説明

2チャンバアンプル用の自動ペン

【課題】流体製剤を確実に混合させ且つ、快適に注射することを可能にする2チャンバアンプルの流体製剤を混合させ且つ注射する装置を提供する。
【解決手段】2チャンバアンプル2を内部に保持し又は受容することのできる前側ケーシング部分1と、後側ケーシング部分10と、後側ケーシング部分により受容されるねじ付き駆動体と、混合動作の間、ねじ付き駆動体により末端方向に動かされ且つ、2チャンバアンプルの少なくとも1つの閉止ピストン4を従動させるピストンロッド11とを備える。ばね要素14は、吐出動作中、ピストンロッドを末端方向に押す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与する直前迄混合されていない医薬を混合させ且つ、投与する装置に関する。特に、本発明は、注射可能な製剤を2チャンバアンプルから投与するのに適した混合及び投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
色々な医療及び治療方法において、投与される直前迄混合されていない多数の成分から成る、例えば、成長ホルモンのような流体製剤が患者に投与される。かかる流体製剤を投与するため多数チャンバアンプルが使用され、特に、例えば、流体は、第一のチャンバ内に溶剤として提供され、製剤成分は、第二のチャンバ内にて固体及び(又は)流体の形態にて提供される、2チャンバアンプルが使用される。溶剤及び製剤成分は、混合装置によりアンプル内にて混合される。溶剤が供給通路を介して製剤成分と接触し且つ、該製剤成分と混合するような要領にてプラグを多数チャンバアンプル内にて変位させることにより、投与装置にて投与する直前に、混合装置の助けを受けて、注射すべき流体製剤を混合させることができる。
【0003】
流体製剤を混合するとき、混合過程が過度に速く行われないように注意する必要がある。過度に速く混合すると、例えば、流体製剤中に望ましくない泡が生じる可能性がある。更に、迅速に混合させたとき、固体製剤は、投与される時点迄、溶液中にて完全に溶解せず、又は、流体製剤の溶液は均質にならない可能性がある。
【0004】
従来の投与装置において、多数チャンバアンプルは、装置のケーシング内に挿入される。該投与装置は、駆動手段をねじの助けによってケーシング内に手でねじ込むことのできる混合装置を備えている。駆動手段は、該駆動手段がケーシングに対し且つ、ケーシング内に動く回転動作によってケーシング内に手でねじ込まれる。混合装置の駆動手段を回すことにより、プラグは、多数チャンバアンプル内にてアンプルに沿って軸方向にゆっくりと動く。このように、駆動手段の回転動作は、アンプル内のプラグのゆっくりとした平行移動動作に変換され、アンプル内にて滑らかな混合が可能となる。
【0005】
欧州特許明細書0 328 699B1号には、混合装置を備える注射器が示されており、該混合装置内にて、混合した後、投与者がピストンロッドを押すことにより混合した製剤が患者に注射される。
【0006】
欧州特許明細書0 298 067B1号には、注射溶液を作り且つ、その後に、この溶液を注射する装置が開示されている。混合した製剤が混合装置により混合されたならば、容器の保持手段に接続された投与手段を介して注射溶液の特定の投与分を投与することにより、投与すべき製剤の投与分が制御された仕方にて投与される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、流体製剤を確実に混合させ且つ、快適に注射することを可能にする、2チャンバアンプルの流体製剤を混合させ且つ(又は)注射する装置を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1の主題事項によって解決される。有益な更なる展開例は、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2チャンバアンプルと共に使用される注射装置であって、2チャンバアンプルを内部に保持し又は収容することのできる前側ケーシング部分と、後側ケーシング部分と、後側ケーシング部分により収容されるねじ付き駆動体と、混合動作中、末端方向に向けて、すなわち、物質が分与される箇所である、注射装置の端部に向けて動かされ、また、その過程中、2チャンバアンプルの少なくとも1つの主要ピストンを従動させるピストンロッドと、吐出動作中、ピストンロッドを末端方向に、すなわち後側ケーシング部分から離れるように押すばね要素とを備える、上記注射装置に関する。
【0010】
注射装置のケーシングは、互いに取り外し可能に接続されていることが好ましい、前側ケーシング部分及び後側ケーシング部分から成っている。前側ケーシング部分は、2チャンバアンプルを受容する働きをする。アンプルは、前側ケーシング部分内に挿入し又は、前側ケーシング部分を形成することができる。同様に、注射装置は、例えば、使い捨て型部分として一体的に形成することもできる。
【0011】
2チャンバアンプルは、前側ケーシング部分が備える側方開口部を介して挿入することができる。また、前側ケーシング部分の末端又は基端を介してアンプルを挿入することも可能である。この場合、2チャンバアンプルは、その壁にバイパス路を備え、バイパス路用の凹所が適宜に前側ケーシング部分に含まれ且つ、アンプルをバイパスに沿って、前側ケーシング部分内に挿入することを可能にすることを認識すべきである。前側ケーシング部分及び後側ケーシング部分は、また、一体としてもよく、この場合、アンプルは、例えば、ケーシング及び(又は)前側ケーシング部分の側部又は末端を介して挿入することができる。
【0012】
前側ケーシング部分又は部分は、カニューレ、針又は注射装置に対する接続手段を固定する手段も有している。
ねじ付き駆動体は、後側ケーシング部分内に配置されている。ねじ付き駆動体は、ねじ付きロッドから成っており、該ねじ付きロッドは、外ねじ部と、該ねじ付きロッドの該外ねじ部と協働する内ねじ部とを含むねじ付きナットを備えている。該ねじ付きロッドは、回転ノブに回転不能に接続される。該ねじ付きロッド及び回転ノブは、一体的に形成してもよい。ねじ付きロッド及び回転ノブは、確実係止状態に互いに接続され、回転阻止部を形成することが好ましい。2チャンバアンプルが混合されたとき、回転動作は、回転ノブを回すことにより、ねじ付きロッドに伝達される。ねじ付きロッドは、ねじ付きナットに対する回転動作を実行し、これによりそのねじピッチを介して、ねじ付きナットは、ねじ付きロッドに対する軸方向への動きを行なう。このように、ねじピッチを使用すれば、ねじ付きロッド又は回転ノブが回転する毎に、ねじ付きナットの軸方向ピッチを調節することが可能である。ねじ付きロッドは、また、ねじ付きナットに対して使用できる調節長さも示し、この調節長さは、アンプル内に入った製剤を混合するのに必要とされる経路と相応する。
【0013】
回転ノブは、該ノブが後側ケーシング部分に対し回転可能であるが、後側ケーシング部分に対し軸方向に変位し得ないよう、後側ケーシング部分に対し接続される。その結果、ねじ付きロッドは、後側ケーシング部分に対し軸方向に変位させることはできない。回転ノブは、また、例えば、後側ケーシング部分に取り付けられた相応する相手方部分と係合する少なくとも1つの係止要素も備えている。特に、この係止要素は、回転ノブに形成されて、後側ケーシング部分におけるカラー形状の形態物の後方を把持する係止スタッドとすることができる。回転ノブは、その基端に標識を備えており、該標識は、混合過程中、回転ノブの角度位置をチェックすることを許容する。
【0014】
リテーナが後側ケーシング部分に配置され且つ、後側ケーシング部分に対し回転不能であるが、後側ケーシング部分に対し軸方向に変位することができる。この標識は、軸方向に伸びる溝により実現することができ、該溝には、カム又は同様の手段が係合して回転を阻止する。該溝は、後側ケーシング部分に形成されることが好ましい。カムは、リテーナに形成されるのが好ましい。しかし、該溝はまたリテーナにより形成し、カムは後側ケーシング部分により形成してもよい。リテーナは、ねじ付き駆動体に接続される。この接続部は、回転不能であることが好ましい。リテーナ及びねじ付きナットは、互い対し如何なる動作も行わない。リテーナとねじ付きナットとの間の回転阻止は、2つの構成要素の少なくとも1つを後側ケーシング部分に対し回転不能に接続することで保証される。リテーナは、該リテーナがねじ付きロッドを少なくとも部分的に取り囲み得るように形成されることが好ましい。リテーナは、少なくとも1つの凹所を保持しており、該凹所は、少なくとも1つの保持手段を包み込み、リテーナが半径方向に変位可能であるように取り付けられるようにする。保持手段は、例えば、摺動阻止部とすることができる。保持手段は球であることが好ましい。後側ケーシング部分は、リテーナ対する案内部を形成する。
【0015】
その長さの少なくとも一部分にて、リテーナは、ピストンロッドに対する案内部を形成し、ピストンロッドがリテーナに対して軸方向に動くのを可能にする。ピストンロッドは、また軸方向ストッパも備えており、該軸方向ストッパは、リテーナの半径方向ヒール部と協働し、これにより、混合過程中、ピストンロッドの軸方向への動きを制限する。このストッパは、ピストンロッドの基端に設けられ、リテーナの半径方向ヒール部と協働するカラーにより形成することができる。リテーナの半径方向ヒール部は、同時に、ピストンロッドに対する案内部を形成する。ピストンロッドに対する第二の案内部は、またリテーナの内壁によりその周側部にて案内される半径方向カラーにより形成することができる。半径方向ヒール部のストッパ面と半径方向カラーとの間の距離は、吐出動作の間、2チャンバアンプル内にてピストンが動かなければならない経路に少なくとも相応する。
【0016】
少なくとも1つの保持手段に対する案内部として機能する該少なくとも1つの凹所は、リテーナに、好ましくは半径方向ヒール部の領域内に配置されている。保持手段が係合可能である少なくとも1つの中空部は、ピストンロッドに配置されている。該少なくとも1つの中空部は、特に、ピストンロッドが偏倚されたとき、保持手段が該中空部と係合するようにピストンロッド内に配置されている。この少なくとも1つの中空部は、ピストンロッドにおける半径方向溝であることが好ましい。溝の輪郭外形は、丸味を付けた形状を有するものとすることができる。保持手段として球を使用するとき、溝は、最大で該球の半径に相応する深さを示し、ピストンロッドに軸方向力が加わったとき、少なくとも1つの力成分が該少なくとも1つの球にて半径方向外方に作用するようにする。このことは、溝が球の直径よりも小さい幅を有する場合にも実現可能である。
【0017】
ピストンロッドが偏倚されると、少なくとも1つの保持手段が該少なくとも一つの中空部内に半径方向に挿入される。ピストンロッドに軸方向力が加わったならば、保持手段は溝から押し出されるから、後側ケーシング部分の内壁は、保持手段に対するストッパとして機能し、保持手段が挿入された位置から半径方向外方に動くことができないようにする。このことは、保持手段が挿入されたとき、リテーナの半径方向ヒール部の半径方向厚さがピストンロッドの周縁を超えて突き出す程度にほぼ相応するようにすることを必要とする。リテーナの半径方向カラーの半径方向厚さは、球の直径よりも少なくとも小さくなければならない。少なくとも1つの保持手段に対する、リテーナ内に保持された該少なくとも1つの案内部は、保持手段の断面にほぼ相応しなければならない。球の場合、これは、長手方向軸線に対し横方向に伸びる穴となるであろう。
【0018】
対向面がピストンロッドの末端に配置され且つ、2チャンバアンプルの閉止ピストンの対向面と協働する。本発明の1つの実施の形態において、ピストンロッド及び閉止ピストンは、互いに固定状態に接続し且つ(又は)一体的に形成することができる。
【0019】
弾性要素、特にコイルばねがねじ付き駆動体とピストンロッドの基端との間に配置されている。コイルばねがリテーナにより周側部にて少なくとも部分的に包み込まれている。ねじ付きロッドの少なくとも一部分をコイルばね内に配置することができる。ピストンロッドがその偏倚した位置、すなわち少なくとも1つの保持手段がピストンロッドの溝と係合する位置にあるとき、コイルばねは圧縮され且つ、偏倚される。該少なくとも1つの保持手段は、ばねが弛緩し且つ、その結果ピストンロッドが注射装置の末端に向けて動くのを防止する。長手方向軸線から離れる半径方向に作用する力成分は、保持手段に作用するが、保持手段は、後側ケーシング部分の内側部により突き出すのが防止される。
【0020】
コイルばねにより発生された力の流れは、ばねからリテーナ、少なくとも1つの保持手段、及びピストンロッドを介してねじ付きナット内に伸び、ばねに戻り、このため、保持手段が挿入される間、ピストンロッドが末端方向に動くのを許容する自由度は無い。ねじ付き駆動体のねじ付きナットに対する少なくとも1つの保持手段の軸方向位置は、リテーナにより一定に保たれる。
【0021】
後側ケーシング部分は、起動スリーブによって少なくとも部分的に包み込まれており、該起動スリーブは、後側ケーシング部分に取り付けられ且つ、後側ケーシング部分に対して動くことができる。少なくとも1つの阻止要素が起動スリーブに設けられている。該少なくとも1つの阻止要素は、それぞれ窓部を通って後側ケーシング部分内に突き出している。阻止要素の数及び窓部の数は、保持手段の数に相応することが好ましい。長手方向軸線に臨む少なくとも1つの阻止要素の面は、少なくとも1つの保持要素に対する半径方向ストッパを形成し、該ストッパは、長手方向軸線からの半径方向距離が後側ケーシング部分の内壁とほぼ等しいことが好ましい。起動スリーブは、ばね要素によって開始位置に押し込まれる。ばね要素は、前側ケーシング部分及び起動スリーブにて支持することができる。ばねは、偏倚されて、起動スリーブに力を加え、該力がスリーブを開始位置まで押すことが好ましい。
【0022】
少なくとも1つの窓部は、注射装置の後側ケーシング部分内に配置されることが好ましい。該窓部は、阻止要素が該窓部を通って突き出すことができるような幅を有する。該窓部は、また、阻止要素の軸方向長さよりも長い軸方向長さを有し、1つの実施の形態において、起動スリーブは前方又は後方に軸方向に摺動することができる。窓部の軸方向長さは、阻止要素の軸方向長さと保持手段の軸方向長さとの合計値に少なくとも相応しなければならない。球を保持手段として使用するとき、窓部の最小長さは、阻止要素の軸方向長さと、球が窓内に挿入され、球が、ピストンロッドを軸方向に動くよう解放する位置における緯度にて示す、円形断面の直径のとの合計値である。
【0023】
別の実施の形態において、少なくとも1つの窓部は、少なくとも1つの阻止要素が窓部を貫通して突き出すような長さ及び幅を有しており、この場合、窓部の長辺部は周方向に向けて伸びている。周方向に伸びる窓部の辺部は、少なくとも1つの阻止要素が保護スリーブと共に回転動作を行い、該阻止要素が少なくとも1つの保持手段を解放するのに少なくとも十分に大きい。
【0024】
混合動作中、ピストンロッドは、回転ノブを回すことにより注射装置の末端に向けて動かす。回転ノブの回転動作は、ねじ付きロッドに伝達され、該ねじ付きロッドは、ねじ付きナットに対して動く。ねじ付きナットは、ねじ付きロッドに対する回転動作を行うから、該ねじ付きナットは、ねじピッチを介して注射装置の基端に向けても動く。この混合動作は、ねじ付き駆動体からリテーナを介してピストンロッドに伝達され、ここにおいて、少なくとも1つの保持手段は、ピストンロッドの少なくとも1つの中空部と係合し、混合動作中、保持手段及び(又は)リテーナは、ピストンロッドに対し固定される。このように、ピストンロッド、リテーナ、少なくとも1つの保持手段、ねじ付きナット及び弾性要素又はコイルばねは、混合動作中、単一体として注射装置の末端方向に動く。混合動作中、少なくとも1つの保持手段は、後側ケーシング部分により中空部内に保持され、従って、後側ケーシング部分に沿って相対的に動く。
【0025】
ピストンロッドが動くと、2チャンバアンプルの少なくとも閉止ピストンが従動する。混合動作中、閉止ピストンは、2チャンバアンプルの末端に向けて動く。閉止ピストンと2チャンバアンプルの仕切りピストンとの間にて流体製剤要素は圧縮不能であるから、仕切りピストンがバイパス路の領域に完全に入る迄、仕切りピストンは、同様に、末端方向に動く。この場合、仕切りピストンは、最早、シールを形成せず、このため、流体製剤は、仕切りピストンと2チャンバアンプルの閉塞体とにより形成されたチャンバ内にバイパス路を介して流れることができ、また、上記チャンバ内にて別の製剤要素と混合され且つ、混合製剤を形成する。閉止ピストンと仕切りピストンとの互いに対向する2つの面が接触するとき、混合過程は完了する。この段階にて、ピストンロッド、リテーナ、コイルばね及び少なくとも1つの保持要素は、保持手段の各々を起動スリーブの阻止要素のストッパ面領域内にて軸方向に配置するのに十分、末端方向に動いている。保持要素の軸方向位置を確実にするためストッパが形成されることが好ましい。ストッパは、1つの要素により具体化することができ、該要素は、ねじ付きロッドの外ねじ部に着座し且つ、少なくとも1つの保持要素が阻止要素と水平なその軸方向位置に到達したとき、ねじ付きナットが更に回転するのを防止する。ストッパは、末端方向に臨むリテーナの対向側により形成することもでき、該ストッパは、保持要素が相応する位置にあるとき、前側ケーシング部分の面と当接する。該少なくとも1つの保持要素は、混合動作の終了時に到達するピストンロッドの第一の端部位置にて阻止要素によりピストンロッドの中空部又は溝内に押し込まれる。
【0026】
このとき、注射装置は、混合した製剤を投与する準備が整う。阻止要素は、少なくとも1つの保持要素を平行移動又は回転動作を介して解放し、保持要素が該保持要素に作用する半径方向力成分のため、ほぼ半径方向外方に押される。保持要素の回転動作、好ましくは、平行移動動作は、励起スリーブの動きによって生じる。半径方向ストッパを形成するそれぞれの阻止要素の面は、最早、少なくとも1つの保持要素を戻るよう保持しないから、保持要素は、ピストンロッドにて偏倚されたコイルばねの軸方向力により半径方向外方に押される。少なくとも1つの保持要素が注射装置から落下するのを防止するため、励起スリーブの一部分は、窓部の上を摺動する。このように、少なくとも1つの保持要素は、その上を摺動する励起スリーブに対し後側ケーシング部分の窓部内に押し込まれる。少なくとも1つの保持手段が解放されたとき、ばね要素は、偏倚され、また、ピストンロッドは解放されることが好ましい。
【0027】
吐出動作中、ピストンロッドは、ねじ付きナット及び(又は)リテーナに対し末端方向への軸方向動作を行う。このようにして、2チャンバアンプルの2つのピストンは、コイルばねの力によってピストンロッドを介して末端方向に押され、このため、混合した製剤を2チャンバアンプルから吐出する。この吐出過程は、末端方向に臨む仕切りピストンの対向面が2チャンバアンプルの対面側部と当接するとき、完了する。吐出過程は、また、ピストンロッドの半径方向カラーがリテーナの半径方向ヒール部と当接したときに、完了するようにすることもできる。
【0028】
新たな2チャンバアンプルを注射装置に挿入するならば、ピストンロッドは、リテーナに対するその当初位置に動かなければならない。この目的のため、ピストンロッドは、基端方向に作用する力によって摺動して戻り、このためコイルばねは偏倚される。ピストンロッドが摺動して戻ると、該ピストンロッド内に保持された少なくとも1つの中空部は、少なくとも1つの保持要素の領域内に軸方向に動く。長手方向軸線に対し半径方向に臨む少なくとも1つの力成分を備える力は、起動要素に作用するばね要素により少なくとも1つの保持要素に伝達される。該少なくとも1つの中空部が該少なくとも1つの保持要素の領域内に配置されたとき、該少なくとも1つの保持要素は、この力によって少なくとも1つの中空部内に押し戻される。保持要素及び該保持要素に接続された起動スリーブは、後側ケーシング部分に対し基端方向にスナップ動作して戻る。リテーナ及びピストンロッドは、ピストンロッドと係合する少なくとも1つの保持要素によって互いに固定される。回転ノブを回すことにより、ピストンロッドは、リテーナ、少なくとも1つの保持要素、ねじ付きナット及びコイルばねと共に、基端方向に動いて戻される。新たな2チャンバアンプルが挿入されたならば、装置は、新たな混合及び(又は)新たな注射又は吐出を行う準備が整う。
【0029】
本発明は、多数の一例としての実施の形態に基づいて説明した。本発明に従った注射装置の個々の手段は、互いに有用に組み合わせることもできる。本発明は、図面の助けによって一例としての実施の形態に基づいて説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1に示した注射ペンは、協働するねじ部26により互いにねじ止めされた前側ケーシング部分1及び後側ケーシング部分10を備えている。前側ケーシング部分1は、2チャンバアンプル2を保持している。該2チャンバアンプル2は、その壁におけるバイパス路3と、末端方向Pに臨むその前端における閉塞体7を有する対向面とを備えている。閉止ピストン4及び仕切りピストン5は、2チャンバアンプル2内に配置され且つ、双方共に、バイパス路3に対し基端方向の配置位置に配置されている。2つのピストン4、5は、バイパス路3の外側にて2チャンバアンプル2の内壁と当接し、シールを形成する。流体製剤8は、閉止ピストン4と、仕切りピストン5との間の空間内に配置されている。流体製剤8と共に、混合した製剤8、9を形成する、乾燥した、大部分、粉末の物質9は、閉止ピストン7と仕切りピストン5との間の空間内に配置されている。2チャンバアンプル2は、その基端を介して前側ケーシング部分1内に導入され、該基端に対し、軸方向Aに向けて伸びる溝6が前側ケーシング部分1内に保持され且つ、2チャンバアンプル2のバイパス路3に対する空間を形成する。
【0031】
後側ケーシング部分10は、ピストンロッド11と、保持要素として作用する球12と、リテーナ16と、ねじ付きナット21と、ねじ付きロッド19と、コイルばね14とを実質的に保持している。回転ノブ22が注射装置の基端に取り付けられ且つ、確実係止状態にて協働する2つの要素23によってねじ付きロッド19に接続されている。回転ノブ22に形成された係止要素24は、半径方向内方に臨み且つ、後側ケーシング部分10の基端に形成されたカラーの後方を把持し、回転ノブ22が後側ケーシング部分10に対し軸方向に動くことはできないが、ある回転自由度を有するようにされている。ねじ付き駆動体19/21はねじ付きロッド19に取り付けられた外ねじ部20を介してねじ付きナット21により形成されている。ねじ付きナット21は、後側ケーシング部分10に回転可能に固定されているが、軸方向に動くことはできる。ねじ付きナット21は、後側ケーシング部分10にて軸方向Aに向けてのみ動くことのできるリテーナ16に接続されている。ねじ付きナット21及びリテーナ16は、互いに固定状態に接続されており、回転阻止部を得るためには2つの構成要素16、21の一方のみを回転可能に固定するだけでよい。半径方向ヒール部27がリテーナ16の末端に取り付けられ且つ、同時にピストンロッド11に対する軸方向案内部として作用する。ほぼ半径方向へ伸びる案内部30は、保持要素として作用する球12の各々に対し半径方向ヒール部27の領域内にて取り付けられている。これらの案内部30は、円形断面を有し、このため球12の断面に相応する穴であることが好ましい。球12が係合する環状周溝13はピストンロッド11に配置され且つ、ほぼ球12の輪郭外形を有する。
【0032】
外側ケーシング部分10は、リテーナ16を軸方向に案内し且つ、これと同時に、球12に対する半径方向ストッパを形成し、これらを溝13から押し出すことができないようにする。半径方向カラー28はピストンロッド11の基端に配置され且つ、リテーナ16の周面によって案内される。吐出過程の前、半径方向カラー28と半径方向ヒール部27との間に距離dがある。ねじ付きロッド19を取り囲むコイルばね14は、半径方向カラー28とねじ付きナット21との間に配置されている。コイルばね14は、偏倚され且つ、ピストンロッド11にて半径方向に力を加える。しかし、最初、コイルばね14は、ピストンロッド11が球12により阻止されるから、ピストンロッド11を軸方向に動かすことはできない。
【0033】
混合過程及び(又は)混合動作は、回転ノブ22を回すことによって行われる。ねじ付きロッド19に伝達された回転力は、ねじピッチを介し且つ回転可能に固定されたねじ付きナット21を介して軸方向動作に変換され、この軸方向動作は、リテーナ16、保持要素及び(又は)球12を介してピストンロッド11に伝達される。このため、リテーナ16、ピストンロッド11、球12、ねじ付きナット21及びコイルばね14は、コイルばね14が弛緩することなく、注射装置の末端に向けて動く。前側ケーシング部分1の基端及びリテーナ16の対向する側部により形成された距離Dは、回転ノブ22の回転数と共に減少する。
【0034】
ピストンロッド11を末端方向Pに向けて動かすと、閉止ピストン4は、2チャンバアンプル2内にて末端方向Pに向けて変位する。流体製剤8は圧縮不能であるから、仕切りピストン5は、該ピストンがバイパス路3の領域に完全に到達する迄、同様に末端方向Pに向けて動く。このとき、仕切りピストン5は最早、シールを形成しないから、流体製剤8は、バイパス路3を介して仕切りピストン5を経て2チャンバアンプル2の前側チャンバ内に流れ、これにより製剤9と混合することができる。閉止ピストン4が仕切りピストン5と当接し、これにより両者の間の流体製剤8のほぼ全体を変位させたときに、混合過程は完了する。
【0035】
混合過程の終了時、球12は、同時に、後側ケーシング部分10を少なくとも部分的に包み込む起動スリーブ15に接続された阻止要素18の領域内にて同時に軸方向に配置される。長手方向軸船Aに対し半径方向を臨む阻止要素18の面29は、長手方向軸線Aからの半径方向距離が後側ケーシング部分10の内壁とほぼ等しい。このようにして、面29は、球12をピストンロッド11の溝13内に押し込む。
【0036】
投与過程は、起動スリーブ15が末端方向Pに向けて軸方向に動くことで起動される。後側ケーシング部分10内に保持された窓部17は、起動スリーブ15の軸方向への動きを許容する。溝13は、ピストンロッド11における軸方向力のため半径方向外方に作用する少なくとも1つの力の成分が球12に作用するような形状とされているから、ピストンロッド11にてコイルばね14により加えられた軸方向力は、球12を窓部17内に半径方向外方に押す。球12が窓部17に入ったならば、ピストンロッド11は解放され、該ピストンロッドは、偏倚したコイルばね14によってリテーナ16に対し末端方向Pに向けて動く。次に、ピストンロッド11は2つのピストン4、5を末端方向Pに向けて押し、これにより混合した製剤8、9を吐出する。吐出過程の開始時、仕切りピストン5から2チャンバアンプル2の末端方向に対向する面までの距離が距離dよりも長いならば、ピストンロッド11は、単に吐出動作範囲内にて経路dを移動するに過ぎない。仕切りピストン5と2チャンバアンプル2の末端方向対面側部との間の距離が距離dよりも短いならば、混合した製剤8、9は、経路dを完全に移動せずに、2チャンバアンプル2から完全に吐出される。
【0037】
吐出過程の間、球12は、窓部17内に配置され、起動スリーブ15は、球12が窓部17から落下するのを防止する。この時点にて、球12は、ピストンロッド11の周面によって窓部17内に押し込まれたままであるから。起動スリーブ15は、その当初位置に戻ることはできない。
【0038】
2チャンバアンプル2の製剤を再度、混合させ且つ、投与するためには、注射装置をその当初位置に戻さなければならない。この目的のため、ピストンロッド11を、基端方向Dに向けて押す。溝13が球12の軸方向領域に到達すると直ちに、起動スリーブ15に軸方向力を加え、このため、球12の各々にて長手方向軸線Aに対し半径方向に臨んで、力の少なくとも一部を加えるばね25のため、球12は溝13内に押されて戻る。起動スリーブ15は、ばね25の弾性力のため、阻止要素18によりその当初位置にスナップ動作して戻る。次に、面29は、球12を再度、溝13内に確実に保持し、ピストンロッド11はリテーナ16に対し軸方向に動くのが防止される。
【0039】
リテーナ16と、ピストンロッド11と、球12と、ねじ付きナット21と、コイルばね14とから成る機構は、回転ノブ22を混合動作と反対の回転方向に向けて回して戻すことにより、その当初位置に動いて戻る。次に、前側ケーシング部分1には、新たな2チャンバアンプル2を装着し且つ、ねじ接続部26によって後側ケーシング部分10にねじ止めする。そのとき、注射装置は、再度、2チャンバアンプル2内にて/該アンプル2から新たな混合/吐出を行う準備が整う。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】開始状態における、本発明に従った注射装置の断面である。
【図2】混合過程の終了時における、図1の注射装置の断面図である。
【図3】吐出過程の終了時における、図1及び図2の注射装置の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 前側ケーシング部分
2 2チャンバアンプル
3 バイパス路
4 閉止ピストン
5 仕切りピストン
6 溝
7 閉塞体
8 流体製剤
9 溶解すべき製剤
10 後側ケーシング部分
11 ピストンロッド
12 保持手段、球
13 中空部、溝
14 弾性要素、コイルばね
15 起動スリーブ
16 リテーナ
17 窓部
18 阻止要素
19 ねじ付きロッド
20 外ねじ部
21 ねじ付きナット
22 回転ノブ
23 確実係止接続部
24 係止要素
25 ばね
26 ねじ接続部
27 半径方向ヒール部
28 半径方向カラー
29 阻止面、面
30 半径方向案内部
A 長手方向
P 末端方向
D 基端方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2チャンバアンプル(2)を内部に保持し又は受容することのできる前側ケーシング部分(1)と、
b)後側ケーシング部分(10)と、
c)後側ケーシング部分(10)により受容されるねじ付き駆動体(19、21)と、
d)混合動作の間、ねじ付き駆動体(19、21)により末端方向(P)に動かされ且つ、2チャンバアンプル(2)の少なくとも1つの閉止ピストン(4)を従動させるピストンロッド(11)とを備える、2チャンバアンプル(2)と共に使用される注射装置において、
e)ばね要素(14)は、吐出動作中、ピストンロッド(11)を末端方向(P)に押すことを特徴とする、注射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の注射装置において、ばね要素(14)は偏倚され、また、ピストンロッド(11)は、少なくとも1つの保持手段(12)が解放されたとき、解放されることを特徴とする、注射装置。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかに記載の注射装置において、ピストンロッド(11)は、吐出動作中、ねじ付きナット(21)に対する軸方向への動きを実行することを特徴とする、注射装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載の注射装置において、ピストンロッド(11)は、混合動作中、ねじ付きナット(21)に対し軸方向に固定されることを特徴とする、注射装置。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか1つに記載の注射装置において、少なくとも1つの保持手段(12)は、ピストンロッド(11)の中空部(13)と係合し且つ、混合動作中、ピストンロッド(11)に対し固定されることを特徴とする、注射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の注射装置において、少なくとも1つの保持手段(12)は、混合動作中、後側ケーシング部分(10)によって溝(13)内に押し込まれ、このため、少なくとも1つの保持手段(12)は、後側ケーシング部分(10)に沿って相対的に動かされることを特徴とする、注射装置。
【請求項7】
請求項5又は6の何れかに記載の注射装置において、少なくとも1つの保持手段(12)は、混合動作の終了時に到達するピストンロッド(11)の位置にて阻止要素(18)によりピストンロッド(11)の溝(13)内に押し込まれることを特徴とする、注射装置。
【請求項8】
請求項7に記載の注射装置において、阻止要素(18)は、後側ケーシング部分(10)内に導入された窓部を通じて突き出すことを特徴とする、注射装置。
【請求項9】
請求項7又は8の何れかに記載の注射装置において、阻止要素(18)は、後側ケーシング部分(10)を少なくとも部分的に包み込む起動スリーブ(15)に固定されることを特徴とする、注射装置。
【請求項10】
請求項7ないし12の何れか1つに記載の注射装置において、少なくとも1つの阻止要素(18)は、平行移動動作又は回転動作によって少なくとも1つの保持要素(12)を解放し、該阻止要素の各々は、保持要素(12)に作用する力のため、ほぼ半径方向外方に押されることを特徴とする、注射装置。
【請求項11】
請求項8ないし10の何れか1つに記載の注射装置において、吐出過程中、少なくとも1つの保持要素(12)は、その上を摺動する起動スリーブ(15)に対し後側ケーシング部分(10)の窓部(17)内に押し込まれることを特徴とする、注射装置。
【請求項12】
請求項11に記載の注射装置において、弾性要素(25)は、少なくとも1つの保持要素(12)が解放される前に、起動スリーブ(15)がいた位置まで起動スリーブ(15)を動かして戻すことを特徴とする、注射装置。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1つに記載の注射装置において、前側ケーシング部分(1)及び後側ケーシング部分(10)は、互いに取り外し可能に接続されることを特徴とする、注射装置。
【請求項14】
請求項4ないし13の何れか1つに記載の注射装置において、ねじ付き駆動体(19、21)のねじ付きナット(21)に対する少なくとも1つの保持要素(12)の軸方向位置は、リテーナ(16)により一定に保たれることを特徴とする、注射装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか1つに記載の注射装置において、混合動作は、ねじ付き駆動体(19、21)からリテーナ(16)を介してピストンロッド(11)に伝達されることを特徴とする、注射装置。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れか1つに記載の注射装置において、少なくとも1つの保持要素(12)は、少なくとも1つの球(12)であることを特徴とする、注射装置。
【請求項17】
請求項16に記載の注射装置において、溝(13)は、少なくとも1つの球(12)の半径に最大限、相応する深さを呈し、軸方向力がピストンロッド(11)に加わったとき、少なくとも1つの力成分が少なくとも1つの球(12)にて半径方向外方に作用することを特徴とする、注射装置。
【請求項18】
請求項16又は17の何れかに記載の注射装置において、溝(13)は、少なくとも1つの球(12)の直径よりも狭い幅を呈し、軸方向力がピストンロッド(11)に加わったとき、少なくとも1つの力成分が少なくとも1つの球にて半径方向外方に作用することを特徴とする、注射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−68531(P2006−68531A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−254360(P2005−254360)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(503459785)テクファーマ・ライセンシング・アクチェンゲゼルシャフト (100)
【Fターム(参考)】