説明

2光子吸収記録材料、それを用いた2光子吸収光記録再生方法および2光子吸収記録媒体

【課題】400〜550nm近傍の波長領域にモル吸光係数の大きい蛍光性色素を生成させることで、上記波長範囲の再生レーザー光を用いて高感度に再生を行うことができる同時2光子吸収記録材料、それを用いた2光子吸収光記録再生方法記録媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の2光子吸収化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される蛍光色素前駆体を含有する同時2光子吸収記録材料。該記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して記録を行った後、レーザー光を該記録材料に照射してその蛍光強度の違いを検出することにより記録再生することができ、該記録材料をもちいて2光子吸収記録媒体とすることができ、また該記録材料を含む記録層を有する多層記録媒体とすることもできる。


式中、R〜Rはそれぞれ独立に置換基等を、m及びnは0〜3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2光子吸収記録材料、それを用いた2光子吸収光記録再生方法および2光子吸収記録媒体に関し、詳細には、550nm以下の波長領域で再生感度が向上する2光子吸収記録材料、それを用いた2光子吸収光記録再生方法および2光子吸収記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても「2光子吸収」とは「非共鳴2光子吸収」を指す。また、「同時2光子吸収」の「同時」を略して単に「2光子吸収」と記すこともある。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
【0006】
本出願人は、これまで、非共鳴2光子吸収を誘起する化合物を用いる2光子増感型3次元記録材料に関する種々の出願を行ってきた。この記録材料は少なくとも
(1)2光子吸収化合物(2光子増感剤)、
(2)屈折率変調材料または蛍光強度変調材料、
とを含み、
(1)が効率良く2光子吸収を行い、獲得した光エネルギーを光誘起電子移動やエネルギー移動によって(2)へと受け渡して(2)の屈折率または蛍光強度を変化させることにより記録を行う記録材料である。
光吸収過程に通常の光記録で用いる1光子吸収ではなく、非共鳴2光子吸収を用いることで、記録材料内部の任意の位置に3次元空間分解能を有して記録ピットを書き込むことができるようになる。
【0007】
例えば、特許文献1には、(2)屈折率または蛍光強度変調材料として、色素を発色させることで屈折率を変調するものと、無蛍光から蛍光発光または蛍光発光から無蛍光にさせることで蛍光変調するもの(色素発色または蛍光色素発色により屈折率または蛍光変調する材料)を用いた技術が開示されている。また、特許文献2には、(2)屈折率または蛍光強度変調材料として、極微小に色素発色または蛍光変化した種(潜像核)を形成し、その後に光照射または加熱することにより記録増幅するもの(屈折率/蛍光変調;潜像増幅方式、色素発色により屈折率/蛍光変調する潜像を形成する材料)を用いた技術が開示されている。
【0008】
そして、特許文献1には、下記に示す、3位アミノ窒素上にアシル基を有するフェノキサジン化合物Lo-4を蛍光強度変調材料として用いることが開示されている。
【0009】
【化1】

【0010】
なお、非特許文献1等には、染料として、3,6位のアミノ窒素上にそれぞれ1つ以上のアシル基を有するベンゾフェノキサジン化合物について開示され、また他の刊行物においても該ベンゾフェノキサジン化合物を感熱性の発色剤として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−87532号公報
【特許文献2】特開2005−320502号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ラマイア・マスヤアーラ(RAMAIAH MUTHYALA)著、「ケミストリー・アンド・アプリケーションズ・オブ・ロイコ・ダイズ(CHEMISTRY AND APPLICATIONS OF LEUCO DYES)」、プレナン・プレス(PLENUM PRESS)発行、1997年、p.78−83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1では、蛍光を発しない蛍光色素前駆体を2光子吸収によって蛍光色素に変化させ、記録部に蛍光シグナルを発現させることで、シグナル/ノイズ比の向上を目指した2光子吸収3次元記録材料が提示されているが、記録再生感度という観点からは不十分なものであった。また、特許文献1においては、上記の3位アミノ窒素上にアシル基を有するフェノキサジン化合物は、蛍光強度変調材料の例示として挙げられてるものに過ぎず、具体的な実施例としてそれを用いた場合の再生感度が示されているものではない。また、近年、さらなる高密度記録を実現するために、再生光の短波長化、具体的には400〜550nm近傍波長のレーザー光の利用が試みられているが、上記特許文献1では発生する蛍光色素の吸収極大波長におけるモル吸光係数が小さく、上記波長範囲のレーザー光の利用という観点では効率が低いため信号強度が不十分なものであった。
本発明は、2光子吸収を利用して蛍光発光強度が変化することによって記録を行う記録材料に関するものであり、具体的には400〜550nm近傍の波長領域にモル吸光係数の大きい蛍光性色素を生成させることで、上記波長範囲の再生レーザー光を用いて高感度に再生を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らの鋭意検討の結果、下記構成により、上記課題を解決できることを見出した。
【0015】
(1)少なくとも1種の2光子吸収化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される蛍光色素前駆体を含有する同時2光子吸収記録材料。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(1)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、RとRおよびRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、R又はRがそれぞれ複数ある場合隣り合うものは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0018】
(2)一般式(1)において、Rが炭素数4以下のアルキル基であることを特徴とする前記(1)の同時2光子吸収記録材料。
(3)一般式(1)において、R、Rが、それぞれ独立に、アルキル基、分岐アルキル基またはアリール基であることを特徴とする前記(1)または(2)の同時2光子吸収記録材料。
(4)一般式(1)において、R、Rが、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基または分岐アルキル基であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかの同時2光子吸収記録材料。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの同時2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して記録を行った後、レーザー光を該記録材料に照射してその蛍光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする同時2光子吸収光記録再生方法。
(6)記録光照射部において記録成分の発色反応が起こることにより、蛍光強度が非照射部に対して増加することを検出して再生することを特徴とする前記(5)の同時2光子吸収光記録再生方法。
(7)前記(1)〜(4)のいずれかの同時2光子吸収記録材料を含む2光子吸収記録媒体。
(8)前記(1)〜(4)のいずれかの同時2光子吸収記録材料を含む記録層を有する多層記録媒体。
(9)前記(1)〜(4)のいずれかの同時2光子吸収記録材料を含む記録層と、記録光の照射によって変化が生じない非記録層とが交互に積層された構造を有することを特徴とする2光子吸収記録媒体。
【0019】
本発明における記録材料では、2光子吸収化合物の2光子吸収によって生成した2光子吸収色素励起状態からの光化学反応により一般式(1)で表される色素前駆体を酸化することによって、(再生)光を照射することによって発色する色素(単に色素、とも称す)を生成させ、材料の吸光度および蛍光発光を変調させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の2光子吸収記録材料の構成によれば、2光子吸収を利用して情報を記録でき、かつ550nmよりも短波長の領域の再生光を用いて十分な再生特性を有することができた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の2光子吸収記録材料は、少なくとも1種の2光子吸収化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される蛍光色素前駆体を含有するものである。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式(1)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、RとRおよびRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、R又はRがそれぞれ複数ある場合隣り合うものは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0024】
〔一般式(1)で表される蛍光色素前駆体〕
一般式(1)で表される蛍光色素前駆体は、2光子吸収化合物の励起状態からの電子移動による酸化反応によって発色するものであり、3,6位のアミノ窒素上に、それぞれ同時に1つ以上のアシル基を有するものである。
本発明の2光子吸収光記録材料において、一般式(1)で表される蛍光色素前駆体から発生する蛍光色素は波長200〜800nmの紫外光または可視光のいずれかを吸収し、より好ましくは250〜700nmの紫外光または可視光を吸収し、さらに好ましくは300〜550nmの紫外光または可視光を吸収する。その際のモル吸光係数としては5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上がより好ましい。
本発明の目的を達成するためには、色素前駆体から発生する色素の吸収帯が、400〜550nm近傍の波長域に出現することがさらに好ましい。
【0025】
一般式(1)で表される化合物構造のRは、水素原子または置換基を表し、好ましくはアルキル基、分岐アルキル基、α−ハロアルキル基、トリフルオロメチル基、アリール基が挙げられ、より好ましくは炭素数4以下のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。R、Rは置換基を表し、それぞれ独立に、好ましくはアルキル基、分岐アルキル基、アリール基である。これら置換基はさらに置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルコシキ基、アリールオキシ基である。R、Rは水素原子または置換基を表し、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、アルキル基、分岐アルキル基、アリール基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基である。R、Rはそれぞれ独立に置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、R又はRがそれぞれ複数ある場合隣り合うものは環を形成していてもよい。R、Rにおける置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホニル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基であり、最も好ましくはアルコキシ基、ニトロ基である。また、m及びnは0であることが好ましい。
【0026】
一般式(1)で表される蛍光色素前駆体は、記録(記録光照射)前は無色であるが、下記スキームで示すように、記録時に分解し9位窒素上のアシル基が外れ、赤色に発色した蛍光色素となる。本発明はこの記録後の蛍光色素が550nm以下の短波長領域で再生感度が高いことを特徴とするので、記録後に外れてしまうR1は発明の効果に影響しない。
その他の置換基(R〜R)に関しては、下記に示す1,3,6,8位の炭素上に電子吸引性置換基、2,4,5,7位の炭素上に電子供与性置換基を導入することで、蛍光色素の吸収がより短波長化し、短波長領域での吸収効率が向上するため、更なる再生感度の向上が期待できる。後段で具体例で挙げる化合物は、そのような化合物にあたる。なお、本発明では、ベンゾフェノキサジン基本骨格において、3,6位のアミノ窒素の電子供与性を下げることが、吸収波長の短波化に最も効果があることを見出したため、3,6位のアミノ窒素上に2つ以上のアシル基を置換することとするものである。
【0027】
【化4】

【0028】
以下に、本発明で用いられる色素前駆体の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化5】

【0030】
上記の色素前駆体は公知の方法により合成することができる。
【0031】
〔2光子吸収化合物〕
次いで、本発明の2光子吸収記録材料に用いる2光子吸収化合物(以下、本発明の2光子吸収化合物とも称す)について説明する。
本発明に用いられる2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の線形吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
【0032】
本発明に用いることのできる2光子吸収化合物は、ある程度の2光子吸収能を有するものであれば、特に制限がなく、例えば、特開2007−262155、特開2007−87532、特開2007−59025、特開2007−17887、特開2007−17886、特開2007−17885、特開2006−289613、特開2005−320502、特開2005−164817、特開2005−100606、特開2005−100599、特開2005−92074、特開2005−85350、特開2005−71570、特開2005−55875、特開2005−37658、特開2003−75961、特開2003−29376号公報に記載されたものを用いることができる。
【0033】
本発明に用いられる2光子吸収化合物はメチン色素であることが特に好ましい。なおここで色素とは可視光領域(400〜700nm)または近赤外領域(700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明におけるメチン色素としてはいかなるものでもよいが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、ポリエン色素等が挙げられる。
【0034】
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】


【0037】
【化8】


【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
上記化合物は、常用されている方法で製造することができる。例えば、特開2003−75961、特開2003−183213、特開2004−123668、特開2004−126440、特開2004−149517、特開2004−224864号公報などに記載の方法を用いることができる。また、一部の化合物については市販もされている。
【0048】
また、特に700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録する場合は、本発明の2光子吸収化合物として、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0049】
【化18】


【0050】
(一般式(2)中、XおよびYはハメットのシグマパラ値(σp値)が共にゼロ以上の値を有する置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、nは1〜4の整数を表し、Rは置換基を表し、同一でもそれぞれ異なってもよく、mは0〜4の整数を表す。)
【0051】
一般式(2)中、XおよびYはハメット式におけるσp値が正の値を取るもの、所謂電子求引性の基を指し、好ましくは例えばトリフルオロメチル基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、などが挙げられ、より好ましくはトリフルオロメチル基、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはシアノ基、ベンゾイル基である。これらの置換基のうち、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシル基、アシルオキシ基、およびアルコキシカルボニル基は、溶媒への溶解性の付与等の他、様々な目的で、更に置換基を有してもよく、置換基としては、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。
【0052】
nは1以上4以下の整数を表し、より好ましくは2または3であり、最も好ましくは2である。nが5以上になるほど、線形吸収が長波長側に出てくるようになり、700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録できなくなる。
Rは置換基を表し、置換基としては、特に限定されず、具体的には、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、などが挙げられる。mは0以上4以下の整数を表す。
【0053】
以下に、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物において、X、Yが、ハメット式におけるσp値が正の値を取る、所謂電子求引性の基であることが望ましい旨を述べる。
T.Kogej,et al.,Chem.Phys.Lett.,298,1(1998))によれば、有機化合物の2光子吸収効率、すなわち2光子吸収断面積δは、3次分子分極率(2次超分極率)γの虚数部と以下の関係にある。
【0054】
【数1】

【0055】
ここでc;光速、ν;周波数、n;屈折率、ε0;真空中の誘電率、ω;光子の振動数、Im;虚数部を表す。γの虚数部(Imγ)は、|g>と|e>間の双極子モーメント;Mge、|g>と|e’>間の双極子モーメント;Mge’ 、|g>と|e>間の双極子モーメントの差;Δμge、遷移エネルギー;Ege、ダンピングファクター;Γと以下の関係にある。
【0056】
【数2】

【0057】
ここでPは可換演算子を表す。
従って、数式(2)の値を計算すれば、化合物の2光子吸収断面積を予測することが可能である。そこで、基底状態の最安定構造を6-31G*を基底関数としてB3LYP汎関数を用いたDFT法により計算し、その結果を基にMge、Mee’およびEgeを計算してImγの値を算出することができる。例えば、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物において、XおよびYに電子供与性置換基であるメトキシ基が置換したクアテルフェニル化合物の計算から得れたImγの極大値を1とした場合、その他の置換基として、ハメット式におけるσp値が正の値を取る、所謂電子求引性の基を有する分子のImγ極大値の相対値が大きいものとなる。
上記一般式(2)で表される構造を有する化合物において、XおよびYに電子供与性基のメトキシ基が置換するクアテルフェニル化合物では、Imγは小さく、XおよびYが共に電子求引性置換基で置換された分子では総じてImγが大きく増大する。先にも述べたが、理論的に2光子吸収断面積δは3次超分極率γの虚数部、すなわちImγに比例するため、これらの計算よりXおよびYは共に電子求引性置換基が置換した構造が望ましい。
【0058】
また、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物としては、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0059】
【化19】

【0060】
一般式(3)中、X、Y、n、R、mは、一般式(2)で規定したものと同じである。
一般式(2)または一般式(3)で表される構造を有する化合物において、XおよびYは、同一でもそれぞれ異なってもよいが、異なっているほうが、2光子吸収断面積が大きくなる傾向にあり好ましい。
一般式(2)または一般式(3)で表される構造を有する化合物の具体例としては、特に限定されないが、下記のものが挙げられる。
【0061】
【化20】

【0062】
また、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物以外に、700nmよりも短波長の領域の記録光を用いての非共鳴2光子吸収記録する場合の好ましい2光子吸収化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化21】

【0064】
(一般式(4)中、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素環を表し、HetおよびHetはそれぞれ独立に芳香族へテロ環を表し、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜30の置換基を表し、nは0または1を表す。)
Arは、置換もしくは無置換のベンゼン環または置換もしくは無置換のナフタレン環であることが好ましく、置換もしくは無置換のベンゼン環であることがより好ましく、無置換のベンゼン環であることがさらに好ましい。
【0065】
HetおよびHet2は、それぞれ独立に、5員環であることが好ましく、1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環であることがより好ましく、1,2,4−オキサジアゾール環であることがさらに好ましい。
【0066】
HetおよびHet2とArとの結合位置は本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではない。
例えば、HetおよびHet2が1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環である場合、それぞれ、3位または5位での結合が可能であり、それぞれ、いずれの位置でArに結合していてもよい。
一方、Arがベンゼン環である場合、HetおよびHet2は該ベンゼン環のいずれの位置に結合していてもよいが、1位および2位、1位および3位、1位および4位に結合していることが好ましく、1位および3位に置換していることがより好ましい。
【0067】
Arが有してもよい置換基の好ましい例としては、下記のものが挙げられる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、アルケニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(ビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)基、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは、5または6員環の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員環の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2〜30のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30のアルキルアミノ基、炭素数6〜30のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルフィニル基、6〜30のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基もしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、6〜30のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは、炭素数6〜30のアリールアゾ基、炭素数3〜30のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)を表わす。
【0068】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキル基、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)が挙げられる。
【0069】
1およびR2である、炭素数1〜30の置換基としては、上記のAr1が有してもよい置換基の例が挙げられ、アリール基またはヘテロ環基(置換基を有するものを含む)であることが好ましい。
【0070】
Het1とR1およびHet2とR2の結合の位置関係は、特に定めるのではないが、例えば、Het1およびHet2が1,2,4−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、または1,3,4−チアジアゾール環である場合、それぞれ、3位または5位での結合が可能であり、いずれかの位置でAr1と結合し、他方においてR1およびR2に結合していることが好ましい。
【0071】
一般式(4)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化22】

【0073】
(一般式(5)中、Arは置換もしくは無置換のパラフェニレンまたはメタフェニレンを表す。X〜Xはそれぞれ独立に置換基を表す。j、kはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。環Aおよび環Bはそれぞれ独立に1,2,4−オキサジアゾール−3,5−ジイル基、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル基、1,2,4−チアジアゾール−3,5−ジイル基または1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基を表す。)
〜Xは、具体的には、上記に示したRおよびRが有してもよい置換基の好ましい例が挙げられる。
、Xは、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子である。XとXは同じでも異なっていてもよいし、同じでもよい。
、Xは、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、ハロゲン原子である。
【0074】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては特に限定されないが、特開2007−45806号公報(特許文献5)の〔0040〕〜〔0045〕及び特開2007−204705号公報(特許文献6)の〔0055〕〜〔0074〕に記載のものの他、下記のものが挙げられる。
【0075】
【化23】

【0076】
【化24】

【0077】
また、本発明の2光子吸収化合物は、前記色素前駆体から発生する色素の線形吸収極大波長よりも短波長領域に線形吸収極大を有するものであることが好ましい。
その理由としては、蛍光色素前駆体から発生する蛍光色素の吸収が、再生光照射領域において2光子吸収化合物の吸収と重なることなく、蛍光色素を光照射して再生しようとした場合に検出しやすくなるためである。また、2光子吸収化合物の吸収帯が、蛍光色素の蛍光発光スペクトルの重なりが小さくなり、2光子吸収化合物と蛍光色素との相互作用による再生信号の低下が生じ難くなる。
このような2光子吸収化合物としては、前記の一般式(2)で表される化合物及び(4)で表される化合物が相当する。
【0078】
〔その他の成分〕
本発明の2光子吸収光記録材料は、2光子吸収化合物、色素前駆体に加えて、好ましくはさらにバインダーを用いることができる。
【0079】
本発明の2光子吸収光記録材料に用いるバインダーとしては特に制限はなく、有機高分子化合物でも無機高分子化合物でもよい。有機高分子化合物としては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独でか又は互いに組合せて使用することができ、該2光子吸収光記録材料に分散される各種成分と相溶性の良いものが好ましい。
【0080】
本発明の記録材料に用いるバインダーの好ましい具体例としては、特開2005−320502公報中、段落0022に記載されている化合物(アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー、ポリビニルエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体、ポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化合物、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリカーボネート、ノルボルネン系ポリマー、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)が挙げられる。また、同段落に記載のポリスチレン重合体およびその共重合体、コポリエステルのポリメチレングリコールと芳香族酸化合物の反応生成物から製造されたポリマーとその混合物、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、カルバゾール含有重合体等が挙げられる。さらに、同公報中、段落0023〜0024に記載のフッ素原子含有高分子も好ましい具体例として挙げられる。
【0081】
本発明に用いるバインダーとしてはアクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステル、ポリスチレン、ポリアルキルスチレン、ポリスチレン共重合体が好ましく、アクリレート、アルファーアルキルアクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体が検出感度の向上という点でさらに好ましい。これら具体例としては、アクリレート及びアルファーアルキルアクリレートエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に好ましいベンゼン環を持った(メタ)アクリレートは、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートである。これらの単量体は1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。(メタ)アクリレート系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレート、窒素を含むラジカル重合性単量体と共重合可能な他の共重合性単量体を共重合させてもよく、そのような他の共重合性単量体としては、アリルグリシジルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(無水)マレイン酸、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、等が挙げられる。親水性極性基を持つ化合物を共重合してもよく、極性基としては、−SO3M、−PO(OM)2、−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属あるいはアンモニウムを表す)等が挙げられる。
【0082】
ポリアルキルスチレン化合物としては、ポリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリプロピルスチレン、ポリブチルスチレン、ポリイソブチルスチレン、ポリペンチルスチレン、ヘキシルポリスチレン、ポリオクチルスチレン、ポリ2−エチルヘキシルスチレン、ポリラウリルスチレン、ポリステアリルスチレン、ポリシクロヘキシルスチレン、ベンゼン環を持った(メタ)アクリレートとしては、ポリベンジルスチレン、ポリフェノキシエチルスチレン、ポリフェノキシポリエチレングリコールスチレン、ポリノニルフェノールスチレン等が挙げられる。アルキルの位置はα、パラが好ましい。これらの単量体は1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。ポリスチレン共重合体は、共役ジエン化合物、アルキルスチレン、ベンゼン環を持ったスチレン、窒素を含むラジカル重合性単量体と共重合可能な他の共重合性単量体を共重合させてもよく、そのような他の共重合性単量体としては、アセチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ポリエチレン、アリルグリシジルエーテル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、等が挙げられる。
【0083】
本発明の2光子吸収光記録材料には、さらに必要に応じて電子供与性化合物、電子受容性化合物、重合性モノマー、重合性オリゴマー、重合開始剤、架橋剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いることができる。
【0084】
本発明の2光子吸収光記録材料には、保存時の保存性を向上させるために熱安定剤を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2 , 6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
【0085】
本発明の2光子吸収光記録材料には、該光記録材料の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために可塑剤を用いることができる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0086】
本発明の2光子吸収光記録材料は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒などが挙げられる。
【0087】
本発明の2光子吸収光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより2光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。
【0088】
さらに、2光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断のための保護層を形成してもよい。保護層は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
【0089】
さらに、本発明の2光子吸収光記録材料は、記録成分を含む記録層と、記録成分を含まない非記録層が互いに積層した多層構造を有していてもよい。記録層と非記録層とが交互に積層された構造を有することで、記録層間に非記録層が介在するので、記録層面に垂直な方向での記録領域の拡大が遮断される。従って、記録層を照射光の波長オーダーの厚みに制約しても、クロストークを小さくすることが可能である。この結果、記録層自体の厚みを薄くすることができるとともに、非記録層を含めた記録層の層間距離を縮小することができる。
以上の記録層の層厚としては、30nm以上5000nm以下の範囲内とすることが好ましく、500nm以上1000nm以下の範囲内であることがより好ましく、500nm以上500nm以下あることがさらに好ましい。
【0090】
非記録層は、記録光の照射によって吸収スペクトルまたは発光スペクトルに変化が生じない材料を薄膜状に形成した層である。
非記録層に用いる材料としては、多層構造形成における製造の容易さの観点から、記録層に用いられている材料を溶解しない溶媒に溶解する材料であることが好ましく、そのような材料の中でも、可視光領域に吸収をもたない透明ポリマー材料が好ましい。このような材料としては、水溶性ポリマーが好適に用いられる。
前記水溶性ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン等を挙げることができる。中でも、好ましくは、PVA、ポリビニルピリジン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンであり、最も好ましくは、PVAである。
【0091】
非記録層は、その材料として水溶性ポリマーを使用する場合、水溶性ポリマーを水に溶
解して得られた塗布液を、例えば、スピンコートなどの塗布法により塗布することにより
形成することができる。
以上の非記録層の層厚としては、該非記録層を挟む記録層間のクロストークを低減するため、記録および再生に用いる光の波長、記録パワー、再生パワー、レンズのNA、および記録層材料の記録感度の観点から、1μm以上50μm以下の範囲内とすることが好ましく、1μm以上20μm以下の範囲内であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
【0092】
また、記録層と非記録層の交互に積層した対の数は、該2光子吸収記録媒体に求められる記録容量と、用いる光学系によりきまる収差の観点から、9以上200以下の範囲内であることが好ましく、10以上100以下の範囲であることがより好ましく、10以上30以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0093】
本発明の2光子吸収記録材料中の各成分の割合は、一般的に組成物の全質量を基準に以下の%の範囲内であることが好ましい。
バインダー、架橋剤:好ましくは0〜95質量%、より好ましくは30〜95質量%
色素前駆体、その他の添加成分:好ましくは1〜80質量%、より好ましくは3〜60質量%
2光子吸収化合物:好ましくは0.01〜100質量%、より好ましくは0.1〜50質量%。
【0094】
〔2光子吸収光記録再生方法〕
上記のように、本発明の2光子吸収光記録再生方法においては、記録部にて2光子吸収による不可逆的化学反応、具体的には酸化反応が進行することにより、光を照射した際の発光強度が未記録部に対して増加することを検出して再生する。
【0095】
本発明の2光子吸収光記録材料の記録にはレーザーを用いることが好ましい。本発明に用いる光は好ましくは波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであり、より好ましくは波長300〜1000nmの紫外光、可視光または赤外光であり、さらに好ましくは400〜800nmの可視光または赤外光である。
用いることができるレーザーは特に限定されないが、具体的には、中心波長1000nm付近に発振波長を有するTi−サファイア等の固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有するCD−Rなどでも用いられている半導体レーザーや固体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有するDVD−Rなどでも用いられている半導体レーザーや固体レーザー、400〜415nm付近の発振波長を有するGaNレーザーなどを好ましく用いることができる。
また他にも、可視光域に発振波長を有するYAG・SHGレーザーなどの固体SHGレーザー、半導体SHGレーザーなども好ましく用いることができる。
本発明に用いるレーザーはパルス発振レーザーであってもCWレーザーであっても良い。
【0096】
再生の際使用する光は、例えば上記レーザー光であることが好ましい。また、パワーまたはパルス形状は同じか異なるものの、記録時と同じレーザーを用いて再生することがより好ましい。
また、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
【0097】
本発明の2光子吸収光記録材料にて、記録により生成する反応部または発色部の大きさは10nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜5μmの範囲であることがより好ましく、50nm〜2μmの範囲であることがさらに好ましい。
また、記録材料の再生を可能にするためには、反応部または発色部の大きさは照射光波長の1/20〜20倍の大きさであることが好ましく、1/10〜10倍の大きさであることがより好ましく、1/5〜5倍の大きさであることが最も好ましい。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0099】
[色素前駆体Aの合成法]
色素前駆体Aを以下のようにして合成した。まず、反応スキームを示す。
【0100】
【化25】

【0101】
原料化合物1の合成
9−アセチルフェノキサジン30g(0.13mol)と硝酸14ml(0.33mol)を酢酸120ml中、80℃にて10時間加熱した。反応溶液を室温まで放冷し、酢酸エチルと蒸留水を加えて抽出した後、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別したろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固させて、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、9-アセチル-3,6-ジニトロフェノキサジン5g(12%)を得た。
【0102】
原料化合物2の合成
還元鉄3.54g(63mmol)と塩化アンモニウム0.34g(6.3mmol)をイソプロピルアルコール60ml、蒸留水20ml中、110℃で2時間加熱した後、9-アセチル-3,6-ジニトロフェノキサジン4.0g(13mmol)を少量ずつ滴下し、その後110℃で20分加熱した。酢酸エチルを加えた後、不溶物をろ別し、有機相を飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、硫酸マグネシウムをろ別したろ液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固させて、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、9-アセチル-3,6-ジアミノフェノキサジン1.9g(57%)を得た。
【0103】
化合物Aの合成
9-アセチル-3,6-ジアミノフェノキサジン1.2g(4.7mmol)、トリエチルアミン1.4ml(10mmol)をアセトニトリル10ml中で攪拌し、そこに無水酢酸0.95ml(10mmol)を滴下した。1日後、沈殿物をろ過し、ヘキサン、酢酸エチルで洗浄することで目的とする色素前駆体A0.6g(38%)を得た。
色素前駆体Aに対し、アセトニトリル中で、塩化鉄(III)を加えたところ、その溶液は赤色を示し、その最大吸収波長は560nmであった。
【0104】
<2光子記録材料の調製>
(2光子吸収記録材料1の調製)
以下の組成で、2光子吸収記録材料1を調製した。
色素前駆体:A 3.3質量部
2光子吸収化合物:B 1.0質量部
バインダ:ポリビニルアセテート 66.7質量部
塗布溶剤:ジクロロメタン 1400質量部
【0105】
(比較用2光子吸収記録材料1(比較材料1)の調製)
上記に記載の2光子吸収記録材料1の色素前駆体をAの替わりに特開2007−87532の〔00163〕に記載の色素前駆体Lo−4を用いる以外は2光子吸収記録材料1と同様にして比較材料1を調製した。
なお、色素前駆体Lo−4、および2光子吸収化合物Bは、以下の化合物である。
【0106】
【化26】

【0107】
<2光子吸収記録媒体の作製>
本発明の2光子吸収記録媒体は、上記2光子吸収記録材料1を、それぞれ、スライドグラス上にスピンコートすることで薄膜状フィルムとして作製した。なお、比較用媒体も同様にしてスピンコート法により作製した。2光子吸収記録材料1から得られた記録媒体を2光子吸収記録媒体1とした。その他の記録媒体についても同様である。
<2光子記録性能の評価>
2光子記録には、1045nmのフェムト秒レーザー(パルス幅200fs、繰返し2.85GHz、ピークパワー1kW)の第二高調波522nmをNA0.85のレンズを通して記録媒体に照射した。記録信号の再生は、実施例1では、連続発振している1064nmのNd:YAGレーザーの第二高調波の532nmをNA0.85のレンズを通して記録層に照射し、発生する蛍光シグナル強度を光電子増倍管を用いて読み出した。参考例では、連続発振しているHe−Neレーザーの633nmをNA0.85のレンズを通して記録層に照射し、発生する蛍光シグナル強度を光電子増倍管を用いて読み出した。
なお、記録感度は、記録ピットから得られる蛍光シグナルを光電子増倍管の電圧として評価し、比較例から得られた光電子増倍管電圧を基準にした場合の相対値を示した。結果を下記表に示す。
【0108】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の2光子吸収化合物と、少なくとも1種の下記一般式(1)で表される蛍光色素前駆体を含有する同時2光子吸収記録材料。
【化1】


一般式(1)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、RとRおよびRとRはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、R又はRがそれぞれ複数ある場合隣り合うものは互いに結合して環を形成していてもよい。
【請求項2】
一般式(1)において、Rが炭素数4以下のアルキル基であることを特徴とする請求項1記載の同時2光子吸収記録材料。
【請求項3】
一般式(1)において、R、Rが、それぞれ独立に、アルキル基、分岐アルキル基またはアリール基であることを特徴とする請求項1または2記載の同時2光子吸収記録材料。
【請求項4】
一般式(1)において、R、Rが、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基または分岐アルキル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の同時2光子吸収記録材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の同時2光子吸収光記録材料に、2光子吸収化合物の2光子吸収を利用して記録を行った後、レーザー光を該記録材料に照射してその蛍光強度の違いを検出することにより再生することを特徴とする同時2光子吸収光記録再生方法。
【請求項6】
記録光照射部において記録成分の発色反応が起こることにより、蛍光強度が非照射部に対して増加することを検出して再生することを特徴とする請求項5記載の同時2光子吸収光記録再生方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか記載の同時2光子吸収記録材料を含む2光子吸収記録媒体。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか記載の同時2光子吸収記録材料を含む記録層を有する多層記録媒体。

【公開番号】特開2010−272175(P2010−272175A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124309(P2009−124309)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】