説明

10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法

【課題】アントラセン環やフルオレン環にみられるような紫外域の吸収や蛍光の問題が無く、かつ、屈折率の高いアクリレート化合物を提供する。
【解決手段】10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。該化合物の製造法の一例を下記に示す。


上記第一反応の式において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示し、Lは、ハロゲン原子を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族骨格を有するアクリレート化合物は、脂肪族アクリレート化合物や脂環式アクリレート化合物に比べ、屈折率が高いなどの優れた物性を示すことが知られており、その重合物は、屈折率が高く、耐熱性にも優れていることから、光学製品製造用材料、反射防止膜、プラスチックレンズなどの用途に使用されている。
【0003】
芳香族骨格を有するアクリレート化合物として、例えば、フェニル基を有するフェノキシエチルアクリレート化合物について、いくつかの提案がされている(特許文献1、特許文献2)。また、ナフタレン骨格を有するアクリレート化合物の重合体についても、いくつかの提案がされている(特許文献3、特許文献4参照)。
【0004】
しかし、これらの芳香族骨格を有するアクリレート化合物の重合物は、耐熱性や屈折率は高いものの、重合速度は必ずしも実用的なものとはいえず、これらの芳香族骨格を有するアクリレート化合物を単独で重合させたポリマーとして用いるのではなく、アクリル酸エステルやスチレンなどの汎用モノマーと当該芳香族骨格を有するアクリレート化合物を共重合させ、汎用性ポリマーの耐熱性や屈折率などの物性を改良するという用途で用いられている場合が多い。
【0005】
従って、共重合に用いられる芳香族骨格を有するアクリレート化合物としては、少量の添加で耐熱性や屈折率を改良できることが好ましく、その意味で、高屈折率の化合物が好ましく、ベンゼン環やナフタレン環より更に縮合度が高い多環芳香族であり、かつ、重合性の高い化合物が望まれている。
【0006】
このような、さらに縮合度の高い環として、フルオレン環(特許文献5参照)やアントラセン環(特許文献6参照)を持つ化合物が検討されている。
【0007】
しかしながら、アントラセン環やフルオレン環の場合(特許文献5参照)、比較的高い屈折率を持つ化合物が得られるが、フルオレン環を導入した場合は、紫外領域に吸収があり、光照射により着色しやすくなり、耐光性に問題が出てくる。またアントラセン環を導入した場合はアントラセン環が蛍光を発するため、光学材料分野での適用は困難である等の問題がある。
【0008】
また、アントラセン環を持つアクリレート化合物の場合、重合性が乏しく、ポリマー原料としてではなく、ポリマー添加剤として検討されている(特許文献6参照)。
【0009】
一方、アントラセン環のような三環性であるものの、その電子状態はナフタレン構造を持つ1,4−ジヒドロアントラセン骨格や1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン骨格を持つアクリレート化合物が報告されているが、それらの屈折率については記載がなく、その示唆もない(特許文献7,8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2002−511012号公報
【特許文献2】特表2002−511598号公報
【特許文献3】特開2001−276587号公報
【特許文献4】特開平07−077637号公報
【特許文献5】特開2004−083855号公報
【特許文献6】特開2007−99637号公報
【特許文献7】特開2008−1637号公報
【特許文献8】特開2008−169324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、汎用モノマーと共重合可能であり、かつ、高屈折率、高耐熱性を有する多環芳香族化合物であり、アントラセン基やフルオレン基にみられるような紫外域の吸収や蛍光の問題が無い化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、多環式芳香族骨格を有するアクリレート化合物の構造と屈折率及び光重合性に関して鋭意検討した結果、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイル基を有する一般式(1)に示す10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が高い屈折率を示すことを見いだし、本発明を完成させた。
【0013】
第一発明では、下記一般式(1)で示される10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0014】
【化1】

【0015】
(一般式(1)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アシル基又は(メタ)アクリロイル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0016】
第二発明では、下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0017】
【化2】

【0018】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0019】
第三発明では、下記一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0020】
【化3】

【0021】
(一般式(3)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、R10はアルキル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0022】
第四発明では、下記一般式(4)で示される10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0023】
【化4】

【0024】
(一般式(4)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又はアリール基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0025】
第五発明では、下記一般式(5)で示される10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を提供する。
【0026】
【化5】

【0027】
(一般式(5)中、R、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0028】
第六発明では、下記一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノ(メタ)アクリルロイル化することよりなる第二発明に記載の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0029】
【化6】

【0030】
(一般式(6)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0031】
第七発明では、下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をエーテル化することよりなる第三発明に記載の10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0032】
【化7】

【0033】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0034】
第八発明では、下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をアシル化することよりなる第四発明に記載の10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0035】
【化8】

【0036】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0037】
第九発明では、下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる第五発明に記載の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0038】
【化9】

【0039】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0040】
第十発明では、下記一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる第五発明に記載の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法を提供する。
【0041】
【化10】

【0042】
(一般式(6)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0043】
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを表す。
【0044】
また、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン骨格における置換基の位置番号は、下記のように付する。
【0045】
【化11】

【発明の効果】
【0046】
本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、新規な化合物であり、かつ高い屈折率を示す工業的に有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物>
本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は下記一般式(1)に記載の構造を有する化合物である。
【0048】
【化12】

【0049】
一般式(1)において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アシル基又は(メタ)アクリロイル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。
【0050】
一般式(1)中、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、アリル基、ベンジル基等が挙げられ、アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、ベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基又は2−ナフトイル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられる。
【0051】
また、一般式(1)において、Xで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子,臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
次に、本発明の一般式(1)で表わされる化合物の具体例を示す。一般式(1)において、Rが水素原子である場合は、下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となるが、その一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。すなわち、Xが水素原子の場合は、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、等が挙げられる。
【0053】
【化13】

【0054】
(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0055】
一般式(2)において、Xで示されるアルキル基、ハロゲン原子は、一般式(1)の化合物における場合と同様である。
【0056】
そして、Xがアルキル基の場合の具体例としては、5−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−エチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−エチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−エチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−エチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1,6−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1,6−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−,6ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0057】
Xがハロゲン原子である場合の具体例としては、例えば、5−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ブロモ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−ブロモ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−ブロモ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−ブロモ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0058】
次に、一般式(1)において、Rがアルキル基である場合は、下記一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となる。
【0059】
【化14】

【0060】
(一般式(3)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、R10はアルキル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0061】
一般式(3)中、R10で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、アリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(3)において、Xで示されるアルキル基、ハロゲン原子は、一般式(1)の化合物における場合と同様である。
【0063】
一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。すなわち、Xが水素原子の場合は、10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0064】
そして、Xがアルキル基の場合の具体例としては、6−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0065】
Xがハロゲン原子である場合の具体例としては、例えば、6−クロロ−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ10−(n−プロポキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ10−(n−ブトキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0066】
次に、一般式(1)において、Rがアシル基である場合は、下記一般式(4)で示される10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となる。
【0067】
【化15】

【0068】
(一般式(4)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又はアリール基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0069】
一般式(4)中、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基、アリル基、ベンジル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0070】
一般式(4)において、Xで示されるアルキル基、ハロゲン原子は、一般式(1)の化合物における場合と同様である。
【0071】
一般式(4)で示される10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。すなわち、Xが水素原子の場合は、10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,1−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、1−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,2−メチル10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0072】
そして、Xがアルキル基の場合の具体例としては、6−メチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,6−メチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−メチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,2,6−ジメチル−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0073】
Xがハロゲン原子である場合の具体例としては、例えば、6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(n−ブチリルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−ベンゾイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート,2−メチル−6−クロロ−10−(2−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−6−クロロ−10−(1−ナフチルカルボニルオキシ)−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート等が挙げられる。
【0074】
次に、一般式(1)において、Rが(メタ)アクリロイル基である場合は、下記一般式(5)で示される10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物となる。
【0075】
【化16】

【0076】
(一般式(5)中、R、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【0077】
一般式(5)において、Xで示されるアルキル基、ハロゲン原子は、一般式(1)の化合物における場合と同様である。
【0078】
一般式(5)で示される10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。すなわち、Xが水素原子の場合は、9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0079】
そして、Xがアルキル基の場合の具体例としては、5−メチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−メチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−エチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−エチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1,5−ジメチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2,6−ジメチル−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0080】
Xがハロゲン原子である場合の具体例としては、例えば、5−クロロ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−クロロ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−クロロ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、5−ブロモ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−ブロモ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−5−クロロ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−5−クロロ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、1−メチル−5−クロロ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−6−クロロ−9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−6−クロロ−10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、2−メチル−6−クロロ−9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0081】
これらの化合物のうち、下記に示す10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(2−1)、10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(3−1)、10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(3−2)、10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(4−1)、10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(4−2)、9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン(5−1)、10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート(5−2)、9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン(5−3)が合成容易でありかつ得られる生成物の屈折率が高いことから特に好ましい。
【0082】
【化17】

【0083】
[製造方法]
次に、本発明の一般式(1)で示される10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法について詳述する。一般式(1)で示される化合物は、一般式(2)、(3)、(4)及び(5)で示される化合物であるから、一般式(2)、(3)、(4)及び(5)で示される化合物に分けて、順次説明する。
【0084】
<一般式(2)の化合物の製造法>
まず、一般式(1)において、Rが水素原子である10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造法について述べる。当該化合物は一般式(2)の化合物となる。10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を出発原料として、塩基の存在下又は不存在下、ハロゲン化(メタ)アクリロイル等の(メタ)アクリルロイル化剤と反応させる第一反応により得られる。
【0085】
【化18】

【0086】
上記第一反応の式において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示し、Lは、ハロゲン原子を示す。
【0087】
出発原料として使用する1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物は、次のように合成することができる。すなわち、対応する1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とをディールス・アルダー反応させることにより、まず1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を得る。そして、当該1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物をエノール化することにより、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。
【0088】
1,4−ナフトキノン化合物と、シクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応は従来公知の方法で行うことができる。例えば、特開平6-312950号公報の工程1に記載の方法により合成できる。
【0089】
シクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン等を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することもできる。また、シクロペンタジエン化合物は、対応するジシクロペンタジエン化合物を加熱し、シクロペンタジエン化合物に分解して用いてもよい。
【0090】
例えば、ジシクロペンタジエンを150℃以上に加熱すると熱分解して、シクロペンタジエンとなる。これを冷却することにより、シクロペンタジエンを単離することができる。メチルシクロペンタジエンも同様にして、メチルジシクロペンタジエンを熱分解して得ることができる。このようにして得たシクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンは、室温で徐々に再び二量化するため、すぐに次の反応に用いることが好ましい。シクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンをナフトキノン化合物と混合すると発熱を伴って、ディールス・アルダー反応を起こし、環状付加物を生成する。メチルシクロペンタジエンがメチル基の置換位置の異なる異性体の混合物となっているものの場合は、ディールス・アルダー反応物がシクロペンタジエンを用いた時に比べ、低融点物となる場合が多いが、以下のエノール化反応、(メタ)アクリルロイル化反応、アシル化反応及びエーテル化反応において、ほぼ同様の反応で10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を合成することができる。
【0091】
次に、エノール化反応について説明する。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物のエノール化反応は、酸触媒でも塩基触媒でも進行する。まず、酸触媒を用いるエノール化の方法について述べる。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物のエノール化は、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物と酸触媒とを溶媒中で加熱することにより行う。用いることができる酸触媒としては、硫酸、塩化水素、硝酸、p−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸、燐酸等が挙げられる。
【0092】
酸触媒を用いるエノール化において、用いることができる溶媒としては、特に種類を選ばないが、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸,プロピオン酸等の有機酸等が好適に用いられる。芳香族系溶媒を使用した場合は、反応終了後、反応液を冷却すると1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が析出してくるので、特に望ましい。
【0093】
酸触媒を用いるエノール化の温度は、50℃以上、150℃未満が好ましく、より好ましくは80℃以上、120℃以下である。50℃未満では反応時間がかかりすぎ、150℃以上では生成物の純度が低下するので、共に望ましくない。エノール化の反応時間は反応温度によるが、通常、30分から3時間程度である。反応終了後、反応液を冷却するか又は、n−ヘキサン等の貧溶媒に投入することにより、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が析出する。
【0094】
次に無機塩基を用いたエノール化の方法について述べる。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を水若しくは水溶性溶媒又は水と水溶性溶媒の混合液中に分散させ、次いで1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物の2倍モル以上の無機塩基を添加し、加熱して、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩基塩溶液とする。次いで、該無機塩基塩溶液に酸を加えて中和することにより、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が得られる。
【0095】
無機塩基を用いたエノール化において、用いる無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0096】
水溶性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド,N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒が使用される。中でも、反応収率の高さから、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0097】
反応温度としては、20℃以上、100℃未満が好ましい。より好ましくは50℃以上、80℃以下である。20℃未満では反応時間がかかりすぎ、100℃以上では、生成物の純度が低下し、共に好ましくない。
【0098】
反応時間としては、反応温度にもよるが、通常30分以上、2時間以下である。無機塩基を添加すると、水溶液の色が赤くなり、該水溶液を加熱するにつれて次第に1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物の結晶が溶けて、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩基塩が生成して赤い水溶液となる。該無機塩基塩水溶液に硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸、燐酸等の酸を加えて、水溶液のpHを弱酸性にすると、水溶液の赤色が消えて、灰白色の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物のスラリーが大量に析出する。これを濾過等により、分離することにより、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を得ることができる。
【0099】
このようにして得られた1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を出発原料として、ハロゲン化(メタ)アクリロイル等の(メタ)アクリルロイル化剤と反応させる第一反応により10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を得ることができる。
【0100】
第一反応において原料として用いる1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−メチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−メチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−クロロ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−クロロ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1−メチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1,5−ジメチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、2,5−ジメチル−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール等が挙げられる。
【0101】
第一反応において用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0102】
第1反応に用いる塩基の添加量は、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物に対して、通常1.0モル倍以上1.3モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、原料の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応で残留し、一方、塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量によっては(メタ)アクリロイル基が二つ入った9,10−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセンが副生し、望みの10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレートの収率が低下し、好ましくない。
【0103】
第一反応に用いる(メタ)アクリルロイル化剤としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが好適に用いられる。ハロゲン原子が塩素原子の場合は、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルとなり、ハロゲン原子が臭素原子の場合は、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルとなる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため、好ましい。1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物に塩化アクリロイルを反応させると、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート化合物が得られる。一方、塩化メタクリロイルを反応させると、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート化合物が得られる。
【0104】
第一反応に用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は原料の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常1.0モル倍以上2.0モル倍未満、好ましくは1.1モル倍以上1.5モル倍未満である。1.0モル倍未満の場合は、原料の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍以上の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0105】
第一反応において、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルとの反応では、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。
【0106】
水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリロイル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとヘキサン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
【0107】
第一反応において、反応温度の制御および選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
【0108】
第一反応において、(メタ)アクリロイル化反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常40℃以下、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。当該反応において、発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が加水分解してしまう場合があり、好ましくない。
【0109】
第一反応において、(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、特に限定されないが、通常5分以上2時間未満、特に10分以上30分未満の範囲が好ましい。
【0110】
第一反応で得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物であることを確認した。
【0111】
<一般式(3)の化合物の製造法>
次に、本発明の一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法について説明する。一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は前述の第一反応で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物とエーテル化剤とを塩基の存在下で反応させる第二反応により得ることができる。
【0112】
【化19】

【0113】
上記第二反応の式において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、R10はアルキル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。
【0114】
第二反応において原料として用いる、一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート、6−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、7−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、8−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、6−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、5−クロロ−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、3−メチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,6−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、3,6−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,5−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、3,5−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,7−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、3,7−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、2,8−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート、3,8−ジメチル−10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレート等が挙げられる。
【0115】
第二反応に用いるエーテル化剤としては、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル又は酸化アルキレン等が挙げられる。代表的なジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジブチル硫酸等が挙げられる。また、ハロゲン化アルキルとしては、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、臭化ペンチル、臭化ヘキシル、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化ペンチル、塩化ヘキシル等が挙げられる。
【0116】
第二反応において用いるエーテル化剤の添加量はエーテル化剤の種類により異なる。エーテル化剤がジアルキル硫酸又はハロゲン化アルキルの場合は、エーテル化剤の添加量は原料である10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9―(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1.0モル倍以上2.0モル倍未満、好ましくは1.1モル倍以上1.3モル倍未満である。1.0モル倍未満の場合は、原料の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍以上の場合は、得られた10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0117】
第二反応において用いる塩基は無機塩基が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0118】
第二反応において用いる無機塩基の添加量は、原料である10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1.0モル倍以上1.4モル倍未満である。より好ましくは、1.05モル倍以上、1.2モル倍以下である。塩基の使用量が少なすぎると、原料の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が未反応で残り製品純度が低下する。又、無機塩基の使用量が多すぎると、生成物の10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が分解する場合があり好ましくない。
【0119】
第二反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタンノール、エタノール,n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒、又はジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等のアミド系溶媒が好適に用いられる。
【0120】
第二反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、中でも5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
【0121】
第二反応に要する時間は、エーテル化剤の種類と反応温度によるが、エーテル化剤がジアルキル硫酸である場合は、通常5分以上4時間未満、特に10分以上2時間未満が好ましい。
【0122】
第二反応で得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物であることを確認した。
【0123】
<一般式(4)の化合物の製造法>
次に、本発明の一般式(4)で表わされる10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法について説明する。一般式(4)で表わされる10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、前述の第一反応で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレートを塩基の存在下又は不存在下、アシル化剤を用いてアシル化する第三反応により得ることができる。
【0124】
【化20】

【0125】
上記第三反応の式において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又はアリール基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示し、Lはハロゲン原子を示す。
【0126】
第三反応において原料として用いる、一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物としては、第二反応に用いる原料と同様の化合物を用いることができる。
【0127】
第三反応に用いるアシル化剤としては、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル等のカルボン酸ハライド類が挙げられる。更に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の無水カルボン酸類、さらには塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、塩化−1−ナフトイル、塩化−2−ナフトイル等のカルボン酸ハライド類、安息香酸無水物等のカルボン酸無水物類等も用いることができる。
【0128】
第三反応に用いるアシル化剤の添加量は、アシル化剤がカルボン酸無水物の場合は、1.0モル倍以上2.0モル倍未満が好ましく、より好ましくは1.2モル倍以上1.6モル倍未満である。1.0モル倍未満の場合は未反応の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が残留し、また、2.0モル倍以上の場合は、カルボン酸無水物又はカルボン酸が多量に反応物に残るため、生成物が結晶化し難くなり、いずれも好ましくない。また、アシル化剤がカルボン酸ハライドの場合は、アシル化剤の添加量は1.0モル倍以上1.5モル倍未満が好ましく、より好ましくは1.1モル倍以上1.3モル倍未満である。1.0モル倍未満の場合は未反応の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が残留し、また、1.5モル倍以上の場合は、カルボン酸ハライド又はカルボン酸が多量に反応物に残るため、生成物が結晶化し難くなり、いずれも好ましくない。
【0129】
第三反応に用いる塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、ピペリジン等が挙げられる。塩基の使用量は通常、原料の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物に対して、1.0モル倍以上1.2モル倍未満である。
【0130】
第三反応は、通常溶媒中で行われる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン系溶媒、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒が好適に用いられる。
【0131】
第三反応において、溶媒が芳香族系溶媒の場合は、反応の原料である10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の溶媒に対する溶解度が低くスラリー状態となる場合があるが、反応が進行するにともない可溶化してくるのが一般である。
【0132】
第三反応の反応温度は0℃以上80℃未満、好ましくは0℃以上20℃未満である。反応温度が0℃未満の場合は反応に時間がかかり、また80℃以上の場合は不純物濃度が増え、いずれの場合も好ましくない。
【0133】
第三反応の反応時間は15分から3時間程度である。反応終了後、アシル化剤がカルボン酸ハライドの場合は、水またはメタノールを加えて未反応のアシル化剤を加水分解した。溶媒が芳香族系溶媒の場合は、析出した 塩酸塩を水を添加して溶解させた後、濃縮して生成物を晶析させた。また、溶媒にアセトンなどの水溶性ケトンを用いた場合は、反応終了後水を加えて未反応のアシル化剤を加水分解し、同時に析出した結晶を濾別することにより白色あるいは黄白色粉末を得ることができる。
【0134】
第三反応で得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物であることを確認した。
【0135】
<一般式(5)の化合物の製造法>
次に、一般式(5)で表わされる10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法について詳説する。本発明の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は次の二つの方法で得ることができる。一つは原料に一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を用い、これとハロゲン化(メタ)アクリロイルを反応させるA法であり、もう一つは、一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を2モル倍以上のハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させるB法である。
【0136】
まずA法について説明する。本発明の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、前述の第一反応で得られた一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を塩基の存在下又は不存在下、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させる第四反応によって得ることができる。
【0137】
【化21】

【0138】
上記第四反応の式において、R、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示し、Lはハロゲン原子を示す。
【0139】
第四反応において原料として用いる、一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物としては、第二反応、第三反応に用いる原料と同様の化合物を用いることができる。
【0140】
第四反応に用いる(メタ)アクリロイル化剤としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが好適に用いられる。ハロゲン原子が塩素原子の場合は、塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルとなり、ハロゲン原子が臭素原子の場合は、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルとなる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため、好ましい。
【0141】
第四反応において用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1.0モル倍以上2.0モル倍未満、好ましくは1.1モル倍以上1.3モル倍未満である。1.0モル倍未満の場合は、原料の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍以上の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0142】
第四反応に用いる塩基は有機塩基が好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α―ピコリン,γ―ピコリン、トリエチルアミン,トリブチルアミン,ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい。
【0143】
第四反応に用いる塩基の添加量は、10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物1モルに対して、通常1.05モル倍以上1.2モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、原料の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物が残り、一方、塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
【0144】
10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−(メタ)アクリレート化合物とハロゲン化(メタ)アクリロイルとの反応では、通常は溶媒の存在下で行なう。第四反応で用いる溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
【0145】
第四反応に要する時間は、特に限定されないが、通常30分以上4時間未満、特に10分以上2.0時間未満が好ましい。
【0146】
第四反応で得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する10−アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート化合物であることを確認した。
【0147】
当該A法においては、用いる(メタ)アクリロイル化剤を第一反応と第二反応で異なる種類のものとすることにより、非対称の化合物も合成できる。このようにして得られた非対称の化合物は溶媒や、他のモノマーに対する溶解度が高くなり、添加モノマーとして使いやすくなることが期待される。
【0148】
次に、B法について説明する。本発明の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を塩基の存在下又は不存在下、2モル倍以上のハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させる第五反応によっても得ることができる。B法においては、一般式(5)におけるRとRは同一の置換基となる。よって、反応式中ではRをRとし、一般式(7)と記載する。
【0149】
【化22】

【0150】
上記第五反応の式において、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示し、Lはハロゲン原子を示す。
【0151】
第五反応において原料として用いる1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物としては、第一反応において原料として用いる化合物と同じである。
【0152】
第五反応に用いる(メタ)アクリロイル化剤としては、同様に第一反応において用いる(メタ)アクリロイル化剤と同じものを用いることができる。
【0153】
用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常2.0モル倍以上3.0モル倍未満、好ましくは2.3モル倍以上2.7モル倍未満である。2.0モル倍未満の場合は、原料の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物又は中間体の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、3.0モル倍以上の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0154】
第五反応に用いる塩基は第一反応と同様に、無機塩基、有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α―ピコリン,γ―ピコリン、トリエチルアミン,トリブチルアミン,ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい
【0155】
第五反応に用いる塩基の添加量は、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常2.0モル倍以上2.4モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、未反応の1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が残留し、一方、塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
【0156】
第五反応において、通常は溶媒の存在下で行なう。第五反応に用いる溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
【0157】
また、第五反応に用いる塩基が無機塩基である場合は、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリロイル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
【0158】
(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、特に限定されないが、塩基が有機塩基である場合は通常30分以上4時間未満、特に20分以上2.0時間未満の範囲が好ましく、塩基が無機塩基である場合は、通常5分以上3.0時間、特に10分以上2時間未満が好ましい。
【0159】
第五反応で得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物又は9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物であることを確認した。
【0160】
本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、高屈折率の化合物であり、重合性の(メタ)アクリロイル基を有することから、高屈折率を有するポリマーの原料として有用であるだけでなく、ナフタレン構造に直結した水酸基やエーテル基を持つことから、樹脂の成型加工時などにおける熱分解温度を高め、樹脂の耐熱性を向上させる熱分解温度向上剤やポリマー合成時の連鎖移動剤などの用途としても期待される。
【0161】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【実施例】
【0162】
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折率:アッベ屈折率計:エルマー社製、形式ER−7MW−H
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
【0163】
(合成例1)1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの合成
ジシクロペンタジエン120g(和光純薬製)を容積が300mlのナス型フラスコに量り取り、フリードリッヒ冷却管を備えた蒸留装置にて185℃のオイルバスで加熱し、熱分解して溜出してきたシクロペンタジエン(溜出温度40℃)を塩化メチレン60g(和光純薬製)の入った、容積が200mlのナスフラスコで捕集した。捕集するナスフラスコはドライアイス・アセトンで冷却しながら行った。上記の方法で捕集したシクロペンタジエン64g(970ミリモル)を含有した塩化メチレン溶液を、容積が500mlの四口フラスコに移し入れ、ドライアイス・アセトンで−60℃に冷却した。当該シクロペンタジエンの塩化メチレン溶液を撹拌しながら、該溶液に1,4−ナフトキノン128g(川崎化成工業製)(810ミリモル)と塩化メチレン200g(和光純薬製)のスラリーを15分掛けて添加した。添加終了後、ドライアイス・アセトンの冷却を止めたところ、発熱反応により内温が45℃まで上昇した。そして該反応液を内温が下降するまで撹拌を続けた。内温が下がり始めたらバス温度を35℃に調整し、30分間攪拌した。反応液を容積が1Lのナス型フラスコに移し、これにメタノール300ml(和光純薬製)を加えた後、反応液を50℃に加熱して、塩化メチレン約250g溜去し、結晶を晶析させた。析出した結晶を吸引濾過し、得られた結晶をメタノール50mlで三回洗浄した。得られた結晶は白色結晶170g(760ミリモル)であった。この結晶を同定したところ、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンであった。原料1,4−ナフトキノンに対する収率は94モル%であった。
【0164】
(合成例2)1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの合成
攪拌機、温度計付きの容積が300mlの三口フラスコ中で窒素雰囲気下合成例1で得られた1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン11.2g(50ミリモル)を脱気水100gでリスラリーした。該白色スラリーに苛性ソーダ6.0g(150ミリモル)を脱気水30gに溶解した溶液を加えた。窒素雰囲気下、60℃で30分加熱すると、黒緑色の溶液が得られた。該溶液を1Lの酸性水中に投入し、沈殿した灰紫色の粉末を濾過・乾燥し、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの灰紫色粉末10.44g(46ミリモル)を得た。原料1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は92モル%であった。
【0165】
(実施例1)10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの1Lの三口フラスコ中に、窒素雰囲気下合成例2と同様にして合成した1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール22.2g(100ミリモル)、脱気水200gを投入し灰色スラリーとした。窒素雰囲気下、該スラリーに水酸化ナトリウム4.80g(120ミリモル)の水30g溶液を添加し、水冷しながら40℃以下に保ちながら15分攪拌した。スラリーは黒緑色の均一溶液となった。該反応液に、塩化メタクリロイル13.5g(130ミリモル)のトルエン40g溶液を添加した。塩化メタクリロイル溶液の添加後3分で液の色が薄くなり沈殿が生成した。その後15分間攪拌し、得られた反応混合物を吸引濾過し、水洗い、次いでトルエン洗い、さらに乾燥して10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの灰色粉末を19.5g(67ミリモル)得た。原料1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール に対する単離収率は67モル%であった。
【0166】
(1)融点:159−160℃
(2)屈折率:n=1.643
(3)IR(KBr,cm−1):3480、2940、1720、1600、1375、1308、1276、1140、952、758、725
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=8.04−7.95(m、1H)、7.70−7.64(m、1H)、7.44−7.39(m,2H),6.68−6.60(m,2H),6.53(s,1H)5.86(s,1H),5.16(s,1H),4.25−4.20(m,1H),3.98−3.92(m,1H),2.30−2.16(m,5H).
【0167】
(実施例2)10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの容積が200ml三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート5.84g(20ミリモル)、ジメチルアセトアミド30g、ジメチル硫酸3.02g(24ミリモル)を仕込み、攪拌したところエンジ色溶液となった。次いで、氷水で冷やしつつ、水酸化ナトリウム0.88g(22ミリモル)の水10g溶液を加えた。添加と同時に液の赤みが消えて、底に無色の水飴状の物質が沈んだ。1時間静置後、上澄みを捨て、底の水飴状の物質を水10gで2回洗った。その後、メタノール7g加えて、水飴状の物質が浸る状態にし、氷水で冷やしながら超音波処理した。数分で白く結晶化したので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して10−メトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの白色粉末3.9g(12.6ミリモル)を得た。原料10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートに対する収率は63モル%であった。
【0168】
(1)融点:56−57℃
(2)屈折率:n=1.618
(3)IR(KBr,cm−1):3070,2978,2940,1740,1450,1358,1320,1280,1130,1120,1088,760,734.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.17(s,3H),2.21−2.28(m,2H),3.93(s,1H),4.01(s,3H),4.36(s,1H),5.85(s,1H),6.52(s,1H),6.74−6.81(m,2H),7.39−7.46(m,2H),7.67−7.73(m,1H),8.02−8.08(m,1H).
【0169】
(実施例3)10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの容積が200ml三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート2.92g(10ミリモル)、ジメチルアセトアミド14g、ジエチル硫酸1.85g(12ミリモル)を仕込み、攪拌したところエンジ色溶液となった。次いで該反応駅を氷水で冷やしながら、水酸化ナトリウム0.44g(11ミリモル)の水4g溶液を加えた。1時間攪拌後、10%硫酸水溶液5gを添加したところ、液の赤みが消えて、底に無色の水飴状の物質が沈んだ。1時間静置後、上澄みを捨て、底の水飴状の物質を水5gで2回洗った。その後、n−ヘキサン5g加えて、水飴状の物質が浸る状態にし、氷水で冷やしながら超音波処理した。数分で白く結晶化したので、吸引濾過、n−ヘキサン洗い、乾燥し、10−エトキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの白色粉末2.0g(6ミリモル)を得た。原料10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートに対する収率は60モル%であった。
【0170】
(1)融点:77−78℃
(2)屈折率:n=1.610
(3)IR(KBr,cm−1):3080,3000,2975,2940,1738,1372,1350,1320,1280,1132,1108,1036,762,735.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=1.48(t,J=8Hz,3H),2.17(S,3H),2.20−2.27(m,2H),3.93(s,1H),4.08−4.16(m,1H),4.18−4.26(m,1H),4.31(s,1H),5.84(s,1H),6.51(s,1H),6.74−6.79(m,2H),7.38−7.46(m,2H),7.68−7.73(m,1H),8.01−8.08(m,1H).
【0171】
(実施例4)10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの容積が200ml三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート2.94g(10ミリモル)、トルエン14g、無水酢酸1.4g(14ミリモル)を加え白色スラリーを調製した。次いで、該スラリーに、トリエチルアミン1.1g(11ミリモル)のトルエン2g溶液を加えた。添加と同時に液は均一溶液となった。室温で、1時間静置後、メタノール20g加えて、濃縮した。大きな立方結晶が析出したので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥し、10−アセチルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの白色立方結晶2.6g(7.8ミリモル)を得た。原料10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートに対する収率は78モル%であった。
【0172】
(1)融点:103−104℃
(2)屈折率:n=1.607
(3)IR(KBr,cm−1):3070,3010,2976,2940,2875,1772,1736,1662,1637,1610,1510,1457,1436,1356,1316,1278,1200,1120,1004,942,880,767,738,640.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.16(s,3H),2.24−2.30(m,2H),2.47(s,3H),3.97(bs,2H),5.86(s,1H),6.53(s,1H),6.75−6.81(m,2H),7.40−7.47(m,2H),7.71−7.78(m,2H).
【0173】
(実施例5)10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの容積が200ml三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート2.94g(10ミリモル)、トルエン14g、無水プロピオン酸1.8g(14ミリモル)を加え白色スラリーを調製した。次いで、該スラリーに、トリエチルアミン1.1g(11ミリモル)のトルエン2g溶液を加えたところ、添加と同時にスラリーは均一溶液となった。1時間静置後、メタノール10g加えて、濃縮したところ、赤茶色の水飴状の物質が得られた。該赤茶色の水飴状の物質にメタノールを4g加えて氷水中で冷却しながら超音波処理した。該赤茶色の水飴状の物質が結晶化したので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して10−プロピオニルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートの灰白色粉末2.1g(6.0ミリモル)を得た。原料10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートに対する収率は60モル%であった。
【0174】
(1)融点:101−102℃
(2)屈折率:n=1.600
(3)IR(KBr,cm−1):3075,2996,2950,1761,1736,1670,1638,1611,1460,1352,1320,1278,1130,1080,760,734.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=1.40(t,J=8Hz,3H),2.17(s,3H),2.22−2.29(m,2H),2.79(q,J=8Hz,2H),3.96(s,2H),5.86(s,1H),6.53(s,1H),6.78(s,2H),7.39−7.47(m,2H),7.71−7.78(m,2H).
【0175】
(実施例6)10−メタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレートの合成
攪拌機、温度計付きの容積が200ml三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、実施例1と同様の方法で得られた10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレート2.92g(10ミリモル)、トルエン10g、塩化アクリロイル1.08g(12ミリモル)を加え、攪拌したところ灰白色スラリーとなった。次いで、該スラリーに、トリエチルアミン1.10g(11ミリモル)のトルエン3g溶液を氷水で冷やしながら加えた。添加と同時に液は均一溶液となった。室温で、1時間攪拌後、反応液は濁ってきた。水10g加え、良く攪拌し、水層をすて、トルエン層にメタノール20g加えて濃縮した。大きな結晶が析出したので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥し、10−メタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−アクリレートの薄茶色の結晶2.21g(6.5ミリモル)を得た。原料10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−メタクリレートに対する収率は65モル%であった。
【0176】
(1)融点:133−134℃
(2)屈折率:n=1.613
(3)IR(KBr,cm−1):3076,3008,2980,2940,1740,1635,1413,1357,1320,1295,1284,1245,1160,1140,1074,988,940,802,760,728.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.17(s,3H),2.23−2.31(m,2H),3.98(s,2H),5.87(s,1H),6.12(d,J=9Hz,1H),6.50(dd,J=17Hz,J=9Hz,1H),6.55(s,1H),6.75(d,J=17Hz,1H),6.78(s,2H),7.39−7.46(m,2H),7.71−7.79(m,2H).
【0177】
(実施例7)9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの容積が300mlの三口フラスコに、合成例2と同様の方法で得られた1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.48g(20ミリモル)、塩化アクリロイル4.50g(50ミリモル)、アセトン50mlを仕込んで攪拌したところ焦げ茶色の溶液になった。当該溶液に、氷水バス中でフラスコを冷却しながら、トリエチルアミン4.4g(44ミリモル)のアセトン20ml溶液を添加した。直ぐに無機性の沈殿が多量に析出した。1時間攪拌後、得られたスラリーに水を14gくわえて、均一溶液とした、さらに水を15g加えると、白い結晶が析出したので、吸引濾過し、メタノールで洗った後乾燥し、9,10−ジアクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセンの薄黄色の粉末4.7g(14ミリモル)を得た。原料である1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は70モル%であった。
【0178】
(1)融点:129−131℃
(2)屈折率 :n=1.617
(3)IR(KBr,cm−1) :3080,3010,2950,1746,1660,1636,1408,1352,1310,1280,1240,1140,1078,1014,988,893,802,762,732,648.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.20−2.36(m,2H),3.98(s,3H),6.13(d,J=9Hz,2H),6.51(dd,J=17Hz,J=9Hz,2H),6.76(d,J=17Hz),6.80(s,2H),7.40−7.49(m,2H),7.72−7.80(m,2H).
【0179】
(実施例8)9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの容積が300mlの三口フラスコ中に、合成例2と同様の方法で得られた1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.48g(20ミリモル)、塩化メタクリロイル5.20g(50ミリモル)、アセトン50mlを仕込んで攪拌したところ茶色の溶液になった。当該溶液に、氷水バス中でフラスコを冷却しながら、トリエチルアミン4,4g(44ミリモル)のアセトン20ml溶液を添加した。直ぐに無機性の沈殿が多量に析出した。1時間攪拌後、得られたスラリーに水を25gくわえて、均一溶液とした、さらに水を25g加えると、黒っぽいオイルが沈んだ。該オイルをアセトンに溶解し、メタノール30mlを加え、濃縮したところ薄茶色の結晶が析出した。吸引濾過し、メタノールで洗った後乾燥し、9,10−ジメタクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセンの薄茶色の結晶3.0g(8.3ミリモル)を得た。原料1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は41モル%であった。
【0180】
(1)融点:160−162℃
(2)屈折率:n=1.605
(3)IR(KBr,cm−1):3080,3010,2990,2945,1742,1640,1458,1360,1320,1278,1125,950,764,732,641.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ=2.17(s,3H),2.22−2.31(m,2H),3.97(s,2H),5.87(s,2H),6.54(s,2H),6.80(s,2H),7.39−7.47(m,2H),7.73−7.79(m,2H).
【0181】
(比較例1)4−エトキシ−1−ナフチルメタクリレートの合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコ中に、水75.0ml、トルエン15.0ml、水酸化ナトリウム1.4g(35.0ミリモル)、及び1,4−ナフタレンジオール5.0g(31.3ミリモル)を仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、メタクリル酸クロライド3.5g(33.0mmol)を滴下した。この間、反応容器の内温を5℃以下に保った。滴下の途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴30分間攪拌後多量の結晶の析出が見られた。該反応混合物を吸引濾過し、ロート上30mlの水で洗い、さらに30mlのトルエンで洗って、4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレートの灰白色結晶6.0g(26.3ミリモル)を得た。該4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレート4.56g(20ミリモル)とジメチルアセトアミド18ml、ジエチル硫酸3.39g(22ミリモル)を、攪拌機、温度計付きの100mlの三口フラスコ中に、窒素雰囲気下仕込み、攪拌したところ無色溶液となった。次いで、氷水で冷やしつつ、水酸化ナトリウム088g(22ミリモル)の水10ml溶液を加えた。添加と同時に液の底に薄赤色の水飴状のオイルが沈んだ。1時間静置後、上澄みを捨て、オイル状物を水10mlで2回洗い、メタノール30ml加えて可溶分を溶解させた。メタノール溶液を濃縮し、4−エトキシ−1−ナフチルメタクリレートの薄赤いオイル状物 3.0g(11.7ミリモル)を得た。原料4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレートに対する収率は58モル%であった。
【0182】
(1)融点:室温液状
(2)屈折率:n=1.583
(3)IR(KBr,cm−1):3080,2990,2940,1742,1640,1602,1591,1465,1390,1272,1241,1230,1132,1090,810,768.
(4)H−NMR(400MHz、CDCl):δ1.54(t,J=8Hz,3H),2.16(s,3H),4.20(q,J=8Hz,2H),5.82(s,1H),6.49(s,1H),6.76(d,J=8Hz,1H),7.14(d,J=8Hz,1H),7.46−7.53(m,2H),7.74−7.80(m,1H),8.27−8.33(m、1H).
【0183】
(比較例2)4−アセチルオキシ−1−ナフチルメタクリレートの合成
温度計、攪拌機付の200mlの三口フラスコ中に、水75.0ml、トルエン15.0ml、水酸化ナトリウム1.4g(35.0ミリモル)、及び1,4−ナフタレンジオール5.0g(31.3ミリモル)を仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、メタクリル酸クロライド3.5g(33.0mmol)を滴下した。この間、反応容器の内温を5℃以下に保った。滴下の途中から、多量の結晶の析出が認められた。滴30分間攪拌後多量の結晶の析出が見られた。該反応混合物を吸引濾過し、ロート上30mlの水で洗い、さらに30mlのトルエンで洗って、4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレートの灰白色結晶6.0g(26.3ミリモル)を得た。該4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレート5.0g(21.9mmol)とジメチルアセトアミド30ml、トリエチルアミン6.6g(65.7mmol)を、攪拌機、温度計付きの300mlの三口フラスコ中に仕込んだ。次に、窒素ガス雰囲気下、冷却及び攪拌しながら、市販品アセチルクロライド1.88g(24.0mmol)を、アセトニトリル10mlに溶かした液を滴下した。この間、内温を5℃以下に保った。滴下終了後、室温にもどし、更に30分間攪拌を続けた。その後、該反応液に水5g、メタノール50ml加えた。数日後結晶が析出したので、吸引濾過、メタノール洗い、乾燥して4−アセチルオキシ−1−ナフチルメタクリレートの白色結晶3.65g(13.5ミリモル)を得た。原料4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレートに対する収率は62モル%であった。
【0184】
(1)融点:103−104℃
(2)屈折率:n=1.584
(3)IR(KBr,cm−1):1770,1735,1640、1605、1396、1378,1320,1205,1128,955,900,770.
(4)H−NMR(270MHz、CDCl):δ=2.13(s,3H),2. 46(s,3H),5.85(s,1H),6.49(s,1H),7.21−7.31(m,2H),7.48−7.58(m,2H),7.82−7.91(m,2H).
【0185】
(比較例3)1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンの合成
温度計、攪拌機を備えた300mlの三口フラスコ中、1,4−ナフタレンジオール
16g(0.1モル)をアセトン60mlに溶解し、ついで、塩化アクリロイル23g(0.25モル)のアセトン70ml溶液を加えた。次に、該溶液を水で冷却し、トリエチルアミン25g(0.25モル)の50mlアセトン溶液を滴下した。滴下と同時に白煙が生じ、白い結晶が沈殿してきた。トリエチルアミン溶液を全量加えた後、反応混合物を30分間攪拌し、その後、水60mlを加えて白い沈殿を溶解させ均一溶液とした。さらに水100mlを加えると白い沈殿が生じたので、この沈殿物を吸引濾過・水洗い、乾燥して1,4−ジアクリロイルオキシナフタレンの無色の結晶を19.1g(0.071モル)得た。単離収率は71モル%であった。
【0186】
(1)融点:92−93℃
(2)屈折率:n=1.583
(3)IR(KBr,cm−1):1738,1630,1400,1382,1216,1160,1132,1050,992,900,800,770,750
(4)1H−NMR(270MHz、CDCl): δ6.11(d,J=8.4Hz、2H),6.48(dd,J1=8.4Hz,J2=17Hz,2H),6.74(d,J=17Hz,2H),7.31(s,2H),7.54(dt,J1=2.5Hz,J2=7Hz,2H),7.88(dd,J1=2.5Hz,J2=7Hz,2H)
【0187】
表1に本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の屈折率の一覧を示した。
【0188】
【表1】

【0189】
実施例1〜8と表1より明らかなように、本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、いずれも1.6以上という高い屈折率を示していることが分かる。一方、比較例1〜3は、本発明と類似の構造を持つ化合物で、芳香環の構造がナフタレン環である化合物であるが、いずれも、本発明の化合物より屈折率が低く、置換基の構造が同じ化合物同士の比較においても、本発明の化合物の方が、非常に高い屈折率を示していることが分かる。すなわち、本発明の10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物は、高い屈折率有する化合物であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される10−置換−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化1】


(一般式(1)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、アルキル基、アシル基又は(メタ)アクリロイル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化2】


(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項3】
下記一般式(3)で示される10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化3】


(一般式(3)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、R10はアルキル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項4】
下記一般式(4)で示される10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化4】


(一般式(4)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又はアリール基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項5】
下記一般式(5)で示される10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物。
【化5】


(一般式(5)中、R、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項6】
下記一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物をモノ(メタ)アクリルロイル化することよりなる請求項2記載の10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化6】


(一般式(6)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項7】
下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をエーテル化することよりなる請求項3記載の10−アルコキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化7】


(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項8】
下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物をアシル化することよりなる請求項4記載の10−アシルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化8】


(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項9】
下記一般式(2)で示される10−ヒドロキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる請求項5記載の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化9】


(一般式(2)中、R、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)
【請求項10】
下記一般式(6)で示される1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる請求項5記載の10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,4−ジヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9−イル−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化10】


(一般式(6)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子のいずれかを示す。)

【公開番号】特開2013−82642(P2013−82642A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222294(P2011−222294)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】