の内面側から外面側に浸透するようなことがなく、インフルエンザウィルス等の感染性のある検体が外部に漏洩するおそれもない。
その結果、いわゆる医療従事者への二次感染等も防止できることとなる。
【0040】
さらに、採取用具本体1の内面側に設けられたポリエチレン等の合成樹脂は、上記のように一次採取された鼻汁を採取用具本体1の内面側から外面側に透過させることのないような非透過性素材であるとともに、上記のような二次採取時に、綿棒によって鼻汁を容易に採取することができるような剥離性の素材であり、検体である鼻汁が採取用具本体1の内面側に吸収されてしまうことがなく、二次採取を行う際に、採取用具本体1の内面側から綿棒によって検体である鼻汁を容易に採取することができる素材である。
【0041】
このようにして使用者は、検体としての鼻汁を採取用具本体1の内面側に付着させることで一次採取を行ったわけであるが、一次採取を行った採取用具本体1の内面側が上記のように剥離性の素材で構成されているので、その内面側には吸収性がなく、従って、一次採取されていない鼻汁がどうしても使用者の鼻腔に残存することとなる。
【0042】
しかしながら、採取用具本体1の内面側の上縁部側開口部4の近傍には、外面側シート8が前記採取用具本体1の外側から内側に向くように、シート9が折り曲げられて拭取部6が形成されているので、その拭取部6の面は、外面側シート8の吸収性素材で構成されていることになる。
【0043】
従って、検体の採取部分と同じ採取用具本体1の内面側に配置された上記のような拭取部6によって、採取されていない余剰の鼻汁を好適に拭き取ることができ、使用者に不快感を残存させることがない。
【0044】
このように、本実施形態においては、採取用具本体1の内面側が非透過性素材であるポリエチレン等の合成樹脂で構成されているので、採取用具本体1の内面側から綿棒によって検体である鼻汁を容易に二次採取することができ、また採取用具本体1の内面側の非透過性素材は、非透過性の素材でもあるので、一次採取された鼻汁が、採取用具本体1の内面側から外面側に透過されるのが好適に防止されて医療従事者への二次感染等も防止され、さらに採取用具本体1の内面側の上縁部側開口部4の近傍には、吸収性素材からなる拭取部6が設けられているので、一次採取されずに使用者の鼻腔に残存している余剰の鼻汁を、その拭取部6で好適に拭き取ることができる。
【0045】
特に、この拭取部6は、鼻をかむという一次採取の操作を行う採取用具本体1の内面側と同じ面側に設けられているので、一次採取を行った後の、余剰の鼻汁を拭き取る操作を非常に容易に行うことができる。
【0046】
この拭取部6は、上記のような吸収性素材からなるので、柔軟性を有し、鼻を拭うのに適度な感触を有しており、鼻かみ後に鼻を拭き取ることによって、使用者に不快感を与えることもないのである。
【0047】
また、一次採取時には、綿棒やカテーテル等のような器具を用いて検体採取を行う必要がなく、鼻をかむだけの操作で一次採取を行うことができるので、痛みを伴わず、簡便に採取することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の検体採取用具は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂で構成された内面側シート7と、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、不織布等で構成された外面側シート8との2層で構成されているので、使い捨てや焼却も可能とすることができ、繰り返し使用するために行う滅菌処理等の後処理も不要となり、検査終了後の処理も簡便であるという利点がある。
【0049】
また検査終了後は、検体採取用具ごと廃棄するだけで、滅菌などの後処理をする必要がないという効果もある。
【0050】
さらに、採取用具本体1の一片1aと他片1bとの底縁側が熱シールされてシール部3が形成されているので、一次採取された検体としての鼻汁が、採取用具本体1から零れ落ちるようなこともないのである。
【0051】
また、上縁部側から他側縁部側に至る開口部4、5が、図7に示すように、略三角形状に開口させることによって、採取された鼻汁は下方へ流れ落ちることとなる。シール部3が設けられた採取用具本体1の底縁部側に貯留されることとなる。従って、このようにして採取用具本体1の底縁部側に貯留させた検体としての鼻汁を綿棒等で容易に二次採取することができる。
【0052】
尚、上記実施形態では、採取用具本体1が、上縁部及び他側縁部の2辺が開口した袋状に形成されていたが、このような2辺が開口した袋状に形成することは、本発明に必須の条件ではなく、単なるシート状に形成されたものであってもよい。つまり、図5のような形態のものであってもよい。
【0053】
単なるシート状に形成されたものである場合には、一次採取時において、内面側シート7が手前側に位置するように配置した上で、その内面側シート7の側で鼻をかむようにして鼻汁を付着させて一次採取を行い、その後に鼻汁が一次採取された内面側シート7が内面側となるようにシート状の採取用具本体1を2つ折りする。
【0054】
このように、一次採取された内面側シート7の面が内面側となるようにシート状の採取用具本体1を2つ折りすることによって、その一次採取された内面側シート7の面は、外部に裸出することがなく、従って、採取用具本体1が袋状に形成されていた上記実施形態と同様に、採取用具本体1の外側に一次採取された検体である鼻汁中の菌、ウィルス等が外部に漏洩して二次感染等が発生するのを防止することができる。
【0055】
尚、本発明において、採取用具本体1の内面側とは、該採取用具本体1の全体が袋状ではなくシート状に形成されている場合には、鼻汁等の検体が一次採取された後、検体中の菌、ウィルス等の外部への漏洩を防止すべく、内向きに折り曲げられる面をいうものである。
【0056】
また、上記実施形態では、採取用具本体1が、正面長方形状の袋状に形成されていたが、長方形以外に、正面正方形状、三角形状、楕円形状、台形状等に形成することも可能である。
【0057】
さらに、上記実施形態では、非透過性素材からなる内面側シート7と、吸収性素材からなる外面側シート8との2層で採取用具本体1が構成されていたため、該採取用具本体1の上部近傍においてシート9を折り曲げるだけの簡易な操作で、検体の採取面と同じ採取用具本体1の内面側に、吸収性素材からなる拭取部6を設けることができるという好ましい効果が得られたが、このように非透過性素材からなる内面側シート7と、吸収性素材からなる外面側シート8との2層で採取用具本体1を構成することは本発明に必須の条件ではない。
【0058】
たとえば、採取用具本体1の全体を非透過性素材で構成することも可能である。この場合には、採取用具本体1とは別体の、吸収性素材からなる帯状のシートを前記採取用具本体1の内面側に貼着等によって部分的に取り付ける等によって、拭取部6が採取用具本体1の内面側に設けることができる。
【0059】
従って、採取用具本体1は、複合素材で構成する必要は必ずしもなく、単一素材で構成されていてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、鼻口腔排泄物として鼻汁を採取する場合について説明したが、鼻口腔排泄物の種類はこれに限定されるものではなく、検査の種類に応じて、たとえば喀痰や唾液等を鼻口腔排泄物として採取することも可能である。
【0061】
さらに、採取用具本体1の外面側側に、必要に応じて文字の筆記や印刷などを行うことも可能である。
【0062】
尚、検体は、たとえば鼻汁を検体としてインフルエンザウィルスの検査を行う場合には、10〜100μl、好ましくは40〜60μl程度の量、好ましくは50μlを採取すればよいので、大量に検体を採取する必要がなく、患者に対する負担が少ないという非常に優れた利点がある。また、鼻汁以外の検体の場合、或いはインフルエンザウィルス以外の検査をする場合でも、上記を参考にして、検出法に応じて最適の採取量を設定すればよい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0064】
(実施例1)
本実施例では、検体採取用具として、鼻汁を採取する鼻かみ用紙として構成されたものを用いた。
【0065】
検体の水分が外側に透過されにくい非透過性且つ二次採取を容易に行える剥離性の素材であるポリエチレン製のシートと、鼻にあてたときの感触がよい吸収性素材である針葉樹パルプ製のシートとを貼り合わせた、16.5cm×20cmのシート2枚を、ポリエチレン製のシートを内側にして重ね、長辺を横にして折り畳み、その隣接する2辺を溶着し、袋状に作成した。
【0066】
作成された袋は、外面側が針葉樹パルプの素材となり、内面側がポリエチレンの素材となる。
【0067】
溶着されていない他の2辺の開口部分を手前側にしたときの、反対の面の一部を手前側に約2.5cmほど折り返すことによって、採取されない余剰の鼻汁を拭き取るための拭取部を形成することができる。
【0068】
採取された鼻口腔排泄物である鼻汁は、検体採取用具の底辺側に貯留することにより、綿棒等によって後に行われる二次採取等や検査に供する上でのハンドリングを容易にすることができる。
【0069】
袋状の検体採取用具の大きさは適宜変更することができ、たとえば5〜20cm×5〜25cmとすることができる。また、その形状も長方形に限定されることなく、正方形としてもよい。たとえば喀痰を採取する場合には、上記鼻汁の場合よりも小型とすることができ、たとえば6cm×6cm程度とすることができる。
【0070】
拭取部の寸法も上記のような2.5cmに限定されることなく、たとえば2.5〜5cm程度とすることができ、さらに、溶着部分も接着剤による接着や、圧着でも可能である。また、溶着等の貼り付けを行わなくても検体採取用具として使用可能である。
【0071】
(試験例)
インフルエンザ用疾患を示す患者から、綿棒により鼻汁検体を採取する場合を比較例とし、上記実施例1で準備した検体採取用具を用いて鼻汁検体を採取する場合と比較して、それぞれの鼻汁検体よりインフルエンザウィルスの有無を確認した。インフルエンザウィルスの有無は、労働厚生省にて、すでに承認を得ている試薬(クイックナビーFlu(製造販売承認番号22000AMX01645000)を用いて行った。
【0072】
その結果、インフルエンザウィルス感染の診断結果は、比較例と実施例1とで違いはなかったが、比較例の場合には、使用者が違和感、不快感を示したのに対し、実施例1の場合には、使用者はそのような違和感、不快感を示さなかった。
【符号の説明】
【0073】
1 採取用具本体
6 拭取部
7 内面側シート
8 外面側シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻口腔排泄物を検体として採取する鼻口腔排泄物の検体採取用具であって、採取用具本体(1)の内面側に採取された鼻口腔排泄物を、該採取用具本体(1)の内面側から外面側に透過させない程度の非透過性を有する非透過性素材で前記採取用具本体(1)の内面側が構成され、且つ採取されていない余剰の鼻口腔排泄物を拭き取ることができる程度の吸収性を有する吸収性素材からなる拭取部(6)が、前記採取用具本体(1)の内面側の一部に設けられていることを特徴とする鼻口腔排泄物の検体採取用具。
【請求項2】
採取用具本体(1)が、表裏両片(1a)、(1b)の一側縁部及び底縁部が閉鎖され、他側縁部及び上縁部が開口する2辺開口の袋状に形成されている請求項1記載の鼻口腔排泄物の検体採取用具。
【請求項3】
開口した上縁部側に拭取部(6)が設けられている請求項2記載の鼻口腔排泄物の検体採取用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−276412(P2010−276412A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127826(P2009−127826)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(591108248)カミ商事株式会社 (19)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】