説明

(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物およびその製造方法

【課題】二次電池の電極材料として有用な、高いラジカル濃度を有することのできる(メタ)アクリル酸系重合体を製造するための単量体原料およびその製造方法の提供。
【解決手段】一般式(1):


(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物およびその製造方法に関する。更に詳しくは、二次電池の電極材料として用いられる(メタ)アクリル酸系重合体の製造に用いることのできる(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンや携帯電話等の急速な市場拡大に伴い、これらに用いられるエネルギー密度の高い小型大容量二次電池への要求が高まっている。この要求に応えるために、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体としてその電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発されている。中でもリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、安定性に優れた大容量二次電池として種々の電子機器に利用されている。このようなリチウムイオン二次電池は、一般に、活物質として正極にリチウム含有遷移金属酸化物を、負極に炭素を用いたものであり、これら活物質へのリチウムイオンの挿入、脱離反応を利用して充放電を行っている。
【0003】
近年、より大容量化を目的に、電極反応に直接寄与する電極活物質としてラジカル化合物を利用した二次電池が提案されている(特許文献1参照)。そしてラジカル化合物としては、例えば、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノキシメタクリレート)、ポリ(2,2,5,5−テトラメチル−2−ピロリジノキシメタクリレート)およびポリ(2,2,5,5−テトラメチル−2−ピロリノキシメタクリレート)等の、高分子の側鎖に安定なラジカルを有する化合物が提案されている。これらラジカル化合物のうち、例えば、最も高いラジカル濃度を有するポリ(2,2,5,5−テトラメチル−2−ピロリノキシメタクリレート)のラジカル濃度(計算値)は2.69×1021radicals/gである。
【0004】
その他、高いラジカル濃度を有するラジカル化合物として、スピロ環状ニトロキシド構造を有する高分子化合物が提案されている(特許文献2参照)。当該高分子化合物のうち、最も高いラジカル濃度を有するポリ(2,2,8,8,10,10−ヘキサメチル−1,9−ジアザスピロ[5,5]−ウンデカンアクリレートオキシラジカル)のラジカル濃度(計算値)は、3.56×1021radicals/gであり、特許文献2には、この高分子化合物のラジカル濃度(実測値)は、3.58×1021radicals/gであると記載されている。
【0005】
前記ラジカル濃度は、エネルギー密度が高く大容量である二次電池を実現する上で重要な指標の一つであることから、高いラジカル濃度を有することのできるラジカル化合物をはじめ、電極活物質として用いることができる種々のラジカル化合物の出現が待ち望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−304996号公報
【特許文献2】特開2006−45310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、二次電池の電極材料として有用なラジカル化合物として、高いラジカル濃度を有することのできる(メタ)アクリル酸系重合体を製造するための単量体原料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物に関する。前記(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
で表される3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを用いて、これを(メタ)アクリル酸ハライドでエステル化させる方法や、あるいは(メタ)アクリル酸エステル化合物とエステル交換させる方法により得ることができる。
【0013】
なお、本発明においては、アクリル酸およびメタクリル酸を(メタ)アクリル酸といい、メタクリレートおよびアクリレートを(メタ)アクリレートという。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、二次電池の電極活物質として有用な、高いラジカル濃度を有することのできる(メタ)アクリル酸系重合体を製造するための単量体原料およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、下記一般式(1)で表される新規化合物である。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。
本発明に係る(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、例えば、下記式(2):
【0018】
【化4】

【0019】
で表される3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを用いて、これを(メタ)アクリル酸ハライドでエステル化させる方法(以下、「製造方法1」ということがある)や、あるいは(メタ)アクリル酸エステル化合物とエステル交換させる方法(以下、「製造方法2」ということがある)により得ることができる。
【0020】
3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールは、例えば、下式に示すように、1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンを用いる公知の方法(Bull Soc Chim Fr,130,299−303(1993))等により製造することができる。
【0021】
すなわち、まずは1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンを、炭酸アンモニウム等の塩基の存在下、シアン化カリウムおよびシアン化ナトリウム等のシアン化合物と反応させて1,5,7−トリメチルスピロ[9−アザビシクロ(3.3.1)ノナン−3,4’−イミダゾリジン−2’,5’−ジオン]を得る。次に、これと水酸化バリウム等の塩基とを反応させることにより、開環したアミノ酸化合物である3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸を得る。さらに、塩酸等の酸の存在下、これとメタノールとを反応させて3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸のメチルエステルを得た後、水酸化ナトリウム等の塩基の存在下、臭素等のハロゲン化合物と反応させることによりこれを閉環させて、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−カルボン酸を得る。そして、リチウムアルミニウムハイドライドおよびリチウムボロハイドライド等の還元剤を用いてこれを還元することにより3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを得ることができる。
【0022】
【化5】

【0023】
本発明に係る(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、このようにして得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを用いて、例えば、以下の2種類の方法により製造することができる。
【0024】
製造方法1
この製造方法では、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを(メタ)アクリル酸ハライドでエステル化させることにより、(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物を製造することができる。
【0025】
(メタ)アクリル酸ハライドとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイドおよび(メタ)アクリル酸ヨーダイド等が挙げられる。これらの中でも、安価であることから(メタ)アクリル酸クロライドが好適に用いられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸ハライドの使用割合は、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール1モルに対して0.8〜1.5モルの割合であることが好ましく、0.9〜1.1モルの割合であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸ハライドの使用割合が0.8モル未満の場合、反応が進行しにくくなるおそれがある。また、(メタ)アクリル酸ハライドの使用割合が1.5モルを超える場合、使用量に見合う効果がなく経済的でなくなるおそれがある。
【0027】
エステル化に使用する溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等の脂肪族ニトリル類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が好適に用いられる。
【0028】
溶媒の使用量は、反応を円滑に進行させる観点および使用量に見合うだけの効果を得る観点から、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール100重量部に対して50〜5000重量部であることが好ましく、100〜3000重量部であることがより好ましい。
【0029】
また、エステル化をより円滑に進行させることを目的として、塩基を加えてもよい。塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびトリフェニルアミン等のアミン化合物等が挙げられる。これら塩基は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。塩基の使用割合は、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール1モルに対して1.5モル以下の割合であることが好ましく、1.1モル以下の割合であることがより好ましい。
【0030】
エステル化の操作方法としては、例えば、先に所定量の3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール、溶媒および必要に応じて塩基を混合した後、撹拌下に(メタ)アクリル酸ハライドを滴下しながら反応させる方法等が挙げられる。この方法によると、容易に収率よく反応させることができる。
【0031】
反応温度としては、0〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。反応時間としては、特に制限はないが、通常、1〜20時間であり、好ましくは5〜20時間である。
【0032】
かくして得られた(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、ろ過や濃縮等により容易に単離することができる。
【0033】
製造方法2
この製造方法では、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを(メタ)アクリル酸エステル化合物とエステル交換させることにより、(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物を製造することができる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピルおよび(メタ)アクリル酸−n−ブチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸エチルが好適に用いられる。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用割合は、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール1モルに対して1〜10モルの割合であることが好ましい。
【0036】
エステル交換に際して、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、イソオクタンおよびシクロヘキサン等の炭化水素類等を溶媒として使用することができるが、これら溶媒を使用せず、生成するアルコールを(メタ)アクリル酸エステル化合物との共沸により系外に取り出しながら反応させることにより、当該反応を容易に完結させることができる。
【0037】
また、エステル交換をより円滑に進行させることを目的として、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、チタン酸テトラメチル、チタン酸テトラエチル、ジブチル錫オキシドおよびジオクチル錫オキシド等が挙げられる。これら触媒は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。触媒の使用割合は、3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール1モルに対して0.05モル以下の割合であることが好ましく、0.005モル以下の割合であることがより好ましい。
【0038】
反応温度としては、50〜160℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。反応時間としては、反応温度や触媒の種類等によって適宜選択することができるが、通常、1〜48時間である。
【0039】
かくして得られた(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、ろ過等により触媒を除去し、溶媒を用いた場合はさらに溶媒を留去することによって、容易に単離することができる。
【0040】
本発明に係る(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物は、二次電池の電極活物質として有用な、高いラジカル濃度を有することのできる(メタ)アクリル酸アダマンチル系重合体を製造するための単量体原料として用いることができる。
【0041】
(メタ)アクリル酸アダマンチル系重合体を製造する方法としては、例えば、前記(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物および重合開始剤をトルエンやn−ヘキサン等の溶媒に混合したものと界面活性剤とを水に混合して分散させた後、撹拌下で加熱して重合反応生成物を得て、これを過酸化物等の酸化剤と反応させてニトロキシド化する方法を挙げることができる。また、このようにして得られた(メタ)アクリル酸アダマンチル系重合体は、これを金属等の集電体と結着させることにより、二次電池の電極として使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0043】
製造例1
撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた250mL容の4つ口フラスコに、1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オン9.1g(50ミリモル)およびエタノール18mLを仕込み、均一溶液を得た。次いで、水30mLに溶解させた炭酸アンモニウム9.6g(100ミリモル)および水18mLに溶解させたシアン化カリウム4.5g(70ミリモル)をこれに添加した。窒素ガスを通じて系内の酸素を除去した後、50℃にて144時間反応させ、ろ過した後、エタノール50mLおよびジエチルエーテル50mLで洗浄し、減圧乾燥して1,5,7−トリメチルスピロ[9−アザビシクロ(3.3.1)ノナン−3,4’−イミダゾリジン−2’,5’−ジオン]11.6gを得た(収率92%)。得られた1,5,7−トリメチルスピロ[9−アザビシクロ(3.3.1)ノナン−3,4’−イミダゾリジン−2’,5’−ジオン]を大気圧イオン化法により質量分析したところ、分子量が251であったことから同定できた。
【0044】
得られた1,5,7−トリメチルスピロ[9−アザビシクロ(3.3.1)ノナン−3,4’−イミダゾリジン−2’,5’−ジオン]5.2g(20ミリモル)と共に、水酸化バリウム51g(300ミリモル)および水120mLを、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた500mL容の4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを通じて系内の酸素を除去した後、100℃にて72時間反応させ、さらにろ過し、蒸発乾固させて3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸4.5gを得た(収率99%)。得られた3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸をH−NMR(DO)測定したところ、2.36、2.14、1.93、1.52、1.35、1.07ppmにピークが認められたことから同定できた。
【0045】
得られた3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸4.5g(20ミリモル)とメタノール150mLとを、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた500mL容の4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを通じて系内の酸素を除去した後、乾燥した塩酸ガスを通じて系内を飽和させながら、65℃にて5時間反応させ、蒸発乾固させて3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸のメチルエステル3.3gを得た(収率68%)。得られた3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸のメチルエステルをH−NMR(CDCl)測定したところ、2.15、1.46、1.23、1.02、0.79、0.50ppmにピークが認められたことから同定できた。
【0046】
得られた3−アミノ−1,5,7−トリメチル−9−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン−3−カルボン酸のメチルエステル2.9g(12ミリモル)と共に、12wt%水酸化ナトリウム16mLおよびシクロヘキサン100mLを、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた500mL容の4つ口フラスコに仕込み、窒素ガスを通じて系内の酸素を除去した後、シクロヘキサン100mLに溶解させた臭素3.8g(24ミリモル)を、0℃にて1時間30分かけて滴下した。その後、50℃にて72時間反応させ、蒸発乾固させて3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−カルボン酸2.6gを得た(収率96%)。得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−カルボン酸をH−NMR(CDCl)測定したところ、3.68、2.16、1.23、1.18ppmにピークが認められたことから同定できた。
【0047】
得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−カルボン酸2.2g(10ミリモル)とテトラヒドロフラン200mLとを、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えた500mL容の4つ口フラスコに仕込み、均一溶液を得た。次いで、テトラヒドロフラン50mLに溶解させたリチウムアルミニウムハイドライド3.8g(100ミリモル)をこれに添加した。窒素ガスを通じて系内の酸素を除去した後、65℃にて144時間反応させ、減圧濃縮し、クロロホルム−メタノール混合液(容積比5/1)50mLに溶解した後、さらにこれを、シリカゲル(ダイソー株式会社製、IR−60−63/210)300mLをクロロホルム−メタノール混合液(容積比5/1)1.2Lに懸濁して充填した1Lカラムに通液して精製し、25℃で減圧乾燥して3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール1.3gを得た(収率60%)。得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールをH−NMR(CDCl)測定したところ、3.25、1.30、1.20ppmにピークが認められ、また、大気圧イオン化法により質量分析したところ、分子量が210であったことから同定できた。
【0048】
実施例1
撹拌機、窒素ガス導入管、温度計、還流冷却管および滴下ロートを備えた100mL容の4つ口フラスコに、製造例1と同様にして得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール2.10g(10ミリモル)、トリエチルアミン1.11g(11ミリモル)およびジエチルエーテル30mLを仕込み、均一溶液を得た。この溶液を25℃に保ちながら、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、撹拌下、メタクリル酸クロライド1.05g(10ミリモル)を3時間かけて滴下した。引き続き、8時間25℃に保持した後、反応液をろ過し、ろ液を25℃にて減圧濃縮した後、濃縮物をクロロホルム−メタノール混合液(容積比5/1)50mLに溶解した。この溶液を、シリカゲル(ダイソー株式会社製、IR−60−63/210)300mLをクロロホルム−メタノール混合液(容積比5/1)1.2Lに懸濁して充填した1Lカラムに通液して精製した。目的物画分を採取し、25℃で恒量になるまで減圧乾燥することによりメタクリル酸ジアザアダマンチル化合物2.64g(収率94.8%)を得た。
【0049】
得られたメタクリル酸ジアザアダマンチル化合物を大気圧イオン化法により質量分析したところ、分子量が278であったことから同定できた。
【0050】
実施例2
100mL容の側管付き四つ口フラスコに、製造例1と同様にして得られた3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノール2.10g(10ミリモル)、メタクリル酸メチル4.00g(40ミリモル)およびチタン酸テトラメチル0.00086g(0.005ミリモル)を仕込み、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、20段オルダーショウ蒸留塔を備えた還流装置を用いて、6時間のエステル交換反応を行った。この間、反応で生成するメタノールはメタクリル酸メチルとの共沸で系外に除去した。また、反応液の温度は105℃から118℃まで上昇した。
【0051】
反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた結晶にヘキサン100mLを添加した後、さらに水を適量加えてチタン酸テトラメチルを失活させ、これをろ過し、さらにヘキサンを減圧で除去することにより、メタクリル酸ジアザアダマンチル化合物2.75g(収率99.0%)を得た。
【0052】
得られたメタクリル酸ジアザアダマンチル化合物を大気圧イオン化法により質量分析したところ、分子量が278であったことから同定できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物。
【請求項2】
式(2):
【化2】

で表される3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを(メタ)アクリル酸ハライドを用いてエステル化させることを特徴とする、一般式(1):
【化3】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物の製造方法。
【請求項3】
式(2):
【化4】

で表される3,5,7−トリメチル−2,6−ジアザアダマンタン−1−メタノールを(メタ)アクリル酸エステル化合物とエステル交換させることを特徴とする、一般式(1):
【化5】

(式中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。)で表される(メタ)アクリル酸ジアザアダマンチル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−174543(P2008−174543A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301106(P2007−301106)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】