説明

(メタ)アクリル系樹脂組成物及び(メタ)アクリル系硬化物品

【課題】 優れた光学特性(透明性)を有し、成形性(平滑性、型汚れ性)、離型性、耐光性、耐久性(耐光性)等に優れる硬化物を与え得る(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び、このような樹脂組成物を用いた硬化物品を提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル系重合体と、エーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、ガラス転移温度10〜90℃、かつ硬化収縮率12%以下を満たすものである(メタ)アクリル系樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂組成物及び(メタ)アクリル系硬化物品に関する。より詳しくは、光学用表示装置や照明器具、車両用部品、建材、光学部品等に広く用いられる(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いた硬化物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系樹脂組成物は、その硬化物が耐光性、透明性、耐久性等に優れた性能を有するため、種々の用途に好適に使用されている。例えば、アクリル板として光学用表示装置や照明器具等に、また成形品として車両用部品、建材、光学部品等に広く用いられている。しかしながら、(メタ)アクリル系樹脂組成物は、ガラス等の透明性無機系材料に比べて耐候性のレベルが充分なものとはいえないため、経時での商品価値の低下を防止すべく、改善方法が種々検討されている。
【0003】
従来の(メタ)アクリル系樹脂組成物に関し、連続的にポリマーエマルジョン粒子内のポリマー組成を変化させることが可能なパワーフィード乳化重合法を用いてポリマーエマルジョン粒子を調製し、この粒子表面をスプレードライ法により乾燥して得た(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、重合性不飽和二重結合及び/又は特定の官能基を有する化合物とを組み合わせた(メタ)アクリル系樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この樹脂組成物においては、経時的な物性の低下を抑制するという性能、すなわち耐久性が充分ではないため、この点を改善して種々の用途に好適に用いられるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2002−3546号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた光学特性(透明性)を有し、成形性(平滑性、型汚れ性)、離型性、耐光性、耐久性(耐光性)等に優れる硬化物を与え得る(メタ)アクリル系樹脂組成物、及び、このような樹脂組成物を用いた硬化物品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、(メタ)アクリル系樹脂組成物について種々検討したところ、(メタ)アクリル系重合体と、(メタ)アクリル系単量体を有するものとすることにより、硬化時の収縮が充分に抑制され、良好な成形性、離型性を有する硬化物が得られるとともに、該硬化物において、寸法安定性及び成形性のバランスが良好なものとなることを見いだし、該(メタ)アクリル系単量体をエーテル構造を必須とするものとすると、該硬化物が、耐光性及び透明性にも優れるものとなることを見いだした。そして、このような樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が示すガラス転移温度及び硬化収縮率を特定すると、高度の透明性を発揮できるのみならず、平滑性や型汚れ性等の成形性、離型性、耐光性等の耐久性をもより充分に発揮し得る硬化物を与える樹脂組成物とすることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、このような樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等に特に有用なものとなることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル系重合体と、エーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、ガラス転移温度10〜90℃、かつ硬化収縮率12%以下を満たすものである(メタ)アクリル系樹脂組成物である。
本発明はまた、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる(メタ)アクリル系硬化物品でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、(メタ)アクリル系重合体(以下、「(メタ)アクリル系重合体(A)」ともいう。)と、エーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体(以下、「(メタ)アクリル系単量体(B)」ともいう。)とを含有するものである。
本発明においては、このような(メタ)アクリル系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)を硬化させて得られる硬化物が、ガラス転移温度10〜90℃を満たすことになる。このガラス転移温度が10℃未満であると、耐水性や復元性に優れた硬化物を与える樹脂組成物とすることができないおそれがあり、90℃を超えると、成形性、離型性や耐久性に優れた硬化物を与える樹脂組成物とすることができず、経時的な耐光性の低下を充分に防止することができないおそれがある。好ましくは、15〜80℃であり、より好ましくは、20〜70℃である。
ここで、「ガラス転移」とは、非晶質高分子化合物などのガラス状態の物質を加熱した際に、当該物質の熱容量や熱膨張率等の温度依存性が急激に変化する現象を意味し、「ガラス転移」の起こる温度を「ガラス転移温度」という。このようなガラス転移温度(℃)としては、例えば、以下の手法(動的粘弾性測定法)により測定することができる。
【0008】
<ガラス転移温度>
1、硬化物(試験片)の作成
厚さ200μのシリコンゴム型スペーサーを2枚のガラス板で挟んだガラス型の中に、樹脂組成物を注入する。次に、250mW超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:35mJ/cm・秒)を60秒間照射し、組成物を硬化させる。室温まで自然冷却後、ガラス型から取り外して、シート状の硬化物を得た後、この厚さ200μmのシート状成形体を5mm幅の短冊状に切断して試験片とする。
2、ガラス転移温度の測定
上記試験片について、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製;RSA−II)を用いて動的粘弾性測定を行い、ガラス転移温度(℃)を測定する。具体的には、測定条件を、引張モード、周波数:1Hz、クランプ間距離:25mm、振幅:0.1%、昇温速度:5℃/分に設定し、−40℃から150℃まで昇温した際に損失正接(tanδ)の値がピークとなる温度をガラス転移温度(℃)とする。
【0009】
上記ガラス転移温度を上述した範囲内とするためには、例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する単量体の種類や(メタ)アクリル系重合体(A)の含有量、(メタ)アクリル系単量体(B)を構成する化合物の種類(例えば、後述するように、(メタ)アクリル系単量体(B)を構成するポリオール化合物の種類や、エーテル構造を構成するアルキレンオキシド単位の繰り返し数等)等を適宜調節するという手法が好ましく採用され得る。
【0010】
本発明においてはまた、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、硬化収縮率12%以下を満たすことになるが、該硬化収縮率が12%を超える場合には、成形性、離型性のみならず、耐光性等の耐久性にも優れる硬化物を得ることができないおそれがあり、種々の用途に有用なものとするという本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。好ましくは11%以下であり、より好ましくは10%以下である。下限としては、1%以上であることが好ましい。1%未満であると、離型性が低下するおそれがある。より好ましくは、3%以上である。
上記硬化収縮率(%)は、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0011】
<硬化収縮率>
1、硬化物(試験片)の作成
厚さ200μのシリコンゴム型スペーサーを2枚のガラス板で挟んだガラス型の中に、樹脂組成物を注入する。次に、250mW超高圧水銀ランプを用いて紫外線(主波長:365nm、照射強度:35mJ/cm・秒)を60秒間照射し、組成物を硬化させる。室温まで自然冷却後、ガラス型から取り外して、シート状の硬化物を得た後、これを試験片とする。
2、硬化収縮率の測定
上記試験片について、JIS K6901:1999に準じ、比重計(東洋精機社製、自動比重計D−H−01型)を用い、樹脂組成物の硬化前の密度(a)と硬化後の密度(b)とを測定し、下記式により体積膨張率(%)を求め、これを硬化収縮率(%)とする。
体積膨張率(%)={(硬化後の密度(b)−硬化前の密度(a))/硬化前の密度(b)}×100
【0012】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる厚み200μの硬化物が、波長380nmでの初期光線透過率80%以上を満たすことが好適である。これにより、例えば、例えば、LED(発光ダイオード:light−emitting diode)封止剤、光ケーブル、光導波路、レンズシート等の光学部材のように高度の透明性が要求される分野において更に好適なものとすることが可能となる。より好ましくは82%以上であり、更に好ましくは85%以上である。
上記波長380nmでの初期光線透過率としては、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0013】
<波長380nmでの初期光線透過率>
1、硬化物(試験片)の作成
上記硬化収縮率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にして試験片を得る。
2、初期光線透過率の測定
上記試験片について、分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定する。
【0014】
本発明においてはまた、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率80%以上を満たすことが好適である。これにより、可視光の短波長領域から紫外領域の発光波長分布を有する光源からの光に対しても着色や変質、劣化を起こしにくいという性能、すなわち耐光性に優れた硬化物を与えることが可能となり、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは95%以上であることである。
上記促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率としては、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0015】
<促進耐光性試験200時間後の光線透過率保持率>
1、硬化物(試験片)の作成
上記硬化収縮率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にして試験片を得る。
2、光線透過率保持率の測定
上記試験片について、まず、分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験前の光線透過率(%)」とする。その後、この試験片について、超エネルギー照射試験機(スガ試験機社製)を用いて、照射強度90mW/cm、波長295〜450nm、湿度70%Rh、温度50℃にて照射を行う。200時間照射後の試験片を再び分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験後の光線透過率(%)」とする。その後、以下の式により光線透過率保持率(%)を求める。
光線透過率保持率(%)=(促進耐光性試験後の光線透過率/促進耐光性試験前の光線透過率)×100
【0016】
本発明において、上述した特性を満たす硬化物を与える(メタ)アクリル系樹脂組成物としては、(メタ)アクリル系重合体(A)及び(メタ)アクリル系単量体(B)を含有するものであるが、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上を含有することができる。なお、本発明の作用効果を損なわない限り、他の成分を更に含有していてもよい。
このような(メタ)アクリル系樹脂組成物において、(メタ)アクリル系重合体(A)としては、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸を、全単量体成分100モル%に対して50モル%以上含む単量体成分を重合して得られるものであることが好ましく、その具体的な形態は特に限定されるものではない。
【0017】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する単量体成分としては、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等の単官能(メタ)アクリレート;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル;
【0018】
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物;
無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の単官能α,β−不飽和化合物等。
【0019】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)としてはまた、上記(メタ)アクリル系単量体(B)と重合可能な官能基を有するものであることが好ましい。これにより、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の光学特性、例えば、硬化物の靱性や耐水性をより充分に向上させることが可能となる。
このような官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の製造方法等が好適である。なお、これら以外の方法を用いることもできる。
【0020】
(1)カルボキシル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、グリシジル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、グリシジル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、カルボキシル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(2)水酸基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、イソシアネート基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、イソシアネート基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(3)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、ビニルエーテル基及び他の重合性基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、ビニルエーテル基及び他の重合性基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(4)水酸基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、酸無水物基を含有する重合性単量体とを反応させる方法、又は、酸無水物基を含有する重合性単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体と、水酸基を含有する重合性単量体とを反応させる方法。
(5)多官能単量体を含む単量体成分を部分的に重合させて、二重結合の一部を重合体の側鎖に残存させる方法。
【0021】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)の含有量としては、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、5〜50質量%であることが好ましい。これにより、特に硬化時の収縮が充分に抑制され、より良好な成形性が得られることとなる。より好ましくは、10〜40質量%であり、更に好ましくは、10〜30質量%である。
【0022】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物において、(メタ)アクリル系単量体(B)としては、エーテル構造を有するものであればよいが、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物であることが好適である。すなわち、上記(メタ)アクリル系単量体(B)は、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物であって、かつエーテル構造を有するものであることが好適である。(メタ)アクリル系単量体(B)がエーテル構造を有することにより、耐光性を向上させることができるとともに、透明性を高めることが可能となる。
なお、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物とは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物(以下、「ポリオール化合物」ともいう。)と、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸及び/又はアクリル酸)とから生成し得るエステル化物を意味する。
【0023】
上記ポリオール化合物としては、芳香族炭化水素構造を有しないものであることが好適であり、これにより、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物において、耐光性をより充分に向上させることが可能となる。
このようなポリオール化合物、すなわち芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール等のアルカンジオールや、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール等の他、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
上記芳香族炭化水素構造を有さず、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物としてはまた、水酸基(すなわち、自身の有する水酸基)に対してβ−水素を含有しない化合物であることが好適である。これにより、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物において、光による劣化や変色に対する耐性をより充分に向上させることが可能となる。
このようなポリオール化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸とのエステル化物、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールヘキサン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。中でも、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンが好適である。
【0025】
上記(メタ)アクリル酸エステル化物としては、市販品を用いてもよいし、自ら調整して用いてもよい。自ら調整する手法としては、例えば、上記ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを触媒の存在下で脱アルコール反応させることにより製造する方法(エステル交換法)や、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸とを触媒の存在下で脱水反応させることにより製造する方法(脱水縮合法)を用いることが好ましい。
【0026】
上記エステル交換法に使用可能な(メタ)アクリル酸エステルとしては特に限定されるものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が好適である。
【0027】
上記エステル交換法において、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸エステル)としては、例えば、1:1〜1:20であることが好ましい。より好ましくは、1:1.5〜1:10であり、更に好ましくは、1:2〜1:5である。
【0028】
上記エステル交換法に使用可能な触媒としては特に限定されないが、例えば、アルカリ金属アルコラート、マグネシウムアルコラート、アルミニウムアルコラート、チタンアルコラート、ジブチルスズオキシド、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜3質量%である。なお、反応後には、通常の手法により触媒を除去することが好適である。
【0029】
上記エステル交換法に使用可能な溶媒としては特に限定されないが、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、シメン等が挙げられる。溶媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、1〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50質量%であり、更に好ましくは、10〜30質量%である。
【0030】
上記エステル交換法における反応温度としては、例えば、50〜150℃とすることが好ましい。より好ましくは、70〜140℃であり、更に好ましくは、90〜130℃である。
【0031】
上記脱水縮合法において、上記ポリオール化合物と(メタ)アクリル酸との仕込みモル比(ポリオール化合物中の水酸基:(メタ)アクリル酸)としては、例えば、1:1〜1:5であることが好ましい。より好ましくは、1:1.01〜1:2であり、更に好ましくは、1:1.05〜1:1.5である。
【0032】
上記脱水縮合法に使用可能な触媒としては特に限定されないが、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。触媒の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜3質量%である。なお、反応後は、通常の手法により触媒を除去することが好適である。
上記触媒の中でも、得られる樹脂組成物中のスルホン酸誘導体(硫黄成分)の含有量をより低減させるという観点からは、陽イオン交換樹脂が好適である。陽イオン交換樹脂としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製のアンバーリスト(登録商標)やアンバーライト(登録商標)、三菱化学社製のダイヤイオン(登録商標)等が挙げられる。また、陽イオン交換樹脂を触媒として使用する場合には、使用前に、トルエン、メタノール等の有機溶媒や水で充分に洗浄し、スルホン酸誘導体(硫黄成分)の溶出を防止することが好ましい。
【0033】
上記脱水縮合法に使用可能な溶媒の種類や使用量としては特に限定されず、例えば、上記エステル交換法において上述した形態が好ましい形態として挙げられる。上記脱水縮合法における反応温度としてもまた、特に限定されないが、例えば、上記エステル交換法において上述したように設定することが好適である。
【0034】
上記エステル交換法及び脱水縮合法においては、エステル交換反応又は脱水縮合反応中の(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止することを目的として、反応系に重合防止剤を添加することが好適である。重合防止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)及びその誘導体(TEMPO誘導体);ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン;銅塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。重合防止剤の使用量は、例えば、反応の総仕込量100質量%に対して、0.0001〜2質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.005〜0.5質量%である。
【0035】
上記(メタ)アクリル系単量体(B)において、エーテル構造の含有量としては、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。5質量%未満であると、エーテル構造の存在により発揮される上述の効果が充分に得られないおそれがある。耐光性を更に向上させるという観点からは、上記エーテル構造の含有量は大きいほど好ましく、具体的には、10質量%以上であることがより好ましい。更に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは、30質量%以上である。また、上記エーテル構造の含有量の上限は特に制限されないが、硬化物の耐水性を向上させるという観点から、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、更に好ましくは55質量%以下である。
上記エーテル構造の含有量は、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0036】
<エーテル構造の含有量>
(メタ)アクリル系樹脂組成物(15mg)及び48質量%臭化水素酸(200mg)を、5mLのアルミシールバイアル中に入れ、テフロン(登録商標)シリコンセプタムを介して封じ、オーブン中で150℃にて2時間加熱し、臭素酸分解反応を進行させた後、(メタ)アクリル系樹脂組成物中のエーテル構造を臭素化させる。反応終了後、反応液中の臭化物(例えば、1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモブタン、1,4−ジブロモブタン等)の含有量をガスクロマトグラフィーにより測定し、検量線との比較により定量する。定量された臭化物の含有量の値から、(メタ)アクリル系樹脂組成物中の上記エーテル構造の含有量を算出する。
【0037】
上記エーテル構造としては、例えば、下記一般式(1);
【0038】
【化1】

【0039】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、メチル基及びエチル基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。但し、R、R及びRの合計炭素原子数は、0〜2である。nは、1〜100の数を表す。)で表されるものであることが好適である。このようなエーテル構造を有することにより、耐光性を更に向上させることができるとともに、透明性をより高めることが可能となる。すなわち、通常の樹脂組成物に光重合開始剤を添加して光硬化させた場合には、光重合開始剤の添加に起因して耐光性や可視光の短波長領域の透過率が充分とはならないことがあるが、上記一般式(1)で表されるエーテル構造を有することにより、光重合開始剤の添加量をより大幅に削減することができるため、黄変成分及び短波長の光を吸収する成分を充分に低減することが可能となり、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることとなる。
【0040】
上記一般式(1)で表されるエーテル構造は、アルキレンオキシド単位を繰り返し単位とする構造であるが、当該アルキレンオキシド単位は、場合によっては、上述した条件を満たす側鎖を有するものであってもよい。このようなエーテル構造を生成するには、アルキレンオキシド単位を付加するための前駆体として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシド(1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド)からなる群より選択される少なくとも1種のアルキレンオキシドを用いることが好適である。
【0041】
上記一般式(1)で表されるエーテル構造において、アルキレンオキシド単位の繰り返し数(上記一般式(1)中のn)は、1〜100の数である。nが小さ過ぎると充分な耐光性が得られないおそれがあり、また逆にnが大き過ぎると耐水性や硬度を充分なものとすることができないおそれがある。好ましくは、1〜15であり、より好ましくは、1〜10であり、更に好ましくは、1〜8である。なお、場合によっては、上記好適範囲を外れる数のアルキレンオキシド単位が付加された(メタ)アクリル系単量体(B)を用いてもよい。
【0042】
上記一般式(1)で表されるエーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体(B)としては、市販品を用いてもよいし、自ら調整して用いてもよい。自ら調整する手法としては、例えば、通常の手法によりポリオール化合物の水酸基にアルキレンオキシド単位を付加した後、当該化合物と、(メタ)アクリル酸(又は(メタ)アクリル酸エステル)とを上述したエステル交換法又は脱水縮合法でエステル化することにより、上記エーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体(B)を得ることが好適である。なお、アルキレンオキシド単位が付加されたポリオール化合物が市販されている場合には、当該商品を用いてエステル化反応のみを自ら行ってもよい。
上記(メタ)アクリル系単量体(B)の特に好適な形態としては、芳香族炭化水素構造を有さず、かつ水酸基に対してβ−水素を含有しない1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物に、アルキレンオキシドを付加して得られる化合物の(メタ)アクリル酸エステル化物であり、該アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びブチレンオキシドからなる群より選択される少なくとも1種のものである形態である。
【0043】
なお、上記一般式(1)で表されるエーテル構造の含有量を上述した範囲内とするためには、例えば、上記一般式(1)で表されるエーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体(B)を製造する際のエーテル構造の前駆体(例えば、アルキレンオキシド)の使用量を調節する手法が好ましく採用され得る。
【0044】
上記(メタ)アクリル系単量体(B)の含有量としては、該単量体(B)が有するエーテル構造(好ましくは上記一般式(1)で表されるエーテル構造)の含有量が上述した範囲内となるように設定することが好適であるが、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、30〜95質量%であることが好適である。これにより、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物において、寸法安定性及び成形性のバランスをより良好なものとすることができる。より好ましくは、40〜95質量%であり、更に好ましくは、60〜95質量%である。
【0045】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物としてはまた、上述したように上記(メタ)アクリル系重合体(A)及び(メタ)アクリル系単量体(B)に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体(B)以外の重合性単量体;重合性オリゴマー;(メタ)アクリル系重合体(A)以外の他の重合体;重合開始剤;これら以外のその他の添加剤等が挙げられる。
以下では、これら他の成分について、更に説明する。
【0046】
上記(メタ)アクリル系単量体(B)以外の重合性単量体としては特に限定されず、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ブチル等の単官能(メタ)アクリレート;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリルアミド;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル;
N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物;
【0047】
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等の単官能ビニル化合物;
無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、メチレンマロン酸モノメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等の単官能α,β−不飽和化合物;
ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル;
ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物等。
なお、このような重合性単量体が樹脂組成物中に配合されることにより、樹脂組成物の粘度の低減や硬化速度の向上といった作用効果が充分に得られることになる。
【0048】
上記重合性単量体の含有量としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、樹脂組成物の粘度の低減や硬化速度の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0049】
上記重合性オリゴマーとしては特に限定されず、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
飽和若しくは不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と、飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;
多官能エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;
【0050】
多官能オキセタン化合物(例えば、4,4’−ビス[(3−エチニル−3−オキセタニル
)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸のビス[(3−エチニル−3−オキセタニル)メチル]エステル、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等)と、(メタ)アクリル酸との反応で得られるオキセタン(メタ)アクリレート;
飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と、有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;
ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;
ポリアミドと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等。
なお、このような重合性オリゴマーが樹脂組成物中に配合されることにより、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の靭性の向上といった作用効果が充分に得られることになる。
【0051】
上記重合性オリゴマーの含有量としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の靭性の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0052】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)以外の他の重合体としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ケイ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、飽和ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、AS樹脂、EVA樹脂等の1種又は2種以上を使用することができる。
なお、このような重合体が樹脂組成物中に配合されることにより、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の光学特性や力学特性の向上といった作用効果を得ることができる。
【0053】
上記他の重合体の含有量としては特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、0.1〜50質量%であることが好適である。この範囲内に設定することにより、上記樹脂組成物を硬化させて得られる光学特性や力学特性の向上といった作用効果を充分に得ることが可能となる。
【0054】
上記重合開始剤としては、通常使用されるものを用いればよく、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられる。中でも、少なくとも光重合開始剤を用いることが好適であり、これにより、本発明の樹脂組成物を用いた光学部品等の製造効率が向上され得る。なお、通常の硬化性の樹脂組成物に光重合開始剤を添加した場合、光重合開始剤の添加に起因して耐光性や可視光の短波長領域の透過率が充分とはならないことがあるが、本発明の樹脂組成物を用いることにより、光重合開始剤の添加量を充分に低減することが可能となるため、耐光性及び可視光の短波長領域の透過率がより向上され、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、種々の用途により好適なものとすることが可能となる。また、光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用してもよく、この場合には、更に光重合開始剤の添加量を低減することができるため、好適である。
このように、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、重合開始剤を含むことが好適であり、樹脂組成物中に重合開始剤が配合されることにより、所定の重合開始要因に応じて重合(硬化)が開始されることになる。
【0055】
上記光重合開始剤としては特に限定されず、例えば、下記の化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;
【0056】
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;
2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類等。
【0057】
上記熱重合開始剤としては特に限定されず、例えば、下記の有機過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、
【0058】
2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノオエート、
【0059】
2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメトルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等の有機過酸化物系開始剤;
【0060】
2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’−アゾビス[N−(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、
【0061】
2,2’−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等のアゾ系開始剤等。
これらの重合開始剤の中でも、芳香族炭化水素構造を含まないものが好適に用いられ得る。
【0062】
なお、上記熱重合開始剤とともに、熱重合促進剤を含んでいてもよく、例えば、コバルト、銅、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ジルコニウム、クロム、バナジウム、カルシウム、カリウム等の金属石鹸;1級、2級、3級のアミン化合物;4級アンモニウム塩;チオ尿素化合物;ケトン化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、アセチルアセトン、アセト酢酸メチルが好適である。
【0063】
上記重合開始剤の配合量(光重合開始剤と熱重合開始剤との合計量)としては、例えば、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物の全量100質量%に対し、0.001〜10質量%であることが好ましい。0.001質量%未満であると、重合性が充分とはならないおそれがあり、10質量%を超えると、充分な耐光性を発揮できる硬化物を得ることができないおそれがある。より好ましくは、0.001〜5質量%であり、更に好ましくは、0.001〜3質量%であり、特に好ましくは、0.005〜1質量%であり、最も好ましくは、0.01〜0.5質量%である。
【0064】
また上記重合開始剤として光重合開始剤と熱重合開始剤とを併用する場合、これらの配合量の質量比(熱重合開始剤/光重合開始剤)としては、例えば、1〜100/1であることが好ましい。熱重合開始剤の割合が1未満であると、より充分に耐候性を向上させることができないおそれがあり、100を超えると、硬化性を充分なものとすることができないおそれがある。より好ましくは、2〜100/1であり、更に好ましくは、2〜50/1であり、より更に好ましくは、2〜30/1であり、特に好ましくは、3〜20/1であり、最も好ましくは、5〜20/1である。
【0065】
上記その他の添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、無機充填材、消泡剤、増粘剤、揺変化剤、レベリング剤、離型剤等の1種又は2種以上を使用することができ、これらの添加剤は通常の使用形態により用いられ得る。なお、離型剤の選択は、精密な光学材料等を成形する際には重要となる。
【0066】
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸ナトリウム等の金属石鹸;カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等の脂肪酸;ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;メチルステアレート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ソルビタンモノステアレート等の脂肪酸エステル;KF96、KF965、KF410、KF412、KF4701、KF54、KS61、KM244F、KS702、KF725、KS707、KS800P(いずれも商品名、信越化学工業社製)等のポリエーテル変性シリコーンオイルを除くシリコーン系離型剤;ポリフォックスPF−136A、PF−156A、PF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−651、PF−652、PF−3320(いずれも商品名、オムノバ社製)等のフッ素系界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、充分な透明性を保持したまま離型性を発現できるという観点からは、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、フッ素系界面活性剤が好適である。
【0067】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物としては、(メタ)アクリル系重合体(A)及び(メタ)アクリル系単量体(B)を含有するものであるが、このような樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)及び及び必要に応じてその他の成分を混合することにより得ることができる。また、例えば、(メタ)アクリル系重合体(A)を部分重合することによって(メタ)アクリル系重合体(A)と(メタ)アクリル系単量体との混合物を調製し、この混合物に、(メタ)アクリル系単量体(B)及び必要に応じてその他の成分を添加することによっても製造することができる。更に、官能基を有する(メタ)アクリル系重合体(A)を部分重合により調製し、該官能基と反応しうる別の官能基を有するメタクリレートを混合して反応させることによって、上記(メタ)アクリル系重合体(A)、(メタ)アクリル系単量体(B)及び必要に応じてその他の成分を含有する混合物を製造してもよい。
【0068】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物はまた、該樹脂組成物に含まれ得るスルホン酸、スルホン酸塩及び/又はスルホン酸エステル(以下、単に「スルホン酸誘導体」ともいう。)の含有量が、該樹脂組成物全量に対し、硫黄分換算で100ppm以下であることが好適である。すなわち、上記樹脂組成物中のスルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率が、硫黄分換算で100ppm以下であることが好適であり、これにより、経時的な物性の低下をより充分に抑制する、すなわち耐久性をより充分に向上することが可能となる。より好ましくは30ppm以下であり、更に好ましくは10ppm以下である。
なお、「スルホン酸(塩)」とは、スルホン酸及び/又はスルホン酸塩を意味する。
上記スルホン酸誘導体含有率としては、例えば、以下のようにして求めることができる。
【0069】
<スルホン酸誘導体含有率>
樹脂組成物をトルエンに溶解させ、水を添加後、分液ロートにて水層中にスルホン酸及びスルホン酸塩を抽出する。この水層を分離し、エバポレーターを用いて濃縮し、更に熱風乾燥機を用いて水分を除去する。その後、アセトンに溶解させ、ガスクロマトグラフィーによりスルホン酸の含有量を測定し、検量線との比較により定量する。
【0070】
上記樹脂組成物中のスルホン酸誘導体含有率を上述した範囲内とするためには、例えば、(1)樹脂組成物の製造工程においてスルホン酸誘導体を使用しないか、又は、(2)樹脂組成物の製造工程においてスルホン酸誘導体を使用した場合には、当該スルホン酸誘導体を除去する除去工程を更に行う、という手法を用いることが好適である。
上記(1)の手法による場合には、例えば、触媒として、通常用いられているスルホン酸誘導体(特に、p−トルエンスルホン酸)以外の化合物(例えば、陽イオン交換樹脂)を用いた脱水縮合法か、又は、触媒として金属アルコラート等を用いたエステル交換法により、上記(メタ)アクリル系単量体(B)を製造することとすればよい。このような手法によると、スルホン酸誘導体含有率は理論上はゼロであり、除去工程を付加しなくてもよいため、製造コストの観点からも好適である。
上記(2)の手法による場合、スルホン酸誘導体を除去する手段としては、例えば、水又はアルカリ水溶液を用いた洗浄方法や、塩基性無機塩(例えば、MgO)又は陰イオン交換樹脂を用いた吸着ろ過方法を採用することができる。
【0071】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、硬化により硬化物となるものである。硬化方法としては特に限定されず、例えば、加熱や、電磁波、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、ガンマー線等の活性エネルギー線の照射により行うことができる。中でも、活性エネルギー線の照射により行うことが好ましく、紫外線を用いることが特に好ましい。
紫外線照射による硬化の場合には、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いることが好適である。このような光源としては、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等が好ましく、また、これらの光源とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0072】
また電子線照射による硬化の場合には、加速電圧が10〜500kVである電子線を用いることが好適である。より好ましくは、20〜300kVであり、更に好ましくは、30〜200kVである。電子線の照射量は、2〜500kGyであることが好ましく、より好ましくは、3〜300kGyであり、更に好ましくは、5〜200kGyである。なお、電子線とともに、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0073】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物はまた、上述した熱重合開始剤及び必要に応じて熱重合促進剤を含むことにより、室温で又は加熱により硬化する熱硬化性の組成物となり得る。
室温で硬化させる場合には、例えば、硬化温度を−20〜50℃に設定することが好ましい。−20℃未満であると、硬化速度を充分に向上させることができず、生産性や硬化物物性を優れたものとすることができないおそれがあり、50℃を超えると、急激に硬化が進行して、硬化物の発泡やクラック、成形品の反り等の不具合が発生するおそれがある。より好ましくは、0〜40℃である。
【0074】
また加温により硬化させる場合には、例えば、硬化温度を40〜180℃に設定することが好ましい。40℃未満であると、硬化速度を充分に向上させることができず、生産性や硬化物物性を優れたものとすることができないおそれがあり、180℃を超えると、急激に硬化が進行して、硬化物の発泡やクラック、成形品の反り等の不具合が発生するおそれがある。より好ましくは、50〜150℃であり、更に好ましくは、60〜120℃である。
【0075】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物((メタ)アクリル系硬化物品)としては、優れた光学特性(透明性)を有し、成形性(平滑性、型汚れ性)、離型性、耐光性、耐久性(耐光性)等に優れるものであり、例えば、LED封止剤、光ケーブル、光導波路、レンズシート、光学フィルム、光学レンズ等の光学部材、照明カバー、装飾材等の照明部材、ヘッドランプ部品、インパネ部品等の自動車部材等に特に好適に用いることが可能なものである。上記(メタ)アクリル系硬化物品は、上記特性を有することから、これらの用途のいずれにも好適に用いることができるが、レンズシートは形状が複雑なゆえ、物性や耐久性に加えて、特に離型性が重要な用途であることから、光学部材の中でもレンズシート用に特に好ましい。レンズシートにおいては、離型時に大きな力や長時間力がかかった場合、離型時にレンズシートの欠け、ワレ等の不具合が発生するおそれがあり望ましくないが、上記(メタ)アクリル系硬化物品は、成形性等に優れるだけでなく、離型性にも優れることから、レンズシートに特に好適に用いることができる。このように、上記(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる(メタ)アクリル系硬化物品もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0076】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上述のような構成からなり、優れた光学特性(透明性)を有し、成形性(平滑性、型汚れ性)、離型性、耐光性、耐久性、(耐光性)等に優れる硬化物を与えることができ、例えば、光学部材、照明部材、自動車部材等の他、多くの用途に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
合成例1
(NEO75DM)
攪拌装置、濃度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたガラス製フラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド7.5モル付加物(NEO75)430g、メチルメタクリレート(MMA)800g、ジブチルスズオキシド(DBTO)6.5g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4H−TEMPO)0.043gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO75DM)とした。
得られた化合物(NEO75DM)に含まれる硫黄原子の含有量を誘導結合プラズマ分析(Inductively Coupled Plasma:以下、「ICP」と略す。)により測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0079】
合成例2
(NEO60DM)
合成例1と同様の反応装置に、ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド6.0モル付加物(NEO60)350g、MMA 650g、DBTO 5.2g、4H−TEMPO 0.035gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO60DM)とした。
得られた化合物(NEO60DM)に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0080】
合成例3
(NEO40DM)
合成例1と同様の反応装置に、ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド4.0モル付加物(NEO40)260g、MMA 480g、DBTO 3.9g、4H−TEMPO 0.026gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールヘのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO40DM)とした。
得られた化合物(NEO40DM)に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0081】
合成例4
(NEO90DM)
合成例1と同様の反応装置に、ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド9.0モル付加物(NEO90)520g、MMA 960g、DBTO 7.8g、4H−TEMPO 0.052gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO90DM)とした。
得られた化合物(NEO90DM)に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0082】
合成例5
(PEG20DM(n4))
合成例1と同様の反応装置に、ポリエチレングリコール(数平均分子量200、エチレンオキシドの平均付加モル数:4モル)200g、MMA 400g、DBTO 5.2g、4H−TEMPO 0.020gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ポリエリレングリコールジメタクリレートを得た。これを化合物(PEG20DM(n4))とした。
得られた化合物(PEG20DM(n4))に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0083】
合成例6
(PEG40DM(n9))
合成例1と同様の反応装置に、ポリエチレングリコール(数平均分子量400、エチレンオキシドの平均付加モル数:9モル)400g、MMA 800g、DBTO 6.3g、4H−TEMPO 0.040gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ポリエリレングリコールジメタクリレートを得た。これを化合物(PEG40DM(n9))とした。
得られた化合物(PEG40DM(n9))に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0084】
合成例7
(PEG10DM(n2))
合成例1と同様の反応装置に、ジエチレングリコール 100g、MMA 200g、DBTO 2.6g、4H−TEMPO 0.010gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成するメタノールのみを除去し、8時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ポリエリレングリコールジメタクリレートを得た。これを化合物(PEG10DM(n2))とした。
得られた化合物(PEG10DM(n2))に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、硫黄原子は観測されなかった。
【0085】
合成例8
(NEO40DMS1)
合成例1と同様の反応装置に、NEO40 300g、MMA480g、メタクリル酸(MAA)180g、トルエン及び水で洗浄後乾燥させた陽イオン交換樹脂(オルガノ社製、商品名「アンバーリスト15D」)25g、トルエン 50g、4H−TEMPO 0.030gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成する水を除去し、8時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、陽イオン交換樹脂をろ過により除去し、更に加熱減圧によりトルエン、未反応のMAAを除去し、ネオペンチルグリコールヘのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO40DMS1)とした。
得られた化合物(NEO40DMS1)に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、10ppmであった。
【0086】
合成例9
(NEO40DMS2)
合成例1と同様の反応装置に、NEO40 300g、MMA 480g、メタクリル酸(MAA)180g、p−トルエンスルホン酸 3g、トルエン 50g、4H−TEMPO 0.030gを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応により生成する水を除去し、8時間かけて脱水エステル化反応を行った。反応終了後、水洗操作を5回行い、更に加熱滅圧によりトルエン、未反応のMAAを除去し、ネオペンチルグリコールヘのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(NEO40DMS2)とした。
得られた化合物(NEO40DMS2)に含まれる硫黄原子の含有量をICPにより測定したところ、96ppmであった。
【0087】
実施例1
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたガラス製フラスコに、合成例1で得られた化合物(NEO75DM)90重量部、ポリメタクリレート(住友化学製、商品名「スミペックスLG−6A」)10重量部、重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ製、商品名「ダロキュアD−1173」)0.2重量部を仕込み、90℃で2時間攪拌し、均一な(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。
得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物について、エーテル構造含有量、スルホン酸及び/又はスルホン酸エステル由来の硫黄原子含有量(スルホン酸誘導体含有率)を上述したようにして求め、また、この樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物について、ガラス転移温度、硬化収縮率及び初期光線透過率を上述したようにして測定し、下記評価方法により成形性、離型性及び耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
<成形性:平滑性及び防汚性>
1、硬化物(試験片)の作成
上記硬化収縮率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にしてシート状の硬化物(試験片)を得る。
2、成形性(平滑性)の評価
上記シート状の硬化物について、下記基準により目視にて評価する。
○:クラック、ヒケがなく表面平滑性が良好である。
×:クラック、ヒケのいずれかが発生し表面平滑性が不良である。
3、成形性(防汚性)の評価
上記シート状の硬化物を得る際に使用したガラス型を、下記基準により目視にて評価する。
○;ガラス型に付着物がなく、まったく汚れていない。
×;ガラス型に何らかの付着物があり、汚れている。
【0089】
<離型性>
フレネルレンズのプリズム形状と逆の形状が凹凸として形成された金属型の上に、厚さ200μのシリコンゴム型スペーサーを配置し、このスペーサー内に樹脂組成物を充填する。次に、樹脂組成物の表面をPETフィルムで被覆する。その後、上記硬化収縮率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様条件で紫外線を照射して硬化させ、レンズパターンが形成されたシート状の硬化物(以下、レンズシートという)を得る。
以下、得られたレンズシートを下記基準で評価する。
〇:金属型からレンズシートの離型が僅かな力で容易に行え、かつ、金属型に汚れが見られない。
×:金属型からレンズシートが離型できない。
△:金属型からレンズシートが離型できるが、該シートに欠け・ワレが発生した。
金属型からレンズシートが離型できるが、金属型に汚れが見られる。以上、いずれかの現象が見られた場合。
【0090】
<耐久性:透過率保持性>
1、硬化物(試験片)の作成
上記硬化収縮率の測定における硬化物(試験片)の作成方法と同様にしてシート状の硬化物(試験片)を得る。
2、耐久性(透過率保持性)の評価
上記試験片について、まず、分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験前の光線透過率(%)」とする。その後、この試験片について、超エネルギー照射試験機(スガ試験機社製)を用いて、照射強度90mW/cm、波長295〜450nm、湿度70%Rh、温度50℃にて照射を行う。200時間照射後の試験片を再び分光光度計UV−3100(島津製作所製)を用いて380nmにおける光線透過率(%)を測定し、これを「促進耐光性試験後の光線透過率(%)」とする。その後、以下の式により光線透過率保持率(%)を求める。
光線透過率保持率(%)=(促進耐光性試験後の光線透過率/促進耐光性試験前の光線透過率)×100
下記基準により評価する。
◎:98%以上
○:95%以上98%未満
△:80%以上95%未満
×:70%以上80%未満
××:70%以下
【0091】
実施例2〜13、比較例1〜6
実施例1における「化合物(NEO75DM)90重量部」に代えて表1及び2に記載の化合物及び配合量を用いた他は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物のそれぞれについて、実施例1と同様に各種物性を評価した。結果を表1及び2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1及び2の記載は、以下のとおりである。
「PMMA(LG−6A)」:ポリメタクリレート(住友化学製、商品名「スミペックスLG−6A」)
「CHMA」:シクロヘキシルメタクリレート
「IBMA」:イソボルニルメタクリレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体と、エーテル構造を有する(メタ)アクリル系単量体とを含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、ガラス転移温度10〜90℃、かつ硬化収縮率12%以下を満たすものである
ことを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、該樹脂組成物中のスルホン酸(塩)及び/又はスルホン酸エステル含有率が、硫黄分換算で100ppm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる
ことを特徴とする(メタ)アクリル系硬化物品。

【公開番号】特開2007−84782(P2007−84782A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23373(P2006−23373)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】