説明

1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物

【課題】揺変性および打ち継ぎ性のいずれにも優れる1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマー(A)と、少なくとも1種の安定化剤(B)とを含有し、該安定化剤(B)が下記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有し、下記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(3)の関係を満たす、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
1COO−Si≡ (1)
2COO−Si≡ (2)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 (3)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物は、幅広い材料(例えば、プラスチック、ガラス、金属)に対して優れた接着性を有し、耐水性、耐熱性等にも優れていることから、土木建築分野や自動車分野において、シーリング材、防水材、目地材、接着剤、プライマー、塗料、床材等として広く利用されている。ポリウレタン樹脂組成物は、イソシアネート化合物とポリオール化合物等とからなる二液型のものと、空気中の湿気等によって硬化する一液型のものとが知られている。一液型ポリウレタン樹脂組成物は、二液型ポリウレタン樹脂組成物に比べて現地での施工における組成物の混合調製が不要で取り扱いが容易であることから、一液型ポリウレタン樹脂組成物の利用が拡大している。
このような一液型硬化性ポリウレタン樹脂組成物として、出願人は、これまでに特許文献1に記載されているポリウレタン樹脂組成物や特許文献2に記載されている一液型湿気硬化性樹脂組成物を提案している。
【0003】
上記特許文献1には、(a)OH基を有するオキサゾリジン化合物を、ウレタンプレポリマーのNCO基/オキサゾリジン化合物のOH基(モル比)がNCO/OH=100/5〜100/60となるように、および、(b)カルボン酸および/またはカルボン酸シリルエステルを、ウレタンプレポリマー100質量部に対して0.05〜10質量部含有することを特徴とするポリウレタン樹脂組成物が記載されている。
【0004】
上記特許文献2には、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対し、下記式(I)で示される化合物、および/または、高級脂肪酸エステルにより表面処理された塩基性フィラー20〜150質量部と、下記式(II)および下記式(III)で示されるシロキサン単位をそれぞれ少なくとも1つ有するアシルオキシポリシロキサン誘導体1質量部〜30質量部未満とを含有する一液型湿気硬化性樹脂組成物が記載されている。
【0005】
【化1】

【0006】
(式(I)中、Aはイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いて得られる残基、nは1〜4の整数、Rは炭化水素基、ただしn=1の場合は炭素数8以上のアルキル基、n=2〜4の場合はRは同一でも異なっていてもよく、Rのうち少なくともひとつは炭素数8以上のアルキル基である。式(II)、式(III)中、R1はメチル基、エチル基またはフェニル基;R2は炭素数2または3の2価の炭化水素基;R3は炭素数2〜4の2価の炭化水素基;R4は1価の炭化水素基;R5は同種もしくは異種の環を有してもよい炭素数5以上の炭化水素基を表す。rは1以上の整数である。)
【0007】
【特許文献1】特開平10−158504号公報
【特許文献2】特開平11−21444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者は、上記の特許文献1に記載されているポリウレタン樹脂組成物は揺変性(チクソ性)について向上させる余地があることを見出した。即ち、打ち継ぎ性を保ちつつ垂れにくさを向上させる余地があることを見出した。
また、本発明者は、特許文献2に記載されている一液型湿気硬化性樹脂組成物は打ち継ぎ性を向上させる余地があることを見出した。
【0009】
そこで、本発明は、揺変性および打ち継ぎ性のいずれにも優れる1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物において、ウレタンプレポリマーと特定の安定化剤とを含有する組成物が揺変性および打ち継ぎ性のいずれにも優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(i)〜(vii)を提供する。
【0011】
(i)ウレタンプレポリマー(A)と、少なくとも1種の安定化剤(B)とを含有し、該安定化剤(B)が下記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有し、下記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(3)の関係を満たす、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
1COO−Si≡ (1)
2COO−Si≡ (2)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 (3)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表す。)
【0012】
(ii)上記安定化剤(B)が、下記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を有する、上記(i)に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【0013】
【化2】


(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。)
【0014】
(iii)上記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を同一分子中に有する化合物を含有する、上記(i)または(ii)に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【0015】
(iv)上記安定化剤(B)が、更に、下記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を有する、上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
6O−(R5O)r−R4−Si≡ (6)
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0016】
(v)上記安定化剤(B)が、下記式(7)で表されるシロキサン単位を有する、上記(iv)に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【0017】
【化3】


(式中、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0018】
(vi)上記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基ならびに上記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を同一分子中に有する化合物である、上記(iv)または(v)に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【0019】
(vii)上記安定化剤(B)が、下記組成式(8)で表されるオルガノシロキサンである、上記(vi)に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
(R1COO)a(R2COO)b3c7dSiO(4-a-b-c-d)/2 (8)
0.10≦a/(a+b)≦0.8 (9)
1≦c<2 (10)
0.001≦d<1 (11)
1.95≦a+b+c+d≦2.60 (12)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。また、式中、R7は、−R4−(OR5r−OR6で表されるポリエーテル含有基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、式中、a、b、cおよびdは、上記式(9)〜(12)の関係を満たす数を表す。)
【発明の効果】
【0020】
以下に説明するように、本発明によれば、揺変性および打ち継ぎ性のいずれにも優れる1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物(以下、単に「本発明の樹脂組成物」ともいう。)は、ウレタンプレポリマー(A)と、少なくとも1種の安定化剤(B)とを含有し、該安定化剤(B)が下記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有し、下記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(3)の関係を満たす、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物である。
1COO−Si≡ (1)
2COO−Si≡ (2)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 (3)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表す。)
【0022】
次に、ウレタンプレポリマー(A)および安定化剤(B)ついて詳述する。
【0023】
<ウレタンプレポリマー(A)>
本発明の樹脂組成物に用いられるウレタンプレポリマー(A)は、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物(即ち、水酸(OH)基に対して過剰のイソシアネート(NCO)基)を反応させて得られる反応生成物である。
【0024】
このようなウレタンプレポリマー(A)を生成するポリイソシアネート化合物は、分子内にNCO基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)などの脂環式ポリイソシアネート;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と後述するポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、分子内にNCO基を1個のみ有するモノイソシアネート化合物も、ジイソシアネート化合物等と混合することにより用いることができる。
【0025】
また、このようなウレタンプレポリマー(A)を生成するポリオール化合物は、OH基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0026】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
【0027】
次に、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとしては、通常、上記低分子多価アルコール類から導かれるものが用いられるが、本発明においては、更に以下に示す芳香族ジオール類、アミン類、アルカノールアミン類から導かれるものも好適に用いることができる。
ここで、芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン(m−ジヒドロキシベンゼン)、キシリレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示すようなビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のビスフェノール骨格を有するもの;等が挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
また、アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのモノマーをカチオン系開始剤を用いて重合して得られるポリオール;等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0031】
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類のいずれかと、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
ここで、上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコール(もしくはプロピレングリコール)との反応生成物などのヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
また、上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0032】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、以上で例示した種々のポリオール化合物を1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物に用いられるウレタンプレポリマー(A)は、上述したように、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物を反応させることによって得られるものであり、その具体例としては、上記で例示した各種ポリオール化合物と、各種ポリイソシアネート化合物との組み合わせによるものが挙げられる。
中でも、入手の容易さの観点から、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオールおよびポリテトラエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種とから得られるウレタンプレポリマーが好ましい。
【0035】
本発明においては、ウレタンプレポリマー(A)の製法は特に限定されず、その具体例としては、反応温度を30〜120℃、好ましくは50〜100℃程度とし、常圧下でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを得る方法等が挙げられる。また、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物のようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0036】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマー(A)の製造において、ポリオール化合物のOH基に対するポリイソシアネート化合物のNCO基の当量比(NCO/OH)は、1.2〜5.0であるのが好ましく、1.5〜3.0であるのがより好ましい。NCO/OHがこの範囲にあると、ポリイソシアネート化合物の残存による発泡や、分子鎖延長に起因するウレタンプレポリマーの粘度増加がなく、本発明の樹脂組成物の硬化後の物性が良好となる。
【0037】
<安定化剤(B)>
本発明の樹脂組成物で用いる安定化剤(B)は、下記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有し、下記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(3)の関係を満たすものである。
1COO−Si≡ (1)
2COO−Si≡ (2)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 (3)
(式中、R1は炭素数13〜21、好ましくは13〜17の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11、好ましくは7〜11のアルキル基を表す。)
【0038】
上記安定化剤(B)は、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基をそれぞれ異なる分子中に有する化合物を併用するものであっても、これらのカルボン酸シリルエステル基を同一分子中に有する化合物自体または当該化合物を含有するものであってもよい。中でも、本発明の樹脂組成物の生産性の観点、安定化剤(B)自体の生産性の観点から後者であるのが好ましい。なお、本発明においては、後者の態様として、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基のケイ素原子が同一原子である態様も含むものとする。
【0039】
上記式(1)中、R1の炭素数13〜21の1価の炭化水素基としては、例えば、アルケニル基などの不飽和またはアルキル基などの飽和の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基などの1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基などの1価の芳香族含有炭化水素基;等が挙げられる。具体的には、アルキル基として、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等が好適に例示される。
【0040】
また、上記式(1)中、R2の炭素数5〜11のアルキル基としては、具体的には、例えば、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルへキシル基、2−メチルへキシル基、3−メチルへキシル基、4−メチルへキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ウンデシル基等が挙げられる。中でも、1−エチルペンチル基、n−ウンデシル基であるのが好ましい。
【0041】
一方、上記式(3)で示されるように、上記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと上記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nの割合(M/(M+N))は、0.10〜0.80の範囲であり、0.2〜0.8の範囲であるのが好ましい。
【0042】
このような安定化剤(B)を含有することにより、本発明の樹脂組成物の揺変性および打ち継ぎ性はいずれも良好となる。このうち、揺変性については、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基が、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基よりも容易に水と反応(加水分解)するため、炭酸カルシウム等のフィラーに吸着した水分によるウレタンプレポリマーの硬化反応を阻止することができること、および、上記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基が加水分解して生成するカルボン酸が、フィラーの表面を覆うため、ウレタンプレポリマーとフィラーの相互作用が低下することに起因すると考えられる。また、打ち継ぎ性については、上記(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基が加水分解して生成するカルボン酸の離型性が小さいことに起因すると考えられる。
【0043】
本発明においては、上記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を包含する下記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を有するのが好ましい。これらのシロキサン単位を有することにより、本発明の樹脂組成物の揺変性および打ち継ぎ性がより良好となる。
【0044】
【化5】

【0045】
式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。
ここで、上記式(4)中のR1および上記式(5)中のR2は、それぞれ、上記式(1)中において説明したR1および上記式(2)中において説明したR2と同様である。
また、上記式(4)および(5)中、R3の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、アリル基などの1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基などの1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基などの1価の芳香族炭化水素基;およびこれらを組合せた基;等が挙げられる。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基等が好適に例示される。中でも、メチル基、フェニル基であるのが好ましい。
【0046】
上記式(4)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記の各式で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
【0047】
【化6】

【0048】
上記式(5)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記の各式で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
本発明においては、上記安定化剤(B)が、更に、下記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を有するのが好ましく、上記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基ならびに下記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を同一分子中に有する化合物であるのがより好ましい。
6O−(R5O)r−R4−Si≡ (6)
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0052】
上記式(6)中、R4の置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えば、エチレン基、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、プロピレン基(−CH(CH3)−CH2−)、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基等が挙げられる。中でも、エチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0053】
また、上記式(6)中のR5は、上記式(6)中のR4と同様であるが、rが2以上である場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
なお、上記式(6)中、−(OR5r−は、その配列について特に制限されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。中でも、R5がエチレン基およびプロピレン基であるのが好ましい。即ち、−(OR5r−が、−(OCH2CH2)−で表される繰返し単位と、−(OCH(CH3)CH2)−で表される繰返し単位とからなるのが好ましい。
【0054】
また、上記式(6)中、R6の置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、アリル基などの1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基などの1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基などの1価の芳香族炭化水素基;およびこれらを組合せた基;等が挙げられる。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が好適に例示される。中でも、n−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基であるのが好ましい。
【0055】
また、上記式(6)中、rの1以上の整数としては、5以上の整数であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。
【0056】
上記安定化剤(B)が、このようなエーテル含有シリル基を有することにより、本発明の樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となり、揺変性および打ち継ぎ性が更に良好となる。これは、上記ウレタンプレポリマー(A)と上記安定化剤(B)とが一部相溶するためであると考えられる。
【0057】
本発明においては、上記安定化剤(B)が、上記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を包含する下記式(7)で表されるシロキサン単位を有するのが好ましい。これらのシロキサン単位を有することにより、本発明の樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となり、揺変性および打ち継ぎ性が更に良好となる。
【0058】
【化8】

【0059】
式中、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、上記式(7)中のR3は、上記式(4)および(5)中において説明したR3と同様である。
また、上記式(7)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(6)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
【0060】
上記式(7)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記の各式で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
【0061】
【化9】

【0062】
上記式(7)で表されるシロキサン単位は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明においては、上記安定化剤(B)として、上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位ならびに所望により有する上記式(7)で表されるシロキサン単位を分子内部および/または分子末端に含むポリシロキサンを用いるのが好ましい。
また、本発明においては、上記式(4)、(5)および(7)で表されるシロキサン単位は、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0064】
上記ポリシロキサンは、上記式(4)、(5)および(7)で表されるシロキサン単位以外のシロキサン単位を有することができ、このようなシロキサン単位としては、例えば、下記式(13)で表されるシロキサン単位等が挙げられる。
【0065】
【化10】

【0066】
上記式(13)中、R8は、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、R9は、水素原子または1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては、例えば、アルケニル基などの不飽和またはアルキル基などの飽和の1価の脂肪族炭化水素基;シクロへキシル基などの1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基などの1価の芳香族含有炭化水素基;等が挙げられる。具体的には、アルキル基として、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基等が好適に例示される。中でも、メチル基、フェニル基であるのが好ましい。
【0067】
上記式(13)で表されるシロキサン単位としては、具体的には、下記式(14)または(15)で表されるシロキサン単位が好適に例示される。
【0068】
【化11】

【0069】
また、上記ポリシロキサンの分子末端は特に限定されず、末端基としては、例えば、−SiR103、−Si(0R103、−Si(R102(OH)(式中、R10は、炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、複数のR10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表される基が挙げられ、特に、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が好適に例示される。
【0070】
更に、上記ポリシロキサンの重合度は2〜1000であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。ポリシロキサンの重合度がこの範囲であると、本発明の樹脂組成物が揺変性に優れ、また、取り扱い性も良好となる。
【0071】
上記ポリシロキサンのうち、上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンものとしては、例えば、下記式(16)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0072】
【化12】

【0073】
式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。R10は炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し同一であっても異なっていてもよく、aおよびbはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
【0074】
ここで、上記式(16)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(1)中において説明したR1および上記式(2)中において説明したR2と同様であり、上記式(16)中のR3は、上記式(4)および(5)中において説明したR3と同様である。
【0075】
また、上記式(16)中のaは、上記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(4)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜100であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましい。
また、上記式(16)中のbは、上記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(5)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜100であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましい。
【0076】
本発明においては、上記式(16)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0077】
上記式(16)で表されるオルガノシロキサンの具体例としては、下記式(17)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0078】
【化13】

【0079】
本発明においては、上記式(17)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0080】
上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンの製造方法は特に限定されず、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンと所定のカルボン酸と反応させる方法等により製造することができる。また、この反応には、触媒として、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金のような第VIII族の遷移金属錯体を使用することができる。
【0081】
一方、このポリシロキサンのうち、上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位ならびに上記式(7)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンものとしては、具体的には、上記安定化剤(B)が、下記組成式(8)で表されるオルガノシロキサンが好適に例示される。
(R1COO)a(R2COO)b3c7dSiO(4-a-b-c-d)/2 (8)
0.10≦a/(a+b)≦0.8 (9)
1≦c<2 (10)
0.001≦d<1 (11)
1.95≦a+b+c+d≦2.60 (12)
【0082】
式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。また、式中、R7は、−R4−(OR5r−OR6で表されるポリエーテル含有基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、式中、a、b、cおよびdは、上記式(9)〜(12)の関係を満たす数を表す。
ここで、上記式(8)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(1)中において説明したR1および上記式(2)中において説明したR2と同様である。
また、上記式(8)中のR3は、上記式(4)および(5)中において説明したR3と同様である。
また、上記式(8)中のR7が表すポリエーテル含有基(−R4−(OR5r−OR6)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(6)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
また、上記式(9)〜(12)の関係を満たす数を表すa、b、cおよびdは、それぞれ、0.01≦a≦1.0、0.05≦b≦1.0、1.0≦c≦1.3、0.005≦d≦0.05であるのが好ましい。
また、上記式(8)中、カルボン酸シリルエステル基の合計基数に対するポリエーテル含有基の割合、即ち、d/(a+b)は、0.01〜0.7であるのが好ましく、0.01〜0.5であるのがより好ましい。
【0083】
このようなオルガノシロキサンとしては、例えば、下記式(18)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0084】
【化14】

【0085】
式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R10は、炭素数1〜12の炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し同一であっても異なっていてもよく、a、bおよびdはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
【0086】
ここで、上記式(18)中のR1およびR2は、それぞれ、上記式(1)中において説明したR1および上記式(2)中において説明したR2と同様であり、上記式(18)中のR3は、上記式(4)および(5)中において説明したR3と同様であり、上記式(18)中のR4、R5およびR6ならびにrは、それぞれ、上記式(6)中において説明したR4、R5およびR6ならびにrと同様である。
【0087】
また、上記式(18)中のaおよびbは、それぞれ、上記式(16)中において説明したaおよびbと同様である。
また、上記式(18)中のdは、上記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位、即ち、上記式(7)で表されるシロキサン単位の繰り返し単位数を表し、1以上の整数であり、1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがより好ましい。
【0088】
本発明においては、上記式(18)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれとエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0089】
上記式(18)で表されるオルガノシロキサンの具体例としては、下記式(19)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0090】
【化15】

【0091】
式中、a、bおよびdはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、s、tはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、s+tは1以上である。
ここで、上記式(19)中のaおよびbは、それぞれ、上記式(16)中において説明したaおよびbと同様であり、上記式(19)中のdは、上記式(18)中において説明したdと同様である。
また、上記式(19)中、sは−OCH2CH2−の繰り返し単位数を表し、tは−OCH2CH(CH3)−の繰り返し単位数を表す。上記式(19)のsおよびtは、上記式(6)または(7)中のrと、r=s+tの関係にある。s+tは1以上であり、5以上であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。
また、上記式(19)中、−OCH2CH2−と−OCH(CH3)CH2−とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0092】
本発明においては、上記式(19)中、カルボン酸シリルエステル基を有する2つのシロキサン単位のそれぞれとエーテル含有シリル基を有するシロキサン単位とは、その配列について特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
【0093】
上記式(19)で表されるオルガノシロキサンのより具体的な例としては、下記式(20)で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0094】
【化16】

【0095】
上記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位ならびに上記式(7)で表されるシロキサン単位を有するポリシロキサンの製造方法は特に限定されず、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとを反応させて上記式(7)で表されるシロキサン単位を形成した後、これに所定のカルボン酸を反応させて式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を形成してポリシロキサンを製造する方法;Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルと所定のカルボン酸とを同時に反応させる方法;等により製造することができる。また、これらの反応には、触媒として、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケルのような第VIII族の遷移金属触媒を使用することが望ましく、具体的には、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金−ビニルシロキサン錯体等を好適に使用することができる。なお、触媒の使用量は特に限定されず、金属分で50ppm以下であるのが好ましく、20ppm以下でるのがより好ましい。
【0096】
前者の製造方法としては、具体的には、例えば、後述するSi−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとを、触媒として白金等の第VIII族の遷移金属錯体を添加して反応させ、次いで所定のカルボン酸を反応させる方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。
この製造方法にいおいては、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとが相溶しない場合は、トルエン、キシレン等の炭化水素系の溶媒を用いることができる。これにより速やかに反応が進行する。反応温度は60〜120℃、特に80〜110℃が好ましい。
また、カルボン酸との反応においても、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとの反応と同様に触媒として第VIII族の遷移金属錯体を使用することができる。カルボン酸との反応温度は通常80〜110℃である。特に反応初期では、反応温度を低く、反応後期では高くすることが、安全性、効率の点で好ましい。
【0097】
上記ポリシロキサンの製造に用いる上記Si−H基含有ポリシロキサンは、特に限定されず、その具体例としては、下記式(21)で表されるアルキルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンが挙げられる。
【0098】
【化17】

【0099】
式中、R11は、メチル基、エチル基、または、フェニル基である。
【0100】
上記式(21)で表されるアルキルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンは、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、下記の各式で表されるポリシロキサンが挙げられる。
【0101】
【化18】

【0102】
上記Si−H基含有ポリシロキサンは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0103】
また、上記ポリシロキサンの製造に用いる上記アルケニルエーテルは、特に限定されず、その具体例としては、下記式(22)で表されるアルケニルエーテルが挙げられる。
CH2=CH−R12−(OR5r−OR6 (22)
【0104】
式中、R5は置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、R12は存在しない(単結合である)かまたはメチレン基を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、上記式(22)中のR5、R6およびrは、それぞれ、上記式(6)中において説明したR5、R6およびrと同様である。
【0105】
上記式(22)で表されるアルケニルエーテルとしては、例えば、下記の各式で表されるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体が挙げられる。
【0106】
下記のエチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体を表す式において、sは−OCH2CH2−の繰り返し単位数を表し、tは−OCH(CH3)CH2−の繰り返し単位数を表し、s、tはそれぞれ独立に0以上の整数である。また、s+tは1以上であり、5以上であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。なお、上記式(22)のrと下記式のs、tとは、r=s+tの関係にある。
中でも、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体であって、分子量が500以上のものが揺変性発現の点で好ましい。
アルケニルエーテルは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0107】
【化19】

【0108】
また、上記ポリシロキサンの製造に用いる所定のカルボン酸は、上記式(4)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸として、例えば、トリデシル酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等を用いることができ、上記式(5)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸として、例えば、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデシル酸(ラウリン酸)を用いることができる。
中でも、上記式(4)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸としては、揺変性の観点から、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、上記式(5)で表されるシロキサン単位を形成するためのカルボン酸としては、打ち継ぎ性の観点から、カプリン酸、ラウリン酸が好ましい。
また、これらのカルボン酸は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0109】
本発明においては、上記安定化剤(B)の含有量は、ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対し、0.5〜20質量部であるのが好ましく、1〜20質量部であるのがより好ましく、1〜10質量部であるのが更に好ましい。上記安定化剤(B)の含有量がこのような範囲であると、本発明の樹脂組成物の揺変性および打ち継ぎ性がより良好となる。
【0110】
また、本発明においては、上記ウレタンプレポリマー(A)および上記安定化剤(B)以外に、必要に応じて添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、充填剤、硬化触媒(硬化促進剤)、潜在性硬化剤、溶剤、難燃剤、補強剤、接着性付与剤、老化防止剤、揺変性付与剤、界面活性剤(レベリング剤を含む。)、意匠性付与剤、分散剤、脱水剤、防錆剤、帯電防止剤を含有することができる。これらの成分は、ウレタン系の組成物に通常用いられるものを通常の含有量で用いることができる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0111】
可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤(例えば、ジオクチルフタレート等)、アジピン酸エステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系誘導体、芳香族アミン系誘導体、ピペリジン誘導体等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類等が挙げられる。
顔料としては、例えば、フタロシアニン類のような有機顔料、無機顔料等が挙げられる。
染料としては、例えば、インドール類、アクリジン類のもの等が挙げられる。
硬化触媒(硬化促進剤)としては、例えば、有機金属化合物、アミン等が挙げられる。
潜在性硬化剤としては、例えば、従来公知のオキサゾリジン、ケチミン等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0112】
充填剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク等が挙げられる。炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、または、タルクは、脂肪酸、脂肪酸エステル、および、特開平09−263708号公報に記載されている表面処理剤からなる群から選ばれる少なくとも1種で処理することができる。
意匠性付与剤としては、具体的には、例えば、蜜ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類やステアリン酸アミドなどの高級脂肪族化合物;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン、フェノール樹脂バルーン、尿素樹脂バルーン、ポリスチレンバルーン、ポリエチレンバルーン、サランバルーンなどのバルーン;等が挙げられる。
【0113】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、上記ウレタンプレポリマー(A)および上記安定化剤(B)ならびに必要に応じて使用することができる添加剤を、窒素ガスを封入したプラネタリーミキサー、ニーダー、アジター、ナウターミキサー、ラインミキサー等の混合装置を用いて減圧下または常圧下で十分にかくはんし、均一に混合させて製造する方法等により製造することができる。
また、本発明の樹脂組成物は、一液型として使用するため、上記ウレタンプレポリマー(A)および上記安定化剤(B)ならびに必要に応じて使用することができる添加剤をよく乾燥し、湿気除去された条件下で調製するのが望ましい。
【0114】
本発明の樹脂組成物は、通常採用されている塗布方法、例えば、ヘラ塗り法、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ロールコーティング法、ディッピング法を用いて被着体に塗布することができる。
被着体としては、例えば、プラスチック、ガラス、金属、モルタル、石材、アクリル電着塗料等が挙げられる。
【0115】
本発明の樹脂組成物の用途としては、例えば、シーリング材、防水材、目地材、接着剤、プライマー、塗料、床材等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物をシーリング材として使用する場合、先打ちシーリング材および/または後打ちシーリング材として使用することが可能である。また、本発明の樹脂組成物を塗布する前にプライマー処理を行うことができる。
【0116】
本発明の樹脂組成物を先打ちシーリング材として使用する場合、後打ちシーリング材は特に限定されず、本発明の樹脂組成物と後打ちシーリング材とは、同じでも異なっていてもよい。
また、本発明の樹脂組成物を後打ちシーリング材として使用する場合、先打ちシーリング材は特に限定されず、本発明の樹脂組成物と先打ちシーリング材とは、同じでも異なっていてもよい。
本発明の樹脂組成物と組み合わせて使用されるシーリング材は特に限定されないが、その具体例としては、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ウレタン系シーリング材、エポキシ系接着剤が挙げられる。
このように、本発明の樹脂組成物は、組み合わせて使用されるシーリング材と材質が同じでも異なっていても、優れた打ち継ぎ性を発現することができる。
【実施例】
【0117】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されない。
【0118】
1.ウレタンプレポリマーA1の調製
脱水した数平均分子量3000のポリプロピレンジオール(旭硝子社製、エクセノール3020)1270g、数平均分子量5000のポリプロピレントリオール(旭硝子社製、エクセノール5030)863gに、キシレンジイソシアネート138gとジフェニルメタンジイソシアネート115g(INDEX1.8)とを加えて、ジブチル錫0.01g(日東化成社製、ネオスタンU−220)の存在下で、80℃で18時間、かくはんして反応させ、NCO含有率が1.44質量%のウレタンプレポリマーA1を得た。
【0119】
2.安定化剤(ポリシロキサンI〜X)の調製
下記第1表に示す質量部のカルボン酸およびアリル基末端ポリエーテル(ユニセーフPKA5015、日本油脂社製)に、トルエンを濃度50質量%となるように添加した後、3質量%濃度の塩化白金イソプロピルアルコール溶液を所定量(Si−H基含有ポリシロキサン100gに対して10μL)を添加し、80℃のカルボン酸混合溶液を調製した。
次いで、調製したカルボン酸混合溶液に、当量のSi−H基含有ポリシロキサン(信越化学工業社製、KF99、Si−H0.0156当量/g)下記第1表に示す質量部をゆっくり滴下し、滴下終了後、反応温度を90℃に上げ、水素の発生が認められなくなるまで撹拌した。
その後、トルエンを留去することにより、それぞれ、下記式(23)〜(30)で代表されるポリシロキサンI〜Xを得た。
【0120】
ポリシロキサンI
【化20】

【0121】
ポリシロキサンII
【化21】

【0122】
ポリシロキサンIII
【化22】

【0123】
ポリシロキサンIV
【化23】


【0124】
ポリシロキサンV
【化24】


【0125】
ポリシロキサンVI
【化25】

【0126】
ポリシロキサンVII
【化26】

【0127】
ポリシロキサンVIII
【化27】

【0128】
ポリシロキサンIX
【化28】

【0129】
ポリシロキサンX
【化29】

【0130】
【表1】

【0131】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
3.1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物の調製
第2表に示す各成分をそれぞれの量(単位:質量部)で配合し、高粘度用混合ミキサーで均一に分散させ、各1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物を得た。
得られた各1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物について、以下に示す評価試験を行った。
【0132】
4.評価試験
(1)揺変性
得られた各1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物について、初期(かくはん直後)の粘度および貯蔵促進後(かくはん後60℃で3日間保存後)の粘度を測定し、得られた粘度の値から初期のチクソインデックスおよび貯蔵促進後のチクソインデックスを求め、チクソインデックスの低下率から揺変性を評価した。
粘度は、B型粘度計を用いて回転速度1rpmおよび回転速度10rpmで測定した。 また、チクソインデックスは、各1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物の、回転速度1rpmでの粘度の値に対する回転速度10rpmでの粘度の値の比(回転速度1rpmでの粘度の値/回転速度10rpmでの粘度の値)である。
チクソインデックス(TI)の低下率(%)は、(貯蔵促進後のTI/初期のTI)×100から求めた。この結果を第2表に示す。
チクソインデックスが5を超え、かつ、チクソインデックスの低下率が90%を超えている場合には揺変性が優れているといえる。
【0133】
(2)打ち継ぎ性
被着体として2枚の標準アルミニウム(50mm×50mm)を用いた。
まず、1枚の標準アルミニウムにプライマーを塗布した。このプライマー塗布面に得られた各1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物を3mm厚となるように均一に塗布し、20℃、55%RHで7日間養生した。
次に、これに打ち継ぎ用シーリング材を打ち継ぎ、残りの標準アルミニウムを接着させて、JIS A 1439:1997に準じるH型引張り試験片を作製し、20℃、55%RHで7日間養生して打ち継ぎ性試験体とした。
なお、打ち継ぎ用シーリング材としては、変性シリコーン系シーリング材(スーパーワンLM、横浜ゴム社製)およびウレタン系シーリング材(シール21、横浜ゴム社製)をそれぞれ用い、打ち継ぎ用シーリング材を打ち継ぐ前に、各打ち継ぎ用シーリング材専用のプライマーを1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物の上に塗布した。
このようにして得られた打ち継ぎ性試験体を引張試験機に取り付け、引張速度50mm/分で破壊するまで引張り、破壊の状況を確認し、打ち継ぎ性を評価した。結果を第2表に示す。第2表中、CFは打ち継ぎ用シーリング材の凝集破壊を、AFは打ち継ぎ用シーリング材の界面破壊を示す。
【0134】
【表2】

【0135】
第2表の各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンプレポリマーA1:上記のように調製されたウレタンプレポリマーA1
・炭酸カルシウム:表面処理コロイダル炭酸カルシウム(ビスコライト MBP、白石工業社製)
・ミネラルスピリッツ:AFソルベント4号、新日本石油社製
・オキサゾリジン化合物:下記式(33)で表されるオキサゾリジン
【0136】
【化30】

【0137】
・ポリシロキサンI:上記のように調製された上記式(23)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンII:上記のように調製された上記式(24)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンIII:上記のように調製された上記式(25)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンIV:上記のように調製された上記式(26)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンV:上記のように調製された上記式(27)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンVI:上記のように調製された上記式(28)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンVII:上記のように調製された上記式(29)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンVIII:上記のように調製された上記式(30)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンIX:上記のように調製された上記式(31)で表されるポリシロキサン
・ポリシロキサンX:上記のように調製された上記式(32)で表されるポリシロキサン
・変成シリコーン系シーリング材:スーパーワンLM、横浜ゴム社製
・ポリウレタン系シーリング材:シール21、横浜ゴム社製
【0138】
第2表に示す結果から、実施例1〜9で得られた1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物は、安定化剤として用いたポリシロキサンが特定のカルボン酸シリルエステル基を所定の割合で有していない比較例1〜4に比べ、揺変性および打ち継ぎ性がいずれも優れることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマー(A)と、少なくとも1種の安定化剤(B)とを含有し、該安定化剤(B)が下記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を有し、下記式(1)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Mと下記式(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基の基数Nとが下記式(3)の関係を満たす、1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
1COO−Si≡ (1)
2COO−Si≡ (2)
0.10≦M/(M+N)≦0.80 (3)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記安定化剤(B)が、下記式(4)および(5)で表されるシロキサン単位を有する、請求項1に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。)
【請求項3】
前記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基を同一分子中に有する化合物を含有する、請求項1または2に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記安定化剤(B)が、更に、下記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
6O−(R5O)r−R4−Si≡ (6)
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記安定化剤(B)が、下記式(7)で表されるシロキサン単位を有する、請求項4に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【化2】


(式中、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記安定化剤(B)が、上記式(1)および(2)で表されるカルボン酸シリルエステル基ならびに上記式(6)で表されるエーテル含有シリル基を同一分子中に有する化合物である、請求項4または5に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記安定化剤(B)が、下記組成式(8)で表されるオルガノシロキサンである、請求項6に記載の1液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物。
(R1COO)a(R2COO)b3c7dSiO(4-a-b-c-d)/2 (8)
0.10≦a/(a+b)≦0.8 (9)
1≦c<2 (10)
0.001≦d<1 (11)
1.95≦a+b+c+d≦2.60 (12)
(式中、R1は炭素数13〜21の1価の炭化水素基を表し、R2は炭素数5〜11のアルキル基を表し、R3は水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。また、式中、R7は、−R4−(OR5r−OR6で表されるポリエーテル含有基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R6は水素原子、炭素数1〜30のアルキル基またはR13−(CO)−で表される有機基(R13は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)を表し、rは1以上の整数を表す。rが2以上の整数の場合、ポリエーテル含有基中の複数のR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、式中、a、b、cおよびdは、上記式(9)〜(12)の関係を満たす数を表す。)

【公開番号】特開2007−246812(P2007−246812A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74459(P2006−74459)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】