説明

(メタ)アクリル酸の製造方法および晶析システム

【課題】結晶化工程および/または融解工程において、晶析器から熱源機に返送する冷熱媒や温熱媒の温度変動を緩和し、熱源機を安定的に稼働させ、結晶化操作および/または融解操作が安定化し、消費エネルギーを低減できる(メタ)アクリル酸の製造方法と晶析システムを提供する。
【解決手段】熱源機4Aから冷熱媒を晶析器1に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;晶析器1から冷熱媒を排出し、熱源機4Aに返送する工程と;熱源機4Bから温熱媒を晶析器1に供給し、前記(メタ)アクリル酸を融解する工程と;晶析器1から温熱媒を排出し、熱源機4Bに返送する工程とを有し;第1バッファータンク5を用いて、熱源機4Aに返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保ち;第2バッファータンク6を用いて、熱源機4Bに返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化工程および/または融解工程を有する(メタ)アクリル酸の製造方法に関するものである。また、本発明は、晶析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル酸を工業的に合成する方法として、(メタ)アクリル酸製造原料を接触気相酸化する方法が知られている。(メタ)アクリル酸製造原料が接触気相酸化して生成した(メタ)アクリル酸含有ガスは、例えば、液媒体で捕集され、粗(メタ)アクリル酸溶液として回収され、さらに、放散、抽出、蒸留や晶析等の方法により精製される。
【0003】
特許文献1には、粗(メタ)アクリル酸溶液を晶析により精製する方法が開示されている。粗(メタ)アクリル酸溶液を晶析により精製する場合、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化するには冷却が必要であり、一方、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解して精製(メタ)アクリル酸を得るには加熱が必要となる。しかし、特許文献1には、晶析の際の冷却方法や加熱方法についての具体的な記載はない。
【0004】
特許文献2には、粗(メタ)アクリル酸溶液を晶析により精製する際、吸収式冷凍機で得られる冷水を結晶化工程で使用することが開示されている。しかし、特許文献2には、晶析の際の冷凍機の安定稼働や、熱源機として用いられる冷凍機の消費エネルギーを低減するための技術に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−74759号公報
【特許文献2】特開2007−277182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粗(メタ)アクリル酸溶液を冷熱媒により冷却して(メタ)アクリル酸を結晶化する際、初期は晶析器から排出される冷熱媒の温度が高くなりやすいのに対し、結晶化が進行するに従い、晶析器から排出される冷熱媒の温度が低下する傾向がある。同様に、結晶化した(メタ)アクリル酸を温熱媒で加熱して融解する際も、初期は晶析器から排出される温熱媒の温度が低くなりやすいのに対し、融解が進行するに従い、晶析器から排出される温熱媒の温度が上昇する傾向がある。従って、晶析器から排出された冷熱媒や温熱媒を熱源機で温度調整し、再び晶析器に供給する場合、熱源機に返送される冷熱媒や温熱媒の温度変動のため、熱源機の冷却負荷や加熱負荷が変動する。その結果、熱源機の稼働が不安定になったり、延いては晶析操作に影響を及ぼしたり、熱源機の消費エネルギーが増大したりする。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、結晶化工程および/または融解工程において、晶析器から熱源機に返送する冷熱媒や温熱媒の温度変動を緩和し、熱源機を安定的に稼働させて結晶化操作および/または融解操作の安定化をはかり、消費エネルギーを低減できる(メタ)アクリル酸の製造方法を提供することにある。また、熱源機を安定的に稼働させて結晶化操作および/または融解操作の安定化をはかり、消費エネルギーを低減できる晶析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法とは、熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;下記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つところに特徴を有する。
第1調整手段:晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンクの上部に供給し、前記第1バッファータンクの下部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第2調整手段:熱源機から晶析器に供給する冷熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を前記第1バッファータンクの下部に供給し、前記第1バッファータンクの上部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
【0009】
前記製造方法によれば、第1および第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。従って、結晶化工程において、熱源機の冷却負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、結晶化操作が安定化し、消費エネルギーが低減できる。
【0010】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機から温熱媒を晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;下記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つものであってもよい。
第3調整手段:晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンクの下部に供給し、前記第2バッファータンクの上部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
第4調整手段:熱源機から晶析器に供給する温熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を前記第2バッファータンクの上部に供給し、前記第2バッファータンクの下部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
【0011】
前記製造方法によれば、第3および第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。従って、融解工程において、熱源機の加熱負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、融解操作が安定化し、消費エネルギーが低減できる。
【0012】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程と;熱源機から温熱媒を前記晶析器に供給し、前記(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;前記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保ち;前記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つものであってもよい。前記構成により、結晶化工程と融解工程の両工程において、熱源機が安定的に稼働するようになり、結晶化操作および融解操作が安定化し、消費エネルギーを低減できるようになる。
【0013】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機から冷熱媒を第1晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記第1晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程と;前記熱源機から温熱媒を第2晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記第2晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;前記熱源機が冷凍機であり;前記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保ち;前記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つものであってもよい。ただし、第1および第2調整手段は、晶析器として第1晶析器を用い、第3および第4調整手段は、晶析器として第2晶析器を用いる。熱源機として冷凍機を採用することで、冷凍機から排出される冷熱媒と温熱媒の両方を(メタ)アクリル酸の製造に用いることが可能となり、(メタ)アクリル酸の製造にかかる消費エネルギーを低減でき、効率的に(メタ)アクリル酸を製造することが可能となる。
【0014】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、第1バッファータンクに所定量の冷熱媒が保持され、第2バッファータンクに所定量の温熱媒が保持され、第1バッファータンクに保持された冷熱媒および第2バッファータンクに保持された温熱媒は、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有していることが好ましい。前記構成によれば、前記第1〜第4調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を一定範囲に保つことが容易となる。
【0015】
熱源機に返送する冷熱媒の温度は、第1バッファータンクに保持された冷熱媒の上方および下方の温度に応じて調整し、熱源機に返送する温熱媒の温度は、第2バッファータンクに保持された温熱媒の上方および下方の温度に応じて調整することが好ましい。前記構成によれば、バッファータンクからの高温または低温の冷熱媒または温熱媒の排出速度を調整することができ、前記第1〜第4調整手段による効果を、より長期にわたり享受できるようになる。
【0016】
前記第1バッファータンクには、上部と下部に冷熱媒が出入りする開口が設けられ、前記上部の開口と前記下部の開口との間の長さが、第1バッファータンクの最大断面長さの1倍以上であり;前記第2バッファータンクには、上部と下部に温熱媒が出入りする開口が設けられ、前記上部の開口と前記下部の開口との間の長さが、第2バッファータンクの最大断面長さの1倍以上であることが好ましい。前記構成によれば、バッファータンク内に保持された冷熱媒または温熱媒が、高さ方向に温度勾配が生じやすくなり、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を一定範囲に保つことが容易となる。
【0017】
本発明の晶析システムは、伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;前記熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口とを有する熱源機と;前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有している。前記晶析システムを用いれば、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。従って、晶析器で結晶化工程を行う際、熱源機の冷却負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、結晶化操作が安定化し、消費エネルギーが低減できるようになる。
【0018】
本発明の晶析システムは、伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;前記熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する熱源機と;前記温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有していてもよい。前記晶析システムを用いれば、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。従って、晶析器で融解操作を行う際、熱源機の加熱負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、融解操作が安定化し、消費エネルギーが低減できるようになる。
【0019】
本発明の晶析システムは、伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;前記熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口とを有する第1熱源機と;前記熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する第2熱源機と;前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第1バッファータンクと;前記温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第2バッファータンクとを有していてもよい。前記構成によれば、熱源機に返送する冷熱媒と温熱媒の温度を一定範囲に保つことができ、結晶化と融解の両操作において、熱源機が安定的に稼働するようになり、両操作が安定化し、消費エネルギーを低減できるようになる。
【0020】
本発明の晶析システムは、第1伝熱面を有し、前記第1伝熱面により内部が第1熱媒存在部と第1結晶存在部とに区分された第1晶析器と;第2伝熱面を有し、前記第2伝熱面により内部が第2熱媒存在部と第2結晶存在部とに区分された第2晶析器と;前記第1熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記第1熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口と、前記第2熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記第2熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する冷凍機と;前記第1熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記第1熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第1バッファータンクと;前記第2温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記第2熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第2バッファータンクとを有するものであってもよい。熱源機として冷凍機を採用することで、冷凍機から排出される冷熱媒を結晶化操作に用い、温熱媒を融解操作に用いることが可能となり、結晶化と融解にかかる消費エネルギーを低減でき、効率的に結晶化操作および融解操作を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の晶析システムで使用される第1バッファータンクおよび第2バッファータンクは、上方開口と下方開口との間の長さが、最大断面長さの1倍以上であることが好ましい。前記構成によれば、バッファータンク内に保持された冷熱媒または温熱媒が、高さ方向に温度勾配が生じやすくなり、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を一定範囲に保つことが容易となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法および晶析システムによれば、晶析器から熱源機に返送する冷熱媒や温熱媒の温度変動を緩和し、熱源機を安定的に稼働させ、結晶化操作および/または融解操作が安定化し、消費エネルギーを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】冷熱媒を供給する熱源機と晶析器と第1バッファータンクとを有する晶析システムを表す。
【図2】熱源機に返送する冷熱媒の温度が高い場合の第1バッファータンクの使用方法を表す。
【図3】熱源機に返送する冷熱媒の温度が低い場合の第1バッファータンクの使用方法を表す。
【図4】温熱媒を供給する熱源機と晶析器と第2バッファータンクとを有する晶析システムを表す。
【図5】熱源機に返送する温熱媒の温度が低い場合の第2バッファータンクの使用方法を表す。
【図6】熱源機に返送する温熱媒の温度が高い場合の第2バッファータンクの使用方法を表す。
【図7】2つの熱源機と1つの晶析器と2つのバッファータンクとを有する晶析システムを表す。
【図8】冷凍機と2つの晶析器と2つのバッファータンクとを有する晶析システムを表す。
【図9】冷凍機と3つの晶析器と3つのバッファータンクとを有する晶析システムを表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔1.(メタ)アクリル酸の製造方法〕
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程(以下、「結晶化工程」と称する場合がある)、および/または、熱源機から温熱媒を晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程(以下、「融解工程」称する場合がある)を有する。
【0025】
結晶化工程では、熱源機から晶析器に供給された冷熱媒により、粗(メタ)アクリル酸溶液が冷却され、(メタ)アクリル酸結晶が得られる。得られた(メタ)アクリル酸結晶は、任意の固液分離手段により結晶を選別あるいは収集してもよく、また、任意の融解方法により結晶を融解してもよい。好ましくは、後述する融解工程により、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する。
【0026】
結晶化工程で結晶化される粗(メタ)アクリル酸溶液は、(メタ)アクリル酸とそれ以外の不純物を含む液体であれば特に限定されない。前記不純物としては、未反応の(メタ)アクリル酸製造原料、捕集液媒体(水など)、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、アセトン、アクロレイン、フルフラール、ホルムアルデヒド等が含まれる。
【0027】
前記粗(メタ)アクリル酸溶液は、(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。前記(メタ)アクリル酸濃度が80質量%以上であれば、粗(メタ)アクリル酸溶液を結晶化することが容易となる。なお、前記(メタ)アクリル酸濃度の上限は特に限定されない。
【0028】
融解工程では、熱源機から晶析器に供給された温熱媒により、結晶化した(メタ)アクリル酸が加熱されて、融解する。融解工程で用いられる結晶化した(メタ)アクリル酸は、前記結晶化工程により得られるものであってもよく、任意の結晶化方法により得られるものであってもよい。本発明においては、好ましくは、前記結晶化工程により得られた(メタ)アクリル酸結晶を、融解工程において融解する。
【0029】
結晶化した(メタ)アクリル酸を加熱して融解する際、得られる(メタ)アクリル酸融解液の純度を上げることを目的に、結晶化した(メタ)アクリル酸を部分的に融解し、結晶間や結晶表面に存在する不純物を洗い流す操作として発汗操作を行う場合があるが、本発明においては、当該操作も融解工程に含まれる。
【0030】
本発明の製造方法では、結晶化工程と融解工程を交互に複数回繰り返し、より純度の高い(メタ)アクリル酸を得てもよい。
【0031】
本発明の製造方法で用いられる熱源機は、冷熱媒を冷却し、および/または、温熱媒を加熱するものであれば、特に限定されない。熱源機としては、例えば、熱源として蒸気や液化ガスが用いられる多管式熱交換器が示される。
【0032】
熱源機としては、冷熱媒を冷却すると同時に、温熱媒を加熱するものであってもよい。このような熱源機としては、冷凍機を採用することができ、冷凍機としては、吸収式冷凍機(アンモニア吸収式、水−臭化リチウム式等)、圧縮式冷凍機、吸着式冷凍機等を使用できる。
【0033】
冷熱媒および温熱媒は、(メタ)アクリル酸を製造するに当たり、熱源機と晶析器で液体状態を維持するものであれば特に限定されない。冷熱媒と温熱媒とは同一であっても異なっていてもよい。例えば冷熱媒と温熱媒とが同一のものである場合、冷熱媒と温熱媒としては、エチレングリコール水溶液、グリセリン水溶液、メタノール水溶液等が示される。
【0034】
本発明の製造方法が結晶化工程を有する場合、本発明の製造方法は、熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と、前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有する。熱源機に返送された冷熱媒は、熱源機で冷却され、再び晶析器に供給される。
【0035】
熱源機から排出される冷熱媒の温度は、粗(メタ)アクリル酸溶液の融点未満であれば特に限定されない。粗(メタ)アクリル酸溶液の融点は、(メタ)アクリル酸濃度および不純物組成に応じて変化する。例えば、アクリル酸濃度80質量%〜95質量%でその他の不純物の大半が水である粗アクリル酸溶液であれば、融点は概ね−5℃超、13.5℃以下となる。
【0036】
熱源機から排出される冷熱媒の温度は、好ましくは−5℃以下であり、より好ましくは−10℃以下であり、また−40℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましい。前記のように、冷凍機から排出される冷熱媒の温度の上限は、粗(メタ)アクリル酸溶液の融点未満であればよいが、結晶化に必要な冷熱媒の量が増えすぎたり、晶析器や冷熱媒配管等の大きさが大きくなりすぎないようにするためには、熱源機から排出される冷熱媒の温度は−5℃以下であることが好ましい。一方、熱源機から排出される冷熱媒の温度が−40℃未満の場合は、熱源機での冷却負荷が増え、高仕様の熱源機が必要となったり、熱源機の消費エネルギーが増大するおそれがあるため、熱源機から排出される冷熱媒の温度は−40℃以上であることが好ましい。
【0037】
前記説明は、熱源機から排出される冷熱媒が1種類の場合についてであったが、熱源機から排出される冷熱媒は、互いに異なる温度を有する2種類以上であってもよい。例えば、熱源機から排出される冷熱媒が第1冷熱媒と、第1冷熱媒より低温の第2冷熱媒の2種類である場合、第1冷熱媒の温度は好ましくは−15℃以上、−5℃以下であり、第2冷熱媒の温度は好ましくは−40℃以上、−15℃未満である。この場合、結晶化工程では、第1冷熱媒を晶析器に供給した後、第1冷熱媒より低温の第2冷熱媒を晶析器に供給することが好ましい。このように第1冷熱媒と第2冷熱媒を用いることにより、(メタ)アクリル酸結晶の純度を高めやすくなり、また熱源機の消費エネルギーをより低減することができるようになる。
【0038】
本発明の製造方法が融解工程を有する場合、本発明の製造方法は、熱源機から温熱媒を晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と、前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有する。熱源機に返送された温熱媒は、熱源機で加熱され、再び晶析器に供給される。
【0039】
熱源機から排出される温熱媒の温度は、結晶化した(メタ)アクリル酸の融点超であれば特に限定されない。熱源機から排出される温熱媒の温度は、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、また45℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。前記のように、冷凍機から排出される温熱媒の温度の下限は、結晶化した(メタ)アクリル酸の融点超であればよいが、融解に必要な温熱媒の量が増えすぎたり、晶析器や温熱媒配管等の大きさが大きくなりすぎないようにするためには、熱源機から排出される温熱媒の温度は20℃以上であることが好ましい。一方、熱源機から排出される温熱媒の温度が45℃を超える場合は、晶析器において(メタ)アクリル酸の重合反応が起こり、操作の継続が困難になったり、得られる(メタ)アクリル酸の純度や収率が落ちるおそれがある。また、熱源機での加熱負荷が増え、高仕様の熱源機が必要となったり、熱源機の消費エネルギーが増大するおそれがある。そのため、熱源機から排出される温熱媒の温度は45℃以下であることが好ましい。熱源機から排出される温熱媒も、互いに異なる温度を有する2種類以上であってもよい。
【0040】
熱源機から排出される冷熱媒または温熱媒の温度は、一定範囲に保たれていることが好ましく、前記温度範囲は、3.0℃以内が好ましく、1.0℃以内がより好ましい。また、熱源機から排出される冷熱媒または温熱媒の流量は、一定範囲に保たれていることが好ましい。熱源機から排出される冷熱媒または温熱媒の温度と流量が一定範囲に保たれていれば、晶析器での結晶化操作や融解操作が安定して行われやすくなる。また、後述するように熱源機に返送される冷熱媒または温熱媒の温度が一定範囲に保たれることと相まって、熱源機の冷却または加熱負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定稼働し、消費エネルギーを低減することができる。熱源機から排出される冷熱媒または温熱媒の流量は、熱源機から排出される冷熱媒または温熱媒の温度、粗(メタ)アクリル酸溶液や結晶化した(メタ)アクリル酸の量や温度等に応じて、適宜設定される。
【0041】
本発明の製造方法が、結晶化工程と融解工程とを有する場合、結晶化工程で用いられる熱源機と融解工程で用いられる熱源機とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
本発明の製造方法で用いられる晶析器は、(メタ)アクリル酸が結晶化するものであれば特に限定されない。本発明の製造方法が結晶化工程を有する場合、晶析器には熱源機から冷熱媒が供給され、その結果、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸が結晶化する。本発明の製造方法が融解工程を有する場合、晶析器には熱源機から温熱媒が供給され、その結果、結晶化した(メタ)アクリル酸が融解する。
【0043】
本発明の製造方法で用いられる晶析器は、伝熱面を有することが好ましい。この場合、晶析器は、伝熱面により、冷熱媒または温熱媒が供給される部分(熱媒存在部)と、粗(メタ)アクリル酸溶液および/または(メタ)アクリル酸結晶が存在する部分(結晶存在部)とに区分されていることが好ましい。晶析器が伝熱面を有するものである場合、結晶化工程では、晶析器に冷熱媒が供給されるとともに、晶析器に粗(メタ)アクリル酸溶液が供給され、伝熱面を介して冷熱媒により粗(メタ)アクリル酸溶液が冷却され、(メタ)アクリル酸が結晶化する。融解工程では、晶析器に温熱媒が供給され、結晶化した(メタ)アクリル酸が伝熱面を介して温熱媒により加熱され、融解する。
【0044】
伝熱面を有する晶析器としては、一般に熱交換器として用いられる装置を採用することができ、特に液体同士で熱交換を行う熱交換器として用いられる装置を採用することが好ましい。例えば、一枚のプレートが配置され、または複数枚のプレートが間隔を隔てて積層され、熱媒存在部と結晶存在部とがプレートを介して交互に配置されたプレート式熱交換器;複数本の管が容器内に配列され、管の内外で熱交換を行う多管式(シェル・アンド・チューブ式)熱交換器;外管の中に内管が配置され、内管の内外で熱交換を行う二重管式熱交換器;一本の管がコイル状に容器内に配置され、管の内外で熱交換を行うコイル式熱交換器;断面が二分された中心管に2枚の伝熱板を渦巻き状に巻き、2つの渦巻き状の流路が形成されたスパイラル式熱交換器等を採用することができる。なお、多管式熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、スパイラル式熱交換器で用いられる管の断面形状は特に限定されない。
【0045】
結晶化工程では、晶析器に供給された冷熱媒は、粗(メタ)アクリル酸溶液と熱交換され、粗(メタ)アクリル酸溶液から受熱することにより、加熱される。結晶化工程では、晶析器へ供給される冷熱媒の温度と流量が一定の場合、結晶化工程初期では晶析器から排出される冷熱媒の温度が高くなり、結晶化が進むにつれて晶析器から排出される冷熱媒の温度が低くなる。晶析器から排出される冷熱媒の温度は、条件により異なるものの、例えば、50℃程度の差が生じ得る。従って、晶析器から排出される冷熱媒をそのまま熱源機に返送する場合、熱源機に返送される冷熱媒の温度が大きく変動することとなり、熱源機の冷却負荷が変動する。その結果、熱源機の稼働が不安定になり、結晶化操作が不安定化したりし、熱源機の消費エネルギーが増大する。
【0046】
融解工程では、晶析器に供給された温熱媒は、結晶化した(メタ)アクリル酸と熱交換され、結晶化した(メタ)アクリル酸に放熱することにより、冷却される。融解工程では、晶析器への供給される温熱媒の温度と流量が一定の場合、融解工程初期では晶析器から排出される温熱媒の温度が低くなり、融解が進むにつれて晶析器から排出される温熱媒の温度が高くなる。晶析器から排出される温熱媒の温度は、条件により異なるものの、例えば、50℃程度の差が生じ得る。従って、晶析器から排出される温熱媒をそのまま熱源機に返送する場合、熱源機に返送される温熱媒の温度が大きく変動することとなり、熱源機の加熱負荷が変動する。その結果、熱源機の稼働が不安定になり、融解操作が不安定化したり、熱源機の消費エネルギーが増大する。
【0047】
熱源機に返送される冷熱媒または温熱媒の温度の変動が大きくなることにより、熱源機の稼働が不安定になったり、熱源機の消費エネルギーが増大することの理由は、次のように説明される。熱源機は一般に、その仕様に応じ、効率的に冷却または加熱できる負荷範囲を有している。しかし、熱源機に返送される冷熱媒または温熱媒の温度が大きく変動すると、非効率的な負荷範囲で熱源機を稼働しなくてはならない場合が生じ、消費エネルギーが増大する。また、非効率的な負荷範囲で熱源機を稼働させると、熱源機の稼働も不安定になりやすくなる。さらに、熱源機は一般に、冷熱媒の冷却負荷または温熱媒の加熱負荷の最大値に基づき選定されるが、熱源機に返送される冷熱媒または温熱媒の温度が大きく変動する場合は、前記温度が一定の場合よりも、より冷却または加熱能力の高い高仕様の熱源機が必要となる。この場合、熱源機の設備がより大がかりとなるばかりでなく、低負荷運転への対応がより困難となる。
【0048】
そこで、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法では、晶析器から排出される冷熱媒または温熱媒の温度の変動に関わらず、熱源機に返送される冷熱媒または温熱媒の温度の変動範囲を小さくするために、下記の第1〜第4調整手段を設けている。具体的には、結晶化工程では、第1バッファータンクを設け、第1または第2調整手段により熱源機に返送される冷熱媒の温度を一定範囲に保ち、融解工程では、第2バッファータンクを設け、第3または第4調整手段により熱源機に返送される温熱媒の温度を一定範囲に保っている。
【0049】
本発明では、冷熱媒を貯めるバッファータンクを第1バッファータンクと称し、温熱媒を貯めるバッファータンクを第2バッファータンクと称する。また、第1バッファータンクと第2バッファータンクをまとめて、バッファータンクと称する。
【0050】
バッファータンクは、冷熱媒または温熱媒を貯留できるものであればよい。バッファータンクには、所定量の冷熱媒または温熱媒が保持され、バッファータンクに保持された冷熱媒または温熱媒は、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有していることが好ましい。バッファータンクに保持される冷熱媒または温熱媒の量は、熱源機から排出される冷熱媒や温熱媒の温度や量、熱源機の能力、晶析器に供給される粗(メタ)アクリル酸溶液の温度や量、バッファータンクに保持される冷熱媒や温熱媒の温度等に基づき適宜決められる。
【0051】
バッファータンクの上部と下部とには、冷熱媒または温熱媒を出し入れするための開口が設けられる。バッファータンクは、上部の開口と下部の開口との間の長さが、バッファータンクの最大断面長さの1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましく、その結果、バッファータンク内に保持された冷熱媒または温熱媒が、高さ方向に温度勾配が生じやすくなり、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を一定範囲に保つことが容易となる。バッファータンクの形状の詳細については、後述する。
【0052】
以下、本発明の理解を容易にするために、図面を用いて本発明を説明するが、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0053】
結晶化工程における第1バッファータンクの使い方、および第1調整手段、第2調整手段について、図1〜図3を用いて説明する。
【0054】
図1は、熱源機と晶析器と第1バッファータンクとをつなぐ流路を示している。熱源機4から排出された冷熱媒は、晶析器1に供給され、晶析器1内で熱交換された後、晶析器1から排出され、熱源機4に返送される。第1バッファータンク5は、上方開口5aが、晶析器1の熱媒排出口2bと、熱源機4の冷熱媒返送口4bとに連通している。また、第1バッファータンク5は、下方開口5bが、熱源機4の冷熱媒供給口4aおよび/または晶析器1の熱媒排出口2b、ならびに熱源機4の冷熱媒返送口4bとに連通している。
【0055】
第1調整手段について、図2を用いて説明する。第1調整手段は、結晶化工程において、熱源機に返送される冷熱媒の温度が高い場合に採用される。
【0056】
例えば、結晶化工程初期では、晶析器1から排出される冷熱媒の温度が高くなりやすく、晶析器1から排出される冷熱媒をそのまま熱源機4に返送すると、熱源機4には高温の冷熱媒が返送されることとなる。この場合、バルブ等により流路16の流量を減らすことにより、晶析器1から熱源機4に返送する冷熱媒の少なくとも一部を流路15を通して第1バッファータンク5の上部に供給する。第1バッファータンク5には、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有する冷熱媒が所定量保持されているため、高温の冷熱媒が第1バッファータンク5の上方開口5aから供給されると、第1バッファータンク5内の冷熱媒の温度勾配を維持するように、高温の冷熱媒が第1バッファータンク5の上方に貯められることとなる。一方、第1バッファータンク5の下方開口5bからは、低温の冷熱媒が排出される。この際、第1バッファータンク5内の冷熱媒の量は一定に保たれることが好ましく、従って、第1バッファータンク5の下部から排出される冷熱媒の量は、上部に供給される冷熱媒の量と等しいことが好ましい。第1バッファータンク5の下部から排出された低温の冷熱媒は、それ単独で、または流路16を通って運ばれた晶析器1から排出された冷熱媒と合わさって、熱源機4に返送される。また、第1バッファータンク5の下部から排出された低温の冷熱媒には、流路12を通って熱源機4から排出された冷熱媒の一部が合わさってもよい。従って、熱源機4には、晶析器1から排出された冷熱媒よりも低温に調整された冷熱媒が返送されることとなる。
【0057】
第2調整手段について、図3を用いて説明する。第2調整手段は、結晶化工程において、熱源機に返送される冷熱媒の温度が低い場合に採用される。
【0058】
例えば、結晶化工程終期では、晶析器1から排出される冷熱媒の温度が低くなりやすく、晶析器1から排出される冷熱媒をそのまま熱源機4に返送すると、熱源機4には低温の冷熱媒が返送されることとなる。この場合、バルブ等により流路11の流量を減らし、その少なくとも一部を流路12に流すことにより、熱源機4から晶析器1に供給する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部に供給する。あるいは、流路13の流量を減らし、その少なくとも一部を流路14に流すことにより、晶析器1から熱源機4に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部に供給する。第1バッファータンク5には、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有する冷熱媒が所定量保持されているため、低温の冷熱媒が第1バッファータンク5の下方開口5bから供給されると、第1バッファータンク5内の冷熱媒の温度勾配を維持するように、低温の冷熱媒が第1バッファータンク5の下方に貯められることとなる。一方、第1バッファータンク5の上方開口5aからは、高温の冷熱媒が排出される。この際、第1バッファータンク5内の冷熱媒の量は一定に保たれることが好ましく、従って、第1バッファータンク5の上部から排出される冷熱媒の量は、下部に供給される冷熱媒の量と等しいことが好ましい。第1バッファータンク5の上部から排出された高温の冷熱媒は、それ単独で、または流路13を通って運ばれた晶析器1から排出された冷熱媒と合わさって、熱源機4に返送される。従って、熱源機4には、晶析器1から排出された冷熱媒よりも高温に調整された冷熱媒が返送されることとなる。なお、第1バッファータンク5の上部から排出された高温の冷熱媒には、流路12,17を通って熱源機4から排出された冷熱媒の一部が合わさってもよい。
【0059】
第2調整手段によれば、第1バッファータンク5の下部へ供給される冷熱媒は、熱源機4から晶析器1に供給する冷熱媒の少なくとも一部、および/または、晶析器1から熱源機4に返送する冷熱媒の少なくとも一部となるが、好ましくは、熱源機4から晶析器1に供給する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部へ供給する。熱源機4から晶析器1に供給する冷熱媒は、晶析器1から熱源機4に返送する冷熱媒よりも低温であるため、第1バッファータンク5の下方に貯められる冷熱媒の単位容量当たりの冷熱保持量がより増大し、効率的に低温の冷熱媒を貯めることができるようになる。また、晶析器1から熱源機4に返送する冷熱媒は結晶化の進行度合により温度が変化するが、熱源機4から晶析器1に供給する冷熱媒の温度はほぼ一定であるため、第1バッファータンク5の下方に貯められる冷熱媒の温度制御が容易となる。
【0060】
結晶化工程では、熱源機4に返送される冷熱媒の温度が、熱源機4の効率的な運転が可能な温度である場合には、第1バッファータンク5が使われない状態があってもよい。すなわち、結晶化工程では、第1および第2調整手段を採用せずに、晶析器1から排出された冷熱媒を直接熱源機4に返送する状態があってもよい。
【0061】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、第1および第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。本発明の製造方法においては、熱源機に返送される冷熱媒の温度の変動は、3.0℃以内であることが好ましく、1.0℃以内であることがより好ましく、0.5℃以内であることがさらに好ましい。熱源機に返送される冷熱媒の温度の変動が3.0℃以内であれば、熱源機の冷却負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、消費エネルギーが低減されるようになる。
【0062】
次に、融解工程における第2バッファータンクの使い方、および第3調整手段、第4調整手段について、図4〜図6を用いて説明する。
【0063】
図4は、熱源機と晶析器と第2バッファータンクとをつなぐ流路を示している。熱源機4から排出された温熱媒は、晶析器1に供給され、晶析器1内で熱交換された後、晶析器1から排出され、熱源機4に返送される。第2バッファータンク6は、上方開口6aが、熱源機4の温熱媒供給口4cおよび/または晶析器1の熱媒排出口2b、ならびに熱源機4の温熱媒返送口4dとに連通している。また、第2バッファータンク6は、下方開口6bが、晶析器1の熱媒排出口2bと熱源機4の温熱媒返送口4dとに連通している。
【0064】
第3調整手段について、図5を用いて説明する。第3調整手段は、融解工程において、熱源機に返送される温熱媒の温度が低い場合に採用される。
【0065】
例えば、融解工程初期では、晶析器1から排出される温熱媒の温度が低くなりやすく、晶析器1から排出される温熱媒をそのまま熱源機4に返送すると、熱源機4には低温の温熱媒が返送されることとなる。この場合、バルブ等により流路25の流量を減らすことにより、晶析器1から熱源機4に返送する温熱媒の少なくとも一部を流路26を通して第2バッファータンク6の下部に供給する。第2バッファータンク6には、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有する温熱媒が所定量保持されているため、低温の温熱媒が第2バッファータンク6の下方開口6bから供給されると、第2バッファータンク6内の温熱媒の温度勾配を維持するように、低温の温熱媒が第2バッファータンク6の下方に貯められることとなる。一方、第2バッファータンク6の上方開口6aからは、高温の温熱媒が排出される。この際、第2バッファータンク6内の温熱媒の量は一定に保たれることが好ましく、従って、第2バッファータンク6の上部から排出される温熱媒の量は、下部に供給される温熱媒の量と等しいことが好ましい。第2バッファータンク6の上部から排出された高温の温熱媒は、それ単独で、または流路25を通って運ばれた晶析器1から排出された温熱媒と合わさって、熱源機4に返送される。また、第2バッファータンク6の上部から排出された高温の温熱媒には、流路22を通って熱源機4から排出された温熱媒の一部が合わさってもよい。従って、熱源機4には、晶析器1から排出された温熱媒よりも高温に調整された温熱媒が返送されることとなる。
【0066】
第4調整手段について、図6を用いて説明する。第4調整手段は、融解工程において、熱源機に返送される温熱媒の温度が高い場合に採用される。
【0067】
例えば、融解工程終期では、晶析器1から排出される温熱媒の温度が高くなりやすく、晶析器1から排出される温熱媒をそのまま熱源機4に返送すると、熱源機4には高温の温熱媒が返送されることとなる。この場合、バルブ等により流路21の流量を減らし、その少なくとも一部を流路22に流すことにより、熱源機4から晶析器1に供給する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部に供給する。あるいは、流路24の流量を減らし、その少なくとも一部を流路23に流すことにより、晶析器1から熱源機4に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部に供給する。第2バッファータンク6には、下方が低温で上方が高温の温度勾配を有する温熱媒が所定量保持されているため、高温の温熱媒が第2バッファータンク6の上方開口6aから供給されると、第2バッファータンク6内の温熱媒の温度勾配を維持するように、高温の温熱媒が第2バッファータンク6の上方に貯められることとなる。一方、第2バッファータンク6の下方開口6bからは、低温の温熱媒が排出される。この際、第2バッファータンク6内の温熱媒の量は一定に保たれることが好ましく、従って、第2バッファータンク6の下部から排出される温熱媒の量は、上部に供給される温熱媒の量と等しいことが好ましい。第2バッファータンク6の下部から排出された低温の温熱媒は、それ単独で、または流路24を通って運ばれた晶析器1から排出された温熱媒と合わさって、熱源機4に返送される。従って、熱源機4には、晶析器1から排出された温熱媒よりも低温に調整された温熱媒が返送されることとなる。なお、第2バッファータンク6の下部から排出された低温の温熱媒には、流路22,27を通って熱源機4から排出された温熱媒の一部が合わさってもよい。
【0068】
第4調整手段によれば、第2バッファータンク6の上部へ供給される温熱媒は、熱源機4から晶析器1に供給する温熱媒の少なくとも一部、および/または、晶析器1から熱源機4に返送する温熱媒の少なくとも一部となるが、好ましくは、熱源機4から晶析器1に供給する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する。熱源機4から晶析器1に供給する温熱媒は、晶析器1から熱源機4に返送する温熱媒よりも高温であるため、第2バッファータンク6の上方に貯められる温熱媒の単位容量当たりの温熱保持量がより増大し、効率的に高温の温熱媒を貯めることができるようになる。また、晶析器1から熱源機4に返送する温熱媒は融解の進行度合により温度が変化するが、熱源機4から晶析器1に供給する温熱媒の温度はほぼ一定であるため、第2バッファータンク6の上方に貯められる温熱媒の温度制御が容易となる。
【0069】
融解工程では、熱源機4に返送される温熱媒の温度が、熱源機4の効率的な運転が可能な温度である場合には、第2バッファータンク6が使われない状態があってもよい。すなわち、融解工程では、第3および第4調整手段を採用せずに、晶析器1から排出された温熱媒を直接熱源機4に返送する状態があってもよい。
【0070】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、第3および第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことができる。本発明の製造方法においては、熱源機に返送される温熱媒の温度の変動は、3.0℃以内であることが好ましく、1.0℃以内であることがより好ましく、0.5℃以内であることがさらに好ましい。熱源機に返送される温熱媒の温度の変動が3.0℃以内であれば、熱源機の加熱負荷が一定範囲に保たれやすくなり、その結果、熱源機が安定的に稼働し、消費エネルギーが低減されるようになる。
【0071】
バッファータンクには、上下方向に複数の温度測定手段を設け、バッファータンク内の低温と高温の冷熱媒量または温熱媒量を把握できるようにすることが好ましい。そして、バッファータンクに保持された冷熱媒または温熱媒の上方および下方の温度に応じて、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を調整することが好ましい。熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度の調整は、熱源機の運転が不安定になったり、極端に消費エネルギーが増大しない範囲で行うことが好ましい。なお、前記温度測定手段としては、温度計等、公知の温度測定手段を採用すればよい。
【0072】
バッファータンクに保持された低温の冷熱媒または温熱媒がなくなり、急に高温の冷熱媒または温熱媒が熱源機に返送されたり、バッファータンクに保持された高温の冷熱媒または温熱媒がなくなり、急に低温の冷熱媒または温熱媒が熱源機に返送されたりすると、熱源機の運転が極めて不安定になる。従って、バッファータンク内の冷熱媒または温熱媒の上下方向の温度分布を計測することで、低温の冷熱媒または温熱媒がなくなる前に、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を高く調整し、バッファータンクからの低温の冷熱媒または温熱媒の排出速度を落とすことが好ましい。あるいは、高温の冷熱媒または温熱媒がなくなる前に、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を低く調整し、バッファータンクからの高温の冷熱媒または温熱媒の排出速度を落とすようにすることが好ましい。
【0073】
具体的には、バッファータンクに保持された冷熱媒または温熱媒の下方の温度が所定値を超えた場合に、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を高く調整し、バッファータンクに保持された冷熱媒または温熱媒の上方の温度が所定値を下回った場合に、熱源機に返送する冷熱媒または温熱媒の温度を低く調整することが好ましい。その結果、前記第1〜第4調整手段による効果を、より長期にわたり享受できるようになる。
【0074】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、前記結晶化工程と前記融解工程とを有するものであってもよい。この場合、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程と;熱源機から温熱媒を前記晶析器に供給し、前記(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有する。この際、冷凍機に返送される冷熱媒は、前記第1または第2調整手段より温度が一定範囲に保たれ、冷凍機に返送される温熱媒は、前記第3または第4調整手段により温度が一定範囲に保たれる。なお、結晶化工程で使用される熱源機と、融解工程で使用される熱源機とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
図7には、結晶化工程と融解工程とを有し、結晶化工程で使用される熱源機と、融解工程で使用される熱源機とが異なる(メタ)アクリル酸の製造方法について示す。図7には、冷熱媒を冷却する第1熱源機4Aと、温熱媒を加熱する第2熱源機4Bとが示されている。第1熱源機4Aは、冷熱媒供給口4Aaと冷熱媒返送口4Abとを有し、第2熱源機4Bは、温熱媒供給口4Bcと温熱媒返送口4Bdとを有している。
【0076】
図7では、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、第1熱源機4Aから冷熱媒を晶析器1に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記晶析器1から冷熱媒を排出し、前記第1熱源機4Aに返送する工程と;第2熱源機4Bから温熱媒を前記晶析器1に供給し、前記(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記晶析器1から温熱媒を排出し、前記第2熱源機4Bに返送する工程とを有している。図7に示した実施態様では、晶析器1において、結晶化工程と融解工程とが交互に行われる。すなわち、晶析器1には、冷熱媒と温熱媒とが同時に供給されることはない。
【0077】
熱源機4Aに返送される冷熱媒は、第1バッファータンク5を用いた前記前記第1または第2調整手段より温度が一定範囲に保たれ、熱源機4Bに返送される温熱媒は、第2バッファータンク6を用いた前記第3または第4調整手段により温度が一定範囲に保たれる。なお、図7では、第2調整手段について、晶析器1から第1熱源機4Aに返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部へ供給する流路を省略し、第4調整手段について、晶析器1から第2熱源機4Bに返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0078】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、熱源機として冷凍機を用いる場合、冷凍機から冷熱媒を第1晶析器に供給し、第1晶析器で結晶化工程を行うと同時に、前記冷凍機から温熱媒を第2晶析器に供給し、第2晶析器で融解工程を行うようにしてもよい。これについて、図8を用いて説明する。
【0079】
冷凍機7は、冷熱媒供給口7aから冷熱媒を供給し、冷熱媒返送口7bを通って冷熱媒が返送され、温熱媒供給口7cから温熱媒を供給し、温熱媒返送口7dを通って温熱媒が返送される。図8では、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、冷凍機7から冷熱媒を第1晶析器1Aに供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記第1晶析器1Aから冷熱媒を排出し、前記冷凍機7に返送する工程と;前記冷凍機7から温熱媒を第2晶析器1Bに供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記第2晶析器1Bから温熱媒を排出し、前記冷凍機7に返送する工程とを有している。
【0080】
冷凍機7に返送される冷熱媒は、第1バッファータンク5を用いた前記第1または第2調整手段より温度が一定範囲に保たれ、冷凍機7に返送される温熱媒は、第2バッファータンク6を用いた前記第3または第4調整手段により温度が一定範囲に保たれる。なお、図8では、第2調整手段について、晶析器から冷凍機7に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部へ供給する流路を省略し、第4調整手段について、晶析器から冷凍機7に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0081】
第1晶析器1Aで結晶化工程が終了し、第2晶析器1Bで融解工程が終了した後は、流路31により、冷熱媒を第2晶析器1Bに供給し、温熱媒を第1晶析器1Aに供給するとともに、流路32により、第2晶析器1Bから排出される冷熱媒を冷凍機7の冷熱媒返送口7bに返送し、第1晶析器1Aから排出される温熱媒を冷凍機7の温熱媒返送口7dに返送することが好ましい。すなわち、冷凍機7から温熱媒を第1晶析器1Aに供給し、第1晶析器1Aで融解工程を行い、第1晶析器1Aから温熱媒を排出し冷凍機7に返送するとともに、冷凍機7から冷熱媒を第2晶析器1Bに供給し、第2晶析器1Bで結晶化工程を行い、第2晶析器1Bから冷熱媒を排出し冷凍機7に返送することが好ましい。なお、図8において、流路31,32には、各々、冷熱媒用の流路と温熱媒用の流路が設けられている。
【0082】
図8に示した実施態様によれば、冷凍機7から排出される冷熱媒と温熱媒の両方を(メタ)アクリル酸の製造に用いることが可能となり、(メタ)アクリル酸の製造にかかる消費エネルギーを低減できる。また、冷凍機7と、第1晶析器1Aと第2晶析器1Bと、第1バッファータンク5と第2バッファータンク6とを組み合わせることで、効率的に(メタ)アクリル酸を製造することが可能となる。
【0083】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、冷熱媒が、第1冷熱媒と、第1冷熱媒より低温の第2冷熱媒とからなるものであってもよい。例えば、第1冷熱媒と、第2冷熱媒と、温熱媒とを排出する冷凍機を用い、これに3つの晶析器を組み合わせて、(メタ)アクリル酸を製造してもよい。この場合、第1冷熱媒により粗(メタ)アクリル酸溶液を冷却し、結晶化工程の前半が行われ、第2冷熱媒により冷却された粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化し、結晶化工程の後半が行われることとなる。このように第1冷熱媒と第2冷熱媒とを設けることにより、結晶化工程における省エネルギー化を図ることができる。なお、前記結晶化工程の前半において、第1冷熱媒により粗(メタ)アクリル酸溶液を冷却することで、(メタ)アクリル酸が一部結晶化してもよい。これについて、図9を用いて説明する。
【0084】
冷凍機7は、第1冷熱媒供給口7a1から第1冷熱媒を供給し、第1冷熱媒返送口7b1を通って第1冷熱媒が返送され、第2冷熱媒供給口7a2から第2冷熱媒を供給し、第2冷熱媒返送口7b2を通って第2冷熱媒が返送され、温熱媒供給口7cから温熱媒を供給し、温熱媒返送口7dを通って温熱媒が返送される。図9では、本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法は、冷凍機7から第1冷熱媒を第1晶析器1Aに供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液を冷却する工程と;前記第1晶析器1Aから第1冷熱媒を排出し、前記冷凍機7に返送する工程と;冷凍機7から第2冷熱媒を第2晶析器1Bに供給し、冷却した粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;前記第2晶析器1Bから第2冷熱媒を排出し、前記冷凍機7に返送する工程と;前記冷凍機7から温熱媒を第3晶析器1Cに供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;前記第3晶析器1Cから温熱媒を排出し、前記冷凍機7に返送する工程とを有している。この場合、第1晶析器1Aでは結晶化工程の前半が行われ、第2晶析器1Bでは結晶化工程の後半が行われ、第3晶析器1Cでは融解工程が行われることとなる。
【0085】
冷凍機7に返送される第1冷熱媒は、第1(1)バッファータンク5Aを用いた前記第1または第2調整手段により温度が一定範囲に保たれ、冷凍機7に返送される第2冷熱媒は、第1(2)バッファータンク5Bを用いた前記第1または第2調整手段により温度が一定範囲に保たれ、冷凍機7に返送される温熱媒は、第2バッファータンク6を用いた前記第3または第4調整手段により温度が一定範囲に保たれる。なお、図9では、第2調整手段について、晶析器から冷凍機7に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5A,5Bの下部へ供給する流路を省略し、第4調整手段について、晶析器から冷凍機7に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0086】
第1晶析器1Aで結晶化工程の前半が終了し、第2晶析器1Bで結晶化工程の後半が終了し、第3晶析器1Cで融解工程が終了した後は、流路33により、第2冷熱媒を第1晶析器1Aに供給し、温熱媒を第2晶析器1Bに供給し、第1冷熱媒を第3晶析器1Cに供給するとともに、流路34により、第1晶析器1Aから排出される第2冷熱媒を冷凍機7の第2冷熱媒返送口7b2に返送し、第2晶析器1Bから排出される温熱媒を冷凍機7の温熱媒返送口7dに返送し、第3晶析器1Cから排出される第1冷熱媒を冷凍機7の第1冷熱媒返送口7b1に返送する。その結果、第1晶析器1Aでは結晶化工程の後半が行われ、第2晶析器1Bでは融解工程が行われ、第3晶析器1Cでは結晶化工程の前半が行われることとなる。
【0087】
第1晶析器1Aで結晶化工程の後半が終了し、第2晶析器1Bで融解工程が終了し、第3晶析器1Cで結晶化工程の前半が終了した後は、流路33により、温熱媒を第1晶析器1Aに供給し、第1冷熱媒を第2晶析器1Bに供給し、第2冷熱媒を第3晶析器1Cに供給するとともに、流路34により、第1晶析器1Aから排出される温熱媒を冷凍機7の温熱媒返送口7dに返送し、第2晶析器1Bから排出される第1冷熱媒を冷凍機7の第1冷熱媒返送口7b1に返送し、第3晶析器1Cから排出される第2冷熱媒を冷凍機7の第2冷熱媒返送口7b2に返送する。その結果、第1晶析器1Aでは融解工程が行われ、第2晶析器1Bでは結晶化工程の前半が行われ、第3晶析器1Cでは結晶化工程の後半が行われることとなる。
【0088】
図9において、流路33,34には、各々、第1冷熱媒用の流路と第2冷熱媒用の流路と温熱媒用の流路が設けられている。
【0089】
図9に示した実施態様によれば、冷凍機7と、第1晶析器1Aと第2晶析器1Bと第3晶析器1Cと、第1バッファータンク5と第2バッファータンク6とを組み合わせることで、さらに効率的に(メタ)アクリル酸を製造することが可能となり、また冷凍機7の消費エネルギーをより低減できるようになる。
【0090】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法が前記結晶化工程を有する場合、本発明の製造方法は、さらに、粗(メタ)アクリル酸溶液を得る工程を有することが好ましい。
【0091】
前記粗(メタ)アクリル酸溶液を得る工程は、(メタ)アクリル酸製造原料から接触気相酸化反応により(メタ)アクリル酸含有ガスを得る接触気相酸化反応工程と、前記(メタ)アクリル酸含有ガスを液媒体で捕集する捕集工程とを有していることが好ましい。さらに、前記捕集工程で得られた(メタ)アクリル酸溶液の(メタ)アクリル酸含有率を上げることを目的に、前記捕集工程の後段に精製工程を設けてもよい。
【0092】
接触気相酸化反応工程では、(メタ)アクリル酸製造原料としてプロパン、プロピレン、(メタ)アクロレイン、またはイソブチレン等を用い、これを分子状酸素により接触気相酸化させ、(メタ)アクリル酸含有ガスを得る。接触気相酸化反応は、従来公知の酸化触媒を用いて行うことが好ましい。
【0093】
捕集工程では、前記接触気相酸化反応工程で得られた(メタ)アクリル酸含有ガスを、捕集塔において液媒体で捕集し、(メタ)アクリル酸溶液を得る。前記液媒体としては、水、(メタ)アクリル酸含有水、または高沸点溶剤(ジフェニルエーテルやジフェニル等)等を用いることができる。本発明では、捕集工程で得られた(メタ)アクリル酸溶液を、粗(メタ)アクリル酸溶液として晶析工程に供してもよい。
【0094】
捕集工程で得られた(メタ)アクリル酸溶液の(メタ)アクリル酸含有率が低い場合は、捕集工程の後段に精製工程を設け、捕集工程で得られた(メタ)アクリル酸溶液を蒸留や放散等により精製して、晶析工程に供する粗(メタ)アクリル酸溶液を得てもよい。
【0095】
本発明の(メタ)アクリル酸の製造方法が前記融解工程を有し、前記結晶化工程を有さない場合、本発明の製造方法は、さらに、任意の方法により(メタ)アクリル酸を結晶化する工程を有することが好ましい。
【0096】
〔2.晶析システム〕
本発明の晶析システムについて説明する。本発明の晶析システムは、晶析器と熱源機とバッファータンクとを有する。前記晶析器において結晶化操作を行う場合は、本発明の晶析システムは、晶析器と熱源機と第1バッファータンクとを有しており、前記晶析器において融解操作を行う場合は、本発明の晶析システムは、晶析器と熱源機と第2バッファータンクとを有している。
【0097】
本発明の晶析システムに用いられる晶析器は、伝熱面を有し、前記伝熱面により内部が熱媒存在部と結晶存在部とに区分されている。熱媒存在部には、冷熱媒または温熱媒が存在し、結晶存在部には、被結晶含有液および/または結晶が存在する。本発明においては、結晶存在部には、粗(メタ)アクリル酸溶液および/または(メタ)アクリル酸結晶が存在することが好ましい。前記伝熱面は、晶析器を熱媒存在部と結晶存在部の2つの部分に分け、伝熱面を介して熱交換が行われるものであれば、特に制限されない。
【0098】
伝熱面を有する晶析器としては、一般に熱交換器として用いられる装置を採用することができ、前記例示した熱交換器を採用することができる。
【0099】
晶析器では、熱媒存在部に冷熱媒を存在させ、結晶存在部に被結晶含有液を存在させることにより、被結晶含有液が伝熱面を介して冷却され、結晶が生成する。また、晶析器では、熱媒存在部に温熱媒を存在させ、結晶存在部側に結晶を存在させることにより、結晶が伝熱面を介して加熱されて融解し、結晶融解液が得られる。
【0100】
熱媒存在部は、冷熱媒および/または温熱媒が供給される入口(熱媒供給口)と、冷熱媒および/または温熱媒が排出される出口(熱媒排出口)とを有している。また、結晶存在部は、被結晶含有液が供給される入口と、被結晶含有液および/または結晶融解液が排出される出口とを有している。
【0101】
本発明の晶析システムに用いられる熱源機は、冷熱媒を冷却し、および/または、温熱媒を加熱するものであれば、特に限定されず、前記例示した熱源機を用いることができる。また、熱源機として、冷熱媒を冷却すると同時に、温熱媒を加熱する冷凍機を用いてもよい。
【0102】
熱源機が冷熱媒を冷却するものである場合、熱源機は、冷熱媒を供給する冷熱媒供給口と、冷熱媒が返送される冷熱媒返送口とを有している。熱源機の冷熱媒供給口は晶析器の熱媒存在部の入口と連通し、冷熱媒は、冷熱媒供給口を通って熱源機から排出され、晶析器の熱媒存在部に供給される。熱源機の冷熱媒返送口は晶析器の熱媒存在部の出口と連通し、晶析器の熱媒存在部から排出された冷熱媒は、冷熱媒返送口を通って熱源機に返送される。
【0103】
熱源機が温熱媒を加熱するものである場合、熱源機は、温熱媒を供給する温熱媒供給口と、温熱媒が返送される温熱媒返送口とを有している。熱源機の温熱媒供給口は晶析器の熱媒存在部の入口と連通し、温熱媒は、温熱媒供給口を通って熱源機から排出され、晶析器の熱媒存在部に供給される。熱源機の温熱媒返送口は晶析器の熱媒存在部の出口と連通し、晶析器の熱媒存在部から排出された温熱媒は、温熱媒返送口を通って熱源機に返送される。
【0104】
本発明の晶析システムに用いられるバッファータンクは、上方開口と下方開口の2つの開口を有している。バッファータンクは、冷熱媒または温熱媒を貯留できるものであればよく、内部に特に構造物を有していなくてよい。
【0105】
バッファータンクには、上方が高温で下方が低温となる高さ方向の温度勾配を有する冷熱媒または温熱媒が保持される。バッファータンクに、上方が高温で下方が低温となる高さ方向の温度勾配を有する冷熱媒または温熱媒が保持されるようにするためには、バッファータンクの上方開口から高温の冷熱媒または温熱媒を供給し、バッファータンクの下方開口から低温の冷熱媒または温熱媒を供給すればよく、そのようにすることにより、バッファータンク内に保持された冷熱媒または温熱媒に上下方向の温度勾配が自然に生じるようになる。
【0106】
バッファータンクの形状は特に限定されないが、円柱や角柱等の略柱体が好ましい。バッファータンクの上方開口と下方開口との間の長さは、バッファータンクの最大断面長さの1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。つまり、バッファータンクは、上方開口と下方開口との間の長さが少なくとも横幅以上であることが好ましく、このような形状とすることで、バッファータンク内に保持された冷熱媒または温熱媒が、高さ方向に温度勾配が生じやすくなる。
【0107】
バッファータンクの最大断面長さとは、例えば、バッファータンクが円柱形状を有するものであれば、底面の円の直径となる。バッファータンクが四角柱形状を有するものであれば、底面の四角形の対角の長さがバッファータンクの最大断面長さとなる。バッファータンクが下部を除いた部分が柱体形状を有し、下部が下にすぼんだ錐体形状を有するものであれば、柱体形状部分の断面最大長さがバッファータンクの最大断面長さとなる。バッファータンクが高さ方向の中間付近が膨らんだ形状を有するものであれば、中間付近の最も膨らんだ部分での断面最大長さがバッファータンクの最大断面長さとなる。
【0108】
バッファータンクの上方開口と下方開口は、上方開口が下方開口よりも上方に位置するように設けられる。このように各開口を設けることにより、上方開口に液面が位置するようにバッファータンク内に冷熱媒または温熱媒が保持されるようになる。
【0109】
上方開口や下方開口としては、例えば、バッファータンクの外面に開口を設けたり、バッファータンク内部に開口する管をバッファータンクに設ければよい。好ましくは、上方開口としては、バッファータンク内部で上方向に開口する管がバッファータンクに設けられる。また、下方開口としては、好ましくは、バッファータンクの底部に開口が設けられる。上方開口も下方開口も、バッファータンクの断面中央部分に開口が設けられることが好ましい。このように上方開口と下方開口を設けることにより、各開口から冷熱媒または温熱媒が流出入しても、バッファータンク内の冷熱媒または温熱媒の温度勾配が維持されやすくなる。
【0110】
次に、晶析器と熱源機とバッファータンクとをつなぐ流路について、図1と図4を用いて説明する。
【0111】
図1には、バッファータンクとして第1バッファータンクを用いた場合の流路を示しており、冷熱媒を用いて結晶化を行う場合の晶析システムを表している。冷熱媒を用いる場合、本発明の晶析システムは、晶析器1と熱源機4と第1バッファータンク5とを有する。熱源機4の冷熱媒供給口4aは晶析器1の熱媒存在部2の入口2aに連通し、晶析器1の熱媒存在部2の出口2bは熱源機4の冷熱媒返送口4bに連通している。その結果、晶析器1と熱源機4との間に、冷熱媒の循環流路が形成されることとなる。熱源機4から晶析器1の熱媒存在部2に供給された冷熱媒は、晶析器1内で熱交換された後、晶析器1の熱媒存在部2から排出され、熱源機4に返送される。冷熱媒が晶析器1内で熱交換されることにより、晶析器1の結晶存在部3に結晶が生成する。熱源機4に返送された冷熱媒は、熱源機4内で冷却され、再び熱源機4の冷熱媒供給口4aから排出される。
【0112】
第1バッファータンク5は、上方開口5aが、晶析器1の熱媒存在部2の出口2bと、熱源機4の冷熱媒返送口4bとに連通している。その結果、晶析器1から排出される冷熱媒が、第1バッファータンク5の上方開口5aに供給される流路、および第1バッファータンク5の上方開口5aから熱源機4に返送される流路が形成される。
【0113】
第1バッファータンク5は、下方開口5bが、熱源機4の冷熱媒供給口4aおよび/または晶析器1の熱媒存在部2の出口2b、ならびに熱源機4の冷熱媒返送口4bとに連通している。その結果、熱源機4から供給される冷熱媒および/または晶析器1から排出される冷熱媒が、第1バッファータンク5の下方開口5bに供給される流路、ならびに第1バッファータンク5の下方開口5bから熱源機4に返送される流路が形成される。
【0114】
図4には、バッファータンクとして第2バッファータンクを用いた場合の流路を示しており、温熱媒を用いて融解を行う場合の晶析システムを表している。温熱媒を用いる場合、本発明の晶析システムは、晶析器1と熱源機4と第2バッファータンク6とを有する。熱源機4の温熱媒供給口4cは晶析器1の熱媒存在部2の入口2aに連通し、晶析器1の熱媒存在部2の出口2bは熱源機4の温熱媒返送口4dに連通している。その結果、晶析器1と熱源機4との間に、温熱媒の循環流路が形成されることとなる。熱源機4から晶析器1の熱媒存在部2に供給された温熱媒は、晶析器1内で熱交換された後、晶析器1の熱媒存在部2から排出され、熱源機4に返送される。温熱媒が晶析器1内で熱交換されることにより、晶析器1の結晶存在部3の結晶が融解する。熱源機4に返送された温熱媒は、熱源機4内で加熱され、再び熱源機4の温熱媒供給口4cから排出される。
【0115】
第2バッファータンク6は、上方開口6aが、熱源機4の温熱媒供給口4cおよび/または晶析器1の熱媒存在部2の出口2b、ならびに熱源機4の温熱媒返送口4dとに連通している。その結果、熱源機4から供給される温熱媒および/または晶析器1から排出される温熱媒が、第2バッファータンク6の上方開口6aに供給される流路、ならびに第2バッファータンク6の上方開口6aから熱源機4に返送される流路が形成される。
【0116】
第2バッファータンク6は、下方開口6bが、晶析器1の熱媒存在部2の出口2bと熱源機4の温熱媒返送口4dとに連通している。その結果、晶析器1から排出される温熱媒が、第2バッファータンク6の下方開口6bに供給される流路、および第2バッファータンク6の下方開口6bから熱源機4に返送される流路が形成される。
【0117】
本発明の晶析システムによれば、晶析器と熱源機とバッファータンクとを設け、前記説明したように流路を形成することにより、熱源機が安定的に稼働し、結晶化操作および/または融解操作が安定化し、消費エネルギーが低減されるようになる。
【0118】
本発明の晶析システムは、図7に示すように、1つの晶析器に対し、2つの熱源機と、2つのバッファータンクとを有するものであってもよい。
【0119】
熱源機は、冷熱媒を冷却する第1熱源機4Aと、温熱媒を加熱する第2熱源機4Bとからなる。第1熱源機4Aは、晶析器1の熱媒存在部2の入口に連通した冷熱媒供給口4Aaと、熱媒存在部2の出口に連通した冷熱媒返送口4Abとを有し、第2熱源機4Bは、晶析器1の熱媒存在部2の入口に連通した温熱媒供給口4Bcと、熱媒存在部2の出口に連通した温熱媒返送口4Bdとを有する。第1熱源機4Aにより、晶析器1に冷熱媒が供給され、晶析器1内で結晶化操作が行われ、第2熱源機4Bにより、晶析器1に温熱媒が供給され、晶析器1内で融解操作が行われる。
【0120】
バッファータンクは、第1熱源機4Aに返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つ第1バッファータンク5と、第2熱源機4Bに返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つ第2バッファータンク6とからなる。第1バッファータンク5と第1熱源機4Aと晶析器1とをつなぐ流路は、冷熱媒を用いて結晶化を行う場合の晶析システムを表した図1と同様である。また、第2バッファータンク6と第2熱源機4Bと晶析器1とをつなぐ流路は、温熱媒を用いて融解を行う場合の晶析システムを表した図4と同様である。図7では、晶析器1から第1熱源機4Aに返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部へ供給する流路を省略し、晶析器1から第2熱源機4Bに返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0121】
本発明の晶析システムは、熱源機として冷凍機を用いる場合、1つの冷凍機に対し、2つの晶析器と、2つのバッファータンクとを有するものであってもよい。これについて、図8を用いて説明する。
【0122】
晶析器は、第1晶析器1Aと第2晶析器1Bとからなり、第1晶析器1Aは、第1伝熱面を有し、第1伝熱面により内部が第1熱媒存在部2Aと第1結晶存在部3Aとに区分され、第2晶析器1Bは、第2伝熱面を有し、前記第2伝熱面により内部が第2熱媒存在部2Bと第2結晶存在部3Bとに区分されている。
【0123】
冷凍機7は、第1熱媒存在部2Aの入口に連通した冷熱媒供給口7aと、第1熱媒存在部2Aの出口に連通した冷熱媒返送口7bと、第2熱媒存在部2Bの入口に連通した温熱媒供給口7cと、第2熱媒存在部2Bの出口に連通した温熱媒返送口7dとを有する。
【0124】
バッファータンクは、冷凍機7に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つ第1バッファータンク5と、冷凍機7に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つ第2バッファータンク6とからなる。第1バッファータンク5と冷凍機7と晶析器1とをつなぐ流路は、冷熱媒を用いて結晶化を行う場合の晶析システムを表した図1と同様である。また、第2バッファータンク6と冷凍機7と晶析器1とをつなぐ流路は、温熱媒を用いて融解を行う場合の晶析システムを表した図4と同様である。図8では、晶析器1から冷凍機7に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5の下部へ供給する流路を省略し、晶析器1から冷凍機7に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0125】
図8に示した実施態様においては、第1晶析器1Aの熱媒存在部2Aの入口と、第2晶析器1Bの熱媒存在部2Bの入口とに連通した流路31と、第1晶析器1Aの熱媒存在部2Aの出口と、第2晶析器1Bの熱媒存在部2Bの出口とに連通した流路32とが設けられることが好ましい。なお、流路31,32には、各々、冷熱媒用の流路と温熱媒用の流路とが設けられている。
【0126】
熱源機として冷凍機を用いれば、冷熱媒の冷却と温熱媒の加熱とを同時に行うことができるため、冷凍機7から冷熱媒を第1晶析器1Aに供給し、第1晶析器1Aで結晶化操作を行うと同時に、冷凍機7から温熱媒を第2晶析器1Bに供給し、第2晶析器1Bで融解操作を行うことができる。第1晶析器1Aで結晶化操作が終了し、第2晶析器1Bで融解操作が終了した後は、流路31により、冷熱媒を第2晶析器1Bに供給し、温熱媒を第1晶析器1Aに供給するとともに、流路32により、第2晶析器1Bから排出される冷熱媒を冷凍機7の冷熱媒返送口7bに返送し、第1晶析器1Aから排出される温熱媒を冷凍機7の温熱媒返送口7dに返送することが好ましい。このように、図8に示した晶析システムを用いれば、結晶化操作と融解操作とを効率的に行うことが可能となる。
【0127】
本発明の晶析システムは、熱源機が、第1冷熱媒と、第1冷熱媒より低温の第2冷熱媒とを供給できるものであってもよい。例えば、第1冷熱媒と第2冷熱媒と温熱媒とを排出する冷凍機を用い、これに3つの晶析器と、3つのバッファータンクとを組み合わせた晶析システムであってもよい。これについて、図9を用いて説明する。
【0128】
晶析器は、第1晶析器1Aと第2晶析器1Bと第3晶析器1Cとからなり、第1晶析器1Aは、第1伝熱面を有し、第1伝熱面により内部が第1熱媒存在部2Aと第1結晶存在部3Aとに区分され、第2晶析器1Bは、第2伝熱面を有し、第2伝熱面により内部が第2熱媒存在部2Bと第2結晶存在部3Bと、第3晶析器1Cは、第3伝熱面を有し、第3伝熱面により第3熱媒存在部2Cと第2結晶存在部3Cとに区分されている。
【0129】
冷凍機7は、第1熱媒存在部2Aの入口に連通した第1冷熱媒供給口7a1と、第1熱媒存在部2Aの出口に連通した第1冷熱媒返送口7b1と、第2熱媒存在部2Bの入口に連通した第2冷熱媒供給口7a2と、第2熱媒存在部2Bの出口に連通した第2冷熱媒返送口7b2と、第3熱媒存在部2Cの入口に連通した温熱媒供給口7cと、第3熱媒存在部2Cの出口に連通した温熱媒返送口7dとを有する。
【0130】
バッファータンクは、冷凍機7に返送する第1冷熱媒の温度を一定範囲に保つ第1(1)バッファータンク5Aと、冷凍機7に返送する第2冷熱媒の温度を一定範囲に保つ第1(2)バッファータンク5Bと、冷凍機7に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つ第2バッファータンク6とからなる。第1バッファータンク5A,5Bと冷凍機7と晶析器1とをつなぐ流路は、冷熱媒を用いて結晶化を行う場合の晶析システムを表した図1と同様である。また、第2バッファータンク6と冷凍機7と晶析器1とをつなぐ流路は、温熱媒を用いて融解を行う場合の晶析システムを表した図4と同様である。図9では、晶析器から冷凍機7に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンク5A,5Bの下部へ供給する流路を省略し、晶析器から冷凍機7に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンク6の上部へ供給する流路を省略して示している。
【0131】
図9に示した実施態様においては、第1晶析器1Aの熱媒存在部2Aの入口と、第2晶析器1Bの熱媒存在部2Bの入口と、第3晶析器1Cの熱媒存在部2Cの入口とに連通した流路33と、第1晶析器1Aの熱媒存在部2Aの出口と、第2晶析器1Bの熱媒存在部2Bの出口と、第3晶析器1Cの熱媒存在部2Cの出口とに連通した流路34とが設けられることが好ましい。なお、流路33,34には、各々、第1冷熱媒用の流路と第2冷熱媒用の流路と温熱媒用の流路とが設けられている。
【0132】
図9に示した実施態様によれば、第1冷熱媒により被結晶含有液が冷却され、結晶化操作の前半が行われ、第2冷熱媒により冷却された被結晶含有液が結晶化し、結晶化操作の後半が行われることとなる。このように第1冷熱媒と第2冷熱媒とを用いることにより、結晶化操作における省エネルギー化を図ることができる。なお、前記結晶化操作の前半において、第1冷熱媒により被結晶含有液が冷却され、結晶化してもよい。
【0133】
第1晶析器1Aで結晶化操作の前半が終了し、第2晶析器1Bで結晶化操作の後半が終了し、第3晶析器1Cで融解操作が終了した後は、流路33により、第2冷熱媒を第1晶析器1Aに供給し、温熱媒を第2晶析器1Bに供給し、第1冷熱媒を第3晶析器1Cに供給するとともに、流路34により、第1晶析器1Aから排出される第2冷熱媒を冷凍機7の第2冷熱媒返送口7b2に返送し、第2晶析器1Bから排出される温熱媒を冷凍機7の温熱媒返送口7dに返送し、第3晶析器1Cから排出される第1冷熱媒を冷凍機7の第1冷熱媒返送口7b1に返送する。その結果、第1晶析器1Aでは結晶化操作の後半が行われ、第2晶析器1Bでは融解操作が行われ、第3晶析器1Cでは結晶化操作の前半が行われることとなる。同様にして、第1晶析器1Aで結晶化操作の後半が終了し、第2晶析器1Bで融解操作が終了し、第3晶析器1Cで結晶化操作の前半が終了した後は、流路33,34を操作することにより、第1晶析器1Aで融解操作を行い、第2晶析器1Bで結晶化操作の前半を行い、第3晶析器1Cで結晶化操作の後半を行うことができる。このように、図9に示した晶析システムを用いれば、結晶化操作と融解操作とを効率的に行うことが可能となり、また冷凍機7の消費エネルギーをより低減できるようになる。
【実施例】
【0134】
(1)バッファータンクを用いた場合
図9に示す晶析システムを用い、粗アクリル酸溶液から精製アクリル酸を製造した。熱源機としては、吸収式冷凍機を用いた。前記吸収式冷凍機からは、0℃の第1冷熱媒と−30℃の第2冷熱媒と40℃の温熱媒とが、各々流量300m3/時で排出されていた。晶析器としては、伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器を用いた。
【0135】
粗アクリル酸溶液は、アクリル酸94.3質量%、水2.3質量%、酢酸2.0質量%、マレイン酸0.4質量%、その他の不純物1.0質量%を含有していた。晶析器の結晶存在部に30℃の粗アクリル酸溶液を20t供給するとともに、晶析器の熱媒存在部に0℃の第1冷熱媒を供給し、結晶化工程の前半を行った。この際、冷凍機に返送される第1冷熱媒の温度を5℃に保つように、所定量の第1冷熱媒が保持された第1(1)バッファータンクを用いた。
【0136】
冷凍機に返送される第1冷熱媒の温度を測定し、その温度が5℃を上回った場合は、晶析器から排出された第1冷熱媒の一部を第1(1)バッファータンクの上部に供給するとともに、第1(1)バッファータンクの下部から同量の第1冷熱媒を抜き出した。第1(1)バッファータンクの下部から抜き出した第1冷熱媒は、晶析器から排出された残りの第1冷熱媒と合わさって、冷凍機に返送された。この際、第1(1)バッファータンクには、150m3/時〜300m3/時の第1冷熱媒が供給され、0m3/時〜150m3/時の第1冷熱媒が第1(1)バッファータンクを通らずに冷凍機に返送された。
【0137】
冷凍機に返送される第1冷熱媒の温度が5℃を下回った場合は、冷凍機から晶析器に供給する0℃の第1冷熱媒の一部を第1(1)バッファータンクの下部に供給するとともに、第1(1)バッファータンクの上部から同量の第1冷熱媒を抜き出した。第1(1)バッファータンクの上部から抜き出した第1冷熱媒は、晶析器から排出された第1冷熱媒と合わさって、冷凍機に返送された。この際、晶析器には150m3/時〜300m3/時の第1冷熱媒が供給され、第1(1)バッファータンクには、0m3/時〜150m3/時の第1冷熱媒が供給された。
【0138】
結晶化工程の前半は40分間行い、このときの冷凍機の冷凍機能力は1250kWであった。
【0139】
次いで、晶析器の熱媒存在部に−30℃の第2冷熱媒を供給し、結晶化工程の後半を行った。この際、冷凍機に返送される第2冷熱媒の温度を−25℃に保つように、所定量の第1冷熱媒が保持された第1(2)バッファータンクを用いた。
【0140】
冷凍機に返送される第2冷熱媒の温度を測定し、その温度が−25℃を上回った場合、または−25℃を下回った場合に応じて、第1冷熱媒の場合と同様に、第1(2)バッファータンクを用いた。結晶化工程の後半は40分間行い、その結果、アクリル酸結晶を得た。結晶化工程の後半における冷凍機の冷凍機能力は1250kWであった。
【0141】
次いで、晶析器の熱媒存在部に40℃の温熱媒を供給し、融解工程を行った。融解工程では、発汗操作も行った。この際、冷凍機に返送される温熱媒の温度を35℃に保つように、所定量の温熱媒が保持された第2バッファータンクを用いた。
【0142】
冷凍機に返送される温熱媒の温度を測定し、その温度が35℃を下回った場合は、晶析器から排出された温熱媒の一部を第2バッファータンクの下部に供給するとともに、第2バッファータンクの上部から同量の温熱媒を抜き出した。第2バッファータンクの上部から抜き出した温熱媒は、晶析器から排出された残りの温熱媒と合わさって、冷凍機に返送された。この際、第2バッファータンクには、150m3/時〜300m3/時の温熱媒が供給され、0m3/時〜150m3/時の温熱媒が第2バッファータンクを通らずに冷凍機に返送された。
【0143】
冷凍機に返送される温熱媒の温度が35℃を上回った場合は、冷凍機から晶析器に供給する40℃の温熱媒の一部を第2バッファータンクの上部に供給するとともに、第2バッファータンクの下部から同量の温熱媒を抜き出した。第2バッファータンクの下部から抜き出した温熱媒は、晶析器から排出された温熱媒と合わさって、冷凍機に返送された。この際、晶析器には150m3/時〜300m3/時の温熱媒が供給され、第2バッファータンクには、0m3/時〜300m3/時の温熱媒が供給された。
【0144】
融解工程は40分間行い、その結果、アクリル酸融解液(精製アクリル酸)が15t得られた。融解工程における冷凍機の冷凍機能力は−2500kWであった。なお、冷凍機能力とは「単位時間に物体から奪う熱の量」を表し、冷却側の能力は“+”で表記し、加熱側の能力は“−”で表記した。
【0145】
(2)バッファータンクを用いたが、本発明と異なる運転方法を実施した場合
晶析器から排出された第1冷熱媒、第2冷熱媒、温熱媒を、一旦、対応するバッファータンクに全量供給し、バッファータンクから連続的に冷凍機に返送した以外は、前記(1)の実施例と同様に、結晶化工程の前半と後半、および融解工程とを行った。第1冷熱媒、第2冷熱媒、温熱媒のいずれも、冷凍機に返送される各熱媒の温度が、1つの工程内で10℃程度変動した。その結果、冷凍機から晶析器に供給する各熱媒の温度を一定に保ちながら冷凍機を安定的に稼働させることが困難となり、その結果、晶析操作が不安定になり、消費エネルギーが増大した。
【0146】
(3)バッファータンクを用いない場合
バッファータンクを用いなかった以外は、前記(1)の実施例と同様に、結晶化工程の前半と後半、および融解工程とを行った。第1冷熱媒、第2冷熱媒、温熱媒のいずれも、冷凍機に返送される各熱媒の温度が1つの工程内で20℃以上変動し、冷凍機から晶析器に供給する各熱媒の温度を一定に保つように冷凍機を運転することができず、その結果、晶析操作が不安定になり、消費エネルギーが増大した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、結晶化工程および/または融解工程を有する(メタ)アクリル酸の製造方法に用いることができる。また、本発明の晶析システムは、結晶化および/または融解に用いることができる。
【符号の説明】
【0148】
1,1A,1B,1C: 晶析器
4,4A,4B: 熱源機
5,5A,5B: 第1バッファータンク
6: 第2バッファータンク
7: 冷凍機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;
前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;
下記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保つことを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
第1調整手段:晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンクの上部に供給し、前記第1バッファータンクの下部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第2調整手段:熱源機から晶析器に供給する冷熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を前記第1バッファータンクの下部に供給し、前記第1バッファータンクの上部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
【請求項2】
熱源機から温熱媒を晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;
前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;
下記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
第3調整手段:晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンクの下部に供給し、前記第2バッファータンクの上部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
第4調整手段:熱源機から晶析器に供給する温熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を前記第2バッファータンクの上部に供給し、前記第2バッファータンクの下部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
【請求項3】
熱源機から冷熱媒を晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;
前記晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程と;
熱源機から温熱媒を前記晶析器に供給し、前記(メタ)アクリル酸を融解する工程と;
前記晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;
下記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保ち;
下記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
第1調整手段:晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンクの上部に供給し、前記第1バッファータンクの下部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第2調整手段:熱源機から晶析器に供給する冷熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を前記第1バッファータンクの下部に供給し、前記第1バッファータンクの上部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第3調整手段:晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンクの下部に供給し、前記第2バッファータンクの上部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
第4調整手段:熱源機から晶析器に供給する温熱媒および/または晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を前記第2バッファータンクの上部に供給し、前記第2バッファータンクの下部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
【請求項4】
熱源機から冷熱媒を第1晶析器に供給し、粗(メタ)アクリル酸溶液から(メタ)アクリル酸を結晶化する工程と;
前記第1晶析器から冷熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程と;
前記熱源機から温熱媒を第2晶析器に供給し、結晶化した(メタ)アクリル酸を融解する工程と;
前記第2晶析器から温熱媒を排出し、前記熱源機に返送する工程とを有し;
前記熱源機が冷凍機であり;
下記第1または第2調整手段により、熱源機に返送する冷熱媒の温度を一定範囲に保ち;
下記第3または第4調整手段により、熱源機に返送する温熱媒の温度を一定範囲に保つことを特徴とする(メタ)アクリル酸の製造方法。
第1調整手段:第1晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を第1バッファータンクの上部に供給し、前記第1バッファータンクの下部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第2調整手段:熱源機から第1晶析器に供給する冷熱媒および/または第1晶析器から熱源機に返送する冷熱媒の少なくとも一部を前記第1バッファータンクの下部に供給し、前記第1バッファータンクの上部から冷熱媒を排出して熱源機に返送する。
第3調整手段:第2晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を第2バッファータンクの下部に供給し、前記第2バッファータンクの上部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
第4調整手段:熱源機から第2晶析器に供給する温熱媒および/または第2晶析器から熱源機に返送する温熱媒の少なくとも一部を前記第2バッファータンクの上部に供給し、前記第2バッファータンクの下部から温熱媒を排出して熱源機に返送する。
【請求項5】
前記第1バッファータンクには所定量の冷熱媒が保持され、
前記第2バッファータンクには所定量の温熱媒が保持され、
第1バッファータンクに保持された冷熱媒および第2バッファータンクに保持された温熱媒は、上方が高温で下方が低温の温度勾配を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸の製造方法。
【請求項6】
第1バッファータンクに保持された冷熱媒の上方および下方の温度に応じて、熱源機に返送する冷熱媒の温度を調整し、
第2バッファータンクに保持された温熱媒の上方および下方の温度に応じて、熱源機に返送する温熱媒の温度を調整する請求項5に記載の(メタ)アクリル酸の製造方法。
【請求項7】
前記第1バッファータンクには、上部と下部に冷熱媒が出入りする開口が設けられ、前記上部の開口と前記下部の開口との間の長さが、第1バッファータンクの最大断面長さの1倍以上であり;
前記第2バッファータンクには、上部と下部に温熱媒が出入りする開口が設けられ、前記上部の開口と前記下部の開口との間の長さが、第2バッファータンクの最大断面長さの1倍以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸の製造方法。
【請求項8】
伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;
前記熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口とを有する熱源機と;
前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第1バッファータンクとを有することを特徴とする晶析システム。
【請求項9】
伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;
前記熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する熱源機と;
前記温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第2バッファータンクとを有することを特徴とする晶析システム。
【請求項10】
伝熱面を有し、前記伝熱面により熱媒存在部と結晶存在部とに区分された晶析器と;
前記熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口とを有する第1熱源機と;
前記熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する第2熱源機と;
前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第1バッファータンクと;
前記温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第2バッファータンクとを有することを特徴とする晶析システム。
【請求項11】
第1伝熱面を有し、前記第1伝熱面により内部が第1熱媒存在部と第1結晶存在部とに区分された第1晶析器と;
第2伝熱面を有し、前記第2伝熱面により内部が第2熱媒存在部と第2結晶存在部とに区分された第2晶析器と;
前記第1熱媒存在部の入口に連通した冷熱媒供給口と、前記第1熱媒存在部の出口に連通した冷熱媒返送口と、前記第2熱媒存在部の入口に連通した温熱媒供給口と、前記第2熱媒存在部の出口に連通した温熱媒返送口とを有する冷凍機と;
前記第1熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記冷熱媒供給口および/または前記第1熱媒存在部の出口と前記冷熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第1バッファータンクと;
前記第2温熱媒供給口および/または前記熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した上方開口と、前記第2熱媒存在部の出口と前記温熱媒返送口とに連通した下方開口とを有する第2バッファータンクとを有することを特徴とする晶析システム。
【請求項12】
前記第1バッファータンクおよび第2バッファータンクは、前記上方開口と前記下方開口との間の長さが、最大断面長さの1倍以上である請求項8〜11のいずれか一項に記載の晶析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−265227(P2010−265227A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119162(P2009−119162)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】