説明

(メタ)アクリル酸の精製方法

【課題】第一晶析槽の除熱負荷を低減し、第一晶析槽の伝熱面におけるスケーリングを抑制し、また、第一晶析槽の寿命を延ばすことが可能な(メタ)アクリル酸の精製方法を提供する。
【解決手段】伝熱面を介して熱交換を行う冷却機構を有した複数個の晶析槽からなる晶析装置を用いて、(メタ)アクリル酸を晶析する(メタ)アクリル酸の精製方法において、前記複数個の晶析槽は直列に接続され、前記晶析槽内の温度は、接続された順序で低くなるように設定されており、原料を導入する第一晶析槽から数えて2番目以降の晶析槽のうち、少なくとも1つ以上の晶析槽内に存在するスラリーのスラリー量に対し、1時間当たり20〜100体積%の該スラリーを該第一晶析槽に循環する(メタ)アクリル酸の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸の精製方法に関する。詳しくは粗(メタ)アクリル酸混合液を複数の晶析槽を用いて冷却し、晶析することによる(メタ)アクリル酸の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直接酸化法などにより得られる(メタ)アクリル酸(アクリル酸又はメタクリル酸を示す、以下同様)中には、(メタ)アクリル酸以外のカルボン酸類やアルデヒド類が不純物として含まれる。
【0003】
これら不純物を含む(メタ)アクリル酸を精製する方法として、蒸留法と晶析法とが知られている。蒸留法では、用いる蒸留塔の構造が簡易であり容易に精製を行うことが出来る。しかし、(メタ)アクリル酸が蒸留塔内で重合反応を起こし、蒸留塔を閉塞させる可能性がある。そこで、一般的には重合防止剤を添加して蒸留操作が行われているが、重合防止剤を最終製品から完全に除去しきれず、製品に重合防止剤が残存する場合がある。一方、晶析法では、蒸留法よりも低い温度で(メタ)アクリル酸の結晶を晶析することができるため、重合防止剤を用いることなく(メタ)アクリル酸の重合反応を回避することができるため、より純度の高い(メタ)アクリル酸を得ることができる。
【0004】
晶析法により(メタ)アクリル酸を精製する方法として、特許文献1には、2槽以上の晶析槽を用いて段階的に(メタ)アクリル酸結晶を晶析する方法が開示されている。該方法では、(メタ)アクリル酸の結晶を均一に生成し、かつ、高濃度のスラリーを得ることができる。また、特許文献2には、晶析槽から抜き出した生成スラリーの一部を該晶析槽に還流しながら晶析する方法が開示されている。該方法では、晶析槽一基内での滞留時間を長くすることでスラリー濃度を増加させ、また、晶析槽内壁面への結晶の付着を防止することができる。また、特許文献3に記載の方法では、結晶成長を促進する設備と熱交換器を別々に設置し、また複数存在する結晶成長を促進する設備を連結することで、当該設備内のスラリー濃度を容易に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/088981号パンフレット
【特許文献2】特開2002−102603号公報
【特許文献3】特開2002−370002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、複数の晶析槽を用いて(メタ)アクリル酸の晶析を行う場合、原料の粗(メタ)アクリル酸を導入する第一晶析槽の内壁面(伝熱面)において、冷却により(メタ)アクリル酸結晶核が発生するため、(メタ)アクリル酸結晶が内壁面上に付着し、いわゆるスケーリングが生じる。スケーリングが生じると第一晶析槽内部への伝熱効率が低下するため、第一晶析槽における除熱負荷が向上し、生産効率が低下する。また、第二晶析槽以降と比較して、第一晶析槽は除熱負荷が大きいため、第一晶析槽はよりスケーリングが生じやすい。スケーリングが進行すると最終的に晶析槽が使用不可能となるため、第一晶析槽の寿命が他の晶析槽よりも短くなり、工程全体としての工程寿命が短くなる。また、特許文献2の方法ではスラリー濃度を増加させることはできるが、スラリー濃度を増加させることによるスケーリングの抑制効果は低く、更なる改良が望まれる。また、特許文献3の方法では、循環量を規定していないため除熱量の負荷を制御できず、第一又は第二冷却器のスケーリングが優先的に進行する。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明においては、複数の晶析槽を用いて(メタ)アクリル酸を精製する方法において、第一晶析槽の除熱負荷を低減し、第一晶析槽の伝熱面におけるスケーリングを抑制し、また、第一晶析槽の寿命を延ばすことが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る(メタ)アクリル酸の精製方法は、伝熱面を介して熱交換を行う冷却機構を有した複数個の晶析槽からなる晶析装置を用いて、(メタ)アクリル酸を晶析する(メタ)アクリル酸の精製方法において、前記複数個の晶析槽は直列に接続され、前記晶析槽内の温度は、接続された順序で低くなるように設定されており、原料を導入する第一晶析槽から数えて2番目以降の晶析槽のうち、少なくとも1つ以上の晶析槽内に存在するスラリーのスラリー量に対し、1時間当たり20〜100体積%の該スラリーを該第一晶析槽に循環する(メタ)アクリル酸の精製方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第一晶析槽の除熱負荷を低減することができ、第一晶析槽の伝熱面におけるスケーリングを抑制することができる。また、第一晶析槽の寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の方法に用いる晶析装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る(メタ)アクリル酸の精製方法は、伝熱面を介して熱交換を行う冷却機構を有した複数個の晶析槽からなる晶析装置を用いて、(メタ)アクリル酸を晶析する(メタ)アクリル酸の精製方法において、前記複数個の晶析槽は直列に接続され、前記晶析槽内の温度は、接続された順序で低くなるように設定されており、原料を導入する第一晶析槽から数えて2番目以降の晶析槽のうち、少なくとも1つ以上の晶析槽内に存在するスラリーのスラリー量に対し、1時間当たり20〜100体積%の該スラリーを該第一晶析槽に循環する(メタ)アクリル酸の精製方法である。以下に、本発明に係る方法の実施形態について詳細を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
(粗(メタ)アクリル酸混合液)
本発明で精製対象である原料として、粗(メタ)アクリル酸と溶媒の混合液である粗(メタ)アクリル酸混合液を用いる。ここで、粗(メタ)アクリル酸とは、粗メタクリル酸又は粗アクリル酸をいう。
【0013】
粗メタクリル酸は、例えば直接酸化法やACH法等の種々の方法により製造することができる。このような粗メタクリル酸の製造方法としては、例えば、イソブチレン、第3級ブチルアルコール、メタクロレイン及びイソブチルアルデヒドからなる群から選ばれるいずれかの化合物を分子状酸素で1段又は2段の反応で接触気相酸化に付する直接酸化法で得られる反応ガスを、凝縮して得た凝縮液、又は反応ガスの凝縮液に水を加えるか、反応ガスを水に吸収させて得たメタクリル酸水溶液から有機溶剤を用いてメタクリル酸を抽出し、蒸留により有機溶剤及び不揮発分を除去して粗メタクリル酸を得る方法、ACH法で副生するメタクリル酸を抽出や蒸留により分離して粗製メタクリル酸を得る方法等が挙げられる。
【0014】
また、粗アクリル酸は、例えばプロピレン及び/又はアクロレインを分子状酸素で1段又は2段の反応で接触気相酸化して粗メタクリル酸の場合と同様にして得られる。
【0015】
前記方法により得られた粗(メタ)アクリル酸に対し、溶媒を混合することで、精製対象である粗(メタ)アクリル酸混合液を得る。前記溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケントン、メチルイソブチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル等を用いることができる。これらは1種又は2種以上を併用してもよいが、粗結晶との分離性の観点からメタノールを用いることが好ましい。本実施形態では、溶媒としてメタノールを用いる例を示す。該粗(メタ)アクリル酸混合液中に含まれるメタノールの濃度としては3.8質量%から4.2質量%であることが好ましい。
【0016】
(粗(メタ)アクリル酸混合液の予備冷却)
前記粗(メタ)アクリル酸混合液を、図1に示すように、予めクーラー3により結晶化温度付近にまで冷却する。このときの冷却温度としては、9〜20℃であることが、第一晶析槽1の除熱負荷低減の観点から好ましい。なお、この段階ではまだ(メタ)アクリル酸の結晶は生成させない。結晶開始温度まで温度を低下させるとクーラー3が閉塞するためである。
【0017】
(第一晶析槽における(メタ)アクリル酸の晶析)
次に、前記冷却した粗(メタ)アクリル酸混合液を第一晶析槽1に導入し、所定の温度に冷却することで(メタ)アクリル酸の晶析を行う。
【0018】
本発明に係る方法おいて用いる第一晶析槽1には、第一晶析槽1内のスラリーを冷却するための冷却機構としてジャケット6を備える。ジャケット6は、第一晶析槽1を覆うように配置されており、第一晶析槽1の壁面を伝熱面として、伝熱面を介して第一晶析槽1内に存在するスラリーと熱交換を行い、該スラリーを所望の温度に冷却することができる。なお、本発明に係る方法に用いる第一晶析槽1に備えられる冷却機構としては、ジャケットに限らず、晶析槽の壁面を伝熱面として(メタ)アクリル酸の結晶を生成させることが可能な機構であれば特に限定されない。
【0019】
第一晶析槽1内のスラリーの温度としては、6.0〜7.5℃であることが第一晶析槽1の除熱負荷が大きなりすぎない観点から好ましい。より好ましくは、6.4〜6.8℃である。
【0020】
同様に第一晶析槽1内のスラリー濃度としては、20〜35質量%であることが第一晶析槽1の除熱負荷が大きくなりすぎない観点から好ましい。より好ましくは、25〜30質量%である。なお、スラリー濃度は、メタノールとメタクリル酸の固液平衡値を実測により求め、スラリー温度を測定し、前記固液平衡データより計算で求めた値である。
【0021】
また、第一晶析槽1はスラリーを撹拌可能な撹拌機構7を備える撹拌型晶析槽であることが好ましい。撹拌機構7により第一晶析槽1内のスラリーを撹拌することで、スラリー温度を均一にすることができ、微小な(メタ)アクリル酸の種晶を第一晶析槽1内で均一に生成させることができる。
【0022】
また、撹拌機構7は、図1に示すように撹拌翼の先端が第一晶析槽1の内壁面に接触していることが好ましい。該撹拌翼が第一晶析槽1の内壁面に接触しながら回転することにより、内壁面近傍で生成し付着した(メタ)アクリル酸結晶を内壁面表面から掻き取ることができる。
【0023】
前記撹拌機構7によるスラリーの撹拌速度としては、15〜30rpmであることが伝熱面上の結晶を掻き取る頻度と生成した結晶を破砕しない観点から好ましい。
【0024】
前記冷却した粗(メタ)アクリル酸混合液の第一晶析槽1への導入は、第一晶析槽1上部に設けられた導入口4より行われる。第一晶析槽1に導入する粗(メタ)アクリル酸混合液の導入速度としては、例えば第一晶析槽1の容量が10m3の場合、1.0〜5.0m3/hであることが好ましい。
【0025】
また、本発明においては、後述するように第一晶析槽1にはさらに第二晶析槽2からの循環スラリーが所定量の速度で導入される。該循環スラリーの導入は、第一晶析槽1上部に別途設けられた循環スラリー導入口5より行われる。
【0026】
第一晶析槽1内のスラリーの一部は、第一晶析槽1下部に設けられた排出口8より抜き出され、第二晶析槽2に導入される。第一晶析槽1からスラリーを抜き出す際の抜き出し速度(割合)としては、例えば第一晶析槽1の容量が10m3の場合、1.0〜5.0m3/hであることが好ましい。
【0027】
(第二晶析槽における(メタ)アクリル酸の晶析)
次に、第一晶析槽1から抜き出したスラリーを第二晶析槽2に導入し、さらに該スラリーを冷却する。これにより、第一晶析槽1で生成した(メタ)アクリル酸の結晶を種晶としてさらに結晶を成長させ、晶析を促進させることができる。
【0028】
第二晶析槽2としては、前記第一晶析槽1と同様の構成の晶析槽を用いることができる。また、前記第一晶析槽1における晶析と同様に、スラリーを撹拌しながら冷却することが好ましい。第二晶析槽内2のスラリーの温度としては、第一晶析槽1内のスラリー温度より低く、4.5〜6.0℃であることが後段の精製プロセスでの収率が向上する観点から好ましく、5.0〜5.4℃がより好ましい。第二晶析槽2内のスラリー濃度としては、42〜48質量%であることが後段の精製プロセスでの収率が向上する観点から好ましく、44〜46質量%がより好ましい。
【0029】
(スラリーの循環)
本発明に係る方法においては、第二晶析槽2内のスラリーの一部を第二晶析槽2内下部に設けられた排出口10から抜き出し、循環装置11を用いて第一晶析槽1内に循環する。この際、第二晶析槽2内に存在するスラリーのスラリー量に対し、1時間当たり20〜100体積%の該スラリーを第一晶析槽1に循環する。
【0030】
第二晶析槽2内のスラリーは、第一晶析槽1内のスラリーより温度が低く、(メタ)アクリル酸結晶がより成長している。この第二晶析槽2内のスラリーを循環スラリーとして第一晶析槽1内に導入すると、第一晶析槽1内のスラリーの方が温度が高いため、循環スラリーに含まれる(メタ)アクリル酸結晶の一部は第一晶析槽1内のスラリーに溶解する。該(メタ)アクリル酸結晶の一部が溶解する際、融解熱を第一晶析槽1内のスラリーから吸収するため、第一晶析槽1内のスラリー温度は低下する。第一晶析槽1内の冷却は、ジャケット6により第一晶析槽1内壁面を伝熱面としてスラリーを冷却するため、第一晶析槽1の内壁面で結晶核が生成し、内壁面への結晶核の付着、いわゆるスケーリングが生じやすい。しかし、本発明によれば、前記循環速度でスラリーを循環させることで、循環スラリー中の結晶の溶解により、第一晶析槽1内壁面ではなく、スラリー内部において冷却を行うことができるため、スケーリングを抑制することができる。好ましくは、1時間当たり40〜60体積%のスラリーを第一晶析槽1に循環する。
【0031】
循環スラリーの循環による第一晶析槽1内のスラリー温度の低下、また、スケーリングの抑制により、第一晶析槽1の除熱負荷を低減させることができる。また、スケーリングが進行すると第一晶析槽1の除熱効率が低下するため、最終的には第一晶析槽1が使用不可能となるが、本発明の方法ではスケーリングを抑制することができるため、第一晶析槽1の寿命を延長することができる。第一晶析槽1の方が第二晶析槽2よりも除熱負荷が大きいためスケーリングが発生しやすく、従来法では第一晶析槽1の寿命が第二晶析槽2と比較して短かったのに対し本発明の方法では第一晶析槽1と第二晶析槽2の冷却効率の均等化が図られ、第一晶析槽1のスケーリングが抑制される。これにより、各晶析槽の寿命が均一となり、全体として工程寿命を最大とすることができる。
【0032】
また、晶析槽一基当たりにおけるスラリーの滞在時間は、1〜5時間となるようにすることが、第一晶析槽1と第二晶析槽2の除熱負荷の均一化及び結晶成長に寄与する滞在時間の観点から好ましい。
【0033】
前記循環スラリーのスラリー濃度としては、第二晶析槽2内のスラリー濃度と同様であり、42〜48質量%であることが好ましい。より好ましくは、44〜46質量%である。
【0034】
前記循環スラリーを第一晶析槽1に循環するための循環装置11としては、循環スラリー中に含まれる(メタ)アクリル酸結晶を破壊しない循環装置を用いることが好ましい。具体的には、構造上シア(せん断)がかからず、循環スラリー中の(メタ)アクリル酸結晶に物理的なダメージがほとんど与えられないポンプを用いることが好ましく、市販品としては、例えば「サインポンプ」(商品名、プライミクス(株))等を用いることができる。しかし、循環装置はこれらに限定されるものではない。
【0035】
前記循環スラリーは、循環装置11を通過した後、第一晶析槽1上部に粗(メタ)アクリル酸混合液の導入口とは別途設けられた循環スラリー導入口5より、第一晶析槽1内に導入される。循環スラリー導入口5は第一晶析槽1の液面よりも高い位置に設けられている。このとき、循環スラリーが第一晶析槽1内壁面を伝って第一晶析槽1内に導入されないようにすることが、内壁面における結晶核の発生、成長を抑制する観点から好ましい。また、循環スラリー導入口5は一箇所に限らず、複数箇所存在してもよい。
【0036】
なお、本実施形態では第一晶析槽1及び第二晶析槽2の二槽の晶析槽を用いる例を示しているが、三槽以上の晶析槽を直列に接続した晶析装置を用いて、第二晶析槽以降の晶析槽内に存在するスラリーの一部を第一晶析槽内に循環させてもよい。この場合には、各晶析槽内のスラリー温度は接続された順序で低くなるように設定する。
【0037】
(フィルターによるろ過)
(メタ)アクリル酸結晶の成長した第二晶析槽2内のスラリーの一部を排出口10より抜き出し、ベルトフィルター等で溶液をろ過しながら精製塔に移送する。前記ベルトフィルターによりろ過された(メタ)アクリル酸結晶をスクリューフィーダーにより精製塔下部に供給する。
【0038】
(精製塔における精製)
精製塔下部に供給された(メタ)アクリル酸結晶は、精製塔塔頂へ供給された還流液と精製塔内で接触しながら精製塔内を上昇し還流液による洗浄効果及び発汗作用により精製される。また、還流液の一部は再結晶により回収される。
【0039】
精製塔塔頂からオーバーフローした(メタ)アクリル酸結晶を精製された(メタ)アクリル酸溶液に融解することで高純度の(メタ)アクリル酸を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明に係る実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
(実施例1)
図1に示す晶析装置において、原料中のメタノール濃度を3.8質量%とし、粗製メタクリル酸を3.65m3/hの速度で第一晶析槽に供給し、長期連続運転を行った。運転は、サインポンプの循環量が5m3/hとなるようにした。また第二晶析槽のスラリー濃度は45質量%となるようにジャケット温度を制御した。結果として、第一晶析槽の除熱割合が52%、第二晶析槽の除熱割合は48%とほぼ同等となり、連続運転可能日数は80日であった。
【0042】
(比較例1)
サインポンプの循環量を0m3/hで管理し、第一晶析槽のスラリー濃度管理は30質量%とした。ここで、第一晶析槽のスラリー濃度をサインポンプで循環していた場合と同等に保持しようとすると、ジャケット側の温度をかなり下げなくてはならず、この条件では長期間の安定運転が実施できない。そこで運転上許容できる範囲で、スラリー濃度を設定した。その他の条件は実施例1と同様とした。結果、第一晶析槽の総括伝熱係数の低下が早く、連続運転可能日数は35日であった。
【0043】
実施例1、比較例1の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【符号の説明】
【0045】
1 第一晶析槽
2 第二晶析槽
3 クーラー
4 導入口(第一晶析槽)
5 循環スラリー導入口
6 ジャケット
7 撹拌機構
8 排出口(第一晶析槽)
9 導入口(第二晶析槽)
10 排出口(第二晶析槽)
11 循環装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱面を介して熱交換を行う冷却機構を有した複数個の晶析槽からなる晶析装置を用いて、(メタ)アクリル酸を晶析する(メタ)アクリル酸の精製方法において、
前記複数個の晶析槽は直列に接続され、
前記晶析槽内の温度は、接続された順序で低くなるように設定されており、
原料を導入する第一晶析槽から数えて2番目以降の晶析槽のうち、少なくとも1つ以上の晶析槽内に存在するスラリーのスラリー量に対し、1時間当たり20〜100体積%の該スラリーを該第一晶析槽に循環する(メタ)アクリル酸の精製方法。
【請求項2】
前記第一晶析槽に循環するスラリーのスラリー濃度が、42〜48質量%である請求項1に記載の(メタ)アクリル酸の精製方法。
【請求項3】
前記スラリーの循環を、該スラリー中に存在する(メタ)アクリル酸結晶を破壊しない循環装置を用いて行う請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸の精製方法。
【請求項4】
前記晶析槽が、該晶析槽内のスラリーを撹拌可能な撹拌機構を有する撹拌型晶析槽である請求項1から3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸の精製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219376(P2011−219376A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86906(P2010−86906)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】