説明

(メタ)アクリレート誘導体およびその製造方法

【課題】基材密着性に優れ、可撓性を有し、しかも、低粘度である、新規な(メタ)アクリレート誘導体を提供する。
【解決手段】次の一般式(I)で表されるで表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと特定の活性水素含有官能基を有する化合物との反応物である(メタ)アクリレート誘導体。
【化1】


(一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数4〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(メタ)アクリレート誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の(メタ)アクリレート誘導体は、主としてインキ及び塗料を初めとするコーティング剤や接着剤などに利用されている。斯かる(メタ)アクリレート誘導体の代表例としては、以下に示すビスフェノールAジグリシジルエーテルとアクリル酸との反応によって得られるエポキシアクリレート(アクリル変性エポキシ樹脂)が挙げられる(特許文献1及び2)。
【0003】
【化1】

【0004】
ところで、上記のエポキシアクリレートは、紫外線硬化塗料(UV塗料)として各種の用途に供されており、基材に対して優れた密着性が有するものの、その塗膜が硬過ぎて可撓性の点で問題があり、しかも、粘度も十分に低いとは言えずに作業性の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−137928号公報
【特許文献1】特開平9−3145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、基材密着性に優れ、可撓性を有し、しかも、低粘度である、新規な(メタ)アクリレート誘導体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、特定構造のグリシジルアルキル(メタ)アクリレートから得られる(メタ)アクリレート誘導体により、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、次の一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと以下に列記する活性水素含有官能基を有する化合物との反応物であることを特徴とする(メタ)アクリレート誘導体に存する。
【0009】
【化2】

(一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数4〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
【0010】
<カルボン酸>
オレイン酸、オクチル酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、水添ダイマー酸、トリメリット酸、アジピン酸、テレフタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸、4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸、4,4’−フェニルベンゾエートジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、3−カルボキシアジピン酸
【0011】
<アルコール>
エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメチロール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ベンゼン−1,4−ジメチロール、ビスフェノールA、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール、ビスフェノールF、ビスフェノールFポリエトキシジオール、ビスフェノールFポリプロポキシジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンポリエトキシポリオール、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリオール、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラオール、ジトリメチロールプロパンテトラオール、ジトリメチロールプロパンポリエトキシポリオール、ジトリメチロールプロパンポリプロポキシテトラオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
【0012】
<チオール>
1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンチオール、4,4’−プロピリデンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、トリス(メルカプトフェニル)メタン、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、ポリサルファイド
【0013】
<第1級アミン>
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリデンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルポン
【0014】
<第2級アミン>
ピペリジン
【0015】
<第1級アミンのアミド>
エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベフェニン酸アミド、4−スルホンアミド−N−フェニルベンズアミド、4−スルホンアミド−N−フェニル−4’−クロロベンズアミド、4−アミノ−N−フェニルベンズアミド、ダイマー酸由来ポリアミド
【0016】
<第2級アミンのアミド>
エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリデンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド
【0017】
そして、本発明の第2の要旨は、上記の一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと活性水素含有官能基を有する化合物とを反応させることを特徴とする(メタ)アクリレート誘導体の製造方法に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基材密着性に優れ、可撓性を有し、しかも、低粘度である、新規な(メタ)アクリレート誘導体およびその製造方法が提供され、本発明の(メタ)アクリレート誘導体は、インキ及び塗料を初めとするコーティング剤や接着剤の分野に寄与するところが大である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の(メタ)アクリレート誘導体は、前記の一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと活性水素含有官能基を有する化合物との反応物であるが、その最大の構造的特徴は、一般式(I)のR、すなわち、炭素数4〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基にある。斯かる特定の炭素数のアルキレン基を有することにより、本発明の(メタ)アクリレート誘導体は、従来公知の(メタ)アクリレート誘導体の優れた基材密着性を損なわず、可撓性を有し且つ低粘度である優れた特性を発揮する。
【0020】
本発明で使用する一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートは、炭素数4〜10の両末端ジオールと(メタ)アクリル酸とから誘導されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにエピクロロヒドリンを反応させて得られる化合物である。
【0021】
一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、5−ヒドロキシペンチルアクリレートグリシジルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルアクリレートグリシジルエーテル、7−ヒドロキシヘプチルアクリレートグリシジルエーテル、8−ヒドロキシオクチルアクリレートグリシジルエーテル、9−ヒドロキシノニルアクリレートグリシジルエーテル、10−ヒドロキシデシルアクリレートグリシジルエーテル、および、これらの対応メタクリレートが等が挙げられる。一般式(I)中の好ましいRは、炭素数4〜6のアルキレン基である。
【0022】
前記の一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと活性水素含有官能基を有する化合物とを反応させる際、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートと活性水素含有官能基を有する化合物との使用割合は、前者のエポキシ基と後者の活性水素(1分子当たり1〜4の任意の整数)との関係において略当量となるモル比とされる。また、反応は、通常、トルエン等の不活性溶媒の存在下に100〜150℃の条件下に2〜5時間行われる。この際、反応触媒としては、活性水素含有官能基を有する化合物の種類に応じて公知の各種の触媒が使用される。
【0023】
本発明の(メタ)アクリレート誘導体は、単独で又はその他のUV硬化性単量体との組成物として、主としてインキ及び塗料を初めとするコーティング剤や接着剤などに利用される。上記のその他のUV硬化性単量体として、例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロイルモルフォリン、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、本発明の(メタ)アクリレート誘導体の効果を損なわない範囲の量で使用される。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例より更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1:
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた1リットルの4つ口フラスコに、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル400g(2モル)、フタル酸166g(1モル)、トリエチルアミン(触媒)1g、p−メトキシフェノール(重合禁止剤)300mgを採取した。そして、撹拌条件下に100℃で約10時間反応してエポキシアクリレート(A)を得た。
【0026】
比較例1:
実施例1と同様のフラスコに、アクリル酸144g(2モル)、ジグリシジルフタレート278g(1モル)、トリエチルアミン(触媒)1g、p−メトキシフェノール(重合禁止剤)200mgを採取した。そして、撹拌条件下に100℃で約10時間反応してエポキシアクリレート(B)を得た。
【0027】
上記の各エポキシアクリレート(A)及び(B)について次の各試験を行った。後述の表1に結果を示す。
【0028】
(1)エポキシアクリレートの粘度:
B型粘度計(東京計器社製「BH型」)を使用し、25℃で測定した。
【0029】
(2)屈曲性試験(JISK5400に準拠):
エポキシアクリレート100重量部に光重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュアー184」)3重量部を配合し、硬質ガラス板の上にアプリケーターで200μmの厚さに塗布した後、速度1m/分のコンベアー上に載置し、表面タックがなくなるまで15cmの距離から高圧水銀灯(80W/cm)を照射して試験フイルムを作成し、当該試験フイルムの屈曲性を試験する。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(I)で表されるで表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと以下に列記する活性水素含有官能基を有する化合物との反応物であることを特徴とする(メタ)アクリレート誘導体。
【化1】

(一般式(I)中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数4〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。)
<カルボン酸>
オレイン酸、オクチル酸、ステアリン酸、アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、水添ダイマー酸、トリメリット酸、アジピン酸、テレフタル酸、ダイマー酸、イソフタル酸、4,4’−ベンズアニリドジカルボン酸、4,4’−フェニルベンゾエートジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、3−カルボキシアジピン酸
<アルコール>
エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリシクロデカンジメチロール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ベンゼン−1,4−ジメチロール、ビスフェノールA、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール、ビスフェノールF、ビスフェノールFポリエトキシジオール、ビスフェノールFポリプロポキシジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンポリエトキシポリオール、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリオール、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラオール、ジトリメチロールプロパンテトラオール、ジトリメチロールプロパンポリエトキシポリオール、ジトリメチロールプロパンポリプロポキシテトラオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
<チオール>
1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンチオール、4,4’−プロピリデンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、2,2’−ジメルカプトジエチルエーテル、1,2−ジメルカプトプロパン、トリス(メルカプトフェニル)メタン、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールヘキサチオグリコレート、ポリサルファイド
<第1級アミン>
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリデンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルポン
<第2級アミン>
ピペリジン
<第1級アミンのアミド>
エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベフェニン酸アミド、4−スルホンアミド−N−フェニルベンズアミド、4−スルホンアミド−N−フェニル−4’−クロロベンズアミド、4−アミノ−N−フェニルベンズアミド、ダイマー酸由来ポリアミド
<第2級アミンのアミド>
エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、m−キシリデンビスステアリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)で表されるグリシジルアルキル(メタ)アクリレートと活性水素含有官能基を有する化合物とを反応させることを特徴とする(メタ)アクリレート誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−189450(P2010−189450A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133235(P2010−133235)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【分割の表示】特願平11−232299の分割
【原出願日】平成11年8月19日(1999.8.19)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】