説明

鼻用アスピーレータ

圧縮して減圧状態を形成した後徐々にその圧縮を開放して液体を吸引するための弾性のあるバルブ部とステム部とを備え、該ステム部は前記バルブ部に対して取り外し可能に接続され、前記バルブ部は、前記ステム部のキャップ部と係合して略密閉性のある接続を形成するように構成されたネック部を備える鼻用アスピーレータを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたバルブ吸引装置に関する。本発明は、特に小児または新生児の上気道の液体を取り除くような医療用のバルブ吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用バルブ吸引装置やアスピレーターはよく知られており、例えば、新生児の気道の液体を取り除いて息ができるようにするために用いられる。この種の吸引装置は、小児の上気道の粘液のような液体を取り除くことや、胎便を取り除くことにも用いられる。
【0003】
よく知られるアスピレータは2つの主要なカテゴリに分類される。
1.手動で操作される吸引装置
a 自動膨張小型バルブを圧搾することにより減圧状態が形成されるバルブ吸引装置
b 救助者の口により陰圧状態が形成される口吸引装置(いわゆる風下吸引)
c 操作者が装置のピストル状グリップを用いてハンドルを引くことより典型的な減圧状態が形成される、他の手動吸引装置
d 操作者がフットポンプを踏むことにより真空状態が形成される、足操作の吸引装置
2.自動吸引装置
a バッテリまたはコンセント式の駆動吸引装置
b 壁に取り付けられた真空源に接続されている壁型吸引装置
【0004】
病院や医療センターの環境以外の使用で推奨される、また、最も一般的に使用される吸引装置は、手動で操作される吸引装置、主にバルブ吸引装置である。バルブ吸引装置は、操作が簡単で比較的安価であるため、発展途上国では、通常、唯一推奨されるアスピレータである。
【0005】
バルブ吸引型の鼻用アスピレータ装置は、流路を形成するようにバルブの内部へ接続され、鼻孔内へ挿入されるように設計された中空のステム部に接続された、圧縮可能な弾性部材で作られたバルブを備える。少なくとも鼻内に挿入される外部チップは、しなやかな部材で作られ、鼻の内部の粘膜を傷つけないようにすることが好ましい。ステム部は、円錐状または段状に外径が大きくなる形状であってもよく、または、ステム部が鼻孔深くに挿入されないように、ストッパが設けられていることとしてもよい。
【0006】
装置のユーザは、使用時にバルブを圧縮して乳幼児や小児の鼻孔や口腔にステム部を挿入し、バルブの圧縮を徐々に開放して、鼻孔や口から粘液や分泌物を取り除く。ユーザは、バルブを圧縮する力をコントロールすることにより吸引力を制御することができる。
【0007】
バルブ吸引式鼻用アスピレータは、非常に多く存在する。通常使用される鼻用アスピレータは、例えば回転成型により、バルブとステム部が1つの部品で作られている。このように形成された装置の開放部はステム部の端部のみであり、装置の中を適切に空にすることができず、装置内の有機物を残らず取り除くことができない。
このように、この種の鼻用アスピレータは、患者間のクロスコンタミネーションを避けられないと考えられるため、繰り返し使うには不適切であるといえる。例えば、この種の鼻用アスピレータとして、特許文献1のものが知られている。
【0008】
上記のようなバルブに開放部が設けられ、装置の中身をを空にして、装置内部の洗浄を可能とするものも知られている。バルブ内に蓋部を収容して閉鎖部を固定することは、装置の内部構造を洗浄することを困難にし、洗浄後もバルブ内の生体物質が残ることが予想される。従って、繰り返し使用するのには適していない。
【0009】
特許文献2は、バルブとステム部間に、集めた物質を貯留するリザーバを備えるバルブ吸引型の鼻用吸引装置を開示している。このアイデアは、特許文献3にさらに改良されたものが開示されている。バルブとステム部との間にリザーバを設けることで、バルブ内に粘液が進入しなくなる。このようにすることで、装置のバルブ部については繰り返し使用できるかもしれない。しかし、このような装置は、比較的構造が複雑となり、リザーバおよびステム部の交換や洗浄の手技を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0270736号明細書
【特許文献2】米国特許第2890699号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0451062号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
構造がシンプルで簡単に使用できる上気道用吸引装置であって、使用方法が簡単で、繰り返し使用することを前提とした、適切な洗浄や検査を可能にする装置が、いまだ必要とされている。加えて、消毒液、煮沸、または、加圧滅菌のような、簡便で効果的な方法により装置を滅菌できることも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題は、請求項1に記載の改良されたバルブ吸引型の鼻用アスピレータにより解決される。
【0013】
従属項は、本願発明の鼻用アスピレータの好ましい実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るバルブ吸引デバイスの側面図を示す。
【図2】図2は、図1に示す装置の長手軸に沿った縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示す装置のバルブ部を開いた状態での側面図である。
【図4】図4は、図3に示す装置の長手軸に沿った縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示す装置の斜視図である。
【図6】図6は、図3に示す装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面には、本発明に係る鼻用アスピレータ1の好ましい実施例が示されている。鼻用アスピレータ1は、バルブ部2とステム部3とを備え、好ましくは、これらがヒンジ部4により接続されている。
【0016】
バルブ部2は、詳細については後述する弾性部材で形成された壁部9に囲まれたバルブコンパートメント7を備える。平坦部6は、バルブの一部として設けられているので、鼻用アスピレータを立てることができる。平坦部6は、平坦な表面に当該デバイスを固定できるように、また、より良好な状態で滅菌できるように、吸引カップとして形成されていてもよい。
【0017】
バルブ部2は、ステム部3のキャップ部11と係合するように設計された筒状のネック部10を備えている。
【0018】
バルブ部の内部は、その内部を効果的に洗浄することを困難にまたは不可能にするような凹凸がなく平滑である。バルブ部の内部からネック部の内部にかけても、洗浄時に有機物を見えにくくするような縁がなく平滑である。
【0019】
ステム部3は、キャップ部11とピペット部12を備え、バルブ部のネック部10と嵌合して略密閉性のある接続部を形成するように構成された筒状の外表面を有する。外向きに伸びる縁が、ネック部の内部と係合するように設けられることで、キャップとネック部との密閉性が向上し、ステム部がバルブ部から意図せず外れることを防止する。
【0020】
ステム部内を通るように設けられた流路8により、ステム部の外側チップ5とバルブ部の内部コンパートメント7の間を液が流れる。外側チップ5の外向き伸長部には、開口部が設けられている。デバイスの吸引力により鼻粘膜が損傷するのを防ぐために、外側チップ5には、半径方向に広がるように開口部が設けられることとしてもよい。
【0021】
図に示すように、バルブ部とステム部とがヒンジ部により接続されていることが好ましい。このようにすることで、デバイスを分解して洗浄する際に部品の一部がなくなるのを防止することができる。
【0022】
上記デバイスの使用時以外の汚染を防止するために、ステム部用または外側チップ5用のキャップ(図示せず)を備えることができる点については、当業者により理解される。上記キャップは、用途に合わせてどのような材質で形成されていてもよい。また、部品が一回の成型操作で成型される一体的成型を行うことにより、吸引デバイスと同じ材質で、キャップを成形することとしてもよい。また、ステム部およびバルブ部に接続するヒンジ部材に相当するヒンジ部材により、ステム部またはバルブ部にキャップが接続されていてもよい。
【0023】
上記デバイスは、1つまたはそれ以上の弾性部材からなることとしてもよい。一実施例としては、一の単一成型操作により作られることにより、一種の材質からなるデバイスである。つまり、バルブ部、ステム部、およびヒンジ部が一回の成型操作で単一の部品として形成されている。これに代えて、2または3の個別のパーツとして別々に製造して、接着、溶接、プレスフィットによる取り付けなどの様々な使用可能な方法により結合することとしてもよい。
【0024】
上記デバイスは注入成型により形成されることが好ましいが、回転成型のような他の成型方法を用いていてもよい。上記のような成型方法により、パーツごとに異なる材質を選択すること、パーツの一つに他と異なる材質を用いることにより、最終製品の特性を調整することは、当業者により理解されることである。
【0025】
上記鼻用アスピレータは、適合すればどのような高分子物質からなるものであってもよい。
物質としての重要な性質は、
所望の減圧状態を作り出すことを可能とするのに必要な弾性特性をバルブ部に与える弾力性、および、鼻腔内の粘膜の損傷を防ぐステム部の先端の柔らかさ、
シンプルかつ安価な製造を実現できる成形性、
風化に対する耐性、つまり、化学的・機械的性能の喪失や劣化に対する耐性、
洗浄や殺菌剤に対する強度、
煮沸および/またはオートクレーブ処理のような熱処理による滅菌に対する強度
である。
【0026】
また、デバイス内部を容易に検査してその清浄度を管理できるように、当該材質は透明であることが好ましい。
【0027】
現時点で好ましい材質としては、2つの成分からなる液体シリコンであり、医療用として認可されるグレードのものであることが好ましい。上述の条件を満たしている他の高分子材料であれば、発明の要旨を逸脱しない範囲で用いられることは、当業者により理解されることである。
【0028】
当該明細書および請求項でで用いられている上記「鼻用アスピレータ」および「上気道用吸引装置」との用語は相互に変換することが可能であり、これらはともに、鼻孔や口腔などの上気道を開放するための吸引デバイスとして用いられるものである。

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮して減圧状態を形成した後徐々にその圧縮を開放して液体を吸引するための弾性のあるバルブ部とステム部とを備え、
該ステム部は前記バルブ部に対して取り外し可能に接続され、
前記バルブ部は、前記ステム部のキャップ部と係合して略密閉性のある接続を形成するように構成されたネック部を備える、鼻用アスピーレータ。
【請求項2】
前記ステム部の前記キャップ部は、前記バルブ部の前記ネック部に挿入されるように構成された請求項1に記載の鼻用アスピーレータ。
【請求項3】
前記バルブ部と前記ステム部は、ヒンジ部材により接続された請求項1または2に記載の鼻用アスピーレータ。
【請求項4】
前記バルブ部の内部は、効果的な洗浄を困難または不可能にする凹凸がなく平滑に形成され、前記バルブ部の内部から前記ネック部の内部にかけては、洗浄時に有機物を見えにくくする縁がなく平滑に形成された請求項1から3のいずれかに記載の鼻用アスピーレータ。
【請求項5】
弾性ポリマで形成されている請求項1から4のいずれかに記載の鼻用アスピーレータ。
【請求項6】
前記弾性ポリマは、医療用として認可されているポリマである請求項5に記載の鼻用アスピーレータ。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−525178(P2012−525178A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507729(P2012−507729)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055705
【国際公開番号】WO2010/125095
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(503206994)レールダル メディカル エー エス (10)
【氏名又は名称原語表記】Laerdal Medical AS
【Fターム(参考)】