説明

1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成法

【課題】テトラフルオロプロペン(1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)の調製方法を提供する。
【解決手段】一の態様において、CF3X1の化合物をCX2H及び均等物であるCHX3の化合物(式中、X1,X2,及びX3は各々独立して、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択される)と反応させて、CF3CH及び均等物であるCHX3の化合物(式中、X3は上記定義したとおりである)を含む反応生成物を生成させ、そして、X3がフッ素でない場合は、その化合物をフッ素化させて、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させることを含む、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロ化されたプロペンの調製法に関する。より具体的には、本発明は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、CFCH=CHF(HFO−1234ze)の調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロプロペンは、種々のホモポリマー及びコポリマーの調製におけるモノマーとして有用であることが知られている。例えば、米国特許3,472,826には、ポリエチレン製造におけるコモノマーとしてテトラフルオロプロペンが記載されている。米国特許出願10/694,273は、本発明の譲受人に譲渡されたものであり、地球温暖化の可能性の低い冷媒として、また、種々のタイプのフォーム形成に関して使用するための発泡剤としてのCFCH=CFHの使用を開示している。更に、CFCH=CFHは、産業上の化学薬品を製造するための中間体として有用な種々の化合物へと官能化することもできる。
【0003】
テトラフルオロプロペン化合物を調製する幾つかの方法が知られている。例えば、米国特許6,548,719B1には、一般的に、相移動触媒である、式CFC(R)C(R)(式中、少なくとも1個の水素及び1個のハロゲンが隣接する炭素原子上に存在することを条件として、R置換基はこの特許に定義されるとおりである)の化合物と少なくともひとつのアルカリ金属水酸化物の存在下での脱ハロゲン化水素による広い範囲のフルオロオレフィンの生成が記載されている。この特許は、数多くのテトラフルオロプロペン類を調製するために有効かつ有用である方法を開示しているが、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの調製のための方法は具体的には開示していない。
【0004】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの調製は、米国特許5,986,151に開示されている。この特許は、気相において触媒作用によりCFCHCFHを脱フッ化水素化してCFCH=CHFを与えることを含む方法を開示している。また、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの調製は、米国特許6,124,510にも開示されている。この特許も、気相において触媒作用によりCFCHCFHを脱フッ化水素化することを含む方法を開示している。これらの特許はそれぞれ、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を出発試薬として単離する必要性により制限されるという不都合があり、費用、入手可能性、及び/又はその他の理由で望ましくない場合がある。
【0005】
テトラフルオロプロペン化合物を調製するための他の方法は幾つか知られている。例えば、米国特許2,931,840には、塩化メチルのテトラフルオロエチレンによる熱分解、または別の態様では、塩化メチルのクロロジフルオロメタンによる熱分解を伴う反応が記載されている。この特許は、この方法により2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成できることを指摘しているが、かかる方法が1,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを生成するのに有効であることは指摘していない。更に、出願人らは、この特許に記載される方法には、いずれの場合でも反応体として塩化メチルを使用する必要性があるという不都合があることを認識するにいたった。より特定的には、塩化メチルの沸点(−24℃)が所望の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの沸点(−28℃)に比較的近いことから、未反応の塩化メチルを反応生成物流れから除去することは比較的困難となる。
【0006】
また、熱分解反応による2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生成は、米国特許4,086,407にも開示されている。この特許に開示される方法には、比較的複雑でまれな化合物、すなわち、1−トリフルオロメチル−1,2−を熱分解反応の出発物質として使用する必要があるという不都合がある。そのうえ、上述の米国特許2,931,840のように、‘407特許は、この方法が1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生成に有効であることを開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人らは、少なくとも上述の従来技術の欠点を克服する1,3,3,3−テトラフルオロプロペン合成のための方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は、1つの態様にしたがえば、(a)式(I)CFの化合物を式(II)CXH=CHXの化合物と反応させて(式中、X、X、及びXは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より各々独立して選択される)、式(III)CF
H=CHX(式中、Xは前記のとおりである)の化合物を含む反応生成物を生成し;そして、(b)式(III)中のXがフッ素でない場合に、式(III)の化合物をフッ素化して、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成すること、を一般に含む。限定するものではなく、方法の簡便のため、この態様にしたがった方法は、本明細書中において、“ハイドロハロゲン付加法”と呼ぶことがある。
【0009】
本発明は、別の態様にしたがえば、(a)少なくとも1種の式(I)R−R−R(式中、R及びRは、各々独立して、H、F、Cl、Br、I、置換又は非置換の炭素1個、2個又は3個のアルキル、R又はRの他の一方にも結合したかあるいはRへの第二の結合と結合した、置換又は非置換の炭素1個又は2個のアルキレン、又は、R又はRの他の一方にも結合した−O−であり、そしてRは、−CF−、−C−、又は
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、少なくとも2つのxはFであるとの条件で、xは、各々独立して、H、F、Cl、Br、I、あるいは、置換又は非置換の炭素1個、2個又は3個のアルキルである)である)の化合物を提供し;そして、(b)少なくとも1種の式(I)の化合物を、3,3,3,1−テトラフルオロプロペンを形成するのに有効な条件に曝露すること、を含む。一定の好ましい態様において、曝露工程は、前記化合物(単数又は複数)を、好ましくは前記化合物(単数又は複数)を一緒に若しくは別々に導入することにより、当該化合物(単数又は複数)を熱分解させるのに有効な条件に曝露することを含む。限定するものではないが、簡便さの目的のため、この態様にしたがった方法は、本明細書中において、“熱分解法”と呼ぶことがある。
【0012】
本発明は、このように、容易に入手可能で比較的費用のかからない出発物質からスケールアップするように修正することができる、CFCH=CFHの生成のための方法に向けられている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1,3,3,3テトラフルオロ−2−プロペン,CFCH=CHF(HFC−1234ze)のシス−及びトランス−異性体の両方の生成のための方法に向けられている。
【0014】
簡便さの目的のため、限定するものではないが、ハイドロハロゲン付加法と熱分解法は以下に別々に説明する。
【0015】
ハイドロハロゲン付加法
式(I)の化合物を式(II)の化合物と反応させる工程は、数多くの具体的な方法条件に対して修正することができ、本明細書中に含まれる教示にしたがった工程と、すべてのそのような変更は、本発明の広い範囲内に含まれる。一般的に、反応工程は、液相反応(好ましくは溶媒中で実施される)を含むことが好ましい。適する溶媒としては、メタノール、エタノール、テトラフドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。反応の温度は、好ましくは、約5℃〜約250℃であり、より好ましくは、約75℃〜約125℃である。また、一般的に、反応は、Pd/C、又は、活性炭上にPd 約1%〜約10%とCu 約99%〜約90%の存在下で起こることが好ましい。反応の圧力は、好ましくは、約2psig〜約100psigに維持される。この反応は、多くの態様において、Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry (1999), (11), 2481-2484(参照により本明細書中に援用される)に一般的に記載されているように実施することができる。一定の態様において、反応は、オートクレーブ中で行うことができ、NaOHなどを添加して、副生物であるHClを中和させる。
【0016】
反応工程(a)により、式(III)の化合物(式中、Xはフッ素ではない)を生成させる態様においては、次いで、得られる化合物をフッ素化反応に曝露する。フッ素化条件の数多くのバリエーションが本発明の目的に有効であり、すべてのそのような条件は本発明の広い範囲内に含まれると企図されている。フッ素化は、気相又は液相のいずれかにおいて起こりうると企図されているが、気相フッ素化が一般に好ましい。気相フッ素化について、一般的には、触媒作用による(好ましくはCr−酸化物(Cr)の触媒作用による)、HFの存在下での(好ましくは無水HFガスの存在下での)、約250℃〜約500℃の温度の気相フッ素化を利用することが好ましい。一定の好ましい態様において、流通反応器をフッ素化反応のために使用する。フッ素化反応は、一般的には、1,3,3,3テトラフルオロ−2−プロペンを含む反応生成物を生成する。
【0017】
一定の態様において、フッ素化反応は、例えばフッ化水素の存在下で適する条件のもとで工程(a)の反応を行うことにより、工程(a)の反応と実質的に同時に起こってもよい。
【0018】
反応工程(a)は、存在する場合にはフッ素化工程(b)とともに、好ましくは、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物流れ、より好ましくは、主要な割合の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物流れ、更により好ましくは、少なくとも約45%〜約60%の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物流れを生成する。
【0019】
反応生成物流れ中に含有されるすべての副生物は、蒸留などの既知の手段により望まれる程度に除去することができる。
【0020】
熱分解法
この態様にしたがった方法は、好ましくは熱分解条件下で、1種又はそれより多い化合物を反応させて、テトラフルオロプロペン(好ましくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を生成させることを包含する。反応体は、好ましくは、すでに定義したように、式(I)R−R−Rの1種又はそれより多い化合物を含む。出願人は、いかなる特定の操作理論により括ったり、その操作理論に結びつけたりすることを望むものではないが、式(I)の1種又はそれより多い化合物は、適する熱分解条件下で、ジフルオロカルベンラジカルとジフルオロエチレン(フッ化ビニリデンが好ましい)とを含む反応混合物を生成することができ、これらは、直接、あるいは、1種又はそれより多い中間体を介して、好ましいテトラフルオロプロペン、特に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンへと転化されると考えられる。このように、本発明の一の側面は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを生成するのに有効な条件下で、ジフルオロカルベンラジカルとジフルオロエチレン(好ましくは、フッ化ビニリデンであるが、1,2ジフルオロエチレンの場合もある)とを含有する反応混合物を提供する方法である。理論により括ったり、理論に結びつけたりするものではないが、熱分解反応は、ジフルオロカルベン(:CF)をジフルオロエチレン(好ましくは、フッ化ビニリデン(CF=CH))に付加して、仮定される環式の中間体(多くの生成物へと分解し、かかる生成物のうち1つがCFCH=CFHである)を形成することを包含すると予測される。このことは、以下のスキーム1のように表すことができる:
スキーム1
CF+CF=CH → 環式の中間体 → CFCH=CFH(1)
別の可能性のある反応スキーム(本明細書中においてスキーム2と呼ぶことがある)は、理論により括るものではないが、フッ素をフッ化ビニリデンから分離し、フッ素ラジカル及び−CH=CHFラジカル(これらは、次いで、ジフルオロカルベンラジカルの存在下で反応して、CFCH=CFHを生成する)とすることを包含する。この反応は、好ましい態様に関与しており、ジフルオロカルベン(:CF)をC−F結合に挿入することを包含すると考えられている。
【0021】
更に別の代替的な機構(本明細書中においてスキーム3と呼ぶことがある)は、理論により括るものではないが、熱分解反応が、ジフルオロカルベン(:CF)をフッ化ビニリデンCF=CHに付加して、テトラフルオロプロパンのような環式の中間体を形成することを包含し、この環式中間体が、熱分解条件下で分解して、他の化合物のうち、CFCH=CFHを生成すると企図される。したがって、この反応の一定の態様は、ジフルオロカルベン(:CF)をC=Cに付加して、シクロプロパン中間体を形成することを包含し、これが次いで開環してテトラフルオロプロパンを形成すると考えられる。
【0022】
これまでの説明に照らして、式(I)にしたがった一定の化合物は、反応体として追加の化合物を含めることなく、熱分解処理を受けて1,3,3,3−テトラフルオロプロパンを生成することができると企図される。例えば、本発明の方法は、一定の態様において、テトラフルオロシクロプロパン、すなわち、式(I)R−R−R(式中、Rは−CF−であり、Rは、Rにも結合された、2個のフッ素で置換された炭素1個のアルキレンであり、そしてRは、Rにも結合された、非置換の炭素1個のアルキレンである)の化合物を熱分解条件に曝露させることを含む。より特定的には、かかる環式化合物(好ましくは、1,1,2,2テトラフルオロシクロプロパンなど)は、これまでに説明したいずれかの機構を介して、熱分解反応を受けて、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させることができる。理論に括るものではないが、適する熱分解反応条件下で、かかる環式化合物は、ジフルオロカルベンラジカルとフッ化ビニリデンを生成し、これらは次いで、上述のスキーム1にしたがって反応して、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成すると考えられる。別法として、又は、補充として、かかる環式化合物は、上述のスキーム2の中間体の構造を提供し、その後、追加の中間体の有無にかかわらず、反応して、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成する。
【0023】
他の態様において、本発明の方法は、2種の化合物、好ましくは式(I)にしたがった2種の化合物を共熱分解することを含む。ここで、第一の化合物は、反応条件下においてジフルオロカルベンラジカルを生成することができ、第二の化合物は、反応条件下においてフッ化ビニリデンを生成することができる。当業者であれば、本明細書中に含まれる教示に照らして、ジフルオロカルベンラジカルを生成することができる非常に多くの化合物を容易に識別することができると考えられ、そのような化合物はすべて本発明の広い範囲に含まれる。同様に、当業者であれば、本明細書中に含まれる教示に照らして、フッ化ビニリデンを生成することができる非常に多くの化合物を容易に識別することができ、そのような化合物もすべて本発明の広い範囲に含まれる。ジフルオロカルベンラジカルを生成することができる好ましい化合物としては、CFHCl(HCFC−22,bp−41℃)、ヘキサフルオロプロペンエポキシド、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロシクロプロパンが挙げられる。フッ化ビニリデンを生成又は提供することができる好ましい化合物の例としては、CFClCH(HCFC−142b)フッ化ビニリデン、CFCH、及びCFHCHClが挙げられる。
【0024】
一定の共熱分解態様において、少なくとも、式(I)の第一の化合物(以下、式I化合物と呼ぶ)(式中、Rは−CF−である)と、式(I)の第二の化合物(以下、式I化合物と呼ぶ)(式中、Rは−C−又は
【0025】
【化2】

【0026】
であり、少なくとも2つのXがFであることを条件として、各々のXは独立して、H、F、Cl、Br、I、あるいは、置換又は非置換の炭素数1、2又は3個のアルキルである)とを、共熱分解することが好ましい。
【0027】
括るものではないが、出願人らは、式(I)化合物は熱分解条件下においてジフルオロカルベンラジカルを提供し、式(I)化合物は熱分解条件下においてフッ化ビニリデンを生成又は提供すると考えている。好ましい式(I)化合物の例としては、CFHCl(HCFC−22,bp−41℃)、ヘキサフルオロプロペンエポキシド、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロシクロプロパンが挙げられる。好ましい式(I)化合物の例としては、CFClCH(HCFC−142b)フッ化ビニリデン、CFCH、及びCFHCHClが挙げられる。一定の好ましい態様について、CFClCH、CFCH、及びCFHCHCl(又はこれらの組み合わせ)などのおよそ1モルの式(I)化合物を約0.2〜約1.5モルの式(I)化合物とともに共熱分解することが好ましい。
【0028】
一定の好ましい態様において、式(I)化合物1モルあたり、約1モルのCHFCl又はヘキサフルオロプロペンオキシド又はこれらの組み合わせを使用することが好ましい。他の態様において、式(I)化合物1モルあたり、約1/2モルのCF=CF、あるいは、式(I)化合物1モルあたり、約1/3のペルフルオロシクロプロパンを使用することが好ましい。
【0029】
本明細書中に含まれる教示に照らして、当業者であれば、本発明の熱分解反応に有効な数多くの様々な反応条件を利用することができ、そのような条件はすべて本発明の広い範囲に含まれると企図される。 “熱分解”という用語及び同様の用語は、本明細書中に使用するように、1種又はそれより多い化合物を当該化合物の熱分解を達成するのに有効な条件に曝露することをいう。好ましい態様において、熱分解反応は、反応体、好ましくは式(I)にしたがった1種又はそれより多い化合物を、所望のテトラフルオロプロペン、特に1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成させるのに有効な接触時間にて、約670℃〜約1000℃、更により好ましくは約700℃〜約900℃の温度に曝露することを含む。好ましい態様において、接触時間は、約0.5秒〜約10秒、更により好ましくは約0.5秒〜約3秒である。当業者には知られているように、反応体の温度と接触時間は、反応体の供給速度、反応器圧力、反応器容積などのプロセス条件に対して調節することにより、変更することができる。
【0030】
反応生成物は、所望の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに加えて、未反応の出発物質と副生物を含有し、したがって、下流の処理には一般的に、比較的精製された生成物を得るための、洗浄(HClなどの酸性気体を除去するため)及び蒸留などの単位操作が含まれると企図される。より特定的には、生成物混合物は、実質的な量のCFCF=CH及びCFCH=CHFとともに、様々な量のフッ素化されたプロペン及びエチレン、例えばCFHCF=CF及びCF=CF、を含有すると予測される。一定の好ましい態様において、フッ素化されたエチレンは、反応器中に再循環することができる。CFHCH=CFはCFCH=CHFに異性化することができる。所望な生成物であるCFCH=CFHの典型的な収率は、約10%〜25%である。
【0031】
本発明の反応は、非常に多くの環境において行われてもよく、そのような環境はすべて本発明の広い範囲に含まれる。好ましい態様において、本発明の熱分解反応は、反応器中で、好ましくは管状反応器中で行われる。そのような反応器の情報に関しては数多くの材料及び構成が利用可能であると企図されるが、一般的には、管状容器は白金や銀などの貴金属から形成されるのが好ましい。また、好ましい反応器においてニッケルを構成材料として使用してもよい。かかる好ましい反応器の操作において、反応器は、所望の熱分解条件をつくるように加熱された炉中に含有される。電気炉やガス点火炉をはじめとする、既知で入手可能な任意の熱源を使用することができる。
【0032】
以下の実施例は、本発明の具体的な例示として与えられる。しかし、本発明は、実施例において示される具体的な詳細に限定されないことを銘記すべきである。CFCH=CFHのすべての異性体(シス及びトランス)は本発明の範囲に含まれる。
【0033】
実施例
実施例1
還元的カップリングを介したCFCH=CFHの合成
高圧オートクレーブ中において、約0.005モルのPd/C、又は、活性炭上にある約1%〜約10%のPdと約99%〜約90%のCuとの混合物の存在下、約15℃〜約100℃の温度にて、CFBr(0.25モル)を、5モルのメタノール中において0.25モルのClHC=CHFと反応させる。また、この反応器中に、0.3モルのH2ガス、0.6モルのNaOH又はNa2CO3、及び0.001モルのテトラブチルアンモニウムブロミドを添加する。約25℃〜約150℃にて約6〜約20時間撹拌したあと、オートクレーブを冷却して、反応生成物をオーバーヘッドガスの形態で得る。反応生成物は、収率約5〜10%のCFCH=CHFを含む。
【0034】
実施例2〜14
以下の実施例において使用する反応器は、白金でライニングされた6mm内径×24インチ(61cm)の管からなり、8インチ(20.3cm)(加熱面積5.5インチ(14cm))の電気炉において加熱される。生成物ガスをGC−MSにより分析する。
【0035】
実施例2
100mL/分のCHFClと100mL/分のCFClCHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0036】
実施例3
100mL/分のCHFClと100mL/分のCF=CFとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、10モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0037】
実施例4
100mL/分のCHFClと100mL/分のCFCHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、20モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0038】
実施例5
100mL/分のCHFClと100mL/分のCHFCHClとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0039】
実施例6
50mL/分のCF=CFと100mL/分のCF=CHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、13モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0040】
実施例7
50mL/分のCF=CFと100mL/分のCFClCHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0041】
実施例8
100mL/分のペルフルオロプロペンオキシドと100mL/分のCF=CHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0042】
実施例9
100mL/分のペルフルオロプロペンオキシドと100mL/分のCFClCHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、16モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0043】
実施例10
100mL/分のペルフルオロプロペンオキシドと100mL/分のCFHCHClとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0044】
実施例11
50mL/分のペルフルオロシクロプロパンと150mL/分のCFClCHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、14モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0045】
実施例12
50mL/分のペルフルオロシクロプロパンと150mL/分のCF=CHとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、18モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0046】
実施例13
50mL/分のペルフルオロシクロプロパンと150mL/分のCFHCHClとの混合物を、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。
【0047】
実施例14
200mL/分の1−H,1−H−テトラフルオロシクロプロパンを、約1.19秒の接触時間、約700℃〜約900℃の温度にて、上述の反応器に通過させる。気体の反応生成物を、副生物であるHClを含まないよう洗浄して、乾燥させ、GC−MSにより分析する。洗浄して、乾燥させた生成物流れは、15モルパーセントのテトラフルオロプロペンを含有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)CFの化合物を式(II)CXH=CHXの化合物と反応させて(式中、X、X、及びXは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群より各々独立して選択される)、式(III)CFCH=CHX(式中、Xは前記のとおりである)の化合物を含む反応生成物を生成し;そして、
b)式(III)中のXがフッ素でない場合に、式(III)の化合物をフッ素化して、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを生成すること
を含む、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成法。
【請求項2】
反応工程(a)が、式(I)の化合物及び式(II)の化合物を液相反応器中で反応させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応器に触媒が含まれている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
がBrであり、XがClであり、そしてXがFである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
CFHCl及びCFClCHを約1:1のモル比で含む反応体混合物を提供し、そして前記反応体混合物を、約0.5〜10秒の接触時間及び約700℃〜約900℃の温度にて共熱分解することを含む、テトラフルオロプロペンを調製するための方法。
【請求項6】
CFHCl及びCF=CHを約1:1のモル比で含む反応体混合物を提供し、そして前記反応体混合物を、約0.5〜10秒の接触時間及び約700℃〜約900℃の温度にて共熱分解することを含む、テトラフルオロプロペンを調製するための方法。
【請求項7】
CFHCl及びCFCHを約1:1のモル比で含む反応体混合物を提供し、そして前記反応体混合物を、約0.5〜10秒の接触時間及び約700℃〜約900℃の温度にて共熱分解することを含む、テトラフルオロプロペンを調製するための方法。
【請求項8】
CFHCl及びCFHCHClを約1:1のモル比で含む反応体混合物を提供し、そして前記反応体混合物を、約0.5〜10秒の接触時間及び約700℃〜約900℃の温度にて共熱分解することを含む、テトラフルオロプロペンを調製するための方法。
【請求項9】
a)少なくとも1種の式(I)R−R−R(式中、R及びRは、各々独立して、H、F、Cl、Br、I、置換又は非置換の炭素1個、2個又は3個のアルキル、R又はRの他の一方にも結合したかあるいはRへの第二の結合と結合した、置換又は非置換の炭素1個又は2個のアルキレン、又は、R又はRの他の一方にも結合した−O−であり、そしてRは、−CF−、−C−、又は
【化1】

(式中、少なくとも2つのxはFであるとの条件で、xは、各々独立して、H、F、Cl、Br、I、あるいは、置換又は非置換の炭素1個、2個又は3個のアルキルである)である)の化合物を提供し;そして、
b)少なくとも1種の式(I)の化合物を、3,3,3,1−テトラフルオロプロペンを形成するのに有効な条件に曝露すること
を含む、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの調製法
【請求項10】
ジフルオロカルベンラジカル及びフッ化ビニリデンを含む反応混合物を生成することができる1種又はそれより多い化合物を熱分解し、そして前記反応混合物を1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに転化することを含む、テトラフルオロプロペンの調製法。
【請求項11】
約1モルのCF=CF及び約2モルのCF=CHの混合物を、0.5〜10秒の範囲内の接触時間及び700〜900℃の範囲内の温度で共熱分解し、CF=CHをCFHCHCl、CFCH及びCFCHClにより置換することができる、テトラフルオロプロペンの調製法。
【請求項12】
約1モルのパーフルオロプロペンオキシド及び約1モルのCFHCHClの混合物を、0.5〜10秒の範囲内の接触時間及び700〜900℃の範囲内の温度で共熱分解し、CFHCHClをCFCH、CFCHCl及びCF=CHにより置換することができる、テトラフルオロプロペンの調製法。
【請求項13】
約1モルのパーフルオロシクロプロパン及び約3モルのCFHCHClの混合物を、0.5〜10秒の範囲内の接触時間及び700〜900℃の範囲内の温度で共熱分解し、CFHCHClをCFCH、CFCHCl及びCF=CHにより置換することができる、テトラフルオロプロペンの調製法。
【請求項14】
1−H,1−H−テトラフルオロシクロプロパンを、0.5〜10秒の接触時間及び700〜900℃の温度で熱分解する、テトラフルオロプロペンの調製法。

【公開番号】特開2011−236227(P2011−236227A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−142053(P2011−142053)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2007−511040(P2007−511040)の分割
【原出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】