説明

2次元コード印刷ドットパターン補正方法、制御装置、印刷装置

【課題】 黒セルのドットパターンの印刷太りで白セルが潰れたり、補正による白い隙間によりリーダの読取精度が低下しないドットパターン補正方法の提供。
【解決手段】 補正対象セルが黒セルの場合には、白セルが隣接する辺については、白ドットに置き換えて補正し、黒セルが隣接する辺についてはそのままとし、一方で、白セルが隣接する辺と黒セルが隣接する辺とで作られる補正対象セルの角部ドットは白と補正し、更に、白セルのみが隣接する角については、補正を行わず、一方、白セルが隣接する角で且つ角を形成する2辺に隣接するセルが共に黒の場合は、前記補正対象セルの角部ドットを白と補正し、黒セルのみが隣接する角については、角部に相当するドットを黒ドットとし、黒セルが隣接する角で、且つ、角を形成する2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合は、角部に相当するドットを白に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元コード印刷データをドットパターンに展開するドットパターン補正方法、ドットパターン補正方法を用いる制御装置、及び、2次元コード印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2次元コードの例として、QRコード(登録商標)を用いて説明する。
【0003】
QRコードの印刷において、リーダで十分な読取精度を得られるQRコードの印刷領域の大きさは、QRコードに格納する文字数、印刷装置の解像度とその印刷精度、及び、リーダの読取性能により決まる。
【0004】
従って、読取性能が一定であれば、そのリーダで十分な読取精度を得られるQRコードの印刷領域の大きさは、QRコードに格納する文字数及び印刷装置の解像度とその印刷精度により決まる。ここで、印刷精度とは、ドット径やトナーの飛散や定着潰れなどによる黒ドットの鈍りの度合いである。
【0005】
一般的に、QRコードに格納する文字数は、使用目的や用途に則って決まるため、文字数を少なくするなどの変更はできない場合が多い。このため、実質的には、QRコードの印刷領域の大きさは、印刷装置の解像度とその印刷精度により決まる。より多くの文字数をより小さい印刷領域に印刷したい場合には、より解像度が高く印刷精度の良い印刷装置に変更する必要がある。また、近年、バージョン11以上(セル構成61×61)の文字数の多いQRコードの使用も増加している。
【0006】
文字数の多いQRコードを使用すると、QRコードの印刷領域が大きくなる。しかしながら、印刷する領域に制約が有ったり、QRコード以外の印刷内容も有る場合が多いため、QRコードの印刷領域は小さい方が望ましい。
【0007】
ところで、文字数の多いQRコードを印刷する場合、セルの黒パターンの印刷太りが生じることがある。ドット径が大きかったり、トナーの飛散や定着潰れにより黒セルのドットパターンが印刷太りして白セルの領域にまで入ってくることにより、リーダによる読取精度が低下することが知られている。
【0008】
QRコードの各セルのドットパターンを補正し、セルの黒パターンの印刷太りを防ぐことが、リーダによる読取精度を低下させずにQRコードの印刷領域をより小さくすることに有効である。
【0009】
従来技術として、QRコードのドットパターン作成時に、印刷太りを予め見越して、QRコードの全ての黒セルの寸法を、一律に小さくして印刷する技術がある(例えば、特許文献1(特開2000−203098号公報)参照)。しかし、この場合、図1に示す様に、QRコード101の黒セル間に、白い線状の帯102や、セルとセルとの隙間103が発生し、リーダによる読取精度が低下する可能性が有る。また、見栄えも悪くなる。
【0010】
また、従来技術として、インク滲みによる白セルの潰れを防ぐため、QRコードの全ての黒セル内に、インク滲み調整用の白ドットを印刷する技術が有る(例えば、特許文献2(特開2008−183778号公報)参照)。しかしながら、この方法は、高解像度のプリンタにのみ適用可能な技術である。
【0011】
また、図2に示す様に、印刷に使用する用紙の種類・状態、印刷装置の状態によっては、QRコード201の滲み調整用の白ドット202が、203のように残って見える可能性が有る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
QRコード印刷において、より多くの文字数をより小さい印刷領域に印刷するには、解像度が高く、その印刷精度の良い印刷装置を使用することで可能になる。しかし、解像度が高く印刷精度の良い印刷装置は一般にコストが高い。
【0013】
一方で、例えば、保険証カードや受診カードなどの各種カードにQRコードを印刷して利用することが増えており、このようなサイズの決まっているカードにQRコードを印刷する場合には、より多くの文字数をより小さな印刷領域に印刷できることが望まれている。
【0014】
また、QRコードのリーダの読取精度を低下させずにQRコードの印刷領域をより小さくする目的で、黒セルの一つ一つに一律に1ドットの印刷補正をかけた場合、黒セルが隣接する部分では2ドット分の白い隙間ができ、また、印刷精度により黒セルの印刷太りが少ないところでは、黒セルの間に白い箇所が発生する。このため、リーダの読取精度が低下する場合が有り、また、見栄えも悪い。
【0015】
本発明の目的は、2次元コードのドットパターンに対し、黒セルの辺と角に隣接するセルが白セルか黒セルかにより、各々適切な補正を行うことで、黒セルのドットパターンの印刷太りで白セルが潰れたり、補正による白い隙間が印刷結果に現れることで、リーダの読取精度が低下することが無い補正方法または補正手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、文字列データを受信し、受信した文字列データに対して白セルと黒セルの組合せからなる2次元コードのドットパターンを展開して印刷する2次元コード印刷ドットパターン補正方法において、補正対象セルが黒セルの場合には、
(1)白セルが隣接する辺については、白ドットに置き換えて補正し、
(2)黒セルが隣接する辺についてはそのままとし、一方で、白セルが隣接する辺と黒セルが隣接する辺とで作られる補正対象セルの角部ドットは(1)を優先し白とし、
(3)白セルのみが隣接する角については、前記(1)又は(2)の補正結果に対して、補正を行わず、一方、白セルが隣接する角で且つ角を形成する2辺に隣接するセルが共に黒の場合は、前記補正対象セルの角部ドットを白と補正し、
(4)黒セルのみが隣接する角については、前記(1)又は(2)の補正結果に対して、角部に相当するドットを黒ドットとし、
(5)黒セルが隣接する角で、且つ、角を形成する2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合は、角部に相当するドットを白に補正して、
ドットパターン補正を行うことを特徴とする。
【0017】
また、文字列データを受信し、受信した文字列データに対して白セルと黒セルの組合せからなる2次元コードのドットパターンを展開して印刷する2次元コード印刷ドットパターン補正方法において、補正対象セルが白セルであれば補正をせずに次の補正対象セルの補正に移り、黒セルであれば、
(1)当該補正対象セルの周囲が白セルのみかを判定し、該当する場合は、対象セルの4辺を白ドットとする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了とし、一方、該当しない場合は、
(2)斜めに隣接するセルが全て白セルで、且つ、4辺に隣接するセルのうち、何れかが黒セルであるかを判定し、該当する場合は、白セルに接している辺のドットを白とする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了し、一方、該当しない場合は、
(3)当該補正対象セルと角を接する黒セルのみが存在するかを判定し、該当する場合は、対象セル及び角を接しているセルの上下左右の辺のドットを白とし、次に、隣接している角部を黒とする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了し、一方、該当しない場合は、
(4)黒セルと隣接する角で、且つ、角を形成する2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合は、角部に相当するドットを白にする補正を行い、一方、黒セルと隣接する角が黒セルで、且つ、角を形成する2辺共に黒セルの場合はそのまま補正せずに当該補正対象セルの補正を完了する補正を行うことを特徴とする。
【0018】
また、上記何れかの補正方法により、2次元コードに補正を行うことを特徴とする。
【0019】
また、上位装置から受信した2次元コードドットパターンに対し、上記何れかの補正方法により補正を行い印刷することを特徴とする。
【0020】
また、文字列を入力する入力手段と、入力した文字により2次元コードドットパターンを作成する作成手段と、該作成手段によって作成したドットパターンに対し上記何れかの補正方法により補正する補正手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、QRコードの形状に則した補正を実施し、リーダでの読取精度の低下を防ぐ補正が可能となり、また、QRコードの印刷領域の縮小化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のQRコードドットパターン補正の一例。
【図2】従来のQRコードドットパターン補正の一例。
【図3】本発明の一実施形態による、QRコードを印刷可能な印刷システムの概略構成図。
【図4】ドットパターン補正処理のフローチャート。
【図5】補正対象セルにおける補正分類1の場合の補正対象セルの配置と補正ドットの位置を示す概略図。
【図6】補正対象セルにおける補正分類2の場合の補正対象セルの配置と補正ドットの位置を示す概略図。
【図7】補正対象セルにおける補正分類3の場合の補正対象セルの配置と補正ドットの位置を示す概略図。
【図8】(a)補正対象セルにおける補正分類4の場合の補正対象セルの配置と補正ドットの位置を示す概略図A、及び(b)周辺セルも補正した後の概略図。
【図9】補正対象セルにおける補正分類4の場合の補正対象セルの配置と補正ドットの位置を示す概略図B(周辺セルも補正済)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0024】
図3に、本実施例における2次元コード補正機能を持つ印刷システムの概略構成を示す。なお、本実施例ではQRコードを用いて説明するが、勿論、これに限られない。
【0025】
本システムは、QRコードに変換する機能を備えた制御装置302と、制御装置302に印刷データを提供する上位装置301と、制御装置302からの印刷データを印刷する印刷装置303とから構成される。
【0026】
制御装置302は、上位装置301よりQRコードに変換する文字列を含む印刷データを受信し、制御装置302の受信バッファ304に格納する。次に、受信バッファ304に格納された受信データからQRコードに変換する文字列を取り出し、ドットパターン作成部305により、QRコードのドットパターンに変換し、QRコード以外の印刷内容と共にドットパターン格納部307に格納する。ドットパターン格納部307への格納終了後、ドットパターン補正ルーチンを有するドットパターン補正部306によりQRコードの補正を実施する。補正終了後、ドットパターンを出力部308より印刷装置303に送り、印刷を行う。
【0027】
従来技術の課題である黒セルの印刷太りによって白セルが潰れてしまうことを防止するには、黒セルの印刷太りを見越して、QRコード中の黒セルの寸法を小さくする。言い換えれば、黒セル内の辺に相当するドットを削る(白パターン化する)ことで補正する必要が有る。一方で、全てのセルを一律に補正する方法では、補正による白パターン化が印刷結果に残り、リーダの読取精度を低下させ、見栄えも損なう。
【0028】
補正による白パターン化が印刷結果に残る原因は、黒セル同士が接している場合にも補正を実施するためである。そのため、黒セル同士が接している箇所は補正を行わず(白パターン化しない)、黒セルと白セルとが接している箇所のみ黒セルの補正をする必要がある。
【0029】
セル同士が接するのは、辺の部分(或るセルに対し上下左右方向)で接する場合と、角の部分(或るセルに対し斜め4方向)で接する場合の二つが有る。この二つの場合と、黒セルと黒セルが接する場合、黒セルと白セルが接する場合とを合わせて考えると、必要な補正条件は以下となる。なお、補正対象セルは黒セルである(なお、説明のため、本実施例では、1セルは7×7=49ドットとするが、勿論これに限られない。)。
【0030】
<ドットパターン補正条件>
補正対象セル(黒セル)に対して、
(1)白セルが隣接する辺については、従来同様、白パターンに置き換えて補正する(辺に相当する1×7ドット分を白ドットに置換する)。
(2)黒セルが隣接する辺については、補正を行わない。
【0031】
なお、(1)と(2)について、白セルが隣接する辺と黒セルが隣接する辺とで作られる角部のドットについては(1)を優先し、「白」とする。
(3)白セルが隣接する角については、上記(1)及び(2)の隣接する辺について補正した結果に対して、補正を行わない。但し、角を形成する2辺に隣接するセルが共に黒の場合は、角部に相当するドット(例えば、1ドット)を白とする。
(4)黒セルが隣接する角については、上記(1)及び(2)の隣接する辺について補正した結果に対して、角部に相当するドット(例えば、1ドット)を黒ドットとする。
(5)黒セルが角と辺の両方で隣接する場合、周囲の黒セルの配置状態によって、角の黒セルへの補正の有無を決定する。
【0032】
なお、この「配置状態」とは、(i)補正対象セル(黒セル)の角部と斜めに黒セルが接し、且つ、その角を形成する当該黒セルの2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合に該当し、この場合は、角部に相当するドット(例えば、1ドット)を白ドットとする。
【0033】
なお、上記(1)〜(5)の補正による効果について、上記(1)の補正により、黒セルの印刷太りによる白セルの潰れを防ぐことができる。また、上記(2)の補正により、従来の一律補正では黒セルの間に生じた白い隙間の発生を防ぐことができる。また、上記(3)の補正により、黒セルの印刷太りにより白セルが潰れることを防ぐことができる。このため、より多くの文字数をより小さいQRコードの印刷領域に印刷しても、リーダによる読取精度は低下しない。また、上記(4)の補正により、黒セルが隣接する角に白い隙間が発生することを防ぐことができる。
【0034】
本実施例では、上記(1)〜(5)の補正を実施するのは黒セルであることから、1つの黒セルを基準に考え、QRコードの黒セルの配置を4つに分類して補正する方法について説明する。
・分類1:黒セルの周りに白セルしか無い場合
・分類2:基準となる黒セルと辺のみを接する黒セルが存在する場合。辺を接する黒セルは単数だけでなく、複数の場合も含む。
・分類3:黒セルと角のみを接する黒セルが存在する場合。角を接する黒セルは単数だけでなく、複数の場合も含む。
・分類4:黒セルの周りに、辺を接する黒セルと角を接する黒セルの2つが存在する場合。これらの接する黒セルは複数でも良い。
【0035】
1つの黒セルを基準に考えた場合、どんなQRコードの形状でも上記(分類1)〜(分類4)の4つに分類される。
【0036】
次に、本実施例のドットパターン補正方法を、フローチャートを用いて説明する。
【0037】
図4に、QRコードドットパターン補正ルーチンのフローチャートを示す。
【0038】
なお、印刷するQRコードが複数有る場合には、ステップ401(S401、以下同様。)〜S420のループ処理を、図3のドットパターン格納部307に展開するQRコードの数だけ実施する(ループ1:ループ対象は、S401〜S420)。
【0039】
また、QRコード内のセルの数だけループを行い補正を実施する(ループ2:ループ対象は、S402〜S419)。補正対象は、図3のドットパターン格納部307内の、S401で対象としたQRコードのドットパターンである。
【0040】
以下、1つのセルに対しての補正処理について説明する。
【0041】
まず、補正対象セルに対し、最初のチェック(最初の補正処理)かどうかを判定する(S403)。最初のチェックの場合には、セルに参照用ポインタを設定する(S404)。一方、最初のチェックでない場合には、次のセルに参照用ポインタを進める(S405)。
【0042】
次に、補正対象セルが白ドットか黒ドットかを判定する(S406)。「白」の場合、処理を中断してループ2の先頭に戻り、一方、対象セルが「黒」の場合、処理を継続する。
【0043】
次に、補正対象セルについて、上記した4分類((分類1)〜(分類4))のうち、どの分類に属するかの判定処理を行う(S407〜S414)。
【0044】
まず、対象セルに隣接する黒セルの分布をチェックし、(分類1)に該当するかを判定する(S407)。(分類1)は、図5に示す様に、対象セルの周囲に黒セルが存在しない場合(=周囲が白セルのみの場合)に該当する。
【0045】
判定の結果、(分類1)に該当する場合には、対象セルの4辺を白ドットにすれば良い(S408)。具体的には、図5の点線部501に示す様に、黒セルの上下左右の辺を、[1辺の長さのドット数×nドット幅]分、「白」にする。nのドット数については、セルのドット数・用紙等の印刷環境により、任意に決定するものとする(本実施例では、以下、n=1として説明する)。なお、本処理実行後は、ループ2の先頭(S402)に戻る。
【0046】
S407にて(分類1)に該当しなかった場合、対象セルの周囲をチェックし、(分類2)に該当するかを判定する(S409)。(分類2)は、「斜めに隣接するセルが全て白セルで、且つ、4辺に隣接するセルのうち、何れかが黒セルである」場合に相当し、言い換えると「黒セルと辺部でのみ接する」ことになる。(分類2)は、図6に示す様に、対象の黒セルと辺を接する黒セルが存在する場合に該当する。
【0047】
判定の結果、(分類2)に該当する場合には、図6のセル601の斜線部分に示す様に、白セルに接している辺を、[白セルに接している箇所の辺の長さのドット数×nドット幅]分、「白」にする(S410)。一方、図6のセル602は、セル601の判定時にはまだ判定対象ではないため、未処理の状態を示している。
【0048】
なお、図6の例では、対象セルの辺に1つの黒セルしか隣接していないが、2つまたは3つ隣接している場合も同様の処理を行う。なお、4辺全てが隣接している場合は辺部については何もせずに処理を終了する。続いて、(分類2)に該当する補正対象セルで、2つ〜4つの黒セルと辺部でのみ隣接している場合について、黒セルと接する辺同士で形成される補正対象セルの角部を、[長さnドット×幅nドット]分、「白」にする(S418)。本処理実行後は、ループ2の先頭(S402)に戻る。
【0049】
S409にて(分類2)に該当しなかった場合、対象セルの周囲をチェックし、(分類3)に該当するかを判定する(S411)。(分類3)は、図7に示す様に、対象の黒セルと角を接する黒セルのみが存在する場合に該当する。
【0050】
判定の結果、(分類3)に該当する場合には、まず、図7の点線部701に示す様に、対象セルの辺を[白セルに接している箇所の辺の長さのドット数×nドット幅]分、「白」にする(S412)。
【0051】
次に、黒セルに隣接している角の部分である図7の702の塗り潰し箇所(セル701の右下角部)を、[長さnドット×幅nドット]分、「黒」に戻す(S413)。これは、接している角の部分のドットを「白」のままとすると、セルとセルの間に隙間ができるためである。対象セルの角に隣接しているセルの位置により、黒に戻す位置が変化する。なお、図7では、対象セルの角の部分に1つの黒セルしか隣接していないが、2つまたは3つまたは4つ隣接している場合も同様である。一方、図7のセル703は、セル701の判定時にはまだ判定対象ではないため、未処理の状態を示している。なお、本処理実行後は、ループ2の先頭(S402)に戻る。
【0052】
S411にて(分類3)に該当しなかった場合、対象セルの周囲をチェックし、(分類4)に該当するかを判定する(S414)。(分類4)は、図8及び図9に示す様に、対象の黒セルの辺の部分と角の部分の両方に黒セルが隣接する場合に該当する。
【0053】
(分類4)の場合の補正は、図8の場合と図9の場合に分かれる。
【0054】
図8に該当するのは、対象セル801と角を接しているセル803において、対象セル801からセル803を見た方向をそれぞれ、X(図8の805),Y(図8の806)とすると、Xの方向には黒セル802が存在するが、Yの方向には黒セルが存在しない。この場合、(分類4A)に該当する。即ち、図8(a)のように、補正対象セル801と角を接するセル803の両方に隣接する2つのセルのうち、片方(セル802)が黒セルで、もう片方(セル804)が白セルの場合である。
【0055】
(分類4A)の条件に該当する場合、まず、図8(a)に示す様に、対象セル801の辺を、[白セルに接している箇所の辺の長さのドット数×nドット幅]分、「白」にする(S416)。なお、(分類3)では、補正対象セルと角のみ接する黒セルが存在する場合に、当該角のセルを黒としたが、(分類4A)においては、白とする(図8(a)の角部801aに相当する)。
【0056】
図8(a)では対象セルの辺に面しているセルが1つ、角に接しているセルが1つだが、複数の場合も同様である。本処理実行後は、ループ2の先頭(S402)に戻る。
【0057】
なお、図8(a)は、セル802,803が未補正の状態を示したものである。なお、図8(b)に、セル801,802,803がそれぞれ補正対象セルとして補正された後の状態を点線807として示す。この場合、セル801、803は(分類4A)、セル802は(分類2)として補正されたものとなる。
【0058】
一方、S415において、図8(a)に示すようなセル条件に該当しない場合は、図9に示す様に、対象セル901の辺を[白セルに接している箇所の辺の長さのドット数×nドット幅]分、「白」にする(S417)。なお、図9は、セル902,903,904についても、補正対象セルとして本実施例の補正を適用した後を示したものである。
【0059】
図9では、対象セルの辺に面しているセルが2つ、角に接しているセルが1つであるが、それ以外の場合(即ち、他の角部について)も同様である。本処理実行後は、ループ2の先頭(S402)に戻る。
【0060】
以降、セルの数だけループ2(S402〜S418)の処理を繰り返し、補正を実行する。或るQRコードの全セルについて補正処理が終了した後は、ループ1の先頭(S401)に戻り、ドットパターン格納部307内に未補正のQRコードがあれば、上記と同様の補正処理を順次実行する。
【0061】
なお、本実施例において、上位装置よりQRコードに変換する文字列を含む印刷データを受信することしているが、ビットマップデータ受信でも良い。また、制御装置を独立した装置として説明したが、上位装置や印刷装置に内蔵されていても良い。
【0062】
また、本実施例においては、QRコードにより説明したが、他の2次元コード(例えば、PDF417などに代表されるスタック式や、DataMatrix、Veri Codeなどに代表されるマトリックス式)を補正対象としても良い。
【0063】
上記したように、本発明により、2次元コード印刷に適した2次元コードデータ補正方法の提供が可能となる。
【0064】
また、2次元コードの印刷に適した補正を行った2次元コードドットパターンを用いて印刷する印刷装置により、白スジ等の発生を防止した2次元コードを印刷することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
301:上位装置、302:制御装置、303:印刷装置、304:受信バッファ、305:ドットパターン作成部、306:ドットパターン補正部、307:ドットパターン格納部、308:出力部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2000−203098号公報
【特許文献2】特開2008−183778号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字列データを受信し、受信した文字列データに対して白セルと黒セルの組合せからなる2次元コードのドットパターンを展開して印刷する2次元コード印刷ドットパターン補正方法において、
補正対象セルが黒セルの場合には、
(1)白セルが隣接する辺については、白ドットに置き換えて補正し、
(2)黒セルが隣接する辺についてはそのままとし、一方で、白セルが隣接する辺と黒セルが隣接する辺とで作られる補正対象セルの角部ドットは(1)を優先し白とし、
(3)白セルのみが隣接する角については、前記(1)又は(2)の補正結果に対して、補正を行わず、一方、白セルが隣接する角で且つ角を形成する2辺に隣接するセルが共に黒の場合は、前記補正対象セルの角部ドットを白と補正し、
(4)黒セルのみが隣接する角については、前記(1)又は(2)の補正結果に対して、角部に相当するドットを黒ドットとし、
(5)黒セルが隣接する角で、且つ、角を形成する2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合は、角部に相当するドットを白に補正して、
ドットパターン補正を行うことを特徴とする2次元コード印刷ドットパターン制御方法。
【請求項2】
文字列データを受信し、受信した文字列データに対して白セルと黒セルの組合せからなる2次元コードのドットパターンを展開して印刷する2次元コード印刷ドットパターン補正方法において、
補正対象セルが白セルであれば補正をせずに次の補正対象セルの補正に移り、黒セルであれば、
(1)当該補正対象セルの周囲が白セルのみかを判定し、該当する場合は、対象セルの4辺を白ドットとする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了とし、一方、該当しない場合は、
(2)斜めに隣接するセルが全て白セルで、且つ、4辺に隣接するセルのうち、何れかが黒セルであるかを判定し、該当する場合は、白セルに接している辺のドットを白とする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了し、一方、該当しない場合は、
(3)当該補正対象セルと角を接する黒セルのみが存在するかを判定し、該当する場合は、対象セル及び角を接しているセルの上下左右の辺のドットを白とし、次に、隣接している角部を黒とする補正を行って当該補正対象セルの補正を完了し、一方、該当しない場合は、
(4)黒セルと隣接する角で、且つ、角を形成する2辺のうち一方のみが黒セルに接する場合は、白セルに接している辺のドットを白とする補正を行った後、角部に相当するドットを白にする補正を行い、一方、黒セルと隣接する角が黒セルで、且つ、角を形成する2辺共に黒セルの場合は白セルに接している辺のドットを白とする補正を行い、
当該補正対象セルの補正を完了する補正を行うことを特徴とする2次元コード印刷ドットパターン制御方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の補正方法により、2次元コードに補正を行うことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
上位装置から受信した2次元コードドットパターンに対し、請求項1または2記載の補正方法により補正を行い印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
文字列を入力する入力手段と、入力した文字により2次元コードドットパターンを作成する作成手段と、該作成手段によって作成したドットパターンに対し請求項1または2記載の補正方法により補正する補正手段とを備えたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−214931(P2010−214931A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67731(P2009−67731)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】