説明

2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法

【課題】本発明の目的は、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造において、脱水操作を行なうことなしに、安全に高収率でかつ高純度な製品を工業的有利に製造する方法を提供するものである。
【解決手段】
2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、2.8〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることにより、2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩とし、1.0〜1.2モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応する。次いで、0.1〜0.5モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を40〜80℃の温度下で分割添加して反応することにより得られた2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸をクロル化剤と反応させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを得ることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真薬の原料として有用なフェノキシ脂肪酸クロリド及びその中間体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法としては、2,4−ジ−tert−アミルフェノールを2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩とし、ハロゲン化脂肪酸と反応させ、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸にした後、クロル化剤と反応させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを得る方法が一般に知られている。2,4−ジ−tert−アミルフェノールから2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩を得る製造方法としては、有機溶媒中で2,4−ジ−tert−アミルフェノールと2,4−ジ−tert−アミルフェノールに対して一定のモル倍率のアルカリ金属水酸化物を仕込み、高温下で還流、脱水しながら反応させる方法(特許文献1)あるいは金属Naを用いて無水下で反応を行なう方法(特許文献2)が公知であった。しかし、前者の方法では、生成水の存在が、反応の進行を妨げる為に、還流下、多くの時間を費やする脱水工程を必要とする。また、脱水時間が足りず、脱水工程が不十分な場合には、収率が低下する欠点があった。脱水に時間をかけることは小スケールでは特に問題にならない場合であっても、工業的スケールで反応を行った場合には、一般に伝熱効率の問題から脱水に小スケールを大幅に上回る時間を費やす傾向にあり、経済性において著しく劣る方法であった。又、金属Naは、水との激しい反応性と皮膚や眼に対する強い腐食性を持ち、その扱いに危険性を伴うため、安全上の対策を必要とし工業的に有利な方法ではなかった。
【0003】
2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法としては、前記で得られた2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩に対して一定のモル倍率のアルカリ金属水酸化物を一度に添加し、その中に一定のモル倍率の2−ブロモ脂肪酸を一度に滴下させて加熱反応させる方法(特許文献1)が公知であった。しかし、この方法でも、微量の水の存在度合いが、この反応の進行を妨げる為に、脱水が不完全で有る場合には収率、純度が大きくばらつくといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−275799号
【特許文献2】USP4933465
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造において、脱水操作を行なうことなしに、安全に高収率でかつ高純度な製品を工業的有利に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく反応条件に着目し、鋭意研究を重ねた結果、高品質な2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記(1)〜(4)を提供するものである。
(1)2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、1.9〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることを特徴とする2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩の製造方法。
(2)2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩1モルに対し、1.0〜2.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物と1.0〜2.0モル倍量の2−ブロモ脂肪酸の少なくともいずれか一方を分割添加して40〜80℃の温度下で反応させることを特徴とする2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法。
(3)2,4−ジ−tert−アミルフェノールから2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを製造する方法において、2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、2.8〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることにより、2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩とし、1.0〜1.2モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応する。次いで、0.1〜0.5モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を40〜80℃の温度下で反応することにより得られた2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸をクロル化剤と反応させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを得ることを特徴とする2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フェノキシ脂肪酸クロリドの製造において、煩雑な脱水操作を行なわずに、高収率でかつ高純度な製品を工業的有利に製造する方法を提供することことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をその実施の形態とともに記載する。
【0009】
本発明の2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩の製造方法において2,4−ジ−tert−アミルフェノールとアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒の存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させる。本反応において用いられるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物は固体もしくは溶液の形として用いる事が出来る。
【0010】
本反応において用いられる芳香族有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、メチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
【0011】
本反応において用いられるアルカリ金属の水酸化物の使用量としては、2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対して1.9〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物が使用される。好ましくは、2.5〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物が使用される。より好ましくは、2.8〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物が使用される。
アルカリ金属の水酸化物が1.9モル倍量未満の場合は、反応マス中の水の影響により、反応がほとんど進行しない。アルカリ金属の水酸化物が3.5モル倍量を超えると、分解物が生成し、高純度の目的物が得られず、収率が著しく低下する。
【0012】
本反応の反応温度としては、通常、使用する芳香族有機溶媒の沸点以下である0〜100℃の範囲で行われ、好ましくは、10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。還流脱水温度で行う場合、操作時間が長くなり好ましくない。反応時間は通常、20〜60分である。
【0013】
本発明の2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法において用いられる2−ブロモ脂肪酸としては、具体的には、2−ブロモ酪酸、2−ブロモ吉草酸、2−ブロモカプロン酸、2−ブロモヘプチル酸、2−ブロモカプリル酸、2−ブロモラウリル酸、2−ブロモステアリン酸、2−ブロモオレイン酸等を挙げる事が出来る。これらのうち2−ブロモ酪酸、2−ブロモ吉草酸、2−ブロモカプロン酸、2−ブロモヘプチル酸が好ましく、2−ブロモ酪酸がより好ましい。
【0014】
本反応に用いられるアルカリ金属の水酸化物としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウムが挙げられる。これらのアルカリ金属水酸化物は固体もしくは溶液の形として用いる事が出来る。アルカリ金属の水酸化物の使用量としては、2,4−ジ−tert−アミルフェノールの金属塩1モルに対して1.0〜2.5モル倍量が使用される。好ましくは1.8〜2.5モル倍量が使用される。アルカリ金属の水酸化物が1.0モル倍量未満の場合は、反応性が劣る傾向があり、反応に要する時間が長くなると共に収率が低下する傾向がある。アルカリ金属の水酸化物が2.5モル倍量を超えると、分解物が生成し、高純度の目的物が得られず、収率が低下する。
【0015】
アルカリ金属の水酸化物を添加する場合は一括して添加することが好ましいが、数回に分割して添加しても差し支えない。アルカリ金属の水酸化物の添加総量は2,4−ジ−tert−アミルフェノールの金属塩1モルに対して1.0〜2.5モル倍量である。
【0016】
2−ブロモ脂肪酸は分割して添加されるが、好ましくは1回目のアルカリ金属の水酸化物を添加後に1回目の添加が実施され、その添加量は1.0〜1.2モル倍量使用される。好ましくは、1.0〜1.1モル倍量使用される。2回目の添加量は、2,4−ジ−tert−アミルフェノールの金属塩1モルに対して0.1〜0.5モル倍量使用されるが、0.1〜0.3モル倍量使用がより好ましい。2回目に使用される2−ブロモ脂肪酸は、数回に分割して添加しても差し支えない。2−ブロモ脂肪酸の添加総量は2,4−ジ−tert−アミルフェノールの金属塩1モルに対して1.0〜2.0モル倍量である。必要に応じ、2回目の2−ブロモ脂肪酸添加前に一定量のアルカリ金属の水酸化物を添加する場合がある。2−ブロモ脂肪酸を一括添加した場合は、分解物が生成し、高純度の目的物が得られず、収率が低下する。
【0017】
2,4−ジ−tert−アミルフェノールの金属塩と2−ブロモ脂肪酸の反応は40〜80℃の温度下で実施される。好ましくは、56〜70℃で実施される。反応温度が80℃を超えた場合、分解物が生成し、収率が低下する傾向がある。反応温度が40℃未満の場合は、反応が遅延し、未反応物が増加する傾向がある。
【0018】
本発明の2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法において用いられるクロル化剤としては、五塩化燐、三塩化燐、オキシ塩化燐、塩化チオニル、クロロスルホン酸、ホスゲン等が挙げられるが、特に五塩化燐、三塩化燐、オキシ塩化燐、塩化チオニルが好ましい。
【0019】
本発明の2,4−ジ−tert−アミルフェノールから2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを製造する方法において、2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、1.9〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることにより、2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩とし、1.0〜1.2モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応する。次いで、0.1〜0.5モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応することにより得られた2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸をクロル化剤と反応させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを得る。本発明の製法により、工業的に有利な2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドが得られる。2−ブロモ脂肪酸を一括添加した場合は、分解物が生成し、高純度の目的物が得られず、収率が低下する。
【0020】
(実施例)
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例中、特にことわらない限り%はHPLCにおける面積百分率値であり、部は重量基準である。
用いた液体クロマトグラフの測定条件は以下の通りである。
HPLC測定条件:
装置 :島津 LC−2010A
カラム:CAPCELL PACK C18(5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:水/アセトニトリル=30/70(v/v)
流量:1.5ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 275nm
【実施例1】
【0021】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器を窒素置換後、トルエン88.0g、96%水酸化ナトリウム15.6g(0.3744モル)を仕込み、20〜25℃の温度下で2,4−ジアミノフェノール43.0g(0.1836モル)を滴下、1時間保温して2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩62.8g(0.1836モル 収率100%、HPLC純度100%)を得る。
【実施例2】
【0022】
実施例1で得られた2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩62.8g(0.1846モル)を60℃に昇温し、96%水酸化ナトリウム7.7g(0.1848モル)を仕込み、次いで2−ブロモ酪酸32.1g(0.1922モル)を50〜70℃の温度下で2時間かけて滴下する。滴下終了後に同温度で4時間保温する。保温終了後、再度、96%水酸化ナトリウム3.9g(0.0936モル)を仕込み、2−ブロモ酪酸5.5g(0.0329モル)を50〜70℃の温度下で0.5時間かけて再度、滴下する。滴下終了後、同温度で2時間保温する。保温終了後、反応マスに上水110gを加え、無機塩分を溶解させた後、分液を行い、得られたトルエン層を10%硫酸水で水層のpHを2以下とし、続いて上水130gで洗浄する。このようにして得られたトルエン層から、減圧濃縮にて系内のトルエンを留出させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸71.2g(0.1777モル 収率96.8%)を得る。
【実施例3】
【0023】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器を窒素置換後、トルエン113g、96%水酸化ナトリウム22.9g(0.5496モル)を仕込み、20〜25℃の温度下で2,4−ジアミノフェノール43.0g(0.1836モル)を滴下して、1時間保温し、2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩を生成させる。続いて内温を60℃に昇温し、次いで2−ブロモ酪酸32.1g(0.1922モル)を50〜70℃の温度下で2時間かけて滴下する。滴下終了後に同温度で2時間保温する。保温終了後、2−ブロモ酪酸5.5g(0.0329モル)を50〜70℃の温度下で0.5時間かけて滴下する。滴下終了後、同温度で2時間保温する。保温終了後、上水110gを加え、無機塩分を溶解させた後、分液を行い、得られたトルエン層を10%硫酸水で水層のpHを2以下とする。続いて上水130gで洗浄する。このようにして得られたトルエン層から減圧濃縮にてトルエンを留出させる。得られた濃縮液に、DMF4.3g(0.0588モル)およびオキシ塩化燐18.3g(0.1195モル)を内温35〜40℃で滴下する。滴下終了後、内温45℃で12時間保温し、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)酪酸クロリド79.7g(収率96.5%、HPLC純度98%)を得る。
【実施例4】
【0024】
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器を窒素置換後、トルエン88g、96%水酸化ナトリウム15.6g(0.3744モル)を仕込み、20〜25℃の温度下で2,4−ジアミノフェノール43.0g(0.1836モル)を滴下して、2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩を生成させる。続いて内温を60℃に昇温し、96%水酸化ナトリウム7.7g(0.1848モル)を仕込み、次いで2−ブロモ酪酸32.1g(0.1922モル)を50〜70℃の温度下で2時間かけて滴下する。滴下終了後に同温度で4時間保温する。保温終了後、96%水酸化ナトリウム3.9g(0.0936モル)を仕込み、2−ブロモ酪酸5.5g(0.0329モル)を50〜70℃の温度下で0.5時間かけて滴下する。滴下終了後、同温度で2時間保温する。保温終了後、上水110gを加え、無機塩分を溶解させた後、分液を行い、得られたトルエン層を10%硫酸水で水層のpHを2以下とする。続いて上水130gで洗浄する。このようにして得られたトルエン層から減圧濃縮にてトルエンを留出させる。得られた濃縮液に、DMF4.3g(0.0588モル)およびオキシ塩化燐18.3g(0.1195モル)を内温35〜40℃で滴下する。滴下終了後、内温45℃で12時間保温し、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)酪酸クロリド78.9g(収率95.5%、HPLC純度97%)を得る。
【0025】
(比較例1)
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器を窒素置換後、トルエン88g、96%水酸化ナトリウム27.2g(0.6528モル)を仕込み、20〜25℃の温度下で2,4−ジアミノフェノール43.0g(0.1836モル)を滴下して、1時間保温し、2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩を生成させる。続いて内温を60℃に昇温し、その中に2−ブロモ酪酸37.6g(0.2251モル)を50〜70℃の温度下で2時間かけて滴下する。滴下終了後に同温度で4時間保温する。保温終了後、上水110gを加え無機塩分を溶解させた後、分液を行い、得られたトルエン層から10%硫酸水で水層のpHを2以下とする。続いて上水130gで洗浄する。このようにして得られたトルエン層を減圧濃縮にてトルエンを留出させる。得られた濃縮液にDMF4.3g(0.0588モル)およびオキシ塩化燐18.3g(0.1195モル)を内温35〜40℃で滴下する。滴下終了後、内温45℃で12時間保温し、2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)酪酸クロリド73.1g(収率88.5%、HPLC純度92%)を得た。
【0026】
(比較例2)
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびT字管を付けたガラス製反応器を窒素置換後、トルエン88g、96%水酸化ナトリウム7.9g(0.1896モル)仕込み、20〜25℃の温度下で2,4−ジアミノフェノール43.0g(0.1836モル)を滴下する。続いて内温を112〜114℃に昇温し、還流脱水を行う。2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩が生成するまでに要する還流脱水時間は12時間も要した。2,4−ジアミノフェノールのナトリウム塩61.3g(0.1790モル、収率97.5% HPLC純度97%)を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、1.9〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることを特徴とする2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩の製造方法。
【請求項2】
2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩1モルに対し、1.0〜2.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物と1.0〜2.0モル倍量の2−ブロモ脂肪酸の少なくともいずれか一方を分割添加して40〜80℃の温度下で、反応させることを特徴とする2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法。
【請求項3】
2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩1モルに対し、1.0〜2.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を添加後、1.0〜1.2モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応する。次いで0.1〜0.5モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応することを特徴とする請求項2に記載の2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法。
【請求項4】
2,4−ジ−tert−アミルフェノールから2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを製造する方法において、2,4−ジ−tert−アミルフェノール1モルに対し、2.8〜3.5モル倍量のアルカリ金属の水酸化物を芳香族有機溶媒存在下に反応系外へ生成水を除去することなく反応させることにより、2,4−ジ−tert−アミルフェノールのアルカリ金属塩とし、1.0〜1.2モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応する。次いで、0.1〜0.5モル倍量の2−ブロモ脂肪酸を添加し40〜80℃の温度下で反応することにより得られた2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸をクロル化剤と反応させて2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドを得ることを特徴とする2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法。
【請求項5】
2−ブロモ脂肪酸が2−ブロモ酪酸、2−ブロモ吉草酸、2−ブロモカプロン酸、2−ブロモヘプチル酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜3に記載の2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸の製造方法。
【請求項6】
2−ブロモ脂肪酸が2−ブロモ酪酸、2−ブロモ吉草酸、2−ブロモカプロン酸、2−ブロモヘプチル酸から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)脂肪酸クロリドの製造方法。

【公開番号】特開2010−189347(P2010−189347A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37117(P2009−37117)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】