説明

2−オキサゾリジノン化合物の製造方法

【課題】2−オキサゾリジノン化合物を高純度でかつ高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】環状カーボネートと、N−アルキルモノアルカノールアミンとを、触媒の存在下で反応させることを有する、2−オキサゾリジノン化合物の製造方法。特に、アルキレングリコール以外の副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生を抑えることができる触媒を使用し、このような触媒の存在下でN−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−オキサゾリジノン化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、N−アルキルジアルカノールアミンの副生成を抑制・防止して、2−オキサゾリジノン化合物を好ましくは高純度で製造できる方法に関する。
【0002】
本発明の2−オキサゾリジノン化合物は、高純度であるため、リチウム二次電池電解液の溶媒、電解コンデンサ電解液の溶媒、インクの溶媒などに有用である。
【背景技術】
【0003】
2−オキサゾリジノン化合物は、高分子材料、有機合成反応用の試薬、医薬、農薬、化粧料、キラル補助剤等の原料もしくは中間体等として有用である。従来、2−オキサゾリジノン化合物の製造方法としては、アミノアルコールと環状カーボネートとを反応させる方法(例えば、特許文献1参照)などが報告されている。しかしながら、上記方法で得られる反応生成物は、副生グリコールに加えて、未反応アミノアルコールや副生ジヒドロキシアミンなどの不純物を含む。これらの不純物は、精密蒸留などで分別する必要があるが、このような方法によっても高純度の2−オキサゾリジノン化合物を得ることは非常に困難であった。このため、上記方法で得られた2−オキサゾリジノン化合物は、高純度を必要とするものには使用できなかった。
【0004】
上記問題を克服することを目的として、アミノアルコールと環状カーボネートとの反応生成物を陽イオン交換樹脂と接触させる方法(例えば、特許文献2参照);アミノアルコールと環状カーボネートとの反応生成物を塩基吸着能および/またはカチオン交換能を有する無機固体酸と接触させる方法(例えば、特許文献3参照);およびアミノアルコールと環状カーボネートとの反応物を150℃以下の温度で減圧下にアルキレングリコールを還流および/または留去しながら環化させる方法(例えば、特許文献4参照)が報告されている。
【特許文献1】特開昭59−222481号公報
【特許文献2】特開昭60−97967号公報
【特許文献3】特開昭60−152476号公報
【特許文献4】特開昭61−7262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2〜4に記載の方法では、アミノアルコールと環状カーボネートとの反応により、グリコール、未反応アミノアルコール、ジヒドロキシアミン(N−アルキルジアルカノールアミン)が生じ、これらの不純物を除去する(所望の生成物を精製する)ことを目的としている。また、これらのアミノアルコールを環状カーボネートと反応させた際のアルキレングリコール以外の副生成物、特にN−アルキルジアルカノールアミンは、目的生成物である2−オキサゾリジノン化合物の沸点との差が小さいため、蒸留による分離が困難である。このため、上記特許文献2〜4の方法によると、収率を重視すると純度が低くなる、あるいは純度を重視すると収率が低くなる、などの問題がある。また、上記特許文献2〜4に記載される方法では、十分な純度で2−オキサゾリジノン化合物が得られない。例えば、リチウム二次電池電解液の溶媒、電解コンデンサ電解液の溶媒、インクの溶媒などの分野では、より高純度の2−オキサゾリジノン化合物が強く望まれている。
【0006】
上述したように、高純度の2−オキサゾリジノン化合物を簡便な方法で高い収率で製造する方法は、依然として強く求められている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡便な方法でN−アルキルジアルカノールアミンの副生成を抑制・防止して2−オキサゾリジノン化合物を製造できる方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、アルキレングリコール以外の副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生を抑え、オキサゾリジノン類(2−オキサゾリジノン化合物)の蒸留による分離を容易にすることによって、簡便かつ高純度、高収率でオキサゾリジノン類(2−オキサゾリジノン化合物)を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題、即ち、蒸留時にアルキレングリコール以外の副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生の影響により高純度の2−オキサゾリジノン化合物を高収率で得られないという問題を解決すべく、鋭意研究を行なった。その結果、アルキレングリコール以外の副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生を抑えることができる触媒を使用し、このような触媒の存在下でN−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応を行なうことにより、上記目的が達成できることを見出した。さらに、上記反応後、反応液にpHが7以下になるように酸を添加した後、蒸留することにより;反応液を吸着剤と接触させた後、蒸留することにより;または上記反応後、反応液にpHが7以下になるように酸を添加し、吸着剤と接触させた後、蒸留することにより、より純度の高い2−オキサゾリジノン化合物を容易に得ることができることをも知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記目的は、環状カーボネートと、下記式(1):
【0011】
【化1】

【0012】
ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示されるN−アルキルモノアルカノールアミン(アミノアルコール)とを、触媒の存在下で反応させることを有する、下記式(2):
【0013】
【化2】

【0014】
ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示される2−オキサゾリジノン化合物の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的安価な原料を用いて、N−アルキルジアルカノールアミンの副生成を抑制・防止して、簡便な方法でかつ高い収率で2−オキサゾリジノン化合物を経済的に製造できる。また、本発明に係る反応後に精製工程を行なうことによって、2−オキサゾリジノン化合物をより高純度で得ることができる。したがって、本発明の方法によって製造される2−オキサゾリジノン化合物は、高純度が要求される分野、例えば、リチウム二次電池電解液の溶媒、電解コンデンサ電解液の溶媒、インクの溶媒などに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、環状カーボネートと、下記式(1):
【0017】
【化3】

【0018】
ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示されるN−アルキルモノアルカノールアミンとを、触媒の存在下で反応させることを有する、下記式(2):
【0019】
【化4】

【0020】
ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示される2−オキサゾリジノン化合物の製造方法を提供するものである。
【0021】
従来では、無触媒下でN−アルキルモノアルカノールアミン(アミノアルコール)を環状カーボネートと反応させた後、反応生成物を、陽イオン交換樹脂と接触させる、あるいは塩基吸着能および/またはカチオン交換能を有する無機固体酸と接触させる、ことによって、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンを除去していた。または、無触媒下でのN−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応物を150℃以下の温度で減圧下にアルキレングリコールを還流および/または留去しながら環化させて、高純度のオキサゾリジノンを製造していた。すなわち、従来では、N−アルキルモノアルカノールアミンを環状カーボネートとの反応を無触媒下で行っていた。
【0022】
これに対して、本発明は、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応を触媒の存在下で行なうことを特徴とする。この方法によると、反応後ではなく、反応時(中)の、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの生成を、抑制・防止できる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
本発明では、N−アルキルモノアルカノールアミンを環状カーボネートと触媒の存在下で反応させる。ここで原料として使用されるN−アルキルモノアルカノールアミンは、下記式(1):
【0025】
【化5】

【0026】
で示される化合物である。上記式(1)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わす。ここで、炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基である。これらのうち、Rは、メチル基、エチル基、n−ブチル基であることが好ましく、メチル基、n−ブチル基であることがより好ましい。
【0027】
また、上記式(1)中、RおよびRは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす。ここで、RおよびRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基である。これらのうち、RおよびRは、水素原子であることが好ましい。
【0028】
すなわち、上記式(1)のN−アルキルモノアルカノールアミンの具体例としては、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−イソブチルエタノールアミン、N−sec−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミンなどが挙げられる。本発明において、上記式(1)のN−アルキルモノアルカノールアミンは、1種類を単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよいが、1種類を単独で使用することが好ましい。
【0029】
本発明において、N−アルキルモノアルカノールアミンの量は、環状カーボネートと効率よく反応できる量であれば特に制限されない。具体的には、N−アルキルモノアルカノールアミンの量は、通常、環状カーボネートと化学量論的に等モルであるが、環状カーボネート 1モルに対して、好ましくは0.5〜1.3モル、より好ましくは0.8〜1.1モルである。このような量比で反応させると、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応は効率よく進行できる。
【0030】
また、本発明で原料として使用される環状カーボネートは、特に制限されず、公知の環状カーボネートが使用できる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、原料の入手し易さを考慮すると、エチレンカーボネートがより好ましく使用される。
【0031】
本発明では、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応は、触媒の存在下で行なわれる。このように、触媒の存在下で環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとを反応させると、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生を抑制・防止できる。本発明で使用できる触媒としては、上記したような副生成物の生成を抑制・防止できるものであれば特に制限されないが、塩基性物質、酸または塩基吸着剤、および陽イオンまたは陰イオン交換樹脂などが好ましく挙げられる。ここで、塩基性物質としては、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応の触媒として作用するものであれば特に制限されない。具体的には、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート等の金属アルコラート類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;リン酸三ナトリウム;モルホリン、4−メチルモルホリン、2,6−ジメチルモルホリン、4−エチルモルホリン、2−モルホリノエタノール等のモルホリン類;ピペラジン、1−メチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン(シス体、トランス体双方を含む)、2,6−ジメチルピペラジン、1−エチルピペラジン、2−(1−ピペラジニル)エタノール、1,4−ピペラジンジエタノール等のピペラジン類;イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等のジアザ−ビシクロ−アルケン類、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン(DABCO)などが挙げられる。
【0032】
また、酸または塩基吸着剤としては、キョーワード シリーズ(例えば、キョーワード 100、200、300、400、500、600、700、1000、2000)(協和化学工業社製);ミズカエース(酸性白土) シリーズ(例えば、ミズカエース ♯20、♯200、♯300、♯400)(水澤化学工業製);ガレオンアース(活性白土:酸性白土を改質したもの) シリーズ(例えば、ガレオンアース VR、V、V、NV、NS、NF−2)(水澤化学工業製);式:(SiO(Al(HO)[式中、p、q及びrは、それぞれ、SiO、Al、及びHOの質量比(p+q+r=100質量%)であり、q=1〜90質量%、r=1〜30質量%、p=100−q−rである]の化合物などが挙げられる。ここで、例えば、キョーワード 700(協和化学工業社製)は、酸化アルミニウム10.5質量%、酸化ケイ素60.2質量%の組成を有する。
【0033】
陽イオンまたは陰イオン交換樹脂としては、アンバーライト シリーズ(例えば、IR120B Na、IR124 Na、1006F H、2000CT Na、252 Na、FPC3500、IRC76、IRC748)(オルガノ製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライト シリーズ(例えば、アンバーライト IRA400J Cl、IRA400T Cl、IRA402J Cl、IRA402BL Cl、IRA404J Cl、IRA458RF Cl、IRA900J Cl、IRA904 Cl、IRA958 Cl、IRA410J Cl、IRA411 Cl、IRA910CT Cl、IRA478RF Cl、IRA67、IRA96SB、XT6050RF、XE583、IRA743)(オルガノ製)等の陰イオン交換樹脂;アンバーリスト シリーズ(例えば、アンバーリスト 15DRY、15JWET、16WET、31WET、35WET)(オルガノ製)等の触媒・非水溶液用イオン交換樹脂;ダイヤイオン シリーズ(三菱化学製)、例えば、ダイヤイオン SK1B、SK104、SK110、SK112(ゲル型)、UBK08、UBK10、UBK12(ゲル型均一粒径品)、PK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228(ポーラス型)、SK104H、SK1BH(触媒用ゲル型)、PK216H(触媒用ポーラス型)、RCP145H、RCP160M(触媒用ハイポーラス型)、UKB530、UKB535、UKB530K、UKB535K、UKB555(クロマト分離用均一粒径樹脂)等の強酸性陽イオン交換樹脂、WK40(アクリル系)、WK10、WK11、WK100(メタクリル系)等の弱酸性陽イオン交換樹脂、SA10A、SA12A、SA11A、NSA100、USB120(I型ゲル型)、PA306S、PA308、PA312、PA316、PA318L(I型ポーラス型)、HPA25(I型ハイポーラス型)、SA20A、SA21A(II型ゲル型)、PA408、PA412、PA418(II型ポーラス型)等の強塩基性陽イオン交換樹脂、WA10(アクリル系)、WA20、WA21J、WA30(スチレン系)等の弱塩基性陽イオン交換樹脂、SAF11AL、SAF12A、PAF308L(強塩基I型)、WA30C(スチレン系弱塩基)等の低臭・低溶出陰イオン交換樹脂などが挙げられる。
【0034】
上記触媒のうち、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、4−エチルモルホリン、1,4−ジメチルピペラジン、1−エチルイミダゾール、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン(DABCO)、キョーワード 500、700、2000(協和化学工業社製)、アンバーライト IRA904 Cl、IRA410J Cl(オルガノ製)、アンバーリスト 15DRY(オルガノ製)、ダイヤイオン SK1B、SA10A)(三菱化学製)が好ましく、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム、リン酸三ナトリウム、1,4−ジメチルピペラジン、1−エチルイミダゾール、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)、キョーワード 500、700(協和化学工業社製)、アンバーライト IRA904 Cl、IRA410J Cl(オルガノ製)、アンバーリスト 15DRY(オルガノ製)が最も好ましい。
【0035】
本発明において、触媒の量は、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応を有用に触媒できる量であれば特に制限されず、また、触媒の種類、反応温度、原料(N−アルキルモノアルカノールアミンや環状カーボネート)中の水分量などにより異なる。具体的には、触媒が塩基性物質である場合には、塩基性物質の量は、通常、環状カーボネート 1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.06モル、より好ましくは0.001〜0.04モルである。また、触媒が酸もしくは塩基吸着剤、または陽イオンもしくは陰イオン交換樹脂である場合には、当該触媒の量は、環状カーボネートに対して、好ましくは0.001〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%、さらにより好ましくは0.1〜5質量%である。このような量比であれば、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応を良好に触媒できる。ここで、触媒の量が下限を下回る場合には、上記反応中に、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンが多く生成して、後の精製工程(例えば、蒸留)に悪影響を及ぼす可能性がある。逆に、触媒の量が上限を超える場合には、添加に見合う効果が得られず、経済的に好ましくない可能性がある。
【0036】
また、触媒は、そのままの固体(例えば、固体塩基性物質)の形態で使用されてもあるいは予め適当な溶媒に溶解、分散、懸濁された後使用されてもよい。例えば、ナトリウムメチラート等、触媒が粉末状であり、扱いにくい場合には、触媒を予め適当な溶媒に溶解、分散、懸濁して溶液/分散液/懸濁液の形態で取り扱うと、所定量の触媒を容易に添加できるため、好ましい。ここで、触媒の溶媒における形態は、上記したように、溶解、分散、または懸濁のいずれの形態であってもよいが、取り扱いの容易さなどを考慮すると、溶液の形態であることが好ましい。この際使用される溶媒は、使用される触媒の種類によって異なるが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらのうち、溶解性を考慮すると、メタノールが好ましい。また、溶媒を使用する際の溶液/分散液/懸濁液中の触媒の濃度は、特に制限されず、添加量に応じて適宜選択される。溶媒を使用する際の溶液/分散液/懸濁液中の塩基性物質の濃度は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜50質量%である。
【0037】
本発明において、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応様式は、特に制限されない。例えば、上記反応は、回分式、連続式のいずれの方式で行なわれてもよい。また、原料であるN−アルキルモノアルカノールアミン及び環状カーボネート、ならびに触媒の添加順序もまた特に制限されない。具体的には、ア)触媒をN−アルキルモノアルカノールアミンに添加した後、これに環状カーボネートを添加する方法;イ)触媒を環状カーボネートに添加した後、これにN−アルキルモノアルカノールアミンを添加する方法;ウ)N−アルキルモノアルカノールアミンを触媒に添加した後、これに環状カーボネートを添加する方法;エ)環状カーボネートを触媒に添加した後、これにN−アルキルモノアルカノールアミンを添加する方法など、いずれの添加形態であってもよい。これらのうち、ア)、ウ)が好ましく、ア)がより好ましい。この際、添加方法は特に制限されず、一括して添加しても、または滴下などにより段階的にもしくは連続して添加してもいずれの形態であってもよい。ただし、環状カーボネートやN−アルキルモノアルカノールアミンを、滴下などにより段階的にもしくは連続して添加することが好ましい。これは、環状カーボネートやN−アルキルモノアルカノールアミンを一括して添加すると、反応熱により温度が急激に上昇し、副生成物が生成しやすくなる場合があるからである。
【0038】
また、副生成物の生成を抑制・防止するという観点からは、原料(環状カーボネート、N−アルキルモノアルカノールアミン)及び触媒を、25〜80℃、より好ましくは40〜70℃の温度で、混合(添加)し、その後、下記に詳述されるような反応温度に調節されることが好ましい。また、上述したように、反応熱により、混合/添加時には混合液(反応液)の温度は上昇傾向にあるが、この場合であっても、副生成物の生成を抑制・防止するという観点から、混合液(反応液)の温度は、100℃以下、より好ましくは50〜100℃に維持することが好ましい。このような温度範囲であれば、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの副生を抑制・防止できる。なお、本発明において、温度は、各工程中多少上下する。このため、本明細書中の温度は、±5℃程度の変動を含む。
【0039】
また、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応条件は、特に制限されないが、好ましくは、上記したような温度で原料(環状カーボネート、N−アルキルモノアルカノールアミン)及び触媒を混合・添加した後に、混合液(反応液)を必要であれば所定の温度になるように加熱/冷却して、反応を行なうことが好ましい。例えば、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応温度は、原料(環状カーボネート、N−アルキルモノアルカノールアミン)及び触媒が凝固せずに、反応が進行し、かつ副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの生成を抑制・防止する温度であれば特に制限されない。反応時間もまた、特に制限されず、原料や触媒の仕込み量や反応温度などにより適宜選択される。具体的には、反応は、好ましくは25〜140℃、より好ましくは60〜100℃の温度で、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは1〜5時間、行なわれる。上記反応温度が下限を下回る場合には、反応速度が遅くなり、効率よく反応が進行しない可能性がある。逆に、反応温度が上限を超える場合には、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンが生成しやすくなり、収率や純度が低下する可能性がある。また、反応は、常圧、減圧または加圧のいずれの圧力条件下で行なわれてもよいが、操作しやすさなどを考慮すると、常圧下で行なわれることが好ましい。また、N−アルキルモノアルカノールアミンと環状カーボネートとの反応は、原料や触媒に不活性な(反応に関与しない)溶媒中で行なわれてもよいが、経済的・工業的な観点からは、溶媒は別途使用しないことが好ましい。
【0040】
上述したように、環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとを触媒の存在下で反応させることによって、2−オキサゾリジノン化合物が製造される。ここで、反応の終了(2−オキサゾリジノン化合物や副生成物の生成)は、例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法によってモニターできる。また、本発明の方法によると、上記反応終了後の反応生成物は、副生成物、特に沸点差の小さい、すなわち、除去が困難であるN−アルキルジアルカノールアミンをほとんど含有しない。具体的には、当該粗2−オキサゾリジノン化合物中の、N−アルキルジアルカノールアミンの含有量は、通常、0.3GCarea%以下、より好ましくは0.0〜0.27GCarea%であり、アルキレングリコールの含有量は、通常、40GCarea%以下、より好ましくは20〜36GCarea%である。なお、上記副生成物のうち、アルキレングリコールは、精製工程、特に下記に記載されるような精製工程によって、反応物から容易に除去できる。ここで、上記副生成物(N−アルキルジアルカノールアミン、アルキレングリコール)の含有量は、下記実施例において記載されるガスクロマトグラフィーによって測定した値である。また、下記実施例の条件下でのガスクロマトグラフィーによるN−アルキルジアルカノールアミン及びアルキレングリコールの検出限界は、それぞれ、100ppm及び30ppmである。また、精製工程を経ずに本発明に係る反応直後の反応生成物(粗2−オキサゾリジノン化合物)の純度は、以下に限定されるものではないが、通常、60GCarea%以上であり、より好ましくは64〜80GCarea%である。
【0041】
本発明では、上記反応によって得られた反応生成物の純度をさらに向上させる、および/または上記反応時に使用された触媒を除去することを目的として、別途、精製工程を行なってもよい。精製工程を行なう場合の、精製工程は、特に制限されず、特開昭60−97967号公報、特開昭60−152476号公報、特開昭61−7262号公報等の、公知の精製方法が同様にしてあるいは適宜修飾されて使用できる。例えば、(a)環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物を、吸着剤と接触させた後、蒸留する;(b)環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物に、pHが7以下になるように酸を添加した後、蒸留する;(c)上記(a)及び(b)との組み合わせなどが好ましく使用される。なお、精製工程は、上記具体的な実施形態に限定されない。
【0042】
以下、上記好ましい実施形態(a)、(b)及び(c)について詳述する。
【0043】
上記実施形態(a)において、まず、反応生成物を、吸着剤と接触させる。これにより、上記反応中で使用された触媒(塩基性物質)が吸着・除去されるため、次工程の蒸留時の副反応が抑制される。ここで、使用される吸着剤は、特に制限されず、公知の吸着剤が使用できる。例えば、酸性白土、ガレオンアース(水沢化学工業社製)等の活性白土、ベントナイト、9SiO・Al・αHO(α=0〜2)、キョーワード 600(協和化学工業社製)、キョーワード 700(協和化学工業社製;酸化アルミニウム10.5質量%、酸化ケイ素60.2質量%)、等の、式:(SiO(Al(HO)[式中、p、q及びrは、それぞれ、SiO、Al、及びHOの質量比(p+q+r=100質量%)であり、q=1〜90質量%、r=1〜30質量%、p=100−q−rである]の化合物、トミックスAD−700(富田製薬(株)製)、トミックスAD−600(富田製薬(株)製)、陽イオン交換樹脂、珪藻土等の微紛珪酸などが挙げられる。これらのうち、キョーワード 700、酸性白土、活性白土が好ましく、より好ましくはキョーワード 700である。また、上記吸着剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。さらに、吸着剤の使用量は、触媒(塩基性物質)を十分吸着・除去できる量であれば特に制限されない。吸着剤の使用量は、触媒(塩基性物質)の添加量に対して、質量比で、好ましくは25〜60倍、より好ましくは30〜45倍の範囲である。
【0044】
反応生成物を吸着剤と接触する条件は、触媒(塩基性物質)を十分吸着・除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応生成物に、吸着剤を添加した後、25〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、0.1〜10時間、より好ましくは2〜5時間、反応生成物と吸着剤とを接触させることが好ましい。ここで、反応生成物と吸着剤との接触を向上させるために、混合物を攪拌などしてもよい。反応生成物と吸着剤とを接触させた後は、濾過、分液などにより吸着剤を分離・除去して、濾液について蒸留(例えば、減圧蒸留)を行なう。ここで、蒸留条件は、特に制限されず、目的物である2−オキサゾリジノン化合物の種類によって適宜選択されうる。例えば、蒸留時の圧力は、釜内の温度が200℃以下、より好ましくは100〜160℃になるように、選択される。釜内の温度が200℃を超えると、副反応が起こり、収率の低下を招く可能性がある。このような蒸留によって、目的物である2−オキサゾリジノン化合物は、反応液から容易に分離できる。
【0045】
上記実施形態(b)において、まず、反応生成物に、pHが7以下になるように酸を添加する。これにより、上記反応中で使用された触媒(塩基性物質)は、酸と塩を形成するため、次工程の蒸留時の副反応が抑制される。このため、反応液が酸性(所定のpH)になるように酸を加えることにより、目的物である2−オキサゾリジノン化合物を高い純度でかつ高い収率で得られる。ここで、使用される酸は、触媒(塩基性物質)と塩を形成できるものであれば特に制限されず、無機酸及び有機酸のいずれも使用できる。例えば、リン酸、ポリリン酸、硫酸、ホウ酸、塩酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、フェニル酢酸、無水酢酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸などが挙げられる。これらのうち、リン酸、硫酸が好ましく、リン酸がより好ましい。また、上記酸は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。さらに、酸の添加量は、反応生成物のpHが7以下になるような量であれば特に制限されない。好ましくは、反応生成物のpHが3〜7、より好ましくは4〜6になるように、酸を添加する。このようなpHになるように酸を添加すると、触媒が効率よく分離・除去でき、次工程の蒸留における副反応を十分抑制・防止でき、高い収率が達成できる。特に、pHが7を超えると、蒸留時に釜内で副反応が起こり、目的物である2−オキサゾリジノン化合物の収率が低下する可能性がある。
【0046】
酸の反応生成物への添加条件は、触媒(塩基性物質)と十分塩を形成できる条件であれば特に制限されない。具体的には、酸を反応生成物に添加した後、25〜100℃、より好ましくは40〜70℃で、0.1〜3時間、より好ましくは0.5〜2時間、反応生成物と酸とを接触させることが好ましい。反応生成物と酸とを十分接触させて塩を形成した後は、濾過、分液などにより塩を分離・除去してもよく、ついで蒸留(例えば、減圧蒸留)を行なう。ここで、蒸留条件は、特に制限されず、目的物である2−オキサゾリジノン化合物の種類によって適宜選択されうる。例えば、蒸留時の圧力は、釜内の温度が200℃以下、より好ましくは100〜160℃になるように、選択される。釜内の温度が200℃を超えると、副反応が起こり、収率の低下を招く可能性がある。このような蒸留によって、目的物である2−オキサゾリジノン化合物は、反応液から容易に分離できる。
【0047】
上述したように、環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応生成物をさらに精製することによって、2−オキサゾリジノン化合物中の、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンの含有量をさらに低減できる。具体的には、精製工程後の2−オキサゾリジノン化合物の純度は、99.0GCarea%以上であり、より好ましくは99.5〜100GCarea%である。また、精製工程後の2−オキサゾリジノン化合物中の、N−アルキルジアルカノールアミンの含有量は、通常、0.1GCarea%以下、より好ましくは0.0〜0.07GCarea%であり、アルキレングリコールの含有量は、通常、0.2GCarea%以下、より好ましくは0.0〜0.1GCarea%である。なお、上記副生成物(N−アルキルジアルカノールアミン、アルキレングリコール)の含有量は、下記実施例において記載したガスクロマトグラフィーによって測定した値である。また、下記実施例の条件下でのガスクロマトグラフィーによるN−アルキルジアルカノールアミン及びアルキレングリコールの検出限界は、それぞれ、100ppm及び30ppmである。
【0048】
上記実施形態(c)において、本工程は、上記実施形態(a)の後に実施形態(b)を行なう、即ち、環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物を、吸着剤と接触し、pHが7以下になるように酸を添加した後、蒸留する;あるいは上記実施形態(b)の後に実施形態(a)を行なう、即ち、環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物に、pHが7以下になるように酸を添加し、吸着剤と接触させた後、蒸留する、のいずれでもよいが、反応液からの目的物である2−オキサゾリジノン化合物の分離の容易さを考慮すると、上記実施形態(b)の後に実施形態(a)を行なうことが好ましい。また、実施形態(c)における、吸着剤との接触工程、酸の添加工程、および蒸留工程については、上記実施形態(a)及び(b)と同様の工程が適用できるため、これらの説明をここでは省略する。
【0049】
本発明の方法によると、2−オキサゾリジノン化合物を、簡便な方法で高い収率でかつ高純度で製造できる。特に、本発明の方法によって製造された2−オキサゾリジノン化合物は、副生成物、特に沸点差の小さいN−アルキルジアルカノールアミンをほとんど含まない。このため、本発明の方法によって製造された2−オキサゾリジノン化合物は、高分子材料、有機合成反応用の試薬、医薬、農薬、化粧料、キラル補助剤等の原料もしくは中間体として等に加えて、高い純度を必要とするリチウム二次電池電解液の溶媒、電解コンデンサ電解液の溶媒、インクの溶媒などに有用である。
【実施例】
【0050】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下において、特記しない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0051】
なお、副生成物である、アルキレングリコール及びN−アルキルジアルカノールアミンの量を、下記条件でガスクロマトグラフィーによって測定した。また、下記条件でのガスクロマトグラフィーによるアルキレングリコール及びN−アルキルジアルカノールアミンの検出限界は、それぞれ、30ppm及び100ppmである。なお、上記検出限界は、メタノールに、それぞれ、アルキレングリコール及びN−アルキルジアルカノールアミンを任意の濃度に調整し、これを下記ガスクロマトグラフ分析条件にて分析した、検出可能な最低濃度である。
【0052】
<アルキレングリコール及びN−アルキルジアルカノールアミンの量の測定方法>
・ガスクロマトグラフ分析条件
機種:GLサイエンス製 GC4000
カラム:バリアン製 CP−volamine(60m×0.32mm I.D.)
カラム温度:
3−メチル−2−オキサゾリジノン
150℃(3分間保持)→毎分20℃で昇温→270℃(11分間保持)
3−ブチル−2−オキサゾリジノン
230℃(3分間保持)→毎分20℃で昇温→270℃(20分間保持)
気化室温度:275℃
検出器温度:275℃
試料注入量:0.2μl
実施例1
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 751g(10モル)に、28%ナトリウムメチラート/メタノール溶液 16.3g(0.085モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 881g(10モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行なった。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンは検出されず、エチレングリコール以外の不純物の含量は0.1GCarea%以下であった。
【0053】
次に、上記反応で得られた反応液に、キョーワード 700(協和化学工業社製)を170g加え、80±5℃で2時間、反応液と接触させた後、キョーワード 700を濾過により分離した。ついで、反応液を減圧蒸留することによって、沸点130℃/20mmHgで、3−メチル−2−オキサゾリジノン 863g(8.5モル)が得られた。得られた3−メチル−2−オキサゾリジノンについて、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、3−メチル−2−オキサゾリジノンの純度は、99.95GCarea%であり、N−メチルジエタノールアミンは検出されなかった。
【0054】
実施例2
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 751g(10モル)に、28%ナトリウムメチラート/メタノール溶液 49.0g(0.25モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 881g(10モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行なった。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンは検出されず、エチレングリコール以外の不純物の含量は0.5GCarea%以下であった。
【0055】
次に、上記反応で得られた反応液に、リン酸を24.6g加え、50±5℃で2時間、反応液と接触させたところ、pHは6.8となった。ついで、減圧蒸留することによって、沸点130℃/20mmHgで、3−メチル−2−オキサゾリジノン 916g(9.1モル)が得られた。得られた3−メチル−2−オキサゾリジノンについて、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、3−メチル−2−オキサゾリジノンの純度は、99.67GCarea%であり、N−メチルジエタノールアミンは検出されなかった。
【0056】
実施例3
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−n−ブチルエタノールアミン 1172g(10モル)に、28%ナトリウムメチラート/メタノール溶液 61.6g(0.31モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 881g(10モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−n−ブチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−n−ブチルジエタノールアミンの含量は0.03GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.3GCarea%であった。
【0057】
次に、上記反応で得られた反応液に、リン酸を39.0g加え、50±5℃で2時間、反応液と接触させたところ、pHは5.1となった。ついで、キョーワード 700(協和化学工業社製)を61.6g加え、80±5℃で2時間、反応液と接触させた後、リン酸塩およびキョーワード700を濾過により分離・除去した。その後、濾液を減圧蒸留することによって、沸点130℃/4mmHgで、3−n−ブチル−2−オキサゾリジノン 1244g(8.7モル)が得られた。得られた3−n−ブチル−2−オキサゾリジノンについて、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、3−n−ブチル−2−オキサゾリジノンの純度は、99.85GCarea%であり、N−n−ブチルジエタノールアミンの含量は0.04GCarea%あった。
【0058】
実施例4
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、水酸化ナトリウム 0.8g(0.02モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンは検出されず、エチレングリコール以外の不純物の含量は0.7GCarea%であった。
【0059】
実施例5
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン 2.5g(0.02モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンは検出されず、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.4GCarea%であった。
【0060】
実施例6
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、キョーワード 500(協和化学工業社製)1.6g(1.8%)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.16GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.5GCarea%であった。
【0061】
実施例7
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、アンバーライト IRA904 Cl(オルガノ製)1.6g(1.8%)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.20GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は2.1GCarea%であった。
【0062】
実施例8
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、キョーワード 700(協和化学工業社製)1.6g(1.8%)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.23GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.5GCarea%であった。
【0063】
実施例9
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、アンバーライト IRA410J Cl(オルガノ製)1.6g(1.8%)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.24GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.8GCarea%であった。
【0064】
実施例10
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、1,4−ジメチルピペラジン 2.3g(0.02モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.25GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.9GCarea%であった。
【0065】
実施例11
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、1−エチルイミダゾール 1.9g(0.02モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.25GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は2.1GCarea%であった。
【0066】
実施例12
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、アンバーリスト 15DRY(オルガノ製)1.6g(1.8%)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないようにエチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.27GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は1.6GCarea%であった。
【0067】
実施例13
攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 75.1g(1.0モル)に、リン酸三ナトリウム 4.9g(0.03モル)を常温(25℃)で仕込み、これにエチレンカーボネート 88.1g(1.0モル)を滴下した。なお、上記滴下中、反応液の温度を、反応熱により80℃を超えないように、エチレンカーボネートの滴下を調整した。滴下終了後、80±5℃で1時間、N−メチルエタノールアミンとエチレンカーボネートとの反応を行った。上記反応終了後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.26GCarea%であり、エチレングリコール以外の不純物の含量は2.1GCarea%であった。
【0068】
比較例1
特開昭61−7262号公報に記載される方法に従って、下記実験を行なった。
【0069】
すなわち、攪拌機、温度計及び精留塔を備えたフラスコ中で、N−メチルエタノールアミン 751g(10モル)及びエチレンカーボネート 881g(10モル)を仕込んだ。この混合物を、90±10℃で3時間、反応させた。次に、減圧下、125±5℃で、エチレングリコールを留去した。留去後の反応液について、上記条件でガスクロマトグラフィーにより粗製3−メチル−2−オキサゾリジノン中の残存エチレングリコール含量を測定した結果、0.5GCarea%であることが分かった。上記反応液をさらに常温(25℃)まで冷却した。なお、この際の粗製3−メチル−2−オキサゾリジノン中のN−メチルジエタノールアミンの含量は1.3GCarea%であった。
【0070】
次に、上記反応で得られた粗製3−メチル−2−オキサゾリジノンに、硫酸を9.9g加え、50±5℃で2時間、反応液と接触させたところ、pHは3.6であった。ついで、反応液を減圧蒸留することによって、沸点130℃/20mmHgで、3−メチル−2−オキサゾリジノン 840g(8.3モル)が得られた。得られた3−メチル−2−オキサゾリジノンについて、上記条件でガスクロマトグラフィーにより分析した結果、3−メチル−2−オキサゾリジノンの純度は、99.15GCarea%であり、N−メチルジエタノールアミンの含量は0.32GCarea%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状カーボネートと、下記式(1):
【化1】

ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示されるN−アルキルモノアルカノールアミンとを、触媒の存在下で反応させることを有する、下記式(2):
【化2】

ただし、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表わし、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わす、
で示される2−オキサゾリジノン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記触媒は、塩基性物質、酸または塩基吸着剤、および陽イオンまたは陰イオン交換樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の2−オキサゾリジノン化合物の製造方法。
【請求項3】
(a)前記環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物を、吸着剤と接触した後、蒸留する、
(b)前記環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物に、前記反応物のpHが7以下になるように酸を添加した後、蒸留する、または
(c)前記環状カーボネートとN−アルキルモノアルカノールアミンとの反応で得られた反応生成物に、前記反応物のpHが7以下になるように酸を添加し、吸着剤と接触した後、蒸留する、
ことをさらに有する、請求項1または2に記載の2−オキサゾリジノン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−13399(P2010−13399A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175145(P2008−175145)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(390014856)日本乳化剤株式会社 (26)
【Fターム(参考)】