説明

1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンおよび1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法

【課題】本発明は、新規な1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビュウレットとを非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させて、下記一般式(2)
【化2】


(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
で表される化合物を中間体して経由して、下記一般式(3)
【化3】


(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す)で表される化合物を得る製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンおよび1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1,3−ジアルキル−2-イミダゾリジノンの製造方法としては、たとえば、N,N’−ジアルキルエチレンジアミンを尿素で環化する方法(特許文献1を参照。)、ホスゲンで環化する方法(特許文献2を参照。)、二酸化炭素で環化する方法(特許文献3を参照。)、エチレン尿素をホルマリンと水素で還元アルキル化する方法(特許文献4を参照。)および2−イミダゾリジノンにホルマリンを付加させた反応生成物をトリクロロ酢酸、蟻酸などで還元する方法(非特許文献1を参照。)が知られている。
【0003】
また、従来公知の1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法としては、たとえば、N,N’−ジメチルエチレンジアミンとアザマロン酸メチルエステルとを反応させる方法およびN,N’−ジメチルエチレンジアミンとエトキシカルボニルイソシアナートとを反応させる方法(特許文献5を参照。)、およびN,N’−ジメチルエチレンジアミンと尿素とを反応させてN,N’−ジメチルエチレンジアミンビスウレアを得、これを300℃で加熱する方法(非特許文献2を参照。)が知られている。
【0004】
また、従来、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを製造する方法として、N,N’−ジアルキルエチレンジアミンと尿素より製造する方法が知られている。この方法は、簡潔なプロセスとして優れた方法である反面、従来知られていた方法では、収率が低い欠点があった。その後、この欠点は改善され、N,N’−ジアルキルエチレンジアミンと尿素とを180℃以上の温度、好ましくは中間体である1,1’−ジメチル−1,1’−ジメチレンビスウレアを140℃の温度で完結させ、次いで180℃以上で反応を行うことによって80%以上の収率で1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを製造する方法が知られている(特許文献6)。
【0005】
しかし、この方法によると、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに対し0.5%〜数%の副生した1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンイミンを含有し、この副生物は1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと沸点が近似しているため蒸留分離に非常に高段の塔を必要としたり、また別途処理工程が必要となる等、副生物の除去の点で問題があった。
【0006】
また、この副生物を上記のように含有する1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンは、溶媒として使用すると目的とする反応を阻害する、たとえば、アラミドの製造溶媒として使用するとポリマーの重合阻害を起こすような問題を生じ、その適用上欠点がある。
副生物の生成を抑制する技術として、特許文献7に記載のものが提案されている。同文献においては、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを製造する方法において、N,N’−ジアルキルエチレンジアミンと尿素を180℃以上に加熱された非プロトン性極性溶媒中に連続的に添加しながら反応させる。このように反応条件を制御することにより、イミンの副生を抑制できるとされている。
【特許文献1】特開昭61−236769号公報
【特許文献2】特開昭62−181264号公報
【特許文献3】特開2000−026427号公報
【特許文献4】特開昭53−98965号公報
【特許文献5】西独国特許出願公開第2036172号明細書
【特許文献6】米国特許第4,731,453号明細書
【特許文献7】特開平10−101651号公報
【非特許文献1】Jounal of Chemical and Engineering Data,Vol.21,No.2,1976 p.150〜153
【非特許文献2】Journal of the Chemical Society Perkin Transactions 2(1972−1999)、1981年、p.317−319
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の非特許文献2には、1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンから1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが生成することが報告されている。したがって、1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンは1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンを製造するための有用な原料となり得ることが期待される。
【0008】
本発明は、新規な1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記製造方法における反応で中間体となる1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、非プロトン性極性溶媒中にN,N’−ジアルキルエチレンジアミンとビウレットを反応させることにより、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
また、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、N,N’−ジアルキルエチレンジアミンとビウレットを反応させることにより、上記反応における中間体となる1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、
[1]下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させて、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を中間体として経由して、下記一般式(3)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法、
[2]一般式(1)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を1.9以上2.1以下とし、非プロトン性極性溶媒の存在下で、80℃以上300℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(2)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を中間体として経由して、下記一般式(3)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法、
[3]下記一般式(1)
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を1.9以上2.1以下とし、非プロトン性極性溶媒の存在下で、80℃以上300℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(3)
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法、
[4]前記非プロトン性極性溶媒が、前記一般式(3)で表される化合物である、[1]乃至[3]いずれかに記載の製造方法、ならびに
[5]下記一般式(1)
【0029】
【化9】

【0030】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を0.8以上1.2以下とし、80℃以上190℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(2)
【0031】
【化10】

【0032】
(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、新規な1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、新規な1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の下記一般式(3)で表される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法においては、下記一般式(1)で表される化合物とビウレットとを非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させる。
【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
上記一般式(1)および(3)において、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。また、上記一般式(3)に示した化合物において、Rは、原料として用いた上記一般式(1)で表される化合物と共通となる。
【0039】
一般式(1)で表される化合物としては、たとえば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
一般式(1)で表される化合物は、相応するモノアルキルアミンとエチレンジクロライド、エチレンジブロマイドなどのエチレンジハライドとの反応により容易に得ることができる。
【0041】
非プロトン性極性溶媒に特に制限はない。非プロトン性極性溶媒としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、スルホラン、ジオキサンおよび上記一般式(3)で表される化合物などが挙げられる。これらの中でも、180℃以上の沸点を有する溶媒は、大気圧下で反応できる点で好ましい。特に、前記の反応で生成する上記一般式(3)で表される化合物は、これと異なる溶媒を反応に用いた場合には必要な、溶媒との分離が不要となる点で好ましい。
【0042】
非プロトン性極性溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常、ビウレット100重量部に対して20重量部以上1000重量部以下である。
【0043】
一般式(1)で表される化合物とビウレットの使用量は、化学量論的な、一般式(1)で表される化合物:ビウレット=2.0:1.0のモル比であれば十分であるが、好ましくは1.9:1.0から2.1:1.0のモル比から選択する。ビウレットに対する一般式(1)で表される化合物の割合が小さすぎると、収率が低下する。また、ビウレットに対する一般式(1)で表される化合物の割合が大きすぎると、精製する際のビウレットの濾過が必要となる。また、経済的にも不利である。上述の範囲の使用量であると、収率の低下を抑制しつつ、精製する際のビウレットの濾過が必要ない点で好ましい。
【0044】
反応温度は、通常、80℃以上300℃以下である。反応を回分式で行う場合は加熱を2段階で行う方法が好ましく、1段階目が100℃以上190℃以下、2段階目が180℃以上300℃以下、さらに好ましくは1段階目が110℃以上150℃以下、2段階目が200℃以上240℃以下である。1段階目の温度が低すぎると、反応速度が低下し、高すぎると収率が低下する。また、2段階目が低すぎると、反応速度または収率が低下し、高すぎると、耐圧容器などが必要となり経済的に不利である。
【0045】
反応圧力は特に限定されないが、通常、大気圧下である。
【0046】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させる方法に特に制限はないが、回分式、連続式のどちらの方法でも実施できる。
【0047】
たとえば、回分式で反応を行う場合はビウレットの分解温度190℃以下で一旦一般式(1)で表される化合物とビウレットを加熱し、その後180℃以上に加熱することが好ましい。回分式の反応方法をより具体的に例示するとすれば、非プロトン性極性溶媒とビウレットの混合物を110℃以上150℃以下に加熱し、一般式(1)で表される化合物とビウレットがモル比で1:1となるように一般式(1)で表される化合物を添加し、次いで200℃以上240℃以下に加熱して一般式(1)で表される化合物とビウレットが2:1のモル比となるように一般式(1)で表される化合物をさらに添加する方法が挙げられる。また、非プロトン性極性溶媒、ビウレットおよび一般式(1)で表される化合物の全量を一括して反応器中で混合して反応させる方法もあるが、この場合は使用する一般式(1)で表される化合物の沸点を考慮し、180℃以上の反応温度を保持できるように制御する必要がある。
【0048】
連続式で反応を行う場合は、加熱した非プロトン性極性溶媒中に反応温度を保持しながら一般式(1)で表される化合物とビウレットを連続的に反応器内に添加する方法を用い、反応生成物を連続的に抜出す。
【0049】
前記の製造方法により得られる一般式(3)で表される化合物は、蒸留などの操作により反応混合物から回収することができる。
【0050】
また、別の観点からは、本発明は、下記一般式(3)で表される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの以下の製造方法に関する。この製造方法においては、下記一般式(1)で表される化合物とビウレットとを非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させて、下記一般式(2)で表される化合物を中間体として経由して、下記一般式(3)で表される化合物を得る。
【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
上記一般式(1)〜(3)において、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。また、上記一般式(2)および(3)に示した化合物において、Rは、原料として用いた上記一般式(1)で表される化合物と共通となる。
【0055】
また、この製造方法において、好ましくは、上記一般式(1)で表される化合物とビウレットとを、非プロトン性極性溶媒の存在下で、ビウレットに対する上記一般式(1)で表される化合物のモル比を1.9以上2.1以下とし、80℃以上300℃以下の反応温度で反応させて、上記一般式(2)で表される化合物を中間体として経由して、上記一般式(3)で表される化合物を得る。
【0056】
この製造方法において、一般式(1)に示した化合物ならびに非プロトン性極性溶媒として、一般式(3)で表される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの前述の製造方法にて例示した化合物と同じものが挙げられる。
【0057】
非プロトン性極性溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常、ビウレット100重量部に対して20重量部以上1000重量部以下である。
【0058】
一般式(1)で表される化合物とビウレットの使用量は、化学量論的な、一般式(1)で表される化合物:ビウレット=2.0:1.0のモル比であれば十分であるが、好ましくは1.9:1.0から2.1:1.0のモル比から選択する。この範囲の使用量であると精製する際のビウレットの濾過が必要ない点で好ましい。
【0059】
反応温度は、通常、80℃以上300℃以下である。反応を回分式で行う場合は加熱を2段階で行う方法が好ましく、1段階目が100℃以上190℃以下、2段階目が180℃以上300℃以下、さらに好ましくは1段階目が110℃以上150℃以下、2段階目が200℃以上240℃以下ある。
【0060】
反応圧力は特に限定されないが、通常、大気圧下である。
【0061】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させる方法に特に制限はないが、回分式、連続式のどちらの方法でも実施できる。
【0062】
たとえば、回分式で反応を行う場合はビウレットの分解温度190℃以下で一旦一般式(1)で表される化合物とビウレットを加熱し、その後180℃以上に加熱することが好ましい。回分式の反応方法をより具体的に例示するとすれば、非プロトン性極性溶媒とビウレットの混合物を110℃以上150℃以下に加熱し、一般式(1)で表される化合物とビウレットがモル比で1:1となるように一般式(1)で表される化合物を添加し、次いで200℃以上240℃以下に加熱して一般式(1)で表される化合物とビウレットが2:1のモル比となるように一般式(1)で表される化合物をさらに添加する方法が挙げられる。また、非プロトン性極性溶媒、ビウレットおよび一般式(1)で表される化合物の全量を一括して反応器中で混合して反応させる方法もあるが、この場合は使用する一般式(1)で表される化合物の沸点を考慮し、180℃以上の反応温度を保持できるように制御する必要がある。
【0063】
連続式で反応を行う場合は、加熱した非プロトン性極性溶媒中に反応温度を保持しながら一般式(1)で表される化合物とビウレットを連続的に反応器内に添加する方法を用い、反応生成物を連続的に抜出す。
【0064】
以上により得られる一般式(3)で表される化合物は、蒸留などの操作により反応混合物から回収することができる。
【0065】
また、別の観点からは、本発明は、下記一般式(2)で表される1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法に関する。この製造方法においては、下記一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させる。
【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
上記一般式(1)および(2)において、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。また、上記一般式(2)に示した化合物において、Rは、原料として用いた上記一般式(1)で表される化合物と共通となる。
【0069】
この製造方法において、上記一般式(1)に示した化合物として、一般式(3)で表される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法について前述した例示化合物が挙げられる。
【0070】
一般式(1)で表される化合物とビウレットの使用量は、化学量論的な、一般式(1)で表される化合物:ビウレット=1.0:1.0のモル比であればよいが、好ましくは一般式(1)で表される化合物:ビウレット=0.8:1.0から1.2:1.0のモル比から選択することができる。
【0071】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させる際に、反応溶媒を使用することができる。
【0072】
反応溶媒としては、出発原料および一般式(2)で表される化合物と反応せず、かつ、沸点が80℃以上であるものであれば特に制限はない。このような反応溶媒としては、たとえば、一般式(1)で表される化合物とビウレットからの一般式(3)で表される1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法に好ましい溶媒として挙げた非プロトン性極性溶媒が好ましいものとして挙げられる。
【0073】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとの反応で得られる一般式(2)で表される化合物を単離せずに一般式(3)で表される化合物を製造する場合には、非プロトン性極性溶媒として一般式(3)で表される化合物を使用するのが、これと異なる溶媒を反応に用いた場合に必要な、溶媒との分離操作が不要である点で好ましい。
【0074】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとの反応に非プロトン性極性溶媒を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、通常、ビウレット100重量部に対して20重量部以上1000重量部以下である。
【0075】
反応温度は、通常、80℃以上190℃以下である。この温度範囲であると、反応速度およびビウレットの分解が抑制される点で好ましい。
【0076】
反応圧力は特に限定されないが、通常、大気圧下である。
【0077】
一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させる方法に特に制限はないが、回分式、連続式のどちらの方法でも実施できる。
【0078】
たとえば、回分式で反応を行う場合は、溶媒とビウレットの混合物を80℃以上150℃以下に加熱し、一般式(1)で表される化合物とビウレットの量比が1:1のモル比となるまで一般式(1)で表される化合物を添加する方法が挙げられる。溶媒、ビウレット、N,N’−ジアルキルエチレンジアミン全量を一括して反応器中で混合して反応させる方法もあるが、この場合は使用するN,N’−ジアルキルエチレンジアミンの沸点を考慮し、所定の反応温度を保持できるように適宜制御する必要がある。
【0079】
連続式で反応を行う場合は、加熱した溶媒中に所望の反応温度を保持しながらN,N’−ジアルキルエチレンジアミンとビウレットを連続的に反応器に添加し、反応混合物を連続的に反応器から抜出す。
【0080】
前記の製造方法により得られる一般式(2)で表される化合物は、公知の方法で反応混合物から分離することができる。たとえば、反応混合物中に一般式(2)で表される化合物の結晶が析出した状態であれば、これを濾過して分離することができる。反応混合物中に一般式(2)で表される化合物の結晶が析出していない場合は、使用した溶媒を蒸留により留去するか、または一般式(2)で表される化合物を溶解しないが反応に使用した溶媒とは混和する溶媒を添加して一般式(2)で表される化合物の結晶を析出させるなどして一般式(2)で表される化合物を分離することができる。
また、上記一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で表される化合物とビウレットとを反応させて一般式(3)で表される化合物を製造する際の中間体として得てもよい。このとき、一般式(2)で示される化合物は、反応混合物から分離されなくてもよい。
【0081】
以上に説明した本発明の製造方法は、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造方法として有用である。また、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンの製造に有用な1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの製造方法として有用である。
【0082】
また、従来技術である1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンと尿素からの1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン類の製法では、製造条件を制御しないとイミン体が副生したが、本発明の1,5−ジアルキル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンとビウレットからの1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン類の製法とすることにより、一般式(1)で示される化合物およびビウレットの添加条件の特段の制御をしなくしても、イミン体が副生しない。
【実施例】
【0083】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略記する。)の分析はガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略記する。)分析に依った。
【0084】
GC分析の条件は次の通りである。
カラム:Thermon1000+KOH(10+3%)、3mm×2m
キャリアーガス:窒素ガス
カラム温度:170℃
【0085】
(実施例1)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500mlガラス製反応器にDMI130.0gおよびビウレット(東京化成工業株式会社品)30.9gを仕込み、内容物を120℃に昇温した。反応器内にN,N’−ジメチルエチレンジアミン26.5gを4時間かけて滴下し、滴下終了後、120℃で2時間保持した。反応液を25℃まで冷却し、196.5gの反応液を得た。冷却後の反応液中には1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの結晶が析出していた。結晶を分離して回収した。この結晶をトルエン60mlで洗浄し、次いでn−ヘキサン60mlで洗浄した後、乾燥し、1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオン32.2gを得た。
【0086】
1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの収率は、仕込んだN,N’−ジアルキルエチレンジアミンに対し68.2モル%であった。
【0087】
得られた1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの融点、1H−NMRを測定した結果、前記の非特許文献2記載の値と合致した。
【0088】
(実施例2)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500mlガラス製反応器にDMI257.5gおよびビウレット(東京化成工業株式会社品)61.8gを仕込み、内容物を120℃に昇温した。反応器内にN,N’−ジメチルエチレンジアミン44.1g(0.5モル)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、120℃で4時間保持した。反応液を0℃まで冷却して1時間保持し、350.9gの反応液を得た。冷却後の反応液中には1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの結晶が析出していた。結晶を分離して回収した。この結晶をトルエン175.5gで洗浄した後、乾燥し、1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオン67.8gを得た。
【0089】
1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの収率は、仕込んだN,N’−ジアルキルエチレンジアミンに対し86.3モル%であった。
【0090】
得られた1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの融点、1H−NMRを測定した結果、前記の非特許文献2記載の値と合致した。
【0091】
1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンの結晶を濾過分離した際の濾液およびトルエン洗浄液436.4g中に、DMIが264.2g含まれていた。これより、DMI仕込み量257.5gを差し引くと、反応により生成したDMIが6.7g(0.0587モル)相当あり、仕込んだN,N’−ジアルキルエチレンジアミンに対し11.7モル%であった。
【0092】
また、仕込んだN,N’−ジアルキルエチレンジアミンに対し、1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンおよびDMIへの合計転化率は98.0モル%となる。
【0093】
(実施例3)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた200mlガラス製反応器に、実施例1で得られた1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオン26.0gと溶媒の1,3−ジプロピル−2−イミダゾリジノン130.0gを仕込み、200℃に加熱して同温度で2時間保持した。25℃まで冷却して得られた反応液の重量は155.5gであった。反応液の一部をGC分析した結果、反応液中のDMIの濃度は11.4重量%であり、反応液中のDMIの含有量は17.5gであった。この時点でのDMIの収率は仕込んだ1,5−ジメチル−[1,3,5]トリアゼパン−2,4−ジオンに対し93.9モル%であった。
【0094】
反応液を5段相当の蒸留塔を用いて蒸留することにより、純度99.7重量%のDMIを15.4g得た。
【0095】
(実施例4)
攪拌機、冷却管、温度計を備えた500mlガラス製反応器にDMI159.8gおよびビウレット(東京化成社品)51.5gを仕込み、内容物を120℃に昇温した。同温度で反応器内にN,N’−ジメチルエチレンジアミン44.1gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、200℃に昇温し、次いで、N,N’−ジメチルエチレンジアミン44.1gを2時間30分かけて反応器内に滴下し、滴下終了後、200℃から210℃で1時間保持した。
【0096】
反応液を25℃まで冷却し、268.1gの反応液を得た。反応液の一部をGC分析した結果、反応液中のDMIの濃度は97.5重量%であった。反応器に最初に仕込んだDMIの量を差し引いた、生成したDMIの収率は滴下したN,N’−ジメチルエチレンジアミンに対し、89.3モル%であった。
【0097】
反応液のガスクロマトグラフィーのチャートを図1に示す。この図で明らかなように1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンイミンは検出できなかった。
【0098】
反応液を5段相当の蒸留塔を用いて蒸留することにより、純度99.7重量%のDMIを252.0g得た。
【0099】
(比較例1)
500mlのオートクレーブにN,N'−ジメチルエチレンジアミン88g、尿素66gおよびDMI100gを仕込んだ。反応温度210℃迄約30分で昇温し、その温度で3時間反応させた。系内圧力は最高約15kg/cm2 G迄達した。
【0100】
反応終了後冷却し内容物を取り出すと、白色結晶を含んだスラリー液であり、このものを濾過し得られた濾過液の重量は200.1g、DMI純度は97.3重量%であった。オートクレーブ中に最初に仕込んだDMIの量を差し引いて求めたDMIの収率は仕込んだN,N'−ジメチルエチレンジアミンに対し、81.0モル%であった。また、この濾過液中には1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンイミンが0.8重量%検出された。ガスクロマトグラフィーのチャートを図2に示す。
【0101】
引き続き濾過液を実施例1と同条件下蒸留した結果、純度99.2重量%のDMI188gを得たが、このものには1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンイミン0.7重量%が検出された。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】実施例4で得られた1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンのガスクロマトグラフィーのチャートを示す図である。
【図2】比較例1で得られた1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノンのガスクロマトグラフィーのチャートを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを非プロトン性極性溶媒の存在下で反応させて、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を中間体として経由して、下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法。
【請求項2】
一般式(1)
【化4】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を1.9以上2.1以下とし、非プロトン性極性溶媒の存在下で、80℃以上300℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(2)
【化5】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を中間体として経由して、下記一般式(3)
【化6】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法。
【請求項3】
下記一般式(1)
【化7】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を1.9以上2.1以下とし、非プロトン性極性溶媒の存在下で、80℃以上300℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(3)
【化8】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法。
【請求項4】
前記非プロトン性極性溶媒が、前記一般式(3)で表される化合物である、請求項1乃至3いずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(1)
【化9】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物とビウレットとを、前記ビウレットに対する前記一般式(1)で表される化合物のモル比を0.8以上1.2以下とし、80℃以上190℃以下の反応温度で反応させて、下記一般式(2)
【化10】

(式中、Rは炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)で表される化合物を得る製造方法。

【図1】
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【図2】
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