説明

2−置換テトラヒドロピラノールの製造法

本発明は、3−メチルブト−3−エン−1−オール(イソプレノール)を相応するアルデヒドと強酸性の陽イオン交換体の存在で反応させることによって、2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロプラノールを製造する方法に関する。特に、本発明は、イソプレノールをイソバレルアルデヒドと反応させることによって、2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための相応する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−メチルブト−3−エン−1−オール(イソプレノール)を相応するアルデヒドと強酸性の陽イオン交換体の存在で反応させることによって、2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラノールを製造する方法に関する。特に、本発明は、イソプレノールをイソバレルアルデヒドと反応させることによって、2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための相応する方法に関する。
【0002】
Tetrahedron Letters No.51,第4507〜4508頁,1970には、3−アルケン−1−オールとアルデヒドとの反応および芳香族化学品ローゼンオキシドまたはジヒドロローゼンオキシドを製造するための前記3−アルケン−1−オールの使用が記載されている。この場合には、酸性条件下での3−メチルブタナールとイソプレノールとの反応も述べられている。
【0003】
Chemistry of Heterocyclic Compounds,第1107〜1109頁,1990には、イソプレノールを種々のアルデヒドおよびケトンで、シリカゲルまたはAl23の存在で溶剤不含の条件下で相応するジヒドロピランおよびテトラヒドロピランに縮合することが記載されている。この場合、ピラノールは、Al23を使用する際に僅かな規模でのみ得られる。
【0004】
ソビエト連邦特許第825528号明細書には、2−メチル−ブテン−1−オール−4(イソプレノール)をアルデヒドまたはケトンと、酸性触媒の存在で反応させることによって、ジヒドロピランまたはテトラヒドロピランおよびテトラヒドロピラノールを製造する方法が開示されており、この場合酸性触媒は、イソプレノールの量に対して0.0001〜0.01質量%の量で使用され、および反応は、0〜25℃の温度で有機溶剤中で実施される。触媒としては、イオン交換体樹脂KU−2(スルホン化ポリスチレン樹脂)、パラ−トルエンスルホン酸、硫酸、燐酸または過塩素酸が挙げられる。例示的には、特にイソプレノールをイソブチルアルデヒドと、KU−2の存在で反応させることが記載されている。
【0005】
欧州特許出願公開第1493737号明細書A1には、エチレン系不飽和4−メチルピランまたは4−メチレンピランと相応する4−ヒドロキシピランとの混合物を、相応するアルデヒドとイソプレノールとの反応によって製造する方法が開示されており、その際この反応は、反応系中で、アルデヒドとイソプレノールとのモル比が1より大きい、即ちアルデヒドが過剰量で使用されることにより、開始される。更に、刊行物には、望ましいエチレン系不飽和ピランへの記載された混合物の引続く脱水素が開示されている。第1の反応工程に適した触媒として、鉱酸、例えば塩酸または硫酸が挙げられるが、しかし、好ましくは、メタンスルホン酸またはパラートルエンスルホン酸が挙げられる。
【0006】
欧州特許出願公開第1516879号明細書A1には、エチレン系不飽和4−メチルピランまたは4−メチレンピランを、相応するアルデヒドとイソプレノールとを脱水素化条件下で反応させることによって製造するための方法が開示されており、この場合反応器中の水量は、0.25質量%までであり、一方、不足量で使用される出発化合物の変換率は、50%未満である。このために適した触媒として、同様に鉱酸、例えば塩酸または硫酸が挙げられるが、しかし、好ましくは、メタンスルホン酸またはパラートルエンスルホン酸が挙げられる。
【0007】
特開2007−154069号公報は、70〜95質量%のシス−ジアステレオマーを含有する2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラノールに関する。更に、この刊行物には、イソプレノールを相応するアルデヒドと、酸性触媒の水溶液の存在で反応させることによって、同じ2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラノールを製造する方法が開示されている。この場合、この反応は、1〜10質量%の範囲内の触媒水溶液の濃度においては0〜100℃の温度で実施されなければならないし、10質量%またはそれを上廻る範囲内の触媒水溶液の濃度においては0〜30℃の温度で実施されなければならない。可能な酸性触媒としては、一般的にイオン交換体樹脂も挙げられる。
【0008】
公知技術水準から出発して、本発明の課題は、望ましい化合物をできるだけ
良好に使用可能な安価な反応体から出発して、
良好に使用可能な安価な試薬を使用して、
処理技術的に好ましい方法で、
工業的規模で、
高い収率で、
高いジアステレオマー過剰量で、
望ましくない、廃棄すべき副生成物の形成をできるだけ僅かにして、
できるだけ好ましい匂い特性を有するように、得ることができる、2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラノール、特に2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法を提供することであった。
【0009】
この課題は、意外なことに、本発明によれば、
式(II)
【化1】

で示される3−メチルブト−3−エン−1−オールと式(III)
1−CHO (III)
〔式中、基R1は、式(I)と同じ意味を有する〕で示されるアルデヒドとの反応を含み、その際、この反応は、水の存在および強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される、式(I)
【化2】

〔式中、基
1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、全部で3〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換されたシクロアルキル基または全部で6〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換および/またはアルコキシ置換されたアリール基を表わす〕で示される2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法を提供することによって解決された。
【0010】
本発明による方法を実施するための出発物質として、公知方法によりイソブテンおよびホルムアルデヒドからそれぞれの規模で良好に入手可能で商業的に良好に使用可能である、式(II)
【化3】

で示される3−メチルブト−3−エン−1−オール(イソプレノール)が使用される。
【0011】
本発明により使用すべきイソプレノールの純度、品質または製造方法については、特殊な要件は、課されていない。このイソプレノールは、商業的に有効な品質および純度で良好な成果を収めて本発明による方法の範囲内で出発物質として使用されうる。好ましくは、90質量%またはそれ以上の純度を有するイソプレノール、特に有利に95〜100質量%の純度を有するイソプレノール、殊に有利に97〜99.9質量%またはさらに有利に98〜99.8質量%の純度を有するイソプレノールが使用される。
【0012】
本発明による方法を実施するための他の出発物質として、式(III)
1−CHO (III)
〔式中、基R1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、全部で3〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換されたシクロアルキル基または全部で6〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換および/またはアルコキシ置換されたアリール基を表わすことができる〕で示されるアルデヒドが使用される。この場合、アルケニル基の概念とは、単結合と共に、なお1個またはそれ以上、有利に1〜3個、特に有利に1または2個、殊に有利に1個のエチレン系二重結合を有する、係る炭化水素基であると理解すべきである。
【0013】
アルキル置換基とは、有利に1〜6個の炭素原子を有する係るもの、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、第三ブチル、n−ペンチルまたはn−ヘキシル、有利にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチルであると理解すべきである。
【0014】
アルコキシ置換基とは、有利に1〜6個の炭素原子、特に有利に1〜3個の炭素原子を有する係るもの、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシであると理解すべきである。
【0015】
式(III)の本発明により好ましいアルデヒドは、基R1が1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、または全部で6〜12個の炭素原子を有する場合によりアルキル置換および/またはアルコキシ置換されたアリール基を表わす係るものである。式(III)の本発明により特に好ましいアルデヒドは、基R1が1〜12個の炭素原子または有利に1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、または全部で6個の炭素原子を有するアリール基、即ちフェニルを表わす係るものである。式(III)の殊に好ましいアルデヒドは、基R1が1〜12個の炭素原子、殊に有利に1〜6個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基を表わす係るものである。従って、基R1の本発明により好ましい意味は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、有利にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、特に有利にイソブチルである。それに応じて、本発明により有利に使用すべき、式(III)のアルデヒドとして、次のものが挙げられる:アセトアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、ベンズアルデヒド、シトラール、シトロネラール。従って、本発明により殊に有利に使用すべき、式(III)のアルデヒドは、イソバレルアルデヒドおよびベンズアルデヒド、殊にイソバレルアルデヒドである。
【0016】
従って、本発明は、好ましい実施態様の範囲内で、式(II)の3−メチルブト−3−エン−1−オールと式(IIIa)
【化4】

で示されるイソバレルアルデヒドとの反応を含み、その際この反応は、水の存在および強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される、式(Ia)
【化5】

で示される2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法に関する。
【0017】
本発明は、さらに同様に好ましい実施態様の範囲内で、式(II)の3−メチルブト−3−エン−1−オールとベンズアルデヒドとの反応を含み、その際この反応は、水の存在および強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される、式(Ia’)
【化6】

で示される2−フェニル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法に関する。
【0018】
本発明による方法の範囲内で使用すべき出発物質のイソプレノールおよび式(III)のそれぞれ選択されたアルデヒドは、異なる量比で互いに反応されてよい。即ち、2つの出発物質の中の1つを過剰量で使用することは、可能であり、この場合選択される過剰量の高さは、処理技術的および経済的に好ましい範囲内で変動するが、しかし、とにかく原理的に自由に選択することができる。イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの本発明による反応の化学量論に続いて、イソプレノールと式(III)のアルデヒド、有利にイソバレルアルデヒドは、出発物質の2倍のモル過剰量に相当する、1:2〜2:1の範囲内のモル比で使用される。1つの好ましい実施態様の範囲内で、本発明による方法は、イソプレノールと式(III)のアルデヒドとを0.7:1〜2:1のモル比で使用するようにして実施される。特に有利には、本発明による方法は、イソプレノールと式(III)のアルデヒドとを1:1〜2:1のモル比で使用するようにして実施される。特に有利には、本発明による方法は、イソプレノールと式(III)のアルデヒドとを1:1〜1.5:1のモル比で使用するようにして実施される。
【0019】
式(I)の2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するため、有利に式(Ia)の2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための本発明による方法の範囲内で実施すべき、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒド、有利にイソバレルアルデヒドとの反応は、水の存在で実施される。これは、反応混合物にイソプレノール、式(III)のアルデヒドおよび選択された強酸性の陽イオン交換体と共に水も添加されることを意味する。付加的に反応混合物は、望ましくない副反応として発生するかもしれない、式(I)の望ましい処理生成物の脱水素によって遊離しうる、微少量の水をなお含有することができる。
【0020】
通常、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの反応は、例えば少なくとも10モル%の水の存在で実施され、その際水の量は、場合により不足量で使用される出発物質のイソプレノールまたは式(III)のアルデヒドの量に関連するか、または2つの出発物質の等モル量の反応の場合には、2つの出発物質の中の一方の物質量に関連する。
【0021】
水の量は、記載された値を上廻って自由に選択されることができ、そして、あったとしても、処理技術的または経済的な視点によってのみ制限されており、完全に十分に大過剰量で、例えば10〜100倍の過剰量で使用されてよいし、それ以上に使用されてもよい。特に、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒド、特にイソバレルアルデヒドとからの混合物が選択された量の水と一緒に準備され、したがって添加された水は、イソプレノールと選択されたアルデヒドとからの混合物中に溶解して残留し、即ち二相系は、全く存在しない。
【0022】
通常、本発明による方法の範囲内で、出発物質のイソプレノールおよび式(III)の選択されたアルデヒドは、少なくとも25モル%、有利に少なくとも50モル%、さらに有利に少なくとも75モル%、さらにいっそう有利に90〜約1000モル%の水の存在で反応され、その際水の量は、場合により不足量で使用される出発物質のイソプレノールまたは式(III)のアルデヒドの量に関連するか、または2つの出発物質の等モル量の反応の場合には、2つの出発物質の中の一方の物質量に関する。
【0023】
好ましい実施態様の範囲内で、本発明により実施すべき反応は、少なくとも等モル量の水の存在で実施され、その際水の量は、場合により不足量で使用される出発物質のイソプレノールまたは式(III)のアルデヒドの量に関連するか、または2つの出発物質の等モル量の反応の場合には、2つの出発物質の中の一方の物質量に関する。それ故に、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの本発明による反応は、有利に100〜250モル%、特に有利に100〜230モル%、さらに有利に100〜200モル%の水の存在で、および多くの場合に有利に100〜180モル%の水の存在で実施され、その際水の量は、場合により不足量で使用される出発物質のイソプレノールまたは式(III)のアルデヒドの量に関連するか、または2つの出発物質の等モル量の反応の場合には、2つの出発物質の中の一方の物質量に関する。
【0024】
記載された出発物質、即ちイソプレノールおよびそれぞれ選択されたアルデヒドおよび前述の量で使用すべき水は、任意の順序で互いに接触されてよいし、または混合されてよい。通常、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとからの混合物は、選択された量の水と一緒に準備され、この混合物は、本発明により実施すべき反応の範囲内で使用される。
【0025】
式(I)の望ましい2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための本発明による方法の範囲内で実施すべき、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの反応は、強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される。この場合、強酸性の陽イオン交換体の概念とは、本発明の範囲内で、そのマトリックスがゲル状またはマクロ多孔質であってよい、強酸性の基、一般的にスルホン酸基を有する、H+形での係る陽イオン交換体であると理解すべきである。
【0026】
それに応じて、本発明による方法の1つの好ましい実施態様は、強酸性のスルホン酸基を有するかまたは含む陽イオン交換体が使用されることによって特徴付けられる。
【0027】
強酸性の陽イオン交換体は、殊にH(+)形のイオン交換体樹脂である。係るものとしては、例えば次のものがこれに該当する:
ポリスチレンをベースとし、かつスチレンとジビニルベンゼンとからのコポリマーをスルホン酸基を有するキャリヤーマトリックスとしてH(+)形で含有する、強酸性のイオン交換体(例えば、アンバーリストAmberlyst、アンバーライトAmberlite、ダウエックスDowex、レワタイトLewatit、プロライトPurolite、セルドライトSerdolit)、
スルホン酸基(−SO3H)で官能化されたイオン交換体樹脂。
【0028】
イオン交換体は、ポリマー骨格の構造において区別され、ゲル状樹脂とマクロ多孔質樹脂とは、区別される。強酸性のイオン交換体樹脂は、一般的に塩酸および/または硫酸で再生される。
【0029】
Nafion(登録商標)は、過弗素化されたポリマーのイオン交換体樹脂のためのDupont社の商標である。これは、フルオロカーボン基本鎖とスルホン酸基を含有する過弗素化側鎖とからなる、過弗素化されたイオン交換材料である。この樹脂は、過弗素化され、末位不飽和の、スルホニルフルオリドで官能化されたエトキシレートとペルフルオロエタンとの共重合によって製造される。Nafion(登録商標)は、ゲル状イオン交換体樹脂に含まれる。このような過弗素化された、ポリマーのイオン交換体樹脂の例としては、Nafion(登録商標)NR−50が挙げられる。
【0030】
本発明による方法の特に好ましい実施態様は、H(+)形の少なくとも1つの強酸性の陽イオン交換体が使用されることによって特徴付けられ、この場合このイオン交換体は、スルホン酸基を有するポリマー骨格を含有し、ゲル状であるか、またはマクロ多孔質の樹脂を含有する。
【0031】
本発明による方法の殊に好ましい実施態様は、イオン交換体がスルホン酸基を有するポリスチレン骨格をベースとするか、またはスルホン酸基を有する、過弗素化されたイオン交換体樹脂をベースとすることによって特徴付けられる。
【0032】
商業的に使用可能な強酸性の陽イオン交換体は、レワタイトLewatit(登録商標)(Lanxess社)、プロライトPurolite(登録商標)(The Purolite Company社)、ダウエックスDowex(登録商標)(Dow Chemical Company社)、アンバーライトAmberlite(登録商標)(Rohm and Haas Company社)、アンバーリストAmberlystTM(Rohm and Haas Company社)の商品名で公知である。
【0033】
本発明による好ましい強酸性の陽イオン交換体として、例えば次のものが挙げられる:レワタイトLewatit(登録商標)K 1221、レワタイトLewatit(登録商標)K 1461、レワタイトLewatit(登録商標)K 2431、レワタイトLewatit(登録商標)K 2620、レワタイトLewatit(登録商標)K 2621、レワタイトLewatit(登録商標)K 2629、レワタイトLewatit(登録商標)K 2649、アンバーライトAmberlite(登録商標)IR 120、アンバーリストAmberlystTM 131、アンバーリストAmberlystTM 15、アンバーリストAmberlystTM 31、アンバーリストAmberlystTM 35、アンバーリストAmberlystTM 36、アンバーリストAmberlystTM 39、アンバーリストAmberlystTM 46、アンバーリストAmberlystTM 70、プロライトPurolite(登録商標)SGC650、プロライトPurolite(登録商標)C100H、プロライトPurolite(登録商標)C150H、ダウエックスDowex(登録商標)50X8、セルドライトSerdolit(登録商標)レッドおよびナフィオンNafion(登録商標)NR−50。
【0034】
1つの好ましい実施態様の範囲内で、本発明により実施すべき、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの反応は、レワタイトLewatit(登録商標)K 1221、レワタイトLewatit(登録商標)K 2629、アンバーリストAmberlystTM 131、プロライトPurolite(登録商標)SGC650、プロライトPurolite(登録商標)C100H、プロライトPurolite(登録商標)C150H、アンバーライトAmberlite(登録商標)IR 120およびダウエックスDowex(登録商標)50X8を含む陽イオン交換体の群から選択された、少なくとも1つの強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される。
【0035】
本発明により殊に好ましい強酸性の陽イオン交換体は、アンバーリストAmberlystTM 131および/またはレワタイトLewatit(登録商標)K 1221の陽イオン交換体である。
【0036】
本発明により殊に好ましい強酸性の陽イオン交換体は、別記した陽イオン交換体と同様に商業的に使用可能であるアンバーリストAmberlystTM 131である。
【0037】
イソプレノールと式(III)のアルデヒドとの本発明による反応を実施するために、記載された出発物質および選択された量の水は、特に混合物の形で、選択された強酸性の陽イオン交換体と接触される。使用すべき陽イオン交換体の量は、重要ではなく、経済的および処理技術的な視点を考慮して幅広い範囲内で自由に選択されることができる。それに応じて、この反応は、触媒量の存在で、ならびに大過剰量の選択された強酸性の陽イオン交換体の存在で実施されてよい。通常、選択された陽イオン交換体は、それぞれ使用されるイソプレノールおよび式(III)のアルデヒドの総和に対して約5〜約40質量%の量、有利に約20〜約40質量%の量、特に有利に約20〜約30質量%の量で使用される。この場合、この記載は、一般的に水で前処理されかつそれに応じて約70質量%まで、有利に約30〜約65質量%、特に有利に約40〜約65質量%の量の水を含むことができる、直ちに使用可能な陽イオン交換体に関連する。従って、殊に非連続的な方法の実施の場合には、本発明による方法の実施においてさらなる水の添加は、不要である。
【0038】
記載された強酸性の陽イオン交換体は、個別的にならびに互いの混合物の形で本発明による方法の範囲内で使用されてよい。
【0039】
本発明により実施すべき反応は、選択的に反応条件下で不活性の溶剤、例えば第三ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、ヘキサンまたはキシレンの存在で実施されてもよい。記載された溶剤は、単独で使用されてもよいし、互いの混合物の形で使用されてもよい。本発明による方法の1つの好ましい実施態様の範囲内で、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの反応は、有機溶剤の添加なしに実施される。
【0040】
水の存在および強酸性の陽イオン交換体の存在でのイソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの本発明により実施すべき反応は、通常、0〜60℃の範囲内の温度、有利に20〜60℃の範囲内の温度、特に有利に20〜50℃の範囲内の温度で実施され、この場合この温度は、反応混合物の温度に関連する。
【0041】
本発明により実施すべき反応は、選択的に非連続的または連続的に実施されてよい。この場合、例えば非連続的の場合には、反応は、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドと水との混合物を適した反応容器中に装入し、および強酸性の陽イオン交換体を添加することにより、行なうことができる。反応の終結後、陽イオン交換体は、適した分離方法によって、特に得られた反応混合物の濾過によって分離されてもよいし、得られた反応混合物の遠心分離によって分離されてもよい。個々の反応成分を接触させる順序は、重要ではなく、それぞれの処理技術的実施態様の条件により変動することができる。
【0042】
好ましい実施態様の範囲内で、イソプレノールと式(III)の選択されたアルデヒドとの本発明により実施すべき反応は、連続的に実施される。そのために、例えば反応すべき出発物質のイソプレノールおよび式(III)のアルデヒドと水との混合物を準備することができ、この混合物は、連続的に強酸性の陽イオン交換体と接触される。そのために、選択された陽イオン交換体は、例えば適した貫流反応器中、例えば入口管および出口管を備えた攪拌型反応器、または管状反応器中に導入されることができ、前記反応器中の出発物質および水は、連続的に排出され、反応混合物は、連続的に排出される。この場合、出発物質および水は、選択的に個別的な成分として、または前記混合物の形で貫流反応器中に導入されることができる。
【0043】
それに応じて、本発明による方法の1つの好ましい実施態様は、次の工程
a.選択された強酸性の陽イオン交換体を含む貫流反応を準備し;
b.イソプレノール、式(III)のアルデヒドならびに水を貫流反応器中に連続的に導入し;
c.イソプレノール、式(III)のアルデヒドならびに水を強酸性の陽イオン交換体と、貫流反応器中で連続的に接触させ、望ましい2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを含む反応混合物を取得し、および
d.反応混合物を貫流反応器から連続的に排出させることを含む、2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための連続的方法に関する。
【0044】
この場合、選択された強酸性の陽イオン交換体は、ルーズな堆積物の形で、ならびに固定床の形で前記の貫流反応器中に存在することができる。
【0045】
イソプレノールと式(III)のアルデヒドとの本発明により実施すべき反応を複数の、例えば2つまたは3つの順次に接続された貫流反応器のカスケード中で実施することも可能であり、この場合個々の貫流反応器は、異なる強酸性の陽イオン交換体で充填されていてよく、管状反応器を使用する場合には、この管状反応器は、液相モードならびに細流モードで運転されてよい。更に、選択された貫流反応器から排出される反応混合物は、所望の場合には、部分的に再び連続運転される反応に返送されてもよい。
【0046】
本発明による方法は、式(I)の2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランの製造、特に式(I)の2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランの製造を可能にする。これらの化合物は、通常、望ましい目的化合物と共に、さらに使用された出発物質の残分、使用された水ならびに場合により微少量で式(IVa)、(IVb)および/または(IVc)
【化7】

で示される脱水素化された副生成物を含有することができる反応混合物の形で生じる。本発明による方法は、式(I)の望ましいヒドロキシピラン、または式(Ia)の2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランを高い収量および高い純度で製造することを可能にし、この場合式(IVa)〜(IVc)の望ましくない脱水素化生成物は、あったとしても少量で生じるにすぎない。
【0047】
更に、考えられ得る副生成物として、式(V)
【化8】

で示されるアセタールならびに式(VI)
【化9】

で示される1,3−ジオキサンが挙げられ、この場合イソプレノールとイソバレルアルデヒドとの反応の本発明により好ましい場合には、基R1は、それぞれイソブチルを意味する(式(Va)または(VIa)の化合物に対応する)。この副生成物は、まさに未反応の出発化合物または過剰量で使用される出発化合物のように、好ましくは再び反応に返送されることができる。
【0048】
本発明により得られる反応混合物は、典型的には、それぞれ得られた粗製生成物の全体量に対して、約50〜約90質量%、しばしば約60〜約80質量%が望ましい式(I)の2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランからなり、および約20質量%まで、有利に約15質量%まで、特に有利に10質量%までが式(IVa)〜(IVc)の脱水素化生成物からなり、およびさらに未反応の出発物質または過剰量で使用される出発物質ならびに別の記載された副生成物からなる。
【0049】
粗製生成物として得られる物質混合物は、当業者に公知の方法により、殊に蒸留または精留によってさらに良好に精製することができる。こうして、それぞれ式(I)の望ましい2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランが得られ、殊にイソプレノールおよびイソバレルアルデヒドを使用する場合に、式(Ia)の望ましい2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチルテトラヒドロピランが95質量%を上廻る、または有利に97〜99.9質量%または特に有利に98〜99.8質量%の純度で、即ち例えば芳香族化学品としての使用に必要とされるような品質で得られる。
【0050】
本発明による方法の1つの好ましい実施態様は、式(Ib)
【化10】

で示されるシス−ジアステレオマーと式(Ic)
【化11】

で示されるトランス−ジアステレオマーとの混合物の形での2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランの製造に関し、
この場合式(Ib)のシス−ジアステレオマーと式(Ic)のトランス−ジアステレオマーとのジアステレオマー比は、65:35〜95:5、有利に70:30〜85:15であり、およびR1は、さらに上記の意味を有する。
【0051】
殊に、イソプレノールとイソバレルアルデヒドとの本発明により好ましい反応に対して、本発明による方法の範囲内で、2−イソブチル−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランは、式(Id)
【化12】

で示されるシス−ジアステレオマーと式(Ie)
【化13】

で示されるトランス−ジアステレオマーとの混合物の形で得られ、
この場合式(Id)シス−ジアステレオマーと式(Ie)のトランス−ジアステレオマーとのジアステレオマー比は、65:35〜95:5、有利に70:30〜85:15である。この種の混合物は、その特殊な匂い特性のために、特に芳香族化学品として、例えば芳香組成物を製造するための谷間のユリの香気を有する成分としての使用に適している。
【0052】
次の実施例は、本発明の説明に使用されるが、しかし、決してこれに限定されるものではない:
ガスクロマトグラフィー分析は、次の方法により実施された:
30m DB−WAX、ID:0.32mm、FD.:0.25μm;50℃、3℃/分から170℃、20℃/分を経て17分間で230℃に到達した;注入サンプル200℃;注入器温度200℃、検出器温度280℃、tR=分;tR(イソバレルアルデヒド):4.1;tR(式(IVa)〜(IVc)のジヒドロピラン異性体):10.0;11.8;12.3;tR(イソプレノール):10.6;tR(1,3−ジオキサン(Va)):12.1;tR(アセタール(VIa)):24.1;tR(式(Ie)のトランス−ピラノール):28,2;tR(式(Id)のシス−ピラノール):29.8。得られた粗製生成物の濃度(質量%)は、GC分析により内部標準を用いて測定された。
【0053】
得られた粗製生成物の含水量は、カールフィッシャー滴定により測定された。
【実施例】
【0054】
実施例1:
2cmの内径および36cmの長さを有する二重ジャケットガラス管反応器からなる装置に、強酸性の陽イオン交換体アンバーリストAmberlystTM 131 50gを充填した。陽イオン交換体を使用前に最初に数回水で洗浄し、次に1回メタノールで洗浄し、最終的に水でメタノール不含になるまで洗浄した。
【0055】
この二重ジャケットガラス反応器にイソバレルアルデヒド(112.5g、1.31モル)とイソプレノール(125g、1.45モル)と水12.5gとからの混合物を室温で充填した。この反応溶液を40℃の温度で8時間910ml/時間のポンプ循環容量でポンプ循環させた。この二重ジャケットガラス反応器を40℃の温度で運転した。次の組成を有する粗製生成物が250.5gの量(収率73%)で得られた:
イソバレルアルデヒド:0.56GC質量%、
イソプレノール:2.35GC質量%、
ジヒドロピラン異性体(IVa〜c):9.41GC面積%(GC面積%)、
1,3−ジオキサン(Va):10.25GC質量%、
アセタール(VIa):0.99GC面積%、
トランス−ピラノール(Ie):17.49GC質量%、
シス−ピラノール(Id):48.28GC質量%、
水:6.9%。
【0056】
実施例2:
この二重ジャケットガラス反応器にイソバレルアルデヒド(77.4g、0.9モル)とイソプレノール(86.1g、1.0モル)と水8.6gとからの混合物を室温で充填した。この反応溶液を25℃の温度で10時間1.5l/時間のポンプ循環容量でポンプ循環させた。二重ジャケットガラス反応器を25℃に加熱した。次の組成を有する粗製生成物が169.4gの量(収率79%)で得られた:
イソバレルアルデヒド:0.44GC面積%、
イソプレノール:3.57GC面積%、
ジヒドロピラン異性体(IVa〜c):9.76GC面積%、
1,3−ジオキサン(Va):3.16GC質量%、
アセタール(VIa):0.99GC面積%、
トランス−ピラノール(Ie):18.91GC質量%、
シス−ピラノール(Id):54.13GC質量%、
水:6.9%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

〔式中、基
1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、全部で3〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換されたシクロアルキル基または全部で6〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換および/またはアルコキシ置換されたアリール基を表わす〕で示される2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法であって、
式(II)
【化2】

で示される3−メチルブト−3−エン−1−オールと式(III)
1−CHO (III)
〔式中、基R1は、式(I)と同じ意味を有する〕で示されるアルデヒドとの反応を含み、その際この反応は、水の存在および強酸性の陽イオン交換体の存在で実施される、上記の式(I)の2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するための方法。
【請求項2】
基R1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、または全部で6〜12個の炭素原子を有する、場合によりアルキル置換および/またはアルコキシ置換されたアリール基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基R1は、イソブチルを表わす、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
基R1は、フェニルを表わす、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
イソプレノールと式(III)のアルデヒドとを0.7:1〜2:1のモル比で使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
イソプレノールと式(III)のアルデヒドとを1:1〜1.5:1のモル比で使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
反応を少なくとも等モル量の水の存在で実施し、その際水の量は、場合により不足量で使用される出発物質のイソプレノールまたは式(III)のアルデヒドの量に関連するか、または2つの出発物質の等モル量の反応の場合には、2つの出発物質の中の一方の物質量に関連する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
強酸性のスルホン酸基を含む陽イオン交換体を使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
H(+)形の少なくとも1つの強酸性の陽イオン交換体を使用し、その際このイオン交換体は、スルホン酸基を有するポリマー骨格を含有し、ゲル状であるか、またはマクロ多孔質の樹脂を含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
イオン交換体は、スルホン酸基を有するポリスチレン骨格をベースとするか、またはスルホン酸基を有する過弗素化イオン交換体樹脂をベースとする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機溶剤の添加なしに反応を実施する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
反応を20〜60℃の範囲内の温度で実施する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
反応を連続的に実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
次の工程
a.選択された強酸性の陽イオン交換体を含む貫流反応を準備し;
b.イソプレノール、式(III)のアルデヒドならびに水を貫流反応器中に連続的に導入し;
c.イソプレノール、式(III)のアルデヒドならびに水を強酸性の陽イオン交換体と、貫流反応器中で連続的に接触させ、望ましい2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを含む反応混合物を取得し、および
d.反応混合物を貫流反応器から連続的に排出させることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式(Ib)
【化3】

で示されるシス−ジアステレオマーと式(Ic)
【化4】

で示されるトランス−ジアステレオマーとの混合物の形で2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランを製造するためであって、この場合式(Ib)のシス−ジアステレオマーと式(Ic)のトランス−ジアステレオマーとのジアステレオマー比は、65:35〜95:5であり、およびR1は、請求項1、2、3および4に記載の意味を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−527419(P2012−527419A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511234(P2012−511234)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056403
【国際公開番号】WO2010/133473
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】