説明

(メト)アクリル酸エステルの酵素的製造

部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルの製造方法およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルコールからの部分エステル化(メト)アクリル酸の製造方法およびその使用に関する。
【0002】
一般に(メト)アクリル酸エステルは、酸性触媒または塩基性触媒によるエステル化によって(メト)アクリル酸から製造されるか、あるいは他の(メト)アクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換によって製造される。
【0003】
部分エステル化(メト)アクリル酸は、一般には、エステル化またはエステル交換によって製造することはできない。それというのも化学量論的混合物が得られるためである。
【0004】
アセタールまたはケタール保護されたポリアルコールを使用する場合には、これらを製造するための酸性触媒による方法は可能ではなく、それというのも、アセタール基およびケタール基は酸に対して不安定であるためである。
【0005】
塩基性触媒によるエステル交換または他の合成の場合には、生成物としてしばしば錯化され、かつ特に着色された混合物が生じる。着色および未変換の反応体を排除するためには、生成物としての混合物をコストのかかるアルカリ洗浄によって後処理することが必要不可欠である。
【0006】
US2680735では、アセタールおよびケタール保護グリセロールと低分子量の(メト)アクリル酸エステルとを、70℃を上廻る温度で、かつアルカリ金属酸化物、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドの触媒下でエステル交換することによって、アセタールおよびケタール保護グリセロールの(メト)アクリル酸エステルを製造することが記載されている。
【0007】
R. DeschenauxおよびJ.K. Stilleは、J. Org. Chem., 1985, 50, 2299-2302中で、触媒としてのチタンテトライソプロポキシドを用いての同様の反応、引き続いてのケタール保護基の酸性分解を記載している。
【0008】
これらの製造方法の変法の欠点は、金属触媒が使用される場合に、反応混合物の着色が生じうることである。
【0009】
JP2001-295555(CA-No.135:303607)およびJP2001-294554(CA-No.135:303606)では、メタクリル酸とグリシドール(2,3−エポキシ−プロパノール)とのエステル交換による、グリセリルモノメタクリレートの製造が記載されている。
【0010】
この場合、欠点は、80%を上廻ることのない収率と95%の低い純度である。
【0011】
JP08-277-245(CA-No.126:31792)では、グリシジル(メト)アクリレートの加水分解によるグリセリルモノ(メト)アクリレートの製造が記載されている。
【0012】
しかしながら、これらの合成経路の欠点は、高反応性および毒性のエポキシドを使用することにある。
【0013】
酵素的エステル化またはエステル交換による(メト)アクリル酸エステルの製造は公知である。
【0014】
KumarおよびGrossは、J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 1850-1851中で、ビニルメチルアクリレートを用いてのエステル交換による、イソプロピリデン保護された糖のリパーゼ触媒反応を記載している。完全な反応は、特定の出発材料であるビニルメタクリレートの使用により達成され、それというのも、遊離するビニルアルコールはアセトアルデヒドとして反応平衡から排除されるためである。これらの方法の欠点はビニルメタクリレートが商業的に入手可能でないことである。
【0015】
A.T.J.W. de Goede らは、Biocatalysis, 1994, 9, 145-155中で、α−O−オクチル−グルコシドとエチルアクリレートとのエステル交換により、リパーゼの存在下で6−O−アクリルステルを形成することを記載している。この方法の欠点は、グリコシドおよびグリコシド化合物に制限されること、およびグリコシド中の立体障害に敏感に反応することである。さらに相対的に高い程度のアクリル化を有する生成物が、非選択的な副反応によって達成されることである。
【0016】
EP-A1999229では、ポリオキシアルキレンの酵素的エステル化およびエステル交換が記載されている。
【0017】
Hajjar らは、Biotechnol. Lett. 1999, 12, 825-830中で、環式および開環のアルカンジオールとエチルアクリレートとの、Chromobacterium viscosymからのリパーゼを用いての酵素的エステル変換が記載されている。反応は、溶剤不含系中でジオールに対してアルキルアクリレートの18倍過剰量で進行する。これにより、モノアクリレートおよびジアクリレートの混合物を生じる。
【0018】
US5240835では、Corbenebacterium oxydansからの生物触媒の接触による、アルキルアクリレートとアルコールとのエステル交換が記載されている。ここでは、エチルアクリレートの96倍モル過剰量と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールとの反応が例証されている。30℃で3日後に、収率はわずか21%にすぎない。
【0019】
本発明の課題は、ポリアルコールの部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルを、高い変換率および高い純度で、簡単な出発材料から製造可能な他の方法を提供することである。この合成は、穏やかな条件下で進行し、得られる生成物は低い色数および高い純度を有する。
【0020】
本発明の課題は、アセタール基またはケタール基と結合する少なくとも2個のヒドロキシ基を有するポリアルコール(C)を使用して、少なくとの1個の酵素(E)の存在下で、(メト)アクリル酸とエステル化するか、あるいは少なくとも1個の(メト)アクリル酸エステル(D)とエステル交換することによる、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルの製造方法によって達成された。
【0021】
本発明による方法によれば、高い化学的収量および空時収量で、かつ穏やかな条件下で良好な色数で、部分エステル化(メト)アクリル酸エステル(F)の製造が可能である。
【0022】
本明細書中において(メト)アクリル酸とは、メタクリル酸およびアクリル酸を意味し、好ましくはアクリル酸を意味する。
【0023】
本発明によって使用可能なポリアルコール(C)は、少なくとも1個のアセタール基またはケタール基、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個および特に好ましくは1個のアセタール基またはケタール基と、少なくとも1個のヒドロキシ基(−OH)、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜3個、殊に好ましくは1〜2個および特に好ましくは1個を含有する化合物である。
【0024】
ポリアルコール(C)のアセタール基およびケタール基において、ポリアルコール(C)の由来となるポリオール(B)の2個のヒドロキシ基が結合する。
【0025】
好ましいポリアルコール(C)は、
(a)アルデヒドまたはケトン(A)とポリオール(B)との反応および
(b)場合によってはa)により得られる反応混合物からの精製
によって得ることが可能な化合物である。
【0026】
アルデヒドまたはケトン(A)は、式I
−C(=O)−R (I)
[式中、RおよびRは、互いに独立して水素、C〜C18−アルキル、場合によっては遮断されていないか、あるいは、1個または複数個の酸素原子および/または硫黄原子および/または1個または複数個置換されたかまたは非置換のイミノ基によって遮断されたC〜C18−アルキル、C〜C18−アルケニル、C〜C12−アリール、C〜C12−シクロアルキルまたは5〜6員環の、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子を有するヘテロ環であり、その際、上記の基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子および/またはヘテロ環によって置換されていてもよいか、あるいは、RおよびRはカルボニル炭化水素と一緒になって、4〜12員環を形成することができる]の化合物である。
【0027】
および/またはRの例は水素、メチル、エチル、iso−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、フェニルまたはナフチルであり、好ましくは水素、メチルおよびフェニル、特に好ましくはメチルである。
【0028】
アルデヒドおよびケトン(A)の例はホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、iso−ブチルアルデヒド、ピバルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたはシクロドデカノンであり、好ましくはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ピバルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノンまたはシクロへキサノンであり、特に好ましくはホルムアルデヒド、アセトン、シクロペンタノンおよび特に好ましくはアセトンである。
【0029】
ポリオール(B)は3〜10個、好ましくは3〜6個のヒドロキシ基を有するポリオールである。
【0030】
ポリオール(B)の例は、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(ライキシトール)、キシリトール、ダルシトール(ガラクチトール)、マルチトールまたはイソマルトである。好ましくはソルビトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、およびペンタエリトリットであり、特に好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリットであり、最も好ましくはグリセロールである。
【0031】
アルデヒドまたはケトン(A)とポリオール(B)との反応は自体公知であり、かつ制限されることはないが、たとえばOrganikum, VEB Deutscher Velag der Wissenschaftern, 17. Auflage, Berlin 1988, S. 398.に記載されているものである。
【0032】
典型的には、アルデヒド/ケトン(A)とポリオール(B)との化学量論比は0.7〜1.2モル(A):2モル(B)の保護されるべきヒドロキシ基、好ましくは0.8〜1.2:2、好ましくは0.9〜1.1:2、特に好ましくは0.95〜1.1:2であり、かつ特には1:2モル/モルで互いに反応する。
【0033】
一般に反応は0〜120℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは30〜80℃、および最も好ましくは40〜80℃の温度で実施される。
【0034】
反応は一般に12時間以内、好ましくは15分〜10時間、より好ましくは30分〜8時間、さらに好ましくは45分〜6時間および特に好ましくは1〜4時間の範囲内で実施される。
【0035】
アセタール化/ケタール化は、一般に酸性触媒でおこなわれ、たとえば無機酸、たとえば塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、鉱物粘土または酸性イオン交換体または酵素によって触媒される。
【0036】
反応は溶剤なしに実施されるか、あるいは、好ましくは溶剤、たとえばエーテル、炭化水素またはハロゲン化炭化水素の存在下で実施することができる。
【0037】
好ましくは、アセタール化/ケタール化を、反応中の遊離水を排除しながら、たとえばモレキュラーシーブまたはゼオライトの存在下でか、あるいは、膜分離によってか、あるいは、特に好ましくは、水との共沸混合物を形成する溶剤を用いて水を共沸分離することによって実施することができる。
【0038】
特に好ましくは、たとえばDE-A119647395および特に好ましくは第2頁第55行〜第4頁第22行に記載されているように、アセタール化/ケタール化を実施する。
【0039】
他の工程b)中で、好ましくはa)から得られた反応混合物は後処理されてもよく、たとえば濾過、蒸留、精留、クロマトグラフィー、イオン交換体での処理、吸着、中性、酸性および/またはアルカリ性の洗浄、ストリッピングまたは結晶化によって実施する。
【0040】
したがって、本発明により使用可能なアセタールまたはケタール保護ポリアルコール(C)は、ポリオール(B)をアルデヒドまたはケトン(A)で保護することによって製造可能なポリアルコールである。
【0041】
これらは、特に好ましくは2位でモノ−またはジ−置換された1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキサン構造を有するポリアルコール(C)であり、特に好ましくは2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランまたは2,2−ジメチル−1,3−ジオキソサン構造を含有するポリアルコール(C)である。
【0042】
特に好ましいポリアルコール(C)として、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサン、1,2−O−イソ−プロピリデン−α−D−グルコフラノース、2,3−O−イソプロピリデン−トレイトール(=2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジメタノール)および5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサンである。他の例は5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサンである。
【0043】
工程c)は、(メト)アクリル酸を用いてのエステル化または好ましくはアセタール保護またはケタール保護されたポリアルコール(C)と、少なくとも1個の、好ましくは1個の(メト)アクリレート(D)とのエステル変換を、少なくとも1個の、好ましくは1個のエステル交換を触媒する酵素(E)の存在下で実施する。
【0044】
化合物(D)は、(メト)アクリル酸または(メト)アクリル酸と飽和アルコールとのエステルであってもよく、好ましくは(メト)アクリル酸の飽和C〜C10−アルキルエステル、好ましくは(メト)アクリル酸の飽和C〜C−アルキルエステルであってもよい。
【0045】
飽和とは、本発明の範囲内で、多重のC−C−結合を有しない化合物を意味する((メト)アクリル酸単位中のC=C二重結合については自明である)。
【0046】
化合物(D)の例は(メト)アクリル酸メチル、エチル、n−ブチル、iso−ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシル、1,2−エチレングリコールジ−およびモノ(メト)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ−および−モノ(メト)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ−および−モノ(メト)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メト)アクリレートおよびペンタエリトリットテトラ(メト)アクリレートである。
【0047】
特に好ましくは(メト)アクリル酸メチル、エチル、n−ブチルおよび2−エチルヘキシルであり、さらに好ましくは(メト)アクリル酸メチル、エチルおよびn−ブチルである。
【0048】
(メト)アクリレートを用いての酵素的エステル化またはエステル交換は、一般には0〜100℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは20〜60℃で実施される。
【0049】
本発明によって使用される酵素(E)は、たとえば加水分解酵素(E.C.3.-.-.-)、および特に好ましくはエステラーゼ(E.C.3.1.-.-)、リパーゼ(E.C.3.1.1.3)、グリコシラーゼ(E.C.3.2.-.-)およびプロテアーゼ(E.C.3.4.-.-)であり、この場合、これらは遊離または担体上に化学的または物理的に固定化された形であってもよく、好ましくはリパーゼ、エステラーゼまたはプロテアーゼであり、特に好ましくはエステラーゼ(E.C.3.1.-.-)であり、さらに好ましくはNovozyme435(Candida antarctica Bからのリパーゼ)またはAspergillus sp., Aspergillus niger sp., Mucor sp., Penisilium cyclopium sp., Geotricum candidum sp., Rhizopus javanicus, Burkholderia sp., Candida sp., Pseudomonas sp., またはブタパンクレアチン、特に好ましくはCandida antarctica BまたはBurkholderia sp.からのリパーゼである。
【0050】
反応媒体中の酵素含量は、一般には使用された成分(C)および(D)の合計に対して約0.1〜10質量%である。
【0051】
反応時間は特に温度、使用された酵素触媒量およびその活性、ならびに変換率に依存し、さらに部分エステル化アルコールに依存する。好ましくは反応時間は、アルコール(C)中に存在する全ヒドロキシ官能基の変換率が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%および特に少なくとも97%に達する。一般には1〜48時間、好ましくは1〜12時間および特に好ましくは1〜6時間で十分である。
【0052】
(メト)アクリル酸化合物(D)((メト)アクリル酸単位に基づく)と部分エステル化アルコール(C)(ヒドロキシ基に基づく)とのモル比は、広範囲において可変であってもよく、たとえば100:1〜1:1、好ましくは50:1〜1:1、さらに好ましくは20:1〜1:1および特に好ましくは10:1〜1:1であってもよい。
【0053】
反応は有機溶剤またはその混合物中でか、あるいは、溶剤を添加することなく実施することができる。この回分は一般に本質的には水不含である(たとえば、10容量%未満、好ましくは5容量%未満、より好ましくは1容量%未満およびさらに好ましくは0.5容量%の水添加量である)。
【0054】
適切な有機溶剤は、これらの目的のために公知のものであってもよく、たとえば第3級モノオール、たとえばC〜C−アルコール、好ましくはtert−ブタノール、tert−アミルアルコール、ピリジン、ポリ−C〜C−アルキレングリコールジ−C〜C−アルキルエーテル、好ましくはポリエチレングリコールジ−C〜C−アルキルエーテル、たとえば1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500、C〜C−アルキレンカーボネート、特にプロピレンカーボネート、C〜C−アルキルアセテート、特にtert−ブチル−アセテート、THF、トルエン、1,3−ジオキソラン、アセトン、iso−ブチル−メチルケトン、エチルメチルケトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ヘキサン、ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ならびに、単相または多相のこれらの混合物である。使用される酵素の最適温度ほぼ近くの沸点を有する二成分または三成分のヘテロ共沸混合物を用いて、遊離するアルコールまたは水を分離することは有利であってもよい。このようにして除去されたアルコールをその後に、相分離または膜蒸発分離によって分離することができる。
【0055】
場合により、有機溶剤に対して水性溶剤を添加することが可能であり、それによって、それぞれ有機溶剤に依存して単相または多層の反応溶剤が製造される。たとえば、水性溶剤および水ならびに水性の希釈された(たとえば10〜100mM)緩衝液であり、たとえば約6〜8のpH値を有する、たとえばリン酸カリウムまたはTRIS−HCl−バッファーである。
【0056】
反応添加物中の含水量は、一般には0〜10容積%である。好ましくは、前処理(乾燥、水でのドーピング)の必要のない反応体を使用する。
【0057】
基質は、溶液中、固体として懸濁液中、あるいは、反応媒体中のエマルションの形である。好ましくは、反応体の開始の濃度は、たとえば約0.1〜20モル/l、特に0.05〜10モル/lまたは0.2〜5モル/lである。
【0058】
反応は連続的に、たとえば管型反応器または攪拌式反応器カスケード中でか、あるいは回分的におこなってもよい。
【0059】
反応は、このような反応のために適したすべての反応器中で実施することができる。このような反応は当業者に公知である。好ましくは攪拌槽反応器または固定床反応器中で反応を実施する。
【0060】
反応混合物は、任意の方法で混合されてもよい。特定の攪拌装置は必要とされない。反応媒体は単相または多相であってもよく、かつ反応体は溶解、懸濁液または乳化され、場合によってはモレキュラーシーブを一緒に備えていてもよく、かつ反応開始時に酵素調製物と一緒に混合してもよく、さらに場合によっては、反応工程中で1回または複数回に亘って混合してもよい。反応中の温度は望ましい値に調整され、かつ場合によっては、反応工程中で上昇または減少させることができる。
【0061】
反応は、固定床反応器中で実施することができ、この場合、この反応器は、好ましくは固定化酵素で充填されており、その際、反応混合物は、酵素で充填されたカラムにポンプにより通される。さらに、反応を流動床中で実施することも可能であり、この場合、酵素は、担体上で固定化された形で使用される。反応混合物は、連続的にカラムにポンプにより装入され、その際、滞留時間および好ましい変換率は、フロー速度を調整することによって制御可能である。さらに反応混合物を循環中でカラムにポンプにより装入することも可能であり、その際、さらに減圧下で、遊離したアルコールを同時に留去することができる。
【0062】
エステル化の場合の水の除去またはアルキル(メト)アクリレートからのエステル交換の場合の遊離アルコールの除去は、連続的または段階的に、自体公知の方法で、たとえば減圧、共沸分離、吸着、過蒸発および膜上での拡散によって実施する。
【0063】
さらに、好ましくはモレキュラーシーブまたはゼオライト(たとえば約3〜10オングストロームの範囲の孔径)、蒸留分離または適した半透膜を用いての分離がこの目的のために適している。
【0064】
しかしながら、さらに好ましくは、アルキル(メト)アクリレートとこれらが由来するアルコールとの、しばしば共沸混合物を形成しうる分離された混合物を、アルキル(メト)アクリレートの製造のために直接的にプラントに導入し、アルキル(メト)アクリル酸でのエステル化中において再利用する。
【0065】
反応の終了後に、c)から得られた反応混合物を、さらなる精製なしに、さらに使用するか、あるいは、必要である場合には、他の工程d)中で精製することができる。
【0066】
d)一般に、使用される酵素は反応混合物からまさに分離除去されたものであり、かつ反応生成物は、場合によっては使用された任意の有機溶剤から分離することができる。
【0067】
酵素は、一般には濾過、吸着、遠心分離またはデカンタによって分離除去ああれる。分離された酵素はその後に他の反応に使用することができる。
【0068】
有機溶剤からの分離は、一般には蒸留、精留または固体反応生成物の場合には濾過によって実施する。
【0069】
反応生成物のさらなる精製のために、クロマトグラフィーを実施することが可能である。
【0070】
しかしながら、好ましくは工程d)中で、使用された酵素および場合によっては使用された溶剤を分離する。
【0071】
反応条件は、酵素的エステル化またはエステル交換の場合には穏やかである。低い温度および任意の穏やかな条件は、たとえば化学的触媒から生じるか、あるいは、使用された(メト)アクリレートの望ましくないラジカル重合の結果により生じうる、工程c)中の副生成物の形成を減少させる。これは他の方法では、任意の安定化剤の添加のみによって防止することができる。本発明による反応工程の場合には、任意に存在する貯蔵安定化剤に加えて付加的な安定化剤を(メト)アクリル化合物(D)に添加し、このような付加的な安定化剤の例としては、たとえばヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、フェノール、たとえば2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、6−tert−ブチル−2,4−ジメチル−フェノール、たとえば、またはN−オキシル、たとえば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシルを、たとえば50〜2000ppmの量で添加する。有利には、酸素含有ガス、好ましくは空気または空気−窒素−混合物の存在下でエステル交換またはエステル化を実施する。さらに、酵素触媒は問題なく最終生成物から除去することができる。さらに一般には、酵素的加水分解によってアセタール基またはケタール基の本質的な分解が生じることはなく、一般に、10%未満、好ましくは5%未満の量である。
【0072】
工程c)またはd)において得られるアセタール−および/またはケタール保護された(メト)アクリル酸エステルは、そのまま使用することができるが、しかしながら好ましくは工程e)中で脱保護され、かつ適切な場合には工程f)中で後処理される。
【0073】
工程e)中での分解は、一般には酸性触媒下および水の添加により生じることは公知であるが、これに制限されることはない。
【0074】
一般に反応は20〜150℃、好ましくは40〜120℃および特に好ましくは50〜100℃で温度で実施される。
【0075】
一般に変換は12時間に亘って、好ましくは15分〜10時間、特に好ましくは30分〜8時間、さらに好ましくは45分〜6時間であり、最も好ましくは1〜4時間で実施される。
【0076】
アセタール/ケタールの分解は、一般には酸性触媒の存在下で、たとえば鉱酸、たとえば塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、鉱物粘土、酸性イオン交換体によって触媒されるか、あるいは、酵素によって触媒され、その際、20質量%まで、好ましくは15質量%までかつ特に好ましくは10質量%までの水の添加によって生じる。
【0077】
反応は溶剤を用いることなく実施されるか、あるいは好ましくは、たとえばエーテル、アルコール、炭化水素、ケトン、ハロゲン化炭素および水のような溶剤の存在下で実施することができる。
【0078】
分解は、好ましくはWO00/ 63149中、特に第4頁第28行〜第18頁第24行の記載WO00/63150中、第5頁第12行〜第16頁第30行の記載およびDE-A1 10118232中、特に第3頁第49行〜第4頁第32行および実施例中の記載のように実施することができ、なお、これら3つの刊行物の開示は本明細書中で参考のためにのみ包含されるものである。
【0079】
e)から得られた反応混合物は、他の工程f)中で好ましい場合には精製され、その際、精製はたとえば濾過、蒸留、精留、クロマトグラフィー、イオン交換体での処理、吸着、中性、酸性および/またはアルカリ性の洗浄、ストリッピングまたは結晶化によって実施することができる。
【0080】
工程c)およびd)で得られるアセタール−ならびにケタール−保護された(メト)アクリル酸エステルまたは工程e)およびf)から得られる部分エステル化(メト)アクリル酸エステル(F)を、有利にはモノマーまたはコモノマーとして、ポリ(メト)アクリレート中でか、あるいは、反応性希釈剤として放射線硬化性および/またはデュアル−キュア(dual-cure)のポリ(メト)アクリレートを使用することができる。この種のポリ(メト)アクリレートは、たとえば放射線硬化性塗料組成物またはデュアル−キュア塗料組成物中でのバインダとして適している。さらに、部分エステル(メト)アクリル酸エステル(F)は、ポリウレタン中で、たとえばPU−分散液、PU−フォーム、PU−接着剤およびPU−被覆材料中で使用可能である。
【0081】
このようにして得られた被覆は、親水性および疎水性の双方の支持体上で、極めて高い引掻耐性、硬度、化学的耐性、弾性および付着性を有する。
【0082】
したがって本発明の他の対象は、本発明による方法によって製造可能なアセタール/ケタール保護されたか、あるいは、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルを、反応性希釈剤またはバインダとして、放射線硬化性塗料組成物中またはデュアル−キュア塗料組成物中で、好ましくはトップコート中、特に好ましくは透明ラッカー中での使用を提供する。本発明によって製造された部分エステル化(メト)アクリル酸エスエルがさらに重合中でモノマーとして使用され、場合により他の重合可能なモノマー、たとえば(メト)アクリル酸、(メト)アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、アクリルニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルまたはN−ビニルホルムアミドと一緒に使用することもできる。
【0083】
「デュアル−キュア」とは、塗料組成物が熱的および化学線照射より硬化可能であることを意味する。本発明の目的のための化学線とは、電磁線、たとえば可視光線、UV線またはX線、特にUV光線ならびに粒子線、たとえば電子線を意味する。
【0084】
放射線硬化可能なバインダは、化学線、たとえば前記のものであり、特にUV線によって硬化可能なものである。
【0085】
本発明はさらに、本発明による方法によって得られるアセタール/ケタール保護されたか、あるいは、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルを含有する塗料配合物を提供する。部分エステル化(メト)アクリル酸エステルは、ベースコートまたはトップコート材料中で使用することができる。これらの特別な性質、たとえば引掻耐性および弾性の増加ならびに粘性の減少の点で、特に放射線硬化性透明ラッカーの分枝のアクリレートの場合、トップコート中での使用が好ましい。
【0086】
本発明による方法によって得られる部分エステル化(メト)アクリル酸エステル(F)に加えて、本発明による放射線硬化可能な組成物は、以下の成分を含有していてもよい:
(G)複数個の共重合可能なエチレン性不飽和基を有する、少なくとも1個の重合可能な化合物、
(H)場合によっては反応性希釈剤、
(I)場合によっては光開始剤ならびに
(J)場合によっては他の塗料に常用の添加剤。
【0087】
化合物(G)として、複数個の、たとえば少なくとも2個の共重合可能なエチレン性不飽和基を含む放射線硬化性のラジカル重合可能な化合物が適している。
【0088】
特に化合物(G)としては、ビニルエーテル化合物または(メト)アクリレート化合物が好ましく、特にそれぞれの場合においてアクリレート化合物、すなわち、アクリル酸誘導体が好ましい。
【0089】
好ましいビニルエーテル−および(メト)アクリレート−化合物(G)は、2〜20、好ましくは2〜10および特に好ましくは2〜6個の共重合可能な、エチレン性不飽和二重結合を含有する。
【0090】
特に好ましくは、0.1〜0.7モル/100g、特に0.2〜0.6モル/100gのエチレン性不飽和二重結合含量を有する化合物(G)である。
【0091】
化合物(G)の数平均分子量Mは、別記しないかぎりは好ましくは15000未満、特に好ましくは300〜12000、さらに好ましくは400〜5000および特に好ましくは500〜3000g/モルである(ポリスチレンを標準として、かつテトラヒドロフランを溶離剤として用いて、ゲル透過性クロマトグラフィーによって測定した)。
【0092】
(メト)アクリレート化合物として、(メト)アクリル酸エステルおよび特にアクリル酸エステルならびに多官能性アルコールのビニルエーテル、特にヒドロキル基以外の他の官能基を有しないか、あるいは、含有するとしてもエーテル基を含有するものである。このようなアルコールの例は、たとえば二官能性アルコール、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの高縮合されたもの、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール性化合物、たとえばエトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノール、1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジメタノール、三官能性および多官能性アルコール、たとえばグリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ソルビット、マンニットおよび相当するアルコキシル化、特にエトキシル化および/またはプロポキシル化アルコールである。
【0093】
アルコキシル化生成物は、前記アルコールとアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応によって得ることが可能である。好ましくはヒドロキシル基に対するアルコキシル化の度合いは0〜10であり、特に1モルのヒドロキシル基は、10モルまでのアルキレンオキシドと一緒にアルコキシル化されてもよい。
【0094】
(メト)アクリレート化合物として、さらにポリエステル(メト)アクリレートが挙げられてもよく、この場合、これらは(メト)アクリル酸エステルまたはポリエステロールのビニルエーテル、さらにウレタン、エポキシまたはメラミン(メト)アクリレートが挙げられてもよい。
【0095】
ウレタン(メト)アクリレートは、たとえば、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メト)アクリレートおよび場合によっては連鎖延長剤、たとえばジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミンまたはジチオールまたはポリチオールとの反応によって得ることができる。
【0096】
ウレタン(メト)アクリレートは、好ましくは数平均分子量M500〜20000、特に750〜10000、特に好ましくは750〜3000g/モルを有する(標準としてポリスチレンを用いてゲル透過性クロマトグラフィーをおこなうことにより測定された)。
【0097】
ウレタン(メト)アクリレートは、ウレタン(メト)アクリレート1000gに対して、好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4モルの(メト)アクリル基を含有する。
【0098】
エポキシ(メト)アクリレートは、エポキシドと(メト)アクリル酸との反応によって得ることが可能である。エポキシドとしては、たとえばエポキシ化オレフィンまたはグリシジルエーテル、たとえばビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルまたは脂肪族グリシジルエーテル、たとえばブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0099】
メラミン(メト)アクリレートは、メラミンと(メト)アクリル酸またはこれらのエーテルとの反応によって得ることが可能である。
【0100】
エポキシ(メト)アクリレートおよびメラミン(メト)アクリレートは、好ましくは数平均分子量M500〜20000g、特に好ましくは750〜10000g/モルおよび最も好ましくは750〜3000g/モルを有し;(メト)アクリル基の含量は、1000gのエポキシ(メト)アクリレートまたはメラミン(メト)アクリレートに対して好ましくは1〜5、特に好ましくは2〜4個である(ポリスチレンを標準としてかつテトラヒドロフランを溶離剤として用いてのゲル透過性クロマトグラフィーによって測定された)。
【0101】
さらに適しているのはカルボネート(メト)アクリレートであり、この場合、これらはたとえば1〜5、特に2〜4、特に好ましくは2〜3個の(メト)アクリル基および最も好ましくは2個の(メト)アクリル基を含有する。
【0102】
カルボネート(メト)アクリレートの数平均分子量Mは、好ましくは3000g/モル未満、特に好ましくは1500g/モル未満、さらに好ましくは800g/モル未満である(ポリスチレンを標準として、かつテトラヒドロフランを溶離剤として用いてのゲル透過性クロマトグラフィーによって測定された)。
【0103】
カルボネート(メト)アクリレートは、炭酸エステルと多価、好ましくは二価のアルコール(ジオール、たとえばヘキサンジオール)と反応させ、その後に遊離OH−基と(メト)アクリル酸とのエステル化あるいは(メト)アクリル酸エステルとのエステル交換を、たとえばEP-A 92269に記載されているようにしておこなうことにより簡単に得られる。さらに、ホスゲン、尿素誘導体と多価、たとえば二価のアルコールとの反応によって得られる。
【0104】
反応性希釈剤(化合物(H))としては放射線硬化可能な、ラジカルまたはカチオン重合可能な化合物であり、この場合、これらはエチレン性の不飽和共重合可能な基を1個のみを有するものである。
【0105】
たとえばC〜C20−アルキル(メト)アクリレート、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族、20個までの炭素原子を有するカルボン酸、エチレン性不飽和ニトリル、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、α,β−不飽和カルボン酸およびこれらの無水物、ならびに2〜8個の炭素原子および1個または2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0106】
(メト)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくはC〜C10アルキル基を有するもの、たとえばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2−エチルヘキシルアクリレートを有するものである。
【0107】
さらに特に(メト)アクリル酸アルキルエステルの混合物が適している。
【0108】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸ビニルエステルは、たとえばビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネートおよびビニルアセテートである。
【0109】
α,β−不飽和カルボン酸およびこれらの無水物は、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはマレイン酸無水物であり、好ましくはアクリル酸である。
【0110】
ビニル芳香族化合物として、たとえばビニルトルエン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンおよび好ましくはスチレンである。
【0111】
ニトリルの例はアクリルニトリルおよびメタクリルニトリルである。
【0112】
適したビニルエーテルは、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルヘキシルエーテルおよびビニルオクチルエーテルである。
【0113】
2〜8個の炭素原子を有し、かつ1個または2個のオレフィン系二重結合を有する非芳香族炭化水素として、ブタジエン、イソプレン、ならびにエチレン、プロピレンおよびイソブチレンが挙げられる。
【0114】
さらにN−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドンならびにN−ビニルカプロラクタムが使用可能である。
【0115】
光開始剤(I)として、当業者に公知の光開始剤を使用することが可能であり、たとえば、“Advances in Polymer Science”, Volume 14, Springer Berlin 1974 または K.K. Dietliker, Chemistry and Technology of UV- and EB-Formulation for Coating, Inks and Paints, Volume 3; Photoinitiatoes for Free Radical and Cationic Polymerization, P.K.T. Oldring (Eds), SITA Technology Ltd, Londonに挙げられている。
【0116】
これに関して、たとえば、モノ−またはビスアシルホスフィンオキシドIrgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)は、たとえばEP-A7508、EP-A57474,DE-A19618720, EP-A495751またはEP-A615980に記載されており、たとえば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin (R) TPO)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、フェニルグリコキシル酸およびこれらの誘導体またはこれらの光開始剤の混合物が記載されている。例としてベンゾフェノン、アセトフェノン、アセトナフトキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノ−ベンゾフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、β−メチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズアルデヒド、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテノン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,4−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジ−iso−プロピルチオキサントン、2,4−ジクロロ−チオキサントン、ベンゾイン、ベンゾイン−iso−ブチルエーテル、クロロキサンテノン、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾイン−iso−プロピルエーテル、7−H−ベンゾイン−メチルエーテル、ベンズ[デ]アントラセン−7−オン、1−ナフトアルデヒド、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、ミヒラーケトン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、1−ベンゾイルシクロヘキサン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジメチルケタール、o−メトキシベンゾフェノン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルケタール、たとえばベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、アントラキノンたとえば2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンおよび2,3−ブタンジオンである。
【0117】
DE-A 19826712,DE-19913353またはWO98/33761に記載のフェニルグリコキシル酸エステル型の非黄変または低黄変光開始剤もまた適している。
【0118】
挙げられた光開始剤中で、ホスフィンオキシド、α−ヒドロキシケトンおよびベンズフェノンが特に適している。
【0119】
さらに種々の光開始剤の混合物を使用することができる。
【0120】
光開始剤は、単独でかまたは1個の光重合促進剤、たとえば安息香酸、アミン等との組み合わせ物の形で使用することができる。
【0121】
さらに、他の典型的な塗料添加剤(J)としては、たとえば抗酸化剤、酸化抑制剤、安定化剤、活性化剤(促進剤)、充填剤、顔料、染料、脱蔵剤(devolatilizer)、つや出し剤、静電防止剤、耐燃剤、増粘剤、チオキソトロープ剤、均展助剤、結合剤、消泡剤、芳香剤、表面活性剤、粘度改善剤、可塑化剤、粘着樹脂(粘着付与剤)、キレート剤または相溶化剤を使用する。
【0122】
熱的後硬化のために使用可能な促進剤として、たとえば錫オクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチル錫ラウレートまたはジアザ[2.2.2]ビシクロオクタンが含まれる。
【0123】
さらに1個または複数個の光化学的および/または熱的に活性可能な開始剤を添加することができ、この場合、これらはたとえば、過酸化二硫酸カリウム、ジベンゾイル過酸化物、シクロヘキサノン過酸化物、ジ−tert−ブチルペルオキシド、アゾビス−iso−ブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジ−iso−プロピルペルカーボネート、tert−ブチルペルオクトエートまたはベンズピナコール、さらには、熱的に活性可能な開始剤であり、この場合、これらは80℃で100時間を上廻る半減値を有し、たとえばジ−t−ブチルペルオキシド、クメン過酸化水素、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、シリル化ピナコール、たとえば商標ADDID600(Wacker社)で市販されているものであるか、あるいは、ヒドロキシル基含有アミン−N−オキシド、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等である。
【0124】
他の適した開始剤の例としては、“Polymer Handbook”,2.Aufl., Wiley & Sons, New York に記載されている。
【0125】
増粘剤としては、ラジカル共重合(コ)ポリマーの他に、通常の有機および無機増粘剤、たとえばヒドトキシメチルセルロースまたはベントナイトを挙げることができる。
【0126】
キレート剤としては、たとえばエチレンジアミン酢酸およびこれらの塩ならびにβ−ジケトンを使用することができる。
【0127】
適した充填剤はシリケートを含み、たとえば三塩化ケイ素の加水分解によって得られたシリケート、たとえばAerosil(R)(Degussa 社)、ケイソウ土、タルク、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム等である。
【0128】
適した安定化剤は、典型的なUV−吸着剤、オキサニリド、トリアジンおよびベンゾトリアゾール(最終的にTinuvin(R)−Ciba-Spezialitatenchemieとして得られる)およびベンゾフェノンを含む。これらは単独でかまたは適したラジカルスカベンジャーと一緒に使用されてもよく、この場合、これらは、たとえば立体障害アミン、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピペリジンまたはこれらの誘導体、たとえばビス−(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)セバケートである。安定化剤は通常は、配合物中に含まれる固体成分に対して0.1〜5.0質量%の量で使用される。
【0129】
さらに適してた安定化剤は、N−オキシル、たとえば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4,4’,4”−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)−ホスフィットまたは3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、フェノールおよびナフトール、たとえばp−アミノフェノール、p−ニトロソフェノール、2−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−メチル−4−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−tert−ブチルフェノール(2,6−tert−ブチル−p−クレゾール)または4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、キノン、たとえばヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン、たとえばN,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、フェニルジアミン、たとえばN,N’−ジアルキル−p-フェニレンジアミンであり、その際、アルキル基は同一かまたは異なっていてもよく、かつそれぞれ互いに独立して1〜4個の炭素原子を有しており、かつ直鎖または分枝であってもよく、ヒドロキシルアミン、たとえばN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、尿素誘導体、たとえば尿素またはチオ尿素、リン含有化合物、たとえばトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィットまたはトリエチルホスフィットまたは硫黄含有化合物、たとえばジフェニルスルフィドまたはフェノチアジンである。
【0130】
放射線硬化可能な材料のための典型的な組成は、たとえば、
(F)20〜100質量%、好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは50〜90質量%および特に好ましくは60〜80質量%、
(G)0〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%および特に好ましくは10〜30質量%、
(H)0〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは6〜30質量%および特に好ましくは10〜30質量%、
(I)0〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%および特に好ましくは2〜5質量%、ならびに、
(J)0〜50質量%、好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは3〜30質量%および特に好ましくは5〜20質量%であり、
但し(F)、(G)、(H)、(I)および(J)は一緒になって100質量%になる。
【0131】
支持体の被覆は、当業者に公知の方法によって実施され、その際、少なくとも1個の塗料材料は、被覆すべき支持体に対して好ましい層厚で塗布され、かつ場合によっては塗料材料中に存在する揮発性成分を、場合によっては加熱しながら除去する。これらの工程は好ましい場合には1回または複数回に亘って繰り返すことができる。支持体上への塗布は公知の方法、たとえば噴霧塗布、こて塗り、ナイフ塗布、ブラシ塗り、ロール塗り、ローラー塗布、流し塗り、積層、インジョクションバックモルディングまたは共有押出によっておこなってもよい。塗膜層は一般には、約3〜1000g/mおよび好ましくは10〜200g/mの範囲である。
【0132】
さらに支持体に塗料材料を塗布し、かつ適切な場合にはこれを乾燥させ、酸素含有雰囲気下、好ましくは不活性ガス下で電子線またはUV暴露によりこれを硬化させ、これを熱的に、好ましい場合には乾燥温度までの温度で処理し、その後に熱的に160℃、好ましくは60〜160℃までの温度で処理をすることを含む、支持体の被覆方法を開示する。
【0133】
基質を被覆するための方法は、さらに塗料材料を最初に160℃までの温度、好ましくは60〜160℃の温度で熱処理をし、その後に電子線またはUV暴露によって、酸素または好ましくは不活性ガス下で硬化させることによっておこなわれる。
【0134】
支持体上に形成されたフィルムの硬化は、好ましい場合には熱のみによっておこなわれてもよい。しかしながら、一般には被覆を、高エネルギー放射および熱の双方によって硬化させる。
【0135】
さらに硬化は、熱硬化に加えてまたは熱硬化の代わりに、NIR放射によって実施されてもよく、その際、ここでNIR−放射は、電磁線放射を760nm〜2.5μm、好ましくは900〜1500nmの波長の範囲でおこなうものを意味する。
【0136】
場合によっては、被覆材料の複数個の相を互いに積層して塗布することができ、それぞれの被覆工程は熱的に、NIRおよび/または放射線硬化によって実施することができる。
【0137】
放射線硬化のための放射線として、たとえば低圧、中圧および高圧の水銀ランプ、蛍光管、パルスランプ、金属ハロゲンランプ、電子せん光装置を含み、この場合、これらは、光開始剤を使用することなく放射線硬化可能にするものであり、あるいは、エキシマーレーザーである。放射線硬化は、高エネルギー線、特にUV線または可視光線、好ましくはλ=200〜700nm、特に好ましくはλ=200〜500nmの範囲、さらに好ましくはλ=250〜400nmの波長範囲での暴露によってか、あるいは、高エネルギー線の電子(電子線;150〜300keV)を用いての衝撃によって実施する。放射線源としては、たとえば高圧水銀ガスランプ、レーザー、パルスランプ(せん光)、ハロゲンランプまたはエキシマー源を使用する。UV硬化の場合の架橋のために通常必要とされる照射量は80〜3000mJ/cmの範囲である。
【0138】
さらに硬化のために複数個、たとえば2〜4個の放射線源を使用することができる。
【0139】
さらにこれらの源は、それぞれ異なる波長の範囲で照射するものであってもよい。
【0140】
照射は場合によっては酸素の排除下で、たとえば不活性雰囲気下で実施することができる。不活性ガスとして好ましくは窒素、希ガス、二酸化炭素または燃焼ガスを使用する。さらに照射は、透明媒体を含む被覆材料によっておこなわれてもよい。透明媒体は、たとえばプラスチックフィルム、ガラスまたは液体、たとえば水である。特に好ましくは、DE-A119957900に記載の方法による照射である。
【0141】
さらに本発明は、支持体を被覆するための方法を提供し、この場合、この方法は、
i)支持体を前記のような被覆材料で被覆し、
ii)被覆材料の揮発成分を、フィルム形成のために、光開始剤(I)が本質的に任意にのラジカルを形成することがない条件下で除去し、
iii)場合によっては工程ii)中で形成されたフィルムに、高エネルギー線を照射し、その際、フィルムを予め硬化させ、その後に好ましい場合には、予め硬化させたフィルムで被覆された製品を機械的に加工するか、あるいは、予め硬化したフィルム表面を他の支持体と接触させ、
iv)フィルムを熱的またはNIR−照射により完全に硬化させる、
工程を含む。
【0142】
その際、工程iv)およびiii)はさらに逆の順序でおこなってもよく、たとえばフィルムを最初に熱的にかまたはNIR−照射によって硬化させ、その後に、エネルギー線を用いてさらに硬化させることも可能である。
【0143】
本発明は、さらに本発明のマルチコート塗料系で被覆された支持体を提供する。
【0144】
硬化されるべきフィルムの層厚は0.1〜数mm、好ましくは1〜2000μm、さらに好ましくは5〜1000μm、殊に好ましくは10〜500μmであり、さらに好ましくは10〜250μmであってもよい。
【0145】
本発明による被覆材料は、好ましくはエクステリアコーティング、たとえば日光に暴露されるコーティングの適用、好ましくは建築物、建築部材、インテリアコーティング、交通標識、および自動車および航空機の塗料として適している。被覆は特に木材、紙またはプラスチックのための被覆材として、木材フローリングまたは家具のための塗料として使用される。
【0146】
本発明による方法は、高い化学的収量および空時収量で、かつ穏やかな条件下で、良好な色数で、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルの製造を可能にする。保護基の使用によって、好ましい部分エステル化された生成物が、副生成物を含むことなく得られる
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、本発明はこれに制限されることはない。
【0147】
実施例
以下の方法において「部」とは別記しない限りは、「質量部」を意味する。
【0148】
例1:イソプロピリデン−グリセロール+エチルアクリレート(溶剤の変法)
5mmol 2,3−イソプロピリデン−グリセロール、50mmol エチルアクリレート、10mlの溶剤(LM)および100mgのNovozyme435を、40℃で24時間に亘って振とうさせた。この反応混合物を濾過し、かつ2,3−イソプロピリデングリセロールモノアクリレートへの変換率をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0149】
【表1】

【0150】
例2:イソプロピリデン−グリセロール+アルキルアクリレート(アルキルアクリレートの変法)
5mmol 2,3−イソプロピリデン−グリセロール(IPG)、25〜100mmol アルキルアクリレートおよび100mg Novozyme 435を20、40または60℃で24時間に亘って振とうさせた。
【0151】
反応混合物を濾過し、かつ2,3−イソプロピリデン−グリセロールモノアクリレートへの変換率をガスクトマトグラフィーにより測定した。
【0152】
【表2】

【0153】
例3:イソプロピリデン−グリセロール+メチルアクリレート
【0154】
【化1】

【0155】
4.0mol(528.8g) 2,3−イソプロピリデン−グリセロール、20.0mol(1722g) メチルアクリレート、86mg フェナノチアジン、344mg p−メトキシフェノール、800g モレキュラーシーブ(5Å)および80.0g Novozym435を、室温で24時間に亘って、丸底フラスコ中で攪拌した。
【0156】
反応混合物を濾過し、かつ過剰量のメチルアクリレートをロータリーエバポレーター上で除去した。バッチを2回に亘って再現可能な変換率でおこなった。
【0157】
【表3】

【0158】
イソプロピリデン基の加水分解のために、2,3−イソプロピリデン−グリセロールモノアクリレート 680gを、水 680gおよび強酸性イオン交換体 68g(Dowex 50 Wx8 H型)を、室温で24時間に亘って攪拌した。イオン交換体を濾別し、かつ得られたアセトンを、減圧下で20〜30℃で、ロータリーエバポレーター上で除去した。
【0159】
得られたグリセロールモノアクリレートの水性溶液は、直接的に共重合に使用することができる。GC分析によれば、溶液の有機成分は、94.3% グリセロールモノアクリレート、5.2% グリセロールおよび0.5% 2,3−イソプロピリデン−グリセロールモノアクリレートから構成されていた。
【0160】
二者択一的に、無水の生成物は、水溶液を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウム上で抽出物を乾燥させ、かつこれを再度ロータリーエバポレーター上で酢酸エチルから分離することによって製造することが可能である。この無水の無色の油は、GC分析によれば97.1% グリセロールモノアクリレート、1.9% グリセロール、0.6% 2,3−イソプロピリデン−グリセロールモノアクリレートおよび0.3% 2,3−イソプロピリデン−グリセロールから構成されていた。
【0161】
例4:2,3−イソプロピリデン−グリセロール+メチルアクリレート
丸底フラスコ中で、0.1モル(13.2g) 2,3−イソプロピリデン−グリセロール、1モル(86.1g) メチルアクリレートおよび650mg Novozyme435を、60℃で減圧下で(450〜470mバール)攪拌した。この蒸気(メチルアクリレート+メタノール)を、管に通し凝縮器中に導いた。この凝縮物を、20gのモレキュラーシーブ(5Å)で充填された滴下漏斗を介して反応混合物中に滴下した。6時間後に、試料を混合物から取り出し、かつ変換率はGCによれば99.5%であった。
【0162】
例5:2,3−イソプロピリデン−グリセロール+メチルメタクリレート
5mmolの2,3−イソプロピリデン−グリセロール(IPG)、10〜50mmolのメチルメタクリレート(MMA)、1.0gモレキュラーシーブ(5Å)および100mg Novozyme435を、24時間に亘って20℃または40℃で振とうさせた。
【0163】
反応混合物を濾過し、かつ2,3−イソプロピリデン−グリセロールモノメタクリレートへの変換率を、ガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0164】
【表4】

【0165】
例6:イソプロピリデン保護されたトリメチロールプロパン+メチルアクリレート
【0166】
【化2】

【0167】
5mmolのイソプロピリデン−トリメチロールプロパン(IPT)、10〜50mmolのメチルアクリレート(MA)、1.0gモレキュラーシーブ(5Å)、場合により10mlのメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)および100mgNovozyme435を、24時間または72時間に亘って、20、40または60℃で振とうした。
【0168】
反応混合物を濾別し、かつイソプロピリデン−トリメチロールプロパンモノアクリレートへの変換率をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0169】
【表5】

【0170】
例7:イソプロピリデン−グルコフラノース+メチルアクリレート
【0171】
【化3】

【0172】
5mmolのイソプロピリデン−グルコフラノース(IP−Glu)、50mmol メチルアクリレート(MA)、場合により1.0gモレキュラーシーブ(5Å)、場合により10ml溶剤および100mg Novozyme435を、24時間に亘って40℃で振とうさせた。
【0173】
反応混合物を濾過し、かつイソプロピリデングリコフラノースモノアクリレートへの変換率をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0174】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のヒドロキシ基が一緒になってアセタール基またはケタール基と結合しているポリアルコール(C)を、少なくとも1個の酵素(E)の存在下で、(メト)アクリル酸でエステル化するか、あるいは、少なくとも1個の(メト)アクリル酸エステル(D)を用いてエステル交換する工程c)を含むことを特徴とする、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルを製造するための方法。
【請求項2】
a)アルデヒドまたはケトン(A)とポリオール(B)とを反応させ、かつ、
b)場合によってはa)から得られた反応混合物を精製し、その際、アルデヒドまたはケトン(A)は式I
−C(=O)−R (I)
[式中、RおよびRは互いに独立して水素、C〜C18−アルキル、場合によっては1個または複数個の酸素原子および/または硫黄原子および/または1個または複数個の置換または非置換のイミノ基によって遮断されたC〜C18−アルキル、または、C〜C18−アルケニル、C〜C12−アリール、C〜C12−シクロアルキルまたは5〜6員の酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子を有するヘテロ環式基であり、その際、挙げられた基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子および/またはヘテロ環式基によって置換されていてもよいか、あるいはRおよびRはカルボニル炭素と一緒になって、4〜12員環を形成してもよい]を有し、かつポリオール(B)は3〜10個のヒドロキシル基を有するポリオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリアルコール(C)が、2位においてモノ−またはジ−置換された1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキサン構造を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリオール(C)が、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシ−メチル−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサン、1,2−O−イソプロピリデン−α−D−グリコフラノース、2,3−O−イソプロピリデン−トレイトール(=2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジメタノール)および5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサンから成る基から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)からの反応混合物を工程d)中で精製する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)および/またはd)からの反応混合物を、工程e)中で脱保護し、かつ場合によっては工程f)中で精製する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酵素(E)が、エステラーゼ(E.C.3.1.-.-.)リパーゼ(E.C.3.1.-.-.)、グリコシラーゼ(E.C.3.2.-.-.)およびプロテアーゼ(E.C.3.4.-.-.)から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のアセタールまたはケタール保護された(メト)アクリル酸エステルまたは部分エステル化された(メト)アクリル酸エステル(F)の、ポリ(メト)アクリレート中のモノマーまたはコモノマーとしてか、あるいは放射線硬化可能なおよび/またはデュアル−キュアポリ(メト)アクリレート中の反応性希釈剤としての使用。
【請求項9】
PU−分散液、PU−フォーム、PU−接着剤およびPU−被覆材料中での請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法により得られた部分エステル(メト)アクリル酸エステルの使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のアセタールまたはケタール保護された(メト)アクリル酸エステルまたは部分エステル化された(メト)アクリル酸エステル(F)を含有する、放射線硬化可能またはデュアル−キュア塗料組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のヒドロキシ基が一緒になってアセタール基またはケタール基と結合しているポリアルコール(C)を、少なくとも1個の酵素(E)の存在下で、(メト)アクリル酸でエステル化するか、あるいは、飽和アルコールとの少なくとも1個の(メト)アクリル酸エステル(D)とエステル交換する、工程c)を含む、部分エステル化された(メト)アクリル酸エステルを製造するための方法。
【請求項2】
化合物(D)が(メト)アクリル酸の飽和C〜C10−アルキルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)アルデヒドまたはケトン(A)とポリオール(B)とを反応させ、かつ、
b)場合によっては、a)から得られた反応混合物を精製し、その際、アルデヒドまたはケトン(A)は式I
−C(=O)−R (I)
[式中、RおよびRは互いに独立して水素、C〜C18−アルキル、場合によっては1個または複数個の酸素原子および/または硫黄原子および/または1個または複数個の非置換または置換されたイミノ基によって遮断されたC〜C18−アルキル、C〜C18−アルケニル、C〜C12−アリール、C〜C12−シクロアルキルまたは5〜6員の酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子を有するヘテロ環式基であり、その際、挙げられた基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子および/またはヘテロ環式基によって置換されていてもよいか、あるいはRおよびRは一緒になってカルボニル炭素と、4〜12員環を形成してもよい]を有し、かつポリオール(B)は3〜10個のヒドロキシル基を有するポリオールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリアルコール(C)が、2位においてモノ−またはジ−置換された1,3−ジオキソランまたは1,3−ジオキサン構造を含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリオール(C)が、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシ−メチル−2−フェニル−1,3−ジオキソラン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2,2−ジエチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−tert−ブチル−1,3−ジオキサン、5−エチル−5−ヒドロキシメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサン、1,2−O−イソプロピリデン−α−D−グリコフラノース、2,3−O−イソプロピリデン−トレイトール(=2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4,5−ジメタノール)および5,5−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサンから成る基から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)からの反応混合物を工程d)中で精製する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)および/またはd)からの反応混合物を、工程e)中で脱保護し、かつ場合によっては工程f)中で精製する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酵素(E)が、エステラーゼ(E.C.3.1.-.-.)リパーゼ(E.C.3.1.-.-.)、グリコシラーゼ(E.C.3.2.-.-.)およびプロテアーゼ(E.C.3.4.-.-.)から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519000(P2006−519000A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501624(P2006−501624)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000700
【国際公開番号】WO2004/076676
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】