説明

1−ペンテンの選択的オリゴマー化によって、2−ペンテンと1−ペンテンとを含有するC5留分から2−ペンテンを分離する方法

【課題】1−ペンテンと2−ペンテンとを含むC5供給原料から、2−ペンテンを分離する方法の提供。
【解決手段】例えば下記、鉄錯体と活性化剤(アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハリド、アルミノキサン、トリアルキルボラン、トリス(アリール)ボラン、トリフェニルカルベニウムカチオンまたは三置換アンモニウムカチオンと結合した(アリール)ボラート、ジアルキル亜鉛などから選択される)からなる触媒組成物を用いることによって2−ペンテンおよび1−ペンテンを含有するC5留分中の1−ペンテンを、分枝指数が1以下であるダイマーに選択的にオリゴマー化させてから、蒸留等で2−ペンテンを分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄をベースとする触媒組成物の存在下に1−ペンテンを、分枝指数が1以下であるダイマーに選択的にオリゴマー化させることによって、2−ペンテンと1−ペンテンとを含有するC5留分から2−ペンテンを分離する方法に関する。場合による追加の工程によって、C5留分中に一般に存在する他の化合物を分離することが可能となる。
【背景技術】
【0002】
C5留分は、精製所および石油化学工場において大量に利用可能である。C5留分は、接触分解または水蒸気分解等の標準的な方法によって製造される。これらのC5留分は、一般に、線状ペンテン(1−ペンテン、および2−ペンテン)、ならびに分枝ペンテン(例えば、イソアミレン:2−メチル−1−ブテン、および2−メチル−2−ブテン)等のオレフィン化合物、場合による、パラフィン(イソペンタン、およびn−ペンタン)、ジエン(イソプレン等)、並びに、アセチレン性不純物を含有する。接触分解あるいは水蒸気分解に由来するC5留分の典型的な組成を、表1に示す。
【0003】
【表1】

【0004】
C5留分は、オレフィンと分枝成分(branched constituents)の含有量が高く、これにより、高いオクタン価を有する(表2)。更に、C5留分は、市販燃料ベースの均整のとれた蒸留曲線を得るために必要である。それ故に、C5留分は、一般的に分離されないが、燃料の調製に直接送られることとなる芳香族炭化水素と共に蒸留される。イソプレンとシクロペンタジエンのみが、工業規模で蒸留される。イソアミレンは、しばしば、アルキル tert−アミルエーテル(これは、オクタン価の高い成分である)を形成するエーテル化反応によって、C5留分から抽出される。
【0005】
他の開発によって、C5留分のより広範な分離が可能となっている。特許文献1には、C5留分を含む不飽和炭化水素留分から、アルファオレフィン、第3オレフィンおよび/またはエーテルを分離する方法が記載されている。特許文献2には、イソブテンと2−メチル−2−ブテンとを含む、高純度のイソオレフィンを製造する方法が記載されている。この方法は、イソオレフィンを硫酸の溶液に吸収させて、それを分離し、次いで加熱し、水蒸気と共にイソオレフィンを分離することからなる。特許文献3および4には、ガソリン留分からディーゼル燃料留分を製造する方法であって、ノルマルオレフィンおよびイソオレフィンを分離する第1の工程を含む、方法が記載されている。
【0006】
どのような方法が用いられても、それらの分離は、依然としてしばしば問題となっている。これらの化合物の沸点の差異が僅かであることを考えると(表2参照)、蒸留によってそれらを分離することは困難であり、特に、1−ペンテンおよび2−メチル−1−ブテン、ならびに、2−メチル−2−ブテンおよび2−ペンテンは、蒸留によって分離され得ない。これが、より有効かつより選択的な、物理的かつ化学的分離技術が実施されなければならない理由である。
【0007】
【表2】

【0008】
更に、線状アルファオレフィンのオリゴマー化方法も存在する。特許文献5には、アルミニウム誘導体で活性化させられた鉄/コバルト錯体によって触媒されたアルファオレフィンのカップリングによる、1−ブテンダイマーおよび他の線状アルファオレフィンの合成について記載されている。形成されたダイマーは、非常に良好な直線性を有するという特定の特徴を有する。
【0009】
1−ペンテンが2−ペンテン、ならびに、場合による、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、n−ペンタン、および/またはイソペンタンを含有する供給原料と混合される場合に、オリゴマー化反応により1−ペンテンを選択的に転化させるためにこれらの鉄錯体が用いられ得るだろうことが今や見出された。
【0010】
遷移金属錯体による、軽質オレフィン(C2−C5)のオリゴマー化は、文献では、エチレンの場合において主に記載されている。実際、オレフィンの反応性は、それらの炭素鎖の長さが長くなるにしたがって、低減する(C2>>C3>C4>5)ことが周知である。オリゴマー化によってブテンを転化させるための最もよく知られた系は、Zieglerタイプの、ニッケルをベースとする系である。これらの系は、1−ブテンおよび2−ブテンを、オクテンの混合物に転化させる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0869107号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第1540692号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2871167号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2871168号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0177744号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】B.コルニル(B. Cornils)、W.ハーマン(W. Herrmann)著、「リアクション・オフ・アンサチュレイテッド・コンパンズ(Reaction of unsaturated compounds)」、アプライド・ホモジーニャス・キャタリシス・ウィズ・オルガノメタリックス(Applied Homogeneous Catalysis with Organometallics)、ウィリー・ブイシーエイチ(Wiley-VCH)、2002年、p.240-253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明による、鉄をベースとする系は、従って、従来技術文献から公知の系とは異なる。実際驚くべきことに、この触媒系は、2−ペンテンと仮に反応するとしてもわずかである。
【0014】
本発明の目的は、従って、1−ペンテンと2−ペンテンとを含むC5供給原料から2−ペンテンを分離する方法であって、以下の連続する工程:
− 鉄をベースとする触媒組成物によって、1−ペンテンを、分枝指数が1以下であるオリゴマーへと選択的にオリゴマー化させる工程、
− 2−ペンテンを分離する工程
を特徴とする、方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明による方法によって、一方で、1−ペンテンからの2−ペンテンの有効な分離が可能となり、他方で、分枝指数が1以下であるオリゴマー(主に、デセン)の同時製造が可能となる。
【0016】
分枝指数(branching index)は、以下のように計算される: ((n−オレフィンの重量%)×0+(一分枝(monobranched)i−オレフィンの重量%)×1+(二分岐(dibranched)i−オレフィンの重量%)×2...))/100。1以下の分枝指数は、形成されたオリゴマーが、圧倒的に線状および一分枝であることを示す。
【0017】
分枝指数が1以下であるダイマーは、燃料プールにおいて、または、プロピレンの製造のための分解工程における原材料として、あるいは、石油化学における、例えば、ヒドロホルミル化および水素化によるアルコールの合成のための中間体として用いられる。
【0018】
他の分離工程がオリゴマー化工程に追加され得るのは、供給原料が1−ペンテンおよび2−ペンテンに加えて、C5供給原料中に存在することもある他のC5成分、例えば、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、イソペンタン、n−ペンタン、ペンタジエン、ならびに、痕跡量のアセチレン炭化水素を含む場合である。
【0019】
この連続する工程によって、数多くの利点がもたらされ、かつ、数多くの用途において用いられ得る生成物を製造することが可能となる。
【0020】
従って、2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンの分離工程は、好ましくは、選択的オリゴマー化の工程の前に、アルキル tert−ブチルエーテルを生じさせるエーテル化により行われる。
【0021】
エーテル化により、(TAMEタイプの)アルキル tert−アミルエーテル(高いオクタン価を有する成分として求められている)を生じさせることが可能となる。
【0022】
供給原料がペンタジエンと痕跡量のアセチレン炭化水素とを含む場合、選択的水素化による、ペンタジエンおよび痕跡量のアセチレン炭化水素の分離工程は、好ましくは、(場合による)エーテル化による2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンの分離工程、および/または、選択的オリゴマー化の工程の前に行われる。
【0023】
留分中の最も活性な化合物、すなわち、ペンタジエンおよび痕跡量のアセチレン炭化水素は、従って、まさに一番初めの工程で転化させられ、従って、その後に続く工程において寄生反応を引き起こすことにならない。更に、ペンタジエンの選択的水素化異性化により、2−ペンテンの濃度を向上させることが可能となり、その結果、この求められる生成物の収率が向上させられる。
【0024】
同様に、酸触媒の存在下での、選択的オリゴマー化によって得られる圧倒的に線状のオリゴマーの2−ペンテンとの共オリゴマー化の工程は、選択的オリゴマー化の工程の後に行われ得る。この工程により、ペンタデセンを得ることが可能となる。ペンタデセンは、ケロセン(kerosene)留分中に導入され得るか、あるいは、溶媒として用いられ得る。
【0025】
ペンタデセンを含有する共オリゴマー化流出物は、例えば蒸留による、分離の工程に付され得、これにより、n−ペンタンが仮に存在する場合、これを分離することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(供給原料)
用いられる供給原料は、1−ペンテンおよび2−ペンテンを含有するC5炭化水素留分である。典型的には、それは、ペンテン(1−ペンテンおよび2−ペンテン)に加えて、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、パラフィン(イソペンタンおよびn−ペンタン)、ペンタジエンおよび痕跡量のアセチレン炭化水素を含有する。これらの供給原料は、接触分解装置(例えば、流動床タイプのもの)、および/または(ナフサの)水蒸気分解のための装置、および/または、あらゆる他の源に由来し得る。
【0027】
供給原料の種々の成分に応じて、1回以上の分離工程がは、有利には、1−ペンテンの選択的オリゴマー化の工程に先行するか、あるいは該工程の後に続き得る。種々の実施形態については、以下に説明する。
【0028】
1−ペンテン、2−ペンテン、および、場合による、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、イソペンタン、n−ペンタン、ペンタジエン、ならびに、痕跡量のアセチレン炭化水素を含むC5供給原料からの2−ペンテンの分離方法は、有利には、以下の連続する工程:
− 場合による、ペンタジエンおよびアセチレン系不純物を選択的に水素化させる工程、
− 場合による、エーテル化によって2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンを分離する工程、
− 1−ペンテンを、分枝指数が1以下であるダイマーに選択的にオリゴマー化させる工程、
− 形成されたオリゴマーを2−ペンテンから分離する工程、
− 場合による、圧倒的に線状のオリゴマーを2−ペンテンと共オリゴマー化させて、ペンタデセンを製造する工程、
− その後の、場合による、n−ペンタンおよびイソペンタンを分離する工程
を含む。
【0029】
(選択的水素化(任意))
1−ペンテンおよび2−ペンテンに加えて、ペンタジエンと痕跡量のアセチレン炭化水素とを含有する供給原料は、選択的水素化の工程に付され得る。
【0030】
この工程では、ペンタジエンは、モノオレフィンへと選択的に水素化させられ、アルファオレフィンは、熱力学的平衡状態において内部オレフィンに、すなわち、2−ペンテンおよび2−メチル−2−ブテンに異性化させられる。この工程により、これらの留分中に常に存在し、かつ、後に続く工程とって毒物または汚染物質である、痕跡量のアセチレン炭化水素を除去することも可能となる。実際、この工程により、まさに第1の工程において、留分中の最も活性な化合物、すなわち、ペンタジエンおよびアセチレン性化合物を転化させることが可能となり、従って、後に続く工程においてそれらが寄生反応を引き起こすことはない。従って、この反応によって、n−ペンテンの収率を向上させることが可能となる。
【0031】
この第1の場合による選択的水素化工程において、以下の反応が、従って、同時に行われる:
− ペンタジエンの、熱力学的平衡状態におけるn−ペンテン混合物への選択的水素化異性化、
− アルファオレフィンの、同様の熱力学的平衡状態における内部オレフィンへの異性化(1−ペンテンから2−ペンテン、2−メチル−1−ブテンから2−メチル−2−ブテン)、
− 痕跡量のアセチレン炭化水素の水素化。
【0032】
水蒸気分解器(steam cracker)に由来する供給原料の場合、ジエンの選択的水素化の工程が、好ましくは行われる。接触分解装置(例えば流動床タイプのもの)に由来する供給原料の場合、ジエンの選択的水素化の工程は任意である。前記方法のために用いられる留分中のジオレフィンまたはアセチレンの濃度が1000ppm超である場合、この濃度を1000ppm以下に低減させるために、選択的水素化が推奨される。これらの不純物を300ppm超、さらには10ppm超で含有する供給原料は、好ましくはこの工程において処理されることになる。
【0033】
反応は、1種以上の金属、例えば周期律表の第10族の金属(Ni、Pd、Pt)を担体上に担持させられて含む、種々の特定の触媒によって行われ得る。好ましくは、少なくとも1種のパラジウム化合物を耐火性鉱物担体、例えばアルミナ上に固定されて含む触媒が用いられる。担体上のパラジウム含有量は、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%であり得る。回避されなければならないペンタンへの完全な水素化を減じてペンタジエンのペンテンへの水素化における選択性を向上させるために、当業者に公知の種々の形態の前処理が、場合によりこれらの触媒に適用され得る。触媒は、好ましくは0.05〜10重量%の硫黄を含有している。有利には、アルミナ上に担持させられかつ硫黄を含有するパラジウムによって構成される触媒が使用される。
【0034】
触媒の硫化は、現場(in situ)で(すなわち、反応帯域内で)、あるいは、好ましくは現場外(ex situ)で行われ得る。現場外で行われる場合、触媒は、有利には、溶媒中に希釈した、少なくとも1種の硫黄含有化合物により処理された後に、水素化反応器に装填される。得られた触媒は、0.05〜10重量%の硫黄を含有しており、このものは、反応器内に充填されて、中性雰囲気下または還元雰囲気下、20〜300℃の温度、0.1〜5MPaの圧力、および50〜600h−1のLHSVで活性化させられ、供給原料が前記活性化触媒と接触させられる。
【0035】
触媒、好ましくはパラジウム触媒の利用は、重要ではないが、固定触媒床中に下降流を有する、少なくとも1つの反応器を用いることが一般的に好ましい。留分中のペンタジエンの割合が高い場合、これは、例えば、特定の使用のためにペンタジエンの抽出が望まれない時の水蒸気分解からの留分を用いる場合であるが、この場合、水素化の選択性をより良好に制御するために、直列の2つの反応器内で転化を行うことが有利であり得る。第2の反応器は、上昇流を有し得、仕上げ(finishing)の役割を有し得る。
【0036】
この工程で行われる全ての反応に必要な水素量は、留分の組成に応じて、理論的化学量論に対して有利には僅かにのみ過剰の水素が存在するように、調節される。
【0037】
操作条件は、試剤および生成物が液相中にあるように選択される。しかし、反応器出口において生成物が部分的に気化するような操作モードを選択することは有利であり得、これにより、反応の熱制御が容易になる。温度は、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、あるいは、より好ましくは60〜150℃の間で変わり得る。圧力は、試剤が少なくとも部分的に液相中にあるように、0.1〜5MPa、好ましくは0.5〜4MPa、有利には0.5〜3MPaに調節され得る。空間速度は、0.5〜10h−1、好ましくは1〜6h−1であり得、H/ジオレフィン(モル)比は、0.5〜5、好ましくは1〜3であり得る。
【0038】
好ましくは、ペンタジエンおよび痕跡量のアセチレン炭化水素の選択的水素化は、ニッケル、パラジウム、および白金によって形成される群から選択される少なくとも1種の金属を担体上に担持させられて含む触媒を用いて、20〜200℃の温度、1〜5MPaの圧力、0.5〜10h−1の空間速度、および0.5〜5のH/ペンタジエン(モル)比で行われる。
【0039】
水素化異性化反応器(単数または複数)の後に、有利には、安定化塔(stabilizing column)が続き得、安定化塔は、過剰の痕跡量の水素および任意のメタンを取り除く。
【0040】
(2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテン のエーテル化(任意))
1−ペンテンおよび2−ペンテンに加えて、イソアミレン(2−メチル−2−ブテン、および2−メチル−1−ブテン)を含む供給原料は、好ましくは、ペンタジエンと痕跡量のアセチレン炭化水素とを除去した後、エーテル化触媒を含む反応帯域内で接触させることにより第3アルキルエーテルを形成するように、イソアミレンのエーテル化に付され得る。エーテル化工程は、当業者に公知である。
【0041】
この任意の工程は、好ましくは、場合による選択的水素化の工程の後であるが選択的オリゴマー化の工程の前に行われる。
【0042】
第2の任意工程の目的は、C5留分中に存在する2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンを、アルキル tert−アミルエーテルに転化させることである。これは、エーテル化触媒の存在下に、炭化水素鎖が1〜10個の炭素原子を含み得るアルコールとのエーテル化によって行われる。メタノールが、好ましくは、TAME(tert-amyl methyl ether:tert−アミルメチルエーテル)を製造するためのアルコールとして用いられる。
【0043】
転化は、酸触媒、例えばH型のイオン交換樹脂、例えばスルホン酸樹脂−SOHをベースとする触媒によって行われる。この触媒は、従来、例えば固定床内あるいは移動床内で用いられ得る。発泡触媒床(expanded bed of catalyst)および外部熱交換器により機能することが好ましく、発泡触媒床は、反応器中を上昇流で流れる反応混合物の流通によって維持される。この操作方法によって、触媒が機能しているところを容易にモニタリングすること、並びに、反応中に発生した熱を取り除くことが可能になり、これにより、ホットスポット(hot spots)の形成が回避される。
【0044】
仕上げ(finishing)反応器は、残留留分中のイソアミレンを最大限消耗させるため、かつ、エーテルの収率を向上させるために、有利には、発泡床反応器の後に設置され得るが、反応の大部分は、発泡床反応器内で起こる。イソアミレンの最大限の消耗はまた、反応蒸留(触媒を含む蒸留塔)を用いることにより、仕上げのプロセスにおいて達成され得る。反応蒸留は、反応器内の生成物の分離によって、転化率を向上させることを可能にする。
【0045】
操作条件は、試剤および生成物が液相中にあるように選択される。温度は、一般的に、反応が十分な速度で起こるように、例えば30〜130℃、好ましくは40〜100℃で設定され、圧力は、結果的に、試剤が液相中にあるように調節される。
【0046】
エーテル化工程に由来する生成物の分留により、一方で、第3アルキルエーテルを豊富に含む有機フラクションを、他方で、1−ペンテン、2−ペンテン、および場合によるペンタン(仮に存在する場合)を含む第3アルキルエーテルが枯渇した有機フラクションを得ることが可能となる。従って、反応セクションの後に蒸留セクションが続き、ここで、塔の底部のエーテルと、残留C5留分および過剰のアルコール、ならびに、痕跡量の他の揮発性酸素含有化合物を含む留出物とが分離される。アルコールは、水を用いた洗浄によって、分離され、水−アルコール混合物は蒸留され、アルコールは再循環させられる。
【0047】
このようにして生成したTAME(tert−アミルメチルエーテル)は、一般的には、改質ガソリン中のオクタン価を向上させるための添加剤として用いられる。生成したエーテルからイソアミレンを回収することも可能であり、これは、酸触媒の存在下で容易に分解されて、精製イソアミレンが放出される。
【0048】
このようにして得られた残留C5留分は、依然として、2−ペンテンおよび1−ペンテン、並びに、場合による(イソおよびノルマル)ペンタンを含んでいる。それは、選択的オリゴマー化の工程に付される。
【0049】
(選択的オリゴマー化)
1−ペンテンおよび2−ペンテンを含む供給原料は、好ましくはペンタジエンと痕跡量のアセチレン炭化水素の除去後、場合によりイソアミレンの除去後に、2−ペンテンの著しい反応のない、鉄をベースとする触媒組成物による、1−ペンテンの選択的オリゴマー化の工程に付される。
【0050】
この工程は、主に、分枝指数が1以下であるデセンの形成をもたらす。C5を含有する供給原料の場合、ダイマー(デセン)に対する選択性は、転化オレフィンに対して、一般的に50%超、好ましくは80%超である。ダイマーに対する選択性は、1以下の、好ましくは0.6未満の分枝指数を提供する。
【0051】
選択的オリゴマー化の工程において用いられる、鉄をベースとする触媒組成物は、少なくとも1種の鉄前駆体と、鉄前駆体と錯体を形成しているか、あるいは形成していない、下記の式の少なくとも1種のリガンドと、場合による活性化剤とからなる。
【0052】
鉄前駆体は、一般式FeXを有し、Xは、アニオン性基、例えばハリド(クロリド、フルオリド、ブロミド、またはヨージド);あるいは炭化水素基、例えばメチル、ベンジル、またはフェニル;カルボキシラート、例えばアセタートまたはアセチルアセトナート;酸化物;アミド、例えばジエチルアミド;アルコキシド、例えばメトキシド、エトキシド、またはフェノキシド;あるいは水酸基である。あるいは、Xは、非配位性または弱配位性のアニオン、例えば、テトラフルオロボラート、フッ化アリールボラート、またはトリフラートであり得る。アニオン性基Xは、モノアニオン性またはジアニオン性であり得る。鉄前駆体は、水和されていてもされていなくてもよく、リガンドで配位されていてもされていなくてもよい。
【0053】
例えば、鉄前駆体は、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、オクトン酸鉄(II)、オクトン酸鉄(III)、2−エチルヘキサン酸鉄(II)、2−エチルヘキサン酸鉄(III)、鉄(II)トリフラート、鉄(III)トリフラート、硝酸鉄(III)であり得る。鉄前駆体は、水和されてもされていなくてもよく、テトラヒドロフラン等のリガンドに配位されてもされていなくてもよい。
【0054】
リガンドは、一般式:
【0055】
【化1】

【0056】
(式中R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、同一または異なってよく、水素原子、1〜12個の炭素原子を含有する、線状または分枝の、環状または非環状の、飽和または不飽和のアルキル基、アリール、アラルキルまたはアルカリール(alkaryl)基、ヘテロ元素を含有する基から選ばれ、該ヘテロ元素を含有する基は、ヘテロ環であるかヘテロ環でなく、芳香族性であるか芳香族性でなく、ハリドであるかまたはハリドでなく、担持されているか担持されておらず、好ましくは、アルコキシ、ニトロ、ハリドおよび/またはペルフルオロアルキル基から選ばれる)
を有する。
【0057】
非制限的な例として、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、メトキシ、ニトロ、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリフルオロメチル、フルオリド、クロリド、ブロミド、およびヨージド基から選ばれ得る。
【0058】
例えば、リガンドは、以下の式のものであり得る:
【0059】
【化2】

【0060】
例えば、錯体は、以下の式のものであり得る:
【0061】
【化3】

【0062】
本発明において用いられる触媒のための、場合による活性化剤は、好ましくはルイス酸である。好ましくは、ルイス酸は、アルミニウム誘導体、ホウ素誘導体、亜鉛誘導体、またはこれらの誘導体の混合物から選択される。
【0063】
アルミニウム誘導体の例として、アルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム;アルキルアルミニウムのハリド、例えば、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド;およびアルミノキサンが含まれ得る。アルミノキサンは、アルキルアルミニウム、例えばトリメチルアルミニウムに、水を制御しながら加えることによって調製され得るオリゴマー化合物として、当業者に周知である。このような化合物は、線状、環式であるか、あるいはこれらの化合物の混合物であり得る。それらは、一般的に式[RAlO]によって表され、式中、Rは、炭化水素基であり、「a」は、2〜50の数である。好ましくは、アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane:MAO)および/またはエチルアルミノキサン(ethylaluminoxane:EAO)から、および/または改変されたアルミノキサン、例えば 改変メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane:MMAO)から選択される。
【0064】
ホウ素誘導体の例として、トリアルキルボラン(例えば、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリプロピルボラン、トリ−n−ブチルボラン、トリ−イソブチルボラン、トリ−n−ヘキシルボラン、トリ−n−オクチルボランであり、単独でまたは混合物で用いられる)、トリス(アリール)ボラン(例えば、トリス(ペルフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラン、トリス(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペルフルオロナフチル)ボラン、トリス(ペルフルオロビフェニル)ボラン)、およびこれらの誘導体が含まれ得る。活性化剤として、トリフェニルカルベニウムカチオンと結合した、あるいは、三置換アンモニウムカチオンと結合した(アリール)ボラート、例えば、トリフェニルカルベニウム・テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペルフルオロフェニル)ボラート、N,N−ジエチルアニリニウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、またはトリフェニルカルベニウム・テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラートを用いることも可能である。
【0065】
亜鉛誘導体の例として、ジアルキル亜鉛、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジブチル亜鉛、ジネオペンチル亜鉛、ジ(トリメチルシリルメチル)亜鉛が含まれ得、これらは単独でまたは混合物で用いられる。
【0066】
1−ブテンの選択的オリゴマー化は、溶媒の存在下に行われ得る。触媒組成物中に用いられる有機溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒である。本発明による方法において用いられ得る溶媒の中から、脂肪族または環式の炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、またはヘプタン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、またはキシレン等)、塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン、またはクロロベンゼン)、あるいは、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran:THF)が挙げられてもよい。有機溶媒は、好ましくは、飽和または不飽和の脂肪族溶媒、あるいは、芳香族炭化水素である。
【0067】
溶媒はまた、イオン液であり得、これは、有機溶媒との混合物であるか、あるいは、有機溶媒との混合物ではない。1−ペンテンの選択的オリゴマー化の反応は、閉鎖系または半開放系で、あるいは、連続的に行なわれ得、1つ以上の反応工程を有する。激しく撹拌することによって、試剤(単数または複数)と触媒組成物との間の良好な接触が確保されなければならない。
【0068】
反応温度は、−40〜+250℃、好ましくは0〜+150℃であり得る。反応によって発生した熱は、当業者に公知のあらゆる手段によって除かれ得る。
【0069】
反応は、好ましくは液相中で行われ、圧力は、系を液相中で維持するように調節される。一般に、圧力は、大気圧から10MPaまでで可変であり;圧力は、好ましくは5〜8MPaである。
【0070】
(2−ペンテンの分離)
選択的オリゴマー化からの流出物は、したがって、1−ペンテンに由来するオリゴマー、特に分枝指数が1以下であるデセンと、2−ペンテンと、場合によるペンタン(存在する場合)とを含む。この流出物は、次いで分離、例えば蒸留の工程に付され、これにより、形成されたオリゴマーが2−ペンテンから(および、存在する場合、ペンタンから)分離される。ペンタンは不活性であるため、更なる分離は一般的に行われない。
【0071】
(圧倒的に線状のオリゴマーおよび2−ペンテンの共オリゴマー化(任意))
2−ペンテンをより高い付加価値を有する生成物に品質向上させるために、1−ペンテンのオリゴマー化により得られる、分枝指数が1以下であるデセンの2−ペンテンとの共オリゴマー化の工程が行われてよく、これにより、ペンタデセンが生じる。このようにして生じたペンタデセンは、ケロセン(kerosene)留分中に導入されるか、あるいは、溶媒として用いられ得る。
【0072】
触媒および操作条件は、反応が圧倒的にダイマー化反応(すなわち、2つのベースの分子に制限されるオリゴマー化または付加反応)であるように選択される。この反応が圧倒的にダイマー化であると考えられるのは、得られる生成物の少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%、一層より好ましくは少なくとも80%がダイマーであり、残りの割合(%)が、未反応出発物およびトリマー化の生成物またはより高い程度のオリゴマー化の生成物からなる場合である。同様に、二次的な逆行するクラッキング反応(secondary back cracking reactions)は、触媒および操作条件の選択によって限定される。
【0073】
共オリゴマー化反応において用いられる触媒は、酸触媒、好ましくは、無定形酸触媒またはSi/Al比が5超、好ましくは8〜80、一層より好ましくは15〜70であるゼオライトタイプの触媒である。ゼオライトは、少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に酸型、すなわち、水素型(プロトン型とも呼ばれる)である。好ましくは、用いられる触媒は、8−MR、10−MRおよび/または12−MRのチャネルを有するゼオライトを含む群から選択されるゼオライト触媒である。
【0074】
前記好ましいゼオライトの例は、以下の構造型のゼオライトである: MEL、MFI、ITH、NES、EUO、ERI、FER、CHA、MFS、MWW、MTT、TON。MEL構造型のゼオライトの中では、ゼオライトZSM−11が好ましい。MFI構造型のゼオライトの中では、ゼオライトZSM−5が好ましい。ITH構造型のゼオライトの中では、ゼオライトITQ−13が好ましい。NES構造型のゼオライトの中では、ゼオライトNU−87が好ましい。EUO構造型のゼオライトの中では、ゼオライトEU−1が好ましい。ERI構造型のゼオライトの中では、ゼオライトエリオナイト(erionite)が好ましい。FER構造型のゼオライトの中では、ゼオライトフェリエライトおよびZSM−35が好ましい。CHA構造型のゼオライトの中では、ゼオライトチャバサイト(chabazite)が好ましい。MFS構造型のゼオライトの中では、ゼオライトZSM−57が好ましい。MWW構造型のゼオライトの中では、ゼオライトMCM−22が好ましい。MTT構造型のゼオライトの中では、ゼオライトZSM−23が好ましい。TON構造型のゼオライトの中では、ゼオライトZSM−22が好ましい。これらのゼオライトは、単独でまたは混合物中で用いられ得る。本発明において好ましいゼオライト12MRは、以下の構造のゼオライトである:MOR、FAU、BEA、BOG、LTL、OFF。MOR構造型のゼオライトの中では、ゼオライトモルデナイトが好ましい。FAU構造型のゼオライトの中では、ゼオライトYが好ましい。BEA構造型のゼオライトの中では、ゼオライトベータが好ましい。BOG構造型のゼオライトの中では、ゼオライトボクサイトが好ましい。LTL構造型のゼオライトの中では、ゼオライトLが好ましい。OFF構造型のゼオライトの中では、ゼオライトオフレタイトが好ましい。これらのゼオライトは単独でまたは混合物中で用いられ得る。
【0075】
本発明の触媒はまた、少なくとも1種の無定形または結晶化度の乏しい酸化物タイプの多孔性鉱物マトリクスと、場合によるバインダとを含有する。マトリクスの非限定的な例として、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナが挙げられてもよい。粘土(例えば、天然粘土、例えばカオリンまたはベントナイトから選択される)、マグネシア、酸化チタン、酸化ホウ素、ジルコニア、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、炭。アルミン酸塩も選択され得る。当業者に公知の全ての形態でのアルミナ、好ましくはガンマアルミナを含有するマトリクスを用いることが好ましい。
【0076】
共オリゴマー化を行うための反応器の温度は、40〜600℃、好ましくは60〜400℃である。圧力は、0.1〜10MPa、好ましくは0.3〜7MPaである。毎時空間速度は、0.01〜100h−1、好ましくは0.4〜30h−1である。
【0077】
有利には、2−ペンテンの付加は、圧倒的に線状のオリゴマーの2−ペンテンに対する質量比が、約30/70〜95/5、好ましくは50/50〜90/10、一層より好ましくは60/40〜80/20であるようにされるように行われる。
【0078】
反応器は、固定床、管状反応器、流動床または移動床タイプのものであり得る。それは、中間の冷却を有する1つ以上の床によって構成され得る。
【0079】
触媒または操作条件に関する更なる詳細については、特許出願FR2887555、EP1299506、またはEP0800568が参照されてもよい。
【0080】
(n−ペンタンおよびイソペンタンの分離(任意))
共オリゴマー化からの流出物中に場合により存在するn−ペンタンおよびイソペンタンは、分離工程において、例えば蒸留によって除去され得る。
【0081】
図1は、本発明の方法の図表示である。
【0082】
C5供給原料(11)は、2−ペンテンおよび1−ペンテンに加えて、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、イソペンタンおよびn−ペンタン、ペンタジエン、ならびに痕跡量のアセチレン炭化水素を含む。C5供給原料(11)は、ペンタジエンの選択的水素化の任意の工程(1)に付される。この選択的水素化は、アルファ−オレフィンの内部オレフィンへの熱力学的平衡状態における異性化およびアセチレン炭化水素の水素化を伴う。したがって、この工程により、ペンタジエンと痕跡量のアセチレン炭化水素とを除去することが可能となる。1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、イソペンタン、およびn−ペンタンを含有する流出物(12)は、次いで、アルコール(13)(例えば、メタノール)の存在下でのエーテル化による、イソアミレン(2−メチル−2−ブテン、および2−メチル−1−ブテン)の分離の任意の工程(2)に送られ、これにより、TAMEを含有する流れ(14)ならびに、1−ペンテン、2−ペンテン、n−ペンテン、およびイソペンタンを含有する流出物(15)を得ることが可能となる。この流出物(15)は、次いで、1−ペンテンの選択的オリゴマー化の工程(3)に送られ、これにより、2−ペンテン、n−ペンタン、およびイソペンタンとの混合物中に、分枝指数が1以下であるオリゴマー(主にデセン)を含有する流出物(16)を得ることが可能となる。次いで、分離工程(4)(例えば、蒸留による)によって、形成されたオリゴマー(17)を、n−ペンタンおよびイソペンタンとの混合物中に未反応2−ペンテンを含有するフラクション(18)から分離することが可能になる。場合によっては、圧倒的に線状のオリゴマー(17)のフラクション(18)中に含まれる2−ペンテンとの共オリゴマー化(5)が行われ得、これにより、ペンタデセン、n−ペンタン、およびイソペンタンを含有するフラクション(19)が生じる。n−ペンタンおよびイソペンタン(20)は、例えば蒸留によって、ペンタデセン(21)から分離され得る(6)。
【0083】
(実施例)
以下の実施例は本発明を例証するものであり、その範囲を限定するものではない。
【0084】
(触媒前駆体の調製)
用いられる触媒組成物を、以下のように調製した。ビス(イミノ)ピリジンリガンド(1.58g、1.05当量)と前駆体である二塩化鉄(II)四水和物(0.88g、1当量)を、アルゴン下にマグネティックバーを含むシュレンクフラスコに加えた。150mLのTHFを、次いで添加して、この溶液を、室温で16時間の間撹拌した。形成された固体を、ろ過によって分離し、次いで、エーテルおよびペンタンで洗浄した(2.17g、91%)。
【0085】
【化4】

【0086】
(触媒試験)
触媒試験(実施例1〜2、表3)を、以下のように行った:250mLの反応器を、真空下、80℃で3時間にわたり乾燥させ、次いでアルゴン下に置いた。供給原料を、反応器内に注入し、次いで、0℃に冷却した。3mLのトルエン中の鉄錯体(2×10−5mol)を、活性化剤(MAO、Al/Fe=105、トルエン中10重量%)と共に導入した。撹拌を開始させて、温度設定を40℃に固定した。所望の反応時間の後、HOで中和を行った。転化率を、気相および液相のGC分析によってモニタリングした。
【0087】
実施例1(本発明に合致しない)では、供給原料は、1−ペンテンであった。実施例2(本発明に合致する)では、供給原料は、1−ペンテンおよび2−ペンテンの混合物であり、1−ペンテン/2−ペンテン比は、0.83であった。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例2により、本発明による方法を行えば、1−ペンテンおよび2−ペンテンを含有するC5留分から2−ペンテンを、ダイマーについての選択性96重量%および形成されるダイマーにおける分枝指数0.6未満での1−ペンテンのオリゴマーへの選択的オリゴマー化により分離することができることが示される。2−ペンテンの転化率は、極度に低いままである。実施例1と実施例2を比較すると、2−ペンテンの存在によって、選択性および分枝指数に対する影響が殆ど無いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の方法の図表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−ペンテンと2−ペンテンとを含むC5供給原料から、2−ペンテンを分離する方法であって、以下の連続する工程:
− 鉄をベースとする触媒組成物によって、1−ペンテンを、分枝指数が1以下であるオリゴマーへと選択的にオリゴマー化させる工程、
− 2−ペンテンを分離する工程、
を特徴とする方法。
【請求項2】
鉄ベースの触媒組成物は、少なくとも1種の鉄前駆体と、鉄前駆体と錯形成したまたは錯形成していない以下に記載された式の少なくとも1種のリガンドとを含み、前記鉄前駆体は、水和してもしてなくてもよく、一般式FeXを有し、Xは、ハリドから選ばれるアニオン性基、炭化水素基、カルボキシラート、酸化物、アミド、アルコキシド、水酸化物、または、非配位性または弱配位性のアニオンであり、前記リガンドは、一般式:
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、およびR15は、同一であっても異なってもよく、水素原子、1〜12個の炭素原子を含む、線状または分枝の、環状または非環状の、飽和または不飽和の、アルキル基、アリール、アラルキルまたはアルカリール基、ヘテロ元素を含有する基から選ばれ、該ヘテロ元素を有する基は、ヘテロ環またはヘテロ環でなく、芳香族性または芳香族性ではなく、ハリドであるかまたはハリドでなく、担持されまたは担持されない)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒組成物は、アルミニウム誘導体、ならびに、ホウ素誘導体または亜鉛誘導体、あるいは、これらの誘導体の混合物から選択される活性化剤を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
活性化剤は、アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハリド、アルミノキサン、トリアルキルボラン、トリス(アリール)ボラン、トリフェニルカルベニウムカチオンまたは三置換アンモニウムカチオンと結合した(アリール)ボラート、ジアルキル亜鉛から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
活性化剤は、メチルアルミノキサン(MAO)および/またはエチルアルミノキサン(EAO)から、および/または、改変されたアルミノキサン、例えば、改変メチルアルミノキサン(MMAO)から選択されるアルミノキサンである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
選択的オリゴマー化の工程は、脂肪族または環式の炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化溶媒、アセトニトリル、ジエチルエーテルおよび/またはテトラヒドロフランから選択される有機溶媒、および/またはイオン液溶媒の存在下に行われる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
選択的オリゴマー化の工程は、−40〜+250℃の温度および大気圧から10MPaにわたる圧力で行われる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
供給原料は、接触分解装置および/または水蒸気分解装置に由来する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
供給原料は、2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンも含有し、2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンの分離の工程が、選択的オリゴマー化の工程の前に、アルキル tert−ブチルエーテルを生じさせるエーテル化によって行われる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
エーテル化は、エーテル化触媒存在下に、炭化水素鎖が1〜10個の炭素原子を含むアルコールにより行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
選択的オリゴマー化によって得られる、分枝指数が1以下である、オリゴマーの2−ペンテンとの共オリゴマー化の工程が、酸触媒の存在下、選択的オリゴマー化の工程の後に行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
共オリゴマー化は、酸触媒の存在下、40〜600℃ の温度で、0.1〜10MPaの圧力で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
供給原料は、ペンタジエンおよび場合による痕跡量のアセチレン炭化水素も含み、ペンタジエンおよび任意の痕跡量のアセチレン炭化水素の分離工程が、選択的水素化によって、エーテル化による2−メチル−2−ブテンおよび2−メチル−1−ブテンの分離工程、および/または、選択的オリゴマー化の工程の前に行われる、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67614(P2013−67614A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−204090(P2012−204090)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】