説明

2−デオキシグルコースの代謝速度の測定方法

【課題】 少量の非放射性2DGを用いて体内各組織でのグルコース代謝速度を見積もる方法を提供する。
【解決手段】 少量の2DGを用いてグルコース代謝速度を測定するために、非ヒト動物又は細胞培養液に2−デオキシグルコース(2DG)を投与し、一定時間後にニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の量を測定する。この測定に影響する内因性のグルコース代謝産物(G-6-P)を低濃度のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を用いて除去し、2DGの代謝物である2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)を高濃度のG6PDHにより処理する。NADPHの量は増幅してから測定してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法に関し、より詳細には、非放射性2DGを用いて体内組織又は細胞でのグルコース代謝速度を見積もる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満や糖尿病などの生活習慣病は大きな社会問題となっており、治療法や治療薬の開発が急務である。実験動物を用いて各臓器や組織におけるグルコース代謝速度を測定する技術は、肥満や糖尿病の原因解明だけでなく、新規薬物の抗糖尿病作用や代謝改善作用の効果判定に使用されている。
2−デオキシグルコース(2DG)は、グルコースと同様に細胞膜上のグルコース輸送体によって細胞内に取り込まれ、ヘキソキナーゼ(HK)によって2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)に代謝されるものの、それ以後は代謝されず、細胞内に蓄積する。それゆえ細胞内に蓄積した2DG-6-P量は、グルコース取り込み速度(代謝速度)の最も良い指標であるため、放射性化合物でラベルした2DGを用いた測定法が、体内各組織でのグルコース代謝速度を測定する方法として一般的に用いられている(非特許文献1)。
一方、非放射性2DGを用いて細胞内に蓄積する2DG-6-Pを、酵素を用いて選択的に定量する方法が考案されている(非特許文献2)。しかしこれまでに発表された方法は、主として神経細胞一個のグルコース代謝速度を測定するために開発されたため、グルコース代謝産物を多く含む骨格筋や脂肪組織のように、肥満や糖尿病の研究分野で一般的な組織でのグルコース代謝速度を測定することは困難であった。また多量の非放射性2DGを動物に投与してグルコース代謝速度を簡便に算出する方法も報告されたが(非特許文献3)、この方法はグルコース代謝自体への影響が懸念される。そのため非放射性2DGを用いた測定法は、その利便性にもかかわらずほとんど利用されていない。
【0003】
【非特許文献1】Sokoloff, LM, et al., J Neurochem 28: 897-916, 1977.
【非特許文献2】Akabayashi, A et al., Biomedical Research 10: 173-177, 1989.
【非特許文献3】Ueyama, A, et al., Biol Signals Recept 9: 267-274, 2000.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非放射性2DGを用いて体内組織や細胞でのグルコース代謝速度を見積もるためには、まず内因性のグルコース代謝産物(G6P)を2DGの測定に影響しない程度にまで予め代謝しておく必要があるが、従来そのための適当な方法は提案されていなかった。一方、グルコース代謝産物(G6P)の測定への影響を少なくするために大量の2DGを動物に投与すると(非特許文献3)、大量の2DGが動物体内のグルコース代謝を乱すという問題があった。
そこで本発明は、少量の非放射性2DGを用いて体内各組織又は細胞でのグルコース代謝速度を見積もる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、少量の2DGを用いてグルコース代謝速度を測定するために、その測定に影響する内因性のグルコース代謝産物(グルコース−6−リン酸(G-6-P))を低濃度のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を用いて除去し、2DGの代謝物である2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)を高濃度のG6PDHとニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)により処理して、生成する還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の量を測定することにより、従来の方法の問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。なお、このNADPHの量を増幅してから測定してもよい。
【0006】
即ち、本発明は、以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法である。
(1)2DGが投与された非ヒト動物から採取した組織又は2DGが投与された哺乳動物の培養細胞に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階(工程3)、
(2)更に、濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、更にアルカリで処理する段階(工程4)、及び
(3)(2)で産生されるNADPHの量を測定する段階(工程6)
【0007】
更に、本発明は、以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法である。
(1)非ヒト哺乳動物の静脈に2DGを投与する段階(工程1)、
(2)この哺乳動物から組織を採取し、採取した組織をホモジナイズし、熱処理を行って、その抽出液を回収する段階(工程2)、
(3)この抽出液に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階(工程3)、
(4)得られた被処理物に濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階(工程4)、
(5)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階(工程5)、及び
(6)DTNBの反応量を測定する段階(工程6)
【0008】
この方法は更に以下の段階を含んでもよい。
(7)前記非ヒト哺乳動物から血液を採取する段階、
(8)この血液に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、濃度が50〜300μMとなるようにNAD、濃度が1〜10u/mlとなるようにヘキソキナーゼ、及び濃度が各1〜3mMとなるようにATP及びMgClを加え、更に酸で処理する段階(工程3)、
(9)濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階(工程4)、
(10)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階(工程5)、及び
(11)DTNBの反応量を測定する段階(工程6)、及び
(12)得られた各DTNBの反応量から血液中の2DGの消失速度と組織中の2−デオキシグルコース−6−リン酸(2DG-6-P)量を算出し、グルコース代謝速度を算出する段階(工程6)
【0009】
更に、本発明は、以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法である。
(1)哺乳動物の細胞の培養液に2DGを加える段階(工程1)、
(2)更に、細胞抽出液に濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階(工程3)、
(3)更に、濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階(工程4)
(4)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階(工程5)、及び
(5)DTNBの反応量を測定する段階(工程6)
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法は、骨格筋や脂肪組織など、多量のグルコース代謝産物を含む臓器においても簡便に再現性良くグルコース代謝速度を測定できる。またこの方法は、培養細胞を用いても行うことができる。
本発明の方法は、少量の2DGしか用いないため、動物体内のグルコース代謝を乱すという問題を起こさない。一方、内因性のグルコース代謝産物(G-6-P)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD,
NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP, NADPH)を測定前に分解してしまうので、これらの物質が2DG-6-P量に比例して産生するNADPHの測定に影響することがない。
更に、本発明の方法は、試薬を被測定物に追加してゆく工程だけからなるので、1枚の96-又は384-ウエルプレートを用いてロボットを利用すれば自動化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
生体内において、グルコースは筋肉や脂肪組織でヘキソキナーゼやグルコキナーゼの作用によりグルコース-6-リン酸(G-6-P)になり、その後グリコーゲンシンターゼなどの作用により代謝される。糖尿病はインシュリンの欠乏によるこの糖代謝障害によるものである。
本発明の方法において、グルコースの代わりに2-デオキシグルコース(2DG)を投与して、2DGの代謝物である2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)の蓄積量を測定する。この2DG-6-Pの量を知るために、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を加えて、2DG-6-PとG6PDHの反応生成物であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の量を測定する。これにより、体内各組織又は細胞での2DGの代謝速度を知ることができ、これはグルコース代謝速度に相当するため、体内各組織又は細胞でのグルコース代謝速度を見積もることができる。
【0012】
本発明は、具体的には、以下の3種類の方法を含む。
(a)非ヒト動物に2DGを投与し、一定時間後に組織を採取し、組織抽出液中のG-6-Pを低濃度のG6PDHとNADで分解した後、高濃度のG6PDHとNADPを加え、産生されるNADPHの量を測定する。このNADPHの量は組織中の細胞内に蓄積した2DG-6-P量に相当する。
(b)(a)の方法において、更に、一定時間後に血液を採取し、ヘキソキナーゼと(a)の方法によって2DGの消失速度を測定、2DGの消失速度と2DG-6-P量とから、各組織におけるグルコース代謝速度を算出する。
(c)哺乳動物の細胞培養液に2DGを投与し、一定時間後に培養細胞を採取する。細胞抽出液中の2DG-6-P量を(a)と同様の方法で測定する。
【0013】
以下、本発明の2-デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法を順を追って説明する。
(1)工程1:まず、非ヒト動物に2DGを投与する。非ヒト動物としては、いかなる哺乳動物でもよいが、通常マウスやラットが用いられる。通常、2DGを静脈あるいは動脈に注入する。2DGの投与量は、動物体内のグルコース代謝を乱すことのない量であって本発明の測定に十分な量であればよく、マウスでは2〜10μmol、体重300gのラットで10〜30μmolが適量と考えられる。
また、培養細胞を用いてもよく、細胞は哺乳動物であれば、ヒトであっても非ヒトであってもよい。細胞培養液への2DGの投与量は、通常、0.5〜1.5mMが適量と考えられる。
【0014】
(2)工程2:2DGを投与して一定時間後の組織に蓄積した2DG-6-Pの量を測定するために、非ヒト動物の場合、組織を採取する。また、組織の2DG代謝速度を算出する場合には血液を採取する。採取した組織は、緩衝液を加えてホモジナイズし、熱処理を行い、遠心分離により抽出液を回収する。この熱処理の条件は蛋白質を変性させる条件であればよく、通常95℃、15分で行う。また、血液は遠心分離して血清又は血漿を採取し、これを熱処理して、再び遠心分離し、その上清を回収する。培養細胞の場合は、細胞を緩衝液にてホモゲナイズした後、熱処理して遠心分離し、その上清(抽出液)を回収する。
【0015】
(3)工程3:2DGが投与された組織又は培養細胞の抽出液に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)と低濃度のグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)を加える。
これらは、生体又は細胞に既に存在しているグルコースやグルコース代謝産物(G-6-P)を予め分解するために加えられる。NADは、生体又は細胞内に少量存在するが、最終濃度(即ち、反応時の濃度)が50〜300μM、好ましくは75〜200μMとなるように加えられる。また、G6PDHは、最終濃度が0.5〜1u/mlとなるように加えられる。更に、pHが7〜9となるように緩衝液、好ましくは5〜15mMのTris-HCl緩衝液を加えることが好ましい。
これらを加え、好ましくは5時間静置することにより、下式のようにニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が生成するので、これを酸で処理する。この際、pH3以下とすることが好ましい。酸としては、塩酸などが用いられ、その添加後の濃度は40〜100mNが適当である。酸で処理後は、アルカリで中和する。アルカリとしては、NaOHを用いることができ、その濃度は40mM〜100mMが適当である。
【化1】

【0016】
この一連の操作により、後段でNADPHを測定する際に、内因性のグルコース代謝産物(G-6-P)、NADPH及びNADHの影響を排除することができる。そのため、低濃度のNADPHの定量測定が可能になり、従って2DGの少量投与が可能になる。
また、ここで加えられるG6PDHは低濃度であるためグルコース代謝産物(G-6-P)の分解にのみ機能し、後段の2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)の分解には影響しない。これは、G-6-Pに比べてG6PDHに対する2DG-6-Pの親和性が低いことによる。
さらに、NADを用いることで、NADPを用いるよりも後段の2DG-6-Pを分解するG6PDHの反応性が高まり、より少量の2DG-6-Pを測定できる。NADPを用いることも可能であるが、少量の2DG-6-Pを測定するためにはNADが適当である。
G6PDHは、通常、NADPだけでなくNADにも反応し、活性が長時間安定であるLeuconostoc meseteroides由来の酵素を用いるが、NADに反応し、活性が長時間安定である他のG6PDHでもよい。
【0017】
(4)工程4:前段階で得られた被処理物に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)及び高濃度のG6PDHを加える。
生体又は細胞に2DGを投与すると、グルコースと同じグルコーストランスポーターによって細胞内にとりこまれ、2-デオキシグルコース-6-リン酸(2DG-6-P)となる。しかしその後は、細胞内の代謝酵素と反応しないために代謝されず細胞内に蓄積している。
【化2】

そこで、2DG-6-Pを分解するためにNADPと高濃度のG6PDHが加えられる。NADPは最終濃度(即ち、反応時の濃度)が5〜50μM、好ましくは5〜15μMとなるように加えられ、G6PDHは、最終濃度が30u/ml以上となるように加えられる。この上限は、特に限定はないが、60u/mlであれば十分である。G6PDHは、活性が長時間安定であるLeuconostoc
meseteroides由来の酵素が通常用いられる。更に、pHが7〜9となるように緩衝液、好ましくは5〜15mMのTris-HCl緩衝液を加えることが好ましい。その後30分以上静置することが好ましい。
【0018】
この操作により、下式のように、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)が生成する。このNADPHの量は、蓄積した2DG-6-Pの量に対応する。
NADPの代わりにNADを用いることも可能である。しかし、NADHの生成速度は遅いので反応時間を長くする必要がある。また、少量のNADH量を測定するためには、後述する(5)(iii)の酵素サイクリング別法などを用いる必要がある。
【化3】

なお、血液中の2DGの消失速度を測定するためには、ヘキソキナーゼ(HK)、ATP及びMgClを作用させて2DGを全量2DG−6−Pに変換した後、同様に測定するが、この操作は前段階で行なわれる。用いるヘキソキナーゼの量は3〜10u/ml、ATP及びMgClの濃度はそれぞれ1〜3mMである。
残存するNADPはアルカリで分解する。pH11以上として50℃以上で処理することが好ましい。アルカリとしては、NaOHを用いることができ、その濃度は40mM〜100mMが適当である。
【0019】
(5)工程5:生成するNADPH(又はNADH)は、G-6-P、内因性のNADH及びNADPHが既に除去されているため、そのまま測定してもよいが、加えた2DGが少量であるため生成するNADPH(又はNADH)の量も少ないので増幅してから測定することが好ましい。
このNADPHの増幅方法としては、公知のいかなる方法を用いてもよいが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0020】
(i) 酵素サイクリング法(Anal Chem 99: 297-303, 1979.):
NADPHを含む溶液を、グルコース−6−リン酸(G-6-P)(反応時の濃度10mM以上)、グルタチオン還元酵素(GR)(反応時の濃度1〜10u/ml)、G6PDH(反応時の濃度20〜100u/ml)、グルタチオン(GSSG)
(反応時の濃度5〜20μM)、5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB) (反応時の濃度1〜5mM)を含む反応液により室温から37℃の温度で処理することにより、反応の増幅と発色を同時に行うことができる。5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)のみ使用直前に混合する。混合比率は特に制限しないが、反応時の濃度が1〜5mMになるようにする。G6PDHは、通常活性が長時間安定に保たれ、陰イオンなどの阻害を受けにくいLeuconostoc
meseteroides由来の酵素が用いられる。
【0021】
この反応を下式に示すが、DTNBの反応量は生成する5-メルカプト-2-ニトロ安息香酸の420nmにおける吸光度により測定することができる。このDTNBの反応量(即ち、この吸光度)は、NADPH量及び2DG-6-Pの量に対応する。
【化4】

【0022】
(ii) 酵素サイクリング別法(Anal Chem 128: 186-190, 1983.):
NADPHを含む溶液にG6PDH、GDH(グルタミン酸脱水素酵素)、NH4+(アンモニウムイオン)、α-ケトグルタル酸(α-keto-glutarate)、G-6-Pを加え、下式の反応に基づいて、NADPHの量に応じて6-P-グルコナート(6-P-gluconate)が多量に生成する反応を利用する。生成した6-P-グルコナート量は、6-P-グルコナート脱水素酵素によって再びNADPHに変換し、340nmの吸光度を測定してその生成量を知ることができる。
【化5】

【0023】
(iii) 酵素サイクリング別法(Anal Chem 53: 86-97, 1973.):
化学式3(化3)の反応において、NADPの代わりにNADを用い、生成される微量なNADHを測定する場合に用いる方法である。NADHを含む溶液にADH(アルコール脱水素酵素)、エタノール、オキザロ酢酸(oxaloacetate)、MDH(リンゴ酸脱水素酵素)を加え、下式の反応に基づいて、NADの量に応じてリンゴ酸(malate)が多量に生成される反応を利用する。生成したリンゴ酸は、MDHによってNADHに再び変換し、340nmの吸光度を測定してその生成量を知ることができる。NADHに再変換する反応を促進するため、GOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)、グルタミン酸を加える。
【化6】

【0024】
(iv) 酵素サイクリング別法(Nature 193: 454-456, 1962.):
NADPHを含む溶液にG6PDH、ADH(アルコール脱水素酵素)、glucose-6-P(G-6-P)、PMS(酸化型メチルフェナゼニウムメチル硫酸)、DCPI(ジクロロフェノールインドフェノール)を加え、下式の反応に基づいて、NADPHの量に応じてleucoDCPIが多量に生成される反応を利用する。DCPIは600nmで吸光度をもつので、600nmの吸光度の低下からleucoDCPの産生量を知ることができる。また、PMSの代わりにエチルフェナジニウムエチル硫酸を用いる変法、DCPIの代わりにチアゾリルブルーを用いる変法もある。
【化7】

【0025】
これらの方法の中で、(ii)の方法が、微量のNADPHの定量法として最も一般的であるが、(ii)及び(iii)は酵素サイクリングによる増幅反応と発色反応を別々に行わねばならず、しかも、少量のNADPH、NADHを測定するためには長時間の反応を必要とする。また、(iv)の方法は、増殖反応と発色反応を同時に行うことが出来るが、反応速度が時間によって変化するなど、安定していない。一方、(i)の方法は、酵素サイクリングとDTNBによる発色反応が同時にできるので、反応時間が大幅に短縮され、全ての反応を一枚の96-ウエルプレートで行うことができ、反応も安定している。このため(i)の方法が本発明の増幅方法として好ましい。
【0026】
(6)工程6:(5)で挙げた方法などを用いてNADPH(又はNADH)の量を測定する。NADPH、NADHの量を測定にはいかなる方法を用いてもよい。この量を測定することにより、2DG-6-Pの蓄積量を知ることができ、この2DG-6-P蓄積量の変化は2DGの代謝速度の指標となる。得られた2DGの代謝速度は、グルコースの代謝速度の推定値として用いられる。
また、2DG-6-Pの蓄積量と血液中の2DG量からSokoloffの式(数1)に基づいてグルコース代謝速度定数(Ki, min-1)を算出してもよい。組織に蓄積される2DG-6-Pは血液中の2DG量及び血中グルコース濃度に依存するので、2DG投与量、血中グルコース濃度、循環血液量に左右されないグルコース代謝速度定数(Ki)を算出することが望ましい。グルコース代謝速度定数を測定するためには、Sokoloffの式にあるように、血液中の2DG消失速度(Kp)を算出する必要がある。一方、血液中の2DG消失速度は、全身のグルコースの利用速度に依存して変化するが、同時に循環血液量、心拍出量の影響も受けるので、全身のグルコース利用速度の指標として用いることはできない。
【数1】

【0027】
以上説明した方法に用いた溶液を2DGの代謝速度の測定用キットとすることもできる。そのキットは、下記の5種の溶液から成る。
(1)溶液1:G6PDH及びNADを含む緩衝液であって、NADの含量がG6PDH1unitあたり50〜600nmolである緩衝液
この溶液1は、上記工程3で用いられる。反応時のG6PDHの濃度が低いことが特徴であり、この混合比率により、反応時にG6PDHを低濃度とすることができる。
(2)溶液2:ヘキソキナーゼ(HK)、ATP及びMgClを含む緩衝液であって、ATPの含量がHK1unitあたり0.3μmol以上、MgClの含量がHK1unitあたり0.1〜0.5μmolである緩衝液
この溶液2は、上記工程3で、血液中の2DGの消失速度を測定するために用いられ、溶液1に添加して用いられる。
(3)溶液3:G6PDH及びNADPを含む緩衝液であって、NADPの含量がG6PDH1unitあたり0.1〜0.5nmolである緩衝液
この溶液3は、上記工程4で用いられる。反応時のG6PDHの濃度が高いことが特徴であり、この混合比率により、反応時にG6PDHを高濃度とすることができる。
(4)溶液4:G6PDH、グリコール−6−リン酸、グルタチオン及びグルタチオン還元酵素を含む緩衝液であって、グリコール−6−リン酸の含量がG6PDH1unitあたり0.2μmol以上、グルタチオンの含量がG6PDH1unitあたり0.2〜0.5nmol、グルタチオン還元酵素の含量がG6PDH1unitあたり0.03unit以上である緩衝液
(5)溶液5:5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む緩衝液
この溶液4と溶液5は、上記工程5((i) 酵素サイクリング法)で用いられ、使用直前に混合される。
なおここで用いられる緩衝液としては、pH7〜9の緩衝液、特にTris-HCl緩衝液が好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例の測定に於ては、下記組成の溶液を用いた。
1.反応混合液A1 (組織用):10mM Tris-HCl (pH8.1), 0.03% ウシ血清アルブミン(BSA), 195μM NAD(オリエンタル酵母),
1.3mM EDTA, 1.1unit/ml G6PDH(Leuconostoc meseteroides由来酵素、オリエンタル酵母)
2.反応混合液A2 (血液用):10mM Tris-HCl (pH8.1), 0.03% ウシ血清アルブミン(BSA), 195μM NAD,
1.1unit/ml G6PDH(Leuconostoc meseteroides由来酵素、オリエンタル酵母), 7.5unit/ml ヘキソキナーゼ(シグマ),
2.6mM ATP, 1.3mM MgCl2
3.反応混合液B:10mM Tris-HCl (pH8.1), 200μM NADP(ロッシュアプライドサイエンス), 40mM EDTA,
860unit/ml G6PDH
4.増幅・発色液(溶液Cと溶液Dを容積比7:2の割合で使用直前に混合する。)
(1)溶液C: 10mM Tris-HCl (pH8.1), 29mM G-6-P(オリエンタル酵母), 2.9mM還元型グルタチオン(GSH)(シグマ),
2.9mM EDTA, 124.7unit/ml G6PDH(Leuconostoc meseteroides由来酵素、オリエンタル酵母)(反応時の濃度43unit/ml),
8.7unit/ml グルタチオン還元酵素(GR)(オリエンタル酵母)(反応時の濃度3unit/ml)
(2)溶液D: 10mM Tris-HCl (pH8.1), 20mM 5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)(シグマ)
【0029】
試験例1
本試験例では、2DGを投与していないマウスの血液と骨格筋の溶解液にそれぞれ一定濃度の2DG(シグマ社)又は2DG-6-Pを添加し、増幅・発色液を作用させた後、420nmにおける吸光度を測定し、2DG-6-Pと2DGについて各々検量線を作成した。このようにして作成した検量線を図1に示す。
【0030】
実施例1
マウスの頚静脈にシリコンカテーテルを留置し、体重が回復した後、無麻酔、非拘束の状態でカテーテルから5μmolの2DG(シグマ社)(生理食塩水100μl)を投与した。
20分後、カテーテルよりネンブタールを投与してマウスを安楽死させ、各組織を採取し、これら組織を-80℃で保存した。組織の重量(〜10mg)に対して、500μlのトリス塩酸緩衝液(10mM
Tris-HCl、pH8.1)を加え、ホモゲナイズし(POLYTRON PT 1200)、95℃で15分間熱処理を行った。その後、14,000rpm、4℃で15分間遠心し、上清を集め、-80℃で保存した。
上記で得た上清から、以下の手順で2DG-6-P量の測定を行った。
1.各組織から得た上記上清を10mMトリス塩酸(Tris-HCl)緩衝液で希釈する(ヒラメ筋, 長指伸筋: x2-4倍;腓腹筋: x2倍;脂肪組織: x2倍;脳:
x8倍;心臓: x8倍)。
2.各試料 20μlを96-ウエルプレートに入れる。
3.これに反応混合液A1を65μl加え、室温で一晩静置する。反応混合液A1を加えた後(即ち、反応時)のG6PDHの濃度は0.86unit/ml、NADの濃度は150μMであった。
4.これに1N HCl 5μlを加え、38℃で15分間静置する。
5.これに1N NaOH/50mM Tris-HCl (pH8.1)を5μl加え、中和する。
6.これに反応混合液Bを5μl加え、38℃で1時間静置する。反応混合液Bを加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、NADPの濃度は10μMであった。
7.これに1.5N NaOHを5μl加え、70℃で1時間静置する。
8.これに1.5N HCl/50mM Tris-HCl (pH8.1) 5μlを加え、中和する。
9.これに増幅・発色液を90μl加える。増幅・発色液を加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、グルタチオン還元酵素の濃度3unit/ml、DTNBの濃度2mMであった。
10.マイクロプレートリーダーを用いて30℃にて420nmの吸光度を測定する。
11.試験例1で作成した検量線から組織2DG-6-P量を算出する。
結果を表1に示す。
【表1】

【0031】
実施例2
実施例1のマウスを屠殺する前に、同カテーテルより、DG投与後3分、6分、10分、15分、20分毎に血液(20μl)を採取した。得られた血液を3000rpm、4℃で15分間遠心し、血清を採取し、この血清を緩衝液で30倍に希釈
(10mM Tris-HCl、PH8.1)し、95℃で15分間静置した。その後、14,000rpm、4℃で15分間遠心し、上清を試料とし、分注して-80℃で保存した。
得られた試料から以下の手順で2DGの量を測定した。
1.試料5μlを96-ウエルプレートに入れる。
2.これに緩衝液(10mM Tris-HCl、pH8.1)15μlを加える。
3.これに反応混合液A2を65μl加え、室温で一晩静置する。反応混合液A2を加えた後のG6PDHの濃度は0.86unit/ml、NADの濃度は150μM、ヘキソキナーゼの濃度は5.8unit/mlであった。
4.これに1N HCl 5μlを加え、38℃で15分間静置する。
5.これに1N NaOH / 50mM Tris-HCl (PH 8.1) 5μlを加え、中和する。
6.これに反応混合液Bを5μl加え、38℃で1時間静置する。反応混合液Bを加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、NADPの濃度は10μMであった。
7.これに1.5N NaOH 5μlを加え、70℃で1時間静置する。
8.これに1.5N HCl / 50mM Tris-HCl (pH 8.1) 5μlを加え、中和する。
9.これに増幅・発色液を90μl加える。増幅・発色液を加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、グルタチオン還元酵素の濃度3unit/ml、DTNBの濃度2mMであった。
10.マイクロプレートリーダーを用いて30℃にて420nmの吸光度を測定する。
11.試験例1で作成した検量線から血液2DG量を算出する。
【0032】
結果を表2及び図2に示す。
【表2】

血液中2DGは時間とともに指数関数的に減少した。血糖値に比べて血液中2DG濃度は、30分の1以下であり、2DGを投与しても血糖値には全く影響しなかった。その結果、2DGの消失速度(Fractional
turn over rate, Kp x 100)は6.8±1.5 %であった。
【0033】
実施例1と2で得られた組織2DG-6-P量と血液中2DG量からSokoloffの式に基づいてグルコース代謝速度定数(Ki)を算出した。結果を表3及び図3に示す。
【表3】

本測定法で算出した各組織のグルコース代謝速度定数(Ki)は、2[3H]DGを用いた方法(比較例1)とほぼ同じ値であった。
【0034】
実施例3
マウスの頚静脈にシリコンカテーテルを留置し、体重が回復した後、無麻酔、非拘束の状態でカテーテルからインスリン(0.75unit/kg体重)を投与し、その15分後に5μmolの2DG(生理食塩水100μl)を投与した。血糖値を維持するために、インスリン投与後グルコース溶液を頚静脈カテーテルより投与した。同カテーテルより、3分、6分、10分、15分、20分後に血液(20μl)を採取した。また、最後の血液を採取した後、直ちにカテーテルよりネンブタールを投与してマウスを安楽死させて組織を採取し、組織を-80℃で保存した。
実施例1と2と同様に血液中の2DGと組織中の2DG-6-P量の測定を行い、グルコース代謝速度定数(Ki)を算出した。結果を表4及び表5に示す。
【表4】

【表5】

骨格筋、脂肪組織、心臓などいわゆるインスリン感受性組織においてグルコース代謝速度定数が亢進した(表5)。既に報告されているように、大脳皮質のグルコース代謝速度定数は変化しなかった。骨格筋などインスリン感受性組織でのグルコースの利用亢進に伴い、血液中2DG量の減少も促進した(表4)。2DGの消失速度(Fractional
turnover rate, Kp x 100)は7.5±0.4 %であった。
【0035】
比較例1
本比較例では、放射性物質でラベルした2DGを用いてグルコース代謝速度を測定した。
静脈カテーテルから2-[3H]DGと[14C]スクロースの混合液を投与した(マウス一匹あたり2-[3H]DG
5μCi, [14C]スクロース 1μCi)。続いて3分、6分、10分、15分、20分後に血液(20μl)を採取した。最後の血液を採取した後、直ちにカテーテルよりネンブタール麻酔薬を投与してマウスを安楽死させ、組織を採取する。各時点での血液中の3H、14C放射活性と、組織の3H、14C放射活性を液体シンチレーションカウンターによって測定した。組織の放射活性は有機塩基で溶解したものを測定した。この細胞内に取り込まれた2-[3H]DG
(dpm/mg組織)と、各時点における血液の3H放射活性からSokoloffの式に基づいて、グルコースの代謝速度(定数Ki)を算出した。結果を表6及び図3に示す。
【表6】

【0036】
実施例4
3T3-L1培養細胞を6-wellの培養ディッシュにおいてダルベッコーモディファイドエーグルメディウム(DMEM)(グルコース20mMを含む)と10%ウシ胎児血清で培養し、コンフルエントになった後、デキサメサゾンとイソブチルメチルキサンチンを2日間作用させ、その後、インスリン(0.1μM)を添加して脂肪細胞に分化させた。
インスリンを添加して培養1週間後、ウシ胎児血清に含まれる生理活性物質の影響を除くため、ウシ胎児血清を含まないDMEM(グルコース20mM)に交換して4時間培養した。その後、さらにPBS(phosphate-buffered
saline)で細胞を洗い、続いてインスリン(0.1μM)と5mMのグルコースを含むPBSで37℃、15分後間培養した。15分後、この培養液に2DG(1mM)を添加して、さらに15分間培養した。15分後、PBSで細胞を洗った後、細胞を回収し、500μlの10mM
Tris-HCl緩衝液(pH 8.1)で細胞溶解液を作成した。これを95℃で15分間熱処理を行った後、14,000rpm、4℃で15分間遠心し、上清を集め、-80℃で保存した。
上記で得た上清を試料として、以下の手順で2DG-6-P量の測定を行った。
1.各試料 20μlを96-ウエルプレートに入れる。
3.これに反応混合液A1を65μl加え、室温で一晩静置する。反応混合液A1を加えた後(即ち、反応時)のG6PDHの濃度は0.86unit/ml、NADの濃度は150μMであった。
4.これに1N HCl 5μlを加え、38℃で15分間静置する。
5.これに1N NaOH/50mM Tris-HCl (pH8.1)を5μl加え、中和する。
6.これに反応混合液Bを5μl加え、38℃で1時間静置する。反応混合液Bを加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、NADPの濃度は10μMであった。
7.これに1.5N NaOHを5μl加え、70℃で1時間静置する。
8.これに1.5N HCl/50mM Tris-HCl (pH8.1) 5μlを加え、中和する。
9.これに増幅・発色液を90μl加える。増幅・発色液を加えた後のG6PDHの濃度は43unit/ml、グルタチオン還元酵素の濃度3unit/ml、DTNBの濃度2mMであった。
10.マイクロプレートリーダーを用いて30℃にて420nmの吸光度を測定する。
11.試験例1と同様に2DGを添加していない培養細胞の溶解液に一定量の2DG-6-Pを添加して検量線を作成し、細胞内2DG-6-P量を算出する。
結果を表7に示す。インスリンにより培養脂肪細胞における2DG-6-Pの量が増加した。これは2DGの代謝速度が上がったことを示す。
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】血液中の2DG量の検量線(左図)と組織中の2DG-6-P量の検量線(右図)を示す図である。
【図2】経過時間に対する血液中の2DG量と血糖値を示す図である。経過時間は、マウスの静脈に2DGを投与した後の時間を示す。
【図3】各組織におけるグルコース代謝速度定数(Ki)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法。
(1)2DGが投与された非ヒト動物から採取した組織又は2DGが投与された哺乳動物の培養細胞に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階、
(2)更に、濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階、及び
(3)(2)で産生されたNADPHの量を測定する段階
【請求項2】
以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法。
(1)非ヒト哺乳動物の静脈に2DGを投与する段階、
(2)この哺乳動物から組織を採取し、採取した組織をホモジナイズし、熱処理を行って、その抽出液を回収する段階、
(3)この抽出液に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階、
(4)得られた被処理物に濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階、
(5)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階、及び
(6)DTNBの反応量を測定する段階
【請求項3】
更に以下の段階を含む、請求項2に記載の2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法。
(7)前記非ヒト哺乳動物から血液を採取する段階、
(8)この血液に、濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、及び濃度が1〜10u/mlとなるようにヘキソキナーゼ、濃度が各1〜3mMとなるようにATP及びMgClを加え、更に酸で処理する段階、
(9)濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階、
(10)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階、及び
(11)DTNBの反応量を測定する段階、及び
(12)得られた各DTNBの反応量から血液中の2DGの消失速度と組織中の2−デオキシグルコース−6−リン酸(2DG-6-P)量を算出し、グルコース代謝速度を算出する段階
【請求項4】
以下の段階から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定方法。
(1)哺乳動物の細胞の培養液に2DGを加える段階、
(2)更に、細胞抽出液に濃度が0.5〜1u/mlとなるようにG6PDH、及び濃度が50〜300μMとなるようにNADを加え、更に酸で処理する段階、
(3)更に、濃度が30u/ml以上となるようにG6PDH、及び濃度が5〜50μMとなるようにNADPを加え、さらにアルカリで処理する段階
(4)更に、グリコール−6−リン酸、グルタチオン還元酵素、G6PDH、グルタチオン、及び5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む混合液を加える段階、及び
(5)DTNBの反応量を測定する段階
【請求項5】
下記の5種の溶液から成る2−デオキシグルコース(2DG)の代謝速度の測定用キット。
(1)G6PDH及びNADを含む緩衝液であって、NADの含量がG6PDH1unitあたり50〜600nmolである緩衝液
(2)ヘキソキナーゼ(HK)、ATP及びMgClを含む緩衝液であって、ATPの含量がHK1unitあたり0.3μmol以上、MgClの含量がHK1unitあたり0.1〜0.5μmolである緩衝液
(3)G6PDH及びNADPを含む緩衝液であって、NADPの含量がG6PDH1unitあたり0.1〜0.5nmolである緩衝液
(4)G6PDH、グリコール−6−リン酸、グルタチオン及びグルタチオン還元酵素を含む緩衝液であって、グリコール−6−リン酸の含量がG6PDH1unitあたり0.2μmol以上、グルタチオンの含量がG6PDH1unitあたり0.2〜0.5nmol、グルタチオン還元酵素の含量がG6PDH1unitあたり0.03unit以上である緩衝液
(5)5,5−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含む緩衝液

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−187966(P2008−187966A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26616(P2007−26616)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年2月15日、16日 生理学研究所 技術課、基礎生物学研究所 技術課主催の「第29回 生理学技術研究会」「第18回 生物学技術研究会」に文書をもって発表
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】