説明

(メタ)アクリル系樹脂フィルム

【課題】耐久性および光学的特性に優れ得る(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含む第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部と、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル系樹脂とを含む第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板(液晶セル)の両側に偏光板を配置することが必要不可欠である。通常、偏光板は、偏光子とその両面に貼り合わされた偏光子保護フィルムとを有する。
【0003】
上記偏光子保護フィルムとして、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが提案されている。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、耐熱性と透明性に優れ得るが、脆くて割れやすく、例えば、搬送時等にフィルム(特に、端部)にクラックが生じる等、耐久性に問題がある。そこで、優れた耐久性および光学的特性(透明性等)を得ることを目的として、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種をフィルム全体に含有する偏光子保護フィルムが提案されている(特許文献1参照)。しかし、耐久性と光学的特性との両立が不十分である。
【特許文献1】特開2006−284882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、耐久性および光学的特性に優れ得る(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含む第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部と、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル系樹脂とを含む第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部とを有する。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記第2の樹脂組成物において、上記軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量の合計が、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部である。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記第2の樹脂組成物において、上記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量が、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部である。
【0008】
本発明の別の局面によれば、偏光子保護フィルムが提供される。この偏光子保護フィルムは、上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの幅方向端部を切断して得られる。
【0009】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。この偏光板は、偏光子と、該偏光子の少なくとも片側に配置された上記偏光子保護フィルムとを備える。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記偏光子保護フィルムの偏光子が配置されていない側に配置された粘着剤層をさらに備える。
【0011】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記偏光板を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む第2の樹脂組成物で、フィルムの幅方向端部を形成することにより、フィルム中央部の透明性に優れ得、かつ、フィルム端部のクラックの発生を効果的に抑制して耐久性に優れ得る(メタ)アクリル系樹脂フィルムを提供し得る。したがって、耐熱性や搬送性にも優れ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0014】
A.(メタ)アクリル系樹脂フィルム
図1は、本発明の好ましい実施形態による(メタ)アクリル系樹脂フィルムの平面図である。(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部10aと、第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部10b,10bとを有する。
【0015】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10は、代表的には、薄膜に成形してロール状に巻回され(フィルム原反)、必要に応じて所望のサイズにカットされたものである。第1の樹脂組成物で形成される中央部10aの幅は、所望の値に設定し得る。代表的には30〜200cmである。第2の樹脂組成物で形成される端部10bの幅は、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは100mm以下、さらに好ましくは20〜80mmである。
【0016】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の厚みは、任意の適切な値に設定し得る。例えば、偏光子保護フィルムとして用いる場合には、好ましくは20〜200μm、より好ましくは25〜180μm、さらに好ましくは30〜140μmである。厚みが20μm以上であると、適度な強度、剛性を有し、ラミネートや印刷等の二次加工時に取扱性が良好となる。また引取り時の応力により発生する位相差も制御が容易で、安定かつ容易にフィルム製造を行うことが可能である。厚みが200μm以下であると、フィルム巻き取りが容易になるほか、ライン速度、生産性、そしてコントロール性が容易になる。
【0017】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の中央部10aの面内位相差Δndは、好ましくは3.0nm以下、さらに好ましくは1.0nm以下である。(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の中央部10aの厚み方向位相差Rthは、好ましくは−3.0〜+3.0nm、さらに好ましくは−1.0〜+1.0nmである。
【0018】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の中央部10aのヘイズは、好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.7%以下である。
【0019】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の端部10bのMIT耐折強さは、好ましくは5回以上、さらに好ましくは10回以上である。
【0020】
A−1.第1の樹脂組成物
上記第1の樹脂組成物は、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上、特に好ましくは110℃以上である。耐久性に優れ得るからである。(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は、好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。成形性に優れ得るからである。
【0021】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とする(メタ)アクリル酸C1−6アルキル系樹脂が挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0022】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。また、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂や、特開2005−314534号公報などに記載の、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いても良い。
【0023】
上記第1の樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分の具体例としては、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび剤等が挙げられる。本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして用いる場合には、位相差低減剤、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0024】
上記位相差低減剤としては、好ましくは、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合体、アクリロニトリル−スチレンブロック共重合体コポリマーなど、スチレン含有ポリマーが挙げられる。位相差低減剤の含有量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対し、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。この範囲を超えて添加した場合、可視光線を散乱させたり、透明性を損なったりするため、偏光子保護フィルムとしての特性に欠けてしまうおそれがある。
【0025】
上記紫外線吸収剤の融点は、好ましくは110℃以上、より好ましは120℃以上である。紫外線吸収剤の融点が110℃以上であれば、加熱溶融加工時の揮発が少なく、フィルム製造時のロール汚れを発生し難い。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。市販品としては、例えば、「チヌビン1577」(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、「アデカスタブLA−31」(旭電化工業社製)等が挙げられる。
【0026】
A−2.第2の樹脂組成物
上記第2の樹脂組成物は、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を含む。具体的には、上記第1の樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリル樹脂と同様の樹脂を用い得る。また、上記第2の樹脂組成物は、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。端部10bをこのような組成物で形成することにより、端部10bだけでなく中央部10aにおいてもクラックの発生を効果的に抑制し得る。具体的には、フィルム中央部のクラックはフィルム端部で生じたクラックに起因すると考えられ、フィルム端部のクラック発生を抑制することにより、フィルム全体のクラックの発生を抑制し得る。その結果、耐久性に極めて優れた(メタ)アクリル系樹脂フィルム10が得られ得る。また、端部10bを設けることにより、中央部10aにおいて(メタ)アクリル系樹脂が有する高透明性を十分に発揮させ得る。
【0027】
上記軟質アクリル系樹脂およびアクリルゴムは、240℃、2.16kgfでのMFR値が、好ましくは0.1〜20g/10min、さらに好ましくは1〜15g/10minである。(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の成形性に優れ得るからである。なお、(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の成形方法については後述する。軟質アクリル系樹脂およびアクリルゴムの屈折率ndは、任意の適切な値であり得る。
【0028】
上記軟質アクリル系樹脂としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットIRD−70、アクリペットIRD−30、アクリペットIRH−30などが用いられる。上記アクリルゴムとしては、例えば、日本ゼオン社製のAR12などが用いられる。
【0029】
上記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの屈折率ndは、任意の適切な値であり得る。
【0030】
上記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーとしては、例えば、UMGABS社製のMUX−60、MUX−50;三菱レイヨン社製のメタブレンP−531、メタブレンP−501、メタブレンW−341、メタブレンW−377;などが用いられる。
【0031】
上記第2の樹脂組成物において、上記軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量の合計は、任意の適切な値に設定し得る。当該合計は、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。また、上記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量は、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量が1重量部未満であると、上記クラックの発生を効果的に抑制できない等により優れた耐久性が得られないおそれがある。一方、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量が50重量部より多いときには特に問題はなく、50重量部までが適当である。
【0032】
上記第2の樹脂組成物は、任意成分を含み得る。なお、上記軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる1種以上を、上記第1の樹脂組成物に含有させることもできる。このとき、軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの屈折率は、好ましくは1.480〜1.530である。また、上記軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量の合計が、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1〜40重量部であって、上記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量が、上記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して10重量部未満であり、かつ、これらの含有量が上記第2の樹脂組成物における(メタ)アクリル系樹脂に対する含有量よりも少ないことが好ましい。
【0033】
A−3.成形方法
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム10の成形方法としては、代表的には、押出成形法が用いられる。図2は、上記フィルムの製造に用いられる押出機の押出部の好ましい実施形態を示す斜視図である。押出部100は、主押出部101と副押出部102,102とを備える。主押出部101から上記第1の樹脂組成物の溶融物を押し出し、副押出部102,102から上記第2の樹脂組成物の溶融物を押し出す。第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物は、同時にダイリップ110から押し出され薄膜化される。このとき、第1の樹脂組成物がダイリップの中央部110aから押し出され、第2の樹脂組成物はダイリップの端部110b,110bから押し出される。なお、押出部100は、同時押し出しで3層積層フィルムを得るための押出部を90°回転させた形態であり得る。
【0034】
上記押出成形温度は、任意の適切な値に設定し得る。上記第1の樹脂組成物を構成する(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とした場合、好ましくは(Tg+80)℃〜(Tg+180)℃、より好ましは(Tg+100)℃〜(Tg+150)℃である。押出成形温度が低すぎると、樹脂の流動性がなく、成形できなくなるおそれがある。押出成形温度が高すぎると、樹脂粘度が低くなり、成形物の厚み不均一等の生産安定性に問題が生じるおそれがある。また、押出温度をこのような範囲に設定することで、上記第2の樹脂組成物の成形性にも優れ得る。
【0035】
A−4.用途
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムとして好適に用いることができる。好ましくは、上記第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部を偏光子保護フィルムとして用いる。当該偏光子保護フィルムは、延伸(例えば、横延伸)されていてもよい。特に、横延伸を行う場合は、第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部を把持して延伸することにより、フィルムの割れやクラックを防止することができる。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして用いる場合、好ましくは、上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの幅方向端部を切断する。具体的には、第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部を切断除去し、第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部を偏光子保護フィルムとして用い得る。切断は、後述の偏光子との積層前であっても後であってもよい。当該積層は、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの幅方向中央部を偏光子に貼り合わせることにより行われる。
【0037】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムなどの光学フィルムの用途以外にも、例えば、窓やカーポート屋根材等の建築用採光部材、窓等の車輌用採光部材、温室等の農業用採光部材、照明部材、前面フィルター等のディスプレイ部材、家電の筐体、車輌内装部材、内装用建築材料、壁紙、化粧板、玄関ドア、窓枠、巾木等に積層して用いることができる。
【0038】
B.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と該偏光子の少なくとも片側に配置された上記偏光子保護フィルムとを備える。
【0039】
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
【0040】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。
【0041】
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0042】
上記偏光子保護フィルムは、代表的には、上記偏光子に接着剤層を介して積層される。接着剤層を形成する接着剤としては、任意の適切な接着剤を採用され得る。好ましくは、ポリビニル系接着剤が用いられる。接着剤層の厚みは、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.03〜5μmである。
【0043】
上記偏光子保護フィルムは、偏光子が配置される側に接着性向上のために易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、低圧UV処理、ケン化処理等の表面処理やアンカー層を形成する方法が挙げられ、これらを併用することもできる。これらの中でも、コロナ処理、アンカー層を形成する方法、およびこれらを併用する方法が好ましい。
【0044】
上記偏光板は、粘着剤層を備え得る。粘着剤層は、代表的には、上記偏光子および偏光子保護フィルムを、他の光学フィルムや液晶セル等の他の部材に貼り合わせるための接着層として機能し得る。粘着剤層は、例えば、上記偏光子保護フィルムの偏光子が配置されていない側に配置される。
【0045】
上記粘着剤層を形成する粘着剤は、任意の適切な粘着剤を採用され得る。例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものが用いられる。好ましくは、アクリル系粘着剤が用いられる。アクリル系粘着剤は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れ得るからである。特に、炭素数が4〜12のアクリル系ポリマーよりなるアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚みは、好ましくは1〜40μm、より好ましくは5〜30μm、特に好ましくは10〜25μmである。
【0046】
上記偏光子保護フィルムと上記粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることができる。当該アンカー層としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー層が用いられ、特に好ましくは分子中にアミノ基を含んだポリマー類が使用される。分子中にアミノ基を含んだポリマーは、分子中のアミノ基が、粘着剤中のカルボキシル基や、導電性ポリマー中の極性基と反応もしくはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
【0047】
C.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記偏光板を含む。画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置、液晶表示装置が挙げられる。液晶表示装置は、液晶セルと、当該液晶セルの少なくとも片側に配置された上記偏光板とを備える。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、耐久性および光学特性の評価方法は、以下のとおりである。
1.耐久性(MIT耐折強さ)
テスター産業(株)製のMIT耐折度試験機「BE−202」を使用し、規定の折り曲げの繰り返しによりフィルムが破断するまでの回数を測定した(JIS P−8115に準拠)。測定条件は以下のとおりである。なお、表1に示す測定結果は、n=10の平均値である。
サンプル採取位置:フィルム端部
サンプルサイズ:120mm(MD)×15mm(TD)
荷重:200g
チャック先端R:0.38mm
チャック間距離:0.25mm
2.ヘイズ
JIS−K6714に準拠し、(株)村上色彩技術研究所製「HAZEMETER HM−150」を使用して測定した。サンプルの採取位置はフィルム中央部である。
3.位相差(ΔndおよびRth)
王子計測機器(株)製の自動複屈折計「KOBRA−WPR」を使用し、面内位相差Δndおよび厚み方向位相差Rthを測定した。サンプルの採取位置はフィルム中央部である。
【0049】
[実施例1]
(メタ)アクリル系樹脂(Tg:113℃、三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH)100重量部を100℃で真空乾燥して水分および残存酸素を脱気し、ポリアクリル酸(日本触媒(株)製、商品名:アクアリックAS)10重量部を添加した。これを原料ホッパーから押出部までを窒素置換した二軸押出機(東芝機械(株)製、製品名:TEM35B)に供給して、シリンダセット温度230〜270℃で溶融させてペレタイジングし、第1の樹脂組成物を得た。
(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVH)100重量部を100℃で真空乾燥して水分および残存酸素を脱気し、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマー(屈折率nd:1.492、UMGABS社製、商品名:MUX−60)10重量部を添加し、さらに、ポリアクリル酸(アクアリックAS)10重量部を添加した。これを前記と同様の条件で溶融、ペレタイジングし、第2の樹脂組成物を得た。
【0050】
(フィルムの成形)
上記で得られた第1の樹脂組成物を100℃で真空乾燥し、これを単軸押出機(東芝機械(株)製、製品名:SE−65)の原料ホッパーから主押出部に供給して、シリンダセット温度230〜270℃で溶融させた。なお、原料ホッパーから主押出部までは窒素置換されている。
同時に、上記で得られた第2の樹脂組成物を100℃で真空乾燥し、これを単軸押出機(東芝機械(株)製、製品名:SE−65)の原料ホッパーから副押出部に供給して、230〜270℃で溶融させた。なお、原料ホッパーから副押出部までは窒素置換されている。
図2に示すように、これらをコートハンガータイプのTダイ(リップ長:500mm、リップ開度:0.6mm、温度260℃)を通過させ、120℃の冷却クロムメッキ製キャスティングロールで冷却した後、フィルム捲き取り装置によりフィルム原反を得た。このようにして、第1の樹脂組成物で形成された中央部と第2の樹脂組成物で形成された端部を有するフィルムを成形した。
【0051】
[実施例2]
第2の樹脂組成物の調製において、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVH)100重量部に対し、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマー(MUX−60)20重量部を添加し、さらに、ポリアクリル酸(アクアリックAS)10重量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0052】
[実施例3]
第2の樹脂組成物の調製において、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVH)100重量部に対し、ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマー(MUX−60)30重量部を添加し、さらに、ポリアクリル酸(アクアリックAS)10重量部を添加したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0053】
(比較例1)
実施例1の第2の樹脂組成物を、第1の樹脂組成物としても用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0054】
実施例1〜3および比較例1で得られたフィルムは、それぞれ、厚みは120±10μmの範囲内であり、ボイド、スクラッチ等の欠陥はなく外観上均一であった。実施例1〜3および比較例1で得られたフィルムの耐久性および光学特性の評価結果を、目標値とともに表1にまとめる。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すとおり、実施例1〜3は、耐久性だけでなくヘイズについても目標値を達成していた。一方、比較例1は、耐久性はクリアできたものの、ヘイズについては目標値を達成することができなかった。また、実施例1〜3と比較例1とを比較すると、実施例1〜3は耐久性に極めて優れているといえる。なお、位相差(Δnd、Rth)については、実施例1〜3、比較例1全てにおいて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、偏光子保護フィルムに好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好ましい実施形態による(メタ)アクリル系樹脂フィルムの平面図である。
【図2】図1に示すフィルムの製造に用いられる押出機の押出部の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10 (メタ)アクリル系樹脂フィルム
10a 中央部
10b 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂を含む第1の樹脂組成物で形成された幅方向中央部と、
軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種と、(メタ)アクリル系樹脂とを含む第2の樹脂組成物で形成された幅方向端部とを有する、(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記第2の樹脂組成物において、前記軟質アクリル系樹脂、アクリルゴムおよびゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量の合計が、前記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部である、請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第2の樹脂組成物において、前記ゴム−アクリル系グラフト型コアシェルポリマーの含有量が、前記(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部である、請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の(メタ)アクリル系樹脂フィルムの幅方向端部を切断して得られた、偏光子保護フィルム。
【請求項5】
偏光子と、該偏光子の少なくとも片側に配置された請求項4に記載の偏光子保護フィルムとを備える、偏光板。
【請求項6】
前記偏光子保護フィルムの偏光子が配置されていない側に配置された粘着剤層をさらに備える、請求項5に記載の偏光板。
【請求項7】
請求項5または6に記載の偏光板を備える、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−161580(P2009−161580A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339444(P2007−339444)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】