説明

1つ以上の高分子電解質層をその上に有する繊維性物品及び、これを作製する方法

1つ以上の高分子電解質層でコーティングされた繊維を有する繊維性物品が開示される。繊維性物品を作製及び使用する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ以上の高分子電解質層を含む、繊維性物品に関する。本開示は、また、開示される繊維性物品の作製及び使用方法にも関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示の代表的な態様は、官能性の高い繊維性物品、及び官能性の高い繊維性物品の作製方法を特徴とする。本開示の代表的な態様はまた、様々な用途における、官能性の高い繊維性物品の使用方法も特徴とする。
【0003】
開示される繊維性物品の表面官能性は、繊維性基材の第1主表面、第2主表面、又は第1及び第2主表面の両方に沿って、繊維上に1つ以上の高分子電解質層を提供することによって、カスタマイズされ得る。例えば、本開示によって得られる繊維性物品は、主要外面の一方、又は両方の上に、全体的な正の表面電荷を、主要外面の一方、又は両方の上に、全体的な負の表面電荷を、あるいは繊維性物品の主要外面上に、正と負の表面電荷の組み合わせを有し得る。この電荷は、本明細書で開示される際、pH依存性であってもよい。他の代表的な実施形態では、本開示の繊維性物品は、一方の主要外面上に、全体的な正、又は負の表面電荷を有し、中性表面電荷、又は繊維性基材を形成するために使用される材料から生じる表面電荷を、有することがある。
【0004】
1つの代表的な実施形態では、繊維性物品は、繊維性基材の第1及び第2主表面に沿った繊維を含む、繊維性基材(例えば、不織布基材);(i)酸素プラズマ処理部、(ii)第1のダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、(i)及び(ii)の両方を含む、第1主表面に沿った、繊維の少なくとも一部の繊維表面処理部;並びに繊維表面処理部に結合される、アニオン性高分子電解質層を含む。アニオン性高分子電解質は、シランカップリング剤を含む結合層などの、結合層によって、繊維表面処理部(例えば、繊維表面上の酸素プラズマ処理部、又は繊維表面上の第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング)に結合され得る。繊維性物品は、望ましい官能性を繊維性物品に提供するために、1つ以上の追加の高分子電解質層を更に含み得る。
【0005】
別の代表的な実施形態では、繊維性物品は、繊維性基材の第1及び第2主表面に沿った繊維を含む繊維性基材(例えば、不織布材料);第1主表面、第2主表面、又は両方に沿った繊維の少なくとも一部をコーティングするダイヤモンド様ガラスフィルム;ダイヤモンド様ガラスフィルム上のシランカップリング層;並びにシランカップリング層上のアニオン性の高分子電解質層を含む。繊維性物品が、第1主表面上にダイヤモンド様ガラスフィルムコーティングを含む場合、繊維性物品は、繊維性物品の第2主表面上に1つ以上の同様の、又は異なるコーティング性質(coating chemistries)を更に含み得る。例えば、繊維性基材は、繊維性基材の、第1主表面上の第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、及び第2主表面上の第2ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティングを含み得る。
【0006】
他の実施形態では、繊維性基材は、第1主表面上のダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、及び繊維性基材の第2主表面上の1つ以上の追加の層、例えば接着剤層を含み得る。本開示の代表的な態様はまた、官能性の高い繊維性物品の作製の方法をも特徴としている。1つの代表的な実施形態では、繊維性物品を作製する方法は、第1及び第2主表面を有する繊維性基材(例えば、不織布基材)を、表面処理プロセスにかけ、第1主表面に沿った繊維の少なくとも一部にわたるように繊維表面処理部を提供する工程であって、繊維表面処理部が(i)酸素プラズマ処理部、(ii)ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は(i)及び(ii)の両方を含む、工程、並びに少なくとも1つの高分子電解質層を繊維表面処理部に結合する工程を含む。繊維性物品を作製する方法は、繊維性基材の第2主表面上、繊維表面処理部の外側表面、及び/又は高分子電解質層の外側表面上に、1つ以上の追加の層を提供する工程を更に含み得る。
【0007】
更なる代表的な実施形態では、繊維性物品を作製する方法は、繊維性基材(例えば、不織布基材)を、プラズマ堆積プロセスにかけて繊維性基材の繊維上にダイヤモンド様ガラスフィルムを提供する工程と、シランカップリング剤をダイヤモンド様ガラスフィルムに結合する工程と、少なくとも1つの高分子電解質層をシランカップリング剤に結合する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、シランカップリング剤は、プロトン化し得るアミノ基を含み、シランカップリング剤とその上に堆積されるアニオン性高分子電解質層との間の結合を強化する。更に、いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様ガラスフィルムは、シランカップリング剤を表面処理された繊維に結合する前に、酸素プラズマ処理で処理されてもよい。
【0008】
更なる代表的な実施形態では、高分子電解質でコーティングされた繊維性物品の作製方法は、繊維又はフィラメントをプラズマ堆積プロセスにかけ、繊維又はフィラメント上にダイヤモンド様ガラスフィルムを提供する工程と、続いて不織布、編み、又は製織プロセスによって、繊維又はフィラメントを布地基材に形成する工程と、を含む。ダイヤモンド様ガラスでコーティングされた繊維を布地に形成する前、又は後のいずれかにおいて、シランカップリング剤がダイヤモンド様ガラスフィルムに結合されてもよく、少なくとも1つの高分子電解質層が、シランカップリング剤に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、シランカップリング剤は、プロトン化し得るアミノ基を含み、シランカップリング剤とその上に堆積されるアニオン性高分子電解質層との間の結合を強化する。更に、いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様ガラスフィルムは、シランカップリング剤を表面処理された繊維に結合する前に、酸素プラズマ処理で処理されてもよい。
【0009】
開示される、繊維性物品を作製する方法は、繊維性物品の最も外側の表面上において望ましい表面化学を有する官能性繊維性物品の生産を可能にする。生じる繊維性物品の表面特性のために、繊維性物品は、様々な用途における有用性を有する。
【0010】
本開示の代表的な態様はまた、官能性の高い繊維性物品を、様々な用途において使用する方法をも特徴とする。例えば、繊維性物品は、濾過、細菌の検出、創傷治癒製品、薬物送達、バイオプロセス(タンパク質精製)、保護コーティングのための透過選択性材料、食料安全、医療用の防眩性及び防曇性などが挙げられるがこれらに限定されない用途での使用に好適である。
【0011】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の図面、発明を実施するための形態、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の官能化繊維性物品(例えば、不織布繊維)の内部の代表的な繊維の断面図。
【図2】本開示の官能化繊維性物品の内部の別の代表的な繊維の断面図。
【図3】本開示の官能化繊維性物品(例えば、不織布繊維)の内部の別の代表的な繊維の断面図。
【図4a】本開示の代表的な官能性不織布物品の図。
【図4b】図4aの官能性不織布物品の第1主表面に沿った代表的な繊維の断面図。
【図4c】図4aの官能性不織布物品の第2主表面に沿った代表的な繊維の断面図。
【図5a】本開示の代表的な官能性繊維性物品を形成する、代表的な方法。
【図5b】本開示の代表的な官能性繊維性物品を形成する、代表的な方法。
【図5c】本開示の代表的な官能性繊維性物品を形成する、代表的な方法。
【図6】実施例1のスパンボンドウェブサンプルの硫黄:窒素(S/N)原子比率をグラフ。
【図7】実施例1のスパンボンドウェブサンプルの表面上の、原子シリコン濃度の検出可能な量対この上に堆積される高分子電解質層の数を、グラフ。
【図8】実施例2のスパンボンドウェブサンプルの硫黄:窒素(S/N)原子比率対この上に堆積される高分子電解質層の数を、グラフ。
【図9】実施例2のスパンボンドウェブサンプルの表面上の、原子シリコン濃度の検出可能な量対この上に堆積される高分子電解質層の数を、グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、表面官能性の高い繊維性物品を対象とする。本開示の繊維性物品は、不織布、織布、又は編まれた基材、あるいはこれらの組み合わせ、例えばスティッチボンド基材、又は2つ以上の繊維を含む構造体の積層体、及び、繊維性基材の繊維上の1つ以上の高分子電解質層を含んで望ましい表面官能性を提供し得る。本開示(一斉置換)は、また、表面官能性の高い繊維性物品の作製方法、加えて、濾過用途が挙げられるがこれに限定されない様々な用途における繊維性物品の使用方法をも対象とする。
【0014】
本開示の繊維性物品の内部の代表的な繊維の断面図が、図1に示される。図1の代表的な繊維10は、繊維11、繊維11を覆うダイヤモンド様フィルムコーティング層12、及び結合層14によってダイヤモンド様フィルムコーティング層に結合される高分子電解質層15を含む。
【0015】
本開示の繊維性物品の内部の別の代表的な繊維の断面図が、図2に示される。図2の代表的な繊維20は、繊維11、繊維11を覆うダイヤモンド様フィルムコーティング層12、ダイヤモンド様フィルムコーティング層12を覆う酸素プラズマ処理部13、及び結合層14によって酸素プラズマ処理部13に結合される高分子電解質層15を含む。
【0016】
本開示の繊維性物品の内部の更に別の代表的な繊維の断面図が、図3に示される。図3の代表的な繊維30は、繊維11、繊維11を覆う酸素プラズマ処理部13、及び結合層14によって酸素プラズマ処理部13に結合される高分子電解質層15を含む。
【0017】
各図1〜3において、代表的な繊維10、20、及び30に表される各層(例えば、ダイヤモンド様フィルムコーティング層12、酸素プラズマ処理部13、結合層14、及び高分子電解質層15)は、所定の繊維の外側周辺部を完全に囲ってもよく、又は所定の繊維の外側周辺部の一部をコーティングするのみであってもよいことに留意すべきである。更に、代表的な繊維10、20、及び30上に表される、続いて適用される各層又は表面処理部(例えば、ダイヤモンド様フィルムコーティング層12を覆う酸素プラズマ処理部13、ダイヤモンド様フィルムコーティング層12又は酸素プラズマ処理部13を覆う結合層14、及び結合層14を覆う高分子電解質層15)は、以前に適用された層の全体表面領域を、又は以前に適用された層の全体表面の一部のみを被覆してもよいことに留意すべきである。
【0018】
加えて、図1〜3及び残りの図は、縮尺に従って描かれておらず、図中に示される層は、代表的な繊維10、20、及び30上の、層の厚さを有する様々なコーティング及び/又は表面処理部を表すために利用されるが、このようなコーティング及び/又は表面処理部は、ナノメートル規模の、僅かな原子層程度の小さな層の厚さを有し得ることに留意すべきである。
【0019】
図4aに示されるように、代表的な不織布物品40の代表的な不織布基材28は、第1主表面21、及び第1主表面21と反対側の第2主表面22を有する。繊維23は、第1主表面21に沿って延び、一方で繊維25は、第2主表面22に沿って延びる。以下に説明されるように、繊維23及び繊維25は、本質的に同一の表面処理部、異なる表面処理部、又は表面処理部及び非表面処理部の組み合わせ(例えば、繊維23は表面処理されているが、繊維25は表面処理されていない)を有するように表面処理されてもよい。図4b及び図4cは、代表的な不織布基材28の繊維23及び繊維25の可能な表面処理部を表す。
【0020】
図4bに示されるように、代表的な繊維23の長さLに沿って、表面処理部は、代表的な繊維23の少なくとも一部にわたるダイヤモンド様フィルムコーティング層12、結合層14によってダイヤモンド様コーティング層12に結合される高分子電解質層15を含む。この代表的な実施形態では、第2高分子電解質層16が、高分子電解質層15を覆うように示される。例えば、高分子電解質層15は、アニオン性高分子電解質層を含み得る一方で、第2高分子電解質層16は、カチオン性高分子電解質層を含む。更に、図4cに示されるように、代表的な繊維25の長さLに沿って、表面処理部は、代表的な繊維25の少なくとも一部にわたる、酸素プラズマ処理部13、結合層14によって酸素プラズマ処理部13に結合される高分子電解質層15を含む。
【0021】
本開示の表面処理の選択は、望ましい表面特性を有する、様々な官能性不織布基材の製造を可能にする。所定の繊維性基材の最も外側の表面(例えば、代表的な不織布基材28の主表面21及び22)は、以下で更に記載されるものと同様の、又は異なる表面特性(表面電荷)を有し得る。
【0022】
I.繊維性物品
図1〜4cに示されるように、本開示の繊維性物品は、多くの異なる構成要素、及び層/表面処理の構成を含み得る。可能な繊維性物品構成要素、及び繊維性物品構成の説明は以下に提供される。
【0023】
A.繊維性物品構成要素
本開示の繊維性物品は、以下の構成要素の1つ以上を含み得る。
【0024】
1.繊維性基材
本開示の繊維性物品は、繊維を含む基材、布地、又はウェブ(これらの用語は繊維性構成要素を表すために、交換可能に用いられる)の少なくとも1つを含む。繊維性基材は、天然繊維、合成繊維、又はこれらの組み合わせを含む。繊維性基材を形成するために好適な、代表的な天然繊維としては、綿繊維、ビスコース繊維、木材パルプ繊維、セルロース含有繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。代表的な合成繊維は、ポリプロピレン、及びポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレングリコールに基づくポリエステル、コハク酸及びアジピン酸などのジカルボン酸などのポリエステル;ポリアミド(ナイロン−6及びナイロン−6,6);ポリウレタン;ポリブテン;ポリ乳酸などの、ポリヒドロキシアルカノエートなどの、ポリハイドロキシ酸縮合ポリマー;ポリビニルアルコール;ポリフェニレンサルファイド;ポリサルフォン;液晶ポリマー;ポリエチレン−コ−ビニルアセテート;ポリアクリロニトリル;環状ポリオレフィン;又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されないポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない任意の繊維形成材料から形成され得る。1つの代表的な実施形態では、合成繊維は、ポリプロピレン繊維を含む。ガラス繊維、酸化アルミニウム繊維、セラミック繊維などの無機繊維、加えて無機繊維及び上述の有機繊維の組み合わせを、本明細書において記載される方法で処理することが有用であり得る。
【0025】
繊維性基材は、上述のポリマー、コポリマー、又は他の繊維形成材料のいずれか1つを含む、単一成分繊維を含んでもよい。単一成分繊維は、以下に記載される添加物を含んでもよいが、上述の繊維形成材料から選択される、単一の繊維形成材料を含む。単一成分繊維は、典型的には、少なくとも75重量%の上述の繊維形成材料のいずれか1つと、最大25重量%までの1つ以上の添加物を含む。望ましくは単一成分繊維は、上述の繊維形成材料のうちいずれか1つを少なくとも80重量%、より望ましくは少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、更に100重量%までも含み、ここで、重量はいずれも繊維の総重量を基準とする。
【0026】
繊維性基材はまた、(1)2つ以上の上述の繊維形成材料、及び(2)以下に記載の1つ以上の添加物から形成される多成分繊維も含み得る。本明細書で使用するとき、用語「多成分繊維」とは、2つ以上の繊維形成材料から形成される繊維を指して用いられる。好適な多成分繊維の配置には、シース−コア配置、並列配置、及び「アイランド−イン−ザ−シー」配置が挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
多成分繊維から形成される繊維性基材において、望ましくは、多成分繊維は、繊維の総重量に対して、(1)上述のポリマーのうち2つ以上を約75〜約99重量%、及び(2)1つ以上の追加の繊維形成用材料を約25〜約1重量%含む。
【0028】
各繊維性基材は、物品の特定の最終用途によって変化する、坪量を有し得る。典型的には、各繊維性基材は、平方メートル当たり約1000グラム(gsm)未満の坪量を有する。いくつかの実施形態では、各繊維性基材は、約1.0gsm〜約500gsmの坪量を有する。他の実施形態では、繊維性基材は、約10gsm〜約150gsmの坪量を有する。
【0029】
坪量と同様に、各繊維性基材は、物品の特定の最終用途によって変化する厚さを有し得る。典型的には、各繊維性基材は、約150ミリメートル(mm)未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、各繊維性基材は、約0.5mm〜約100mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、各繊維性基材は、約1.0mm〜約50mmの厚さを有する。
【0030】
ほとんどの実施形態において、繊維性基材の内部の繊維は、繊維性基材の内部において、実質的に均一に分布している。しかしながら、繊維性基材の内部において、不均一な繊維の分布を有することが望ましい、いくつかの実施形態が存在し得る。
【0031】
前記繊維形成用材料に加えて、様々な添加物を繊維溶融物に添加し、押し出して、添加物を繊維に組み込んでもよい。あるいは、繊維押出プロセスの後に、外側繊維表面の少なくとも一部上に所定の添加物を適用してもよい。典型的に、添加物の量は、繊維の総重量に対して、約25重量%未満、望ましくは約5.0重量%までである。好適な添加物には、充填剤、可塑剤、粘着付与剤、流動性調整剤、硬化速度遅延剤、接着促進剤(シラン、チタン酸塩など)、補助剤、衝撃改質剤、発泡性微小球、熱伝導性粒子、電気伝導性粒子、ケイ素、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズあるいはバブル、酸化防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、界面活性剤、難燃剤、及びフッ素重合体が挙げられるが、これらに限定されない。添加物のうち1つ以上を用いて、得られる繊維及び層の重量及び/又はコストを軽減してもよく、粘度を調整してもよく、又は繊維の熱的特性を変性してもよく、あるいは電気特性、光学特性、密度に関する特性、液体バリア若しくは接着剤の粘着性に関する特性を包含する、添加物の物理特性に由来する様々な物理特性活性を付与してもよい。
【0032】
繊維性基材は、任意の従来的な繊維形成プロセスを使用して形成し得る。好適な不織布繊維性基材としては、スパンボンドウェブ、スパンレースウェブ、メルトブローンウェブ、カードウェブ、ニードルパンチ布地、水流交絡不織布、一方向繊維層、メッシュ、又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。1つの望ましい実施形態において、繊維性基材は、ポリプロピレン不織布ウェブ、望ましくは、ポリプロピレンスパンボンドウェブを含む。
【0033】
本開示において有用な他の繊維性ウェブは、編み布地、及び織布を含む。これらの布地は、連続的なフィラメントに基づく糸を用いて形成されるか、又は短繊維から作製されてもよい。典型的には、編物には、ラシェル(raschel)及びミラノ(Milanese)などの縦編み、加えて丸編み、及び横編みが挙げられる。ジャージ編み、リブ編み、二重編み、及び裏編みなどの、任意の好適な横編みが使用され得る。パイル編みもまた使用され得る。前述の編み構造の任意の組み合わせが使用され得る。
【0034】
典型的には、織布は、2組の糸、即ち、縦糸と呼ばれる長さ方向の組、及び緯糸、又は横糸と呼ばれる横方向の組から作製される。製織プロセスにおいて、一般的に、縦糸は、横糸が挿入されてグリッド様構造をつくるに際して隆起及び下降する。平織り、綾織り、及び繻子織など、横糸が縦糸に対してどのように挿入されるかに基づき、異なる織り方が可能である。縦糸パイル織布もまた好適である。任意の好適な織布が使用され得る。
【0035】
2.ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング
本開示の繊維性物品は、少なくとも1つのダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングを更に含み得る。各ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングは、炭素、シリコン、水素、及び酸素を含む、高炭素ダイヤモンド様非晶質共有結合系を含む。各DLGフィルムコーティングは、例えば繊維性基材などの基材を高周波(「RF」)化学反応器内の駆動電極に配置することにより、イオン衝撃の状態で、炭素、シリコン、水素、及び酸素を含む、高密度のランダムな共有結合系を堆積することによって、つくられる。1つの特定の実施形態では、DLGフィルムコーティングは、強いイオン衝撃状態において、テトラメチルシラン及び酸素の混合物から堆積される。典型的には、DLGフィルムコーティングは、可視、及び紫外線領域(250〜800nm)において、極僅かな光学的吸収を示す。また、DLGフィルムコーティングは、通常、いくつかの他の種類の炭素フィルムと比較して、フレックスクラック(flex-cracking)耐性の改善を示し、セラミックス、ガラス、金属、ポリマー、及び天然繊維を含む多くの基材に対する優れた接着性を示す。
【0036】
各ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングは、典型的には、少なくとも約30原子%の炭素、少なくとも約25原子%のシリコン、及び45原子%以下の酸素を含む。各DLGフィルムコーティングは典型的には、約30〜50原子%の炭素を含む。いくつかの実施形態では、DLGフィルムコーティングは、約25〜約35原子%のシリコンを含む。他の実施形態では、DLGフィルムコーティングは、約20〜40原子%の酸素を含む。いくつかの望ましい実施形態では、DLGフィルムコーティングは、水素を除いた成分を基準に、約30〜約36原子%の炭素、約26原子%〜約32原子%のシリコン、及び約35原子%〜約41原子%の酸素を含む。本明細書で使用するとき、「水素を除いた成分を基準に」とは、薄いDLGフィルム(本明細書において組成比率は、原子%を指す)に大量の水素が存在する場合であってもこれを検出しない、電子分光化学分析法(ESCA)などの方法によって明らかにされる、材料の原子組成を指す。
【0037】
薄いDLGフィルムコーティングは、様々な光透過特性を有し得る。したがって、組成に依存して、薄いDLGフィルムコーティングは、様々な周波数において、向上した透過特性を有し得る。いくつかの実施形態では、薄いDLGフィルムコーティングは、約180〜約800ナノメートルの、1つ以上の波長の放射線に対して、少なくとも50%の透過性を有する。他の実施形態では、DLGフィルムコーティングは、約180〜約800ナノメートルの、1つ以上の波長の放射線に対して、70%より高い(より望ましくは、90%より高い)透過性を有する。
【0038】
各ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティングは、典型的には、約10マイクロメートル(μm)までの、繊維性基材の個々の繊維上のコーティング厚さを有する。より典型的には、各ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティングは、約1nm〜約10,000nmの範囲、望ましくは約1nm〜約100nmの範囲のコーティング厚さを有する。各ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティングは、望ましい特定の厚さ、典型的には1〜10μmで作製され得るが、任意に1マイクロメートル未満、又は10マイクロメートル超であり得る。
【0039】
DLGフィルムコーティングの厚さとは無関係に、DLGフィルムコーティングは典型的に、250nmにおいて約0.002未満、より典型的には、250nmにおいて約0.010未満の消光係数を有する。また、DLGフィルムコーティングは、通常、約1.4を超え、場合によって約1.7を超える屈折率を有する。特に、DLGフィルムコーティングは、低い水準の蛍光性を示し、典型的には非常に低く、場合によっては、DLGフィルムコーティングが蛍光を示さない程、低い。望ましくは、DLGフィルムコーティングは、純粋石英の蛍光性と、比較し得る程度の、ほぼ同等の、又は同等の蛍光性を有する。
【0040】
本開示における使用に好適な、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、及びこれを形成する方法は、米国特許第6,696,157号、同第6,881,538号、及び同第6,878,419号に開示され、それぞれの内容は、参考としてその全体を本明細書に組み込まれる。
【0041】
各ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングは、繊維性基材の主表面全体、繊維性基材の主表面全体より狭い範囲、又は繊維性基材の両表面の任意の部分若しくは全体に沿って延びて、繊維を被覆し得る。いくつかの実施形態では、繊維性基材の主表面に沿って延びて、繊維の一部をコーティングすることが望ましい場合がある。これらの実施形態では、繊維性基材の主表面の、部分的な被覆を提供するために、マスク層が使用され得る。繊維性基材の主表面の部分的な被覆は、望ましい模様、レタリング、又は繊維性基材の一方、若しくは両方の主表面に沿って延びる、繊維上のダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングの、他の任意のコーティング構成を提供し得る。
【0042】
3.酸素プラズマ処理
本開示の繊維性物品は、繊維性基材の主表面全体、繊維性基材の主表面全体より狭い範囲、繊維性基材の両主表面の任意の部分若しくは全体に沿って延びる、繊維上の酸素プラズマ処理を更に含み得る。酸素プラズマ処理は、ポリマー繊維、又はDLGフィルムコーティングの化学エッチング、及びその上の化学官能基の表面改質をもたらし得る。C−O、C=O、O−C=O、C−O−O、及びCOなどの様々な酸素官能基が、酸素プラズマ処理の結果として、繊維表面又はDLGフィルムコーティング上につくられる。ポリマー表面上の酸素プラズマ処理の効果の、詳細な説明は、C.M.チャン(Chan)、T.M.Ko、及びH.Hiraoko(Hiraoko)によるサーフィス・サイエンス・レポート(Surface Science Reports)24(1996年)第1〜54頁「プラズマ及び光子によるプラズマ表面改質」に提供され、この内容が、参考としてその全体を本明細書に組み込まれる。
【0043】
4.高分子電解質層
本開示の繊維性物品は、上記のダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部上に、少なくとも1つの高分子電解質層を更に含む。以下に更に記載されるように、典型的には、繊維性物品は、交互の高分子電解質層を含み、各高分子電解質層は、全体的な、正の又は負の電荷を有する、少なくとも1つのポリマー材料を含む。本明細書で使用するとき、高分子電解質は、多数のイオン性基を有するポリマーである。一般的に、高分子電解質は、1つの分子当たり、平均して少なくとも3つのイオン化性基を有し、好ましくは11以上のイオン化性基を有し、最も好ましくは少なくとも1つの分子当たり、平均して少なくとも20のイオン性基を有する。これは、ポリマー組成、及び重量平均分子量から決定され得る。このような高分子電解質は、四級アミンなどの、恒久的に帯電した基を含んでもよく、あるいは、多数の酸性、若しくは塩基性基、又はこれらの組み合わせを有するポリマーを含んでもよい。多数の酸性基を含む高分子電解質は、カルボン酸塩、ホスホネートスルフェート、スルホネート基、加えてこれらの組み合わせを含み得る。塩基性基を含む高分子電解質は、一級、二級、及び三級アミン、並びにこれらの組み合わせを含むことがあり、また、任意に四級アミン基と組み合わせ得ることが可能である。
【0044】
更に、いくつかの高分子電解質は、アニオン性(酸性)又はカチオン性(塩基性、又は四級アミン)基の両方を含んでもよく、したがって双極性イオンである。塩基性基の例としては、中和の際にプロトン化したアミノ基を形成する、一級、二級、又は三級アミンが挙げられるがこれらに限定されない。中和の際にアニオン性基を形成する酸性基の例としては、硫化水素(−OSOOH)、スルホン酸(−SOOH)、リン酸水素((−O)P(O)OH、若しくは−OP(O)(OH)、又は−OP(O)(OH)O)、ホスホン酸(−PO(OH)又は−PO(OH)O)及び、カルボン酸(−COH)が挙げられるがこれらに限定されない。これらの式中、Mは、正に帯電した対イオンであり、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、又はNR’(式中、各R’は、独立して1〜4個の炭素原子のアルキル基であり、任意にN、O、又はS原子と置換される)からなる群から選択される。
【0045】
得られる繊維性物品は、層間で最適な錯化が生じるpHにおける、全体的な正電荷、全体的な負電荷、又は両方を有する外側表面を有し得る。多酸、及び多塩基のポリマーは、pHに依存する電荷密度を有することが理解される。多酸、及び多塩基の高分子電解質に関し、ポリマーは、酸性基又は塩基性基の少なくとも一部が中和された場合に帯電する。これが生じるpHは、酸性基又は塩基性基のpKaに依存する。一般的に言って、基の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、及び最も好ましくは少なくとも90%が中和されることが好ましい。これは使用環境のpH、及び高分子電解質の酸性基、又は塩基性基のpKaから、容易に決定され得る。全体的な正電荷を有する所定の高分子電解質を形成するための、代表的な合成及び天然材料としては、ポリ(アリルアミン)(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムハロゲン化物(例えば塩化物PDDAC)、直鎖及び分岐状ポリ(エチレンイミン)、ポリアミノアミド、四級化された誘導体などの四級アンモニウム天然ポリマー誘導体、例えばセルロース、グアー及びその他のガム、多塩基性多糖類、例えばキトサン、正味塩基性タンパク質、例えばゼラチン、ペクチンなどを含むカチオン性高分子電解質が挙げられるがこれらに限定されない。他の多くの好適な四級アンモニウムポリマーが、本開示での使用に好適であり、コスメティック・ベンチ・リファレンス(Cosmetic Bench Reference)などの参考文献において、「ポリクオタニウム」として知られるものを含み、文献の内容は、本明細書において参考として組み込まれる。
【0046】
合成高分子電解質粒子の分子量は、典型的には、約1,000〜5,000,000グラム/モル、より望ましくは約5,000〜約1,000,000グラム/モルの範囲である。自然発生的な高分子電解質粒子では、分子量は、10,000,000グラム/モル程度であり得る。
【0047】
全体的な負電荷を有する、所定の高分子電解質層を形成する代表的な合成及び天然材料としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのホモポリマー又はコポリマー(アクリル酸は、1つの好ましいモノマーである)が挙げられるがこれらに限定されない。ポリマー樹脂はまた、カルボン酸を含むモノマーと、重合可能な他のコモノマー、例えばメチルビニルエーテル、低級アルキル(メタ)アクリレートなどを含み得る。代表的なポリマーには、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、及びポリ(アネトールスルホン酸)が挙げられるがこれらに限定されない。天然及び変性天然アニオン性ポリマーがまた、本開示での使用に好適であり、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、硫酸デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルキトサン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプンデキストラン、アルギン酸、ヘパリン、などの多糖類を含むカルボン酸、DNA、RNAなどを含む。アルカリ土類金属、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの一価、又は多価金属の塩を含む、これらのポリマーの様々な塩が使用され得る。
【0048】
合成高分子電解質粒子の分子量は、典型的には1,000〜5,000,000グラム/モル、好ましくは約5,000〜約1,000,000グラム/モルの範囲である。自然発生的な高分子電解質粒子に関しては、これらの分子量は、10,000,0000グラム/モル程度の高さであり得る。
【0049】
他の非イオン性ポリマー又は小さい粒子を、1つ以上の高分子電解質層に取り込み、その後の溶解速度の制御を助けることがまた、望ましいことがある。したがって、例えば、高分子電解質溶液に加えられる天然、又は合成非イオン性ポリマーとしては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)などの水溶性ポリアクリレート、メチルセルロース、デキストラン、グリセロール、ヒドロキシプロピルデキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、ポリプロピレングリコール、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、変性グアー及びその他のガムなどのポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
所定の高分子電解質層は、典型的には約10重量%までの、1つ以上のポリアニオン又はポリカチオン、及び約90重量%以上の水を含む、水溶液の形態で適用され得る。典型的には、水溶液は約0.01〜約10.0重量%の1つ以上のポリアニオン、又はポリカチオン、及び約99.99〜約90重量%の水を含む。他の実施形態では、水溶液は約0.01〜約1.0重量%の1つ以上のポリアニオン、又はポリカチオン、及び約99.99〜約99.0重量%の水を含む。
【0051】
上述のダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部のように、所定の高分子電解質層が、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の全体表面、又はダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の全体表面より狭い範囲を被覆してもよい。いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の一部のみを被覆することが望ましい場合がある。これらの実施形態では、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の部分的な被覆を提供するためにマスク層が使用され得る。高分子電解質層による、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の部分的な被覆は、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)上に望ましい模様、レタリング、又は他の任意のコーティング構成を提供し得る。
【0052】
5.活性成分
本開示の繊維性物品は、上記の高分子電解質層に組み込まれる、1つ以上の活性成分を更に含み得る。活性成分としては、銀含有化合物、銅含有化合物、及びヨウ素含有化合物などの、抗菌性材料が挙げられるがこれらに限定されない。
【0053】
存在する場合、上述の高分子電解質水溶液を形成し、これに少なくとも1つの活性化成分をブレンドすることにより、1つ以上の活性成分が、所与の高分子電解質層に組み込まれ得る。得られる水溶液は、典型的には約0.01〜約10.0重量%の1つ以上のポリアニオン、又はポリカチオン、約99.99〜約90重量%の水、及び約0.001〜約2.0重量%の1つ以上の活性成分を含む。あるいは、1つ以上の活性成分を含む水溶液が、1つ以上の上述の高分子電解質層の形成の後に、繊維性物品に適用され得る。この実施形態では、得られる水溶液は、典型的には約99.999%〜約98重量%の水、及び約0.001〜約2.0重量%の1つ以上の活性成分を含む。
【0054】
6.結合層
本開示の繊維性物品は、1つ以上の結合層を含み、所定の高分子電解質層のダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング又は酸素プラズマ処理部への結合を強化してもよい。好適な結合層は、(i)ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部、及び(ii)高分子電解質層に結合することのできる任意の結合組成物を含む。
【0055】
1つの代表的な実施形態では、結合層は、シランカップリング剤を含む。好適なシランカップリング剤としては、シラン含有アミノ基、メルカプト基、又はヒドロキシル基が挙げられるがこれらに限定されない。代表的なアミノシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−アミノプロピルトリス(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)シラン;3−アミノプロピルトリイソプロペニルオキシ−シラン;3−アミノプロピルトリ(ブタノンオキシモ)シラン;4−アミノブチルトリエトキシシラン;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリ(2−エチルヘキソキシ)シラン;3−アミノプロピルジメチルエトキシ−シラン;3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン;及び3−アミノプロピルフェニールジエトキシシランが挙げられるがこれらに限定されない。代表的なメルカプトシランとしては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS)が挙げられるがこれらに限定されない。代表的なヒドロキシシランとしては、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピル−トリエトキシシランが挙げられるがこれらに限定されない。1つの望ましい実施形態では、結合層は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、又は3−アミノ−プロピルトリメトキシシランを含む。
【0056】
結合層として使用されるとき、シランカップリング剤は、典型的には約10重量%までの1つ以上のシランカップリング剤、及び典型的には約90重量%以上の水又はアルコールを含む水溶液の形態で、結合層として適用され得る。典型的には、水溶液は、約0.5〜約10.0重量%の1つ以上のシランカップリング剤、及び約99.5〜約90重量%の水又はアルコールを含む。
【0057】
ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)と同様に、結合層は、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の全体表面、又はダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の全体表面より狭い範囲を被覆し得る。いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の一部のみを被覆することが望ましい場合がある。これらの実施形態では、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の部分的な被覆を提供するためにマスク層が使用され得る。ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)の部分的な被覆は、望ましい模様、レタリング、又はダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング(又は酸素プラズマ処理部)上の他の任意のコーティング構成を提供し得る。
【0058】
1つの代表的な実施形態では、本開示の繊維性物品は、繊維性基材の第1及び第2主表面に沿った繊維を含む、繊維性基材(例えば、不織布基材);第1主表面、第2主表面、又は両方に沿った繊維の少なくとも一部をコーティングする第1ダイヤモンド様ガラスフィルム;第1ダイヤモンド様ガラスフィルム上の第1シランカップリング層;及び第1シランカップリング層上のアニオン性高分子電解質層を含む。1つ以上のカチオン性高分子電解質層などの追加の層、及び追加のアニオン性高分子電解質層が、繊維性基材上に提供され得る。例えば、1つの代表的な実施形態では、繊維性物品は、少なくとも1つのアニオン性高分子電解質層上に少なくとも1つのカチオン性高分子電解質層を更に含んでもよい。1つの望ましい実施形態では、アニオン性高分子電解質層は、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩を含み、カチオン性高分子電解質層は、ポリ(アリルアミン塩酸塩)を含む。
【0059】
更なる実施形態では、シランカップリング層は、アミノシランカップリング剤を含み、シランカップリング層は、酸性溶液に晒されて、シランカップリング層上のアミノ基をプロトン化する。プロトン化されたアミノ基は、次に適用されるポリアニオン層、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩を含む層などへの結合を強化する。
【0060】
7.追加の任意の層
本開示の繊維物品は、上述の繊維性基材、1つ以上のダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、1つ以上の酸素プラズマ処理部、1つ以上の結合層、及び1つ以上の高分子電解質層と組み合わせて、1つ以上の追加の層を更に含み得る。1つ以上の追加の層が、繊維性基材の外側表面、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティングの外側表面、酸素プラズマ処理部の外側表面、結合層の外側表面、高分子電解質層の外側表面、又はこれらの任意の組み合わせの少なくとも一部にわたって存在し得る。
【0061】
好適な追加の層としては、色を含む層(例えば、印刷層)(色は同様に、任意に高分子電解質層の1つに加えてもよい);接着剤層(例えば、感圧性接着剤(PSA)層、熱活性化可能な層、又はこれらの組み合わせ);フォーム;ゲル、粒子の層;フォイル層;フィルム;他の繊維を含む層(例えば、織布、編み、又は不織布層);膜(即ち、透析膜、逆浸透膜などの、透過性を調節したフィルム);網;メッシュ;又はこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0062】
B.繊維性物品の構成
その最も単純な形態では、本開示の繊維性物品は、繊維性基材の第1主表面及び第2主表面に沿った繊維を含む、繊維性基材;第1主表面に沿った繊維の少なくとも一部上の、ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング及び/又は酸素プラズマ処理部;並びに、第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング及び/又は酸素プラズマ処理部に結合されるアニオン性高分子電解質層を含む。しかしながら、図4a〜cに示されるように、繊維性物品は、多くの可能な物品構成を生じる様々な表面処理部及び/又は追加の層を含み得る。いくつかの代表的な物品構成の説明が以下に提供される。
【0063】
1.一方の主表面上での、DLGフィルムコーティング及び/又は酸素プラズマ処理部
本開示のいくつかの実施形態では、繊維性物品は、繊維性基材の一方の主表面上に表面処理部を含み、表面処理部は、第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、及び/又は酸素プラズマ処理部、結合層、並びに1つ以上の高分子電解質層を含む。1つの代表的な実施形態では、第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に結合される第1高分子電解質層は、アニオン性高分子電解質層を含む。好ましくは、第1アニオン性高分子電解質層は、第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部上のシランカップリング層によって、第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に結合される。第1アニオン性高分子電解質層は、得られる繊維性物品に、全体的な負の表面電荷をもたらす。
【0064】
繊維性物品は、第1アニオン性高分子電解質層上に第1カチオン性高分子電解質層を更に含み、得られる繊維性物品に全体的な正の表面電荷をもたらす。いくつかの実施形態では、繊維性物品上に、多くのアニオン性及びカチオン性が交互の高分子電解質層をもたらし、繊維性物品の主表面上に多相構成体を構築することが望ましい場合がある。
【0065】
アニオン性及びカチオン性が交互の高分子電解質層を形成するために、上述のポリカチオン、及びポリアニオンのいずれかが使用され得るが、1つの望ましい実施形態では、繊維性物品は、交互の、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩を含むアニオン性高分子電解質層、及びポリ(アリルアミン塩酸塩)を含むカチオン性高分子電解質層を含む。得られる繊維性物品は、最も外側のカチオン性高分子電解質層、又は最も外側のアニオン性高分子電解質層を有し得る。
【0066】
繊維性基材が、一方の主表面上にのみダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング及び/又は酸素プラズマ処理部を含む実施形態では、もう一方の主表面がコーティングされないか、又は上述のものなどの、任意の数の追加の層を含み得る。
【0067】
2.両主表面上のDLGフィルムコーティング及び/又は酸素プラズマ処理部
本開示の他の実施形態では、繊維性物品は、繊維性基材の両主表面上にダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、及び/又は酸素プラズマ処理部を含む。第1ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、及び/又は第1酸素プラズマ処理部、第1結合層、及び第1結合層上の1つ以上の高分子電解質層に加え、繊維性物品は、繊維性基材の第2主表面に沿った繊維の少なくとも一部上の、第2ダイヤモンド様ガラスフィルム、及び/又は第2酸素プラズマ処理部;第2ダイヤモンド様ガラスフィルム、又は第2酸素プラズマ処理部上に堆積される第2結合層(例えば、シラン層);並びに第2結合層上の1つ以上の高分子電解質を更に含む。第2結合層上の1つ以上の高分子電解質層は、アニオン性高分子電解質層、又はアニオン性高分子電解質層とカチオン性高分子電解質層との両方を含み得る。
【0068】
繊維性基材の第1主表面上の第1表面処理部は、繊維性基材の第2主表面上の第2表面処理部と、同様であるか、又は異なっていてもよい。1つの代表的な実施形態では、繊維性基材の第1主表面に沿った繊維は、第1の化学的性質の層でコーティングされ、第2主表面に沿った繊維は、第2の化学的性質の層によってコーティングされ、第1の化学的性質は、第2の化学的性質とは異なる。
【0069】
II.繊維性物品の作製方法
本開示は、官能性の高い繊維性物品の作製方法を、更に対象とする。1つの代表的な実施形態では、繊維性物品の作製方法は、第1及び第2主表面を有する繊維性基材を、表面処理プロセスにかけ、第1主表面に沿った繊維の少なくとも一部にわたって繊維表面処理を提供する工程であって、繊維表面処理部が(i)酸素プラズマ処理部(ii)ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は(i)及び(ii)の両方を含む、工程と、少なくとも1つの高分子電解質を繊維表面処理部に結合する工程と、を含む。繊維性物品の作製方法は、望ましい表面化学を有する繊維性物品を提供するために、1つ以上の追加の工程を更に含み得る。可能な方法工程の説明が以下に提供される。
【0070】
A.繊維性基材の形成
上述のように、本開示の使用に好適な繊維性基材は、任意の従来的な布地形成プロセスを使用して、形成され得る。好適なプロセス工程は、従来的な、不織布、編物、及び織布の形成に使用される、任意のプロセス工程を含む。不織布基材を形成するための好適なプロセス工程としては、スパンボンドウェブ、スパンレースウェブ、メルトブローンウェブ、カードウェブ、ニードルパンチ布地、水流交絡不織布、一方向繊維層、メッシュ、又はこれらの組み合わせを形成するためのプロセス工程が挙げられるがこれらに限定されない。編み基材を形成するための好適なプロセス工程としては、縦編み、横編み、又は他の任意の従来的な編物を形成するためのプロセス工程が挙げられるがこれらに限定されない。織布基材を形成するための好適なプロセス工程としては、製織のためのプロセス工程が挙げられるが、これに限定されない。
【0071】
更に、所定の繊維性基材を形成するための、上述の繊維のいずれかが、繊維性基材に形成される前に、1つ以上の上記のコーティング材料で処理され得ることに留意すべきである。例えば、繊維は、上述の従来的な繊維形成工程(例えば、カード工程、スティッチボンド工程、編み工程、及び製織工程)のいずれかを使用して、不織布、編物、織布基材に形成される前に、DLGコーティング処理、酸素プラズマ処理、シラン処理、高分子電解質処理、又はこれらの任意の組み合わせにかけられてもよい。
【0072】
B.DLGフィルムコーティングのプラズマ堆積
上述のように、本開示での使用に好適なダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング、及びこれを形成する方法は、米国特許第6,696,157号、同第6,881,538号、及び同第6,878,419号に開示され、それぞれの内容は、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
この方法工程は、典型的には、真空排気可能な反応チャンバ内に2つの電極を有する、容量的に結合された反応器システムを提供する工程を含む。チャンバは部分的に真空排気され、高周波電力が電極の一方に適用される。炭素及びシリコン含有供給源が電極の間に取り込まれ、電極の近傍に反応種を含むプラズマを形成し、また、少なくとも一方の電極の近傍にイオンシースを形成する。繊維性基材は、イオンシースの内部に配置されるか、又は電極の近くを通過して、反応種に曝露され、繊維性基材上にダイヤモンド様ガラスを形成する。状態は、結果として繊維性基材の繊維上の薄いフィルムとなり得、これは例えば、水素を除いた成分を基準に少なくとも30原子%の炭素、少なくとも25原子%のシリコン、及び45原子%未満の酸素を有するダイヤモンド様構造を含む。薄いフィルムは、チャンバ内での滞留時間を調節することにより、又は多数の堆積工程を管理することにより、特定の厚さに作製され得る。
【0074】
プラズマ反応器内の種は、繊維性基材表面(例えば、繊維表面)上で、共有結合を形成し、繊維性基材の表面上で非晶質のダイヤモンド様ガラスフィルムを生じる。複数の繊維性基材が、所定のプロセス工程の間に、DLGで、同時にコーティングされ得る。繊維性基材は、ダイヤモンド様フィルム堆積を生成する状態を維持することのできる、真空排気可能なチャンバ内部の入れ物又は容器に保持され得る。あるいは、繊維性基材に、真空チャンバを通過させることもできる。即ち、チャンバは、なかでも、圧力、さまざまな不活性及び反応性気体流、駆動電極に供給される電圧、イオンシース全体の電界強度、反応種を含むプラズマの形成、イオン衝撃の強度並びに、ダイヤモンド様ガラスフィルムの反応種からの溶着速度の制御を可能にする環境を提供する。
【0075】
堆積工程の前に、所要の程度までチャンバを真空排気し、空気及びあらゆる不純物を除去する。不活性ガス(例えば、アルゴン)をチャンバ内に通気し、圧力を変えてもよい。一度繊維性基材がチャンバ内に配置され、チャンバが真空排気されると、炭素及びシリコンを含有し、望ましくは炭素含有ガスを含む物質、並びに、任意に追加の構成成分(単数、又は複数)を堆積し得る物質が、チャンバ内に導入され、電界の適用に際して、ダイヤモンド様ガラスフィルムを堆積するプラズマを形成する。ダイヤモンド様フィルム堆積における圧力及び温度(典型的には0.13〜133Pa(0.001〜1.0トル)(本明細書で示される全ての圧力は、ゲージ圧力である)、及び50℃未満)では、炭素及びシリコンを含有する物質、及び任意の追加の構成成分が得られる場合がある物質は、蒸気の形態にある。
【0076】
水素がダイヤモンド様ガラスフィルムに含まれる場合、炭化水素が、炭素及び水素の供給源として特に望ましい。好適な炭化水素としては、アセチレン、メタン、ブタジエン、ベンゼン、メチルシクロペンタジエン、ペンタジエン、スチレン、ナフタレン、アズレン、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。シリコンの供給源としては、SiH、Si、テトラメチルシラン、及びヘキサメチルジシロキサンなどのシランが挙げられるがこれらに限定されない。任意の追加の構成成分を含有する気体もまた、反応チャンバに導入され得る。低いイオン化ポテンシャル、即ち、10電子ボルト(eV)以下を有する気体が、典型的には、DLGフィルムコーティングの効果的な堆積に使用される。水素、窒素、酸素、フッ素、硫黄、チタン、又は銅の内の1つ以上を含む、追加の任意のダイヤモンド様ガラスフィルム構成成分が、堆積プロセス中に、蒸気の形態で反応チャンバに導入される。典型的には、追加の構成成分の供給源が、固体、又は液体である場合でも、チャンバ内の減少した圧力が、供給源を揮発させる。あるいは、追加の構成要素は、不活性ガス流に同伴され得る。追加の構成成分は、炭素又は炭化水素を含有する気体がプラズマを維持している間にチャンバに加えられ得る、並びに/あるいは炭素及び炭化水素を含有する気体の流れが止まった後に、チャンバに加えられ得る。
【0077】
水素の供給源としては、炭化水素ガス、及び水素分子(H)が挙げられる。フッ素の供給源としては、4フッ化炭素(CF)、6フッ化硫黄(SF)、ペルフルオロブタン(C10)、C、C、及びC10などの化合物が挙げられる。酸素の供給源としては、酸素ガス(O)、過酸化水素(H)、水(HO)及びオゾン(O)が挙げられる。窒素の供給源としては窒素ガス(N)、アンモニア(NH)、及びヒドラジン(N)が挙げられる。硫黄の供給源としては、6フッ化硫黄(SF)、二酸化硫黄(SO)、及び硫化水素(HS)が挙げられる。銅の供給源としては、銅アセチルアセトナートが挙げられる。チタンの供給源としては、4塩化チタンなどのハロゲン化チタンが挙げられる。
【0078】
イオンシースは、イオン衝撃を得るために必要であり、次にこれは、緊密に詰まったダイヤモンド様フィルムを生成するために必要である。イオンシースの形成の説明は、ブライアン・チャップマン(Brian Chapman)の「グロー放電プロセス(Glow Discharge Processes)」153(ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1980)に見出され、その内容は、参考として全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
電極は、同じ寸法でも異なった寸法でもよい。電極が異なった寸法である場合、小さい方の電極はより大きいイオンシースを持つ(接地電極又は駆動電極を問わず)。この種の構成を「非対照的」平行プレート反応器と呼ぶ。非対照的構成により、小さい方の電極周囲のイオンシース全体に、より高い電位が生じる。繊維性基材は、シース内部で生じるイオン衝撃効果から利益を得るためイオンシースの内部に位置するのが望ましいため、一方の電極上に大きなイオンシースを構築することが望ましい。
【0080】
望ましい電極の表面積の比は、約2:1〜約4:1、及びより望ましくは約3:1〜約4:1である。より小さな電極上のイオンシースは、比の増加と共に増加するが、約4:1を超える比においては、追加的な利益はほとんど達成されない。反応チャンバ自体は、電極として作用することができる。望ましい構成では、駆動電極の2〜3倍の表面積を有する接地反応チャンバ内に、駆動電極を備える。
【0081】
RF発生されたプラズマ内で、エネルギーは電子を通じてプラズマへと結合する。プラズマは、電極間の電荷キャリアとして作用する。プラズマは、反応チャンバ全体に充満でき、典型的には着色した雲として目に見える。イオンシースは、1つ又は両方の電極周囲の暗い領域として現れる。RFエネルギーを使用する平衡プレート反応器では、適用される周波数は、0.001〜100MHzの範囲内、望ましくは約13.56MHz、又はこれらの整数倍であるべきである。このRF電力は、チャンバ内のガス(単数又は複数)からプラズマをつくる。RF電源は、電力供給装置と伝送回路及びプラズマ負荷とのインピーダンス(RF電力に効果的に結合するように、通常は約50オームである)を整合させるよう働く回路を介して、駆動電極に接続された13.56MHz発振器などのRF発生装置であることができる。したがって、これは整合伝送網と呼ばれる。
【0082】
電極周囲のイオンシースは、プラズマに対して電極の負の自己バイアスをもたらす。非対照的構成では、負の自己バイアス電圧は大きい方の電極において無視できるものであり、小さい方の電極における負のバイアスは、典型的には約100〜約2000ボルトの範囲である。RF電源からの許容可能な周波数の範囲は、小さい方の電極において、大きな負の直流(DC)自己バイアスを形成するほどに大きくてよく、得られるプラズマにDLGフィルムの堆積にとって効率の悪い定在波を生じるほど大きくてはならない。
【0083】
平面的な繊維性基材では、高密度のダイヤモンド様ガラス薄フィルムは通常、繊維性基材を、接地電極より小さく作製される、駆動電極と直接接触させることにより、平行プレート反応器内で達成される。これは、電圧電極と繊維性基材との間の容量結合により、繊維性基材が電極として機能することを可能にする。これは、M.M.デーヴィッド(David)ら、「プラズマ堆積及びダイヤモンド様炭素フィルムのエッチング」ALChEジャーナル、37巻、第3号、367頁(1991)に記載され、これらの内容は参考として全体が本明細書に組み込まれる。細長い繊維性基材の場合、繊維性基材は、チャンバを通じて任意により連続的に引っ張られ、最大のイオンシースを有する電極の近傍を通過し、一方で、連続的なRF場が電極に配置され、十分な炭素含有ガスがチャンバ内に存在する。2つの粗引きポンプにより、チャンバの入口及び出口で、真空が維持される。細長い繊維性基材上での、及び実質的に繊維性基材上のみでの連続的なDLGフィルムコーティングが結果として生じる。
【0084】
1つの代表的な実施形態では、コーティングされる繊維性基材(例えば、不織布基材)は、第1及び第2主表面を有し、DLGフィルム堆積工程は、繊維性基材の第1主表面、第2主表面、又は第1及び第2主表面両方の上にダイヤモンド様ガラスフィルムをもたらす。1つの望ましい実施形態では、堆積工程は、プラズマ堆積プロセスにより、繊維性基材の繊維にシリコン含有ダイヤモンド様フィルムを堆積する工程、及び続いて酸素プラズマ処理においてシリコン含有ダイヤモンド様フィルムを処理してシラノール基をダイヤモンド様フィルムの表面上に形成する工程を含む。例えば、以下の実施例を参照されたい。
【0085】
C.DLGフィルムコーティング又は繊維表面の酸素プラズマ処理
上述のように、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング又は繊維表面は、酸素プラズマ処理にかけられてもよい。酸素プラズマ処理は、DLGフィルムコーティングのプラズマ堆積に関して上述されたものと同様の方法で行われ得るが、ただし上記の酸素供給源のみが、ダイヤモンド様ガラス(DLG)フィルムコーティング表面、又は繊維表面を処理するために使用される。例えば、以下に記載される代表的な酸素プラズマ処理を参照されたい。
【0086】
D.高分子電解質の結合
繊維性物品の形成方法は、少なくとも1つの高分子電解質層を、ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング又は酸素プラズマ処理部に結合する工程を更に含む。典型的には、高分子電解質層を、ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に結合する工程は、結合層をダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に適用する工程、及び結合層を高分子電解質層でオーバーコーティングする工程を含む。1つの代表的な実施形態では、結合工程は、シランカップリング剤を、ダイヤモンド様ガラスフィルム、又は酸素プラズマ処理部にカップリングする工程、及びシランカップリング剤を少なくとも1つの高分子電解質層でオーバーコーティングする工程を含む。
【0087】
結合層をダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に適用する工程は、典型的に、1つ以上の結合剤を含む水溶液を、ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部に結合する工程を含む。例えば、1つ以上のシランカップリング剤を含む水溶液が形成され、次に任意の従来的なコーティング方法を使用して、ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、又は酸素プラズマ処理部上にコーティングされ得る。好適なコーティング方法としては、ディップコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティングなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
結合剤が、アミノシランを含む場合、結合工程は、シランカップリング剤を(i)負電荷及び低下させたpHを有する高分子電解質層、又は(ii)低下したpHを有する水溶液、で処理することにより、シランカップリング剤のアミノ基をプロトン化する工程を更に含み得る。pHの範囲は、0〜約5、より好ましくは0〜約3であり得る。アミノシランは、約0.02Mまでの酸モル濃度を有し、並びに塩酸が挙げられるがこれに限定されない任意の酸を含む、酸性溶液を適用することによって、プロトン化され得る。
【0089】
望ましい結合層が、ダイヤモンド様ガラスフィルム、又は酸素プラズマ処理部に一度適用されると、高分子電解質層が、結合層にわたって適用され得る。1つの代表的な実施形態では、結合層は、結合層の外側表面に沿って正に荷電された部分を含み、その上に適用された第1高分子電解質層は、上述のポリアニオンの少なくとも1つを含むアニオン性高分子電解質層などの、アニオン性高分子電解質層を含む。他の代表的な実施形態では、結合層は、結合層の外側表面に沿って負に荷電された部分を含み、その上に適用された第1高分子電解質層は、上述のポリカチオンの少なくとも1つを含むカチオン性高分子電解質層などの、カチオン性高分子電解質層を含む。
【0090】
高分子電解質を結合層に適用する工程は、典型的には、1つ以上のポリアニオン、又はポリカチオンを含む水溶液を、1つ以上の任意の活性成分と共に、結合層に適用する工程を含む。例えば、1つ以上のポリアニオン及び1つ以上の任意の活性成分を含む水溶液が形成され、次に結合層のコーティングに関して上述されたものなどの、任意の従来的なコーティング方法を使用して、結合層上にコーティングされ得る。
【0091】
1つの代表的な実施形態では、少なくとも1つの高分子電解質層が、結合層(例えば、プロトン化されたアミノシラン層)上に適用され、少なくとも1つの高分子電解質層は(i)アニオン性高分子電解質層、又は(ii)アニオン性高分子電解質層及び続いて適用されるカチオン性高分子電解質層を含む。更なる代表的な実施形態では、少なくとも1つの高分子電解質層が、結合層上に適用され、少なくとも1つの高分子電解質層が、交互のアニオン性及びカチオン性高分子電解質層を含んで、最も外側のアニオン性高分子電解質層、最も外側のカチオン性高分子電解質層、又は両方を繊維性基材の第1及び第2主表面に沿って提供し、高分子電解質層のいずれか、又は全てが、上述の任意の活性成分の1つ以上を含む。
【0092】
E.追加の層の結合
繊維性物品の形成方法は、1つ以上の追加の層を、繊維性基材、又はその上の層に結合する工程を更に含んでもよい。追加の層を繊維性基材、又はその上の層に結合するために、上述のものなどのコーティング工程、積層工程、押出し成形工程などが挙げられるがこれらに限定されない任意の従来的な方法が使用され得る。上述のDLGフィルム堆積工程、酸素プラズマ処理工程、及び/又は高分子電解質適用工程の前又は後に、1つ以上の追加の層が、繊維性基材に結合され得ることに留意すべきである。
【0093】
III.繊維性物品の使用方法
繊維性物品は、濾過、細菌の検出、創傷治癒製品、薬物送達、バイオプロセス(タンパク質精製)、保護コーティングのための透過選択性材料、食料安全、医療用の防眩性及び防曇性などが挙げられるがこれらに限定されない様々な用途に使用され得る。
【実施例】
【0094】
本発明は、次の実施例の方法により説明され得る。
【0095】
材料
スパンボンドポリプロピレン不織布ウェブ−FINA社(テキサス州ヒューストン)からFINA 3860 PPの商品名で市販される、ポリプロピレンを使用して、3M社から提供される。
【0096】
BBA・ノンウブンズ社(BBA Nonwovens)(ウィスコンシン州、グリーンベイ(Green Bay))から、WEBRIL(登録商標)拭き取り布の商品名で市販されている、100%カード綿不織布ウェブ、142〜951型、坪量258gsm。
【0097】
ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム酸(PSS)−アルファエイサー(Alfa Aesar)社(マサチューセッツ州ウォードヒル(Ward Hill))から市販される、70,000の分子量(MW)を有するポリアニオン溶液。
【0098】
ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)−アルファエイサー(Alfa Aesar)社(マサチューセッツ州ウォードヒル(Ward Hill))から市販される、60,000の分子量(MW)を有するポリアニオン溶液。
【0099】
ジェレスト(そのまま使用される、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン−使用されたアミノシランは、98重量%の水の内に、2重量%の(3−アミノプロピル)トリメトキシシランを含む溶液であった。
【0100】
ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(PHMB)−ICIアメリカ(ICI Americas)社(ニュージャージー州ブリッジウォーター(Bridgewater))から、コスモシル(cosmocil)(登録商標)CQの商品名で市販され、そのまま使用される、抗菌特性を有するポリカチオン溶液。
【0101】
ポビドンヨード−インターナショナル・スペシャルティー・プロダクツ(International Specialty Products)社(ニュージャージー州ウエイン(Wayne))から市販され、そのまま使用される、抗菌及び殺菌特性を有する溶液中のポリカチオン。
【0102】
アルギン酸ナトリウム−インターナショナル・スペシャルティー・プロダクツ(International Specialty Products)社からマヌコール(Manucol)(商標)LFとして市販され、そのまま使用される、溶液中のポリアニオン。
【0103】
精製水−18.2MΩ−cmの固有抵抗を有する、ミリポアダイレクトQ(Millipore Direct Q)装置を使用して生成された水。
【0104】
テトラメチルシラン−シグマ・アルドリッチケミカル(Sigma-Aldrich Chemicals)(ミズーリ州、セント・ルイス(St.Louis))から市販される、テトラメチルシラン、99.9%NMR等級。
【0105】
酸素−ペンシルバニア州プラムステッドビル(Plumsteadville)のスコット・スペシャリティ・ガス(Scott Specialty Gases)社から市販されている、酸素99.99%UHP等級。
【0106】
試験方法:
X線光電子分光法(XPS)
X線光電子分光法(XPS)が、コーティングされたスパンボンドウェブサンプルの表面特性を分析するために使用された。X線光電子分光法は、サンプル表面上のコーティング材料の原子濃度を得るための、深さ2.5nmの範囲内における、サンプルの表面特性の調査を可能にする。スペクトルは、英国、マンチェスター(Manchester)のクラトス・アナリティカル社(kratos analytical)(クラトスアクシスウルトラ(Kratos Axis Ultra)から市販されるXPS装置を使用し、サンプル表面の平面と光学検出器の入射レンズとの間の検出角度15°において、取られ、記録された。
【0107】
細菌試験手順
材料を試験するために使用されたディスクアッセイは、2つの寒天拡散法、バウアー・カービー(Bauer-Kerby)、及び最小発育阻止濃度(Minimal Inhibitory Concentration)(MIC)、標準番号M−100を基準とした。この2つの方法は、米国臨床検査基準委員会(NCCLS)に見出される。
【0108】
ディスクアッセイに使用された寒天は、ウェブスター・サイエンティフィック(Webster Scientific)(ニュージャージー州、ハミルトン(Hamilton)から購入される、イージーゲル(商標)培地(EasyGelTM Media)、品目#3093−55−トータルカウント、であった。イージーゲル(商標)培地(EasyGelTM Media)の植菌に使用される細菌は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(バージニア州マナサス(Manassas))から購入される、MRSA(ATCC#33593)及びE.coli(ATCC#53500)であった。ディスクは、12.5mmの直径を有するダイカッターを使用し、12.5mmのディスクを二重反復で打ち抜くことによって形成された。
【0109】
イージーゲル(商標)培地(EasyGelTM Media)の植菌に使用された、2つの細菌培養物は、トリプチック・ソイ・ブロス(Tryptic Soy Broth)TSBにおいて、35℃で18〜24時間、別個に培養された。培養物は、4℃で冷却器内に保管された、管理培養物(maintenance cultures)から、取られた。培養物が35℃で24時間培養された後、生じた細菌の濃度は、およそ10であった。これらの培養物は、細菌濃度10まで、連続的に希釈された。細菌をボトルに加え、細菌濃度が次にもう一度希釈し、ボトル内で、1:10の希釈又は10の濃度を生成した。細菌培養物は、混合されず、ボトルに別個に加えられた。植菌されたゲルを含むボトルが、特別にコーティングされたペトリ皿に注がれ、45分間固化させた。これは2組の寒天プレートを生成し、一方はMRSAを有し、他方は、E.coliを含んでいた。
【0110】
一度寒天が固化すると、処理され、制御されたディスクは、各ペトリ皿中央の、2つの植菌された表面上に配置された。2組の植菌された寒天が使用されて、処理されたディスクが、グラム陽性のMRSA、又はグラム陰性の細菌E.coliのいずれにおいてより良好に機能するかが決定された。プレートは、次に、35℃で18〜24時間、培養器内に定置され、細菌を培養させた。18〜24時間後、プレートは、クラフトマン・デジタル・キャリパーを使用して読まれた。ディスクからの抗菌性の拡散が存在しない場合、即ち、ディスクの周囲に明瞭な領域が形成されない場合、結果は「ゾーン無し」と称された。ディスクからの拡散が存在した場合、即ち、明瞭な領域が形成された場合、ゾーン領域の直径が計測されて、記録された。所定の処理されたディスクからの遊離の量が、生じるゾーンの直径を決定した。
【0111】
阻害ゾーン試験手順
阻害ゾーンアッセイ(ZOIアッセイ)が、ウェブ基材の抗菌活性を評価するために使用された。試験は、0.5マックファーランド標準比濁液を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、ミリリットル(ml)当たりほぼ1×10コロニー形成単位(cfu)濃度において、黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)及び緑膿菌(ATCC 9027)の別個の溶液を調製することにより行なった。この溶液を用い、滅菌綿棒をこの溶液に浸して、トリプチケースソイ寒天(TSA)プレートの乾燥した表面に異なる3方向に塗布することよって菌叢を準備した。サンプルは、試験材料の7ミリメートルディスクを切断することによって調製された。試験材料の各サンプルから3枚のディスクが、次に、活性側を下にして、各有機体を植菌されたプレート上に配置され、無菌鉗子で寒天に対して強く圧迫して、寒天との完全な接触を確実にした。プレートの培養を、28℃±1℃で24時間行なった。サンプルの下の、これを囲う領域が、細菌の培養に関して調べられた。ZOIアッセイは、定性的(サンプル下の培養の量)、及び定量的(mmによるゾーンの大きさ)な測定を提供し、ゾーンの規模は、材料の固有の抗菌有効性の尺度である。
【0112】
(実施例1)
スパンボンドポリプロピレン不織布は、FINA 3860ポリプロピレンを使用して調製された。スパンボンドウェブは、次の特性を有した:117gsmの坪量、1.27mm(50ミル)の厚さ、及び13.7μmの有効繊維直径。ポリプロピレン不織布サンプルシートは、最初にプラズマ反応器(プラズマサーム社(Plasma-Therm)(ニュージャージー州、クレソン(Kresson))から入手可能な、プラズマサーム(Plasma-therm)(商標)モデル3082)内で処理された。
【0113】
テトラメチルシラン(99.9%NMR等級)及び酸素(99.99%UHP等級)の気体混合物を使用して、シリコン含有層をスパンボンドウェブサンプルに堆積するために、プラズマ反応器が使用された。チャンバは、ルーツブロワー(エドワーズ(Edwards)、モデルEH1200(英国、サセックス(ussex)))によってポンプ輸送され、乾燥機械式ポンプ(エドワーズ(Edwards)、モデルiQDP80(英国、サセックス(ussex)))でバックアップされた。プラズマは、13.56MHzの高周波電力供給装置(RFプラズマプロダクツ社(RF Plasma Products)モデルRH50S(ニュージャージー州ボーヒーズ(Voorhees))によって電力を供給される。
【0114】
不織布サンプルが、駆動電極上に配置され、イオン衝撃によりダイヤモンド様フィルムを堆積した。チャンバは、プラズマ堆積工程が開始される前に、1.3Pa(10ミリトル)の基本圧力まで、ポンプで減圧された。二工程の堆積手順が使用された。まず、シリコン含有ダイヤモンド様フィルムが堆積され、次にシリコン含有ダイヤモンド様ガラスフィルムが酸素プラズマ中で処理され、シラノール基を、シリコン含有ダイヤモンド様フィルムの表面に付与した。これらの2つの工程で使用される、プロセス条件は、以下である。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
上記の工程1及び2を完成した後、チャンバは通気孔を開けられ、サンプルは、上述のと同じ二工程の手順で、各サンプルの裏側を処理するために裏返された。
【0118】
シラノール基が豊富な、プラズマ処理された不織布サンプルは、次に、2重量%(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(ATS)/98重量%内で、各サンプルを溶液中に数分間浸漬することによって処理された。処理されたサンプルは、約60℃で、炉内で、一晩乾燥させた。
【0119】
全ての層において、第1高分子電解質層は、各サンプルを1.50のpHを有する酸性の0.02M(ポリマー反復単位の分子量に基づく)のPSS溶液に1時間浸漬することにより、DLG/アミノシラン処理されたサンプル上に堆積された。酸性のPSS溶液は、シランコーティング層のアミノ基をプロトン化し、処理されたサンプルのポリアニオン層とカチオン表面との間の静電気相互作用を可能にした。
【0120】
余剰のPSS溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去された。次に、各サンプルは、2.00のpHを有する酸性の0.02M(ポリマー反復単位の分子量に基づく)のPAH溶液に30分間浸漬された。余剰のPAH溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去され、第1の二層(即ち、ポリカチオン層と組み合わせたポリアニオン層)を完成した。
【0121】
続く層の堆積では、各サンプルが、PSS(5.56のpHを有する)、又はPAH(2.00のpHを有する)の溶液にそれぞれ30分間浸漬された。このプロセスは、10層(即ち、5組の二層)がスパンボンドウェブサンプル上に堆積されるまで、連続的な交互積層堆積(layer-by-layer deposition)で続けられた。
【0122】
その結果、最も外側のPSS層を有するスパンボンドウェブサンプルは、奇数の層を有し、一方で最も外側のPAH層を有するスパンボンドウェブサンプルは、偶数の層を、少なくともサンプルの一方の側に有した。図5a〜cは、上述の交互積層堆積プロセスの略図を提供する。
【0123】
図5a〜bに示されるように、溶液1は、不織布基材の正に荷電した表面上にポリアニオン層を提供したが、正に荷電した表面は、上記のATS処理工程の結果であった。溶液2は、残留するポリアニオン層構成成分を除去するための洗浄を提供した。溶液3は、ポリアニオン層の負に荷電した表面上にポリカチオン層を提供した。溶液4は、残留するポリカチオン層構成成分を除去するための洗浄を提供した。図5cに示されるように、ポリアニオン溶液は、ナトリウムカチオンのポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩からの分離から生じる負の電荷を提供し、一方で、ポリカチオン溶液は、ポリ(アリルアミン塩酸塩)からの塩素アニオンの分離から生じる正の電荷を提供した。
【0124】
生じるコーティングされた基材の表面特性は、上記のXPS法を使用して測定された。結果は図6及び7に示される。
【0125】
図6は、高分子電解質層の硫黄:窒素原子比率の、堆積層の数に対するプロットを提供する。図6に示されるように、顕著な奇偶傾向(odd-even trend)が観察された。S:N比は、外側層がPSSである場合に比較的に高く、外側層がPAHである場合に低い。図6のプロットは、層が緊密に圧縮された単一層ではないことがあるにも拘わらず、層が分化されていることを示している。高分子電解質多相構造の製造の更なる証拠が、図7に提供されている。
【0126】
各サンプル基材のプライミングが、アミノシラン基を表面上に取り付けるものとすると、高分子電解質層の数の追加に伴う、検出可能な原子シリコンの相対量が、上記の堆積法を使用して高分子電解質多層構造が生成されていることの証拠を提供する。図7に示されるように、高分子電解質層の数が増すに従い、スパンボンドウェブサンプルの表面上において、検出可能な原子シリコンの量が減少する。
【0127】
図6〜7に示される結果から、ポリプロピレンスパンボンド基材の繊維上の、多数の高分子電解質層の確認が行われた。
【0128】
(実施例2)
酸素プラズマ及びアミノシラン処理により、高分子電解質スパンボンド不織布ウェブに結合された、高分子電解質構造体が、以下のように調製された。
【0129】
実施例1で使用されたスパンボンドポリプロピレン不織布ウェブは、酸素プラズマ処理でスパンボンド高分子電解質不織布ウェブの繊維を表面処理するために、実施例1に記載のプラズマ反応器で処理された。不織布サンプルが酸素プラズマで処理され、C−O、C=O、O−C=O、C−O−O及びCOなどの極性酸素基を、繊維の表面上に生じた。酸素プラズマ処理工程で使用されるプロセス条件は、以下の通りである。
【0130】
【表3】

【0131】
酸素プラズマ処理工程の完成の後、チャンバは通気孔を開けられ、サンプルは、上述と同様の手順及びプロセス条件で、各サンプルの裏側を処理するために裏返された。
【0132】
ヒドロキシル基/極性酸素が豊富な、プラズマ処理された不織布サンプルは、次に、2重量%(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(ATS)/98重量%内で、各サンプルを溶液中に数分間浸漬することによって処理された。処理されたサンプルは、約60℃で、炉内で、一晩乾燥させた。洗浄後の、各サンプルの繊維表面上のアミノシランの存在を検証するために、フーリエ変換赤外分光(FTIR)が使用された。
【0133】
全てのサンプルにおいて、第1高分子電解質層は、各サンプルを1.50のpHを有する酸性の0.02MのPSS溶液に1時間浸漬することにより、酸素プラズマ/アミノシラン処理されたサンプル上に堆積された。酸性のPSS溶液は、シランコーティング層内のアミノ基をプロトン化し、処理されたサンプルのポリアニオン層とカチオン表面との間の静電気相互作用を可能にした。
【0134】
余剰のPSS溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去された。次に、各サンプルは、2.00のpHを有する酸性の0.02MのPAH溶液に30分間浸漬された。余剰のPAH溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去され、第1の二層(即ち、ポリカチオン層と組み合わせたポリアニオン層)を完成した。
【0135】
続く層の堆積では、各サンプルは、PSS(5.34のpHを有する)又はPAH(2.00のpHを有する)の0.02M溶液に、それぞれ30分間浸漬された。このプロセスは、10層(即ち、5組の二層)がスパンボンドウェブサンプル上に堆積されるまで、連続的な交互積層堆積で続けられた。各サンプルは次に2アリコートの超純水で約1〜2分間すすがれ、真空下で室温において乾燥された。
【0136】
最も外側のPSS層を有するスパンボンドウェブサンプルは、奇数の層を有し、一方で最も外側のPAH層を有するスパンボンドウェブサンプルは、偶数の層を、少なくとも所定のサンプルの一方の側に有した。
【0137】
生じるコーティングされた基材の表面特性は、上記のXPS法を使用して測定された。結果は図8及び9に示される。図8は、所定の高分子電解質層の硫黄:窒素原子比率の、堆積層の数に対するプロットを提供する。図8に示されるように、顕著な奇偶傾向(odd-even trend)が観察された。S:N比は、外側層がPSSである場合に比較的に高く、外側層がPAHである場合に低い。図8のプロットは、層が緊密に圧縮された単一層ではないことがあるにも拘わらず、層が分化されていることを示している。高分子電解質多相構造の製造の更なる証拠が、図9に提供されている。
【0138】
各サンプル基材のプライミングが、アミノシラン基を繊維表面上に取り付けるものとすると、高分子電解質層の数の追加に伴う、検出可能な原子シリコンの相対量が、上記の堆積法を使用して高分子電解質多層構造が生成されていることの証拠を提供する。図7に示されるように、高分子電解質層の数が増すに従い、スパンボンドウェブサンプルの表面上において、検出可能な原子シリコンの量が減少する。
【0139】
図8〜9に示される結果から、ポリプロピレンスパンボンド基材の繊維上の、多数の高分子電解質層の確認が行われた。
【0140】
(実施例3)
創傷包帯としての使用に好適なポリプロピレンスパンボンド基材上のポリ(ヘキサメチレンビグアニド)/ポリ(スチレンスルホネート)高分子電解質多層(PEM)構造体が、以下に記載の交互積層法を使用して調製された。
【0141】
表面処理されたスパンボンドポリプロピレン不織布ウェブは、実施例1に記載されたように調製され、DLG/アミノシラン処理されたサンプルを形成した。各サンプルは、次にポリ(スチレンスルホネート)及びポリ(ヘキサメチレンビグアニド)層を含む高分子電解質層でコーティングされた。
【0142】
全ての層において、第1高分子電解質層は、各サンプルを2.0のpHを有する酸性の0.02MのPSS溶液に1時間浸漬することにより、DLG/アミノシラン処理されたサンプル上に堆積された。酸性のPSS溶液は、シランコーティング層のアミノ基をプロトン化し、処理されたサンプルのポリアニオン層及びカチオン表面の間の静電気相互作用を可能にした。余剰のPSS溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去された。
【0143】
ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)の20%w/v溶液がそのまま使用された。20%PHMB溶液が、次に希釈されて、PHMBの1%、3%、又は5%w/v溶液を形成した。各溶液の初期pH値は、約2.00のpHまで低下した。
【0144】
各サンプルは、PHMBの1%、3%、又は5%w/v溶液に、約20分間浸漬された。余剰のPHMB溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去され、第1の二層(即ち、ポリカチオン層と組み合わせたポリアニオン層)を完成した。
【0145】
続く任意の層の堆積では、各サンプルが、PSS(1.55のpHを有する)、又はPHMB(2.00のpHを有する)の0.02Mの溶液にそれぞれ20分間浸漬された。このプロセスは、8層(即ち、4組の二層)がスパンボンドウェブサンプル上に堆積されるまで連続的な交互積層堆積で続けられた。各サンプルは次に2アリコートの超純水でそれぞれ約1〜2分間すすがれ、真空下において、40℃以下の気温で乾かされる。全てのスパンボンドサンプルは、最も外側のPHMB層を有した。
【0146】
上記の細菌試験手順を使用し、スパンボンドウェブサンプルの抗菌特性が決定された。以下の表1に示されるように、スパンボンドウェブサンプルがもたらされた。
【0147】
【表4】

【0148】
(実施例4)
BBA社からの、不織布100%カード綿ウェブサンプル(Webril(商標)142〜951型)、坪量258gsmが、最初にプラズマ反応器(プラズマサーム社(Plasma-Therm)(ニュージャージー州、クレソン(Kresson))から入手可能な、プラズマサーム(Plasma-therm)(商標)モデル3082)で、上記のプロセスパラメータを使用して処理された。各サンプルの前面及び裏面が、実施例1で上記されたものと同じ二工程手順を使用して処理された。
【0149】
シラノール基が豊富な、プラズマ処理された不織布サンプルは、次に、2重量%(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(ATS)/98重量%内で、各サンプルを溶液中に数分間浸漬することによって処理された。処理されたサンプルは、約60℃で、炉内で、一晩乾燥させた。
【0150】
全てのサンプルに関し、高分子電解質層が、実施例1に記載されたように、DLG/アミノシラン処理されたサンプルに堆積され、交互のPSS及びPAH層を、10の層(即ち、5つの二層)が堆積されるまで、100%カード綿ウェブサンプル上に形成した。
【0151】
その結果、最も外側のPSS層を有するカードウェブサンプルは、奇数の層を有し、一方で最も外側のPAH層を有するカードウェブサンプルは、偶数の層を、少なくともサンプルの一方の側に有した。
【0152】
生じたコーティングされた基材の表面特性は、上記のXPS法を使用して測定された。図6に示されるプロットと同様の、高分子電解質層の硫黄:窒素原子比率の、堆積層の数に対するプロットが観察された。更に、図7に示されるプロットと同様の、検出可能な原子シリコンの量対高分子電解質層の数のプロットも、カードウェブサンプルの表面上における検出可能な原子シリコンの減少を示した。試験により、カードウェブサンプルの繊維上の、多数の高分子電解質層の存在を確認した。
【0153】
(実施例5)
創傷包帯材料としての使用に好適なポリプロピレンスパンボンド基材上の銀イオン含有高分子電解質多層(PEM)構造体は、以下に記載の交互積層法を使用して調製された。
【0154】
表面処理されたスパンボンドポリプロピレン不織布ウェブは、実施例1に記載されるように調製され、DLG/アミノシラン処理されたサンプルを形成した。各サンプルは、次に、約2.0のpHを有するPSSの酸性の0.02M溶液中に各サンプルを約1時間浸漬することによって、ポリ(スチレンスルホネート)を含む高分子電解質層でコーティングされた。余剰のPSS溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去された。サンプルは、銀溶液に1時間浸され、次に取り除かれて、真空炉で乾燥された。このように調製された基材は、「濡れた」サンプルとして称され、一方で、PSS堆積に続いて乾燥され、銀溶液に浸される前の基材は、「乾いた」サンプルと称された。
【0155】
銀溶液は、0.5グラムの酸化銀(I)(AgO)を、10重量%炭酸アンモニウム水溶液50グラム中で溶解させることによって調製された。阻害ゾーンアッセイ試験の結果が、以下の表2及び3に示される。各サンプルに対し、3枚のディスクの平均が使用された。
【0156】
【表5】

【0157】
【表6】

【0158】
(実施例6)
創傷包帯材料としての使用に好適なポリプロピレンスパンボンド基材上の銀イオン含有高分子電解質多層(PEM)構造は、実施例5に記載の交互積層法を使用して調製されたが、ただし銀(II)溶液が使用された。銀溶液は、0.5グラムの酸化(II)銀(AgO)を、10重量%炭酸アンモニウム水溶液50グラム中で溶解させることによって調製された。阻害ゾーンアッセイ試験の結果が以下の表4及び5に示される。各サンプルに対し、3枚のディスクの平均が使用された。
【0159】
【表7】

【0160】
【表8】

【0161】
(実施例7〜10)
創傷包帯材料としての使用に好適なポリプロピレンスパンボンド基材上のヨード含有高分子電解質多層(PEM)構造は、以下に記載の交互積層法を使用して調製された。
【0162】
表面処理されたスパンボンドポリプロピレン不織布ウェブは、実施例1に記載されるように調製され、DLG/アミノシラン処理されたサンプルを形成した。各サンプルは、次に、5.24のpHを有するアルギン酸ナトリウムの0.5重量%溶液に、約20分間浸漬することによってコーティングされた。余剰のアルギン酸ナトリウム溶液は、2アリコートの超純水で各サンプルをそれぞれ約1〜2分間すすぐことによって、除去された。サンプルは次に、2.00のpHを有する6重量%のポビドンヨード(PVP−I)溶液に、20分間浸され、次に取り除かれてすすがれた。連続的な交互積層堆積プロセスが続けられ、1、2、3、及び4組の、アルギン酸及びPVP−Iの二層を有する一連のサンプルが生じた。多相コーティングされたサンプルは、真空炉内で、40℃で乾燥された。サンプルは、抗菌試験手順を使用して、抗菌特性を評価された。下表6に結果を示す。
【0163】
【表9】

【0164】
本明細書は、その特定の実施形態に関して詳細に説明してきたが、上述の事項を理解することにより、当業者がこれら実施形態に対する変更、その変形、及びそれらの同等物を容易に想起できることは明らかである。したがって、本開示の範囲は、添付の請求項及びそれらの任意の同等の範囲と判定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性基材の第1及び第2主表面に沿った繊維を含む、前記繊維性基材と、
前記第1主表面に沿った繊維の少なくとも一部にわたる、繊維表面処理部であって、前記繊維表面処理部は(i)酸素プラズマ処理部、又は(ii)ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、あるいは(i)及び(ii)の両方を含む、繊維表面処理部と、
前記繊維表面処理部に結合されるアニオン性高分子電解質と、を含む、物品。
【請求項2】
前記繊維表面処理部が、ダイヤモンド様ガラスフィルムを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1ダイヤモンド様ガラスフィルムが、水素を除いた成分を基準に、少なくとも約30原子%の炭素、少なくとも約25原子%のシリコン、及び約45原子%以下の酸素を含む、高密度のランダムな共有結合系を含む、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記繊維表面処理部が、前記酸素プラズマ処理部を更に含む、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記繊維表面処理部が、前記酸素プラズマ処理部を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記アニオン性高分子電解質層が、前記繊維表面処理部上のシランカップリング層によって、前記繊維表面処理部に結合される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記アニオン性高分子電解質層上にカチオン性高分子電解質層を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記アニオン性高分子電解質層が、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記カチオン性高分子電解質層が、ポリ(アリルアミン塩酸塩)又はポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)を含む、請求項7に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が、交代式アニオン性高分子電解質層、及びカチオン性高分子電解質層を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記物品が、最も外側のカチオン性高分子電解質層を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記第2主表面に沿った繊維の少なくとも一部にわたる第2の繊維表面処理部であって、前記第2の繊維表面処理部が(i)酸素プラズマ処理部、又は(ii)ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、あるいは(i)及び(ii)の両方を含む、第2繊維表面処理部と、
前記第2繊維表面処理部に堆積される第2シラン層と、
前記第2のシラン層上の、アニオン性高分子電解質層、又はアニオン性高分子電解質層及びカチオン性高分子電解質層の両方と、を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記第1主表面に沿った前記繊維が、第1の化学的性質の層によってコーティングされ、前記第2主表面に沿った前記繊維が、第2の化学的性質の層によってコーティングされ、前記第1の化学的性質が、前記第2の化学的性質と異なる、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記繊維性基材が、不織布ウェブである、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
銀含有化合物、銅含有化合物、ヨード含有化合物、又はこれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの活性成分を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
請求項15の物品を含む、創傷包帯。
【請求項17】
繊維性基材の第1及び第2主表面に沿った繊維を含む、繊維性基材と、
前記第1主表面、前記第2主表面、又は両方に沿った、前記繊維の少なくとも一部をコーティングする、ダイヤモンド様ガラスフィルムと、
前記第1ダイヤモンド様ガラスフィルム上のシランカップリング層と、
前記シランカップリング層上のアニオン性高分子電解質層と、を含む、物品。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアニオン性高分子電解質層上に、少なくとも1つのカチオン性高分子電解質層を更に含む、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記シランカップリング層が、酸性溶液に晒され、前記シランカップリング層上のアミノ基をプロトン化する、請求項17に記載の物品。
【請求項20】
前記アニオン性高分子電解質層が、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩を含み、前記カチオン性高分子電解質層が、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、又はポリ(ヘキサメチレンビグアニド)(PHMB)を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
官能化繊維性基材を作製する方法であって、前記方法が、
第1及び第2主表面を有する繊維性基材を、表面処理プロセスにかけ、前記第1主表面に沿った繊維の少なくとも一部にわたって繊維表面処理を提供する工程であって、前記繊維表面処理が、(i)酸素プラズマ処理、又は(ii)ダイヤモンド様ガラスフィルムコーティング、あるいは(i)及び(ii)の両方を含む、工程と、
少なくとも1つの高分子電解質層を前記繊維表面処理部に結合する工程と、を含む、官能化繊維性基材を作製する方法。
【請求項22】
前記結合工程が、
シランカップリング剤を前記繊維表面処理部にカップリングする工程と、
前記シランカップリング剤を、少なくとも1つの高分子電解質層でオーバーコーティングする工程と、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記結合工程が、
前記シランカップリング剤を酸で処理することにより、前記シランカップリング剤のアミノ基をプロトン化する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの高分子電解質層が、(i)アニオン性高分子電解質層、又は(ii)アニオン性高分子電解質層及び続いて適用されるカチオン性高分子電解質層を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの高分子電解質層が、交代式アニオン性及びカチオン性高分子電解質層を含み、前記繊維性基材の第1及び第2主表面の両方に沿って、最も外側のアニオン性高分子電解質層、最も外側のカチオン性高分子電解質層、又は両方を含む、請求項21に記載の物品。
【請求項26】
前記繊維性基材が、ポリプロピレン繊維の不織布ウェブを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの高分子電解質層に少なくとも1つの活性成分を組み込む工程であって、前記少なくとも1つの活性成分が、銀含有化合物、銅含有化合物、ヨード含有化合物、又はこれらの組み合わせを含む工程を更に含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−525187(P2010−525187A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506401(P2010−506401)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060716
【国際公開番号】WO2008/131152
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】