説明

2液型液体シム組成物

エポキシ硬化剤、及びエポキシ硬化剤液とエポキシ樹脂液とを含む2液型組成物、並びに液体シム用途におけるそれらの使用方法を提供する。エポキシ硬化剤は、少なくとも1種類の脂環式ポリアミン硬化剤と、a)脂肪族ポリアミドアミン及びb)過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物から選択される少なくとも1種類の第2の硬化剤と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示内容の全体を本明細書に援用する米国特許仮出願第61/151076号(2009年2月9日出願)の恩典を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、硬化性組成物、及び、液体シムの用途において有用でありうる硬化剤液とエポキシ樹脂液とからなる2液型組成物、並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シムは、組み立てられる部品を位置決めし、部品間の隙間を埋めるために組立て作業の多くの場面で使用されている。シム処理の必要性は、厳密な公差の要求及び接合部における隙間をなくす必要のために航空宇宙産業における組立て作業において特に喫緊である。組立て作業で用いられるシムは、大きく3つのカテゴリーに分けられる。固体シムは、一部の例では、接合する部品と同じ材料で形成される。積層剥離型シムは、良好な密着度が得られるまで1層ずつ剥離することが可能な箔層で形成することができる。液体シム材料は不規則な、又はテーパした接合部を埋めるうえで有用でありうる。液体シム材料は、幅が0.7mmを超えない隙間を埋めるために通常使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エポキシ組成物、硬化剤組成物、及び、液体シムの用途として有用でありうる本発明のエポキシ組成物と硬化剤組成物とからなる2液型組成物、並びにそれらの使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に述べると、本開示は、少なくとも1種類の脂環式ポリアミン硬化剤と、a)脂肪族ポリアミドアミン及びb)過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物から選択される少なくとも1種類の第2の硬化剤と、を含むエポキシ硬化剤を提供するものである。特定の実施形態では、少なくとも1種類の第2の硬化剤は脂肪族ポリアミドアミンである。特定の実施形態では、少なくとも1種類の第2の硬化剤は、過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物である。特定のこうした実施形態では、非分枝ポリエーテルジアミンは式I:
N−[(CHO]−(CH−NH [I]
[式中、yは1、2、3又は4であり、xはそれぞれ独立して2、3又は4から選択される]の化合物である。特定のこうした実施形態では、過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物は、エポキシ樹脂1部当たり2〜8部の非分枝ポリエーテルジアミンの付加物である。特定の実施形態では、エポキシ硬化剤は、少なくとも1種類の硝酸カルシウム硬化促進剤を更に含む。特定の実施形態では、エポキシ硬化剤が粒子状金属を含まない。
【0006】
別の態様では、本開示は、隙間を充填するための方法であって、a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、本開示に記載のエポキシ硬化剤とを混合して混合物を形成する工程と、b)隙間を混合物で充填する工程と、c)混合物を硬化させる工程と、を含む方法を提供するものである。特定の実施形態では、エポキシ成分はコアシェル型耐衝撃性改良剤を更に含む。特定の実施形態では、特にエポキシ硬化剤が脂肪族ポリアミドアミンである場合に、エポキシ成分はテトラグリシジルm−キシレンジアミンを含む。特定の実施形態では、特にエポキシ硬化剤が過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物である場合に、エポキシ成分はエポキシノボラック樹脂を含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)本開示に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物を提供するものである。特定の実施形態では、エポキシ成分はコアシェル型耐衝撃性改良剤を更に含む。特定の実施形態では、特にエポキシ硬化剤が脂肪族ポリアミドアミンである場合に、エポキシ成分はテトラグリシジルm−キシレンジアミンを含む。特定の実施形態では、特にエポキシ硬化剤が過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物である場合に、エポキシ成分はエポキシノボラック樹脂を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、エポキシ組成物、硬化剤組成物、及び、液体シムの用途として有用でありうる本発明のエポキシ組成物と硬化剤組成物とからなる2液型組成物を提供する。本開示は、開示される2液型組成物の2液を混合することによって得られる組成物を更に提供する。
【0009】
任意の適当なエポキシ組成物を、本開示の2液型組成物において使用することができる。通常は、分子1個当たり3個以上のエポキシ基を有する多官能性樹脂が用いられる。特定の実施形態では、エポキシノボラック樹脂を使用することができる。特定の実施形態では、ERISYS GA 240などのm−キシレンジアミンに基づいたエポキシ樹脂を使用することができる。こうしたエポキシ組成物は耐衝撃性改良剤、充填剤、レオロジー変性剤、及び/又は色素を含む添加剤を更に含んでもよい。
【0010】
任意の適当な硬化剤組成物を、本開示の2液型組成物において使用することができる。硬化剤組成物は、通常はポリアミン類である2種類以上の硬化剤を通常含む。特定の実施形態では、硬化剤組成物は少なくとも1種類の脂環式ポリアミンを含む。特定の実施形態では、硬化剤組成物は過剰量の、一般的には200%よりも多い、より一般的には250%よりも多い、より一般的には280%よりも多い、より一般的には300%よりも多い、実施形態によっては350%よりも多い、実施形態によっては400%よりも多い、非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との少なくとも1種類の付加物を含む。特定の実施形態では、硬化剤組成物は過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物を含み、その過剰量は一般的には800%未満、より一般的には700%未満、より一般的には600%未満、より一般的には500%未満、より一般的には450%未満である。非分枝ポリエーテルジアミンは一般的には500未満、より一般的には400未満、より一般的には300未満、より一般的には280未満、より一般的には260未満、より一般的には240未満の分子量を有する。非分枝ポリエーテルジアミンは一般的には少なくとも130、より一般的には少なくとも150、より一般的には少なくとも180、より一般的には少なくとも200の分子量を有する。非分枝ポリエーテルジアミンは一般的に1〜4個のエーテル酸素、より一般的には2個又は3個のエーテル酸素を有する。特定の実施形態では、非分枝ポリエーテルジアミンは式I:
N−[(CHO]−(CH−NH [I]
(式中、yは1、2、3又は4であり、より一般的には2又は3であり、xはそれぞれ独立して2、3又は4、より一般的には2又は3から選択される)の化合物であってよい。特定の実施形態では、yは2である。特定の実施形態では、yは2であり、xはそれぞれ独立して2又は3から選択される。特定の実施形態では、yは3である。特定の実施形態では、yは3であり、xはそれぞれ独立して2又は3から選択される。特定の実施形態では、非分枝ポリエーテルジアミンは4,7,10−トリオキサトリデカン1,13−ジアミン(TTD)であってよい。特定の実施形態では、非分枝ポリエーテルジアミンは、Jeffamine(登録商標)EDR 176として市販される4,7−ジオキサデカン1,10−ジアミンであってよい。
【0011】
特定の実施形態では、硬化剤組成物は非分枝ポリエーテルジアミン/エポキシ付加物及び少なくとも1種類の脂環式ポリアミンの両方を含む。硬化剤組成物は、その開示内容を本明細書に援用する国際特許出願公開第2008/089410号[代理人整理番号62522WO005]に開示されるような硝酸カルシウムを、硬化促進剤として更に含んでもよい。硬化剤組成物は耐衝撃性改良剤、充填剤、レオロジー変性剤、及び/又は色素を含む添加剤を更に含んでもよい。しかしながら、本開示に基づく硬化剤組成物は、粒子状金属の充填剤又は添加剤を一般的に含まない。本開示に基づく硬化剤組成物は、粒子状アルミニウム又はアルミニウム合金の充填剤又は添加剤を一般的に含まない。本開示に基づく硬化剤組成物は、粒子状鉄、鋼、又は鉄合金の充填剤又は添加剤を一般的に含まない。本開示に基づく硬化剤組成物は、粒子状銅又は銅合金の充填剤又は添加剤を一般的に含まない。
【0012】
多くの実施形態において、液体シム組成物は室温で24〜48時間以内に完全に硬化し、塗布4時間後にはサンドペーパーをかけるか、ドリルで穴を開けることができる。多くの実施形態において、液体シム組成物は約3時間の可使時間(位置決め及び調節が可能な時間)を有し、穏やかな加熱により硬化速度を大きくすることが可能であり、通常は70℃で30分以内に硬化する。
【0013】
多くの実施形態において、液体シム組成物は硬化前には、例えば注射器による注入又は塗布に適した低い粘度と塗布時の垂れ又はクリープが低度であることとの組み合わせといった特性を示す。
【0014】
多くの実施形態において、液体シム組成物は硬化後には、脆性をともなわない高い圧縮強度、低温及び高温(−55〜120℃)における妥当な強度特性、及び多くの溶媒、油類、油圧液などに対する耐性といった特性を示す。多くの実施形態において、本組成物は120℃よりも高い、より一般的には140℃よりも高い、より一般的には160℃よりも高い、より一般的には180℃よりも高い硬化後のTgを示す。多くの実施形態において、液体シム組成物は、Airbus AIMS資格10−07−001の必要条件を満たすものでなければならない。
【0015】
本発明の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例において記載される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不要に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0016】
特に断らないかぎり、すべての試薬は、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より入手したか、又は販売されるものであり、あるいは公知の方法で合成することができるものである。
【0017】
エポキシ樹脂組成物
表Iに示されるエポキシ樹脂組成物を、小型の実験用ミキサー中で混合することによって調製した。配合物B4の製造は、2Lのdoppel Z実験用モーグル(mogul)中で行なった。ノボラック樹脂をモーグルに導入し、Kane Ace 156と混合した。約30分間の混合後、Aerosilを加え、次いで二酸化チタン粉末を加えた。次いで、全体を真空下で少なくとも40分間混合した。これにより均質な白色のペーストを得た。
【0018】
【表1】

【0019】
硬化剤組成物
表IIに示す硬化剤組成物を、小型の実験用ミキサー中で混合することによって調製した。配合物A1及びA2の製造は、B4液について述べたものと同じモーグル中で行なった。最初の工程として、Ancamine 2167及び硝酸カルシウムを導入した。これらを80℃に加熱して1時間混合した。室温(RT)にまで冷却した後、Aerosilを加え、均一になるまで混合した。この後、TTDとEpikote 828との付加物を導入し、室温で約30分間混合した。この後、Minsil及びカーボンブラックを加え、真空下で1時間混合した。TTDとEpikote 828との付加物は、180部のTTDを60部のEpikote 828と反応させることによって調製した。これら2成分を室温で1時間混合した後、80℃まで加熱した。温度を1時間維持して予備重合反応を完了させた。
【0020】
【表2】

【0021】
樹脂/硬化剤の組み合わせ
本開示では、B1/A0、B1/A1、B1/A2、B2/A0、B2/A1、B2/A2、B3/A0、B3/A1、B3/A2、B4/A0、B4/A1及びB4/A2など、B液とA液との任意の組み合わせについても検討する。以下のB液とA液との組み合わせを1体積部のAに対して2体積部のBの比で調製した。すなわち、B1/A0、B2/A0、B3/A0、B4/A1及びB4/A2。配合物B4/A1及びB4/A2の混合粘度をHaake RheoWin装置で測定したところ、600パスカル(Pa)よりも低かった。
【0022】
結果−硬化時間
配合物B1/A0、B2/A0及びB3/A0の可使時間をDSC測定法によって調べた(硬化度)。表IIIは、これら3つの組み合わせについて硬化性能を混合後の時間の関数として示したものである。
【0023】
【表3】

【0024】
B4/A1の可使時間は約120分であった。B4/A2の可使時間は約90分であった。
【0025】
結果−機械的試験
Airbus AIMS資格10−07−001に従って機械的試験を行なった。結果を表IV、V及びVIに開示する。
【0026】
【表4】

【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】
配合物B1/A0及びB4/A2は最も良好な機械的特性を示した。配合物B4/A2について、流動抵抗及びエイジング試験などの更なる特性評価を行ない、表VII、VIII及びIXに示した。
【0030】
【表7】

【0031】
【表8】

【0032】
【表9】

【0033】
本発明の様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかとなるであろう。また本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不要に限定されるものではない点は理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の脂環式ポリアミン硬化剤と、a)脂肪族ポリアミドアミン及びb)過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物から選択される少なくとも1種類の第2の硬化剤と、を含む、エポキシ硬化剤。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の第2の硬化剤が、a)脂肪族ポリアミドアミンである、請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の第2の硬化剤が、b)過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物である、請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項4】
前記非分枝ポリエーテルジアミンが式I:
N−[(CHO]−(CH−NH [I]
[式中、yは1、2、3又は4であり、xはそれぞれ独立して2、3又は4から選択される]の化合物である、請求項3に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項5】
前記過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物が、エポキシ樹脂1部当たり2〜8部の非分枝ポリエーテルジアミンの付加物である、請求項3に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項6】
前記過剰量の非分枝ポリエーテルジアミンのエポキシ樹脂との付加物が、エポキシ樹脂1部当たり2〜8部の非分枝ポリエーテルジアミンの付加物である、請求項4に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項7】
前記エポキシ硬化剤が、少なくとも1種類の硝酸カルシウム硬化促進剤を更に含む、請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項8】
前記エポキシ硬化剤が粒子状金属を含まない、請求項1に記載のエポキシ硬化剤。
【請求項9】
隙間を充填するための方法であって、
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、請求項1に記載のエポキシ硬化剤とを混合して混合物を形成する工程と、
b)前記隙間を前記混合物で充填する工程と、
c)前記混合物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項10】
隙間を充填するための方法であって、
a)テトレグリシジルm−キシレンジアミンを含むエポキシ成分と、請求項2に記載のエポキシ硬化剤とを混合して混合物を形成する工程と、
b)前記隙間を前記混合物で充填する工程と、
c)前記混合物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項11】
隙間を充填するための方法であって、
a)エポキシノボラック樹脂を含むエポキシ成分と、請求項3に記載のエポキシ硬化剤とを混合して混合物を形成する工程と、
b)前記隙間を前記混合物で充填する工程と、
c)前記混合物を硬化させる工程と、を含む、方法。
【請求項12】
前記エポキシ成分がコアシェル型耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)請求項1に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物。
【請求項14】
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)請求項2に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物。
【請求項15】
前記エポキシ成分がテトラグリシジルm−キシレンジアミンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)請求項3に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物。
【請求項17】
前記エポキシ成分がエポキシノボラック樹脂を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)請求項4に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物。
【請求項19】
a)エポキシ樹脂を含むエポキシ成分と、b)請求項5に記載のエポキシ硬化剤とを混合して硬化させることによって得られる組成物。
【請求項20】
前記エポキシ成分がコアシェル型耐衝撃性改良剤を更に含む、請求項13に記載の組成物。

【公表番号】特表2012−517507(P2012−517507A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549326(P2011−549326)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023597
【国際公開番号】WO2010/091395
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】