説明

2位に置換基を有する光学活性キヌクリジノール類の製造方法

【課題】
従来、光学分割法でしか得られなかった2位に置換基を有する光学活性キヌクリジノール類の効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類の製造方法は、所定のルテニウム錯体、および塩基の存在下において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類の製造方法に関し、特に、医薬、農薬等に利用される光学活性な生理活性化合物、または液晶材料等の合成中間体として有用な2位に置換基を有する光学活性シス−3−キヌクリジノール類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然に存在する有機化合物は、光学活性体であるものが多く存在する。その中でも生理活性を有する化合物は、一方の光学異性体のみが望ましい活性を有することが多い。また、望ましい活性を有しない他方の光学異性体は、生体にとって有用な生理活性を有しないばかりでなく、むしろ生体に対し毒性を有する場合があることも知られている。そのため、安全な医薬品合成方法として、目的化合物またはその中間体として高い光学純度を有する光学活性化合物を合成する方法の開発が望まれている。
【0003】
光学活性アルコールは、さまざまな光学活性物質を合成するための不斉源として有用である。光学活性アルコールは一般にラセミ体の光学分割によって、または生物学的触媒や不斉金属錯体を触媒に用いる不斉合成によって製造されている。特に不斉合成による光学活性アルコールの製造は、多量の光学活性アルコールを製造するための不可欠の技術と考えられている。
【0004】
2位に置換基を有する光学活性キヌクリジノール類は、医薬、農薬等に利用される光学活性な生理活性化合物の合成中間体であり、産業上有用な光学活性アルコールの一つである。例えば、光学活性2−(3−ピリジルメチル)−3−キヌクリジノールは、ニコチン性コリン作用受容体の阻害物質の合成中間体であり、様々な中枢神経系障害の治療に有用である(特許文献1および2)。また、光学活性2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールは、サブスタンスP拮抗薬の合成中間体であり、中枢神経系障害やアルツハイマー型老化性痴呆などの治療に有効である(特許文献3〜6)。さらに、3位の水酸基をアミノ基に置換した化合物にも多種多様な生理活性が報告されている(特許文献7)。
【0005】
2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノールの製造方法としては、以下に示すように、ラセミ体のシス−キヌクリジノールを光学分割する方法が報告されている。例えば、ラセミ体の2−アリールメチル−3−キヌクリジノールを光学活性2−メトキシ−2−フェニル酢酸と反応させジアステレオマーにした後、HPLCで分割し、ついで加水分解して目的物を得る方法(非特許文献1)、ラセミ体の2−ジアリールメチル−3−キヌクリジノールを光学活性マンデル酸と反応させてジアステレオマーに変換した後、再結晶により分割し、ついで加水分解して目的物を得る方法(非特許文献2)、ラセミ体の2−ジアリールメチル−3−キヌクリジノールを光学活性カンファー酸と反応させてジアステレオマーにした後、再結晶により分割し、ついで加水分解して目的物を得る方法(非特許文献3)等が知られている。しかし、これらの方法は前もって2位に置換基を有するラセミ体のキヌクリジノールを調製し、これをジアステレオマーに誘導した後、さらに分割、脱保護等の操作を要し煩雑である。
【0006】
さらに、これらの方法は、ラセミ体の2位に置換基を有する3−キヌクリジノールを光学分割して目的の光学異性体を得る手法であり、目的としない他方の光学異性体が残存するため、高い収率で得ることができない。したがってこれらの方法は、2位に置換基を有する光学活性-3-キヌクリジノールを簡便かつ経済的に製造できる方法とは言い難い。
【0007】
2位に置換基をもつシス-3-キヌクリジノールを得る方法としては、ラセミ体2-ジフェニルメチル-3-キヌクリジノンにトリエチル水素化ホウ素リチウム(LiEtBH)を作用させる方法が上記非特許文献3に記載されている。しかし、この方法は当量の還元剤を用いており、また、光学活性体を得るには光学分割を必要とするため効率的ではない。
【0008】
これに対し、光学活性アルコールを得る方法として、プロキラルなカルボニル化合物を不斉金属錯体触媒の存在下で不斉水素化する方法が知られている。特許文献8には、BINAP等の光学活性ジホスフィン化合物を有するルテニウム金属錯体、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等の塩基、及びエチレンジアミン型光学活性ジアミン化合物の存在下でカルボニル化合物を不斉水素化する方法が開示されている。また、特許文献9には、BINAP等の光学活性ホスフィンと光学活性1,2−エチレンジアミン型配位子を有するルテニウム錯体を触媒として使用し、カルボニル化合物を水素化する方法が開示されている。さらに、特許文献10にはSKEWPHOS等の光学活性ホスフィンと光学活性1,2−エチレンジアミン型配位子を有するルテニウム錯体を使用した方法が開示されている。
【0009】
これらの不斉水素化方法を用いた光学活性3−キヌクリジノールの合成法として、特許文献11には、3−キヌクリジノンおよびそのルイス酸との付加物、ならびにこれらに対応する特定の第三および第四塩からなる化合物から選ばれたキヌクリジノン誘導体を、キラルなジホスフィンを有するロジウム、イリジウムまたはルテニウム錯体の存在下で水素化する方法が記載されている。特許文献12には、光学活性2座配位子と光学活性1,2−エチレンジアミン型配位子を有する光学活性ルテニウム錯体と塩基の存在下、3−キヌクリジノンを水素化し光学活性3−キヌクリジノールを製造する方法が開示されている。また、特許文献13には、フェロセン骨格を有する光学活性ホスフィンと1,2−エチレンジアミン型配位子を有するロジウム錯体を触媒として使用し、3−キヌクリジノンを水素化する方法が開示されている。この特許文献中には、3−キヌクリジノン等の置換基を有してもよいプロキラルな環状ケトン類の記載があるものの、2位に置換基を有する3−キヌクリジノンの具体例は記載されていない。すなわち、これらの報告は何れも2位に置換基を有しない3−キヌクリジノンを還元して3−キヌクリジノールを得るものであり、ラセミ体の2位に置換基を有する3−キヌクリジノンから2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノールを合成する例は全く記載されていない。
【0010】
また、動的速度論分割をともなった不斉水素化の例としては、ラセミ体ヒドロキシケトンからの光学活性ジオールの合成などが報告されているが(非特許文献4)、ラセミ体の2位に置換基を有する3−キヌクリジノンから光学活性3−キヌクリジノールを合成する反応例は報告されていない。
【0011】
以上のとおり還元的手法を用いて、ラセミ体の2位に置換基を有するキヌクリジノンを不斉水素化し、2位に置換基を有する光学活性−3−キヌクリジノールを合成する方法はこれまで知られていない。
【特許文献1】特表2002−531564号公報
【特許文献2】国際公開第20000034276号パンフレット
【特許文献3】特許第3273750号公報
【特許文献4】欧州特許第829480号明細書
【特許文献5】特許第2500279号公報
【特許文献6】欧州特許第499313号明細書
【特許文献7】特開2002−020287号公報
【特許文献8】特開平8−225466号公報
【特許文献9】特開平11−189600号公報
【特許文献10】特開2003−252884号公報
【特許文献11】特開平9−194480号公報
【特許文献12】特開2003−277380号公報
【特許文献13】特開2004−292434号公報
【非特許文献1】Bioorg & Med. Chem. Lett. 15,2073−2077(2005)
【非特許文献2】J. Med. Chem. 17, 497−501(1974)
【非特許文献3】Bioorg & Med. Chem. Lett. 8,1703−1706 (1993)
【非特許文献4】Top. Stereochem., 18, 249(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、光学活性ジホスフィン化合物と特定のアミン化合物を配位子とするルテニウム錯体を触媒として、2位に置換基を有するキヌクリジノン類から、これまで光学分割法でしか得られていなかった2位に置換基を有する光学活性キヌクリジノール類の効率的な製造方法を提供することであり、特に2位に置換基を有するシス−3−キヌクリジノール類の効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、2位に置換基を有する光学活性キヌクリジノール類の効率的な製造方法を鋭意検討する中で、合成が容易な炭素上に不斉を有するジホスフィン化合物である光学活性SKEWPHOS(2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン)誘導体化合物、およびある特定のアミン化合物、または光学活性アミン化合物を配位子とする新規ルテニウム錯体触媒が、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類の不斉水素化触媒として優れた性能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は 2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類の製造方法であって、下記一般式(1)
RuXYAB (1)
[一般式(1)中、XおよびYは互いに同一または異なり、水素またはアニオン性基を示し、Aは下記一般式(2)
【化1】

(一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性ジホスフィンを示し、Bは下記一般式(3)
【化2】

(一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R1314およびR15は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。)で表される光学活性アミン化合物を示す。]で表されるルテニウム錯体、および塩基の存在下において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類(ただし、2位の置換基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基またはベンジル基である3−キヌクリジノン類を除く。)を水素と反応させることを特徴とする、前記方法に関する。
【0015】
また本発明は、2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類のジアステレオ選択的かつエナンチオ選択的製造方法であって、下記一般式(1)
RuXYAB (1)
[一般式(1)中、XおよびYは互いに同一または異なり、水素またはアニオン性基を示し、Aは下記一般式(2)
【化3】

(一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性ジホスフィンを示し、Bは下記一般式(3)
【化4】

(一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R1314およびR15は、互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。)で表される光学活性アミン化合物を示す。]で表されるルテニウム錯体、および塩基の存在下において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させることを特徴とする、前記方法に関する。
【0016】
さらに本発明は、一般式(1)を構成するAが、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(SKEWPHOS)、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)ペンタン(TolSKEWPHOS)、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)ペンタン(XylSKEWPHOS)、2,4−ビス−(ジ−4−tert-ブチルフェニルホスフィノ)ペンタン(4−t−BuSKEWPHOS)、2,4−ビス−(ジ-3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)ペンタン(3,5−diEtSKEWPHOS)、または2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチルペンタンである、前記方法に関する。
【0017】
また本発明は、一般式(1)を構成するBが、α−ピコリルアミンである、前記方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類が下記一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物、または一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物の任意の割合による混合物であり、生成する2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類が、下記一般式(6)または一般式(7)で表される2位に置換基を有する光学活性−シス−3−キヌクリジノール類である、前記方法に関する。
【化5】

(一般式(4)、(5)、(6)および(7)中、R16はヘテロ原子を含んでもよく、芳香環により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を示す)
【0019】
また本発明は、一般式(4)〜(7)中のR16が置換基を有してもよい、ジフェニルメチル基、3−ピリジルメチル基またはベンジル基である、前記方法に関する。
【0020】
さらに本発明は、2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類のジアステレオ選択的かつエナンチオ選択的製造への一般式(1)で表されるルテニウム錯体の使用に関する。
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、2位に置換基を有する3−キヌクリジノール類を高い反応収率、かつ高いジアステレオおよびエナンチオ選択性で得ることができる。また、従来の方法では3−キヌクリジノールの水酸基の立体配置を制御することは可能であっても、2位の置換基の立体配置を制御することは困難であり、そのため、2箇所の不斉炭素の立体配置を同時に制御することができなかったが、一般式(1)で表されるルテニウム錯体と塩基の存在下で2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させることにより、ラセミ体の2位に置換基を有するキヌクリジノン類を動的速度論分割を伴って水素化し、2箇所の不斉炭素の立体配置が同時に制御することができる。これにより、単一のジアステレオマーを得ることができ、特に2位に置換基を有する光学活性シス−3−キヌクリジノール類を高い収率で効率的に得ることができる。触媒として使用する一般式(1)で表されるルテニウム錯体と塩基の2成分は、不斉水素化反応が円滑に進行し、高い不斉収率を達成するための必要不可欠な成分であり、1成分たりとも不足すると十分な反応活性で高い光学純度の2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類は得られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明で用いる下記一般式(1)
RuXYAB (1)
で表されるルテニウム錯体は、下記一般式(2)で表される光学活性ジホスフィン化合物A
【化6】

と下記一般式(3)
【化7】

で表される光学活性アミン化合物Bを有し、置換基XおよびYは互いに同一または異なり、水素原子またはアニオン性基を示す。該アニオン性基としてはハロゲン原子やカルボキシル基が好適であるが、その他の各種のアニオン性基であってもよく、例えばアルコキシ基、ヒドロキシ基等も用いることができる。好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アセトキシ基等であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
【0023】
一般式(1)で表される光学活性ルテニウム錯体中の光学活性ジホスフィン化合物Aは、下記一般式(2)で表される。
【化8】

【0024】
一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。
【0025】
ここで、RおよびRとしては、それぞれ脂肪族炭化水素基、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族または芳香脂肪族の炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。RおよびRの例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル等の炭化水素基、およびこれらの炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の許容される置換基を有する炭化水素基等が挙げられる。これらのうち好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基および置換または未置換のフェニル基であり、特に好ましくはメチル基およびフェニル基である。
【0026】
およびRは、炭素原子数1〜3の炭化水素基である場合、好ましくは脂肪族の飽和炭化水素基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が好ましい。
【0027】
、R、RおよびRとしては、それぞれ脂肪族炭化水素基、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族または芳香脂肪族の炭化水素基等が挙げられ、これらの炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。R、R、RおよびRの例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル等の炭化水素基およびこれらの炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の許容される置換基を有する炭化水素基等が挙げられる。これらのうち好ましくはフェニル基および置換フェニル基であり、特に好ましくはフェニル基、ならびにメチル基、エチル基、プロピル基およびtert−ブチル基から選ばれた置換基を少なくとも1個有する置換フェニル基である。
【0028】
一般式(2)で表される光学活性ジホスフィン化合物の例としては、2位および4位にジフェニルホスフィノ基を有するぺンタン誘導体、2位および4位にジ−4−トリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体、2位および4位にジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ基を有するペンタン誘導体、2位および4位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体、2位および4位にジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ基を有するペンタン誘導体、1位および3位にジフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体、1位および3位にジ−4−トリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体、1位および3位にジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体、1位および3位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体、1位および3位にジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体等が挙げられる。
【0029】
[1]2位および4位にジフェニルホスフィノ基を有するぺンタン誘導体としては、3位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、SKEWPHOS:2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチルぺンタン、2,4−ビス-(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチルぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルぺンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタン等が例示される。
【0030】
[2]2位および4位にジ−4−トリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素原子数1から3の1個または2個のアルキル基を有するか、またはアルキル基を有しない、TolSKEWPHOS:2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)
ペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタン等が例示される。
【0031】
[3]2位および4位にジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、4−t−BuSKEWPHOS:2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジメチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−エチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジエチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルペンタン等が例示される。
【0032】
[4]2位および4位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個の有するか、またはアルキル基を有しない、XylSKEWPHOS:2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルぺンタン等が例示される。
【0033】
[5]2位および4位にジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ基を有するペンタン誘導体としては、3位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、3,5−diEtSKEWPHOS:2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジメチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−エチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジエチルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−イソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3,3−ジイソプロピルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−メチルペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−メチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−プロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−エチル−3−イソプロピルぺンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−3−プロピル−3−イソプロピルぺンタン等が例示される。
【0034】
[6]1位および3位にジフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有する、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジnフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス-(ジフェニルホスフィノ)−1,3-ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパン等が例示される。
【0035】
[7]1位および3位にジ−4−トリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス-(ジ−4−トリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパン等が例示される。
【0036】
[8]1位および3位にジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−4−t−ブチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパン等が例示される。
【0037】
[9]1位および3位にジ−3,5−キシリルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス-(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノリル)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−エチル−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパン等が例示される。
【0038】
[10]1位および3位にジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ基を有する1,3−ジフェニルプロパン誘導体としては、2位に炭素原子数1〜3のアルキル基を1個または2個有するか、またはアルキル基を有しない、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジエチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−ジイソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−メチルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3ジフェニル−2−メチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−メチル−2−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−エチル−2−プロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2,2−エチル−イソプロピルプロパン、1,3−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)−1,3−ジフェニル−2−プロピル−2−イソプロピルプロパン等が例示される。
【0039】
これらのうち、特にSKEWPHOS、TolSKEWPHOS、3,5−EtSKEWPHOS、t−BuSKEWPHOS、およびXylSKEWPHOSが好適である。しかし、もちろん本発明に用いることのできる光学活性ジホスフィン化合物はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0040】
一般式(1)で表される光学活性ルテニウム錯体中、下記一般式(3)で表されるジアミン配位子Bにおいて、
【化9】

一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。R12、R13、R14、およびR15は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して飽和または不飽和の炭化水素基、例えばアルキレン基、アルケニレン基等を形成してもよい。
【0041】
ここで、Rとしては、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環または多環の芳香族または芳香脂肪族の炭化水素基等が挙げられ、これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。Rの例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル等の炭化水素基、およびこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の許容される各種の置換基を有する炭化水素基が挙げられる。これらのうち好ましくは水素原子、アルキル基、フェニル基、およびフェニルアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0042】
上記のR10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基であり、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族または芳香脂肪族の炭化水素基等が挙げられる。これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。R10およびR11の例としては、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル等の炭化水素基、およびこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の許容される各種の置換基を有する炭化水素基が挙げられる。これらのうち好ましくは水素原子、アルキル基、フェニル基、フェニルアルキル基等であり、特に好ましくは全てが水素原子である。
【0043】
上記のR12、R13、R14およびR15は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14、またはR14とR15が互いに連結してアルキレン基、アルケニレン基等を形成してもよい。R12、R13、R14およびR15としては水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環族の飽和または不飽和の炭化水素基、単環の芳香族または芳香脂肪族の炭化水素基等が挙げられ、これら炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。例えば、水素原子、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、フェニル、ナフチル、フェニルアルキル等の炭化水素基、およびこれら炭化水素基に更にアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、アシルオキシ、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の許容される各種の置換基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0044】
12とR13、R13とR14またはR14とR15は互いに連結する場合、置換もしくは未置換の脂肪族式環、置換もしくは未置換の炭素環、置換もしくは未置換の複素環等が挙げられる。これらのうち好ましくは水素原子、アルキル基、フェニル基、及びフェニルアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、および水素原子である。一般式(3)で表されるジアミン化合物としては、PICA:α−ピコリルアミン、3−Me−PICA:2−アミノメチル−3−メチルピリジン、4−Me−PICA:2−アミノメチル−4−メチルピリジン、5−Me−PICA:2−アミノメチル−5−メチルピリジン、6−Me−PICA:2−アミノメチル−6−メチルピリジン、3−Et−PICA:2−アミノメチル−3−エチルピリジン、4−Et−PICA:2−アミノメチル−4−エチルピリジン、5−Et−PICA:2−アミノメチル−5−エチルピリジン、6−Et−PICA:2−アミノメチル−6−エチルピリジン、MPICA:2−N−メチルアミノメチルピリジン、EPICA:2−N−エチルアミノメチルピリジン、PPICA:2−N−プロピルアミノメチルピリジン、iPPICA:2−N−イソプロピルアミノメチルピリジン、BPICA:2−N−n−ブチルアミノメチルピリジン、t−BPICA:2−N−t−ブチルアミノメチルピリジン、PhPICA:2−N−フェニルアミノメチルピリジン、BnPICA:2−N−ベンジルアミノメチルピリジン、AMQ:2−アミノメチルキノリン、AMQ:2−N−メチルアミノメチルキノリン、AMQ:2−N−エチルアミノメチルキノリン、AMQ:2−N−プロピルアミノメチルキノリン、AMQ:2−N−イソプロピルアミノメチルキノリン、AMQ:2−N−n−ブチルアミノメチルキノリン、AMQ:2−N−t−ブチルアミノメチルキノリン、3−AMIQ:3−アミノメチルイソキノリン、9−AMIQ:9−アミノメチルイソキノリン等が例示される。これらのうち、特にPICAが好適である。
【0045】
本発明で用いる一般式(1)で表されるルテニウム錯体は、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させる際に、その反応系中(in situ)で調製してもよい。その方法に特に制限されないが、一例としては、前駆体である下記一般式(8)
RuXYA (8)
(XおよびYは互いに同一または異なり、水素またはアニオン性基を示し、Aは、下記一般式(2)を示し、
【化10】

【0046】
(一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性ジホスフィン化合物と、下記一般式(3)
【化11】

【0047】
(一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R1314およびR15は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。)で表されるジアミン化合物を、各々約1:1のモル比で、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させる容器に仕込み、さらに塩基を仕込むことにより、一般式(1)で表されるルテニウム錯体をその反応系中(in situ)で調製することができる。
【0048】
また、一般式(1)および一般式(8)で示されるルテニウム錯体は、その合成に用いる反応試剤である有機化合物を1個ないし複数個含む場合がある。ここで、有機化合物は配位性の有機溶媒を意味し、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキシルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO、トリエチルアミン等のヘテロ原子を含む有機溶剤等が例示される。
【0049】
水素化反応に用いる2位に置換基を有するキヌクリジノン類の例としては、以下の化合物が挙げられる。
[1]2位のみに置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−ピリジルメチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン、2−ジ(4−フルオロフェニル)メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−3−キヌクリジノン、2,2−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−エチル−3−キヌクリジノン、2,2−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2,2−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2,2−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ブチル−3−キヌクリジノン。
【0050】
[2]2位および4位に置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−メチル−4−メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−エチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−4−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−エチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−4−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−メチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−エチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−4−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−メチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−エチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−4−t−ブチル−3−キヌクリジノン、または2−ピリジルメチル−4−ベンジル−3−キヌクリジノン。
【0051】
[3]2位および5位に置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−メチル−5−メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5,5−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−エチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5,5−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5,5−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5,5−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5,5−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−5−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0052】
2−ベンジル−5−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5,5−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−エチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5,5−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5,5−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5,5−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5,5−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−5−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0053】
2−ジフェニルメチル−5−メチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5,5−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−エチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5,5−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5,5−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5,5−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5,5−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−5−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−メチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5,5−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−エチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5,5−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5,5−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5,5−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−ジ5,5−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−5−t−ブチル−3-キヌクリジノン、または2−ピリジルメチル−5−ベンジル−3−キヌクリジノン。
【0054】
[4]2位および6位に置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−メチル−6−メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6,6−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6−エチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6,6−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6,6−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6,6−ジi-プロピル−3−キヌクリジノン、6−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6,6−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−6−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6,6−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−エチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6,6−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6,6−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6,6−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、6−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6,6−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−6−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0055】
2−ジフェニルメチル−6−メチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6,6−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−エチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6,6−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6,6−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6,6−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6,6−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−6−ベンジル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6−メチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6,6−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6−エチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6,6−ジエチル−3−キヌクリジノン、6−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6,6−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6,6−ジi-プロピル-3-キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6,6−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−6−t−ブチル−3−キヌクリジノン、または2−ピリジルメチル−6−ベンジル−3−キヌクリジノン。
【0056】
[5]2位および7位に置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−メチル−7−メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7,7−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−エチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7,7−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7,7−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7,7−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7,7−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−7−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0057】
2−ベンジル−7−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7,7−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−エチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7,7−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7,7−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7,7−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7,7−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−7−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0058】
2−ジフェニルメチル−7−メチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7,7−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7−エチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7,7−ジエチル−3−キヌクリジノン2−ジフェニルメチル−、2−ジフェニルメチル−7−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7,7−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7,7−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7,7−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−7−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0059】
2−ピリジルメチル−7−メチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7,7−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7−エチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7,7−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7,7−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7,7−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7,7−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−7−t−ブチル−3−キヌクリジノン、または2−ピリジルメチル−7−ベンジル−3−キヌクリジノン。
【0060】
[6]2位および8位に置換基を有するキヌクリジノン誘導体:
2−メチル−8−メチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8,8−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8−エチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8,8−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8,8−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8,8−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8−ブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8,8−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−メチル−8−t−ブチル−3−キヌクリジノン、8−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−メチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8,8−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−エチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8,8−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8,8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8,8−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8,8−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ベンジル−8−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2,8−ジベンジル−3−キヌクリジノン、
【0061】
2−ジフェニルメチル−8−メチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8,8−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−エチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8,8−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−ジ8,8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8,8−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8,8−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−t−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ジフェニルメチル−8−ベンジル−3−キヌクリジノン、
【0062】
2−ピリジルメチル−8−メチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8,8−ジメチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8−エチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8,8−ジエチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8−n−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8,8−ジn−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8−i−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8,8−ジi−プロピル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8−ブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8,8−ジブチル−3−キヌクリジノン、2−ピリジルメチル−8−t−ブチル−3−キヌクリジノン、または2−ピリジルメチル−8−ベンジル−3−キヌクリジノン。
【0063】
その他、2位と2位以外の複数の位置に置換基を有するキヌクリジノン誘導体等をケトン基質として使用できる。置換基の数は、置換基の位置が2位および4位の場合は当該炭素原子に対して1個であり、5位、6位、7位および8位の場合は当該炭素原子に対して1個または2個である。キヌクリジノン全体では、存在していても良い置換基数は1個から10個である。
【0064】
一般式(1)で表されるルテニウム錯体の合成は、一例として一般式(8)で表される光学活性ルテニウム錯体と、アミン化合物または光学活性アミン化合物とを反応させることにより行うことができる。一般式(8)で表される光学活性ルテニウム錯体の合成は、光学活性ジホスフィン化合物と、原料であるルテニウム錯体と反応させることにより行うことができる。一般式(8)で表される錯体は、前述のように予め調製したものを用いてもよく、水素化反応の系中で調製したものを用いてもよい。一般式(1)で表されるルテニウム錯体の調製法は、用いる原料の構造を含めて現在までに報告された何れの方法でも用いることができ、特に制限されないが、その実施態様の一つを以下に示す。
【0065】
錯体合成のための出発物質であるルテニウム錯体には、0価、1価、2価、3価およびさらに高原子価のルテニウム錯体を用いることができる。0価および1価のルテニウム錯体を用いた場合には、最終段階までにルテニウムの酸化が必要である。2価の錯体を用いた場合には、ルテニウム錯体と光学活性ジホスフィン化合物、および光学活性ジアミン化合物を順次もしくは逆の順で、または同時に反応させることにより合成できる。3価および4価以上のルテニウム錯体を出発原料に用いた場合には、最終段階までにルテニウムの還元が必要である。
【0066】
出発原料となるルテニウム錯体は、塩化ルテニウム(III)水和物、臭化ルテニウム(III)水和物、沃化ルテニウム(III)水和物等の無機ルテニウム化合物、[2塩化ルテニウム(ノルボルナジエン)]多核体、[2塩化ルテニウム(シクロオクタ−1,5−ジエン)]多核体、ビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタ−1,5ジエン)等のジエンが配位したルテニウム化合物、[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]多核体、[2塩化ルテニウム(p−シメン)]多核体、[2塩化ルテニウム(トリメチルベンゼン)]多核体、[2塩化ルテニウム(ヘキサメチルベンゼン)]多核体等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体、またはジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のホスフィンが配位した錯体等を用いる。その他、光学活性ジホスフィン化合物、光学活性ジアミン化合物と置換可能な配位子を有するルテニウム錯体であれば、特に上記の錯体に限定されるものではない。例えば、COMPREHENSIVEORGANOMETALLIC HEMISTRY II 7巻 p294−296(PERGAMON)に示された、種々のルテニウム錯体を出発原料として用いることができる。
【0067】
3価のルテニウム錯体を出発原料として用いる場合には、例えば、ハロゲン化ルテニウム(III)を過剰のホスフィンと反応することにより、ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を合成することができる。次いで得られたホスフィン−ルテニウムハライド錯体を、アミンと反応させることにより、目的とする一般式(1)で表されるアミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。例えば、この合成については、文献[J. Mol. Cat., 15, 297(1982)]を参照することができる。
【0068】
すなわち、Inorg, Synth., vol 12, 237(1970)に記載の方法により合成されたRuCl(PPhをベンゼン中、エチレンジアミンと反応させ、RuCl(PPh(en)を得ることができる(ただし収率の記載がない)。ただ、この方法は、反応が不均一系であり、未反応の原料が残存する傾向が見られる。一方、反応溶媒として塩化メチレン、クロロホルム等を用いる場合には、反応を均一状態で行うことができ、操作性が向上する。
【0069】
ハロゲン化ルテニウムとホスフィン配位子との反応は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO等のヘテロ原子を含む有機溶剤中、反応温度−100℃から200℃の間で行い、一般式(8)で表されるホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
【0070】
得られた、一般式(8)で表されるホスフィン−ルテニウムハライド錯体と一般式(3)で表されるアミン配位子との反応は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール。ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO等のヘテロ原子を含む有機溶剤中、反応温度−100℃から200℃の間で行い、一般式(1)で表されるアミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
【0071】
一方、最初から二価のルテニウム錯体を用い、二価のルテニウム錯体と、ホスフィン化合物、アミン化合物を順次、もしくは逆の順で、または同時に反応させる方法も用いることができる。一例として、[2塩化ルテニウム(ノルボルナジエン)]多核体、[2塩化ルテニウム(シクロオク−1,5−タジエン)]多核体、ビス(メチルアリル)ルテニウム(シクロオクタジエン)等のジエンが配位したルテニウム化合物、[2塩化ルテニウム(ベンゼン)]二核体、[2塩化ルテニウム(p−シメン)]二核体、[2塩化ルテニウム(トリメチルベンゼン)]二核体、[2塩化ルテニウム(ヘキサメチルベンゼン)]二核体等の芳香族化合物が配位したルテニウム錯体、また、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のホスフィンが配位した錯体を、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO等のヘテロ原子を含む有機溶剤中、反応温度−100℃から200℃の間で、ホスフィン化合物と反応させ、一般式(8)で表されるホスフィン−ルテニウム−メチルアリル錯体を得ることができる。
【0072】
得られた一般式(8)で表されるホスフィン−ルテニウムハライド錯体とジアミン化合物の反応は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、塩化メチレン等のハロゲン含有炭化水素溶媒、エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパンノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、DMF、N−メチルピロリドン、DMSO等のヘテロ原子を含む有機溶媒中、反応温度−100℃から200℃の間で、アミン配位子と反応させ、アミン−ホスフィン−ルテニウム錯体を得ることができる。また、同様の条件で、[クロロルテニウム(BINAP)(ベンゼン)]クロライド等のカチオン性ルテニウム錯体をアミン配位子と反応させて、一般式(1)で表されるアミン−ホスフィン−ルテニウムハライド錯体を得ることができる。
【0073】
以上のように合成できる一般式(1)で表されるルテニウム錯体を水素化触媒として用いる場合、その使用量は反応容器や経済性によって異なるが反応基質である2位に置換基を有するキヌクリジノン類に対して1/100〜1/10,000,000の範囲で用いることができ、好ましくは1/500〜1/1,000,000の範囲で用いることができる。
【0074】
一般式(1)で表されるルテニウム錯体は、X,Yが水素の場合は、塩基を添加することなしに、2位に置換基を有するキヌクリジノン類と混合後、水素圧をかけ攪拌することにより反応を行っても良い。これにより、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類の水素化を行うことができる。但し、塩基を添加しない場合には、3−キヌクリジノン類の2位の不斉炭素が十分に動的速度論的に分割されず、生成物である2位に置換基を有する3−キヌクリジノールのシス選択性や光学純度が低下する場合があるため、塩基を添加した方が好ましい。一方、X,Yが、水素以外の基である場合には、塩基存在下、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類と混合後、水素圧をかけ攪拌することにより、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類の水素化を行うことが必要である。
【0075】
以上の通り、触媒として使用する一般式(1)に示したルテニウム錯体と塩基の2成分は、不斉水素化反応が円滑に進行し、高い不斉収率を達成するためには必要不可欠の成分であり、1成分たりとも不足すると十分な反応活性で高い光学純度の光学活性アルコールは得られない。
【0076】
また、本発明に用いる塩基としては、KOH、KOCH、KOCH(CH、KOC(CH、KC10、LiOH、LiOCH、LiOCH(CH、LiOC(CH等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩、4級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの塩基は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの塩基のうち、好ましくはKOH及びKOCH(CHであり、特に好ましくはKOCH(CHである。添加する塩基の量は、反応混合物中の塩基濃度が0.001〜0.1mol/Lになる量、好ましくは0.01〜0.05mol/Lになる量である。
【0077】
溶媒の量は反応基質の溶解度および経済性により判断する。例えば、2−プロパノールの場合、基質濃度は、基質によっては1重量%以下の低濃度から無溶媒に近い状態で反応を行うことができるが、好ましくは20〜50重量%で用いる。
【0078】
本発明における水素の圧力は1〜200気圧の範囲であり、好ましくは3〜100気圧の範囲である。
【0079】
反応温度は、その上限は触媒として用いるルテニウム錯体の分解が生起しない範囲に、下限は活性を考慮して設定することが必要であり、本願記載の触媒系の場合には、25〜40℃の室温付近で反応させるのが好ましく、かかる温度範囲は経済性の観点からも優れたものといえる。反応時間は反応溶媒、反応基質濃度、温度、圧力、基質/触媒比等の反応条件によって異なるため、反応操作の容易さと経済性の両面を考慮し、数分から数十時間で反応が完結するよう任意に設定することができる。なお仮に、カルボニル基の還元反応が完結した後に、そのまま継続して反応操作を続行していたとしても、生成物である光学活性−シス−3−キヌクリジノール類の2箇所ある不斉炭素のラセミ化はなく、光学純度の低下は殆ど認められない。従って本発明の実施に際しては、反応の進行度を絶えずモニターする必要は無く、反応完結後に直ちに反応を打ち切る必要も無い。即ち、反応時間は実質的な反応完結時間よりも長めに設定することができ、工業的な実施に際しては有利な方法である。
【0080】
上記記載の方法により、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を還元することにより、2位に置換基を有する光学活性シス−3−キヌクリジノール類を得ることができる。本願記載の方法によれば、下記一般式(4)で表される2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類、または下記一般式(5)で表される2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類、さらには下記一般式(4)で表される2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類と下記一般式(5)で表される2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類が任意の割合で混合した化合物でも、下記一般式(6)で表される2位に置換基を有する光学活性−シス−3−キヌクリジノール類または下記一般式(7)で表される2位に置換基を有する光学活性−シス−3−キヌクリジノール類の何れか一方を作り分けることができる。ここで、R16は、好ましくは置換基を有してもよいジフェニルメチル基、置換基を有してもよい3−ピリジニルメチル基または置換基を有してもよいベンジル基である。
【0081】
【化12】

【0082】
この理由は、本発明の方法によれば、一般式(1)で表されるルテニウム錯体と塩基からなる触媒系において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類は動的速度論分割をともなって不斉水素化されるため、本願記載の方法は、2箇所の不斉点を同時に制御し、2位に置換基を有する光学活性シス−キヌクリジノール類を極めて効率的に製造できるこれまでにない利点を有している。
【0083】
一般式(1)で表されるルテニウム錯体中の一般式(2)で表される光学活性ジホスフィン化合物のうち、これらのR体またはS体のいずれかを選択することにより、所望する絶対配置の2位に置換基を有する光学活性−シス−3−キヌクリジノール類を作り分けることができる。
【0084】
また、一般式(1)で表されるルテニウム錯体中のジホスフィン化合物の絶対構造とジアミン化合物の絶対構造の組み合わせ、および一般式(5)で表される光学活性ルテニウム錯体中のジホスフィン化合物の絶対構造と添加する光学活性アミン化合物の絶対構造の組み合わせが、高い光学収率を得るために重要である。
【0085】
本発明の方法によっても、基質の構造次第では光学活性−トランス−3−キヌクリジノール類が微量副生することがあるが、反応により得られた光学活性キヌクリジノールは、適宜再結晶法やジアステレオマー法等の従来既知の光学純度を高める方法を用いて精製する容易な操作により、2位に置換基を有する光学的に純粋なシス−3−キヌクリジノール類を得ることができる。
【実施例】
【0086】
本発明におけるカルボニル化合物の水素化反応は、反応形式が、バッチ式のおいても連続式においても実施することができる。以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、下記の実施例においては、反応はすべてアルゴンガスまたは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行った。また、反応に使用した溶媒は、乾燥、脱気したものを用いた。カルボニル化合物の水素化の反応は、オートクレーブ中、水素を加圧して行った。
【0087】
なお、以下の測定には次の機器を用いた。
NMR:LA400型装置(400MHz)
(日本電子(株)製)
内部標準物質:H−NMR・・・テトラメチルシラン
外部標準物質:31P−NMR 85%リン酸
光学純度:高速液体クロマトグラフィー
日本分光(株)製
BETA DEX 120(0.25mm×30m、DF=0.25μm)
(SUPELCO社製)
【0088】
〔実施例1〕
RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)の合成
(1)Ru[(S,S)−xylskewphos](メチルアリル)の合成
アルゴン置換した50mlシュレンク管に(S,S)−xylSKEWPHOS(110mg,0.2mmol)、Ru(シクロオクタ−1,5−ジエン)(メチルアリル)(64mg,0.2mmol)を仕込んだ。その後、ヘキサン5mLを加え70℃で6時間攪拌した。不溶物をガラスフィルターで濾過し、溶媒留去した。
【0089】
(2)RuBr[(S,S)−xylskewphos]の合成
Ru[(S,S)−xylskewphos](メチルアリル)錯体(153mg、0.2mmol)をアセトン15mlに溶解し、47%HBrメタノール溶液(0.046ml、0.4mmol)を加え、脱気を行い室温で30分攪拌した。溶媒留去後、精製せずに次の反応に用いた。
【0090】
(3)RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)の合成
RuBr[(S,S)−xylskewphos]錯体(163mg、0.2mmol)にα−ピコリルアミン(21.6mg,0.2mmol)を仕込み、アルゴン置換した。次いで、ジメチルホルムアミド(5ml)を加え、脱気を行い室温で一晩攪拌した。反応液をシリカゲルを詰めたガラスフィルターを通して濾過後、溶媒留去し、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)xmg(%収率)を得た。
31P−NMRスペクトル(161.7MHz,C):δ62.4(d,J=42Hz),43.5(d,J=43Hz)。
【0091】
〔実施例2〕
RuBr[(S,S)−tolskewphos](pica)の合成
実施例1で用いたXylSKEWPHOSの代わりにTolSKEWPHOSをジホスフィン配位子に用いた以外、実施例1と同様に合成し、RuBr[(S,S)−tolskewphos](pica)xmg(%収率)を得た。
31P−NMRスペクトル(161.7MHz,C):δ(d,J=43Hz),(d,J=43Hz)。
【0092】
〔実施例3〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノール製造
2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン0.499g(1.71mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)1.58mg(1.71×10−3mmol、S/C=1000)、KOtBu7.74mg(0.068mmol)、およびエタノール3.4mLを、アルゴン雰囲気下でオートクレーブ中に入れ、水素で10気圧に加圧して、30℃で18時間攪拌したところ、光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールが収率100%で得られた。NMRからシス体のみが生成したことを確認した。また、HPLC(Daicel Chiralcel OD−H, Hexane/2−propanol/diethylamine=80/20/0.1,0.5mL/min,25℃、シス体中2種の光学異性体のレテンションタイムは11.3minおよび26.5min)により光学純度を測定した結果、71%eeであった。
【0093】
〔実施例4〜7〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールの製造
反応温度、基質濃度およびKOtBu量(対Ruモル)を以下のように変更した以外、実施例3と同様の条件で反応を行った。各種反応条件でも、水素化は良好に進行し、光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールが得られることを確認した。
【0094】
【表1】

【0095】
〔実施例8〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールの製造
2-ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン3.17g(10.9mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)1.02mg(1.11×10−3mmol、S/C=10000)、KOtBu47.2mg(0.42mmol)、およびエタノール21mLを、アルゴン雰囲気下でオートクレーブ中に入れ、水素で10気圧に加圧し、40℃で18時間攪拌したところ、光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールが収率100%で得られた。NMRからシス体のみが生成したことを確認した。また、光学純度は75%eeであった。得られた光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノール3.2gをエタノール100mLから再結晶し、光学純度99%eeの光学活性-シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールを2.2g得た。
【0096】
〔実施例9〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールの製造
2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン0.506g(1.74mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)1.58mg(1.71×10−3mmol、S/C=1000)、KOtBu15.3mg(0.136mmol)、テトラヒドロフラン3.4mL、およびエタノール3.4mLを、アルゴン雰囲気下でオートクレーブ中に入れ、水素で10気圧に加圧し、40℃で18時間攪拌したところ、光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールが定量的に得られた。NMRによりシス体のみが生成していることを確認した。光学純度は93%eeであった。
【0097】
〔実施例10〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールの製造
RuBr[(S,S)−tolskewphos](pica)を用いた以外は実施例9と同様の条件で反応したところ、光学純度88%eeの光学活性-シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールが定量的に得られたことを確認した。
【0098】
〔実施例11〕
光学活性−シス−2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノールの製造
2−ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン16.2g(55.6mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)1.03mg(1.12×10−3mmol、S/C=50000)、KOtBu0.50g(4.5mmol)、テトラヒドロフラン110mL、およびエタノール110mLを、アルゴン雰囲気下でオートクレーブ中に入れ、水素で10気圧に加圧し、40℃で18時間攪拌したところ、光学活性2−(3−ピリジニルメチル)−3−キヌクリジノールが96%収率で得られた。NMRから、シス体のみが得られたことを確認した。また、光学純度は85%eeであった。
【0099】
〔実施例12〕
光学活性2−(3−ピリジニルメチル)−3−キヌクリジノールの合成
2−[3−ピリジニルメチル]ジフェニルメチル−3−キヌクリジノン0.506g(2.34mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)2.13mg(2.31×10−3mmol、S/C=1000)、KOtBu7.74mg(0.069mmol)、トリイソプロピルボラート5.4μl(0.233×10−2mmolmmol)およびエタノール3.4mLを、アルゴン雰囲気下でオートクレーブ中に入れ、水素で10気圧に加圧し、30℃で18時間攪拌したところ、光学活性−2−(3−ピリジニルメチル)−3−キヌクリジノールが定量的に得られたことを確認した。NMRから一方のジアステレオマーのみが得られたことを確認した。HPLC(Daicel Chiralcel OD−Hを2本直列接続,Hexane/2−propanol/diethylamine=80/20/0.1,0.3mL/min,25℃、得られたジアステレオマー中2種の光学異性体のレテンションタイムは64.0minおよび83.2min)により光学純度を測定した結果96.2%eeであった。
【0100】
〔実施例13〕
光学活性2−ベンジル−3−キヌクリジノールの合成
2−ベンジル−3−キヌクリジノン0.503g(2.35mmol)、RuBr[(S,S)−xylskewphos](pica)2.17mg(2.35×10−3mmol、S/C=1000)、KOtBu7.74mg(0.069mmol)、エタノール3.4mLを、アルゴン雰囲気下にオートクレーブに入れ、水素10気圧で加圧して、30℃にて20時間攪拌したところ、光学活性−2−ベンジル−3−キヌクリジノールが定量的に得られたことを確認した。NMRから一方のジアステレオマーのみが得られたことを確認した。GC(SUPELCO BETA DEX 120、0.25mm×30m、DF=0.25μm)により光学純度を測定した結果、95%eeであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類の製造方法であって、下記一般式(1)
RuXYAB (1)
[一般式(1)中、XおよびYは互いに同一または異なり、水素またはアニオン性基を示し、Aは下記一般式(2)
【化1】

(一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性ジホスフィンを示し、Bは下記一般式(3)
【化2】

(一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R1314およびR15は、互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。)で表される光学活性アミン化合物を示す。]で表されるルテニウム錯体、および塩基の存在下において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類(ただし、2位の置換基がメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基またはベンジル基である3−キヌクリジノン類を除く。)を水素と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類のジアステレオ選択的かつエナンチオ選択的製造方法であって、下記一般式(1)
RuXYAB (1)
[一般式(1)中、XおよびYは互いに同一または異なり、水素またはアニオン性基を示し、Aは下記一般式(2)
【化3】

(一般式(2)中、RおよびRは互いに同一または異なり、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい環状炭化水素基を示し、RおよびRは互いに同一または異なり、水素または炭素原子数1〜3の炭化水素基を示し、R、R、RおよびRは互いに同一または異なり、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、*は不斉炭素原子を示す。)で表される光学活性ジホスフィンを示し、Bは下記一般式(3)
【化4】

(一般式(3)中、Rは水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、R10およびR11は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR10とR11が互いに連結して、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、ハロゲン基、ニトロ基またはシアノ基を有していてもよい、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよく、R12、R1314およびR15は互いに同一または異なり、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、または置換基を有していてもよい環状炭化水素基を示し、場合によってR12とR13、R13とR14またはR14とR15が互いに連結して、飽和または不飽和の炭化水素基を形成してもよい。)で表される光学活性アミン化合物を示す。]で表されるルテニウム錯体、および塩基の存在下において、2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類を水素と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の一般式(1)を構成するAが、2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−4−トリルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−キシリルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ-4−tert-ブチルフェニルホスフィノ)ペンタン、2,4−ビス−(ジ−3,5−ジエチルフェニルホスフィノ)ペンタン、または2,4−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−3−メチルペンタンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の一般式(1)を構成するBが、α−ピコリルアミンである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
2位に置換基を有する3−キヌクリジノン類が下記一般式(4)で表される化合物、一般式(5)で表される化合物、または一般式(4)で表される化合物と一般式(5)で表される化合物の任意の割合による混合物であり、生成する2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類が、下記一般式(6)または一般式(7)で表される2位に置換基を有する光学活性−シス−3−キヌクリジノール類である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【化5】

(一般式(4)、(5)、(6)および(7)中、R16はヘテロ原子を含んでもよく、芳香環により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。)
【請求項6】
請求項5に記載の一般式(4)〜(7)中のR16がジフェニルメチル基、3−ピリジルメチル基またはベンジル基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2位に置換基を有する光学活性3−キヌクリジノール類のジアステレオ選択的かつエナンチオ選択的製造への請求項1〜4のいずれかに記載の一般式(1)で表されるルテニウム錯体の使用。

【公開番号】特開2008−88089(P2008−88089A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269610(P2006−269610)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【Fターム(参考)】