説明

1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造するためのプロセス

【課題】経済的で、既知のプロセスよりも高い収率を示す1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)製造法の提供。
【解決手段】(A)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233zd)を触媒存在下、弗化水素と反応させ1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)を中間生成物をとして得る。(B)該中間生成物を触媒の存在下、脱塩化水素または脱弗化水素反応を同じ反応器中で同時に行うことにより、目的の1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)を製造するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、2段階気相プロセスによりHFC-1234zeを製造するためのプロセスに関する。本プロセスは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233zd)の1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)への弗化水素化(hydrofluorination)を含み、それにHCFC-244faの脱塩化水素およびHFC-245faの脱弗化水素(dehydrofluorination)が続く。
【背景技術】
【0002】
伝統的には、トリクロロフルオロメタンおよびジクロロジフルオロメタンのようなクロロフルオロカーボン類(CFC)は、冷媒、発泡剤および気体滅菌のための希釈剤として使用されてきた。近年、あるクロロフルオロカーボン類が地球のオゾン層に有害であり得るという広く行き渡った懸念がある。結果として、塩素置換基をほとんどあるいはまったく含まないハロカーボン類を用いようという世界的な試みがある。したがって、ハイドロフルオロカーボン類、あるいは炭素、水素および弗素しか含まない化合物の製造は、溶媒、発泡剤、冷媒、洗浄剤、エアゾール噴射剤、熱媒体、誘電体、消火組成物およびパワーサイクル作動流体として使用するための環境的に望ましい製品を提供するために高まる関心の主題となっている。この点については、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze)は、オゾン枯渇可能性(Ozone Depletion Potential, ODP)がゼロで、地球温暖化可能性(Global Warming Potential, GWP)が低い冷媒、発泡剤、エアゾール噴射剤、溶媒などとして、ならびに弗素化モノマーとしても用いられる可能性を有する化合物である。
【0003】
HFC-1234zeを製造することは、当業界で既知である。例えば、米国特許5,710,352は、HCFC-1233zdおよび少量のHFC-1234zeを生成するための1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)の弗素化を教示している。米国特許5,895,825は、HFC-1234zeを生成するためのHCFC-1233zdの弗素化を教示している。米国特許6,472,573も、HFC-1234zeを生成するためのHCFC-1233zdの弗素化を教示している。米国特許6,124,510は、強塩基もしくはクロム系触媒を用いるHFC-245faの脱弗化水素によるシスおよびトランス異性体の生成を教示している。さらに、欧州特許EP 0939071は、HCFC-1233zdとHFC-1234zeとの共沸混合物である中間反応生成物を通したHCC-240faの弗素化によるHFC-245faの生成について記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの既知のプロセスはその製品収率に比較して経済的ではないと決定づけられている。したがって、本発明は、先行技術のプロセスよりも経済的で、既知のプロセスよりも高い収率であるHFC-1234zeを生成するための別のプロセスを提供する。特に、HFC-1234zeを、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233zd)の1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)への弗化水素化およびそれに続くHCFC-244faの弗素化で1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)を生成し、その後のHCFC-244faの脱塩化水素および苛性溶液との反応によるHFC-245faの脱弗化水素を含む2工程反応により生成してもよいことが今やわかっている。別の方法として、HCFC-244faの脱塩化水素およびHCFC-245faの脱弗化水素を、触媒の不在下もしくは存在下で熱分解により実施してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを、気相で反応器において弗素化触媒の存在下1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む中間生成物を生成するのに十分な条件下で、弗化水素と反応させ;そして
b)該中間生成物を、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを脱塩化水素および/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを脱弗化水素するのに十分な条件下で、苛性溶液と反応させ、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成することを含む、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを製造するためのプロセスを提供する。
【0006】
本発明は、
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを、気相で反応器において弗素化触媒の存在下1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む中間生成物を生成するのに十分な条件下で、弗化水素と反応させ;そして
b)該中間生成物を、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを脱塩化水素および/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを脱弗化水素するのに十分な条件下で、熱分解し、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを生成することを含む、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを製造するためのプロセスも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本プロセスの第一工程(a)は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233zd)を気相で、好ましくは弗素化触媒の存在下で、弗化水素(HF)と反応させることによる1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)の生成を含む。この反応は、下記のごとく進行する:
a)CF3CH=CHCl+HF → CF3CH2CHClF+HF → CF3CH2CHF2+HCl
HCFC-1233zd HCFC-244fa HFC-245fa
成果は、HCFC-244faとHFC-245faという2つの反応生成物の反応混合物である。本発明の好ましい実施態様において、この反応のためのHF対HCFC-1233zdのモル比は、好ましくは約1:1〜約50:1、より好ましくは約2:1〜約30:1、もっとも好ましくは約3:1〜約20:1の範囲である。
【0008】
用いられる1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFC-1233zd)は、完全にトランス異性体形でも、完全にシス異性体形でもよいし、あるいはトランスおよびシス異性体形の組合せでもよい。1つの実施態様において、HCFC-1233zdは、約60%〜約100%のトランス異性体形を含み、残りがシス異性体形である。別の実施態様において、HCFC-1233zdは、約70%〜約100%のトランス異性体形を含み、残りがシス異性体形である。さらに別の実施態様において、HCFC-1233zdは、約80%〜約100%のトランス異性体形を含み、残りがシス異性体形である。
【0009】
好ましい弗素化触媒としては、それらに限定はされないが、好ましくは活性炭もしくは弗素化アルミナ上に支持された、遷移金属ハライド類、IVb族およびVb族金属ハライド類ならびにこれらの組合せが挙げられる。より具体的には、好ましい弗素化触媒としては、排他的ではないが、SbCl5、SbCl3、TaCl5、SnCl4、NbCl5、TiCl4、MoCl5、Cr2O3/Al2O3、Cr2O3/AlF3、Cr2O3/炭素、CoCl2/Cr2O3/Al2O3、NiCl2/Cr2O3/Al2O3、CoCl2/AlF3、NiCl2/AlF3およびこれらの混合物が挙げられるが、HFでの前処理後もしくはHFの存在下での反応の間、前記触媒が部分的に弗素化されることは理解されることである。好ましい触媒は、活性炭上に支持されたSbCl3もしくはSbCl5ハライド類である。少なくとも98%の純度を有する弗素化触媒が好ましい。弗素化触媒は、反応を押し進めるのに十分な量で存在する。弗素化反応を適宜の弗素化反応器中で実施してもよいが、ニッケルおよびその合金類などの弗化水素の腐蝕作用に耐性がある材料から構成されていることが好ましく、例としてはHastelloy、Inconel、IncoloyおよびMonel、あるいはフルオロポリマー類でライニングを施された反応器が挙げられる。
【0010】
弗化水素(HF)中の水は、いずれも弗素化触媒と反応し、それを失活させる。したがって、実質的に無水の弗化水素が好ましい。「実質的に無水」により、HFが約0.05重量%未満の水、好ましくは約0.02重量%未満の水を含むことが意図される。しかし、当業者なら、HF中の水の存在は触媒の使用量を増大させることにより償われることを理解する。
【0011】
工程(a)の反応は、好ましくは約50℃〜約200℃、より好ましくは約60℃〜約180℃、もっとも好ましくは約65℃〜約150℃の温度で実施される。工程(a)は、また好ましくは約15psia〜約215psia、より好ましくは約15psia〜約165psia、もっとも好ましくは約30psia〜約100psiaの圧力で実施される。本発明のプロセスにおいて、反応器は、無水HFが反応器に供給される間、好ましくは所望の弗素化反応温度に予熱される。HCFC-1233zdとHFとを、本明細書に記載される所望の温度および圧力で反応器に供給してもよい。本発明の好ましい実施態様において、HCFC-1233zdおよびHFのいずれかもしくは両方は、反応器に入る前に前気化もしくは予熱される。別の方法として、HCFC-1233zdおよびHFは、反応器内部で気化される。弗素化反応の間、HCFC-1233zdとHFとは、気相において弗素化触媒と反応させられる。反応体蒸気は、約0.01〜約240秒、より好ましくは約0.1〜約60秒、もっとも好ましくは約0.5〜約20秒の間弗素化触媒と接触させられる。
【0012】
好ましい実施態様において、工程(a)のプロセス流れは、触媒床を通って下降方向にある。各使用前に、触媒を好ましくは乾燥させ、前処理し、活性化する。反応器の所定の場所にある間、長引いた使用後に触媒を定期的に再生させることも有利であり得る。Cr2O3、Cr2O3/Al2O3、Cr2O3/AlF3、Cr2O3/炭素、CoCl2/Cr2O3/Al2O3、NiCl2/Cr2O3/Al2O3、CoCl2/AlF3、NiCl2/AlF3触媒に関しては、触媒を窒素もしくは他の不活性ガスの流れにおいて約250℃〜約430℃に加熱することにより前処理を実施することができる。ついで、高触媒活性を得るために、非常に過剰な量の窒素ガスで希釈したHF流れで触媒を処理することにより、触媒を活性化してもよい。触媒の再生を、例えば、空気もしくは窒素で希釈した空気を約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約375℃の温度で、反応器のサイズに応じて約1時間〜約3日間触媒上を通すことなど、当業界で既知のいずれかの手段により達成してもよい。活性炭などの固体支持体上に支持されたSbCl5、SbCl3、TaCl5、SnCl4、NbCl5、TiCl4、MoCl5触媒に関しては、初めに触媒を窒素もしくは他の不活性ガスの流れにおいて約30℃〜約250℃に加熱することにより前処理もしくは活性化を実施することができる。ついで、高触媒活性を得るために、塩素ガスなどの酸化剤の不在下もしくは存在下でHF流れで触媒を処理する。さらに、場合によっては、反応の間反応器に塩素を同時供給することにより触媒を活性に保持してもよい。
【0013】
HCFC-244faおよびHFC-245faを、未反応出発原料およびHClなどの副産物からなる弗素化反応生成物の混合物から、抽出および好ましくは蒸留などの当業界で既知のいずれかの手段により回収してもよい。例えば、蒸留を、好ましくは標準的な蒸留カラム中で約300psig未満、好ましくは約150psig未満、もっとも好ましくは100psig未満の圧力で実施してもよい。蒸留カラムの圧力は、本来蒸留操作温度を決定する。HClは、蒸留カラムを約−40℃〜約25℃、好ましくは約−40℃〜約−20℃で操作することにより回収してもよい。単一あるいは多重式の蒸留カラムを用いてもよい。蒸留物部分には、実質的に反応で生成したHCFC-244fa、HFC-245fa、未反応HFおよびHCl、ならびに他の不純物もすべて含まれる。好ましい実施態様において、HCFC-244faおよびHFC-245faは、本明細書に記載される工程(b)でのさらなる反応のために、他のすべての反応副産物および未反応HFから分離される。好ましい実施態様において、存在するHFのいずれも回収して、その後の弗素化反応に再循環させてもよい。
【0014】
いったん反応工程(a)が完了すると、第二工程(b)は、(a)から得られた実質的にHCFC-244faおよびHFC-245faを含む反応混合物のHFC-1234zeへの転化である。下記反応式が説明するように、HFC-1234zeは、HCFC-244faの脱塩化水素およびHFC-245faの脱弗化水素により生成する。本発明の好ましい実施態様において、HCFC-244faの脱塩化水素およびHFC-245faの脱弗化水素は、これらの中間体のそれぞれを、限定はされないが、KOH、NaOH、Ca(OH)2およびCaOなどの強苛性溶液と高温で反応させることにより達成される。この反応は、例えば、下記のように進行する:
(b.1) CF3-CH2-CHClF + NaOH → CF3-CH=CHF + NaCl
(HCFC-244fa) (HFC-1234ze)
(b.2) CF3-CH2-CHF2+ NaOH → CF3-CH=CHF + NaF
(HFC-245fa) (HFC-1234ze)
脱塩化水素および脱弗化水素反応は、当業界で周知である。本発明の好ましい実施態様において、苛性溶液の苛性強度は、約2重量%〜約100重量%、より好ましくは約5重量%〜約90重量%、もっとも好ましくは約10重量%〜約80重量%である。反応は、好ましくは約20℃〜約100℃、より好ましくは約30℃〜約90℃、もっとも好ましくは約40℃〜約80℃の温度で実施される。反応は、好ましくは大気圧、過圧もしくは真空下で実施される。真空圧は、約5トル〜約760トルであり得る。さらに、苛性溶液中の有機化合物を溶解するのを助けるために、場合によっては溶媒を用いてもよい。この場合によっては実施してもよい工程を、該目的のために当業界で周知の溶媒を用いて実施してもよい。
【0015】
本発明の別の実施態様において、HCFC-244faの脱塩化水素およびHFC-245faの脱弗化水素を、触媒の存在下もしくは不在下で熱分解により実施してもよい。好適な触媒としては、支持された、あるいはバルクの遷移金属ハライド類が挙げられる。好ましい触媒としては、それらに限定はされないが、支持された、あるいはバルクのFeCl3、NiCl2もしくはCoCl2が挙げられる。熱分解のための好ましい温度は、約30℃〜約400℃、より好ましくは約50℃〜約350℃、もっとも好ましくは約75℃〜約300℃である。上述のように、反応は、好ましくは大気圧、過圧もしくは真空下で実施される。真空圧は、約5トル〜約760トルであり得る。
【0016】
工程(a)および工程(b)の反応を、適宜の反応器中で実施してもよい。さらに、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)の脱塩化水素および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)の脱弗化水素を、同じ反応器中で同時に実施してもよいし、あるいはそれらを初めに分離し、ついで別個に1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを該苛性溶液で、あるいは熱分解により脱塩化水素し、別個に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを該苛性溶液で、あるいは熱分解により脱弗化水素してもよい。この2工程プロセスの成果は、HFC-1234zeの高収率である。
【0017】
下記の非制限実施例は、本発明を説明する役割を果たす。
【0018】
実施例1−18
弗素化反応を、直径2.54cm、長さ81cmのMonel(登録商標)反応器で実施した。反応器を電気炉で加熱した。HCFC-1233zd(>99.9%純度)、無水HFおよび場合によっては用いてもよい塩素の反応体を、定流量で反応器に供給した。塩素の流量を、Hasting流量計兼制御器を用いて測定した。反応体HCFC-1233zdおよびHFの流量を制御し、Honeywell PlantScape DCS (Distributive Control System)で測定し、それぞれのソースシリンダーで重量変化により確認した。
【0019】
プロセスの操作の間に反応器を出る有機種の量を測定できるように、反応器の出力を、FluorocolカラムおよびFID検出器を用いて直接インラインGC、すなわち、Perkin Elmer 8500ガスクロマトグラフにサンプリングした。
【0020】
実施例1−18の反応条件および対応する実験結果を、それぞれ表1および2に挙げる。接触時間は、反応体の容積流量(ml/秒)で割った触媒のバルク容積(ml)と定義する。
【0021】
触媒1および2の調製を下に記載する:
触媒1
この触媒は、SbCl5(250g)を粒状Shiro Sagi G2X(4x6メッシュ)活性炭(500ml)に染み込ませることにより作った。それを反応器に充填し、使用前に反応器中で活性化した。活性化手順は下記の通りであった:最初、20ml/分の窒素を触媒上に流した。この窒素雰囲気中で、反応器を100℃に加熱した。ついで、無水HFおよび塩素を、それぞれ0.25g/分および0.3g/分で、触媒の容積に応じて30分〜1時間反応器を通して流した。活性化が完了するや、HFおよび塩素流れを停止し、触媒を、窒素雰囲気下所望の反応温度に冷却した。
【0022】
触媒2
この触媒は、Toyo Calgon PCB(4x10メッシュ)活性炭を代わりに用いたことを除いて、触媒1と同じ手順を用いて作り、活性化した。SbCl5および活性炭の使用量は、それぞれ169gおよび340mlだった。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
結果は、接触時間が短いほど、HCFC-244faが多く生成することを示し、244faがHFC-245faを作るための1233zdのHFとの反応からの中間体であることを示す。より短い接触時間を用いるプロセス条件が好ましいが、それは244faから作られたHFC-1234zeが245faからのものよりも安く、容易だからである。
【0026】
未反応1233zdおよびHFを反応器に再循環させてもっと244faおよび245faを作ることができる。
【0027】
実施例19
91.5GC面積%の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)および0.0121GC面積%のHFC-1234zeからなる出発原料を、2.0重量%水酸化カリウム(KOH)溶液を通して泡立たせた。この組合せから得られた有機混合物を回収し、FIDを備えたGCで分析した。混合物は、15.455GC面積%のHFC-1234zeを含んでいた。
【0028】
実施例20
三つ口丸底フラスコ(5リットル)、機械攪拌器、還流冷却器および低温コールドトラップからなる反応装置に、3000mlのアセトニトリルおよび9.9モル(504g)のKOHペレットを添加した。混合後、5.1モル(684g)の80GC面積%のHFC-245fa/20GC面積%のHCFC-1233zdを、ディップレッグを通して添加した。試薬を、激しく攪拌しながら徐々に加熱した。反応を、約60℃で観察した。粗生成物を、コールドフィンガーに集めた。粗原料をGCにより分析すると、約62.0GC面積%のHFC-1234、20.9GC面積%のHFC-245faおよび16.2GC面積%のHCFC-1233zdからなっていた。
【0029】
実施例21
539.5gの9.3重量%KOH溶液および135.4gの90.0GC面積%の純粋な1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン(HCFC-244fa)を1.0リットルSSシリンダーに添加した。他の主要成分は、9.2GC面積%に達するHCFC-1223xdだった。シリンダーを75〜80℃に加熱し、5時間振とうした。蒸気スペースの試料は、75.6面積%のHFC-1234zeトランス異性体、12.9面積%のHFC-1234zeシス異性体、8.5GC面積%のHCFC-244faおよび0.8GC面積%のHCFC-1223xdの存在を示した。有機液相の試料は、24.4面積%のHFC-1234zeトランス異性体、12.9GC面積%のHFC-1234zeシス異性体、44.2GC面積%のHCFC-244faおよび8.1GC面積%のHCFC-1223xdを示した。
【0030】
560.0gの水溶液を実験後集めたが、それは水性層中で20.5gの重量増加に達する。この重量増加が244faの脱塩化水素の間に生成したHClであるとみなすと、HCFC-244faのHFC-1234zeへの約60%の転化が反応中に生じたと計算できる。
【0031】
実施例22
典型的な実験においては、2.54cmx81cmのMonel(登録商標)反応器が使用される。活性炭上に支持された約500mlのFeCl3触媒を、反応器に充填した。反応器を1リットル/時の窒素流れの下で150℃に加熱し、触媒を4時間乾燥させた。ついで、反応器の温度を同じ窒素流れの下で250℃にもっていき、244faを1g/分で反応器
に供給し、一方窒素流れは停止する。HFC-1234zeを、反応器の出口でインラインGCを用いて98%の選択率および95%のシングルパス転化率で検出した。
【0032】
実施例23
供給流として245faを用いることを除いて、実施例22に記載されるものと同じ実験を繰り返す。反応器の出口で、1234zeが、95%の選択率および85%のシングルパス転化率で検出する。
【0033】
本発明を好ましい実施態様を参照して具体的に示し、記載したが、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り種々の変化および改良を行ってもよいことは当業者には容易に理解される。特許請求の範囲が開示された実施態様、上で討議された別法およびそれに対する同価物すべてを包含すると解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを、気相で反応器において弗素化触媒の存在下1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む中間生成物を生成するのに十分な条件下で、弗化水素と反応させ;そして
b)該中間生成物を、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを脱塩化水素および/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを脱弗化水素するのに十分な条件下で、苛性溶液と反応させ、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成することを含む、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記中間生成物が、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記中間生成物が、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記中間生成物が、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンおよび1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの両方を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランス異性体形を反応させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのシス異性体形を反応させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのトランスおよびシス異性体形の両方を反応させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
該苛性溶液が、NaOH、KOH、Ca(OH)2、CaOもしくはこれらの組合せを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンの該脱塩化水素および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの該脱弗化水素が、同じ反応器中で同時に実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(b)が、初めに1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを分離し、ついで別個に1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを該苛性溶液で脱塩化水素し、別個に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを該苛性溶液で脱弗化水素することにより実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
該弗素化触媒が、活性炭もしくは弗素化アルミナ上の遷移金属ハライド類、IVb族金属ハライド類、Vb族金属ハライド類およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
該弗素化触媒が、SbCl5、SbCl3、TaCl5、SnCl4、NbCl5、TiCl4、MoCl5、Cr2O3、Cr2O3/Al2O3、Cr2O3/AlF3、Cr2O3/炭素、CoCl2/Cr2O3/Al2O3、NiCl2/Cr2O3/Al2O3、CoCl2/AlF3
、NiCl2/AlF3およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
該弗素化触媒が、Cr2O3、Cr2O3/AlF3、CoCl2/AlF3、NiCl2/AlF3およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
該弗素化触媒が、活性炭上に支持されたSbCl3もしくはSbCl5を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(a)の前記反応が、約50℃〜約200℃の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
工程(a)の前記反応が、約15psia〜215psiaの圧力で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
弗化水素対1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのモル比が、約1:1〜約50:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
さらに触媒を活性に保持するために塩素を反応器に供給することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
工程(b)の前記反応が、約20℃〜約100℃の温度で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
工程(b)の前記反応が、大気圧で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
該苛性溶液の苛性強度が、約2重量%〜約100重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
a)1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを、気相で反応器において弗素化触媒の存在下1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンおよび/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む中間生成物を生成するのに十分な条件下で、弗化水素と反応させ;そして
b)該中間生成物を、1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを脱塩化水素および/または1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを脱弗化水素するのに十分な条件下で、熱分解し、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを生成することを含む、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを製造するためのプロセス。
【請求項23】
工程(b)が、約30℃〜約400℃の温度で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
工程(b)が、約50℃〜約350℃の温度で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項25】
工程(b)が、約75℃〜約300℃の温度で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項26】
工程(b)が、大気圧で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項27】
工程(b)が、触媒の存在下で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
工程(b)が、支持された、あるいはバルクの遷移金属ハライド類からなる群から選ばれる触媒の存在下で実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項29】
該触媒が、鉄ハライド類、ニッケルハライド類、コバルトハライド類およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
該触媒が、支持された、あるいはバルクのFeCl3、NiCl2もしくはCoCl2を含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項31】
1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンの該脱塩化水素および1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの該脱弗化水素が、同じ反応器中で同時に実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項32】
工程(b)が、初めに1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを分離し、ついで別個に1-クロロ-1,3,3,3-テトラフルオロプロパンを熱脱塩化水素し、別個に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを熱脱弗化水素することにより実施される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
該弗素化触媒が、活性炭もしくは弗素化アルミナ上の遷移金属ハライド類、IVb族金属ハライド類、Vb族金属ハライド類およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項34】
該弗素化触媒が、活性炭上に支持されたSbCl3もしくはSbCl5を含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項35】
弗化水素対1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのモル比が、約1:1〜約50:1である、請求項22に記載のプロセス。

【公開番号】特開2011−190272(P2011−190272A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−121401(P2011−121401)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【分割の表示】特願2006−521162(P2006−521162)の分割
【原出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】