説明

+28V航空機における過渡電圧の抑制

リレーコイル両端の電圧変動を抑制する装置及び方法が開示される。この方法は,差動増幅器によってリレーコイル両端の電圧降下を監視するステップと,基準電源の出力及び前記差動増幅器の出力を積分増幅器に供給するステップと,前記積分増幅器の出力をトランジスタに提供するステップと,前記積分増幅器の前記出力に基づいて前記トランジスタの出力を制御することにより前記リレーコイルを駆動するステップと,を備え,前記基準電源の前記出力は,前記リレーコイル両端の監視された不要な電圧変動に応答して前記積分増幅器に選択的に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年2月26日に出願された米国特許出願第12/393,746号に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該基礎出願の内容は参照により全体として本出願の一部となる。
【0002】
政府の権利
本発明は,非公開の契約に基づいてアメリカ合衆国政府の支援を得てなされたものである。アメリカ合衆国政府は,本発明に関して所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本開示は,電子工学の分野に関し,より具体的には,リレーコイルを流れる過渡電圧を抑制するシステム及び方法に関する。
【0004】
電力制御ユニット(PCU)は,航空機+28Vdcバスを用いてリレーコイルに電力を供給する。これらのコイルの最大電圧は,通常+29Vdcであり,+32Vdcのものも若干ある。+28Vdcの電力仕様は22〜29Vdcであり,1.5Vのリプルを有する。また,50Vの過渡電圧が存在しうる。
【0005】
+28Vdcバスにおける過渡電圧状態又は過電圧状態を解決するために,従来,ツェナーダイオード又は過渡電圧サプレッサをバスに接続することが行われていたが,何も対策が取られないこともあった。ツェナーダイオード及び過渡電圧サプレッサには,過電圧状態が一度発生しただけで焼き切れてしまうという問題がある。PCUの構成要素を破壊することなく,かかる過渡電圧状態に対処するができる装置及び方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施形態に従って,リレーコイル両端の電圧変動を抑制する方法が開示される。この方法は,差動増幅器によってリレーコイル両端の電圧降下を監視するステップと,基準電源の出力及び前記差動増幅器の出力を積分増幅器に供給するステップと,前記積分増幅器の出力をトランジスタに提供するステップと,前記積分増幅器の前記出力に基づいて前記トランジスタの出力を制御することにより前記リレーコイルを駆動するステップと,を備え,前記基準電源の前記出力は,前記リレーコイル両端の監視された不要な電圧変動に応答して前記積分増幅器に選択的に供給される。
【0007】
本開示の様々な実施形態に従って,リレーコイル両端間の電圧変動を抑制する装置が開示される。この装置は,リレーコイル両端の電圧降下を監視するように構成された差動増幅器と,基準電源からの入力及び前記差動増幅器の前記出力に応じて出力を提供するように構成された積分増幅器と,前記リレーコイルと直列に配置され,前記積分器の前記出力によって制御されるように構成されたトランジスタと,前記リレーコイル両端の電圧変動を抑制するように前記トランジスタの出力を制御することによって,前記リレーコイルを駆動するように前記基準電源を制御するように構成されたコントローラと,を含む。
【0008】
本開示の様々な実施形態に従って,電力リレーコイルに電力を供給する電力制御ユニットにおける電圧変動を抑制する装置が開示される。この装置は,電力リレーコイル両端の電圧降下を監視し,関連する電圧変動を抑制するために前記電力リレーコイルに電力を供給するように構成された能動的フィードバックループを含む。
【0009】
本発明の上記及び上記以外の特徴及び性質、並びに、関連する構成要素及び各部分の組み合わせの動作方法及び機能、及び、製造の経済性については、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明と添付の特許請求の範囲を検討することによってさらに明らかになる。これらはいずれも本明細書の一部を構成する。本明細書においては、様々な図面において関連する部分は類似の参照符号によって示される。添付図面は例示及び説明のためのものであり、本発明の発明特定事項の定義として用いることは意図されていない。本明細書及び特許請求の範囲における用法によれば、単数形の"a", "an"及び"the"には複数のものへの言及が含まれるが、文脈上別に解すべきことが明白な場合はこの限りでない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】リレーコイルを駆動する従来の構成を示す。
【0011】
【図2】リレーコイルを駆動する構成のブロック図を示す。
【0012】
【図3】一又は複数の実施形態に従ってリレーコイルを駆動する例示的な回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態において、類似の構成については別の実施形態において示される場合も含め同一の参照符号を用いる。本開示の実施形態を明確かつ簡潔に説明するために、図面は必ずしも寸法通りではなく、一部の特徴は略図として示される場合がある。一の実施形態について説明及び/又は図示される特徴は、同一の方法又は類似の方法により、一又は複数の他の実施形態において用いられ、及び/又は、他の実施形態の特徴と組み合わせて又は他の実施形態の特徴の代わりに用いられる。
【0014】
本開示は,リレーコイルの両端の電圧を監視し,オン/オフ回路又は積分器へフィードバックを提供する。積分器は,電界効果トランジスタ(FET)等のトランジスタを駆動することにより,所定のリレーコイル両端間の電圧を維持するように構成することができる。これにより,+28Vdcバスの過渡的性能にかかわらず,リレーコイルの定格電圧を超える電圧が発生することはない。
【0015】
一実施形態において,+28Vdc航空機バスの特性は,MIL-STD-704によって定義することができる。MIL-STD-704によれば,航空機の定常状態電圧は,22〜29Vdcであり,1.5Vのリプル電圧を有する。このリプル電圧は,定常状態の制限範囲に含まれない。したがって,本実施形態において,航空機電圧は,30.5Vまで高くなる可能性がある。定常状態の電圧に加えて,12.5msで50Vの過渡電圧が発生する可能性がある。この過渡電圧は,その後75msで32Vまで減衰する。
【0016】
PCUにおいては3つの電力リレーが用いられることが多い。この3つの電力リレーは,400Hzの主要出力をスイッチングする電力リレー,電流制限抵抗器においてスイッチングを行う突入電流リレー,及び抵抗器において大容量キャパシタ(large output capacitor)を放電するためにスイッチングする放電リレー(高電圧型)である。
【0017】
これらのリレーは,以下の表1に記載された接触特性及びコイル特性を有する。
【表1】

【0018】
従来の構成においては,過渡電圧を抑制するために,+28Vdc航空機バスにツェナーダイオード又は過渡電圧サプレッサを用いている。典型的な回路構成が図1に示されている。図示のとおり,ツェナーダイオード等の過渡電圧サプレッサ110が,過渡電圧を抑制するために+28Vdc航空機バス105に使用されている。リレーコイル115は,直列に配置されたドライバ120及び電界効果トランジスタ125によって制御され,リレーコイル115を駆動してスイッチ130を制御する。+1.5Vの基準信号及びオン/オフ信号がフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(不図示)から提供され,ドライバ120に伝送される。ドライバ120の出力は,電界効果トランジスタ125に供給され,その後リレーコイル115を制御するために用いられる。
【0019】
例えば,F−18航空機は,ピークパルスが500ワットの過渡電圧サプレッサ(型番1N6120A)を有するRUG PCUを用いており,B−2航空機は,ピークパルスが1500ワットの過渡電圧サプレッサ(型番1N6156A)を有するRMP PCUを用いている。このRMP PCUは,F−18のRUG部品と同種のものであり,唯一の相違点はピーク電力性能である。後に行われた分析から,B−2 RMP部品は,複数の過渡電圧に対処するには不十分であることが分かった。この分析の結果に基づいて,当該部品を回路から除去し,落下によって基板が損傷するおそれを防止するようにした。
【0020】
図2は,本開示の一態様に従ってリレーコイルを駆動する構成を単純化して示す。図3は,図2に従って,回路図の一例を示す。参照符号200で示される構成は,バス210から電力供給されるリレーコイル205を含む。一部の実施形態においては,バス210は,航空機用途に適した+28Vの電圧を有する。これ以外にも,MIL-STD-704に定義されたバス特性に従ったバス電圧を使用することができ,例えば,1.5Vのリプル電圧を有する約22〜29Vdcの定常状態電圧を使用することができる。能動的フィードバックループ215は,リレーコイル205両端の電圧を監視し,リレーコイル205へ供給される電力をオフにすることで過渡電圧又は電圧スパイクを抑制するように構成される。このようにして,リレーコイル205の損傷を防止できる。リレーコイル205が駆動されると,スイッチ240を制御することができる。
【0021】
能動的フィードバックループ215は,差動増幅器220,積分増幅器225,基準電源230,及びトランジスタ235を備えることができる。リレーコイル205両端の電圧は,差動増幅器220によって測定される。一部の実施形態において,差動増幅器220からの出力は,使用される基準電源の種類に応じて,+5V又は+3.3Vにスケールダウンされる。差動増幅器220によって測定された電圧差は,積分増幅器225に入力として提供される。一例として,差動増幅器220及び積分増幅器225は,集積回路(IC)であってもよい。この集積回路は,例えば,ナショナルセミコンダクター社製の低消費電力クワッドオペアンプLM124である。基準信号は,基準電源230から積分増幅器225の他の入力へ供給される。基準電源230は,コントローラ(不図示)からオン/オフ信号240を供給される。一部の実施形態において,コントローラはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイであってもよい。積分増幅器225は,2つの入力に基づいて出力電圧を提供し,その出力電圧をトランジスタ235に供給する。一例として,バス210に過電圧が発生した場合には,差動増幅器220及び積分増幅器225によって測定された過剰な電圧は,トランジスタ235によって消費される。一部の実施形態において,トランジスタ235は,電界効果トランジスタであってもよい。コントローラ(不図示)は,基準電源230のイネーブルピンを制御するように構成される。これにより,積分増幅器225は,リレーコイル205への供給電力をオン/オフすることができる。
【0022】
差動増幅器220の出力を設定することによって調整が可能である。例えば,+28Vがリレーコイル205両端の所望電圧である場合には,差動増幅器の利得は,+5Vの出力を生成するように設定される。この場合,基準電源230の出力は+5Vである。積分増幅器225は,トランジスタ235を駆動して,リレーコイル205両端に+28Vを生成するように構成される。バス210が30Vの場合には,トランジスタ235は2V降下させ,残りの28Vがリレーコイル205の両端で降下する。バス210が50Vの過渡電圧を有する場合には,トランジスタ235は22V降下させる。
【0023】
他の例として,バス210が例えば22V等の低電圧の場合には,トランジスタ235は,極めて僅かな量の電圧(約0.1V)を降下させ,22Vのうち大部分がリレーコイル205の両端で降下するようにする。
【0024】
リレーコイル205がオフされなければならない場合には,フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ等のコントローラ(不図示)は,イネーブルピン(不図示)を介して基準電源230をオフにする。基準電源230の出力は0ボルトまで降下し,積分増幅器225の出力は0に非常に近い値となる。これにより,トランジスタ235がオフされ,バス電圧が全てトランジスタ235の両端で降下するようになる。
【0025】
この構成によれば,28Vよりも大きな電圧がリレーコイル205の端部間に発生しないようにリレーコイル205をオン/オフすることができ,リレーコイル205は,製造元の仕様に従った正しいコイル電圧で動作することができる。
【0026】
以上の開示により、現時点で実用可能と考えられる様々な実施形態を説明したが、かかる詳細な説明は説明のためのものにすぎず、請求項に記載された発明は開示された実施形態に限定されるものではない。むしろ、請求項は、請求項の範囲内における変形例及び均等な構成を含むことを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本出願は,産業上利用可能であり,リレーコイル両端の過渡電圧を抑制するシステム及び方法を含む様々な用途に適用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーコイル両端間の電圧変動を抑制する方法であって,
差動増幅器によってリレーコイル両端間の電圧を監視し,
基準電源の出力及び前記差動増幅器の出力を積分増幅器に提供し,
前記積分増幅器の出力をトランジスタに提供し,
前記積分増幅器の前記出力に基づいて前記トランジスタの出力を制御することにより前記リレーコイルを駆動し,
前記基準電源の前記出力が,前記リレーコイル両端間の監視された不要な電圧変動に応じて選択的に前記積分増幅器に印加される方法。
【請求項2】
前記差動増幅器の出力を+5V又は+3.3Vに減少させる請求項1の方法。
【請求項3】
前記減少される出力を前記基準電源の種類に基づいて定める請求項2の方法。
【請求項4】
+28Vが前記コイル両端の所望電圧である場合に+5Vの出力を生成するように前記差動増幅器の利得を設定する請求項3の方法。
【請求項5】
前記積分増幅器を用いて前記トランジスタを駆動することにより前記リレーコイル両端間に+28Vの電圧を生成する請求項4の方法。
【請求項6】
コントローラから前記トランジスタに所望の信号を供給することにより前記リレーコイルをオフにする請求項5の方法。
【請求項7】
前記トランジスタが前記電圧変動により残存するバス過電圧を消費するように構成された請求項6の方法。
【請求項8】
前記コントローラがフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイを含む請求項1の方法。
【請求項9】
前記トランジスタが電界効果トランジスタを含む請求項1の方法。
【請求項10】
リレーコイル両端の電圧変動を抑制する装置であって,
リレーコイル両端の電圧降下を監視するように構成された差動増幅器と,
基準電源からの入力及び前記差動増幅器の前記出力に応じて出力を提供するように構成された積分増幅器と,
前記リレーコイルと直列に配置され,前記積分器の前記出力によって制御されるように構成されたトランジスタと,
前記リレーコイル両端の電圧変動を抑制するように前記トランジスタの出力を制御することによって前記リレーコイルを駆動するように前記基準電源を制御するコントローラと,
を備える装置。
【請求項11】
前記コントローラがフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイを含む請求項10の装置。
【請求項12】
前記トランジスタが電界効果トランジスタを含む請求項10の装置。
【請求項13】
電力リレーコイルに電力を供給する電力制御ユニットにおける電圧変動を抑制する装置であって,
電力リレーコイル両端の電圧降下を監視し,関連する電圧変動を抑制するために前記電力リレーコイルに電力を供給するように構成された能動的フィードバックループを備えた装置。
【請求項14】
前記電力リレーコイルに供給される前記電力は,前記監視された電圧降下に応答してオン/オフされる請求項13の装置。
【請求項15】
前記能動的フィードバックループが,
前記電力リレーコイル両端の電圧降下を監視するように構成された差動増幅器と,
基準電源からの出力及び前記差動増幅器からの出力を受信するように構成された積分増幅器と,
前記積分器の出力を受信するように構成されたトランジスタと,
前記トランジスタの出力を制御することによって,前記電力リレーコイルを駆動するように構成されたコントローラと,
を備え,
前記コントローラは,前記基準電源を制御することで前記トランジスタが前記リレーをオン/オフして電圧変動を抑制できるようにする請求項13の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−519356(P2012−519356A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552015(P2011−552015)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062064
【国際公開番号】WO2010/098795
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】