説明

14−3−3η抗体、並びに関節炎の診断及び治療のためのその使用

本発明は、天然の立体配置にあるヒト14-3-3ηタンパク質アイソフォームに特異的に結合し、ヒト14-3-3α、β、δ、ε、γ、τ及びζタンパク質アイソフォームと比較して選択性を示す、抗14-3-3η抗体を提供する。さらに、関節炎の診断及び治療のための、かかる特異的な抗14-3-3η抗体を含む方法、キット及び医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年11月27日に出願された米国特許仮出願第60/990,520号、及び2008年6月30日に出願された米国特許仮出願第61/077,123号の利益を主張する。尚、上記文献は、その全文を参照として本明細書に明示的に組み込むものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、14-3-3タンパク質のηアイソフォームに特異的に結合し、該ηアイソフォームと14-3-3タンパク質の他のアイソフォームとを識別することができる抗体に関する。
【背景技術】
【0003】
14-3-3タンパク質は、真核生物において偏在的に発現される保存的細胞内調節分子のファミリーである。14-3-3タンパク質は、多種の機能的に多様なシグナル伝達タンパク質、例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、及び膜貫通受容体に結合する能力を有する。実際に、100種以上のシグナル伝達タンパク質が14-3-3リガンドとして報告されている。14-3-3タンパク質は、テトラトリコペプチド反復配列スーパーファミリーの進化したメンバーと考えることができる。これらは、一般に、9又は10のαヘリックスを有し、通常、そのアミノ末端ヘリックスに沿ってホモ及び/又はヘテロ二量体相互作用を形成する。これらのタンパク質は、いくつかの既知ドメイン、中でも、例えば二価カチオン相互作用、リン酸化及びアセチル化、並びにタンパク質分解切断のための領域を含む。14-3-3タンパク質には、哺乳動物において発現することが知られている、7種の異なる遺伝的にコードされたアイソフォームがあり、各アイソフォームは、242〜255個のアミノ酸を含んでいる。これら7つの14-3-3タンパク質アイソフォームは、14-3-3α/β(アルファ/ベータ)、14-3-3δ/ζ(デルタ/ゼータ)、14-3-3ε(イプシロン)、14-3-3γ(ガンマ)、14-3-3η(イータ)、14-3-3τ/θ(タウ/シータ)、及び14-3-3σ(シグマ、ストラチフィン)と呼ばれる。
【0004】
これらの14-3-3タンパク質は高い配列類似性を有する。結果として、抗14-3-3抗体は典型的に2種以上の14-3-3タンパク質アイソフォームを認識する。特性決定されているいくつかの抗14-3-3抗体調製物が市販されている。例えば、14-3-3タンパク質を認識するウサギポリクローナル抗体がBiomol, Santa Cruz Biotechnology, Upstate Biotechnology, and Assay Designsから入手可能である。これらのポリクローナル抗体調製物は、14-3-3ηのいくつかの形態を認識するが、他の14-3-3タンパク質アイソフォームと比較してηアイソフォームに対する選択性のあるものはない。Martin, H.ら, (1993) Antibodies against the major brain isoform of 14-3-3 protein. FEBS 331:296-303を参照されたい。また、2007年5月9日出願のWO 2007/128132号も参照されたい。アイソフォームの選択性がないことに加えて、天然の立体配置の14-3-3タンパク質を認識する14-3-3抗体はほとんどないことが示されている。
【0005】
14-3-3タンパク質は種々の状態に関与している。しかしながら、14-3-3タンパク質の偏在性及び機能的多様性のため、複数の14-3-3タンパク質アイソフォームに結合する抗体(「汎14-3-3抗体」)及び/又は天然の立体配置の14-3-3タンパク質を認識することができない抗体の治療用途は大幅に除外される。さらに、特定の14-3-3アイソフォームは特定の状態に関与しているが、この場合、汎14-3-3抗体は診断アッセイにおいて信頼性をもって検出することができず、そのような汎14-3-3抗体では標的化して治療に用いることができない。例えば、14-3-3η及び14-3-3γは関節炎に関与している。2007年5月9日出願のWO2007/128132号を参照のこと。Kilaniら(2007, J. Rheum. 34: 1650-1657; WO2007/128132号)は、14-3-3タンパク質ファミリーの2つのメンバー、具体的には14-3-3η及び14-3-3γが、関節炎患者の滑液及び血清中に存在し、両アイソフォームが滑液及び血清中のMMP-1及びMMP-3のレベルと直接相関することを報告している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、その一部が、14-3-3アイソフォームの間の高い配列同一性にも関わらず、選択した14-3-3ηのエピトープを用いて、天然の立体配置にある14-3-3タンパク質のηアイソフォームに対して選択的な抗体を作製することができるという驚くべき知見に基づいている。特に本発明は、(i)天然の立体配置にある14-3-3ηタンパク質に特異的に結合し(例えば免疫沈降により証明される)、(ii)他の14-3-3タンパク質アイソフォームと比較して14-3-3ηタンパク質に選択的に結合する、抗14-3-3タンパク質抗体を提供する。この性質の組み合わせにより、本発明の抗体は従来技術とは区別され、14-3-3ηが関与する症状に関する診断及び治療方法における選択的抗14-3-3η抗体の使用が提供される。
【0007】
従って、一態様において、本発明は抗14-3-3η抗体を提供する。本発明の抗14-3-3抗体は、(i)天然の立体配置にあるヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合し(例えば天然14-3-3ηの免疫沈降により証明される)、(ii)他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較してヒト14-3-3ηタンパク質に選択的に結合することができる。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、関節炎における細胞外滑膜腔に異常に局在化する14-3-3ηタンパク質に結合することができる。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、ヒト14-3-3ηタンパク質のN末端に位置するエピトープに結合するものではない。
【0010】
好ましい実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηループペプチド、14-3-3ηヘリックスペプチド、及び14-3-3η非ヘリックスペプチドからなる群より選択されるペプチド、特に好ましくはηループペプチドを含むエピトープに結合することができる。
【0011】
好ましい実施形態では、14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0012】
好ましい実施形態では、14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号1〜10からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0013】
好ましい実施形態では、14-3-3η非ヘリックスペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号17〜32からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0014】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)、及びKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合する。
【0015】
14-3-3ηループ、ヘリックス、及び非ヘリックスペプチドの例を本明細書の表1に開示する。特に、配列番号30は、ジスルフィド結合の形成を回避するために14-3-3η配列に存在するシステインがセリンに置換されている点で、対応する14-3-3η配列とは異なっている。一実施形態では、本発明は、システインを含む配列番号30の天然の14-3-3配列対応物にも結合する抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、システインのセリンへの置換により表1に記載したペプチド配列とは異なるペプチド配列に結合することができる抗体を提供する。
【0016】
14-3-3ηループ、ヘリックス、及び非ヘリックスペプチドの例を本明細書の表1に開示する。特に、配列番号30は、ジスルフィド結合の形成を回避するために14-3-3η配列に存在するシステインがセリンに置換されている点で、対応する14-3-3η配列とは異なっている。一実施形態では、本発明は、システインを含む配列番号30の天然の14-3-3配列対応物にも結合する抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、システインのセリンへの置換により表1に記載したペプチド配列とは異なるペプチド配列に結合することができる抗体を提供する。
【0017】
一実施形態において、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηによるMMPの誘導を阻害することができる。好ましくは、MMPは、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択され、特にMMP-1及びMMP-3が好ましい。
【0018】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患及び症状を診断する方法を提供する。かかる方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて、14-3-3ηタンパク質における変化、例えば発現、局在化、機能などの変化を検出することを含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いる免疫沈降を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いるELISAの使用を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いるウエスタンブロッティングを含む。一実施形態において、検出は、免疫組織化学における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、免疫蛍光における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、FACS分析における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ラジオイムノアッセイにおける本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ストリップテストにおける本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ポイントオブケア検査における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、14-3-3ηの検出は、上記症状の別のマーカー(例えば関節炎についてはMMP)の検出と組み合わせる。
【0019】
一実施形態では、本発明は、炎症状態の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎の診断方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患を診断する方法を包含する。
【0020】
一実施形態において、本方法は、患者の滑液、血漿又は血清における14-3-3ηタンパク質を検出するステップを含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いた、滑液、血漿又は血清からの14-3-3ηタンパク質の免疫沈降により実施する。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いたELISAの使用を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いた、患者由来の滑液、血漿又は血清を含むサンプルのウエスタンブロッティングを含む。一実施形態において、検出は、ラジオイムノアッセイの使用を含む。一実施形態において、検出はストリップテストの使用を含む。一実施形態において、検出はポイントオブケア検査の使用を含む。一実施形態において、14-3-3ηの検出は、関節炎の別のマーカー(例えば、MMP、抗CCP、抗RF及び/又はCRP)の検出と組み合わせる。
【0021】
一実施形態において、本発明は、神経学的状態の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、細菌性髄膜炎及びクロイツフェルト・ヤコブ病からなる群より選択される疾患の診断方法を提供する。
【0022】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患の治療方法を提供する。本方法は、治療有効量の本発明の抗14-3-3η抗体を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、併用療法を含む。
【0023】
一実施形態において、本発明は、炎症状態の治療方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎の治療方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患の治療方法を包含する。
【0024】
一実施形態では、本方法は、本発明の1種以上の抗14-3-3η抗体に加えて、少なくとも1種の別の治療薬を投与する併用療法を含む。好ましい実施形態において、治療薬は、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、疾患修飾変形性関節症薬(DMOAD;例えば、Loeser, Reumatologia, 21:104-106, 2005を参照)、抗TNFα抗体、抗IL-1抗体、抗CD4抗体、抗CTLA4抗体、抗CD20抗体、抗IL-6抗体、レフルノミド、スルファサラジン、及びメトトレキセートからなる群より選択される。
【0025】
一態様では、本発明は、14-3-3ηが関与する症状の発症を予防するための予防方法を提供する。
【0026】
一実施形態において、本発明は、炎症状態を発症するリスクのある被験体における炎症状態の発症を予防する予防方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎を発症するリスクのある被験体において関節炎を予防するための予防方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患を予防するための予防方法を包含する。本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を被験体に投与することを含む。一実施形態では、抗14-3-3η抗体は、本明細書に記載する併用療法の一成分として投与される。
【0027】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患の治療をモニターする方法を提供する。本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定するステップ、及び治療を受けている患者における14-3-3ηレベルをモニターするステップを含む。
【0028】
一実施形態において、本発明は、炎症状態の治療をモニターする方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎の治療をモニターする方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患の治療をモニターする方法を包含する。
【0029】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患に対する治療への患者の応答可能性を判定する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定することを含む。好ましい実施形態において、患者サンプル中の14-3-3ηレベルを、治療に対する応答能が既知である被験体のサンプル中のレベルと比較する。
【0030】
一実施形態において、本発明は、炎症状態に対する治療への患者の応答可能性を判定する方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎に対する治療への患者の応答可能性を判定する方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患の治療への応答可能性を判定する方法を包含する。
【0031】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患のサブタイプ同士を識別する方法を提供する。
【0032】
一実施形態において、炎症性疾患のサブタイプ同士を識別する方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎のサブタイプ同士を識別する方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群同士を識別する方法を包含する。一実施形態において、本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定するステップを含む。好ましい実施形態において、患者における14-3-3ηレベルを、既知のサブタイプの炎症性疾患又は予後を有する被験体由来のサンプルのレベルと比較する。
【0033】
一態様では、本発明は、外傷により負傷した関節に対する損傷を軽減する方法を提供する。本方法は、外傷により負傷した関節を有する被験体に本発明の抗14-3-3η抗体を投与することを含む。一実施形態では、抗14-3-3η抗体は、本明細書に記載する併用療法の一成分として投与する。
【0034】
一態様では、本発明は、MMP発現を低減する方法を提供する。一実施形態では、低減しようとするMMP発現は、滑膜におけるものである。本方法は、MMP産生細胞が存在する組織又はコンパートメントに本発明の抗14-3-3η抗体を送達することを含み、MMP産生細胞は、14-3-3ηタンパク質に対して応答性である。送達は、罹患した組織若しくはコンパートメントに対して直接的であってもよいし、又は間接的であってもよい。好ましい実施形態において、上記応答性細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。
【0035】
好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、関節炎に関連するMMP発現である。
【0036】
好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及び MMP-13からなる群より選択されるMMPの発現である。特に好ましい実施形態では、低減しようとするMMP発現は、MMP-1又はMMP-3の発現である。
【0037】
一態様では、本発明は、14-3-3ηタンパク質によるMMP誘導を阻害する方法を提供する。阻害は、部分的又は完全のいずれも可能である。本方法は、MMP産生細胞が存在する組織又はコンパートメントに本発明の抗14-3-3η抗体を送達することを含み、MMP産生細胞は、14-3-3ηタンパク質に対して応答性である。送達は、罹患した組織若しくはコンパートメントに対し直接的であってもよいし、又は間接的のいずれであってもよい。好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体を滑膜に投与する。好ましい実施形態では、上記応答性細胞は、線維芽細胞又はFLS細胞である。
【0038】
好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、関節炎においてアップレギュレートされるMMPの誘導である。
【0039】
好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択されるMMPの誘導である。特に好ましい実施形態では、阻害しようとするMMP誘導は、MMP-1又はMMP-3の誘導である。
【0040】
一態様では、本発明は、被験体において関節腫脹を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験体に本発明の抗14-3-3η抗体を投与することを含む。
【0041】
一態様では、本発明は、被験体において軟骨変性を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験体に本発明の抗14-3-3η抗体を投与することを含む。
【0042】
一態様では、本発明は、被験体において骨変性を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験体に本発明の抗14-3-3η抗体を投与することを含む。
【0043】
一態様では、本発明は、滑液中の前炎症性サイトカイン蓄積を低減する方法を提供する。本方法は、罹患した被験体に本発明の抗14-3-3η抗体を投与することを含む。
【0044】
罹患した被験体に抗14-3-3η抗体を投与することを含む方法のために、好ましい実施形態では、カプセル内送達を用いる。別の実施形態では、全身送達を用いる。治療用組成物の製剤化及び投与は、こうして送達される抗14-3-3η抗体が、細胞外に局在化した14-3-3ηタンパク質との結合(engage)に利用できるように行う。
【0045】
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する症状の診断、又は14-3-3ηが関与する症状に罹患した患者の予後判定に有用なキットを提供する。
【0046】
一態様では、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患の治療に有用な医薬組成物を提供する。医薬組成物は、本発明の抗14-3-3η抗体を含む。好ましい実施形態において、関節炎の治療に有用な医薬組成物を提供する。
【0047】
一態様では、本発明は、14-3-3ηが関与する症状の治療に有用な医薬の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ELISA:AUG1-CLDK-BSA抗原に対するマウス抗AUG1-CLDK免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図2】ELISA:AUG2-KKLE-BSA抗原に対するマウス抗AUG2-KKLE免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図3】ELISA:AUG3-CKNS-BSA抗原に対するマウス抗AUG3-CKNS免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【図4】各14-3-3タンパク質アイソフォームの配列アラインメントを示す図である。
【図5】14-3-3タンパク質の7種のアイソフォームに対する市販の14-3-3ηポリクローナル抗体の交差反応性を示すウエスタンブロットである。
【図6】全長ヒト組換え14-3-3ηに対して産生されたモノクローナル抗体により免疫沈降した、細胞溶解物由来の14-3-3ηタンパク質及びヒト組換え14-3-3ηを示すウエスタンブロットである。
【図7】ヒト14-3-3ηタンパク質の非ヘリックス領域からのヒト14-3-3ηペプチド断片(配列番号24の142〜158)に対して産生されたモノクローナル抗体により免疫沈降した、細胞溶解物由来の14-3-3ηタンパク質及びヒト組換え14-3-3ηを示すウエスタンブロットである。
【図8】ELISA:14-3-3η抗原に対するマウス抗14-3-3η免疫血清(2回目の追加免疫後)の試験採血滴定を示す(IgG応答のみ)図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
抗体又はその抗原結合性フラグメントは、それがリガンドと検出可能なレベルで反応(例えばELISAアッセイにおいて)し、同様の条件下で無関係のリガンドに検出可能には反応しない場合に、それが「特異的に結合する」、「免疫学的に結合する」及び/又は「免疫学的に反応性である」という。
【0050】
本明細書で使用する「免疫学的結合」とは、一般的に、免疫グロブリン分子と、該免疫グロブリンが特異的な抗原との間で生じるタイプの非共有結合性相互作用を指す。免疫学的結合の相互作用の強度、すなわちアフィニティは、相互作用の解離定数(Kd)で表すことができ、低いKdは強いアフィニティを示す。免疫学的結合特性は、当技術分野で周知の方法を用いて定量化することができる。例えば、Daviesら (1990) Annual Rev. Biochem. 59:439-473参照。
【0051】
「抗体」とは、対応する抗原に特異的に結合し、かつ、免疫グロブリンに共通の一般的構造を有するタンパク質を含む組成物を指す。抗体という用語には、所望の生物活性を呈示するものであれば、具体的には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントが含まれる。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ又はその他の種由来のいずれでもよい。典型的に、抗体は、ジスルフィド結合により互いに連結される少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、これらが組み合わされて、抗原と相互作用する結合ドメインを形成する。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3からなり、μ、δ、γ、α又はεアイソタイプのいずれであってもよい。同様に、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわちCLからなり、κ又はλアイソタイプのいずれでもよい。VH及びVL領域はさらに、超可変性領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に細分することができ、これら領域の間に、より保存的な領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在している。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、宿主組織又は因子(例えば、免疫系の細胞(例:エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq))との結合、を媒介することができる。重鎖定常領域は、特に、細胞受容体、例えば、Fc受容体(例:FcγRI、FcγRII、FcγRIIIなど)を介して、免疫グロブリンと宿主組織又は宿主因子との結合を媒介する。本明細書で用いる抗体はまた、抗原に結合する能力を保持する免疫グロブリンの抗原結合性部分も含む。これらの例として、VL CL及びVH CH抗体ドメインの1価フラグメントであるF(ab);及びヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFabフラグメントを含む2価フラグメントであるF(ab')2フラグメントがある。用語「抗体」はまた、組換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)及び二重特異性分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディも指す(例えば、米国特許第5,844,094号を参照)。
【0052】
抗体は、様々な形態、例えば、抗体複合体として作製し、使用することができる。本明細書で用いる用語「抗体複合体」とは、1以上の抗体と、別の抗体、又は1若しくは複数の抗体フラグメント又は2以上の抗体フラグメントとの複合体を指す。抗体複合体には、抗14-3-3抗体の多量体形態、例えば、ホモコンジュゲート及びヘテロコンジュゲート、並びに本明細書に開示する他の架橋抗体が含まれる。
【0053】
「抗原」は広義に解釈すべきであり、抗体に特異的に結合することができるあらゆる分子、組成物又は粒子を指す。抗原は、抗体と相互作用する1以上のエピトープを有するが、必ずしも該抗体の産生を誘導するとは限らない。
【0054】
用語「架橋した」、「架橋」及びその文法上の同等物は、抗体複合体を形成するための2以上の抗体の結合を指し、多量体形成と呼ぶこともある。架橋又は多量体形成は、2以上の同じ抗体の結合(例:ホモ二量体形成)、及び2以上の異なる抗体の結合(例:ヘテロ二量体形成)を含む。当業者であれば、架橋又は多量体形成が、抗体ホモコンジュゲート及び抗体ヘテロコンジュゲート形成とも呼ばれることは認識されよう。上記コンジュゲートは、同じクローン起原の2以上のモノクローナル抗体の結合(ホモコンジュゲート)又は異なるクローン起原の2以上の抗体の結合(ヘテロコンジュゲート又は二重特異性とも呼ばれる)を含むこともある。抗体は、非共有又は共有結合のいずれによって架橋してもよい。架橋に好適な多数の技術が当業者には認識されよう。非共有結合は、一次抗体種に特異的な二次抗体の使用により達成することができる。例えば、ヤギ抗マウス(GAM)二次抗体を用いて、マウスモノクローナル抗体を架橋することができる。共有結合は、化学的架橋剤の使用により達成することができる。
【0055】
「エピトープ」は、抗体への特異的結合が可能な決定基を意味する。エピトープは、分子の表面に一般に存在する化学的特徴であり、抗体と接触して相互作用が可能である。典型的な化学的特徴はアミノ酸及び糖部分であり、3次元構造の特徴と、電荷、親水性及び親油性などの化学的特性とを有する。3次元エピトープは、基本的化学構造には一切の変化を伴わなわずに、分子の空間要素が変化した後、抗体との反応性を喪失している点で、非3次元エピトープとは区別される。
【0056】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む免疫グロブリン分子を意味する。ヒト化抗体としては、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、該レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する、非ヒト種、例えば、マウス、ラット又はウサギのCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されている免疫グロブリンがある。いくつかのケースでは、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基で置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入したCDR又はフレームワーク配列にも存在しない残基を含むこともある。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、ここで、CDR領域の全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、フレームワーク(FR)領域の全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン共通配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものを含む免疫グロブリンも包含する(Jonesら、Nature 321:522-525 (1986);Reichmannら、Nature 332:323-329 (1988))。
【0057】
「免疫原」とは、免疫応答の産生を刺激する物質、化合物又は組成物を指す。
【0058】
用語「免疫グロブリン遺伝子座」は、免疫グロブリンポリペプチドを発現するためにB細胞又はB細胞前駆体が用いることができる情報を含む遺伝要素、又は連鎖した遺伝要素のセットを意味する。このポリペプチドは、重鎖ポリペプチド、軽鎖ポリペプチド、又は重鎖及び軽鎖ポリペプチドの融合物のいずれであってもよい。再構成されていない遺伝子座の場合には、遺伝要素は、B細胞前駆体により、免疫グロブリンポリペプチドをコードする遺伝子を形成するように組み立てられる。再構成遺伝子座の場合には、免疫グロブリンポリペプチドをコードする遺伝子が遺伝子座内に含まれている。
【0059】
「アイソタイプ」とは、その重鎖定常領域により決定される抗体クラスを意味する。重鎖は一般に、γ、μ、α、δ、εとして分類され、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEと称される。各アイソタイプ内の違いによって、サブタイプに細分される。例えば、IgGはサブタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に区分され、またIgAは、IgA1及びIgA2に区分される。IgYアイソタイプは、鳥類に特異的である。
【0060】
「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成物からなる抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す。
【0061】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変及び/又は定常領域(もし存在すれば)を有する単一結合特異性を示す抗体を意味する。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖トランスジーンと軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物(例:トランスジェニックマウス)から取得したB細胞を不死化細胞に融合させたものを含む、ハイブリドーマにより産生される。
【0062】
「一本鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVL領域を含む抗体を意味し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、このリンカーによって、scFvは、抗原結合のための所望の構造を形成することが可能になる。
【0063】
「被験体(被験者)」及び「患者」は、置き換え可能に用いられ、明示された場合を除いて、哺乳動物、例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、並びにウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタ、及びその他の哺乳動物種を指す。
【0064】
「組換え抗体」とは、組換え技術により作出されたすべての抗体を指す。例えば、免疫グロブリン遺伝子座について形質転換した動物から取得した抗体、組換え発現ベクターから発現させた抗体、及び任意の免疫グロブリン遺伝子配列をいずれか他の核酸配列にスプライシングすることにより、創出、作製及び発現させた抗体がある。
【0065】
抗14-3-3抗体
一態様では、本発明は、抗14-3-3η抗体を提供する。本発明の抗14-3-3η抗体は、(i)例えば免疫沈降により証明されるように、その天然の立体配置のヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合することができ、(ii)他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較してヒト14-3-3ηタンパク質に選択的に結合することができる。
【0066】
その「天然の立体配置」のヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合するとは、in vivoで接触する14-3-3タンパク質に結合する能力を意味する。これは、例えば、抗体が、生体サンプル由来の14-3-3ηタンパク質を免疫沈降させる能力により証明することができる。
【0067】
「他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較したヒト14-3-3ηタンパク質に対する選択性」とは、ヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合し、他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較して、同じ条件下で14-3-3ηに選択的に結合する能力を有する。選択性は、例えば、ELISAアッセイを用いて証明することができるが、このアッセイは、例えば、ハイブリドーマクローンからの上清を用いて実施することができる。対照(例:免疫前の血清)を用いるのが好ましい。「選択的」抗体は、14-3-3ηを認識して、他の14-3-3アイソフォームと比較して、14-3-3ηに対する高いシグナルを発生することができ、他の14-3-3アイソフォームと比較して、好ましくは少なくとも1.5倍、さらに好ましくは少なくとも2倍高いシグナルを発生することができる。好ましい実施形態では、選択的抗体は、他の14-3-3アイソフォームと比較して、14-3-3ηを選択的に免疫沈降させる能力を有する。
【0068】
好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、ヒト14-3-3α、β、δ、ε、γ、τ、及びζタンパク質と比較して、ヒト14-3-3ηタンパク質に対する選択性を呈示する。これは、例えば、ELISAにより証明することができる。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、関節炎における細胞外滑膜腔に異常に局在化する14-3-3ηタンパク質に結合することができる。これは、例えば、関節炎患者に由来する滑液サンプル中に存在する14-3-3ηタンパク質の免疫沈降により証明することができる。
【0070】
好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηによるMMPの誘導を阻害することができる。好ましくは、MMPは、MMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択され、特にMMP-1及びMMP-3が好ましい。上記能力は、in vitroアッセイ又はin vivoアッセイにより決定することができる。当業者には理解されるように、上記アッセイは、抗14-3-3η抗体の非存在下で、14-3-3ηが存在すると、MMPの誘導が起こるように設計する。14-3-3ηによるMMPの誘導を低減する能力によって、抗14-3-3抗体のこうした機能阻害能力を証明することができる。
【0071】
14-3-3ηエピトープ
好ましい実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηのN末端におけるエピトープに結合しない。14-3-3ηについて、「N末端」とはアミノ酸1-12、すなわちDREQLLQRARLA(配列番号33)を意味する。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明の抗14-3-3η抗体は、14-3-3ηループペプチド、14-3-3ηヘリックスペプチド、及び14-3-3η非ヘリックスペプチドからなる群より選択されるペプチド、特に好ましくはηループペプチドを含むエピトープに結合することができる。本明細書中の表1参照。14-3-3ηループ、ヘリックス及び非ヘリックスペプチドの例を、本明細書中の表1に開示する。特に、配列番号30は、ジスルフィド結合の形成を回避するために14-3-3η配列に存在するシステインがセリンで置換されている点で対応する14-3-3η配列とは異なっている。一実施形態において、本発明は、システインを含む配列番号30の天然の14-3-3配列対応物にも結合する抗体を提供する。一実施形態において、本発明は、システインのセリンへの置換により表1に示されるペプチド配列とは異なるペプチド配列に結合することができる抗体を提供する。
【0073】
(i)ループペプチド
好ましい実施形態では、14-3-3ηループペプチドは、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0074】
特に好ましい実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、LDKFLIKNSNDF(配列番号30)、KKLEKVKAYR(配列番号31)、及びKNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合する。
【0075】
(ii)ヘリックスペプチド
好ましい実施形態では、14-3-3ηヘリックスペプチドは、配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号1〜10からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0076】
(iii)非ヘリックスペプチド
好ましい実施形態では、14-3-3η非ヘリックスペプチドは、配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗14-3-3η抗体は、配列番号17〜32からなる群より選択される配列に対応するアミノ酸配列と重複する14-3-3ηの1領域に結合する。
【0077】
モノクローナル抗体、ハイブリドーマ、及びこれらの製造方法
一実施形態では、本発明は、モノクローナル抗14-3-3η抗体である抗14-3-3η抗体を提供する。また、上記抗体を産生することができるハイブリドーマ細胞系も提供する。かかるハイブリドーマの作出方法、及びかかる抗体の製造方法も提供する。
【0078】
提供するモノクローナル抗14-3-3η抗体には、本明細書に記載する14-3-3ηループ、ヘリックス及び非ヘリックスペプチドに結合する抗体が含まれる。
【0079】
一態様では、本発明は、14-3-3ηループ、ヘリックス又は非ヘリックスペプチドを含む免疫原で免疫したマウス由来の脾細胞の融合により作出されるハイブリドーマを提供する。また、上記ハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体も提供する。
【0080】
本発明はさらに、前記モノクローナル抗体、又はその誘導体を製造する方法であって、モノクローナル抗体が産生される好適な条件下で本発明のハイブリドーマを培養して、該細胞及び/又は細胞培養培地から抗体及び/又はその誘導体を取得することを含む方法を提供する。
【0081】
抗体は、当業者により容易に製造することができる。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作製する一般的方法は、現在当分野で公知である。例えば、M. Schreierら、Hybridoma Techniques (Cold Spring Harbor Laboratory) 1980;Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsevier Biomedical Press) 1981を参照されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、前記方法は、抗体が産生される好適な条件下でハイブリドーマ細胞を培養して、該細胞及び/又は細胞培養培地から抗体及び/又はその誘導体を取得することを含む。
【0083】
本発明はまた、本明細書に記載の、目的とする14-3-3ペプチドに結合することができる抗体を選別するためのファージライブラリーの使用も想定する。例えば、Konthurら、Targets, 1: 30-36, 2002を参照。
【0084】
いずれかの手段により製造した抗体は、当業者に公知の方法により精製することができる。精製方法としては、とりわけ、選択的沈降、液体クロマトフラフィー、HPCL、電気泳動、クロマト分画、及び各種アフィニティー技術がある。選択的沈降には、硫酸アンモニウム、エタノール(コーン沈降)、ポリエチレングリコール、又は当分野で入手可能な他の物質を用いることができる。液体クロマトフラフィー媒質としては、中でも、イオン交換媒質DEAE、ポリアスパラギン酸エステル、ハイドロキシアパタイト、サイズ排除(例えば、架橋アガロース、アクリルアミド、デキストランなどをベースとするもの)、疎水性マトリックス(例えば、ブルーセファロース)がある。アフィニティー技術は、典型的に、免疫グロブリンFcドメインと相互作用するタンパク質に依存する。黄色ブドウ球菌由来のプロテインAは、ヒトγ1、γ2又はγ4重鎖に基づく抗体を精製するのに用いることができる(Lindmarkら、J.Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。C及びGブドウ球菌由来のプロテインGは、すべてのマウスアイソタイプ及びヒトγ3について有用である(Gussら、EMBO J. 5:15671575 (1986))。プロテインL、すなわち、k軽鎖相互作用により免疫グロブリン(Ig)に結合するペプトストレプトコッカス・マグヌス細胞壁タンパク質(BD Bioscience/ClonTech.、カリフォルニア州パロアルト)は、IgサブクラスIgM、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgYのアフィニティー精製に有用である。これらタンパク質の組換え型も商業的に入手可能である。抗体が、金属結合残基、例えば、ヒスチジンタグを含むように構築されたファージ展示抗体を含有する場合には、金属アフィニティークロマトフラフィーを用いることができる。十分な量の特定の細胞集団が入手可能であれば、これらの細胞で抗原アフィニティーマトリックスを作製して、抗体を精製するためのアフィニティー方法を実施することができる。
【0085】
好ましい実施形態では、単離は、14-3-3η又はその断片を用いたアフィニティークロマトフラフィーを含む。
【0086】
本発明は、本明細書に記載の抗体、並びに対応する抗体フラグメント及び抗原結合性部分を提供する。これらはすべて、用語「抗14-3-3η抗体」に含まれる。本明細書で用いる、本発明の抗体の「抗体フラグメント」又は「抗原結合性部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、ある抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントが発揮することができることが明らかにされている。抗体の「抗体フラグメント」又は「抗原結合性部分」という用語に包含される結合フラグメントの例として、以下のものがある:(i)Fabフラグメント:VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される1価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント:ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結した2つのFabフラグメントを含む2価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びCH1ドメインから構成されるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(例えば、Wardら、(1989) Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、並びに(vii)二重特異性一本鎖Fv二量体(例えば、PCT/US92/09965)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VH及びVL)は個別の遺伝子によりコードされるが、これらは、組換え方法を用いて、合成リンカーにより連結させることもできる。このリンカーは、両者を1本のタンパク質鎖にすることができ、この鎖内でVL領域とVH領域が対形成して、1価分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら、(1988) Science 242:423-426;及びHustonら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)。このような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗体結合性部分」という用語に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に周知の慣用的な方法を用いて取得し、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてフラグメントをスクリーニングする。抗体フラグメントは修飾してもよい。例えば、VHドメインとVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組込みにより分子を安定化することができる(Reiterら、1996, Nature Biotech. 14:1239-1245)。
【0087】
免疫グロブリン分子をフラグメントに切断することもできる。該分子の抗原結合領域をF(ab')2又はFabフラグメントに分割することができる。F(ab')2フラグメントは2価であり、Fc領域が望ましくないか又は必要とする特徴ではない場合に有用である。Fabフラグメントは、1価であり、抗体がその抗原に対して極めて高い結合活性を有するとき有用である。この抗体からFc領域を排除すると、Fc領域及びFc受容体担持細胞同士の非特異的結合が減少する。Fab又はF(ab')2フラグメントを作製するために、抗体を酵素で消化する。免疫グロブリン分子のヒンジ領域で切断するプロテアーゼは、Fabドメイン同士を連結するジスルフィド結合を保存するため、これらのドメインは、切断後も連結したままである。この目的に好適なプロテアーゼは、ペプシンである。Fabフラグメントを作出するためには、重鎖同士を結合するジスルフィド結合を含むヒンジ領域上方で切断が起こるようにするが、重鎖と軽鎖を連結するジスルフィド結合はインタクトのまま残るように、プロテアーゼを選択する。Fabフラグメントを作製するのに好適なプロテアーゼはパパインである。アフィニティー技術がインタクトなFc領域を必要とする以外は、フラグメントを前述の方法により精製する(例えば、プロテインAアフィニティークロマトフラフィー)。
【0088】
抗体フラグメントは、抗体の限定的なタンパク質分解により作出することができ、これらはタンパク質分解抗体フラグメントと呼ばれている。こうしたフラグメントとして、限定するものではないが、以下のものがある:F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、及びFabフラグメント。「F(ab')2フラグメント」は、タンパク質分解酵素、例えば、ペプシン又はフィシンへの抗体の限定的な暴露により抗体から放出される。F(ab')2フラグメントは、2つの「アーム」を含み、それらは各々1可変領域を含むが、この領域は共通の抗原に対するものであり、これと特異的に結合する。2つのFab'分子は、重鎖のヒンジ領域において鎖間ジスルフィド結合により連結されている。Fab'分子は、同じ(2価)又は異なる(二重特異性)エピトープに対するものであってもよい。「Fab'フラグメント」は、ヒンジ領域を介してFabと重鎖の別の部分とを含む単一の抗原結合ドメインを含む。「Fab'-SHフラグメント」は、一般に、F(ab')2フラグメントから作出するが、これらは、F(ab')2フラグメント中のH鎖同士のジスルフィド結合により互いに保持されている。緩和な還元剤、例えば、非制限的例として、βメルカプトエチルアミンなどを用いた処理により、ジスルフィド結合を破壊し、1つのF(ab')2フラグメントから2つのFab'フラグメントを放出させる。Fab'-SHフラグメントは、1価で、単一特異性である。「Fabフラグメント」(すなわち、抗原結合ドメインを含み、ジスルフィド結合により架橋された軽鎖と重鎖の一部とを含む抗体フラグメント)は、インタクトな抗体のパパイン消化により作出することができる。好都合な方法は、この酵素を容易に除去して、消化を終結させることができるように、樹脂に固定化したパパインを用いることである。Fabフラグメントには、F(ab')2フラグメントに存在するH鎖同士のジスルフィド結合がない。
【0089】
「一本鎖抗体」は、抗体フラグメントの1種である。一本鎖抗体という用語は、「scFv」又は「sFv」のような略語で表わされることが多い。こうした抗体フラグメントは、組換えDNA技術を用いて作出する。一本鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインの両方を含み、両者が相互作用して、抗原結合部位を形成する。VHドメイン及びVLドメインは、通常、10〜25個のアミノ酸残基のペプチドにより連結されている。
【0090】
用語「一本鎖抗体」は、限定するわけではないが、さらに以下のものも含む:2つの一本鎖抗体(各々が異なるエピトープに対するものでもよい)が、ジスルフィド結合により互いに連結されている、ジスルフィド連結Fv(dsFv);異なる特異性を有する2つの別のscFvが、ペプチドリンカーで連結されている、二重特異性sFv;ダイアボディ(第1のsFvのVHドメインが第2のsFvのVLドメインと共に集合し、第1 sFvのVLドメインが第2 sFvのVHドメインと共に集合したとき、形成される二量体化sFvであり、ダイアボディの2つの抗原結合領域は同じ又は異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい);トリアボディ(ダイアボディと同様の方法で形成される三量体化sFvであるが、単一の複合体中に3つの抗原結合ドメインが形成され、これら3つの抗原結合ドメインは、同じ又は異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)。
【0091】
「相補性決定領域ペプチド」又は「CDRペプチド」は、別の形態の抗体フラグメントである。一実施形態では、本発明は、かかるCDRペプチドを提供する。好ましい実施形態において、かかるCDRペプチドは、14-3-3ηアンタゴニストとして機能する。CDRペプチド(「最小認識単位」としても知られる)は、単一の相補性決定領域(CDR)に対応するペプチドであり、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより作製することができる。こうした遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することにより、作製する。例えば、Larrickら、Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991を参照されたい。
【0092】
「システイン改変抗体」の場合、遺伝子操作により抗体の表面で、システインアミノ酸が挿入されているか、又は置換されており、これを用いて、例えば、ジスルフィド架橋により、該抗体を別の分子と結合させる。抗体についてのシステイン置換又は挿入は記載されている(例えば、米国特許第5,219,996号を参照)。抗体の部位特異的結合に使用する目的で、IgG抗体の定常領域にCys残基を導入する方法は、Stimmelらにより記載されている(J. Biol. Chem 275:330445-30450, 2000)。
【0093】
本発明はさらに、ヒト化及び非ヒト化抗体を提供する。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体は、ヒト抗体に存在する配列に置換された可変ドメインフレームワーク領域を含む非ヒト抗体である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、該レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種、例えば、マウス、ラット又は非ヒト霊長類の超可変領域からの残基(ドナー抗体)により置換されている免疫グロブリンであってよい。いくつかのケースでは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に存在しない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに精巧にするために施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、該ドメインにおいて、超可変ループの全部又は実質的に全部が、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、また、FRの全部又は実質的に全部が、ヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体には、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含有させてもよい。
【0094】
一般に、ヒト化抗体の場合、全抗体は、CDRを除いて、ヒト起原のポリヌクレオチドによりコードされるか、又はそのCDR内を除いて、そのような抗体と同一である。CDRは、その一部又は全部が非ヒト生物由来の核酸によりコードされており、これらをヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植して、抗体を創出するが、その特異性は、移植したCDRによって決定される。このような抗体の創出については、例えば、WO92/11018号、Jones, 1986, Nature 321:522-525、Verhoeyenら、1988, Science 239:1534-1536に記載されている。ヒト化抗体はまた、遺伝子組換え免疫系を有するマウスを用いて作製することもできる(例えば、Roqueら、2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654)。
【0095】
エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することが望ましい場合もある。例えば、システイン残基をFc領域に導入することにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。また、ヘテロ二価性架橋物質を用いて、ホモ二量体抗体を作製することも可能である(例えば、Wolffら、Cancer Research, 53:2560-2565 (1993)を参照)。あるいは、二重Fc領域を有する抗体を作製することもできる。例えば、Stevensonら、Anti-Cancer Drug Design, 3:219-230 (1989)を参照されたい。
【0096】
改変抗体
一実施形態では、本発明は、改変抗体である抗14-3-3η抗体を提供する。改変抗体は、本明細書に記載する組換え抗体も含む。
【0097】
当業者には、多くの種類の改変又は組換え抗体が認識されよう。好適な種類の改変又は組換え抗体として、限定するものではないが、以下のものがある:操作されたモノクローナル抗体(例えば、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体)、ドメイン抗体(例えば、Fab、Fv、VH、scFV、及びdsFvフラグメント)、多価又は多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、ミニボディ、ミニ抗体、(scFv)2、トリボディ、及びテトラボディ)、並びに本明細書に記載の抗体コンジュゲート。
【0098】
一態様では、本発明は、ドメイン抗体である抗14-3-3η抗体を提供する。「ドメイン抗体」は、ヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)いずれかの可変領域に対応する抗体の機能的結合ドメインである。ドメイン抗体は、分子量約13 kDa、又は完全抗体の1/10以下の大きさを有するものである。これらは、様々な宿主、例えば、細菌、酵母及び哺乳動物細胞系において良好に発現する。加えて、ドメイン抗体は、厳しい条件、例えば、凍結乾燥又は熱変性などに付した後であっても、高度に安定しており、活性を保持する。例えば、米国特許第6,291,158号;第6,582,915号;第6,593,081号;第6,172,197号;米国特許出願2004/0110941;欧州特許0368684;米国特許第6,696,245号、WO04/058821号、WO04/003019号及びWO03/002609号を参照されたい。一実施形態では、本発明のドメイン抗体は、単一ドメインである。単一ドメイン抗体は、例えば、米国特許第6,248,516号に記載のように作製することができる。
【0099】
別の態様において、本発明は、多重特異性抗体を含む。多重特異性抗体には、二重特異性、三重特異性等の抗体がある。二重特異性抗体は、組換え手段により、例えば、ロイシンジッパー部分(すなわち、選択的にヘテロ二量体を形成する、Fos及びJunタンパク質;例えば、Kosteinyら、1992, J. Immnol. 148:1547)、又は、例えば米国特許第5,582,996号に記載のように、他の鍵・鍵穴(lock and key)相互作用ドメイン構造を用いることにより、作製することができる。これ以外の有用な技術として、米国特許第5,959,083号及び米国特許第5,807,706号に記載されているものがある。
【0100】
二重特異性抗体はまた、「ダイアボディ」と呼ばれることもある。これらは、2つ(又は3つ以上)の異なる抗原に結合する抗体である。また、当分野では、以下のものも知られている:トリアボディ(三量体化したsFvで、ダイアボディと同様に形成されるが、3つの抗原結合ドメインが単一の複合体内に形成される;これら3つの抗原結合ドメインは、同じ若しくは異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)、又はテトラボディ(4つの抗原結合ドメインが単一の複合体内に形成されており、これら4つの抗原結合ドメインは、同じ若しくは異なるエピトープのいずれに対するものであってもよい)。ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディは、当分野で公知の様々な方法(例えば、Holliger及びWinter, 1993, Current Opinion Biotechnol. 4:446-449)で製造することができ、例えば、化学的に、又はハイブリッドハイブリドーマから作製することができる。さらに、こうした抗体及びそのフラグメントは、遺伝子融合により構築することも可能である(例えば、Tomlinsonら、2000, Methods Enzymol. 326:461-479; WO94/13804号;Holligerら、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448)。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、小型化された抗体様タンパク質であるミニボディを提供する。これは、抗14-3-3η抗体から誘導した、CH3ドメインに結合したscFvを含む。ミニボディは、当分野において記載されている(例えば、Huら、1996, Cancer Res. 56:3055-3061)ように作製することができる。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、14-3-3η結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質を提供する。一実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した14-3-3η結合ドメインポリペプチドを含んでもよく、これは、免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチドに融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチドに融合している。本発明において、14-3-3抗体融合タンパク質は、当業者に認識される方法(例えば、公開された米国特許出願:20050238646、20050202534、20050202028、2005020023、2005020212、200501866216、20050180970、及び20050175614を参照)により作製することができる。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、抗14-3-3η抗体由来の重鎖タンパク質を提供する。天然に存在する重鎖抗体(例えば、軽鎖がないラクダ科抗体)は、天然に存在する重鎖抗体の構造及び機能的特性を一般的に保持する抗体由来治療用タンパク質を開発するのに使用されてきた。これらは、当分野ではナノボディとして知られている。抗14-3-3η重鎖抗体由来の重鎖タンパク質は、当業者に認識される方法(例えば、公開された米国特許出願:20060246477、20060211088、20060149041、20060115470、及び20050214857を参照)により作製することができる。さらに、軽鎖欠失マウスにおける重鎖単独抗体の作出については、例えば、Zouら、JEM, 204:3271-3283, 2007を参照されたい。
【0104】
一実施形態では、本発明は、ヒト抗体である改変型抗14-3-3η抗体を提供する。一実施形態では、完全にヒトの14-3-3抗体が提供される。「完全にヒトの抗体」又は「完全ヒト抗体」とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を意味する。抗14-3-3完全ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖及び軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いる方法[例えば、Tomizuka, K.ら、Nature Genetics, 16, p.133-143, 1997; Kuroiwa, Y.ら、Nuc. Acids Res., 26, p.3447-3448, 1998;Yoshida, H.ら、Animal Cell Technology: Basic and Applied Aspects 第10巻、p.69-73 (Kitagawa, Y., Matuda, T. 及びIijima, S.編), Kluwer Academic Publishers, 1999;Tomizuka, K.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 722-727, 2000を参照]、又は、ヒト抗体ライブラリーから選択したファージディスプレイに由来するヒト抗体を得る方法(例えば、Wormstone, I. M.ら、Investigative Ophthalmology & Visual Science. 43(7), p.2301-8, 2002;Carmen, S.ら、Briefings in Functional Genomics and Proteomics, 1 (2), p.189-203, 2002;Siriwardena, D.ら、Ophthalmology, 109(3), p.427-431, 2002)により取得することができる。
【0105】
一態様では、本発明は、抗体類似体である14-3-3抗体を提供し、これは「合成抗体」と呼ばれることもある。例えば、代替タンパク質スカフォールド、又は移植されたCDRを含む人工スカフォールドを用いることができる。こうしたスカフォールドとして、限定するものではないが、例えば、生体適合性ポリマーからなる合成スカフォールドがある。例えば、Korndorferら、2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129. Roqueら、2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照されたい。さらに、ペプチド抗体模擬物(「PAM」)を用いることもでき、また、スカフォールドとしてフィブロネクチン成分を使用する抗体模擬物を用いることも可能である。
【0106】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載する2つ以上の抗体を含み、互いに結合して、抗体複合体を形成している架橋抗体を提供する。架橋抗体はまた、抗体多量体、ホモコンジュゲート、及びヘテロコンジュゲートとも呼ばれる。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体複合体は、抗14-3-3抗体の多量体形態を含む。例えば、本発明の抗体複合体は、単量体免疫グロブリン分子の抗体二量体、三量体又はさらに高次の多量体の形態を呈していてもよい。抗体の架橋は、当分野で公知の様々な方法により実施することができる。例えば、抗体の架橋は、抗体の自然凝集により、化学的若しくは組換え連結技術により又は当分野で公知の他の方法により実施することができる。例えば、精製された抗体調製物は、抗体ホモ二量体、及び、より高次の他の抗体多量体を含むタンパク質凝集体を自然に形成することができる。
【0108】
一態様では、本発明は、14-3-3ηに特異的に結合するホモ二量体化抗体を提供する。
【0109】
抗体は、当分野で公知の連結技術により、架橋又は二量体化することができる。非共有結合方法を用いてもよい。特定の実施形態では、抗体の架橋は、二次クロスリンカー抗体を用いて、達成することができる。クロスリンカー抗体は、目的の抗体とは異なる動物に由来するものでよい。例えば、ヤギ抗マウス抗体(Fab特異的)をマウスモノクローナル抗体に添加することにより、ヘテロ二量体を形成する。この2価クロスリンカー抗体は、ホモ二量体を形成する、目的の2つの抗体のFab又はFc領域を認識する。
【0110】
本発明の一実施形態において、14-3-3抗原に特異的に結合する抗体は、ヤギ抗マウス抗体(GAM)を用いて架橋する。別の実施形態では、GAMクロスリンカーは、各々が14-3-3ηに特異的に結合する、2つの抗体のFab又はFc領域を認識する。
【0111】
また、抗体の共有結合又は化学結合方法を用いてもよい。化学的架橋剤は、ホモ又はヘテロ二価性のいずれでもよく、ホモ二量体を形成する2つの抗体と共有結合する。架橋試薬は当分野で公知であり、よく知られているように、例えば、ホモ又はヘテロ二価性リンカーがある(the 2006 Pierce Chemical Company Crosslinking Reagents Technical Handbook;Hermanson, G.T., Bioconjugate Techniques, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ(1996);Aslam M.及びDent AH., Bioconjugation: protein coupling techniques for the biomedical sciences, Houndsmills, England: Macmillan Publishers (1999);Pierce: Applications Handbook & Catalog, Perbio Science, Ermbodegem, Belgium (2003-2004);Haughland, R.P., Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals Eugene, 第9版、Molecular Probes, OR (2003);及び米国特許第5,747,641号を参照)。当業者であれば、改変(架橋など)を目的とした抗体のアミノ酸に対する様々な官能基の適合性を理解されよう。抗体の架橋に用いられる化学的架橋剤の好適な例として、限定するものではないが、以下のものがある:SMCC[スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート]、SATA[N-スクシンイミジルS-アセチルチオ-アセテート]、N-ヒドロキシスクシンイミドのヘミスクシン酸エステル;スルホ-N-ヒドロキシ-スクシンイミド;ヒドロキシベンゾトリアゾール、及びp-ニトロフェノール;ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(ECD)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドメチオダイド(EDCI)(例えば、米国特許第4,526,714号を参照、尚、その開示内容は、全文を参照として本明細書に組み込む)。上記以外の架橋試薬として、以下のものがある:グルタチオン、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)、オニウム塩ベースの結合試薬、ポリオキシエチレンベースのヘテロ二価性架橋試薬、及びその他の試薬(Haitaoら、Organ Lett 1:91-94 (1999);Albericioら、J Organic Chemistry 63:9678-9683 (1998);Arpiccoら、Bioconjugate Chem. 8:327-337 (1997);Frischら、Bioconjugate Chem. 7:180-186 (1996);Deguchiら、Bioconjugate Chem. 10:32-37 (1998);Beyerら、J. Med. Chem. 41:2701-2708 (1998);Drouillatら、J. Pharm. Sci. 87:25-30 (1998);Trimbleら、Bioconjugate Chem. 8:416-423 (1997))。抗体ホモ二量体の形成のためのプロトコル例が、米国特許公開20060062786に記載されている。治療用化合物を抗体と結合させる技術も、以下の文献に記載されている:Arnonら、“Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancers Therapy,” Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeldら編、pp243-256, Alan R. Liss, Inc. (1985);Thorpeら、“The Preparation and Cytotoxic Properties of Antibody Toxin Conjugates,” Immunol. Rev. 62:119-58 (1982);及びPietersz, G.A., “The linkage of cytotoxic drugs to monoclonal antibodies for the treatment of cancer,” Bioconjugate Chemistry 1(2):89-95 (1990)。尚、これらの参照文献は、全文を参照として本明細書に組み込む。
【0112】
さらに、本発明の抗体−抗体コンジュゲートは、当分野で公知の技術により、例えば、ヘテロ二価性架橋試薬であるGMBS(マレイミドブトリルオキシスクシンイミド)及びSPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート) を用いて、互いに共有結合させることができる[例えば、Hardy, "Purification And Coupling Of Fluorescent Proteins For Use In Flow Cytometry", Handbook Of Experimental Immunology, 第1巻、Immunochemistry, Weirら(編)、pp. 31.4-31.12 第4版、(1986), 及びLedbetterら、米国特許第6,010,902号を参照]。
【0113】
これ以外にも、米国特許公開20060216284、米国特許第6,368,596号に記載のように、チオエーテル架橋を介して抗体を連結させることもできる。当業者には理解されるように、抗体はFab領域で架橋することができる。いくつかの実施形態では、化学的架橋剤は、抗体の抗原結合領域と相互作用しないことが望ましい。というのは、こうした相互作用は、抗体機能に影響を与えうるからである。
【0114】
コンジュゲート抗体
本明細書に開示した抗14-3-3η抗体は、無機又は有機化合物、例えば、限定するものではないが、別のタンパク質、核酸、炭水化物、ステロイド、及び脂質にコンジュゲートした抗体を含む(例えば、Greenら、Cancer Treatment Reviews, 26:269-286 (2000)を参照)。化合物は、生物活性であってもよい。生物活性とは、該化合物に暴露されていない細胞と比較して、細胞に対する生理学的作用を有する化合物を指す。生理学的作用とは、生物学的プロセスにおける変化、例えば、限定するものではないが、DNA複製及び修復、組換え、転写、翻訳、分泌、膜ターンオーバー、細胞接着、シグナル伝達、細胞死などである。生物活性化合物としては、医薬化合物がある。一実施形態では、抗14-3-3η抗体は、14-3-3アンタゴニストペプチド、好ましくはR-18に、好ましくはリンカーを介してコンジュゲートされている。R18に関しては、例えばWangら 1999 - 参照文献35参照。
【0115】
医薬組成物、投与、及び投薬量
本発明の抗14-3-3η抗体は、被験体への投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。典型的には、医薬組成物は、本発明の抗14-3-3η抗体と、薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いる「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性の、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容される担体の例として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうち1種以上、及びこれらの組合せがある。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含有するのが好ましい。薬学的に許容される物質としては、抗14-3-3η抗体の貯蔵寿命又は効果を増強する、湿潤又は微量の補助物質、例えば、湿潤若しくは乳化剤、保存剤又はバッファーがある。
【0116】
好ましい実施形態において、抗14-3-3η抗体は、細胞外に局在化した14-3-3ηタンパク質にターゲティングする。従って、かかる治療用組成物の製剤化及び投与は、こうして送達される抗14-3-3η抗体が、細胞外14-3-3ηタンパク質と結合(engage)するのに利用可能であるように実施する。
【0117】
本発明の組成物は、様々な形態をしていてよい。これらの形態としては、例えば、液体、半固体及び固体投与剤形、例えば、溶液(例:注射液及び注入液)、分散液若しくは懸濁液、錠剤、丸薬、粉末、リポソーム及び座薬がある。好ましい剤形は、意図する投与方法及び治療用途に応じて異なる。典型的な好ましい組成物は、注射液又は注入液の形態をしており、例えば、別の抗体によるヒトの受動免疫のために用いられるものに類似した組成物である。好ましい投与方法は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内であり、特に嚢内が好ましい)である。一実施形態では、抗14-3-3η抗体は、静脈内注入又は注射により投与する。別の好ましい実施形態では、抗14-3-3η抗体は、筋内又は皮下注射により投与する。好ましい実施形態では、滑膜への直接注射を実施する。
【0118】
治療用組成物は、典型的に、製造及び貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、又は高い薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化することができる。滅菌注射液は、必要に応じて、前文に挙げた成分の1つ又はそれらの組合せと一緒に、適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込んだ後、濾過滅菌を実施することにより、調製することができる。一般に、分散液は、ベースの分散媒と、前文に挙げた成分からの他の必要な成分とを含む無菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより調製することができる。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これにより、事前に滅菌濾過した溶液から、活性成分の粉末、さらには所望する任意の別の成分の粉末が得られる。溶液の適正な流動度は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用により、分散液の場合には要求粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。注射用組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含有させることにより、達成することができる。
【0119】
本発明の抗14-3-3η抗体は、当分野で公知の様々な方法、例えば、静脈内注射又は注入により投与することができる。滑膜への直接投与は、好ましい投与経路の1つである。当業者であれば理解されるように、投与経路及び/又は方法は、所望する結果に応じて異なる。いくつかの実施形態では、活性化合物は、急速な放出から化合物を保護する担体と一緒に調製してもよく、例えば、放出制御製剤(埋込み物、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系)がある。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を用いることができる。このような製剤を調製するための多数の方法が特許付与されているか、又は当分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, 編、Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。代表的製剤化技術は、中でも以下の文献に教示されている:Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版、Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン (1995)及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版、Kibbe, A.H. 編、Washington DC, American Pharmaceutical Association (2000)。
【0120】
いくつかの実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、不活性希釈剤又は吸収可能な可食担体と一緒に、経口投与してもよい。また、化合物(及び、所望であれば別の成分)を硬質又は軟質シェルゼラチンカプセルに封入し、錠剤に圧縮してもよいし、又は被験体の食事に直接組み込んでもよい。治療用の経口投与の場合には、化合物に賦形剤を組み込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート(wafers)などの形態で用いてもよい。非経口投与以外により本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性化を防ぐ物質で該化合物をコーティングするか、又は該物質と一緒に同時投与しなければならない場合もある。
【0121】
また、追加的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。いくつかの実施形態では、本発明の抗14-3-3η抗体は、1種以上の別の治療薬と一緒に製剤化する、及び/又は、これと同時投与する。例えば、DMARD若しくはDMOAD又は別の抗体がある。このような併用療法は、有利なことに、投与治療薬の使用量を低減することができるため、各種単剤療法に関連する毒性又は合併症の可能性を回避しうる。
【0122】
本発明の医薬組成物は、「治療有効量」又は「予防有効量」の本発明の抗体を含むことができる。「治療有効量」とは、必要な投薬回数で、かつ必要な期間をかけて、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗14-3-3η抗体の治療有効量は、様々な因子、例えば、個体の病状、年齢、性別、及び体重、並びに抗14-3-3η抗体が個体において所望の応答を誘発する能力に応じて変動しうる。治療有効量はまた、抗体の有毒又は有害な作用より、治療に有益な作用の方が上回る量でもある。「予防有効量」とは、必要な投薬回数で、かつ必要な期間をかけて、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の発症前又は早期に使用することから、予防有効量は、治療有効量より少ない。
【0123】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療又は予防応答)を達成するように、調節することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、数回に分けた用量を、時間をかけて投与してもよく、あるいは治療状況の要件により、これに比例して用量を減少又は増加させてもよい。投与しやすさ、及び投薬の均一性のために、非経口組成物を単位投与剤形に製剤化するのが特に有利である。本明細書で用いる単位投与剤形とは、治療しようとする哺乳動物被験体の単位投与に適した、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、必要な医薬用担体と一緒に所望の治療効果を生み出すように計算されて、予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の単位投与剤形の詳細は、以下の事項により決定され、かつこれらに直接左右される:(a)活性化合物に特有の特性、及び達成しようとする特定の治療又は予防効果、並びに(b)個体における感受性の治療のためのこうした活性化合物を配合する技術に固有の制限事項。
【0124】
本発明の抗体の治療又は予防有効量の非制限的範囲は、0.1〜20 mg/kg、さらに好ましくは1〜10 mg/kgである。用量の数値は、緩和しようとする状態の種類及び重症度に応じて変動しうる。さらに、特定の被験体の場合、個々の必要性、及び組成物を投与する又はその投与を監督する人の専門的判断に応じて、時間経過に伴い、具体的投薬レジメンを調節すべきであること、また、本明細書に記載した用量の範囲は例にすぎず、特許請求の範囲に記載する組成物の範囲又は実施を制限する意図はないことは理解すべきである。
【0125】
本明細書に記載する医薬組成物は、単位用量又は複数回用量容器、例えば、密封アンプル又はバイアル中に提供してもよい。このような容器は典型的に、使用まで製剤の無菌性及び安定性を保つような方法で密封する。一般に、製剤は、前述のように、油性又は水性ビヒクル中に懸濁液、溶液又はエマルションとして貯蔵することができる。あるいは、医薬組成物は凍結乾燥状態で保存してもよく、この場合、使用前に無菌液体担体を添加するだけでよい。
【0126】
抗14-3-3η抗体の治療用途
本明細書において「処置(治療)」とは、疾患、障害若しくは望ましくない状態に対する治療若しくは予防的処置、又は抑制的処置を意味する。治療は、疾患の重症度を軽減し、疾患の進行を止める、又は疾患を排除するために、疾患症状の開始前、及び/又は疾患の臨床症状若しくは他の症状発現後の、適切な形態の抗14-3-3η抗体の被験体への投与を含む。疾患の予防は、好ましくは疾患への罹りやすさが高い被験体において、障害又は疾患の症状の開始を引き延ばす、又は遅らせることを含む。
【0127】
一態様では、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患の治療方法を提供する。本方法は、治療有効量の本発明の抗14-3-3η抗体を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は併用療法を含む。
【0128】
一実施形態において、本発明は、関節炎の治療方法を提供し、例えば、以下の疾患を治療する方法を含む:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症。
【0129】
一実施形態では、本方法は、1種以上の本発明の抗14-3-3η抗体に加えて、少なくとも1種の別の治療薬を投与する、併用療法を含む。好ましい実施形態において、治療薬は、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)及び疾患修飾変形性関節症薬(DMOAD;例えば、Loeser, Reumatologia, 21:104-106, 2005を参照)、抗TNFα抗体、抗IL-1抗体、抗CD4抗体、抗CTLA4抗体、抗CD20抗体、抗IL-6抗体、レフルノミド、スルファサラジン、及びメトトレキセートからなる群より選択される。
【0130】
診断、予後判定及び治療後判定(Theragnostic)方法、並びに治療モニター
一態様において、本発明は、14-3-3ηが関与する疾患及び症状を診断する方法を提供する。かかる方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて、14-3-3ηタンパク質における変化、例えば発現、局在化、機能などの変化を検出することを含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いる免疫沈降を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いるELISAの使用を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いるウエスタンブロッティングを含む。一実施形態において、検出は、免疫組織化学における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、免疫蛍光における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、FACS分析における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ラジオイムノアッセイにおける本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ストリップテストにおける本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、検出は、ポイントオブケア検査における本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。一実施形態において、14-3-3ηの検出は、上記症状の別のマーカー(例えば、関節炎についてはMMP、抗CCP、抗RF及び/又はCRP)の検出と組み合わせる。
【0131】
一実施形態では、本発明は、炎症状態の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎の診断方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患を診断する方法を包含する。
【0132】
一般に、関節炎は、患者の滑液、血漿又は血清中の14-3-3ηの存在に基づいて患者において検出することができる。言い換えると、細胞外14-3-3ηタンパク質は、関節炎の指標となるマーカーとして用いることができる。
【0133】
さらに、本発明の抗14-3-3η抗体及び他の抗14-3-3抗体を使用して測定した場合の、14-3-3ηの存在、又は14-3-3ηを含む14-3-3タンパク質のアイソフォームの相対レベルは、それが消耗性形態に進行する前の初期段階の関節炎の予後判定指標となりうる。初期の予後判定又は診断の利点は、治療レジメンを早期に実施できることである。
【0134】
14-3-3ηの存在又は相対レベルは、患者サンプル中の他のタンパク質、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)(MMP-1又はMMP-3など)の存在又は相対レベルと相関させてもよい。少なくとも25種のMMPが同定されている。患者サンプル中の14-3-3ηとそれと組み合わせた少なくとも1種のMMPの検出を用いて関節炎を診断することができる。さらに、患者サンプル中の14-3-3ηとそれと組み合わせた少なくとも1種のMMPの存在又は相対レベルは、関節炎が消耗性形態に進行する前の初期段階の関節炎の予後判定指標として用いることができる。
【0135】
一実施形態において、本方法は、患者の滑液、血漿又は血清における14-3-3ηタンパク質を検出するステップを含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いた、滑液、血漿又は血清からの14-3-3ηタンパク質の免疫沈降により実施する。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いたELISAの使用を含む。一実施形態において、検出は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いた、患者由来の滑液、血漿又は血清を含むサンプルのウエスタンブロッティングを含む。一実施形態において、検出は、ラジオイムノアッセイの使用を含む。一実施形態において、検出はストリップテストの使用を含む。一実施形態において、検出はポイントオブケア検査の使用を含む。一実施形態において、14-3-3ηの検出は、関節炎の別のマーカー(例えば、MMP、抗CCP、抗RF及び/又はCRP)の検出と組み合わせる。
【0136】
一実施形態において、本発明は、神経学的状態の診断方法を提供する。好ましい実施形態において、細菌性髄膜炎及びクロイツフェルト・ヤコブ病からなる群より選択される疾患の診断方法を提供する。一実施形態において、脳脊髄液中の14-3-3ηの存在を検出する。
【0137】
一態様において、本発明は、炎症状態に対する治療への患者の応答可能性を判定する方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎に対する治療への患者の応答可能性を判定する方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患の治療への応答可能性を判定する方法を包含する。
【0138】
一実施形態において、本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定するステップを含む。好ましい実施形態において、患者サンプル中の14-3-3ηレベルを、治療に対する応答能が既知である被験体のサンプル中のレベルと比較する。非炎症被験体由来のサンプル及び/又は別の炎症患者由来のサンプルと比較して第1患者サンプル中の比較的高レベルの14-3-3ηは、第1患者が抗14-3-3η抗体又は別のDMARD療法、例えば抗TNFによる治療のための好ましい候補となることを示しうる。逆に、別の炎症患者由来のサンプルと比較して第1患者サンプル中の比較的低レベルの14-3-3η(特にそのレベルが非炎症被験体由来のサンプルのレベルと近い場合)は、抗14-3-3η抗体又は別のDMARD療法、例えば抗TNFによる治療のための好ましい候補ではないことを示しうる。
【0139】
一態様において、本発明は、炎症性疾患のサブタイプ同士を識別する方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎のサブタイプ同士を識別する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定するステップを含む。好ましい実施形態において、患者における14-3-3ηレベルを、既知のサブタイプの炎症性疾患又は予後を有する被験体由来のサンプル中のレベルと比較する。
【0140】
一態様では、本発明は、14-3-3ηが関与する症状の発症を予防するための予防方法を提供する。
【0141】
一実施形態において、本発明は、炎症状態を発症するリスクのある被験体における炎症状態の発症を予防する予防方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎を発症するリスクのある被験体における関節炎を予防するための予防方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患を予防するための予防方法を包含する。本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を被験体に投与することを含む。一実施形態では、抗14-3-3η抗体は、本明細書に記載する併用療法の一成分として投与される。
【0142】
一態様において、本発明は、炎症状態の治療をモニターする方法を提供する。好ましい実施形態において、関節炎の治療をモニターする方法を提供する。以下:強直性脊椎炎、ベーチェット病、広汎性特発性骨増殖症(DISH)、エーラース・ダンロス症候群(EDS)、フェルティ症候群、線維筋痛症、痛風、感染性関節炎、若年性関節炎、狼瘡、混合性結合組織病(MCTD)、変形性関節症、パジェット病、リウマチ性多筋痛、多発筋炎及び皮膚筋炎、偽痛風、乾癬性関節炎、レイノー現象、反応性関節炎、関節リウマチ、強皮症、シェーグレン症候群、スティル病、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される疾患の治療をモニターする方法を包含する。
【0143】
一実施形態において、本方法は、本発明の抗14-3-3η抗体を用いて患者サンプル中の14-3-3ηレベルを測定するステップ、及び治療を受けている患者における14-3-3ηレベルをモニターするステップを含む。
【0144】
一態様において、本発明は、患者サンプル中の14-3-3η、及び場合により他のマーカー(例えばMMP)の存在を検出するためのキットを提供し、該キットは、14-3-3ηが関与する種々の疾患を診断又は鑑別するのに好適な診断又は予後判定結果を提供するのに有用である。キットは本発明の抗14-3-3η抗体を含む。かかるキットはさらに、関節炎のマーカーである特定のMMPに特異的な検出試薬を含んでもよい。キットはさらに、14-3-3ηを免疫学的に検出するために必要な他の試薬、例えば標識二次抗体、発色原若しくは蛍光原試薬、多量体化試薬、及び/又は診断若しくは予後判定目的でキットを使用するための説明書を含んでもよい。
【0145】
診断方法に関しては、2007年5月9日出願のWO2007/128132号も参照されたい。
【0146】
抗体を用いてサンプル中のタンパク質マーカーを検出するための種々のアッセイ形式が当業者に公知である。例えば、Harlow及びLane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照のこと。一般的に、関節炎又は14-3-3ηが関与する他の症状の存在若しくは非存在、又は患者の予後判定は、(a)患者から得た生体サンプルと本発明の抗14-3-3η抗体とを接触させるステップ;(b)サンプル中の、抗体に結合した14-3-3ηのレベルを検出するステップ;及び(c)ポリペプチドのレベルと所定のカットオフ値(すなわち対照)とを比較するステップにより判定することができる。
【0147】
好ましい実施形態において、アッセイは、14-3-3ηタンパク質と結合させて、サンプルの残りから14-3-3ηタンパク質を取り出すために、固相支持体に固定化した本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。続いて、結合した14-3-3ηタンパク質は、リポーター基を含み、抗体/タンパク質複合体と特異的に結合する検出試薬を用いて検出する。そのような検出試薬は、例えば14-3-3タンパク質に特異的に結合する結合試薬を含む。あるいは、14-3-3ηタンパク質をリポーター基で標識し、固定化抗体をサンプルと共にインキュベートした後に14-3-3ηタンパク質を固定化抗体に結合させる競合アッセイを用いることも可能である。サンプル中の成分が標識14-3-3ηタンパク質と抗体との結合を阻害する程度が、固定化抗体とのサンプルの反応性の指標となる。このようなアッセイに使用するための好適なタンパク質としては、全長14-3-3ηタンパク質及び該抗体が結合するそのポリペプチド部分が挙げられる。
【0148】
固相支持体は、当業者に公知の任意の材料のものであってよい。例えば、固相支持体は、マイクロタイタープレートにおける試験ウエル、又はニトロセルロース若しくは他の好適な膜でありうる。あるいは、支持体は、ビーズ又はディスク、例えばガラス、ガラスファイバー、ラテックス又はプラスチック材料(ポリスチレン若しくはポリ塩化ビニルなど)のものであってもよい。支持体はまた、磁性粒子又は光学ファイバーセンサ、例えば米国特許第5,359,681号に開示されているものなどであってもよい。抗体は、特許及び科学文献に十分に記載されている当業者に公知の種々の技法を用いて固相支持体に固定化することができる。本発明において、「固定(化)」という用語は、非共有結合性会合(吸着など)、及び共有結合(抗体と支持体上の官能基との直接結合であってもよいし、又は架橋試薬による結合であってもよい)の両方を意味する。マイクロタイタープレート中のウエル又は膜への吸着による固定化が好ましい。かかる場合には、吸着は、好適なバッファー中の抗体と、固相支持体とを、好適な時間にわたって接触させることにより実施しうる。接触時間は、温度により異なるが、典型的には約1時間から約1日である。一実施形態において、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートをビオチン化抗体と共に使用する。
【0149】
抗体と固相支持体との共有結合は、一般的に、最初に支持体及び抗体の両方と反応する二官能性試薬と支持体とを反応させることにより行う。
【0150】
いくつかの実施形態では、アッセイは2抗体サンドイッチアッセイである。このアッセイは、最初に固相支持体(一般的にはマイクロタイタープレートのウエル)上に固定された抗体とサンプルとを接触させて、サンプル中の14-3-3ηタンパク質を固定化抗体と結合させることによって実施する。続いて、非結合サンプルを固定化タンパク質−抗体複合体から除去し、リポーター基を含む検出試薬(好ましくは該ポリペプチド上の異なる部位に結合することができる二次抗体)を添加する。次に、固相支持体に結合して残った検出試薬の量を、特定のリポーター基に適当な方法を用いて測定する。
【0151】
固定化抗体及び検出用抗体は、異なることが好ましい。好ましい実施形態において、固定化抗体は本発明の抗14-3-3η抗体であり、検出用抗体は本発明の別の抗14-3-3η抗体又は14-3-3ηに結合することができる別の抗14-3-3抗体である。一実施形態において、検出用抗体は汎14-3-3抗体である。
【0152】
別の実施形態において、検出用抗体は本発明の抗14-3-3η抗体であり、固定化抗体は本発明の別の抗14-3-3η抗体又は14-3-3ηに結合することができる別の抗14-3-3抗体である。一実施形態において、固定化抗体は汎14-3-3抗体である。
【0153】
上記方法は、本発明の抗14-3-3η抗体の使用を含む。二次抗体の代替物として、14-3-3ηに結合する別のリガンドを本発明の抗14-3-3η抗体と共に使用することも可能である。そのようなリガンドの例はR18(Wangら 1999−参照文献35)である。
【0154】
抗体を上述のように支持体に固定化した後、典型的には、支持体上の残りのタンパク質結合部位はブロッキングする。当業者に公知の任意の好適なブロッキング試薬、例えばウシ血清アルブミン又は脱脂粉乳を用いることができる。続いて、固定化抗体をサンプルと共にインキュベートし、14-3-3ηタンパク質を抗体に結合させる。サンプルは、インキュベーション前に、適当な希釈剤、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈してもよい。一般に、適当な接触時間(すなわちインキュベーション時間)は、関節炎又は14-3-3ηが関与する他の症状を有する個体から得たサンプル中の14-3-3ηタンパク質の存在を検出するのに十分な時間である。好ましくは、接触時間は、結合14-3-3ηタンパク質と非結合14-3-3ηタンパク質の間の平衡において達成される結合レベルの少なくとも約95%である結合レベルを達成するのに十分なものである。当業者であれば、平衡を達成するのに必要な時間を、ある時間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることにより容易に決定できることを理解するだろう。室温では、一般的に約30分のインキュベーション時間で十分である。
【0155】
続いて、適当なバッファー(0.1%Tween 20TMを含むPBSなど)で固相支持体を洗浄することにより非結合サンプルを除去する。次にリポーター基を含む二次抗体を固相支持体に添加する。本方法に適当なリポーター基は当技術分野で周知である。
【0156】
次に、結合した14-3-3ηタンパク質を検出するのに十分な時間にわたり、検出試薬を固定化抗体−タンパク質複合体と共にインキュベートする。適当な時間は、一般的に、ある時間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることにより決定することができる。続いて、非結合の検出試薬を除去し、結合した検出試薬をリポーター基を用いて検出する。リポーター基の検出に用いる方法はリポーター基の性質に応じて異なる。放射性基の場合には、シンチレーションカウンタ法又はオートラジオグラフィー法が一般的に適当である。色素、発光基及び蛍光基を検出するためには分光法を使用することができる。ビオチンは、異なるリポーター基(一般的には放射性若しくは蛍光基、又は酵素)と結合したアビジンを用いて検出することができる。酵素リポーター基は、一般的に基質の添加(一般的には所定の時間にわたり行う)と、それに続く反応生成物の分光分析又は他の分析により検出することができる。
【0157】
関節炎又は14-3-3ηが関与する症状の存在又は非存在を判定するために、固相支持体に結合して残ったリポーター基から検出されるシグナルを、一般的には、所定のカットオフ値(対照)に対応するシグナルと比較する。1つの好ましい実施形態において、カットオフ値は、固定化抗体を関節炎又は14-3-3ηが関与する他の症状のない患者由来のサンプルとインキュベートした場合に得られる平均(average mean)シグナルである。一般的に、所定のカットオフ値を超える3つの標準偏差であるシグナルを生じるサンプルは、関節炎又は14-3-3ηが関与する他の症状について陽性とみなされる。別の好ましい実施形態において、カットオフ値は、受信者動作曲線を用いて決定される。例えばSackett ら, Clinical Epidemiology: A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-7の方法を参照のこと。簡単に説明すると、この実施形態では、カットオフ値は、診断検査結果についての可能なカットオフ値にそれぞれ対応する真の陽性率(すなわち感度)と偽陽性率(100%−特異性)の対のプロットから決定することができる。左上の角に最も近いプロット上のカットオフ値(すなわち最も大きい面積を囲う値)が最も正確なカットオフ値であり、この方法により決定されるカットオフ値より高いシグナルを生じるサンプルは、陽性とみなされる。あるいは、カットオフ値は、偽陽性率を最小限にするためにプロットに沿って左側に、又は偽陰性率を最小限にするために右側にシフトしてもよい。一般的に、この方法により決定されるカットオフ値より高いシグナルを生じるサンプルは、関節炎又は14-3-3ηが関与する他の症状について陽性とみなされる。
【0158】
一実施形態において、アッセイは、ポイントオブケアアッセイとして提供される。関連する実施形態では、例えば、アッセイはフロースルーテスト又はストリップテスト形式で実施することができ、その場合、抗体は膜(ニトロセルロースなど)に固定されている。フロースルーテストにおいては、サンプルを膜と接触させて、サンプル中の14-3-3タンパク質が固定化抗体と結合する。次に、二次標識結合試薬を、二次結合試薬を含む溶液を膜と接触させて、結合試薬−ポリペプチド複合体と結合させる。次に、結合した二次結合試薬の検出は上述と同様に行うことができる。ストリップテスト形式では、抗体を結合させた膜の一方の端をサンプルを含む溶液に浸漬させる。サンプルは、膜に沿って、二次14-3-3η結合試薬を含む領域を通って固定化抗体の領域に移動する。固定化抗体の領域における二次結合試薬の濃度が、関節炎若しくは14-3-3ηが関与する他の症状の存在、又は患者の予後などを示す。典型的には、その領域における二次結合試薬の濃度は、可視的に読み取り可能なパターン(例えば線)を生じる。そのようなパターンの不在は、陰性結果を示す。一般的に、膜に固定化する結合試薬の量は、生体サンプルが上述した形式の2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを生じるのに十分であるレベルのポリペプチドを含む場合に、可視的に識別可能なパターンを生じるように選択される。このようなアッセイに使用するのに好ましい結合試薬は、抗体及びその抗原結合性フラグメントである。かかるテストは、典型的には、非常に少量の生体サンプルを用いて、ポイントオブケア(ベッドサイド)で行うことができる。
【0159】
好ましい実施形態において、固定化抗体は本発明の抗14-3-3η抗体である。二次結合試薬は、14-3-3ηタンパク質と選択的に結合してもしなくてもよい別の14-3-3ηリガンドである。
【0160】
別の実施形態において、二次結合試薬は、本発明の抗14-3-3η抗体、最も好ましくはその抗原結合性フラグメントであり、固定化抗体は、14-3-3ηタンパク質に結合することができる抗14-3-3抗体である。抗体は、14-3-3ηタンパク質と選択的に結合してもしなくてもよい。
【0161】
当然のことながら、本発明の抗14-3-3抗体の使用に好適な多数の他のアッセイプロトコールが存在する。上記の説明は例示目的にすぎない。
【0162】
感度を改善するため、複数のマーカーを所定のサンプル中でアッセイしてもよい。特に、関節炎若しくは14-3-3ηが関与する他の症状の1種以上の他のマーカー、又は予後判定指標などを14-3-3タンパク質と組み合わせてアッセイすることができる。これらの他のマーカーは、タンパク質又は核酸でありうる。疾患が関節炎である好ましい実施形態において、1種以上の他のマーカーは、MMPタンパク質若しくは核酸、又は関節炎の指標として一般的に使用されている他の因子、例えば抗CCP、抗RF、CRPなどである。参照配列に基づいて核酸を単離及びアッセイするための方法は当技術分野で周知である。
【0163】
併用アッセイは、同時に又は連続的に実施することができる。マーカーの選択は、最適な感度が得られる組合せを決定するための慣用の実験に基づいて行いうる。
【0164】
本発明はさらに、上記診断方法のいずれかで使用するためのキットを提供する。かかるキットは、典型的に診断アッセイを実施するために必要な2種以上の成分を含む。成分は、化合物、試薬、容器及び/又は機器でありうる。例えば、キット内の1つの容器には、本発明のモノクローナル抗14-3-3η抗体が含まれる。かかる抗体は、上述したように支持体材料に結合させて提供してもよい。1以上の別の容器は、アッセイにおいて使用する要素、例えば試薬又はバッファーなどを含みうる。かかるキットはまた、抗体結合の直接的又は間接的検出に好適なリポーター基を含む、上記の検出試薬を含んでもよい。
【0165】
キットはまた、関節炎の別のマーカー、例えば特定のMMPをコードする特定のmRNAなどを検出するための試薬を含んでもよい。
【0166】
実験
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
一実施形態では、システイン残基を含む配列において、ジスフィルド結合の形成を回避するために、システイン残基をセリン残基で置換する。尚、このシステインは、内部システイン残基又は末端システイン残基のいずれでもよい。
【0169】
様々な目的のために、ペプチドエピトープを改変してもよく、その例として、別の部分とのコンジュゲート、例えば、エピトープを含む免疫原を産生する部分とのコンジュゲートなどがある。理解されるように、キャリアとのコンジュゲートのために、また、抗体を作製する目的で露出することが望まれる領域の露出が達成されるように、システインを適切に配置することができる。KKLEの場合、反対側を露出させるために、システインをC末端に付加した。用いるキャリアはかなり大きくてもよく、このキャリアで最初の数個のアミノ酸をマスキングしてもよい。
【実施例】
【0170】
[実施例1]14-3-3η免疫原配列及び抗14-3-3η抗体
単一特異性抗14-3-3η抗体を作製するために、長さが8〜15アミノ酸の様々なペプチドを本発明者ら自身の基準に基づいて選択した。これらのペプチド、及び全長組換え天然(タグ付加していない)14-3-3ηをモノクローナル抗体産生の免疫原として用いた。14-3-3の7つのアイソフォームについてのタンパク質配列アラインメントを図4に示す。
【0171】
免疫原#1:C-LDKFLIKNSNDF(アミノ酸配列104〜115;“AUG1-CLDK”)。ヒト14-3-3η残基104〜115のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとのコンジュゲートのためにN-末端システイン部分の付加、及び内部ジスフィルド結合の形成を回避するために内部システイン-112部分の置換により改変した。
【0172】
免疫原#2:KKLEKVKAYR-C(アミノ酸配列77〜86;“AUG2-KKLE”)。ヒト14-3-3η残基77〜86のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとのコンジュゲートのためにC末端システイン部分の付加により改変した。
【0173】
免疫原#3:C-KNSVVEASEAAYKEA(アミノ酸配列143〜157;“AUG3-CKNS”)。ヒト14-3-3η残基143〜157のセグメントに対応するペプチドは、キャリアとのコンジュゲートのためにN末端システイン部分の付加により改変した。
【0174】
免疫原#4:全長ヒト組換え14-3-3η、タンパク質アクセッション番号:NP 003396。
【0175】
免疫
雌BALB/cマウス4匹のグループを、最初に完全フロイントアジュバント中マウス当たり50ugの抗原(免疫原#1、#2、#3又は#4)を用いて、腹腔内注射により免疫した。続いて、不完全フロイントアジュバント中の抗原で、3週間の間隔をあけて、前記と同様に4回の追加免疫を投与した。血清力価(ELISAにより測定)が、免疫前血清サンプルの力価の10倍以上に上昇したら、各グループにおいて2匹の最高応答マウスに各々、100μlの滅菌PBS(pH7.4)中10μgの抗原で静脈内投与で追加免疫した。2回目の追加免疫後に採取した免疫マウスからの血清サンプルの力価測定を図1(免疫原#1:CLDK)、図2(免疫原#2:KKLE)、図3(免疫原#3:CKNS)及び図8(免疫原#4)に示す。
【0176】
融合方法
最後の追加免疫から3日後に、ドナーマウスを犠牲にした後、脾細胞を採取して、プールした。ハイブリドーマの1段階選択及びクローニングを実施した以外は、以前記載されている通りに、上記脾細胞とSP2/0 BALB/cミエローマ親細胞との融合を実施した。融合から11日後にクローンを採取し、96ウェル組織培養プレートのウェルにおいて、以下:1%ヒポキサンチン/チミジン、20%ウシ胎仔血清、2 mM GlutaMax I、1 mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシン、1%OPI及び0.6 ng/ml IL-6を含む200μlのD-MEM培地中に再懸濁させた。4日後、上清を、1 μg/ウェルの精製抗原でコーティングしたプレート上で抗体活性についてELISAによりスクリーニングした。
【0177】
増殖の遅いハイブリドーマクローンの再生方法
増殖が遅い、又は不健康にみえるハイブリドーマ細胞系は、一般に、以下を含む濃厚増殖培地の添加によりレスキューすることができた:1%ヒポキサンチン/チミジン、20%ウシ胎仔血清、2 mM GlutaMax I、1 mMピルビン酸ナトリウム、50μg/mlゲンタマイシン、1%OPI、20%馴化EL-4組織培養上清、及び0.6 ng/ml IL-6を含むD-MEM培地。EL-4はマウスの胸腺腫細胞系であり、これは、12-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール(PMA、Sigma製、カタログ番号P-8139)で刺激すると、細胞にインターロイキン2(IL-2)、B細胞分化因子(EL-BCDF-nak)、2種のB細胞増殖因子(BSF-p1及びEL-BCGF-swa)、及び別のリンホカイン(リンパ球の増殖及び分化を大幅に増強する)を分泌させる。以下の文献を参照されたい:G. Kohler及びC. Milstein, Preparation of monoclonal antibodies, Nature 25 (1975) 256-259;Ma, M., S. Wu, M. Howard及びA. Borkovec. 1984. Enhanced production of mouse hybridomas to picomoles of antigen using EL-4 conditioned media with an in vitro immunization protocol. In Vitro 20:739。
【0178】
30日の安定性試験後、組換え14-3-3ηを認識することができるIgGを分泌した、合計100個の生存クローンを取得した。追跡すべきリード(lead)クローンを同定するために、以下を含む一連の方法を用いて、100個の生存クローンをスクリーニングした:イムノブロッティング(ドットブロット)、捕獲(trapping)アッセイ及び慣用的捕捉(サンドイッチ)ELISA。また、100個のクローンはすべて、別の6つの14-3-3アイソフォームと一緒に、慣用的捕捉(サンドイッチ)ELISAを用いて、交差反応性についても試験した。
【0179】
[実施例2]捕捉ELISAにおいてビオチン化14-3-3アイソフォームをベイト(bait)として用いた、ハイブリドーマクローンからの組織培養(TC)上清の交差反応性の試験
本発明者らは、作出したハイブリドーマクローンのいずれかが、14-3-3η以外の6つのアイソフォームのいずれかと交差反応するか、又はこれを認識するか否かを決定するために、7つの14-3-3アイソフォームを「ベイト」として用いて、慣用的捕捉ELISAを実施した。表4に示す代表的データが証明するように、選択した4つのハイブリドーマクローン(AUG3-CKNS-2D5、AUG3-CKNS-7F8、AUG3-CKNS-7H8、AUG4-ETA-8F10)は、2つの連続希釈度で、14-3-3ηに結合し、これを認識するが、試験したこれより低い希釈度でも、他の14-3-3アイソフォームのいずれにも結合しないか、又はいずれとも交差反応しなかった。このデータは、これらのクローンが14-3-3ηに高度に特異的であることをはっきりと示している。対照的に、1クローンAUG3-CKNS-4F10は、他の3つの14-3-3アイソフォーム、主としてそれぞれ14-3-3γ、β及びζと結合又は交差反応する。以上を考え合わせると、これらのデータから、捕捉ELISAは、14-3-3ηアイソフォームに高度に特異的であるハイブリドーマクローンを同定するのに有効な方法であることがわかる。
【0180】
表4に示す慣用的捕捉ELISA実験を以下のように実施した。ELISAプレートに、100μL/ウェルの未希釈過剰増殖TC上清をコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。ビオチン標識14-3-3(7つのアイソフォームすべてに対応する)を1/500から1/16,000を超えるまで滴定した後、室温で1時間インキュベートした。プレートを、100μL/ウェルのPBS(pH 7.4)中の3%脱脂粉乳でブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。1/8,000ストレプトアビジン-HRPOをPBS-Tweenで希釈して、100μL/ウェルで添加した後、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。TMBバッファーをウェル当たり50μLで添加した後、室温の暗所でインキュベートした。10分後ウェル当たり50μLの1M HClで反応を停止してから、OD450nmで読み取った。
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
[実施例3]市販の抗14-3-3ηポリクローナル抗体の交差反応性
14-3-3ηのN末端からの12アミノ酸のペプチド(Ac-DREQLLQRARLA-NH2)エピトープに対して生起された市販の抗14-3-3ウサギポリクローナル抗体(Biomol International LP, Cat. SA476-0100)を用いて、抗体の特異性を評価した。簡単に説明すると、1μgのヒト組換え14-3-3η、γ、σ、α/β、ε、θ又はζをSDS-PAGEで分離させ、抗14-3-3η抗体を用いて検出した。
【0183】
本発明の抗体を用いて得られた結果とは顕著に異なり、図4に示す結果は、この市販の14-3-3ηに対する抗体が、他の14-3-3アイソフォーム、主にγと交差反応することを示している。レーン1:分子量標準;レーン2:組換え14-3-3η;レーン3:組換え14-3-3γ;レーン4:組換え14-3-3σ;レーン5:組換え14-3-3α/β;レーン6:組換え14-3-3ε;レーン7:組換え14-3-3θ;レーン8:組換え14-3-3ζ。
【0184】
[実施例4]ヒト組換え14-3-3η、及びHeLa細胞由来の内因性14-3-3ηの免疫沈降
実施例1からのモノクローナル抗14-3-3抗体を、それらが、組換え及び内因性細胞14-3-3ηの両方を免疫沈降させる、すなわち「捕捉する」能力について試験した。本明細書に記載する本発明の治療方法の場合、天然の立体配置の14-3-3ηを免疫沈降させるか、又はこれを認識する能力を有する抗体を用いるのが好ましい。抗14-3-3ηハイブリドーマクローンからの培養上清を、100 ngのヒト組換え14-3-3ηを含むバッファー、又は溶解HeLa細胞由来の上清(200μgタンパク質)を含むバッファーのいずれかと一緒に、4℃で2時間インキュベートした。標準的方法により、プロテインA/Gアガロースを用いて、免疫沈降物を回収した。免疫沈降物をSDS-PAGE及びウエスタンブロッティングにより分析した。図6は、免疫原#4(全長組換え14-3-3η)を用いて作製したハイブリドーマクローン7B11を用いて得られたウエスタンブロットを示す。レーン1:プロテインA/Gアガロースビーズのみ;レーン2:プロテインA/Gアガロースビーズを細胞溶解物と混合した;レーン3:プロテインA/Gアガロースビーズを組換えヒト14-3-3ηと混合した;レーン4:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清と混合した;レーン5:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び細胞溶解物と混合した;レーン6:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び組換え14-3-3ηと混合した。データは、クローン7B11が、HeLa細胞由来の14-3-3η(レーン5)及びヒト組換え14-3-3η(レーン6)の両方を免疫沈降したことを示している。
【0185】
図7は、免疫原#3(CKNS)に対して作製したハイブリドーマクローン2D5を用いて得られたウエスタンブロットを示す。レーン1:プロテインA/Gアガロースビーズのみ;レーン2:プロテインA/Gアガロースビーズを細胞溶解物と混合した;レーン3:プロテインA/Gアガロースビーズを組換えヒト14-3-3ηと混合した;レーン4:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清と混合した;レーン5:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び細胞溶解物と混合した;レーン6:プロテインA/Gアガロースビーズをハイブリドーマ上清及び組換え14-3-3ηと混合した。データは、クローン2D5が、HeLa細胞溶解物由来の14-3-3η(レーン5)及びヒト組換え14-3-3η(レーン6)の両方を免疫沈降したことを示している。
【0186】
同様の分析を別のハイブリドーマクローン数個について実施した(データは示していない)。これらの実験は、実施例1で作出したモノクローナル抗体が、HeLa細胞溶解物由来のタンパク質の免疫沈降により証明されたように、天然の立体配置の14-3-3ηに結合して、これを免疫沈降する、すなわち「捕捉する」ことができることを明らかにしている。
【0187】
[実施例5]RAに罹患した患者の滑液及び血清における14-3-3発現
プールした患者の滑液(SF)及び血清(PS)サンプルにおける14-3-3タンパク質の様々なアイソフォームβ、γ、ε、η、τ、σ及びζのレベルを、角化細胞溶解物(K)を陽性対照として用いて、ウエスタン分析により分析した。η及びγアイソフォームのみがSFサンプルに検出され、これらはPSと比較して高い強度で染色されていた。活性滑膜炎を呈したが、抗TNF療法をまだ受けていない17人の RA患者からの関節滑液サンプルも、14-3-3のηアイソフォームの一貫した発現を呈示した(データは示していない)。患者はすべて疾患活動性スコア(DAS)が6.0以上であった。
【0188】
[実施例6]患者の滑液及び血清におけるMMP発現
上記の変化が、同じ滑液サンプル中のMMP-1及びMMP-3の変化と相関しているか否かを判定するために、合計12のRA滑液サンプルとそれらの対応する血清サンプルを14-3-3η及びγについて、またMMP-1及びMMP-3タンパク質についても同時に評価した。14-3-3ηは全サンプルに検出された。MMP-1は、SF及びPSの両方で全サンプルに検出されたが、MMP-3はこれより検出レベルの変化が大きかった。また、14-3-3γアイソフォームも患者の滑液及び血清サンプルに検出された(データは示していない)。
【0189】
MMP-1及びMMP-3の発現は、滑液及び血清の両方で14-3-3η及びγアイソフォームの発現と有意な相関を示している(表5)。
【表5】

【0190】
[実施例7]患者の血清及び滑液サンプルにおける14-3-3タンパク質のウエスタンブロット検出の感度
滑液及び血清サンプル中の14-3-3ηの検出レベルを決定するために、12人のRA罹患患者又は正常な被験体からのサンプルをプールし、プールしたサンプルの限界希釈をウエスタンブロットにより分析した。14-3-3ηは、ある程度の希釈度範囲にわたり(0.1μl有効量の滑液及び1.0μl有効量の血清という低いものまで)検出可能であった(データは示していない)。
【0191】
2μlのプールした正常な血清(NS)又は患者の血清(PS)を、0.05〜2.0μgの範囲の既知濃度の組換え14-3-3ηと一緒に泳動させた。2μl量のNS及びPSサンプルは、それぞれ約1〜1.5μg及び15〜20μgの14-3-3ηを含むと推定された(データは示していない)。これは、14-3-3ηのレベルが、正常な被験体と比較して、RA罹患患者の血清では約10倍以上多く存在することを示している。
【0192】
さらなる詳細、及び結果については、Kilaniら、J. Rhuematology, 34: 1650-1657, 2007を参照されたい。
【0193】
[実施例8]抗14-4-3抗体は、マウスRAモデルにおけるMMP発現を低減する
Williamsら、PNAS, 89:9784-9788, 1992に記載されているように、尾の付け根に、フロイント完全アジュバントに乳化させた100μgの精製済II型コラーゲンを注射することにより、オスDBAマウスにコラーゲン誘導性関節炎を誘導した。その後、マウスを毎日検査し、1若しくはそれ以上の足に紅斑及び/又は腫脹を示すマウスは、本明細書に記載する抗14-3-3η抗体による処置レジメン、又はプラセボ処置にランダムに割り当てた。これ以外にも、II型コラーゲンによる免疫の前日に、処置レジメンを開始する。マウス10匹のグループを用いて、以下のように様々な処置レジメンを実施する。
【0194】
(1)実施例1のハイブリドーマ上清から取得及び精製して、選択した抗14-3-3η抗体を0.10〜20 mg/kgの範囲の様々な投与量で、週2回、(a)腹腔内経路で、又は(b)滑膜内に投与した
(2)プラセボ処置
20日の処置期間にわたり関節炎をモニターし、以下に記載する疾患指数を評価する。
【0195】
臨床スコア
腫脹、紅斑、関節硬直、及び足腫脹についてマウスの肢を評価する。関節炎の臨床徴候は、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低減している。
【0196】
滑膜における14-3-3η、MMP-1及び/又はMMP-3発現
様々な時点で滑膜サンプルを採取し、14-3-3η、並びにMMP-1及び/又はMMP-3レベルを決定する。MMP-1及び MMP-3のレベルは、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低減している。
【0197】
組織病理学的評価
関節炎の足を固定し、パラフィンに埋め込み、切片にして、顕微鏡評価のために、ヘマトキシリン及びエオジンで染色する。各関節における関節炎の重症度を以下の基準に従って等級化した:軽度=最小限の滑膜炎、軟骨喪失、及び点在巣に限定される骨びらん;中度=滑膜炎及びびらんが存在するが、正常な関節構造(joint architecture)はインタクトである;重度=滑膜炎、広範なびらん、及び関節構造の破壊。組織病理学により検出した関節炎の重症度は、プラセボ対照と比較して、処置レジメンが有効であった動物において低下している。
【0198】
[実施例9]抗14-4-3抗体は、IL-1分泌細胞の移植により誘導されたウサギRAモデルにおけるMMP発現を低減する
本発明の抗14-4-3η抗体は、Yaoら、Arthritis Research and Therapy 2006, 8:R16(http://arthritis-research.com/content/8/1/R16にて、オンラインで入手可能)に記載されているように、ニュージーランド白ウサギの膝関節に5 x 105個のIL-1産生細胞を移植することにより関節炎を誘導したウサギモデルにおいて評価する。
【0199】
[実施例10]抗14-4-3抗体は、RAモデルにおいてMMP発現を低減する
ブラウンノルウェイ(Brown Norway)ラット又はニュージーランド(New Zealand)白ウサギにおいて、肢関節の滑膜に組換え14-3-3ηタンパク質を注射することにより、実験的関節炎を誘導する。試験及び評価は、実施例8に記載したのとほぼ同様に実施した。
【0200】
本発明の方法に有用な、関節リウマチ(コラーゲン誘導性関節炎、「CIA」)の他のモデル、及び実験設計は、例えば、以下の参照文献に見い出すことができる:Williams, Methods Mol Med. 2004;98:207-16. Collagen-induced arthritis as a model for rheumatoid arthritis;Brand, Com. Med., 55:114-122, 2005;Vierboomら、Drug Discovery Today, 12:327-335, 2007;Sakaguchiら、Curr. Opin. Immunol., 17:589-594, 2005。
【0201】
特定の動物モデルにおいて最初の処置レジメンを開始する前に、まず、14-3-3ηが関与する炎症性疾患モデルとして有効であるか、上記モデルを確認するのが好ましい。好ましくは、14-3-3ηと、MMP、好ましくはMMP-1及び/又はMMP-3のレベルを決定することにより、モデルにおける実験的関節炎の誘導後の評価を明らかにする。
【0202】
一般的方法
ウエスタンブロッティング
サンプル(滑液若しくは血清(各々2μl)、組換えヒト14-3-3η、細胞溶解物又は細胞溶解物沈降物)を、12〜15%(重量/体積)アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGE分析に付した後、PVDF膜上にエレクトロトランスファーした。膜上の非特異的タンパク質をPBS-0.1%Tween-20中の5%脱脂粉乳で一晩ブロッキングした。7種のアイソフォームに特異的なウサギ抗ヒト14-3-3ポリクローナル抗体2μg/mlを用いて、実施例3のイムノブロッティングを実施した(Martin H, Patel Y, Jones D, Howell S, Robinson K and Aitken A 1993. Antibodies against the major brain isoforms of 14-3-3 protein. An antibody specific for the N-acetylated amino-terminus of a protein. FEBS Letters. 331:296-303)。いくつかの実験(主に実施例7)では、実施例1のハイブリドーマクローン由来の抗体を免疫沈降すなわち「捕捉」実験に用いた。免疫沈降物をSDS-PAGEにより分離し、膜を脱脂粉乳中でブロッキングした後、一次14-3-3η(1:1,000、BioMol International SE-486)と一緒に、次いで、適切な二次セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG若しくは抗マウスIgG抗体(1:2,500希釈)と一緒にインキュベートした。次に、ECL及びウエスタンブロッティング検出装置を用いて、免疫反応性タンパク質を視覚化した。角化細胞溶解物(K)、組換えタンパク質及び/又はHeLa細胞溶解物を陽性対照として用いた。SF:滑液;PS:患者の血清。
【0203】
患者のサンプル
抗TNF療法の開始前に、活性滑膜炎患者の膝関節から滑液を採取した。患者はすべてDASスコア>6.0であった、標準的静脈穿刺方法により対応血液サンプルを採取した。血餅を遠心分離により除去した。
【0204】
組換え14-3-3η
Ghaharyら、2004 J Invest Dermatol 122:1188-1197 (参照文献36、前掲)に記載の方法に従い、角化細胞由来14-3-3ηのcDNAを、ヒト角化細胞から抽出した全RNAから作製し、クローニングして、大腸菌中で発現させた後、アフィニティー精製した。14-3-3ηcDNAのPCR増幅に用いたプライマーは、(GCGAATTCCTGCAGCGGGCGCGGCTGGCCGA)及び
(GCTCGAGCCTGAAGGATCTTCAGTTGCCTTC)とした。
【0205】
タグなし組換え14-3-3タンパク質
cDNAをヒト供給源から取得し、クローニングして、大腸菌中で発現させた後、アフィニティー精製した。14-3-3ηcDNAのPCR増幅に用いたプライマーは、(agaattcagttgccttctcctgctt)及び(acatatgggggaccggga)であり;14-3-3γについては(agaattcttaattgttgccttcgccg)及び(acatatggtggaccgcgagc)であり;14-3-3βについては(acatatgacaatggataaaagtgagctg)及び(agaattcttagttctctccctccccagc)であり;14-3-3εについては(acatatggatgatcgagaggatctg)及び(agaattctcactgattttcgtcttccac)であり;14-3-3σについては(acatatggagagagccagtctgatcc)及び(agaattcagctctggggctcctg)であり;14-3-3θについては(acatatggagaagactgagctgatcc)及び(agaattcttagttttcagccccttctgc)であり;14-3-3ζ(acatatggataaaaatgagctggttc)及び(agaattcttaattttcccctccttctcct)であった。
【0206】
ELISAアッセイ条件
スクリーニング及び試験:スクリーニング及び試験のために、1.0μg/ウェルの抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η抗原を、50μL/ウェルのdH2O中でELISAプレートにコーティングした。14-3-3η抗原について試験するため、炭酸塩コーティングバッファー中で0.25μg/ウェルをコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。
【0207】
抗体捕獲(trapping)アッセイによる試験:1/10,000ヤギ抗マウスIgG/IgM捕獲(trapping)抗体(Pierce カタログ番号31182)を炭酸塩コーティングバッファー中で100μL/ウェルでELISAプレートにコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。
【0208】
陰性対照抗体についての試験:0.5μg/ウェルのHT(ヒトトランスフェリン)抗原を、dH2O中で50μL/ウェルでELISAプレートにコーティングし、37℃で一晩乾燥させた。
【0209】
捕捉ELISAによる試験:ELISAプレートに、100μL/ウェルの純過剰増殖TC上清をコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。ビオチン標識14-3-3η(又は他の6種の14-3-3ファミリーメンバー)を1/500から1/16,000を超えるまで滴定した後、室温で1時間インキュベートした。
【0210】
ブロッキング:プレートを、100μL/ウェルのPBS(pH 7.4)中の3%脱脂粉乳でブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。
【0211】
一次抗体:スクリーニング及び試験のために、マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3ηハイブリドーマ組織培養物上清、及びマウスモノクローナル対照をウェル当たり100μLずつ添加した。マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η免疫血清、及びマウス免疫前血清を、SP2/0組織培養物上清中に1/500希釈して、スクリーニング及び試験のために100μL/ウェルで添加した。スクリーニング及び試験の両方のために、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。
【0212】
スクリーニング及び試験に用いる二次抗体:1/25,000ヤギ抗マウスIgG Fc HRPコンジュゲート(Jackson カタログ番号115-035-164)をスクリーニング及び試験に用いた。PBS-Tweenで希釈した二次抗体を100μL/ウェルで添加して、振盪しながら37℃で1時間インキュベートした。
【0213】
捕捉ELISAに用いるストレプトアビジン:100μL/ウェルのストレプトアビジンHRPO(1:8,000、CedarLane カタログ番号CLCSA1007)を添加し、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。
【0214】
基質:TMBバッファー(BioFx カタログ番号TMBW-1000-01)をウェル当たり50μL添加した後、暗所にて室温でインキュベートした。スクリーニング及び試験のための反応を10分後ウェル当たり50μLの1M HClで停止し、OD450nmで読み取った。
【0215】
ドットブロット条件
スクリーニング:Millipore、Immobilon Transfer Membrane カタログ番号IPVH304F0を用いた。14-3-3η抗原をサンプルバッファー中で5分沸騰させた後、冷却させた。抗原を、ピペットを用いて合計6μgのドット量でドットに固定した。抗原を15分かけて乾燥させた後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを数回交換しながら、ブロットを洗浄した。ブロットは、全スクリーニング工程中個別のペトリ皿に維持した。
【0216】
ブロッキング:PVDF膜を、PBS(pH 7.4)中の5%粉乳で、室温にて1時間ブロッキングした。ブロッキング後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを数回交換しながら15分かけてブロットを洗浄した。ブロットは、一次抗体をアプライする前に、ペーパータオル上で表を上にして10分かけて乾燥させた。
【0217】
一次抗体:マウスAUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3ηハイブリドーマ組織培養物上清、及びマウスモノクローナル対照を、個別のペトリ皿中でブロットと一緒にインキュベートした。マウス抗AUG1-CLDK、抗AUG2-KKLE、抗AUG3-CKNS又は抗14-3-3η免疫血清、及びマウス免疫前血清を、SP2/0組織培養物上清で1/500希釈して、対照として用いた。ブロットを振盪しながら室温で1時間インキュベートした。一次抗体のインキュベーション後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを5回交換しながら30分かけてブロットを洗浄した。
【0218】
二次抗体:PBS-Tween pH 7.4で希釈した1/5,000ヤギ抗マウスIgG/IgM、(H+L)のアルカリホスファターゼコンジュゲート(Rockland 610-4502)をブロットに添加し、ペトリ皿において、振盪しながら室温で1時間インキュベートした。二次抗体のインキュベーション後、PBS-Tween pH 7.4を用い、これを5回交換しながら30分かけてブロットを洗浄した。Tris 0.1M pH 9バッファー中で、室温にて10分かけてブロットを平衡させた後、基質を添加する前に滴下乾燥させた。
【0219】
基質:BCIP/NBT発色剤1の成分AP膜基質(BioFx製品番号BCID-1000-01)を室温でブロット上に滴下した。5分後に反応を常温の水道水で停止させた後、結果を肉眼で定量的に決定し、強陽性+++、中陽性++、弱陽性+、わずかに陽性+/-、陰性-のスコアを付与した。
【0220】
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すべての参照文献は、その全文を参照として本明細書に明示的に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然の立体配置のヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合することができ、かつ他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較してヒト14-3-3ηタンパク質に対する選択性を示す、抗14-3-3η抗体。
【請求項2】
ヒト14-3-3ηタンパク質のN末端に位置するエピトープに結合するものではない、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項3】
14-3-3ηループペプチド、14-3-3ηヘリックスペプチド、及び14-3-3η非ヘリックスペプチドからなる群より選択されるηペプチドを含むエピトープに結合することができる、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項4】
配列番号11〜16からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む14-3-3ηループペプチドを含むエピトープに結合することができる、請求項3に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項5】
配列番号1〜10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む14-3-3ηヘリックスペプチドを含むエピトープに結合することができる、請求項3に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項6】
配列番号17〜32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む14-3-3η非ヘリックスペプチドを含むエピトープに結合することができる、請求項3に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項7】
LDKFLIKNSNDF(配列番号30)を含むエピトープに結合することができる、請求項4に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項8】
KKLEKVKAYR(配列番号31)を含むエピトープに結合することができる、請求項4に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項9】
KNSVVEASEAAYKEA(配列番号32)を含むエピトープに結合することができる、請求項4に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項10】
ヒト14-3-3α、β、δ、ε、γ、τ及びζタンパク質と比較してヒト14-3-3ηタンパク質に対する選択性を示す、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項11】
14-3-3ηタンパク質を含む生体液から14-3-3ηタンパク質を免疫沈降させることができる、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項12】
ELISAにおいて使用した場合に、ヒト14-3-3ηタンパク質を含む生体液を該ELISAに供した際に、該生体液中のヒト14-3-3ηタンパク質に特異的に結合することができる、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項13】
生体液が、関節炎を有する患者に由来する滑液、血漿又は血清のサンプルを含む、請求項11又は12に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項14】
14-3-3ηによるMMPの誘導を阻害することができ、該MMPがMMP-1、MMP-3、MMP-8、MMP-9、MMP-10、MMP-11及びMMP-13からなる群より選択される、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項15】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項16】
ヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項17】
天然の立体配置のヒト14-3-3ηタンパク質との結合について請求項2又は3に記載の抗体と競合し、かつ他のヒト14-3-3タンパク質アイソフォームと比較してヒト14-3-3ηタンパク質に対する選択性を示す、抗14-3-3η抗体。
【請求項18】
14-3-3ηループペプチド、14-3-3ηヘリックスペプチド、及び14-3-3η非ヘリックスペプチドからなる群より選択されるペプチドで哺乳動物を免疫するステップを含む、請求項1に記載の抗14-3-3η抗体の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の抗14-3-3η抗体を使用して、患者由来の滑液、血漿又は血清を含むサンプル中の14-3-3ηタンパク質を検出するステップを含む、関節炎の診断方法。
【請求項20】
患者由来の滑液、血漿又は血清を含むサンプル中の14-3-3ηタンパク質を検出して関節炎を診断するための、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体の使用。
【請求項21】
請求項1に記載の抗14-3-3η抗体、及び請求項19に記載の方法を実施するための説明書を含む、関節炎の診断用キット。
【請求項22】
関節炎の治療方法であって、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体の治療有効量を、治療の必要のある患者に投与することを含む方法。
【請求項23】
患者における関節炎を治療するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体の使用。
【請求項24】
患者における関節炎の治療用医薬を製剤化するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体の使用。
【請求項25】
患者における関節炎の治療に使用するための請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体。
【請求項26】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗14-3-3η抗体を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−504876(P2011−504876A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534331(P2010−534331)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002094
【国際公開番号】WO2009/067811
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(300066874)ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア (24)
【Fターム(参考)】