説明

1,4−モルホリン−2,5−ジオンの新規の合成方法

本発明は、式(II)の環状化合物のケトン官能基を酸化することによる式(I)の1,4−モルホリン−2,5−ジオンの新規の合成方法に関する。ここで、R、R1、R2、R3及びR4は独立して様々な基を表わす。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−モルホリン−2,5−ジオンの新規の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分の捕捉及び調節放出のための生物分解性及び生体適合性マトリックスとしての目標合成ポリマーの調製においては、分解生成物が無毒性であることが必須の要件である。また、α−ヒドロキシル化酸やα−アミノ酸のような代謝誘導体からこれらのポリマーを生成させることも多い。α−ヒドロキシル化酸とα−アミノ酸とのコポリマーであるポリデプシペプチドと称されるポリエステルアミドの調製は、すでに数十年前から行われている。ポリデプシペプチドの最初の合成は、1960年代終わりに報告され、線状ジ−又はトリデプシペプチドの重縮合を伴うものである(Stewart, F. H. C. Aust. J. Chem. 1969, 22, 1291; Katakai, R.; Goodman, M. Macromolecules, 1982, 15, 25)。こうして得られるポリマーは低分子量のものであり、これらの多段階合成は大規模で展開することができなかった。1985年以降、Feijenらは環状ジデプシペプチドである1,4−モルホリン−2,5−ジオンを使用することを提案した(Helder, J.; Kohn, F. E.; Sato, S.; van den Berg, J. W.; Feijen, J. Makromol. Chem., Rapid Commun. 1985, 6, 9;In't Veld, P. J. A.; Dijkstra, P. J.; Feijen, J. Makromol. Chem. 1992. 193, 2713;Dijkstra, P. J.; Feijen, J. Macromol. Symp. 2000, 153, 67)。こうして、ラクチド及びグリコリドから出発するPLGAの場合におけるように、開環重合によってポリデプシペプチドを得ることができる(Dechy-Cabaret, O.; Martin-Vaca, B.; Bourissou, D., Chem. Rev. 2004, 104, 6147)。
【化1】

【0003】
こういった意味合いで、1,4−モルホリン−2,5−ジオンの主な利点は、骨格置換基を変更することによってポリマーの特性を変性することができるということである。しかしながら、明らかにこれらの単位のアクセスしやすさが多少劣ることのせいで、今日までこのアプローチにおける進展はほんの少ししかなかった。
【0004】
モルホリン−2,5−ジオン前駆体の合成は一般的に、α−アミノ酸及びジハロゲン化誘導体(α−ハロゲン化酸ハロゲン化物)の二重縮合をベースとする。
【化2】

【0005】
α−アミノ酸及びジハロゲン化誘導体(α−ハロゲン化酸ハロゲン化物)は通常、第1段階においてSchotten-Bauman条件下(水性NaOH、ジオキサン)で縮合されて、N−(2−ハロゲノアシル)アミノ酸誘導体が50〜60%の収率で製造される。次いで、セライトマトリックス上で加熱乾固させた混合物を昇華させるか(20〜80%の非常に様々な収率で)(In't Veld, P. J. A.; Dijkstra, P. J.; van Lochem, J. H.; Feijen, J. Makromol. Chem. 1990, 191, 1813)、又はDMF中でトリエチルアミンで処理するか(3〜55%の中庸収率で)(In't Veld, P. J. A.; Dijkstra, P. J.; Feijen, J. Makromol. Chem. 1992, 193, 2713)のいずれかによって分子内環化させることによって、モルホリンジオンが得られる。
【非特許文献1】Stewart, F. H. C. Aust. J. Chem. 1969, 22, 1291
【非特許文献2】Katakai, R.; Goodman, M. Macromolecules, 1982, 15, 25
【非特許文献3】Helder, J.; Kohn, F. E.; Sato, S.; van den Berg, J. W.; Feijen, J. Makromol. Chem., Rapid Commun. 1985, 6, 9
【非特許文献4】In't Veld, P. J. A.; Dijkstra, P. J.; Feijen, J. Makromol. Chem. 1992. 193, 2713
【非特許文献5】Dijkstra, P. J.; Feijen, J. Macromol. Symp. 2000, 153, 67
【非特許文献6】Dechy-Cabaret, O.; Martin-Vaca, B.; Bourissou, D., Chem. Rev. 2004, 104, 6147
【非特許文献7】In't Veld, P. J. A.; Dijkstra, P. J.; van Lochem, J. H.; Feijen, J. Makromol. Chem. 1990, 191, 1813
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際上は、単離されたモルホリン−2,5−ジオンの収率は一般的にまあまあ平均的であり、環化工程の操作条件は多少過酷である。アミド結合の高いcis/trans逆転障壁のせいで、この工程については高い反応温度が必要であり、このことが分解生成物が生成することの原因を説明する。さらに、鍵となる(重要な)工程である分子内環化は、分子内反応ではなくて分子間反応であるダイマー及びオリゴマーの生成と本来的に競合する。従って本出願人は、1,4−モルホリン−2,5−ジオンを合成するための新たなルートを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の主題は、式(I):
【化3】

(ここで、
R、R1、R2、R3及びR4は独立して水素原子;ハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし;
Vは共有結合、酸素若しくは硫黄原子、又は−C(O)−O−若しくは−NRN−基を表わし;
Nは水素原子;ハロ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;アリール又はアラルキル基を表わし;このアリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Wは水素原子;ハロ、ベンゾイル、ベンジルオキシ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる置換基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキルを表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
5、R6及びR7は独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わし;
Yは−O−、−S−又は共有結合を表わし;
Zは水素原子;又は1個以上の同一の若しくは異なるハロ基で随意に置換された(C1〜C6)アルキル基;又はアラルキルを表わし;
m及びnは独立して0〜4の整数を表わす)
の1,4−モルホリン−2,5−ジオンの製造方法であって、
次式(II):
【化4】

(ここで、R、R1、R2、R3及びR4は上で定義した通りである)
の環状化合物のケトン官能基を酸化すること、並びに
所望により次式(Ia):
【化5】

(ここで、R、R2、R3及びR4は上で定義した通りであり、
1aは上で定義した式−(CH2)m−V−Wの不安定基を表わし、
ここでmは0であり、
Vは−C(O)−O−基を表わす)
の化合物を開裂剤で処理して上で定義した式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を得ること:
を特徴とする、前記方法にある。
【0008】
上記の定義において、ハロとはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表わし、クロロ、フルオロ又はブロモ基が好ましい。(C1〜C6)アルキルとは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びt−ブチル、ペンチル又はアミル、イソペンチル、ネオペンチル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル又は1,2,2−トリメチルプロピル基を表わす。用語(C1〜C18)アルキルとは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状アルキル基、例えば、上記の1〜6個の炭素原子を有する基だけではなくて、ヘプチル、オクチル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシルをも表わす。少なくとも1個のハロ基で置換されたアルキルとは、鎖に沿って配置された少なくとも1個のハロ基を含有する任意の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル鎖、例えば、−CHCl−CH3等だけではなくて−CF3等をも意味する。
【0009】
また、本明細書において、(CH2)i基(iは上で規定したm及びnを表わすことができる整数である)は、i個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素鎖を表わす。従って、−(CH2)3−基は−CH2−CH2−CH2−だけではなくて−CH(CH3)−CH2−や−CH2−CH(CH3)−、−C(CH3)2−を表わすこともできる。
【0010】
(C2〜C6)アルケニルとは、2〜6個の炭素原子を有し且つ少なくとも1個の不飽和(二重結合)を有する直鎖状又は分岐鎖状の(脂肪族)炭化水素基、例えばビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル又はヘキセニルを意味する。
【0011】
(C2〜C6)アルキニルとは、2〜6個の炭素原子を有し且つ少なくとも1個のダブル不飽和(三重結合)を有する直鎖状又は分岐鎖状の(脂肪族)炭化水素基、例えばエチニル、プロパルギル、ブチニル又はペンチニル基を意味する。
【0012】
用語(C3〜C7)シクロアルキルは、3〜7個の炭素原子を有する飽和単環式炭素含有系、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル環を表わす。
【0013】
アリールとは、1つの環又は縮合した複数の環によって構成される芳香族基、例えばフェニル、ナフチル、フルオレニル又はアントリル基を表わす。用語アラルキル(アリールアルキル)とは、アリール基が上で定義した通りであり且つアルキル基が上で定義した通りの(C1〜C6)アルキルである基、例えばベンジル又はフェネチル基を表わす。
【0014】
本発明のより特別な主題は、式(I)においてR1及びR2が独立してハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わす化合物を調製するための、上で規定した方法にある。
【0015】
本発明のより特別な主題はまた、式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を調製するための上で規定した方法であって、式(IIa):
【化6】

(ここで、R、R2、R3及びR4は上で定義した通りであり、
1aは上で定義した式−(CH2)m−V−Wの不安定基を表わし、
ここでmは0であり、
Vは−C(O)−O−基を表わす)
の環状化合物のケトン官能基を酸化し、こうして得られた次式(Ia):
【化7】

(ここで、R、R1a、R2、R3及びR4は上で定義した通りである)
の化合物を開裂剤で処理して式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を製造する:
ことを特徴とする、前記方法にもある。
【0016】
好ましくは、R1aが表わす不安定基は、式−(CH2)m−V−Wにおいて、
mが0であり、
Vが−C(O)−O−基を表わし、且つ
Wがハロ、ベンゾイル若しくはベンジルオキシで置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキルを表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基が、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Yが−O−又は共有結合を表わし;
5、R6及びR7が独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わす:
ものを表わす。
【発明の効果】
【0017】
かくして、式(II)の化合物を式(I)の化合物に転化させるプロセスの間に、縮合によってモルホリン−2,5−ジオンを合成する際に観察される競合的二量体化及びオリゴマー化反応は完全に回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
式(II)の化合物のケトン官能基をエステル官能基に転化させるためには、いくつかのタイプの酸化を実施することができる。この酸化は、例えば過酸若しくは過酸化物のような酸化剤の存在下で(Baeyer-Villiger酸化反応に従って)、金属触媒の存在下で(S. I. Murahashi et al., Tetrahedron Lett. 1992, 33, 7557-7760及びC. Bolm et al., Tetrahedron Lett. 1993, 34, 3405-3408)、又は酵素ルート(即ち酵素を用いた方法)によって(M. D. Mihovilovic et al., Eur. J. Org. Chem. 2002, 3711-3730)、行うことができる。
【0019】
本発明に従う方法は、Baeyer-Villiger酸化反応に従って酸化剤の存在下で実施するのが好ましい。この場合、1,4−モルホリン−2,5−ジオンを高い選択性で得ることができるように、ケトンの最も立体障害が強い側でこの酸化反応が実行されるのが特に好ましい。前記酸化剤は、触媒の存在下で用いるのが好ましい。
【0020】
本発明に従う方法を実施するために用いられる酸化剤は、過酸又は過酸化物であることができる。過酸の例としては、トリフルオロ過酢酸(TFPAA)、過酢酸(PAA)、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA){好ましくはルイス酸(SnCl4、Sn(OTf)3、Re(OTf)3)又は強酸(スルホン酸、Nafion-H、CF3COOH等)との組合せとして}を挙げることができる。過酸化物の例としては、過酸化水素(H22)を挙げることができる。過酸化水素は、単独で又は触媒の存在下で用いられ、この触媒は、ルイス酸(例えばBF3)又は均質相(Mo、Re、Pt)若しくは不均質相(スズゼオライト、スズハイドロタルサイト)状のいずれかの金属錯体であることができる。また、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシドMe3SiOOSiMe3を過酸化物の例として挙げることもでき、これはルイス酸 (Me3SiOTf、SnCl4又はBF3・OEt2)の存在下で用いられる。
【0021】
前記酸化剤は、過酸であるのが好ましい。過酸は、ルイス酸又は強酸の存在下で、より詳細にはスルホン酸から選択される強酸の存在下で、用いるのが好ましい。
【0022】
前記過酸はまた、塩基の存在下で、より詳細には無機塩基の存在下で用いるのも好ましい。
【0023】
前記過酸は、m−クロロ過安息香酸(m−CPBA)であるのが特に好ましい。m−クロロ過安息香酸は、トリフルオロメタンスルホン酸又は炭酸水素塩若しくは炭酸塩の存在下で用いるのが好ましい。
【0024】
酸化剤はまた、過酸化物であるのも好ましい。
【0025】
好ましくはまた、本発明の主題は、上で規定した方法であって、基材に対して1〜3モル当量の酸化剤の存在下で20〜80℃の範囲の温度において実施することを特徴とする、前記方法にもある。
【0026】
この方法は、有機溶媒、特に塩素化有機溶媒の存在下で、0.01M〜2Mの範囲の基材濃度で実施するのが特に好ましい。
【0027】
前記酸化剤は、一般的に商品として入手可能である。商品として入手可能ではない酸化剤は、当業者に周知の方法に従って合成することができる。例えば、商品として入手できないトリフルオロ過酢酸は、トリフルオロ酢酸CF3CO2H又は酸無水物(CF3CO)2Oに過酸化水素H22を作用させることによって容易に得ることができる(R. Liotta et al., J. Org. Chem. 1980, 45, 2887-2890;M. Anastasia et al., J. Org. Chem. 1985, 50, 321-325;P. A. Krasutsky et al., J. Org. Chem. 2001, 66, 1701-1707)。同様に、過酸化ビス(トリメチルシリル)は商品として入手できないが、錯体H22−1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン[DABCO、N(CH2CH2)3N]及びMe3SiClから出発して容易に入手可能である(P. G. Cookson et al., J. Organomet.Chem. 1975, 99, C31-C32;M. Taddei et al., Synth. Comm. 1986, 633-635)。
【0028】
前記の1,4−モルホリン−2,5−ジオン(I)の合成のための前駆体として用いられる式(II)の環状ケトアミドは、当業者に周知の標準的な方法によって入手可能である(B.J.L. Royles, Chem. Rev. 1995, 95, 1981-2001及び引用参考文献)。
【0029】
反応溶媒は、反応を妨害しない有機溶媒から選択される。かかる溶媒の例としては、脂肪族又は芳香族塩化物(例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン)を挙げることができる。
【0030】
本発明において規定される一般式(I)のR1及びR2基は同等であり、従って互いに交換可能であることに留意されたい。
【0031】
1が水素原子を表わす場合、式(I)の化合物はまた、次式(Ia):
【化8】

においてR1aが式−C(O)−O−Wの不安定基であるモルホリンジオンから、この不安定基R1aを開裂させた後に、得ることもできる。
【0032】
当業者によく知られていて様々な文献(Wuts, P. G. M.; Greene, T. W.; Protective Groups in Organic Synthesis, 4th edition, 2006, Wiley Interscience;Kocienski, P. J. Protecting Groups, 3rd Edition, 2003, Georg Thieme Verlag)に詳細に記載されている様々な試薬及び条件によって上記のR1a基の開裂が可能となり、脱カルボキシルの後に式(I)においてR1基が水素原子を表わす化合物が得られる。R1a不安定基の例としては、ベンジルオキシカルボニル、(ベンジルオキシ)メトキシカルボニル、(ベンゾイル)メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、プロパルギルオキシカルボニル、トリメチルシリルオキシカルボニル基を挙げることができる。これらの基については、接触水素化が最適な開裂方法である。
【0033】
本発明のより特別な主題はまた、前記の方法であって、Rが水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基であり、ここで、Vが共有結合若しくは−C(O)−O−基であり且つWが随意に置換されたアラルキル基であり;R1、R2、R3及びR4が独立して水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、Vが共有結合を表わし且つWが(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、前記方法にもある。
【0034】
本発明のより特別な主題はまた、前記の方法であって、Rが水素原子又は随意に置換されたアラルキル基を表わすことを特徴とする、前記方法にもある。
【0035】
本発明のより特別な主題はまた、前記の方法であって、アリール及びアラルキル基のアリールがフェニル基であり且つmが0又は1であることを特徴とする、前記方法にもある。
【0036】
本発明のより特別な主題はまた、前記の方法であって、Rが水素原子又はベンジル基を表わし、R1及びR2が独立して水素原子又はメチル若しくはエチル基を表わし且つR3及びR4が独立して水素原子又はメチル基を表わすことを特徴とする、前記方法にもある。
【0037】
本発明の主題はまた、式(I):
【化9】

(ここで、
R、R1、R2、R3及びR4は独立して水素原子;ハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし;
Vは共有結合、酸素若しくは硫黄原子、又は−C(O)−O−若しくは−NRN−基を表わし;
N及びWは独立して水素原子;ハロ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;アリール又はアラルキル基を表わし;このアリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Yは−O−、−S−又は共有結合を表わし;
Zは水素原子;又は1個以上の同一の若しくは異なるハロ基で随意に置換された(C1〜C6)アルキル基 ;又はアラルキルを表わし;
m及びnは独立して0〜4の整数を表わす)
の1,4−モルホリン−2,5−ジオンの製造方法であって、
次式(II):
【化10】

(ここで、R、R1、R2、R3及びR4は上で定義した通りである)
の環状化合物のケトン官能基を酸化することによる、前記方法にもある。
【0038】
本発明の主題はまた、式(I)の化合物、特に上で規定した方法に従って得られる式(I)の化合物にもある。
【0039】
本発明の主題はまた、上で規定した方法に従って得ることができる次式(Ib):
【化11】

(ここで、
bはアリールアルキル基を表わし;
1b、R3b及びR4bは独立して水素原子;ハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし;
2bはハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし;
ここで、Vは共有結合、酸素若しくは硫黄原子、又は−C(O)−O−若しくは−NRN−基を表わし;
ここで、RNは水素原子;ハロ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;アリール又はアラルキル基を表わし;このアリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Wは水素原子;ハロ、ベンゾイル、ベンジルオキシ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる置換基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキル基を表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
ここで、R5、R6及びR7は独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わし;
Yは−O−、−S−又は共有結合を表わし;
Zは水素原子;又は1個以上の同一の若しくは異なるハロ基で随意に置換された(C1〜C6)アルキル基 ;又はアラルキルを表わし;
m及びnは独立して0〜4の整数を表わし;
Wが−SiR567基を表わす場合にはVが−C(O)−O−基を表わし且つmが0であり;そして
1bが水素原子を表わし、R2bが式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、mが1であり、且つVが−C(O)−O−基を表わす場合には、Wが水素原子ではない:
ものとする)
の化合物にもある。
【0040】
本発明のより特別な主題は、上で定義した通りの式(Ib)の化合物であって、R1bが水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、Vが共有結合又は−C(O)−O−基を表わし;且つ、R2bが式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、Vが共有結合又は−C(O)−O−基を表わすことを特徴とする、前記化合物にある。R1bが水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わし且つR2bが(C1〜C6)アルキル基を表わすのが好ましい。
【0041】
また、上で定義した通りの式(Ib)の化合物は、前記アリール及びアラルキル基のアリールがフェニル基であるようなものであるのも好ましい。
【0042】
本発明のより特別な主題はまた、上で定義した通りの式(Ib)の化合物であって、Rbが随意に置換されたベンジル基を表わすことを特徴とする、前記化合物にもある。
【0043】
本発明のより特別な主題はまた、上で定義した通りの式(Ib)の化合物であって、R3b及びR4bが独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、前記化合物にもある。R3bが水素原子を表わし且つR4bが水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わすのが好ましい。
【0044】
本発明のより特別な主題はまた、上で定義した式(I)の化合物であって、R1bが水素原子、メチル、カルボキシ又はベンジルオキシカルボニル基を表わし、R2bがメチル基を表わし、R3b及びR4bが水素原子を表わし且つRbがベンジル基を表わすことを特徴とする、前記化合物にもある。
【0045】
本発明の主題はまた、式(I)又は(Ib)の化合物、特に上で規定した方法に従って得られる化合物(I)又は(Ib)を、ポリデプシペプチドの調製のために使用することにもある。
【実施例】
【0046】
例1:4−ベンジル−6,6−ジメチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンの合成
【0047】
工程1:前駆体(II):1−ベンジル−3,3−ジメチルピロリジン−2,4−ジオンの合成
【0048】
化合物(II)の合成は、下記の2つの反応ダイアグラムに従って行うことができる。
【0049】
【化12】

(1)から出発して3工程ルートによって(II)を得ることができる。化合物(1)からの化合物(2)の生成は、H. C. Brown et al., J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 1539-1546に従って行うことができる。化合物(3)の合成工程は、M. Conrad et al., Ber. 1898, 31, 2726-2731に従って行うことができる。最後に、最後の環化工程は、Falk, H. et al. Monatsch. Chem., GE 113, 1982, 11, 1329-1348に従ってテトラヒドロフラン中で(3)をベンジルアミン(2.2当量)で処理した後に、自然に起こる。(1)から42%の収率で1−ベンジル−3,3−ジメチルピロリジン−2,4−ジオン(II)が得られた。生成物(II)の特徴付け分析は次の通りだった。
NMR(CDCl3+TMS):
1H[1.26(s、6H、−CH3);3.70(s、2H、−CH2);4.63(s、2H、CH2);7.24〜7.38(m、5H、芳香族H)]。
13C[20.5(−CH3);45.8(CH2);47.1(Cq);53.6(CH2);128.0;128.2;129.0及び135.3(芳香族C)、175.6(−CON);210.3(−CO)]。
MS(EI)217[M]+
融点61℃。
【0050】
【化13】

また、3−メチルテトラアミド酸(l'acide 3-methyl tetramique)(7)から(II)を得ることもできる。化合物(4)からの化合物(7)の生成は、Koech, P. et al., Org. Lett. 2004, 6, 691-694に従って、3工程全体で98%の収率で行うことができる。最後の化合物(II)生成工程は、Page, P. C. B. et al., Org. Lett. 2003, 5, 353-355に従って単離生成物収率78%で行うことができる。
【0051】
工程2:ケトアミド(II)の4−ベンジル−6,6−ジメチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンへの酸化
【化14】

【0052】
条件1:
【0053】
環状ケトアミド1.09g(5ミリモル)、m−クロロ過安息香酸1.55g(1.8当量)及び重炭酸ナトリウム2.73g(6.5当量)をジクロルメタン100ミリリットル中に含有させた溶液を周囲温度において26時間撹拌した。反応媒体のアリコートの1H−NMR試験は、4−ベンジル−6,6−ジメチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンが非常に大きい割合で生成したことを示した(分光分析収率:90%)。
【0054】
条件2:
【0055】
ケトアミド前駆体9.0g(41.4ミリモル)及びm−CPBA9.0g(1.2当量)を不活性雰囲気下において無水ジクロロメタン40ミリリットル中に含有させた溶液を還流下で20時間撹拌した。反応媒体のアリコートの1H−NMR試験は、6員環がほぼ定量的に生成したことを示した(分光分析収率>99%)。この混合物を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、次いで真空下で乾燥させた。残留した茶色の油分をジクロロメタン/ジエチルエーテル混合物から再結晶して、4−ベンジル−6,6−ジメチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンの分析上純粋な白色結晶665mgが得られた(単離された生成物の収率57%)。この生成物を特徴付け分析した。
NMR(CDCl3+TMS)
1H[1.65(s、6H、−CH3);4.01(s、2H、−CH2CO);4.61(s、2H、−CH2Ph);7.28〜7.33(m、5H、芳香族H)]。
13C[25.7(−CH3);47.7(−CH2CO);49.6(NCH2Ph);82.1(Cq);128.2、128.4及び129.1(芳香族CH);134.8(芳香族Cq)、164.9(−COO);168.2(−CON)]。
MS(EI)233[M]+
融点94.5℃
元素分析:
計算値C:66.94、H:6.48、N:6.00;
実測値C:66.92、H:6.34、N:5.94。
【0056】
条件3:
【0057】
環状ケトアミド0.20g(0.92ミリモル)、m−クロロ過安息香酸0.32g(2.0当量)及びトリフルオロメタンスルホン酸16マイクロリットル(0.2当量)をジクロロメタン1.0ミリリットル中に含有させた溶液を周囲温度において24時間撹拌した。反応媒体のアリコートの1H−NMR試験は、4−ベンジル−6,6−ジメチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンが非常に大きい割合で生成したことを示した(分光分析収率>90%)。
【0058】
例2:4−ベンジル−3−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンの合成
【0059】
工程1:前駆体(II):1−ベンジル−3−カルボキシベンジル−3−メチルピロリジン−2,4−ジオンの合成
【0060】
(4)からPage, P. C. B. et al. Org. Lett. 2003, 5, 353-355に報告された4工程ルートに従って、44%の収率で(II)が得られる。
【化15】

【0061】
工程2:ケトアミド(II)の4−ベンジル−6−カルボキシベンジル−6−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオン(2a)への酸化
【化16】

【0062】
環状ケトアミド(II)1.02g(3ミリモル)及びm−クロロ過安息香酸1.03g(1.3当量)をジクロロメタン3ミリリットル中に含有させた溶液を4日間加熱還流した。1H−NMR分析は、5員環が完全に転化して、非常に大きい割合でN−ベンジル−6−カルボキシベンジル−6−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオン(2a)及び位置異性体N−5−ベンジル−3−カルボキシベンジル−3−メチル−1,5−モルホリン−2,4−ジオン(2b)が生成したことを示した。周囲温度に戻した後に、この媒体をAmberlyst(登録商標)A21塩基性樹脂2g(4.6g当量塩基/g樹脂)で2時間処理し、次いで濾過し、蒸発させた。1H−NMR分析により、酸が除去されたことが確認された。残った黄色油分は92%の粗収率で得られた(NMR比(2a)/(2b)=1.8/1)。シリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は石油エーテル/酢酸エチルの2/1)の後に、分析上純粋な2種の位置異性体が、(2a)の収率41%、(2b)の収率25%で得られた。2種の生成物を1H、13C−NMR、MS(EI)、IRによって特徴付け分析した。
【0063】
(2a)の特徴付け分析
【0064】
NMR(CDCl3):
1H(300MHz)[1.92(s、3H、CH3);3.87及び3.98(2d、2H、J18.0Hz、NCH2CO);4.33及び4.69(2d、2H、J14.0Hz、NCH2Ph);5.20及び5.28(2d、2H、J12.0Hz、CO2CH2);7.10〜7.13及び7.29〜7.37(2m、2H及び8H、Ar−H)]。
13C(75MHz)[20.6(CH3);48.1(N2CO);50.0(N2Ph);68.8(COO2Ph);83.2(Cq);128.1;128.2;128.4;128.8;128.9;129.1;134.2;162.4(NCO);164.3(COO);167.2(OOCH2Ph)]。
IR(CHCl3)1775、1750、1687cm-1
MS(EI)353[M]+
元素分析:
計算値C:67.98;H:5.42;N:3.96;
実測値C:67.65、H:5.20、N:3.96。
【0065】
(2b)の特徴付け分析:
【0066】
NMR(CDCl3
1H(300MHz)[1.81(s、3H、CH3);4.52及び4.81(2d、2H、J15.0Hz、NCH2Ph);4.92及び5.05(2d、2H、J10.5Hz、OCH2);5.23(s、2H、CO2CH2);7.15〜7.19及び7.30〜7.37(2m、2H及び8H、Ar−H)]。
13C(75MHz)[17.7(CH3);46.1(Cq)、49.1(N2Ph);68.8(COO2Ph);74.4(OCH2);128.1;128.2;128.4;128.8;128.9;129.1;134.7;163.7(NCO);165.5(OOCH2Ph);165.9(COO)]。
IR(CHCl3)1778、1739、1699cm-1
MS(EI)353[M]+
【0067】
工程3:4−ベンジル−6−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンの合成
【化17】

【0068】
次いで(2a)に対して4−ベンジル−6−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンへのワンポット転化を行う。(2a)をトルエン30ミリリットル中に含有させた溶液を大気圧の水素下で10%Pd/Cの存在下で周囲温度において12時間撹拌した。1H−NMRは、(2a)が(3a)に完全に転化したことを示した。
NMR(CD3OD)
1H(300MHz)[1.83(s、3H、CH3);4.10(s、2H、OCH2);4.36及び4.90(2d、2H、J14.4Hz、NCH2)]。
13C(75MHz)[20.9(CH3);49.8(OCH2);50.7(N2Ph);84.6(Cq);129.0;129.2;130.0;136.5;165.0(NCO);166.8(COO)及び170.1(COOH)]。
IR(KBr)2920(COOH)、1769、1642cm-1
MS(EI)262[M]+
【0069】
濾過後にこの混合物を15分間加熱還流し、次いで蒸発乾固させた。ジクロロメタン/ジエチルエーテル混合物から再結晶することによって、4−ベンジル−6−メチル−1,4−モルホリン−2,5−ジオンの分析上純粋な結晶が64%の収率で得られた。この生成物を特徴付け分析した。
NMR(CDCl3
1H(300MHz)[7.31〜7.14(m、5H、Ar−H)、4.85(q、1H、J7.2Hz、CH)、4.56及び4.48(2d、2H、J14.4Hz、CH2)、3.96及び3.88(2d、2H、J18.0Hz、NCH2)、1.57(d、3H、J6.9Hz、CH3)]。
13C(75MHz)[166.1(NCO)、165.1(COO)、134.6、129.1、128.4、128.2、75.0(CH)、49.4(N2Ph)、47.3(CH2)、17.4(CH3)]。
IR(KBr)1759、1663cm-1
MS(EI)219[M]+
融点95.1〜95.3℃。
元素分析:
計算値C:65.74、H:5.98、N:6.39;
実測値C:65.59、H:6.01、N:6.35。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(ここで、
R、R1、R2、R3及びR4は独立して水素原子;ハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし;
Vは共有結合、酸素若しくは硫黄原子、又は−C(O)−O−若しくは−NRN−基を表わし;
Nは水素原子;ハロ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;アリール又はアラルキル基を表わし;このアリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Wは水素原子;ハロ、ベンゾイル、ベンジルオキシ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる置換基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキルを表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
5、R6及びR7は独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わし;
Yは−O−、−S−又は共有結合を表わし;
Zは水素原子;又は1個以上の同一の若しくは異なるハロ基で随意に置換された(C1〜C6)アルキル基 ;又はアラルキルを表わし;
m及びnは独立して0〜4の整数を表わす)
の1,4−モルホリン−2,5−ジオンの製造方法であって、
次式(II):
【化2】

(ここで、R、R1、R2、R3及びR4は上で定義した通りである)
の環状化合物のケトン官能基を酸化すること、並びに
所望により次式(Ia):
【化3】

(ここで、R、R2、R3及びR4は上で定義した通りであり、
1aは上で定義した式−(CH2)m−V−Wの不安定基を表わし、
ここでmは0であり、
Vは−C(O)−O−基を表わす)
の化合物を開裂剤で処理して上で定義した式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を得ること:
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
式(I)においてR1及びR2が独立してハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わす化合物を調製するための、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(IIa):
【化4】

(ここで、R、R2、R3及びR4は請求項1に記載の通りであり、
1aは請求項1に記載した式−(CH2)m−V−Wの不安定基を表わし、
ここでmは0であり、
Vは−C(O)−O−基を表わす)
の環状化合物のケトン官能基を酸化し、こうして得られた次式(Ia):
【化5】

(ここで、R、R1a、R2、R3及びR4は上で定義した通りである)
の化合物を開裂剤で処理して式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を製造する:
ことを特徴とする、式(I)においてR1が水素原子を表わす化合物を製造するための請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1aが表わす不安定基が、式−(CH2)m−V−Wにおいて、
mが0であり、
Vが−C(O)−O−基を表わし、且つ
Wがハロ、ベンゾイル若しくはベンジルオキシで置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキルを表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基が、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Yが−O−又は共有結合を表わし;
5、R6及びR7が独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わす:
ものを表わすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸化剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化剤を触媒の存在下で用いることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸化剤が過酸又は過酸化物であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記酸化剤が過酸であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤をルイス酸又は強酸の存在下で用いることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記酸化剤をスルホン酸から選択される強酸の存在下で用いることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸化剤を塩基の存在下で用いることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
前記酸化剤を無機塩基の存在下で用いることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記酸化剤がm−クロロ過安息香酸であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記酸化剤をトリフルオロメタンスルホン酸の存在下で用いることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記酸化剤を炭酸水素塩又は炭酸塩の存在下で用いることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記酸化剤が過酸化物であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項17】
Rが水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、Vが共有結合又は−C(O)−O−基を表わし、Wが随意に置換されたアラルキル基を表わし、R1、R2、R3及びR4が独立して水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、Vが共有結合を表わし且つWが(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
Rが水素原子又は随意に置換されたアラルキル基を表わすことを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
前記アリール及びアラルキル基のアリールがフェニル基であり且つmが0又は1であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
Rが水素原子又はベンジル基を表わし、R1及びR2が独立して水素原子又はメチル若しくはエチル基を表わし且つR3及びR4が独立して水素原子又はメチル基を表わすことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の製造方法。
【請求項21】
基材に対して1〜3モル当量の酸化剤の存在下で20〜80℃の範囲の温度において実施することを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
有機溶媒、特に塩素化有機溶媒の存在下で0.01M〜2Mの範囲の基材濃度において実施することを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれかに記載の方法に従って得ることができる次式(Ib):
【化6】

{ここで、
bはアリールアルキル基を表わし;
1b、R3b及びR4bは独立して水素原子;ハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし、
2bはハロ;(C2〜C6)アルケニル;(C3〜C7)シクロアルキル;シクロヘキセニル;又は式−(CH2)m−V−Wの基:を表わし、
Vは共有結合、酸素若しくは硫黄原子、又は−C(O)−O−若しくは−NRN−基を表わし;
Nは水素原子;ハロ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;アリール又はアラルキル基を表わし;このアリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
Wは水素原子;ハロ、ベンゾイル、ベンジルオキシ及びシアノから選択される1個以上の同一の若しくは異なる置換基で随意に置換された(C1〜C18)アルキル基;(C2〜C6)アルケニル;(C2〜C6)アルキニル;−SiR567;アリール又はアラルキル基を表わし;このベンゾイル、ベンジルオキシ、アリール及びアラルキル基は、−(CH2)n−Y−Z、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の同一の又は異なる置換基で随意に置換されていてよく;
5、R6及びR7は独立して(C1〜C6)アルキル又はアリール基を表わし;
Yは−O−、−S−又は共有結合を表わし;
Zは水素原子;又は1個以上の同一の若しくは異なるハロ基で随意に置換された(C1〜C6)アルキル基 ;又はアラルキルを表わし;
m及びnは独立して0〜4の整数を表わし;
Wが−SiR567基を表わす場合にはVが−C(O)−O−基を表わし且つmが0であり;そして
1bが水素原子を表わし、R2bが式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、mが1であり、且つVが−C(O)−O−基を表わす場合には、Wが水素原子ではない:
ものとする}
の化合物。
【請求項24】
1bが水素原子又は式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、Vが共有結合又は−C(O)−O−基を表わし;且つ、R2bが式−(CH2)m−V−Wの基を表わし、ここで、Vが共有結合又は−C(O)−O−基を表わすことを特徴とする、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
1bが水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わし且つR2bが(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、請求項23又は24に記載の化合物。
【請求項26】
前記アリール及びアラルキル基のアリールがフェニル基であることを特徴とする、請求項23〜25のいずれかに記載の化合物。
【請求項27】
bが随意に置換されたベンジル基を表わすことを特徴とする、請求項23〜26のいずれかに記載の化合物。
【請求項28】
3b及びR4bが独立して水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、請求項23〜27のいずれかに記載の化合物。
【請求項29】
3bが水素原子を表わし且つR4bが水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を表わすことを特徴とする、請求項23〜28のいずれかに記載の化合物。
【請求項30】
1bが水素原子、メチル、カルボキシ又はベンジルオキシカルボニル基を表わし、R2bがメチル基を表わし、R3b及びR4bが水素原子を表わし且つRbがベンジル基を表わすことを特徴とする、請求項23〜29のいずれかに記載の化合物。

【公表番号】特表2009−528982(P2009−528982A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551822(P2008−551822)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000135
【国際公開番号】WO2007/085729
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(505474717)ソシエテ・ドゥ・コンセイユ・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ダプリカーション・シャンティフィック・エス・ア・エス (41)
【Fターム(参考)】