説明

2成分現像剤の製造方法

【課題】極めて多数枚の画像形成を行っても、現像剤劣化によるかぶりの発生、転写性の低下、キャリア付着やトナー及びキャリア飛散が発生しない2成分現像剤の製造方法と画像形成方法を提供する。
【解決手段】磁性芯材を樹脂被覆したキャリアと静電潜像現像用トナーからなる2成分現像剤の製造方法において、(1)前記磁性芯材として多孔質フェライト粒子を用い、該多孔質フェライト粒子と樹脂粒子を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、該多孔質フェライト粒子表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体を形成する工程、(2)該キャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌し、樹脂被覆層を成膜し冷却する工程、(3)該成膜され冷却されたキャリアと静電潜像現像用トナーを混合する現像剤作製工程、を有することを特徴とする2成分現像剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質フェライト粒子を磁性芯材とするキャリアと静電潜像現像用トナー(単にトナーともいう)からなる2成分現像剤の製造方法と画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会全般の省エネルギー化、省資源化への対応の動きの中で、電子写真技術においては画像形成装置全体で消費される電力量と、廃棄物量を削減する必要性が高まってきている。
【0003】
上記の観点から、電子写真技術による画像形成装置を全体的に見た場合、定着装置で消費される電力量が大きく、この電力量の削減が省エネルギー化への対応策として大きな比重を占める。又、省資源化への対応としては現像剤を長寿命化することにより廃棄される現像剤の量を削減することが効果的である。
【0004】
さらに近年、画像形成装置の高速化、特にカラー画像形成装置の高速化につれて現像器内の撹拌強度が高まり、現像剤が受ける撹拌によるストレスが大きくなった結果、トナーの劣化が促進され、トナーの破砕に伴う帯電量低下、外添剤の埋没が著しく発生するようになった。その結果、現像剤の長寿命化が急務となっている。
【0005】
この対策としては、キャリアの低比重化が進められ、磁性体分散型のキャリアなどが提唱されているが、衝撃による割れ、変形を生じやすいという問題を生じていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、多孔質磁性コア粒子の空孔に樹脂成分を充填し、キャリアの低比重化を図る技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。いうまでもなく、空孔に樹脂成分を充填しなければ、さらに低比重化を促進できるが、樹脂成分を充填しなければ、多孔質フェライトの細孔内部にまで被覆用樹脂が浸透するため、均一な樹脂被覆層が形成できず、生産上も特性がぱらつく問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−248684号公報
【特許文献2】特開2008−224882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされた。
【0009】
即ち、本発明の目的は、極めて多数枚の画像形成を行っても、現像剤劣化によるかぶりの発生、転写性の低下、キャリア付着やトナー及びキャリア飛散が発生しない2成分現像剤を安定して製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者の検討により、本発明の目的は、下記構成〔1〕の(1)〜(3)の3工程を経ることより達成されることがわかった。
【0011】
〔1〕
磁性芯材を樹脂被覆したキャリアと静電潜像現像用トナーからなる2成分現像剤の製造方法において、下記(1)〜(3)の3工程を経ることを特徴とする2成分現像剤の製造方法。
(1)前記磁性芯材として多孔質フェライト粒子を用い、該多孔質フェライト粒子と樹脂粒子を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、該多孔質フェライト粒子表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体を形成する工程
(2)該キャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌し、樹脂被覆層を成膜し冷却する工程
(3)該成膜され冷却されたキャリアと静電潜像現像用トナーを混合する現像剤作製工程
であるが、さらに、下記構成〔2〕〜〔3〕を経ることが好ましい。
【0012】
〔2〕
前記キャリア中間体を形成する工程において、予備混合を経て、キャリア中間体を形成することを特徴とする〔1〕記載の2成分現像剤の製造方法。
【0013】
〔3〕
前記多孔質フェライト粒子の細孔径が0.2μm以上1.8μm以下であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の2成分現像剤の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、極めて多数枚の画像形成を行っても、現像剤劣化によるかぶりの発生、転写性の低下、キャリア付着やトナー及びキャリア飛散が発生しない2成分現像剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わるキャリアの製造工程を模式的に説明する図。
【図2】乾式コーティング法を説明するための高速撹拌混合機の構成断面図。
【図3】本発明の画像形成方法を説明するための画像形成装置の一例の構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の構成により本発明の目的達成に大きな効果が得られる理由は、下記の如くであると考えられる。これを模式的に説明したのが図1である。
【0017】
本発明においては磁性芯材として多孔質フェライト粒子を用い、該多孔質フェライト粒子1と樹脂粒子3を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、多孔質フェライト粒子表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体4を作製している。このとき多孔質フェライト粒子表面にある細孔2の口部は静電的に凝集した樹脂粒子が、その入り口にブリッジを架けるように存在し塞ぐので、内部に樹脂粒子は入らない。この状態で該キャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌すると、樹脂被覆層5が形成される。この工程においても多孔質フェライト粒子の細孔の口部付近は基本的にもとの状態が保たれ、細孔部はブリッジ状になった樹脂層により塞がれた状態で、樹脂被覆キャリア6が出来あがると推察される。
【0018】
そのため、樹脂溶液を用いたコーティングにおいて著しい、細孔部にコーティング用樹脂が浸透し、真比重を大きくなる問題を解消できる。さらに、少ない樹脂量で磁性芯材の被覆ができるため、得られたキャリアは従来の湿式コーティングによるものと異なり、所謂樹脂充填型のキャリアではないので、大幅な低比重化を図ることができる。それゆえ現像器内での撹拌時等のストレスが減り、キャリアの耐久性が上がり、長期使用においてもキャリア付着による画像不良やトナー外添剤埋没による転写効率低下を起こさないと考えられる。
【0019】
(多孔質フェライト粒子)
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子(磁性芯材)の細孔径は0.2〜1.8μmが好ましい。多孔質フェライト粒子の細孔径が1.8μmを超えると、粒子の表面積に対して、樹脂が存在する面積が大きくなるため、内部に樹脂が入りやすくなるためと推察される。こなると被覆用樹脂の損失が大きく、またキャリアの比重も大きくなりトナーとの混合性も悪くなる。また、細孔径が0.2μm以下であると、芯材の空隙率が小さくなり、十分な低比重化を図れなくなる。
【0020】
この多孔質フェライト粒子の細孔径の測定は、次のようにして行われる。
【0021】
水銀ポロシメーターPascal140とPascal240(ThermoFisher Scientific社製)を用いて測定する。
【0022】
ディラトメータはCD3P(粉体用)を使用し、サンプルは複数の穴を開けた市販のゼラチン製カプセルに入れて、ディラトメータ内に入れる。Pascal140で脱気後、水銀を充填し低圧領域(0〜400kPa)を測定し、1st Runとした。次に再び脱気と低圧領域(0〜400kPa)の測定を行い、2nd Runとした。2nd Runの後、ディラトメータと水銀とカプセルとサンプルを合わせた質量を測定した。
【0023】
次にPascal240で高圧領域(0.1MPa〜200MPa)を測定した。この高圧部の測定で得られた水銀圧入量をもって、多孔質フェライト粒子の細孔容積、細孔径及び細孔径分布を求めた。また、細孔径を求める際には水銀の表面張力を4.80mN/cm、接触角を141.3°として計算した。
【0024】
多孔質フェライト粒子の空隙率は、10〜60%が好ましく、より好ましくは20〜40%である。本発明でいう該粒子の空隙率とは、多孔質フェライト粒子断面の全面積に対する空隙部分の割合である。
【0025】
多孔質フェライト粒子の空隙率は、多孔質フェライト粒子の断面を金属顕微鏡、走査型顕微鏡等で撮影した後、得られた画像を画像解析ソフト(Image−Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて解析して求める。具体的には、該粒子の表面の凹凸を包絡する線で結んだ粒子面積(A)を測定し、次いで、その粒子画面に含まれる多孔質フェライト粒子の面積(B)を測定する。ここで、下記式(1)を用いて、空隙率を計算する。
【0026】
式(1)
空隙率(%)
=(包絡粒子面積(A)−多孔質フェライト粒子面積(B))/包絡粒子面積(A)
×100
この式(1)によって計算される空隙率は、多孔質フェライト粒子表面から連続する空隙と、多孔質フェライト粒子内部に独立して存在する空隙をあわせた空隙率となる。
【0027】
具体的には、多孔質フェライト粒子10個の中央付近の断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像解析してその平均から空隙率を求める。
【0028】
又、空隙率測定に用いる多孔質フェライト粒子としては、現像剤より分離したキャリア2gとメチルエチルケトン15mlをウェーブロータで10分間撹拌し、被覆樹脂層及び注入樹脂の一部を除去したものを用いることとする。
【0029】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その真密度が好ましくは3.0〜5.5g/cm、より好ましくは4.0〜5.5g/cmである。真密度を上記範囲とすることで、帯電速度が低下したり、1粒子当たりの磁化が下がり過ぎキャリア付着が発生することがなく、長寿命化が図れ好ましい。
【0030】
多孔質フェライト粒子及びキャリアの真密度は、JIS R9301−2−1に準拠して、ピクノメーターを用いて測定して得られた値である。
【0031】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その見掛け密度が好ましくは0.7〜2.5g/cm、より好ましくは0.9〜2.3g/cmである。見掛け密度を上記範囲とすることで、強度が保てキャリアが破壊されることがなく、軽量化が達成でき長寿命化が図れるので好ましい。
【0032】
見掛け密度の測定は、JIS−Z2504(金属粉の見掛け密度試験法)に従って測定される。
【0033】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その平均粒径が好ましくは体積基準におけるメディアン径(D50)で15〜80μm、より好ましくは20〜60μmである。D50を上記範囲とすることで、キャリア付着が発生せず、高品質の画像を得ることができ好ましい。
【0034】
キャリアの体積基準におけるメディアン径(D50)は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定することができる。
【0035】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子は、その電気抵抗が好ましくは10〜1012Ω・cm、より好ましくは10〜1011Ω・cmである。電気抵抗を上記範囲とすることで、樹脂を注入して作製したキャリアの電荷リークが発生しにくく、電気抵抗が高くなりすぎることもなく、高濃度の画像を得ることができ好ましい。
【0036】
本発明で用いられる磁性芯材(多孔質フェライト粒子)は、フェライトからなるものが望ましく、一般式(MO)(Fe(ここでyは30〜95mol%)で示されるものがさらに好ましい。ここでMはFe、Mn、Mg、Sr、Ca、Ti、Cu、Zn、Ni、Li、Al、Si、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0037】
ここで、MをFeとした場合は、鉄フェライト、すなわちマグネタイトを意味している。マグネタイトに比べて、フェライトは高次の酸化物であり、ストレスによって特性が変化しにくい。又、低比重化が図りやすい。Feが30mol%未満であると、所望の磁化を得ることが困難であり、キャリア付着が生じやすい。特に特定の金属酸化物を原料としたフェライトは、粒子間の組成ばらつきが少なく、所望の特性を得やすい。又、上述の元素を用いた場合、他の元素に比べて、理由は明確ではないが、樹脂を注入しやすい。
【0038】
磁気特性を安定させる観点から、MはMn、Mg、Sr、Ca、Ti、Li、Al、Si、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、Mn、Mg、Sr、Ca、Li、Zr、Biから選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
【0039】
本発明で用いられる多孔質フェライト粒子の製造は、原材料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を加圧成型機等を用いてペレット化した後700〜1200℃の温度で仮焼成する。
【0040】
加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。仮焼成後さらにボールルミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、造粒し、酸素濃度を制御し、1000〜1500℃の温度で1〜24時間保持し、本焼成を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
【0041】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的且つ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。又使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0042】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法など用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0043】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300〜700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。酸化被膜の厚さを前記範囲とすることで、酸化被膜層の効果が得られ、高抵抗になりすぎず所望の特性を得やすく好ましい。又、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。
【0044】
上記のような、芯材の空隙率や連続空隙度、見掛け密度、真密度をコントロールする方法としては、配合する原料種、原料の粉砕度合い、仮焼の有無、仮焼温度、仮焼時間、スプレードライヤーによる造粒時のバインダー量、水分量、乾燥度合い、焼成方法、焼成温度、焼成時間、解砕方法、水素ガスによる還元等、様々な方法で行うことができる。これらのコントロール方法は特に限定されるものではないが、その一例を以下に示す。
【0045】
すなわち、配合する原料種として、水酸化物や炭酸化物を用いた方が、酸化物を用いた場合に比べて、空隙率及び連続空隙度が高くなりやすい。又、原料として重金属であるCu、Ni、Znの酸化物に比べて、Mn、Mg、Ca、Sr、Li、Ti、Al、Si、Zr、Bi等の酸化物を使用した方が、真密度や見掛け密度が低くなりやすい。
【0046】
又、仮焼成を行わない方が空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度は低くなり、仮焼成を行った場合でも、その温度が低い方が空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度は低くなりやすい。
【0047】
スプレードライヤーによる造粒においては、原料をスラリー化する際の水分量を多くした方が、空隙が多くなり、空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度が低くなりやすく、焼成時には温度を低くした方が、空隙率、連続空隙度が高く、見掛け密度が低くなりやすい。
【0048】
所望の空隙率、連続空隙度、真密度、見掛け密度を得るために、これらのコントロール方法を、単独もしくは組み合わせて使用する方ことができる。又一般に空隙率や連続空隙度が高いものは、真密度や見掛け密度は低くなる傾向にある。
【0049】
しかし、各コントロール因子が、各特性に与える影響度合いは様々であるため、それらを組み合わせて使用することにより、高空隙率で高見掛け密度、低空隙率で低密度等の特性を持つフェライトからなる芯材を得ることができる。
【0050】
(樹脂被覆層形成用樹脂粒子)
本発明のキャリアの被覆層形成に好適な樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビリケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体やスチレン−アクリル酸共重合体等の共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変成樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成樹脂);ポリテトラクロルエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロルトリフルロルエチレン等のフッ素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等である。なお、トナーのスペント化防止の点で特に好ましい樹脂は、ポリアクリレート樹脂あるいはスチレン−アクリル酸共重合体樹脂である。また、これらの樹脂粒子のD50は50nm〜1μmが好ましい。
【0051】
樹脂被覆層形成用樹脂粒子のガラス転移点は、60〜130℃、特に好ましくは、100〜120℃が好ましい。
【0052】
尚、上記樹脂のガラス転移点の測定には下記の方法を用いることができる。
【0053】
示差走査熱量計として例えば「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)などを用い、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によって測定される。
【0054】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移点とする。
【0055】
(キャリア製造法)
前記した乾式コーティング法としては、例えばローターとライナーを有するハイブリタイザー(奈良機械社製)等を用いてもよいが、好ましくは図2に示す高速撹拌混合機が用いられる。
【0056】
図中11は本体上蓋で、該上蓋11には原料投入口12、投入弁13、フィルター14、点検口15が設けられている。
【0057】
原料投入口12より所定量の芯材粒子および樹脂粒子凝集体が投入され、投入された前記原料は、モーター22により駆動される水平方向回転体18により撹拌される。該回転体18はその中心部18dに対して互いに120°の角度間隔で配置された撹拌羽根18a,18b,18cが結合されていて、これらの羽根は底部10aの面に対して35°の角度で傾けて取付けられている。このため前記撹拌羽根18a,18b,18cを高速回転させると、前記原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下するが、途中垂直方向回転体19に衝突し、原料の撹拌が行なわれる前記高速撹拌混合機を用いて被覆層を形成する場合、芯材同士の衝突による破壊をより防止し、かつ均一で固着性に優れた被覆層を形成するため、次の(イ)、(ロ)、(ハ)、(二)の各工程が必要とされ、各工程の処理条件を以下のようにするのが好ましい。
(イ)予備混合工程:ジャケット17に10℃〜15℃の冷却水を通して撹拌羽根18a,18b,18cを1m/sec以下の周速で回転させ、容器10内の温度を樹脂粒子のTg以下、通常は50℃以下であるが、但し、Tgとの差が50℃以内である容器内温度として投入された原料を1〜2分間撹拌混合する。
(ロ)中間体形成工程:ジャケット17に10℃〜15℃の冷却水を通して撹拌羽根18a,18b,18cを10m/sec以下の周速で回転させ、容器10内の温度は樹脂粒子のTg以下、好ましくは50℃以下とし、投入された原料は10〜20分間撹拌混合する。但し、フェライト粒子に均一に樹脂粒子を付着させるため好ましくはTgより50℃以上低くならないようにする。
(ハ)成膜工程:(ロ)の混合工程と同じか、またはそれ以上の周速で前記撹拌羽根を回転し、ジャケット17に温水を通して、樹脂粒子のTg以上の温度に昇温し撹拌混合する(但し、均一な膜形成のためには多くの場合、Tgの20℃以上高くならないよう制御することが望ましい)。
(ニ)成膜後工程:ジャケット17に10〜15℃の冷水を通して冷却する。その間前記撹拌羽根の周速を成膜工程の場合の周速またはそれ以下にして撹拌冷却し、樹脂粒子のTg以下、通常は70℃以下になったら、得られたキャリアを排出弁21を開き取出し口20から排出する。
(樹脂膜厚)
樹脂膜厚は、以下の方法により算出される値である。
【0058】
集束イオンビーム試料作成装置(SMI2050 エスアイアイ ナノテクノロジー(株)製)にてキャリア薄片を作製し、その後、その薄片の断面を透過型電子顕微鏡(JEM−2010F 日本電子(株)製)にて5000倍の視野で観察し、その視野における最大膜厚となる部分と最小膜厚となる部分の平均値を樹脂膜厚とした。
【0059】
〔静電潜像現像用トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法としては、特に限定はなく、粉砕法でも重合法でもよい。しかし、重合法の一種である乳化会合法によるトナー製法が好ましく用いられる。特に、ミニエマルジョン重合法により多段重合した樹脂粒子を、会合(凝集/融着)したトナー製法が好ましい。
【0060】
次に、ミニエマルジョン重合会合法によるトナーの製造方法の一例について詳細に説明する。このトナーの製造方法では、以下の工程を経て製造される。
【0061】
(1)離型剤をラジカル重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
(2)離型剤を溶解/分散させた重合性単量体溶液を水系媒体中で液滴化し、ミニエマルジョン重合して樹脂粒子の分散液を調製する重合工程
(3)水系媒体中で樹脂粒子を会合させて会合粒子を得る凝集・融着工程
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成して形状を調整しトナー母体粒子とする熟成工程
(5)トナー母体の分散液を冷却する冷却工程
(6)冷却されたトナー母体の分散液から当該トナー母体を固液分離し、当該トナー母体から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(7)洗浄処理されたトナー母体を乾燥する乾燥工程
(8)乾燥処理されたトナー母体に外添剤を添加する工程
以下、各工程について説明する。
【0062】
(1)溶解/分散工程
この工程は、ラジカル重合性単量体に離型剤を溶解或いは分散させて、当該離型剤のラジカル重合性単量体溶液を調製する工程である。
【0063】
(2)重合工程
この重合工程の好適な一例においては、界面活性剤を含有した水系媒体中に、前記離型剤を溶解或いは分散したラジカル重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性のラジカル重合開始剤からのラジカルにより当該液滴中において重合反応を進行させる。尚、前記水系媒体中に、核粒子として樹脂粒子を添加しておいても良い。
【0064】
この重合工程により、離型剤と結着樹脂とを含有する樹脂粒子が得られる。かかる樹脂粒子は、着色された粒子であってもよく、着色されていない粒子であってもよい。着色された樹脂粒子は、着色剤を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。また、着色されていない樹脂粒子を使用する場合には、後述する凝集工程において、樹脂粒子の分散液に、着色剤粒子の分散液を添加し、樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集させることで着色粒子とすることができる。
【0065】
(3)凝集・融着工程
凝集工程は、重合工程により得られた樹脂粒子(着色または非着色の樹脂粒子)と必要により着色剤粒子を用いて着色粒子を形成する工程である。また、当該凝集工程においては、樹脂粒子や着色剤粒子とともに、離型剤粒子や荷電制御剤などの内添剤粒子なども凝集させることができる。
【0066】
着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0067】
尚、着色剤粒子は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0068】
好ましい凝集方法は、樹脂粒子と着色剤粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂粒子のガラス転移点以上で凝集を行う方法である。
【0069】
(4)熟成工程
熟成は、熱エネルギー(加熱)により行う方法が好ましい。
【0070】
具体的には、会合粒子を含む液を、加熱撹拌することにより、会合粒子の形状を所望の円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間により調整し、トナー母体粒子とするものである。
【0071】
(5)冷却工程
この工程は、前記トナー母体の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0072】
(6)洗浄工程
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で所定温度まで冷却されたトナー母体の分散液から当該トナー母体を固液分離する固液分離処理と、固液分離されたトナーケーキ(ウェット状態にあるトナー母体をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0073】
洗浄処理は、濾液の電気伝導度が10μS/cmになるまで水洗浄する。濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法などがあり、特に限定されるものではない。
【0074】
(7)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥処理し、乾燥されたトナー母体を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥された着色粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0075】
尚、乾燥処理された着色粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0076】
(8)外添処理工程
この工程は、乾燥されたトナー母体に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。
【0077】
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0078】
〔トナー製造に使用される素材〕
〈結着樹脂〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子が粉砕法、溶解懸濁法などによって製造される場合には、トナーを構成する結着樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフオン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
また、本発明のトナーを構成するトナー粒子が懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナーを構成する各樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレンスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
また、重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0081】
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0082】
〈界面活性剤〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂を得るために使用する界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。これらの界面活性剤はトナーを乳化重合法によって得る場合に乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0083】
〈重合開始剤〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。
【0084】
懸濁重合法を用いる場合においては油溶性ラジカル重合開始剤を用いることができ、油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0085】
また、ミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法を用いる場合においては水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができ、水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素などを挙げることができる。
【0086】
〈連鎖移動剤〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子を懸濁重合法、ミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。
【0087】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素およびα−メチルスチレンダイマーなどが使用される。
【0088】
〈着色剤〉
本発明のトナーを構成する着色剤としては、公知の無機または有機着色剤を使用することができる。以下に、具体的な着色剤を示す。
【0089】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラックや、マグネタイト、フェライトなどの磁性粉が挙げられる。
【0090】
また、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0091】
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0092】
また、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0093】
以上の着色剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲とされる。
【0095】
着色剤としては、表面改質されたものを使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤などが好ましく用いることができる。
【0096】
〈凝集剤〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子をミニエマルジョン重合凝集法または乳化重合凝集法によって製造する場合に、結着樹脂を得るために使用する凝集剤としては、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。凝集剤を構成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが挙げられ、凝集剤を構成するアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらのうち、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが好ましい。前記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の対イオン(塩を構成する陰イオン)としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
【0097】
〈離型剤〉
特に限定はなく、パラフィンワックス、エステルワックス等公知のものを用いることが出来る。一例を挙げれば下記の構造を有するものがある。
【0098】
エステルワックス R−(OCO−R
(R、Rは炭化水素基、n=1〜4)
好ましくはnが2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。
【0099】
は炭素数1〜40、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜5であり、Rは炭素数1〜40、好ましくは16〜20、さらに好ましくは18〜26である。
【0100】
エステルワックスの添加量はトナー100質量部に対し1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部が特に好ましい。
【0101】
〈荷電制御剤〉
本発明のトナーを構成するトナー粒子中には、必要に応じて荷電制御剤が含有されていてもよい。荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
【0102】
〈トナー粒子の粒径〉
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜8μmのものが好ましい。この粒径は、重合法によりトナー粒子を形成させる場合には、上述したトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、または融着時間、さらには重合体自体の組成によって制御することができる。
【0103】
個数平均粒径が3〜8μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できると共に、トナーの消費量を大粒径トナーを用いた場合に比して削減することができる。
【0104】
〈外添剤〉
本発明の外部添加剤を用いるが、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、公知の外添剤を更に添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0105】
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粒子を使用することが好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤などによって疎水化処理されていることが好ましい。また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形のものを使用することができる。この有機微粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などの重合体を使用することができる。
【0106】
〔現像剤〕
本発明の現像剤は、キャリアと静電潜像現像用トナーを混合して2成分現像剤として使用される。キャリアとトナーの他に添加剤が加えられることもあるが、本発明においては、本発明に係わるキャリアを用いればその特に限定はない。キャリアとトナーの混合比は通常はトナーが現像剤全体の4〜16質量%を占めるが、その他は実質的にキャリアの質量で占められると考えてよい。
【0107】
〔画像形成方法〕
本発明の現像剤が用いられる電子写真画像形成方法は、公知のもので良く限定されない。以下に、画像形成方法、および画像形成装置の一例を説明する。
【0108】
図3は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0109】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が350〜850nmの半導体レーザー又は発光ダイオードを、像露光光源として用いるのが望ましい。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜100μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)から2400dpi、あるいはそれ以上の高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0110】
前記露光ドット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0111】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e以上の領域を本発明に係わる露光ドット径とする。
【0112】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段121及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0113】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0114】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
【0115】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0116】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Y(以下、単にクリーニング手段6Y、あるいは、クリーニングブレード6Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0117】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0118】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、あるいは、レーザー光学系などが用いられる。
【0119】
本発明の画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0120】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0121】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット120内に収容された画像支持体(定着された最終画像を担持する画像:例えば普通紙、透明シート等)としての画像支持体Pは、給紙手段121により給紙され、複数の中間ローラ122A、122B、122C、122D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、画像支持体P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の画像支持体を総称して転写媒体と云う。
【0122】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0123】
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0124】
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0125】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0126】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0127】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
【0128】
本発明の画像形成装置は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0129】
次に、本発明の代表的な構成例とその効果を示し本発明の説明をさらに行うが、無論、本発明の構成はこれらに限定されるわけではない。
【0130】
〔トナーの作製〕
以下の方法で、トナーを作製した。
【0131】
(コア用樹脂粒子の作製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器中に、下記化合物を投入混合して混合液を作製した。
【0132】
スチレン 110.9質量部
n−ブチルアクリレート 52.8質量部
メタクリル酸 12.3質量部
当該混合液に、
パラフィンワックス「HNP−57(日本精鑞社製)」 93.8質量部
を添加した後、80℃に加温して溶解し、重合性単量体溶液を作製した。
【0133】
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.9質量部をイオン交換水1340質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製した。当該界面活性剤溶液を80℃に加熱した後、上記重合性単量体溶液を投入し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」により、上記重合性単量体溶液を2時間混合分散させた。そして、D50が245nmの乳化粒子(油滴)の分散液を調製した。
【0134】
次いで、イオン交換水1460質量部を添加した後、重合開始剤(過硫酸カリウム)6質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた開始剤溶液と、n−オクチルメルカプタン1.8質量部とを添加し、温度を80℃とした。この系を80℃にて3時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い樹脂粒子を作製した。これを「樹脂粒子C」とする。
【0135】
(2)第2段重合(外層の形成)
上記「樹脂粒子C」に、過硫酸カリウム5.1質量部をイオン交換水197質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に下記重合性単量体を混合してなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。単量体混合液は、
スチレン 282.2質量部
n−ブチルアクリレート 134.4質量部
メタクリル酸 31.4質量部
n−オクチルメルカプタン 4.93質量部
からなり、滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って第2段重合(外層の形成)を行った。その後、28℃まで冷却し、「コア用樹脂粒子」を得た。
【0136】
尚、形成された「コア用樹脂粒子」の重量平均分子量は21,300、D50は180nm、ガラス転移点は39℃であった。
【0137】
〈シェル用樹脂粒子の調製〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた反応容器にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2.0質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0138】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、下記化合物を混合してなる重合性単量体混合溶液を3時間かけて滴下した。尚、重合性単量体混合溶液は、
スチレン 528質量部
n−ブチルアクリレート 176質量部
メタクリル酸 120質量部
n−オクチルメルカプタン 22質量部
からなる。当該重合性単量体混合液を滴下後、この系を80℃にて1時間にわたり加熱、撹拌して重合を行い樹脂粒子を調製した。これを「シェル用樹脂粒子」とする。
【0139】
尚、「シェル用樹脂粒子」の重量平均分子量は12,000、D50は120nm、ガラス転移点は53℃であった。
【0140】
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム10質量%の水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「リーガル330R」(キャボット社製)100質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液を調製した。これを、「着色剤分散液」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0141】
〈着色粒子の作製〉
(塩析/融着(会合・融着)工程)(コア部の形成)
420.7質量部(固形分換算)の「コア用樹脂粒子」とイオン交換水900質量部と「着色剤粒子分散液」200質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。容器内の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整した。
【0142】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、D50が5.5μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、更に熟成処理として液温度70℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、「コア部」を形成した。
【0143】
「コア部」の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.930であった。
【0144】
(シェル層の形成(シェリング操作))
次いで、65℃において「シェル用樹脂粒子」を50質量部(固形分換算)添加し、更に塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、70℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、「コア部」の表面に「シェル用樹脂粒子」の粒子を融着させた。その後、75℃で20分熟成処理を行い、シェル層を形成した。
【0145】
ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、「着色粒子を含有する水溶液」を得た。
【0146】
(洗浄、乾燥工程)
着色粒子を含有する水溶液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械社製)で固液分離し、着色粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで水洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「着色粒子」を作製した。得られた着色粒子Bkは、コア・シェル構造を有するD50が6.0μm、Tgが39.5℃の粒子であった。
【0147】
〈トナー1の作製〉
上記で作製した「着色粒子」100質量部に対し、疎水性シリカ微粒子(数平均一次粒子径=80nm)を3.5質量%、疎水性チタニア微粒子(数平均一次粒子径=10nm)を0.6質量%添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)を用いて、周速35m/secで25分間混合して、「トナー」を作製した。尚、トナーのガラス転移点は着色粒子と同じ39.5℃であった。
【0148】
〔磁性芯材の作製〕
下記の如く磁性芯材1〜6を作製した。なお、以下「磁性芯材」を「芯材」と記す。
【0149】
(芯材1の作製)
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ、但し、インチ:2.54cm、下記でも同意)で5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料としては四酸化三マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを、SrO原料としては炭酸ストロンチウムをそれぞれ用いた。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉で、1050℃で3時間加熱し、仮焼成を行った。
【0150】
次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いてD50が4.1μmまで粉砕した後、水を加え、さらに湿式のメディアミル(縦型ビーズミル、1/16インチ径のステンレスビーズ)を用いて5時間粉砕した。このスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をマイクロトラックにて測定した結果、D50は1.8μmであった。このスラリーに分散剤を適量添加し、適度な細孔容積を得るために、バインダーとしてPVA(20%溶液)を固形分に対して0.4質量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行い、その後、ロータリー式電気炉で、700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行った。
【0151】
その後、トンネル式電気炉にて、焼成温度1150℃、窒素ガス雰囲気下にて、5時間保持した。この時、昇温速度を150℃/時、冷却速度を110℃/時とした。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別し、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。細孔径は1.26μm、細孔径のばらつきdvは0.58であった。
【0152】
(芯材2の作製)
芯材1と同様にスプレードライヤーによって得られた造粒物を、ロータリー式電気炉で有機成分を除去した後、トンネル式電気炉を用い、大気雰囲気下、1050℃で焼成を行い、その後、さらにトンネル式電気炉を用い、窒素ガス雰囲気下、焼成温度を1180℃にて焼成を行った。それ以外は実施例1と同様にして、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。
【0153】
(芯材3の作製)
仮焼成後の粉砕条件を、1/8インチ径のステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに1/16インチ径のステンレスビーズを用いて12時間粉砕にして、スラリー粒径(粉砕の一次粒子径)D50を1μmまで細かくし、更に本焼成の条件として、ロータリー式電気炉にて、炉内に水素ガスを投入し、炉内を還元性雰囲気下にして、温度850℃、1時間保持のみに変更して得られた。
【0154】
(芯材4の作製)
仮焼成後の粉砕を、1/8インチ径のステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで0.5時間粉砕するのみとし、トンネル式電気炉での焼成温度を1100℃にした以外は、実施例1と同様にして、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。
【0155】
(芯材5の作製)
仮焼成後の粉砕条件を、1/8インチ径のステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに1/16インチ径のステンレスビーズを用いて15時間粉砕にして、スラリー粒径(粉砕の一次粒子径)D50を0.8μmまで細かくし、更に本焼成の条件として、ロータリー式電気炉にて、炉内に水素ガスを投入し、炉内を還元性雰囲気下にして、温度850℃、1時間保持のみに変更して得られた。
【0156】
(芯材6の作製)
実施例1の焼成工程を次の様に変更した。すなわち、バッチ式電気炉にて、焼成温度1100℃、窒素ガス雰囲気下にて、3時間保持した。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別し、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。
【0157】
以上芯材1〜6の内容を纏めて表1に記す。
【0158】
【表1】

【0159】
〔キャリアの作製〕
(キャリア1の作製)
芯材1を100質量部とメタクリル酸メチル共重合体樹脂粒子(ガラス転移点 110℃)、一次粒子径82nmを5質量部投入し、予備混合工程として、1m/secの周速で2分間撹拌混合した。このときのメタクリル酸メチル共重合体及び芯材の温度は25〜50℃であった。次に中間体形成工程として、系内の温度をガラス転移点よりも50℃未満低くたもち、8m/secの周速で20分間撹拌混合した。そののち成膜工程として、ジャケットに温水を注入し、120℃で30分間撹拌混合し、その後室温まで冷却することで、キャリア1を得た。
【0160】
(キャリア2〜6の作製)
芯材1を2〜6に変更したが、その他はキャリア1と同様にしてキャリア2〜6を作製した。
【0161】
(キャリア7の作製)
芯材1を100質量部とメタクリル酸メチル共重合体樹脂微粒子(ガラス転移点 100℃)を5質量部投入し、キャリア1〜6と異なり、予備混合工程を経ずに、中間形成工程として、ガラス転移点よりも低い95℃未満に保ち、8m/secの周速で20分間撹拌混合した。そののち成膜工程として、ジャケットに温水を注入し、120℃で30分間撹拌混合し、その後室温まで冷却することで、キャリア7を得た。
【0162】
(キャリア8の作製)
トルエン1000質量部に、熱可塑性アクリル樹脂(BR−52、三菱レイヨン社製)5.5質量部を溶解して注入樹脂溶液を調製した。芯材1と100質量部を一軸式間接加熱型の乾燥機に入れ、75℃に保持し撹拌ながら、「注入樹脂溶液」全量を滴下した。トルエンが充分揮発したことを確認した後、撹拌を続けながら150℃まで昇温し、2時間保持した。その後、乾燥機から取り出し、凝集した粒子を解砕し、粒度調整を行った。
【0163】
なおキャリア8は比較用である。
【0164】
上記キャリア1〜8の内容を纏めて表2に示す。
【0165】
【表2】

【0166】
(現像剤の作製)
上記で作製したトナー1とキャリア1〜8を用い、配合比をキャリア100質量部に対してトナー8質量部とし、トナーとキャリアをVブレンダーにて、常温常湿(20℃、50%RH)環境で、回転数20rpm、撹拌時間20minでブレンドした後、125μmの篩分網にて篩分し、各現像剤を得た。
【0167】
〔性能評価〕
上記で作製した現像剤1〜8に、ついて下記の性能評価を行った。
【0168】
(評価方法)
上記で作製した現像剤を下記の画像評価装置に順次装填し、プリントを行い以下の評価を行った。画像評価装置としては、デジタルカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いた。プリントは、上記で作製したトナーと現像剤を順番に装填し、20℃、50%RHの環境で20万枚行った。尚、プリントは、画素率が1%の画像(文字画像が7%、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)を用い、A4判上質紙(64g/m)に行った。
【0169】
(転写性)
初期と20万枚プリント終了後、画素濃度が1.30のソリッド画像(20mm×50mm)を形成し、下記式により転写率を求めて、評価を行った。
【0170】
転写率(%)=(転写材に転写されたトナーの質量/感光体上に現像されたトナーの質量)×100
評価基準
◎:転写率が、96%以上で極めて良好
○:転写率が、90%以上で良好
△:転写率が、80%以上で実用上問題ないレベル
×:転写率が、80%未満で実用上問題となるレベル
(キャリア付着)
上記の評価機で20万枚のプリント終了後、ベタ画像のプリントを行い、キャリア付着の評価を行った。
【0171】
ベタ画像上に見られた付着キャリア粒子の個数を、拡大鏡を使用して目視により測定し、以下の判定基準により判定を行った。
【0172】
◎:ベタ画像上にキャリア付着なし
○:ベタ画像上にキャリア付着が3個以内で実用上問題なし
△:ベタ画像上にキャリア付着が5個以内で実用化何とか可能
×:ベタ画像上にキャリア付着が5個を超えて存在し、実用上問題有り。
【0173】
(トナー・キャリア飛散)
トナー・キャリア飛散の評価は、20万枚プリント終了後、現像機周辺のトナー飛散とキャリア飛散による機内汚れ状態を目視で観察した。
【0174】
評価基準
◎:トナー・キャリア飛散による機内汚れ全くなし
○:軽微なトナー・キャリア飛散による機内汚れはあるが、メンテナンス時に掃除機を必要としない程度で実用上問題ないレベルである
△:トナー・キャリア飛散による機内汚れはあるが、メンテナンス時に掃除をすれば実用上問題がない
×:トナー・キャリア飛散による機内汚れがひどく、メンテナンス時に手が汚れ掃除機による掃除が必要となり、実用上問題となるレベルである
【0175】
【表3】

【0176】
本発明内のキャリアを用いた実施例1〜6は、いずれの特性も少なくとも実用化可能なレベルにある。しかしながら、従来より行われている本発明外の製法で作製したキャリア8(比較例1)を用いた場合は、20万枚プリント終了後の特性が極めて悪いことがわかる。
【符号の説明】
【0177】
1 多孔質フェライト粒子
2 細孔
3 樹脂粒子
4 キャリア中間体
5 樹脂被覆層
10 本体容器
12 原料投入口
18 回転体
18a,18b,18c 撹拌羽根
19 垂直方向回転体
22 モーター
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性芯材を樹脂被覆したキャリアと静電潜像現像用トナーからなる2成分現像剤の製造方法において、下記(1)〜(3)の3工程を経ることを特徴とする2成分現像剤の製造方法。
(1)前記磁性芯材として多孔質フェライト粒子を用い、該多孔質フェライト粒子と樹脂粒子を、該樹脂粒子のガラス転移点より低い温度で混合し、該多孔質フェライト粒子表面に樹脂粒子を付着させキャリア中間体を形成する工程
(2)該キャリア中間体を該樹脂粒子のガラス転移点以上の温度にて撹拌し、樹脂被覆層を成膜し冷却する工程
(3)該成膜され冷却されたキャリアと静電潜像現像用トナーを混合する現像剤作製工程
【請求項2】
前記キャリア中間体を形成する工程において、予備混合を経て、キャリア中間体を形成することを特徴とする請求項1記載の2成分現像剤の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質フェライト粒子の細孔径が0.2μm以上1.8μm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の2成分現像剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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