説明

13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類、およびこれを含む香料組成物

【課題】白檀様香気を有する化合物、及びこれを含有する香料組成物を提供する。
【解決手段】白檀様香気を有する化合物は、式(1)(式中、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされる13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、および式(2)(式中、R、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされる12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類であり、新規化合物である。また、香料組成物は、これら化合物からの1つ以上を含有して構成される。
【化12】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類、およびこれを含む香料組成物に関する。より詳細には、天然の白檀を思わせる木様系香気の高級感を伴う快適な香気を持つ新規な14−置換−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、14位が置換,あるいは置換されていない12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類、およびこれらを用いた香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
双環性で、一方の環にエーテル結合を持つ化合物として、13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン(式(20))〔商品名;シクランバー、ヘンケル社〕や、3−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−6−エン(式(21))〔商品名;ムスコゲン、ドラゴコ社〕が知られている〔例えば、特許文献1参照〕。しかしながら、これらの化合物は、それぞれやわらかいリュウゼン香を持つ化合物、あるいは拡散性のある少しウッディでムスク香を持つ化合物であるとされ、ビャクダン様の香気とは明らかににおいの質が異なっている。その他、14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン(式(22))〔特許文献2参照〕、15,15−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン(式(23))〔非特許文献1参照〕がそれぞれ公知であるが、式(22)の化合物が木様香気を持つとされている程度で、香気に関する詳細な解説はない。
【0003】
【化3】

【0004】
白檀油(サンダルウッドオイル)の香気としては、インドマイソール地方などの白檀がもっとも高級とされているが、近年の伐採禁止によって、現在は入手が極めて困難になっている。式(20)〜式(23)の化合物の香気を、サンダルウッドオイルの香気と比較したとき、明らかに香質が異なり、また香気が弱い。
【0005】
【特許文献1】特開2003−213295号公報(段落番号0015)
【特許文献2】欧州特許出願公開第75866号明細書
【非特許文献1】第42回香料・テルペン・精油に関する討論会 講演要旨集368−364、1998年、岐阜薬科大学
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の各種香粧品、芳香剤に用いる香料へのニーズの変化に伴って、これまでより一段と高級感に優れかつ新規な香気を有する香料物質の開発が望まれている。特に白檀様香気を有する化合物は、天然指向の消費者の最も関心を寄せる香気とされている。従って、本発明の目的は、上記の需要を満たす白檀様香気を有する化合物を提供すること、及びこれを含有する香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の事情に鑑み、本発明者等は入手が容易で安定な化合物と考えられる13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン誘導体について鋭意研究の結果、小環の環状エーテル化合物の酸素に隣接する橋頭炭素上に水素を持たない化合物が、シクロドデカノンから容易且つ安価に得られること、および小環の環状エーテル化合物の酸素に隣接する橋頭炭素上に水素を持たない構造の化合物が、白檀様香料組成物の有効成分として非常に有用であることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、式(1)(式中、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされる13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、および式(2)(式中、R、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされる12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類、およびこれらからの1つ以上を含有する香料組成物である。
【0009】
【化4】

【発明の効果】
【0010】
本発明によって得られた13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類は、ともに新規化合物であり、また雑味がなく透きとおる力強い木様香気を持つ化合物で、香料として利用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類〔式(1)〕、および12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類、13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類〔式(2)〕は、いずれも新規の化合物である。本発明は、その合成方法を限定するものではないが、一つの合成方法として、シクロドデカノン〔式(10)〕を出発原料として合成することができる。合成例を以下に説明するが、この合成例の中間化合物を含めた反応系統図を以下に示す。
【0012】
【化5】

【0013】
出発原料となるシクロドデカノン〔式(10)〕は、合成方法を含めて公知な一般的な化合物で、試薬としても販売されており、容易に入手できる。
シクロドデカノン〔式(10)〕を、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒中で、アルカリの存在下、3−クロロ−1−プロペン、あるいは3−クロロ−2−メチル−1−プロペンと反応させることにより2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕、あるいは2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕とした後、これを硫酸で環化して13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類〔式(1)〕に属する14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類〔式(3)〕、あるいは14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕が合成される。
【0014】
上記の中間体である2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕から酸化して2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン〔式(13)〕とし、このモノアルケニル−ケトン体にメチルマグネシウムハライドを作用させジオール体を合成した後に、脱水縮合して環化する方法で12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕が合成される。
【0015】
一方、2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕から、これにメチルマグネシウムハライドを作用させて1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕とし、部分酸化して1−メチル−(2−オキソプロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(16)〕、さらに水素化して1−メチル−(2−ヒドロキシプロピル)シクロドデカ−1−オール〔式(17)〕とし、脱水縮合で分子内閉環して12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕が合成される。
【0016】
また、上記の1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕を部分酸化して1−メチル−(2−オキソエテニル)シクロドデカ−1−オール〔式(18)〕とし、これを水素化して1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オール〔式(19)〕とし、脱水縮合で分子内閉環することにより12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕が合成される。
【0017】
上記で合成される13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類〔式(1)〕に属する14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕、14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕、および13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデセン類〔式(2)〕に属する12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕、12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕は、いずれも新規化合物であり、雑味がなく透きとおる力強い木様香気を持ち、香料の活性成分として利用できる。
【0018】
本発明における香料組成物は、少なくとも上記化合物からの一種以上が配合されたものであり、香水・オーデコロン・オードトワレを含む各種化粧品、芳香剤、石鹸・シャンプー・洗剤などを含む洗浄剤、エアゾール製品などに配合して広い分野に使用できる。
【実施例1】
【0019】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において、ガスクロマトグラフィー(GC)の測定は、ガスクロマトグラフィー装置〔(株)島津製作所製、「GC−2010」(型番)〕、カラム〔ジー・エル・サイエンス社製、「TC−WAX」(型番)60m×0.32mm、I.D.0.25μm〕、カラム温度を80℃から210℃まで毎分3℃ずつ昇温して行い、赤外吸収スペクトル(IR)の測定は、赤外吸収スペクトル測定装置〔(株)日立製作所製、「270−30」(型番)〕を用い、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)は、ガスクロマトグラフィー/質量分析装置〔アジレント・テクノロジー製、「6890」/「5973」(型番)〕を用いて行った。
【0020】
以下、本発明化合物の合成例、および中間体合成例を記載する。
a)14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデセンカ−1(12)−エン〔式(3)〕:
【化6】

【0021】
〔中間体合成例1〕
2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕の合成(方法1);
[シクロドデカノン〔式(10)〕から2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕の合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器を付けた1Lの四頚フラスコに、シクロドデカノン(91g、0.5mol)、トルエン(90ml)、47%苛性ソーダ水溶液(200g)、50%テトラブチルアンモニウムヨード水溶液(3.2g)を入れ、90℃に加温し、攪拌しながら3−クロロ−2−メチル−1−プロペン(67.5g、0.5mol×1.5)を1時間かけて滴下し、滴下終了後同温度で更に攪拌を7時間続けた。この反応混合物の有機層を分け取り、5%希硫酸水溶液で酸性(pH2)とした後、有機層を飽和食塩水(250ml×3)で洗浄し、さらに硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を減圧下に濃縮して黄色油状物(収量;128.8g)を得た。この黄色油状物を減圧下に蒸留し、始めに流出する結晶性の原料を除き(1mmHg下、134℃〜160℃)、留分(収量;85g、GC面積百分率は80%を示す。以下GC純度とする)を、スルーザーパック3個を充填したガラス製蒸留塔を用い、さらに精留することで、透明油状物を得た(収量;56g、沸点;135℃−138℃/2mmHg、GC保持時間;28.2分、GC純度;95.7%)。
【0022】
赤外吸収スペクトル(IR)および質量分析(MS)から、この生成物が2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕であることを確認した。
IR:2944、1716、1474、958.
MS(m/z):236(M、84%)、221(15)、193(11)、181(11)、165(10)、152(10)、137(21)、125(62)、112(47)、95(100)、82(83)、67(69)、55(98)、41(63).
【0023】
〔中間体合成例2〕
2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕の合成(方法2);
[シクロドデカノン〔式(10)〕から2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕の合成]
攪拌機、温度計、塩化カルシウム管付き還流冷却器を付けた2Lの四頚フラスコに、リチウム・ジイソプロピルアミドのテトラハイドロフラン溶液(アルドリッチ社製、1.8M濃度)750ml(1.35mol)を入れ、攪拌しつつ5℃以下に冷却し、この温度を維持したまま、これにテトラハイドロフラン300mlに溶解したシクロドデカノン(246g、1.35mol)を2時間かけて加えさらに30分攪拌を継続した。同温度以下で3−クロロ−2−メチル−1−プロペン(163.3g、1.35mol)を30分かけて滴下し、滴下終了後、徐々に温度を上げ室温で一昼夜攪拌を続けた。この反応混合物の有機層を分け取り、方法1と同様に処理することで透明油状物を得た(収量;156g、沸点;136℃〜138℃/2mmHg、GC純度;96.1%)。
【0024】
〔本発明化合物の合成例1〕
14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕の合成;
[2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(11)〕から14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕の合成]
攪拌機、温度計、冷却器を付けた100mLの四頚フラスコに、98%硫酸〔5g、0.0225mol×2.4〕を入れ、氷水で冷しながら激しく攪拌し、2−(2−メチル−2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン(5.3g、0.0225mol)を20分かけて滴下し、滴下終了後、室温に戻し更に攪拌を4〜5時間続けた。この反応混合物にイソプロピルエーテル(60ml)を加えてから、氷水(100ml)の中に注ぎ入れて水層と油層を分離させた。有機相を飽和重曹水(およそ50ml)でpH7とし、飽和食塩水(50ml×2)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して除いた後、有機相を減圧下に濃縮して黄色油状物を得た(収量;4.81g、収率;90.6%)。これをノルマルヘキサン−イソプロピルエーテル(容積比;9:1)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、更にグラスチューブオーブンでの蒸留を行うと、GC上でほぼ単一ピークとなる化合物(収量;3.9g)を得た(沸点;141〜143℃/6mmHg、GC保持時間;25.8分、GC純度;99.6%)。
【0025】
プロトンNMRでビニルプロトンが観測されないこと、及び赤外吸収スペクトル(IR)および質量分析(MS)から、この生成物が14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕であることを確認した。
IR:〔図1〕2932、2864、1714、1472、1368.
MS(m/z):236(M、53%)、193(13)、179(20)、165(19)、151(10)、137(68)、125(100)、112(83)、95(21)、81(23)、67(21)、55(30)、41(28).
【0026】
b)14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕:
【化7】

【0027】
〔中間体合成例3〕
2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕の合成;
[シクロドデカノン〔式(10)〕から2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕の合成]
攪拌機、温度計、還流冷却器を付けた1Lの四頚フラスコに、シクロドデカノン(91g、0.5mol)、トルエン(90ml)、47%苛性ソーダ水溶液(200g)、50%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液(9.1g)を入れ、室温で攪拌しながら、3−クロロ−1−プロペン(76.5g、0.5mol×2)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で更に攪拌を7時間続けた。この反応混合物の有機層を分け取り、5%希硫酸水溶液で酸性(pH2)とした後、有機層を飽和食塩水(250ml×3)で洗浄し、さらに硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を減圧下に濃縮して黄色油状物を得た(収量;123g、沸点;142℃〜149℃/5mmHg)。GC純度;70%)。さらに精留することで、透明油状物を得た(収量;70.5g、沸点;131℃〜136℃/3mmHg、GC純度;97.1%)。
【0028】
赤外吸収スペクトル(IR)および質量分析(MS)から、この生成物が、2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕であることを確認した。
IR:2932、1710、1644、1474、914 .
MS(m/z):222(M、47%)、193(8)、179(15)、165(23)、149(17)、137(17)、123(16)、111(56)、98(90)、81(76)、67(77)、55(100)、41(71).
【0029】
〔本発明化合物の合成例2〕
14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕の合成;
[2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕から14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕の合成]
攪拌機、温度計、冷却器を付けた100mLの四頚フラスコに、98%硫酸(5g、0.0225mol×2.4)を入れ、氷水で冷しながら激しく攪拌しながら、2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン(5g、0.0225mol)を20分間かけて滴下し、滴下終了後、室温で更に攪拌を時間続けた。この反応混合物にイソプロピルエーテル(60ml)を加えた後、氷水(100ml)の中に注ぎ入れて水層と油層を分離させた。分液ロートで分離して、その有機相を飽和重曹水(およそ50ml)で中和し、飽和食塩水(50ml×2)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ過して除いた後、有機相を減圧下に濃縮して黄色油状物を得た(収量;4.53g、収率;85%、GC純度;94%)。
さらに蒸留することで透明油状物(3.4g)を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製した後、更にガラスチューブオーブンによる蒸留(沸点;130〜133℃/8mmHg)を行って、GC上でほぼ単一ピークとなる化合物を得た(GC保持時間;28.1分、GC純度;99.4%)。
【0030】
プロトンNMRでビニルプロトンが見られないこと、及び赤外吸収スペクトル(IR)および質量分析(MS)から、14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕であることを確認した。
IR:[図2] 2932、2860、1694、1470、1448、1232、1210.
MS(m/z):222(M+、57%)、193(5)、179(18)、165(28)、137(10)、124(73)、111(100)、98(74)、81(11)、68(16)、55(21)、41(15).
【0031】
c)12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕:
【化8】

【0032】
〔中間体合成例4〕
2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン〔式(13)〕の合成;
[2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕から2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン〔式(13)〕の合成]
攪拌機、温度計、ガス導入管、ガス放出管付き冷却器を備えた300mLの四頚フラスコに、ジメチルホルムアミド−水(80ml、容積比;70:10)、塩化パラジウム(1.77g、0.1mol×1.1)、塩化第一銅(9.8g、0.1mol)を入れ、これに酸素ボンベから酸素を室温で60分間導入した。次いで酸素の導入を継続しつつ攪拌して、ジメチルホルムアミド(30ml)に溶解した2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン(27.5g、0.11mol)を滴下し、滴下終了後攪拌しながら、さらに室温で酸素の導入を26時間継続した。この反応混合物を充分冷却した3N塩酸(330ml)に注ぎ、トルエン(160mlで2回)でし、トルエン層を合わせて、飽和食塩水(20ml)、飽和重曹水(20ml)、飽和食塩水(20ml)で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後乾燥剤を除き、溶媒を減圧下に濃縮して油状物を得た(収量;27.0g、GC純度;74.7%)。この油状物をそのまま次の反応に用いた。
この生成物を確認するため、一部を取りカラムクロマトグラフィーで精製した後、メタノールより再結晶して白色結晶を得た(GC保持時間;50.4分、GC純度96.2%、融点56〜57℃)。
【0033】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン〔式(13)〕であることを確認した。
IR:1718、1474、1242、1172、724.
GC−MS(m/z):238(M、33%)、195(38)、181(20)、167(5)、140(6)、127(8)、114(46)、98(37)、83(25)、71(30)、55(50)、43(100).
【0034】
〔中間体合成例5〕
2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール〔式(14)〕の合成;
[2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン〔式(13)〕から2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール〔式(14)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた300mLの四頚フラスコに、不活性ガス雰囲気下3.0Mol濃度のメチルマグネシウムクロライドのテトラハイドロフラン溶液(80g、0.08mol×2.4)を入れ、これに滴下ロートから2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オン(17.8g、0.08mol)のテトラハイドロフラン(70ml)溶液を室温で滴下した。温度が50℃付近まで上昇したが、滴下後そのまま3時間攪拌を続け、ガスクロマトグラフィーで原料の2−(2−オキソプロピル)シクロドデカン−1−オンが消失していることを確認した後、反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(320ml)に投入した。これにトルエン(320ml)を加えて数分攪拌後、有機層を飽和食塩水(320ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムでトルエン層を乾燥、乾燥剤をロ別した後、そのまま次の反応に用いた。
【0035】
〔本発明化合物の合成例3〕
12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕の合成
[2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール〔式(14)〕から12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器付き水分分離器(ディーン・スターク)をセットした50mLの四頚フラスコに、上記粗2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール〔式(14)〕(1.68g、6mmol)をトルエン(25ml)に溶解し、これにパラトルエンスルホン酸(0.16)を加え、2時間半還流条件下に共沸脱水反応を行った。室温まで冷却した後、飽和食塩水(50ml)、飽和重曹水(50ml)さらに飽和食塩水(50ml)でそれぞれ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を除いた後、有機相を減圧下に濃縮して油状物を得た(収量;1.26g)。これをシリカゲルクロマト〔関東化学(株)製シリカゲル、充填剤;シリカゲル40g、展開液;ヘキサン/IPE混合溶媒液(容積比;97/3)〕により精製し、さらに減圧下に蒸留(190〜195℃/2mmHg)して透明油状物を得た(収量;0.63g)。GC測定では、幾何異性体の存在により二つのピークが見られた(第一ピーク;29.4分に42.4%、第二ピーク;29.8分に30.1%、2ピークの合計面積百分率;98.8%)。
【0036】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕であることを確認した。
IR:〔図3〕 2929、2860、1694、1470、1448、1366、1278、1276.
GC−MS(m/z):
第一ピーク:238(M+、37%)、223(100)、180(5)、135(5)、125(15)、111(97)、98(18)、81(9)、69(15)、55(20)、43(26).
第二ピーク:238(M+、35%)、223(38)、125(7)、111(100)、98(21)、81(8)、69(9)、55(14)、43(22).
【0037】
d) 12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕:
【化9】

【0038】
〔中間体合成例6〕
1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕の合成
[2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン〔式(12)〕から1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた100mLの四頚フラスコに、不活性ガス雰囲気下3.0Mol濃度のメチルマグネシウムクロライドのテトラハイドロフラン溶液(40g、0.08mol×1.2)を入れ、これに滴下ロートから2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン(17.8g、0.08mol)のテトラハイドロフラン(70ml)溶液を室温付近で滴下した。45℃付近まで温度が上昇したが、そのまま滴下後2時間攪拌を続け、ガスクロマトグラフィーで未反応の原料2−(2−プロペニル)シクロドデカン−1−オンが消失していることを確認した後、塩化アンモニウム水溶液中に反応液を投入した。これにトルエン(280ml)を加え数分攪拌後、有機層を飽和食塩水(280ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムでトルエン層を乾燥し、乾燥剤をロ別した後、そのまま次の反応に用いた。生成物の確認は、一部をシリカゲルクロマト(関東化学(株)製シリカゲル、充填剤;シリカゲル20g、展開液;ヘキサン/IPE混合溶媒液(容積比;5/1)により精製して得た透明油状物(収量;0.97g)を、ガスクロマトグラフィー(GC)で分離し、赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)を行った。GC測定では、幾何異性体の存在のために二本のピークが見られた(第一ピーク;41.0分に22.7%、第二ピーク;42.6分に74.4%、2ピークの合計面積百分率;97.1%)。
【0039】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕であることを確認した。
IR:3464、2936、2864、1474、1450、1376.
GC−MS(m/z):
第一ピーク:238(M、7%)、223(18)、180(9)、149(8)、135(12)、125(28)、111(74)、97(43)、81(40)、71(99)、55(58)、43(100).
第二ピーク:238(M、11%)、223(24)、183(13)、149(8)、135(12)、125(28)、111(100)、98(46)、81(32)、71(84)、55(47)、43(77).
【0040】
〔中間体合成例7〕
1−メチル−(2−オキソプロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(16)〕
[1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕から1−メチル−(2−オキソプロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(16)〕の合成]
攪拌機、温度計、ガス導入管、ガス放出管付き冷却器を備えた200mLの四頚フラスコに、ジメチルホルムアミド−水(80ml、容積比;70:10)塩化パラジウム(1.77g、0.1mol×1.1)、塩化第一銅(9.8g、0.1mol)を入れ、これに酸素ボンベから酸素を導入しつつ、攪拌下に2−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オン(27.5g、0.11mol)のジメチルホルムアミド(30ml)溶液を滴下した。滴下終了後攪拌しながら、さらに室温で酸素の導入を28時間継続した。この反応混合物を充分冷却した3N塩酸(330ml)に注ぎ、トルエン(160mlで2回)で抽出し、トルエン層を合わせ、飽和食塩水(200ml)、飽和重曹水(200ml)、飽和食塩水(200ml)で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後乾燥剤を除き、有機相を減圧下に濃縮して油状物(収量;2.38g)を得た。
【0041】
〔中間体合成例8〕
1−メチル−(2−ヒドロキシプロピル)シクロドデカ−1−オール〔式(17)〕の合成
[1−メチル−(2−オキソプロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(16)〕から1−メチル−(2−ヒドロキシプロピル)シクロドデカ−1−オール〔式(17)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた30mLの四頚フラスコに、1−メチル−(2−オキソプロペニル)シクロドデカ−1−オール(2.38g、9mmol)、1,4−ジオキサン−水の混合溶液(16ml、容積比;1:1)を入れ、室温で攪拌しながら粉末状の水素化ホウ素ナトリウム(0.35g、9mmol)を少量ずつ加えた。反応液が黒く変化したが、50℃で11時間攪拌を続け、ガスクロマトグラフィーで原料が消失していることを確認した後、反応液を5%希塩酸中に少量ずつ投入した。これにトルエン(80ml)を加え数分攪拌後、トルエン層を分け、水槽を再度トルエン(80ml)で抽出し、トルエン層を合わせて飽和食塩水(100ml)で洗浄し、その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、乾燥剤をロ別した。これを、そのまま次の反応に用いた。
尚、生成物の確認のため、上で得られたトルエン溶液の一部を濃縮し、冷蔵庫中に放置して得た結晶をロ別し、メタノールで洗浄した後乾燥して、ガスクロマトグラフィー(GC)で精製した(GC保持時間;68.5分にブロードな単一ピーク、GC純度;95.3%、融点;117〜118℃)。
【0042】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、1−メチル−(2−ヒドロキシプロピル)シクロドデカ−1−オール〔式(17)〕であることを確認した。
IR:3300、2936、1478、1374、1142、1074.
GC−MS(m/z):256(M、1%)、238(14)、223(20)、194(13)、180(7)、149(5)、138(8)、125(25)、112(100)、96(28)、81(26)、71(55)、55(39)、43(77).
【0043】
〔本発明化合物の合成例4〕
12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕の合成
[2−(2−ヒドロキシプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール〔式(17)〕から12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた水分分離器(ディーン・スターク)をセットした50mLの四頚フラスコに、粗2−(2−ヒドロキシプロピル)−1−メチルシクロドデカン−1−オール(1.62g、6mmol)をトルエン(25ml)に溶解し、これにパラトルエンスルホン酸(0.16g)を加え、還流条件下に攪拌しつつ共沸脱水反応を行った。2時間半でまったく水の発生を見なくなったので、室温まで冷却した後、飽和食塩水(50ml)、飽和重曹水(50ml)さらに飽和食塩水(50ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を除いた後、有機相を減圧下(200〜210℃/2mmHg)に濃縮して油状物(収量;1.3g)を得た。これをシリカゲルクロマト(関東化学(株)製シリカゲル、充填剤;シリカゲル30g、展開液;ヘキサン/IPE混合溶媒液(容積比;97/3)により精製し、さらに減圧下に蒸留(200〜210℃/2mmHg)して透明油状物(収量;0.97g)を得た。GC測定では、幾何異性体の存在のため四つのピークが見られた(第一ピーク;29.4分に42.4%、第二ピーク;29.8分に30.1%、第三ピーク;31.2分に10.9%、第四ピーク;32.2分に15.4%、4つのピークの合計面積百分率;98.8%)。
【0044】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕であることを確認した。
IR:[図4] 2936、2864、1472、1448、1378、1086.
GC−MS(m/z):
第一ピーク:238(M+、37%)、223(100)、180(5)、135(5)、125(15)、111(97)、98(18)、81(9)、69(15)、55(20)、43(26).
第二ピーク:238(M+、35%)、223(38)、125(7)、111(100)、98(21)、81(8)、69(9)、55(14)、43(22).
第三ピーク:238(M+、24%)、223(52)、125(7)、111(100)、98(15)、81(8)、69(9)、55(13)、43(19).
第四ピーク:238(M+、24%)、223(74)、125(7)、111(100)、98(19)、81(8)、69(10)、55(14)、43(19).
【0045】
e) 12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕
【化10】

【0046】
〔中間体合成例9〕
1−メチル−(2−オキソエテニル)シクロドデカ−1−オール〔式(18)〕の合成
[1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール〔式(15)〕から1−メチル−(2−オキソエテニル)シクロドデカ−1−オール〔式(18)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた1Lの四頚フラスコに、過ヨウ素酸ナトリウム(42.8g、0.05mol×4)、四塩化炭素(90ml)、アセトニトリル(90ml)、水(130ml)を加えて室温で攪拌し、これに1−メチル−(2−プロペニル)シクロドデカ−1−オール(11.9g、0.05mol)を加え、さらに塩化ルテニウム(0.3g 0.05mol×0.03)を加え攪拌した。徐々に発熱しおよそ40℃まで温度が上昇した。同温度で5時間攪拌し原料が消費されていることをGCで確認した後、水(300ml)を加え有機相を分離し、水相については塩化メチレン(60ml×2)で抽出し、有機相を合わせ、これを飽和食塩水(100ml×2)で洗浄、有機相を減圧下に濃縮した。残った油状物に固形物が含まれていたので、ジエチルエ−テル(100ml)で抽出し、セライトろ過し、エーテル層を濃縮して油状物(収量;11.8g)を得た。これを直ちに次の反応に用いた。
【0047】
〔中間体合成例10〕
1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オール〔式(19)〕の合成
[1−メチル−(2−オキソエテニル)シクロドデカ−1−オール〔式(18)〕から1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オール〔式(19)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた500mLの四頚フラスコに粗1−メチル−(2−オキソエテニル)シクロドデカ−1−オール(11.8g、0.049mol)と1,4−ジオキサン−水(混合溶液110ml、容積比;1:1)を加え、室温で攪拌した。これに水素化ホウ素ナトリウム(2.7g、0.049mol×1.5)を少しずつ加え、40〜50℃で4時間反応させた。反応液に水200mlを注ぎ、イソプロピルエーテル(100ml×2)で抽出して、その有機層を飽和食塩水(100ml)で洗浄し、減圧下に濃縮して油状物を得た(収量;8.65g)。これをシリカゲルクロマト(関東化学(株)製シリカゲル;345g、展開液;ヘキサン/IPE混合溶媒液(容積比;5/1)により精製し、透明油状物(収量;7.3g)を得た。GC測定で幾何異性体のため2ピークが見られた(第一ピーク;37.8分に6.3%、第二ピーク;44.3分に90.4%、2ピークの合計面積百分率;96.7%)。
【0048】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オール〔式(19)〕であることを確認した。
IR:3508、3012、1368、1224.
GC−MS(m/z):
第一ピーク:242(M、2%)、227(5)、209(26)、180(5)、166(8)、149(5)、135(8)、125(21)、115(37)、97(100)、82(31)、71(76)、55(54)、43(93).
第二ピーク:242(M、2%)、227(5)、209(23)、166(7)、149(5)、135(8)、125(19)、115(38)、97(100)、81(26)、71(74)、58(50)、43(98).
【0049】
〔本発明化合物の合成例5〕
12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕の合成
[1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オール〔式(19)〕から12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕の合成]
攪拌機、滴下ロート、温度計、還流冷却器を付けた水分分離器(ディーン・スターク)をセットした200mLの四頚フラスコに、上記の粗1−メチル−2−(2−ハイドロキシエチル)シクロドデカ−1−オールをトルエン(125ml)に溶解し、これにパラトルエンスルホン酸(0.8g)を加え、還流条件下に攪拌しつつ共沸脱水反応を行った。3時間で水の発生を見なくなったので、室温まで冷却した後、飽和食塩水(250ml)、飽和重曹水(100ml)さらに飽和食塩水(250ml)で順次洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤を除いた後、有機相を減圧下(100〜120℃/2mmHg)に濃縮して油状物(収量;8.16g)を得た。これをシリカゲルクロマト(関東化学(株)製シリカゲル;145g、展開液;ヘキサン/IPE混合溶媒液(容積比;5/1)により精製し、さらに減圧下に蒸留(200℃/3mmHg)して透明油状物(収量;3.3g)のを得た。GC測定で幾何異性体のため2ピークが見られた(第一ピーク;31.8分に62.0%、第二ピーク;33.7分に37.7%、2ピークの合計面積百分率;99.7%)。
【0050】
赤外吸収スペクトル(IR)およびガスクロマトグラフィー/質量分析(GC−MS)から、この生成物が、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕であることを確認した。
IR:〔図5〕 2936、2868、1472、1450、1374、1046、1032.
GC−MS(m/z):
第一ピーク:224(M+、16%)、209(31)、97(100)、84(19)、71(8)、55(15)、41(20).
第二ピーク:224(M+、8%)、209(59)、97(100)、84(19)、71(11)、55(19)、41(24).
【実施例2】
【0051】
以上のようにして得られた、14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕、14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕、12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕、12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕についてそれぞれ香気評価を行った。14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕は、単体で天然サンダル様の広がりと力強さを持った香気であり、14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕も同様、甘さを伴った天然サンダルを想起させる香りであった。また、12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕は、サンタロール様高級感のある香りを持ち、12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕も12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕とよく似た香りで、サンタロール様の高級な甘さを持っていた。さらに、12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕は、天然サンダルを思わせる力強い香気を持っていた。
【0052】
また、これらの化合物を含んだ香料組成物を調製し、調合香料への使用可能性を評価した。評価は、5タイプの香料組成物について、実施例として上記5種の化合物のいずれかを配合した組成物([A−1]〜[A−5])、および比較例として上記本発明の化合物を含まず、公知の類似化合物である14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(22)〕を配合した組成物([B−2]、[B−5]、[B−8]、[B−11])、公知の類似化合物である14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(24)〕を配合した組成物([B−3]、[B−6]、[B−9]、[B−112])、溶剤のジプロピレングリコールを配合した組成物([B−1]、[B−4]、[B−7]、[B−10])をそれぞれ用い、調香の専門家3名による判定で行った。
【0053】
【化11】

【0054】
a)ローズタイプ香料組成物
ローズタイプ香料組成物の配合組成を表1に、評価結果を表2に示す。
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
b)ムゲットタイプ香料組成物
ムゲットタイプ香料組成物の配合組成を表3に、評価結果を表4に示す。
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
c)ムスクタイプ香料組成物
ムスクタイプ香料組成物の配合組成を表5に、評価結果を表6に示す。
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
d)ヘリオトロープタイプ香料組成物
ヘリオトロープタイプ香料組成物の配合組成を表7に、評価結果を表8に示す。
【表7】

【0061】
【表8】

【0062】
e)ジャスミンタイプ香料組成物
ジャスミンタイプ香料組成物の配合組成を表9に、評価結果を表10に示す。
【表9】

【0063】
【表10】

【0064】
以上の評価結果から、本発明の化合物は、高級感を伴う快適な白檀様香気を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の新規化合物は、汎用化学化合物から容易に合成でき、しかも高級感を伴う快適な木様の香気を有しており、新しい香料組成物として有用であり、化粧品、芳香剤などの広い分野に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】14、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(3)〕の赤外吸収スペクトル(IR)である。
【図2】14−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン〔式(4)〕の赤外吸収スペクトル(IR)である。
【図3】12、14、14−トリメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(5)〕の赤外吸収スペクトル(IR)である。
【図4】12、14−ジメチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(6)〕の赤外吸収スペクトル(IR)である。
【図5】12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン〔式(7)〕の赤外吸収スペクトル(IR)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)(式中、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされることを特徴とする13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカ−1(12)−エン類。
【化1】

【請求項2】
式(2)(式中、R、Rは、メチル基または水素を示す)で表わされることを特徴とする12−メチル−13−オキサビシクロ[10.3.0]ペンタデカン類。
【化2】

【請求項3】
請求項1記載の式(1)の化合物および請求項2記載の式(2)の化合物からの1種以上を含有することを特徴とする香料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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