説明

2液水性塗料組成物

【課題】 本発明は、水性塗料とテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物を含有する塗膜表面親水化剤を用いた親水性表面を形成しうる水性塗料組成物として、塗膜性能を低下させる親水性成分を同伴させることなく、塗料粘性、塗膜外観、塗膜表面親水性を安定に発揮する2液水性組成物及び塗装方法を提供しようとするものである。
【解決手段】本発明は、(1)水性塗料と(2)塗膜表面親水化剤よりなり、(1)水性塗料が水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする塗料であり、(2)塗膜表面親水化剤がテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)を含有すること特徴とする2液水性塗料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液水性塗料組成物に関し、より具体的には、たとえば建築内外装、自動車、家電用品、プラスチックなどに対する各種塗装、特に得られる塗膜の水に対する接触角が70°以下となるような親水性表面を形成し得る2液水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
親水性表面を形成する塗料組成物は、特に建築用外装塗料において要求の高い自動車の排気ガス等に起因する汚れ発生の抑制(以下、これを「耐汚染性」と言う。)に有用であることが知られている。有機溶剤を用いる溶剤系塗料においてテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(以下、これらの化合物を単に「シリケート類」と言う場合がある。)を配合することで親水性表面が形成され、耐汚染性が改善され得ることが、開示されており、低汚染型塗料として用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このシリケート類は、水との接触で加水分解縮合反応を生じ、さらに水および塗膜形成成分である重合体との相溶性または分散性が低いものであり、水を媒体とし、溶剤を殆ど含まないことを特徴とする水性塗料に添加した場合、急速な反応や相溶性または分散性の低さから塗料粘度の極端な変化、塗膜外観の劣化、塗膜表面親水性のばらつきが生じやすい。
【0003】
この様なシリケート類の水性塗料に対する相溶性または分散性の付与を目的に、例えばシリケート類自体に親水性のポリオキシアルキレン鎖を導入し、水への分散性を向上させたシリケート類変性物を用いる水性塗料低汚染化剤が開示され(例えば、特許文献2参照)、予め乳化剤を用いてシリケート類を水性乳化液とした後に添加する水性塗料用樹脂組成物が開示され(例えば、特許文献3参照)、シリケート類を酸または塩基類で部分加水分解し、水性ゾルとした後に添加する水性塗料用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、特許文献2、特許文献3においては、必然的に親水成分たるポリオキシアルキレン鎖または乳化剤を同伴することとなり、これらによる塗膜の耐水性低下が問題となる。また、特許文献4では、得られる水性ゾルが経時でゲル化する等、安定性が問題となる。
【特許文献1】WO94/06870号公報
【特許文献2】WO99/05228号公報
【特許文献3】特開平8−259892号公報
【特許文献4】特開平9−221611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑み、水性塗料とテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物を含有する塗膜表面親水化剤を用いた親水性表面を形成しうる水性塗料組成物として、塗膜性能を低下させる親水性成分を同伴させることなく、塗料粘性、塗膜外観、塗膜表面親水性を安定に発揮する2液水性塗料組成物及びその塗装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物と酸性リン化合物を含有する塗膜表面親水化剤が、分散促進のためのポリオキシアルキレン鎖含有化合物を用いる必要なく、塗料粘性、塗膜外観、塗膜親水性を安定に発揮し得ることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、(1)水性塗料と(2)塗膜表面親水化剤よりなり、(1)水性塗料が水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする塗料であり、(2)塗膜表面親水化剤がテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)を含有すること特徴とする2液水性塗料組成物である(請求項1)。
【0007】
本発明の好ましい態様は、上記酸性リン化合物(B)が炭素数12以下のアルキル基、アルキレン基またはアラルキル基より選択される炭化水素基を有する酸性リン酸エステル、ホスホン酸又は酸性ホスホン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の2液水性塗料組成物である(請求項2)。
【0008】
本発明の好ましい態様は、上記テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)が炭素数2以上のアルキル基を含む、請求項1または2記載の2液水性塗料組成物である(請求項3)。
【0009】
本発明の好ましい態様は、上記(1)水性塗料がさらに加水分解性シリル基含有アクリル系重合体を含有する、請求項1〜3いずれかに記載の2液塗料組成物である(請求項4)。
【0010】
本発明は、上記(1)水性塗料に上記(2)塗膜表面親水化剤を添加し、混合後、被塗物に塗装する、請求項1〜4記載の2液塗料組成物の塗装方法である。
【0011】
また、本発明は、テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)をあらかじめ混合し、これを水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする水性塗料に添加してなる塗料組成物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水性塗料組成物は、低コスト・簡易な操作で製造できる。本発明の水性塗料組成物によれば、塗膜の耐水性を低下させる親水成分たるポリオキシアルキレン鎖含有化合物や乳化剤を使用してなくても、シリケート類を良好に水性塗料に分散することができる。また、形成した塗膜は高い光沢を有し、耐水性を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
水性塗料
本発明の水性塗料組成物をなす(1)水性塗料は、水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする塗料であれば特に限定されないが、これらの塗膜形成成分をなす樹脂として、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中では、得られる塗膜の耐候性および耐薬品性、また樹脂設計の幅を広くとれる点で、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が好ましく、更に、塗膜表面親水性の発現に有利であり、低価格という点からアクリル系樹脂が好ましい。
【0014】
アクリル系樹脂はビニル単量体を用いて合成することが出来、重合体合成に用いられるビニル系単量体(a−1)には、特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、オキシシクロヘキシニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステルあるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルホスフェートなどの重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸、あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニル単量体、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などの4級アミノ基を有するビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなどの含窒素ビニル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレンなど水酸基含有ビニル系単量体;PlaccelFA−1、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上ダイセル化学(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリラクトンまたはポリエステル;ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日本油脂(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレン;α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのリン酸エステル;ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのビニル化合物;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエンなどのその他のビニル系単量体などの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0015】
また、一分子中に重合可能な炭素−炭素二重結合を1個以上及び加水分解性シリル基を1個以上有する加水分解性シリル基含有単量体(a−2)も用いることができ、シロキサン結合による架橋反応性を付与することができる。
【0016】
この架橋反応性は(2)塗膜表面親水化剤に含有される酸性リン化合物(B)により促進可能であり、(a−2)の使用は、得られる塗膜の耐水性、耐候性を向上させ、且つ塗膜表面親水性の発現で有利に働くことから好ましい。(a−2)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体が安定性の点で好ましい。
【0017】
(a−2)の使用量は、単量体混合物の合計100重量%中、0.01〜50重量%が好ましい。(a−2)が0.01%未満ではシロキサン架橋による塗膜物性の改良効果が不十分となる場合があり、50重量%を超える場合では水溶性樹脂および/または水性エマルジョンが不安定となる場合がある。より好ましくは、0.5〜20重量%である。
【0018】
また、カルボニル基を含有するビニル系単量体(a−3)も用いることができ、ヒドラジンおよびヒドラジル基を有する化合物を併用することで架橋反応性を付与することができる。(a−3)の具体例としては、たとえば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、好ましくは、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン、(たとえば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトンなど)、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアセテートなどがあげられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。(a−3)の使用量は、単量体混合物の合計100重量%中、0.1〜30重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0019】
カルボニル基含有重合体を用いることにより、ヒドラジンおよびヒドラジル基を有する化合物と反応させることが出来る。ヒドラジンおよびヒドラジル基を有する化合物としては、1分子中に少なくとも2個のヒドラジン残基を含有するヒドラジン誘導体が好ましく、2〜10個、さらに好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸とヒドラジンとの脱水縮合物であるジカルボン酸ジヒドラジド(たとえば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなど);2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ジヒドラジン(たとえば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなど)があげられる。これらのヒドラジンおよびヒドラジル基を有する化合物の使用量は、重合体中のカルボニル基に対してヒドラジンおよびヒドラジル基が、0.2〜2モル等量となる量が好ましい。
【0020】
また、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレートなどの重合可能な炭素−炭素二重結合を2つ以上有する単量体を用いれば、耐水性、塗膜強度の向上を図ることができる。係る重合可能な炭素−炭素二重結合を2つ以上有する単量体は、成膜性を阻害しない範囲で使用可能であり、水性エマルジョンでは重合体粒子の芯部に使用することで耐水性、塗膜強度と成膜性のバランスを確保することもできる。
【0021】
前記ビニル系単量体の種類は、得られるアクリル系樹脂の目的とする物性に応じて選択すればよく、たとえば、水溶性樹脂の水への溶解性または水性エマルジョンの安定性を向上させるためには、上記(a−1)のα、β−エチレン性不飽和カルボン酸やスルホン酸基含有単量体等の重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);アミノ基含有ビニル単量体、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);4級アミノ基を有するビニル単量体;水酸基含有ビニル系単量体;重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレン;(メタ)アクリルアミド、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジンなどの水溶性含窒素ビニル単量体などの親水性単量体を用いることが好ましい。これらの親水性単量体の使用量は、単量体混合物の合計100重量%中、水溶性樹脂の場合で、5〜70重量%、水性エマルジョンの場合で0.1〜30重量%とすることが好ましい。水性エマルジョンの場合、係る使用量が0.1重量%未満である場合には、エマルジョンの機械的安定性や得られる塗料組成物から形成された塗膜の光沢が低下する傾向があり、また30重量%超える場合には、塗膜の耐水性、耐候性が低下する傾向がある。
【0022】
上記の親水性単量体の中で、重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンを使用した場合、加水分解性シリル基含有ビニル単量体(a−2)を使用した場合において、アクリル系樹脂中での加水分解性シリル基の反応性保持、すなわち貯蔵安定性が可能となる点でも好ましい。この重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンと(a−2)の組み合わせを用いたアクリル系樹脂の水性エマルジョンを本発明の塗料組成物に用いた場合、シロキサン結合による架橋形成による耐候性、耐水性、加水分解性シリル基の貯蔵安定性に加えて、塗膜の外観、表面親水性が向上する点で特に好ましい。係る重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンとして、重合性の点でポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートあるいは、これらのアルキルエーテルまたはエステル(a−4)が好ましい。更に水溶性樹脂の水への溶解性または水性エマルジョンの安定性の点でポリオキシエチレン構造を有するものが好ましい。
【0023】
アクリル系樹脂の水溶性樹脂の製造方法としては、上記単量体より共重合体の水性媒体溶液を得る方法であれば特に限定されず、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を適宜選択することができる。たとえば、ラジカル重合開始剤による溶液重合の場合では、使用する溶剤は生成する共重合体を溶解または分散しうるものならば特に限定されず、該溶剤中で通常使用されるアゾ系化合物、有機過酸化物などのラジカル重合開始剤存在下、上記単量体を重合すればよい。この重合の際、通常使用されるメルカプタン類などの連鎖移動剤を用いて分子量調節をしてもよい。水性化にあたっては、溶剤に溶解したまま水性媒体と混合してもよいし、また溶剤の留去、再沈などで共重合体を単離した後、水性媒体に加え、溶液としてもかまわない。水溶化に際し、該共重合体は有機溶剤に溶解したまま水性媒体と混合してもよいし、水性媒体と混合後、溶剤をストリッピングしてもよい、また溶媒の留去、再沈といった方法でポリマーを回収したのち水性媒体に加えてもかまわない。溶剤に溶解したまま水性媒体と混合する方法では、使用する溶剤にアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどの水溶性の有機溶剤を用いれば、混合が容易であり、均一な溶液が得られるとから好ましい。また、共重合体が親水性単量体として重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸を用いた場合には、酸性基をたとえばアルカリ金属水酸化物、アミンなど塩基性化合物で中和して塩となした後に水性媒体と混合すれば、混合が容易であり、均一な溶液が得られることから好ましい。
【0024】
アクリル系樹脂の水性エマルジョンの製造方法としては、上記単量体より共重合体の水性媒体分散液を得る方法であれば特に限定されず、単量体の乳化物を一括重合するバッチ重合、反応系中に単量体を逐次導入するモノマー滴下重合、反応系中に単量体の乳化液を逐次導入する乳化モノマー滴下重合等の公知の乳化重合方法、溶液重合などにより重合体を製造後、水性媒体中に分散する方法などを適宜選択することができる。特に、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合による乳化重合方法が製造時の安定性を確保する上で適している。また、予め反応系中に種となる重合体分散液を形成させた後、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合を行う、いわゆるシード重合法を用いれば水性エマルジョンの粒子径の制御が容易となることから好ましい。また、上記のアクリル系樹脂の水溶性樹脂を分散剤とし、モノマー滴下重合を行う、いわゆるソープフリー重合も可能である。
【0025】
乳化重合に使用する乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、アニオン性、カチオン性あるいは非イオン性の界面活性剤があげられる。アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムなどの脂肪酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩;Newcol−723SF、Newcol−707SN、Newcol−707SF、Newcol−740SF、Newcol−560SN(以上日本乳化剤(株)製)などのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルまたはポリオキシアルキレンスチレン化アルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩であるポリオキシアルキレン鎖を含むアニオン系乳化剤;ジアルキルスルホこはく酸塩などがあげられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルイミダゾール、アルキルアンモニウムおよびそれらの塩、アルキルアンモニウムハイドロオキサイドなどがあげられる。非イオン性界面活性剤としては、Newcol−723、Newcol−707(以上日本乳化剤(株)製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルまたはポリオキシアルキレンスチレン化アルキルフェニルエーテルであるポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオレートなどのポリオキシアルキレンアルキルエステル類;グリセリン、ソルビタンおよびそれらのエチレンオキサイド付加物などの多価アルコール脂肪酸エステル;プルロニックF68、プルロニックL71、プルロニックL61(以上(株)アデカ製)などのポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックコポリマー;L−77、L−7001、L−7604(以上日本ユニカー(株)製)などのポリオキシアルキレン変性シリコーンなどがあげられる。
【0026】
また、乳化剤として、(メタ)アクリロキシ基、アリル基またはイソプロペニル基などの炭素−炭素二重結合を有する界面活性剤、いわゆる反応性乳化剤を用いると水性塗料の消泡性、塗膜の耐水性の向上を図ることができることから好ましい。かかる反応性乳化剤の具体例としては、アデカリアソープSE−10N、SR−10、SR−20、PP70、NE−10、NE−20、NE−30、NE−40、ER−10、ER−20、ER−30、ER−40(以上(株)アデカ製)、アクアロンHS−10、HS−20、BC−05、BC−10、BC−20、KH−10、RN−20、RN−30、RN−40(以上第一工業製薬(株)製)、エレミノールJS−2、RS−30(以上三洋化成(株)製)、ラテムルS−180、S−180A(以上花王(株)製)、Antox−MS−60、Antox−MS−2N、RMA−653(以上日本乳化剤(株)製)があげられる。
【0027】
乳化剤の使用量は、単量体総量100重量部に対して0.5〜15重量部、好ましくは、1〜7重量部である。
【0028】
乳化重合に用いる重合開始剤としては、通常使用するものを用いればよい。具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素水;t−ブチルハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、キュメンハイドロパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキオクテート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエートなどの有機過酸化物;アゾビスアミジノプロパンの塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物があげられる。更に重合の安定性などの点から、レドックス系触媒を用いるのが好ましく、具体的には、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムと酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットの組合せ、過酸化水素とアスコルビン酸の組合せ、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物と酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどとの組合せなどが用いられる。特に、有機過酸化物と還元剤の組合せが好ましい。また、触媒活性を安定的に得るために硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン4酢酸2ナトリウムの様なキレート剤を併用してもよい。開始剤の使用量は、単量体総量100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0029】
また、乳化重合時にpH調整剤を添加することもできる。特に、加水分解性シリル基含有ビニル単量体(a−2)を使用した場合において、重合中の加水分解性シリル基の加水分解や縮合を抑えるため、pH調整剤を用い、反応系のpHを5〜9、より好ましくは、6〜8に制御することが好ましい。pH調整剤としては、一般的なpH緩衝剤、塩基類であるアルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミン類の水酸化物またはカルボン酸、塩酸、炭酸、ホウ酸、リン酸などの塩、およびこれらの組み合わせを用いればよい。具体的には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、蟻酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ほう酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸カリウム、蟻酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸アンモニウムなどがあげられる。pH調整剤の使用量は、含有される水性媒体に対して、0.001〜3重量部である。
【0030】
また、必要に応じて、連鎖移動剤を用いて分子量調節をしてもよい。連鎖移動剤としては、通常使用するものを用いればよいが、調節が容易である点から、メルカプタン類が好ましい。メルカプタン類としては、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;メルカプトグリセリンなどのアルカノールメルカプタン;メルカプト酢酸アルキルエステル;メルカプトプロピオン酸アルキルエステル;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのメルカプトアルキル基含有シラン化合物などがあげられる。メルカプタン類の使用量は、単量体総量100重量部に対して、0.001〜20重量部、好ましくは、0.01〜2重量部である。0.001重量部未満では分子量調節効果が不十分となる傾向があり、20重量部を超えて使用する場合では、重合の進行が阻害される傾向がある。
【0031】
乳化重合は、通常10〜90℃の温度で行われる。特に、加水分解性シリル基含有ビニル単量体(a−2)を使用した場合において、重合中の加水分解性シリル基の加水分解や縮合を抑えるため、重合温度は70℃以下が好ましく、60℃以下とすることがより好ましい。
【0032】
重合完了時の水性エマルジョンの固形分濃度は、20〜70重量%までの範囲が好ましい。固形分濃度が70重量%を越えると、重合時の系の粘度が著しく上昇するため重合反応に伴う発熱を除去することが困難になったり、重合機からの取り出しに長時間要するなどの不都合を生じる傾向がある。一方、固形分濃度が20重量%未満の場合、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂の量が少なく、経済面から考えた場合、著しく不利となり、また用途上の要求からも20重量%未満の濃度では、塗膜の膜厚が薄くなってしまい、性能劣化を起こしたり、塗装作業性の点で不利となる傾向がある。
【0033】
上記の製造方法によるアクリル系樹脂の水性エマルジョンは、平均粒子径が0.02〜1.0ミクロン程度のアクリル系樹脂の微粒子が水性媒体に分散されたものであり、その結果として優れた被膜形成能を有している。
【0034】
アクリル系樹脂の水性エマルジョンは、樹脂および塗料の設計、調製が容易であることから好ましいが、本発明の(1)水性塗料と(2)塗膜表面親水化剤よりなる塗料組成物においては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載するような組成を有するものが、塗膜物性の点で特に好ましい。
【0035】
(i)加水分解性シリル基含有単量体(a−2)の使用:既述の如く、加水分解性シリル基の加水分解、縮合による架橋反応が(2)塗膜表面親水化剤に含有される酸性リン化合物(B)により促進可能であり、得られる塗膜の耐水性、耐候性を向上させ、且つ塗膜表面親水性の発現で有利に働くことから好ましい。
【0036】
(ii)親水性単量体としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートあるいは、これらのアルキルエーテルまたはエステル(a−4)の使用:塗膜の外観、表面親水性が更に向上する点で好ましい。この作用は、詳細は明らかではないが、(a−4)を使用した水性エマルジョンによる(2)塗膜表面親水化剤の塗料中の分散性向上が塗膜の外観および表面親水性の発現に有利に働いていることが推定される。
【0037】
(iii)(a−2)および親水性単量体としてポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートあるいは、これらのアルキルエーテルまたはエステル(a−4)の使用:既述の如く、シロキサン結合による架橋形成による耐候性、耐水性、に加えて、加水分解性シリル基の貯蔵安定性、塗膜の外観、表面親水性が更に向上する点で好ましい。この作用は、詳細は明らかではないが、加水分解性シリル基の貯蔵安定性向上による反応性の保持が(2)塗膜表面親水化剤の反応による塗膜表面親水性の発現に有利に働くと同時に、(a−4)による(2)塗膜表面親水化剤の塗料中の分散性向上が塗膜の外観および表面親水性の発現に有利に働いていることが推定される。
【0038】
(iv)(a−2)、(a−4)および炭素数4以上のアルキル基または炭素数6以上のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート(a−5)を単量体混合物の合計100重量%中に50重量%以上使用:耐候性、耐水性、加水分解性シリル基の貯蔵安定性が向上する点、更に加水分解性シリル基の貯蔵安定性に関連すると推定される塗膜表面親水性の発現の点でも好ましい。この作用は、詳細は明らかではないが、得られるアクリル樹脂の吸水性が低減される効果と推定される。
【0039】
(v)(a−2)、(a−4)を使用し、連鎖移動剤を用いて分子量調節を実施:得られるアクリル樹脂の分子量を低下させることで耐候性、耐水性、塗膜の外観、表面親水性が更に向上する点で好ましい。この作用は、詳細は明らかではないが、アクリル樹脂の分子鎖が動きやすくなり、樹脂中の加水分解性シリル基と(2)塗膜表面親水化剤の反応性およびエマルジョン粒子間の融着性が向上する効果と推定される。
【0040】
ウレタン樹脂としては、主鎖構造中にウレタンまたはウレア結合を有する樹脂であれば特に限定されず、自己乳化型、強制乳化型のいずれでも使用可能である。自己乳化型ウレタン樹脂水性エマルジョンの製造方法としては、たとえば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、鎖延長剤およびイオン性を発現する基を有する鎖延長剤を反応させ、水中に分散させることにより得られる。末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、たとえば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の水酸基、アミノ基などの活性水素基を含有する重合体を反応させてなる。1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族、芳香族および脂環族系のジイソシアネート化合物;イソシアヌレート変性HDIなどのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート結合またはビユレット結合変性品;ポリメリックMDIなどの特殊ポリイソシアネートがあげられる。また、1分子中に2個以上の水酸基、アミノ基などの活性水素基を含有する重合体としては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレン重合体;アジピン酸などの多塩基酸とブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの多価アルコールの重縮合による重縮合系ポリエステル重合体;ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンの開環重合による開環重合系ポリエステル重合体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ビニル系単量体を共重合したアクリル系重合体;ポリヘキシレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート重合体;ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンジオールなどのポリオレフィン重合体などがあげられる。鎖延長剤としては、エチレングリコール、ブタンジオールなどのグリコール;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ピペラジンなどのジアミンがあげられる。イオン性を発現する基を有する鎖延長剤としては、2,2′−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸などのポリヒドロキシカルボン酸;ポリヒドロキシスルホン酸;アミノスルホン酸などがあげられる。
フッ素樹脂としては、たとえば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、クロロジフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレンなどのフッ素含有ビニル系単量体を用いた共重合体であれば特に限定されない。フッ素樹脂の水溶性樹脂の製造方法としては、たとえば水酸基および/またはカルボキシル基含有のフルオロエチレン共重合体などがあげられる(特開昭62−143915号公報)。また、フッ素樹脂の水性エマルジョンの製造方法としては、たとえばフルオロオレフィン共重合体(特開平7−53911号公報,特開平7−62289号公報)、含フッ素樹脂水性分散体の存在下に(メタ)アクリレートを乳化重合させて得られる含フッ素樹脂/(メタ)アクリル樹脂複合水性分散体(特開平9−157314号公報)、フルオロアルキル(メタ)アクリレート共重合体よりなるフッ素含有水性樹脂分散体などがあげられる(特公昭34−8838号公報)。
【0041】
本発明の(1)水性塗料は、上述の水溶性樹脂および/または水性エマルジョンそのまま、または通常の水性塗料組成物に使用される添加剤を配合することにより得られる。通常の水性塗料組成物に使用される添加剤としては、たとえば顔料(たとえば、二酸化チタン、炭酸カルシルム、炭酸バリウム、カオリン等の白色顔料、カーボンブラック、ベンガラ、シアニンブルー等の有色系顔料)、凍結防止剤(たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール等)、可塑剤、溶剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等があげられる。
【0042】
上記の添加剤の中で、顔料としては、二酸化チタンが隠蔽性等で有用であり、特に塗膜光沢、耐候性の点で表面をアルミナ、ジルコニアまたはシリカで表面処理した二酸化チタンが好ましい。溶剤としては、一般に成膜助剤として使用されるもので差し支えなく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のエーテル類;ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3−モノイソブチレート、CS−12(チッソ社製)等のグリコールエーテルエステル類等の有機溶剤が挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。これらの中でも特に、塗料の安定性および塗膜光沢の点でCS−12、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
【0043】
顔料を分散し、着色したエナメル塗料には、顔料の分散性を得るために分散剤を用いることが一般的である。このような水性塗料用の分散剤は、各種のものが知られているが、顔料表面への吸着、また水性媒体中での分散安定化のため、一般的に親水基を有する化合物が用いられる。たとえば、アニオン性の分散剤としてマレイン酸共重合体またはその変性物の塩、ポリリン酸塩、スルホン酸基含有重合体の塩、カチオン性の分散剤として4級アンモニウム基含有重合体が挙げられ、さらに分散安定性を向上としてポリオキシアルキレン鎖の如きノニオン性の親水基を複合化させたものも知られている。これらの中でも特に、ノニオン性の親水基を有する分散剤を用いた場合、塗膜の外観、表面親水性の点で好ましい。この作用は、詳細は明らかではないが、エナメル塗料での中の(2)塗膜表面親水化剤の分散性向上に有利に働いていることが推定される。ノニオン性の親水基を有する分散剤としては、たとえば、Disperbyk190、Disperbyk192(以上、ビックケミー(株)製)などが挙げられる。
【0044】
また、消泡剤は、ミネラルオイル系、シリコーン系、ポリエーテル系、アクリル系などが知られているが、塗膜の外観、表面親水性の点でポリオルガノシロキサン構造を有しないミネラルオイル系、ポリエーテル系、アクリル系が好ましい。
塗膜表面親水化剤
本発明の水性塗料組成物をなす(2)塗膜表面親水化剤は、テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)を含有し、水を含まないものである。本塗膜表面親水化剤は、塗膜の耐久性、特に耐水性低下に繋がるポリオキシアルキレン鎖含有化合物や、特開2005−15676に記載されている親水基と反応性官能基を同一分子中にそれぞれ一つ以上有する化合物を用いることなく、(1)水性塗料への分散性を発揮するものであり、塗料粘性、塗膜外観、塗膜親水性を安定に発揮し得るものである。
【0045】
塗膜表面親水化剤をなすテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)は、炭素数1〜20のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物であり、ポリオキシアルキレン構造を有さないものが挙げられる。(A)に含有されるアルコキシ基は、同一分子中に異なった炭素数、分岐構造のアルコキシ基を有するものも使用でき、さらに1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。このようなテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物としては、たとえば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン及びそれらの1種または2種以上の部分加水分解縮合物、さらにこれらのテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物をエステル交換反応などによりアルコキシ基を置換したものなどが挙げられる。
【0046】
(A)の縮合度は、大きいものほど水性塗料への相溶性が低下することから、塗膜表面への移行性の向上による塗膜表面親水性の発現に有利であるが、一方で塗膜外観の劣化に繋がる。(A)に含有されるアルコキシ基の炭素数および分岐は、加水分解縮合反応の反応性に大きく影響し、炭素数が少なくなるほど、分岐のないものほど反応性が向上することは一般的に知られており、塗膜表面親水性の発現に有利であるが、既述のごとく、急速な反応は塗膜外観の劣化、塗膜表面親水性のばらつきに繋がる。アルコキシ基の反応性に関すれば、たとえば、メトキシ基またはエトキシ基(炭素数1または2)とプロポキシ基またはブトキシ基(炭素数3または4)を一分子中に有する(A)、または各々のアルコキシ基を有する(A)を併用する、等で調整が可能である。(A)の好ましい構造としては、縮合度は1〜20程度、より好ましくは3〜15であり、アルコキシ基の炭素数は(A)中の全アルコキシ基に対する数平均値で1〜4、より好ましくは1.5〜2.8である。
【0047】
塗膜表面親水化剤をなす酸性リン化合物(B)としては、リンを含有する酸性化合物であり、ポリオキシアルキレン構造を有さないものが挙げられる。このような酸性リン化合物としては、たとえば、式(1)で示されるリン酸、酸性リン酸エステル、ホスホン酸または酸性ホスホン酸エステル、酸性リン酸基含有重合体、これらの縮合物、これらの部分中和塩、完全中和塩などが挙げられる。




1m(R2Q)nP(QH)3-m-n (1)


上記(1)式中、R1、R2は一価有機基、Qは酸素または硫黄原子を示す。m、nは0〜2でありm+nが2以下である。R1またはR2は、mまたはnが2の場合、同一のものであっても、異なるものであっても構わない。R1、R2は炭素数12以下のアルキル基、アルキレン基またはアラルキル基より選択され、炭素数の好ましい下限値は4、より好ましくは6、更に好ましくは8であり、好ましい上限値は12、より好ましくは10であり、最も好ましくは、炭素数8〜10である。
【0048】
このような酸性リン化合物としては、たとえば、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸等の無機リン酸化合物;モノプロピルホスフェート、モノ−イソプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノ−(メタクリロキシエチル)ホスフェート、モノ−(アクリロキシエチル)ホスフェートジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジ−イソプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)ジチオホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジ−(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジ−(アクリロキシエチル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル;フェニルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ(2−エチルヘキシル)エステルなどのホスホン酸または酸性ホスホン酸エステル;リン酸あるいは酸性リン酸エステルとビスフェノールA型エポキシ樹脂などの多価エポキシドの反応物、モノ−(メタクリロキシエチル)ホスフェートと他のビニル単量体の共重合体などの酸性リン酸基含有重合体などがあげられる。また、中和塩を形成する場合の塩基性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物または炭酸塩;アルミニウム、亜鉛、チタンなどの遷移金属塩;アンモニア;トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、ジエタノールアミン、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、N−メチルモルホリン、DBU等の有機アミン類などがあげられる。
【0049】
(2)塗膜表面親水化剤の調製は、(A)および(B)を混合するのみでよく、通常の攪拌装置を備えた容器を用いればよい。得られる(2)の水分による粘度増加等の品質変化を抑制する点で、密閉容器中、乾燥窒素気流下等、水分の影響が遮断された条件での混合が好ましい。混合時の温度は、得られる(2)の着色等の安定性に問題が生じない限り、特に限定されないが、(A)および(B)の両者の混和性が低い場合等に、加熱することで均一化し、得られる塗膜の外観、表面親水性の点で好ましい場合もある。また、調製時に意図的に水を加えることで(A)の加水分解縮合を行い、(A)の縮合度を調整する、同様にアルコール類を加え、交換反応で(A)のアルコキシ基を変換するなども可能である。また、(B)の塩基性化合物による中和反応を(A)および(B)の混合後に行うことも可能である。
【0050】
(A)、(B)の比率は、特に限定されないが、使用される(1)水性塗料に対し、所望の塗膜物性およびポットライフ((1)と(2)を混合後、塗装不能となるまでの時間)が得られるよう選択すればよい。一般的には、(A)/(B)重量比で1/99〜99.95/0.05、好ましくは50/50〜99/1である。
【0051】
(2)塗膜表面親水化剤は、(A)および(B)以外に本発明の効果を阻害しない範囲において、たとえば、溶剤、充填剤、消泡剤、増粘剤、分散剤などの通常の塗料に使用される添加剤を併用することができる。
【0052】
本発明の2液水性塗料組成物の塗装方法は、特に限定されるわけではないが、上述したように(1)水性塗料および(2)塗膜表面親水化剤を各々調製した後、これら(1)水性塗料と(2)塗膜表面親水化剤とを混合し、攪拌し均一化した当該混合物を被塗物に塗装することが好ましい。被塗物としては、特に限定はなく、建築内外装、自動車、家電用品、プラスチックなどに使用できる。
【0053】
本発明の2液水性塗料組成物は、特に限定されないが、建築用内外装塗料、自動車用塗料、家電用品用塗料、プラスチック用塗料などに好適である。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0055】
(塗膜表面親水化剤の製造方法:製造例1〜6および比較製造例1−2)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に表1に示す成分を(A)、(B)の順序で撹拌しながら、投入した。投入終了後、30分撹拌し、製造例1〜6および比較製造例1−2を行い、各(2)塗膜表面親水化剤を得た。得られた塗膜表面親水化剤を透明容器に入れ、目視にて分離・沈降がないかを確認した。
【0056】
分離・沈降がない:○
分離・沈降 :×
【0057】
【表1】

シリケート40(多摩化学工業(株)製):テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物(シリカ残量比率40%)
MS58B30(三菱化学(株)製):同一分子中にメチル基70%、n−ブチル基30%含有するシリケート(シリカ残量比率58%)
AP−3(大八化学工業(株)製):イソプロピルアシッドホスフェート
AP−8(大八化学工業(株)製):2−エチルヘキシルアシッドホスフェート
DP−8R(大八化学工業(株)製):ジ−2−エチルヘキシルホスフェート
JAMP−8(城北化学工業(株)製):モノn−オクチルホスフェート
MP−10(大八化学工業(株)製):モノイソデシルホスフェート
(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルジョンの合成例1)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水200重量部、Newcol−707SF(日本乳化剤(株)製:有効成分30%)0.16重量部、炭酸水素ナトリウム0.05重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。昇温後、表2(E−1)のコア部に示すモノマーの混合物のうち12重量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.14重量部、ロンガリット0.4重量部を添加し、30分間初期重合を行った。上記モノマー混合物の残り268重量部にアクアロンBC0515(第一工業製薬(株)製:有効成分15%)9.7重量部、アクアロンRN2025(第一工業製薬(株)製:有効成分20%)2.7重量部および脱イオン水66重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.20重量部を145分かけて等速追加した。追加終了後、1時間後重合を行った。さらに、表2(E−1)のシェル部に示すモノマー混合物120重量部にアクアロンBC0515 6.0重量部、アクアロンRN2025 1.6重量部および脱イオン水27重量部を加え乳化したモノマー乳化液とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.15重量部を65分かけて等速追加した。追加終了後、1時間後重合を行った。得られた合成樹脂エマルジョンに炭酸水素ナトリウム2.0重量部を添加後、脱イオン水で固形部50%に調整した(E−1)。
【0058】
(架橋型アクリルエマルジョンの合成例)
モノマーに表2(E−2)を用いた以外は、合成例1と同様に重合を行った。さらに、得られて合成樹脂エマルションにアジピン酸ジヒドラジド6.2重量部添加し、架橋型アクリルエマルジョンを得た(E−2)。
【0059】
(ポリオキシアルキレン鎖含有アクリルエマルジョンの合成例)
モノマーに表2(E−3)を用いた以外は、合成例1と同様に重合を行った(E−3)。
【0060】
(カルボキシル基含有アクリルエマルジョンの合成例)
モノマーに表2(E−4)を用いた以外は、合成例1と同様に重合を行った(E−4)。
【0061】
【表2】

(白顔料ペーストの製造方法)
表3の示す処方にガラスビーズを加え、サンドミルを用いて1000回転で1時間分散し、白顔料ペースト(W)を調製した。
【0062】
【表3】

(水性塗料の製造)
合成した樹脂エマルション(E−1〜4)、市販のウレタン樹脂エマルション、市販のふっ素樹脂エマルション、作製した白顔料ペースト(W)、およびその他の塗料添加剤を用いて、表4に示す配合で水性塗料を調製した。
【0063】
【表4】

(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂塗料)(AS−1)。
(架橋型アクリル樹脂塗料)(CA−1)。
(ウレタン変性アクリル樹脂塗料)(AU−1)。
(ポリオキシアルキレン鎖含有アクリル樹脂塗料)(A−1)。
(カルボキシル基含有アクリル樹脂塗料)(A−2)。
(スチレン−アクリル樹脂塗料)(SA−1)。
(ふっ素樹脂塗料)(F−1)。
スーパーフレックス410(第一工業製薬(株)製):ウレタン樹脂エマルション、固形分40%。
ゼッフルSE−310(ダイキン工業(株)製):フッ素樹脂エマルション、固形分50%。
ボンコートEC−856(大日本インキ化学工業(株)製):スチレンアクリルエマルション、固形分50%。
【0064】
(実施例1〜12および比較例1〜2)
上記作製した水性塗料(AS−1、CA−1、AU−1、A−1、A−2、SA−1およびF−1)に、上記製造例1〜6および比較製造例1〜2において作製した塗膜表面親水化剤を、表5〜7に示す配合量で、下記のとおり混合して塗料組成物を作製または塗膜を形成し、各物性(光沢、塗膜接触角、ゲル化性)を測定した。これらの物性評価結果を表5〜7に示す。
(物性評価)
・光沢
作製した水性塗料と塗膜表面親水化剤を混合し、30分後に6ミルのアプリケーターでガラス板に塗装し、14日間室温で養生した。その試験体の入射角60°の光沢値を光沢計Multi−Gloss268(ミノルタ(株)製)で測定した。光沢値は、3回測定した値の平均値を算出した。
【0065】
・塗膜の水接触角の測定
作製した水性塗料と塗膜表面親水化剤を混合し、30分後に6ミルのアプリケーターでガラス板に塗装し、14日間室温で養生した。その後、その試験体を水に7日間浸漬し、引き上げ後16時間以上室温で乾燥した後、接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA−S150型)を用いて水の静的接触角を測定した。
【0066】
・ゲル化性
作製した水性塗料および塗膜表面親水化剤を23℃の恒温室に1晩放置後混し、密閉容器に入れ23℃の恒温室に放置した。その後、水性塗料と塗膜表面親水化剤混合してから24時間後に塗装可能かどうかを目視判定した。
◎:ゲル化(流動性なし)
○:増粘、チクソ性あり(塗装不能と感じる)
×:流動性あり(塗装可能と感じる)
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

表5から明らかなように、実施例1〜6においては酸性リン化合物、シリケート類の種類を変化させたが、いずれも高い光沢及び塗膜表面の親水化を示した。また、ゲル化性についても混合後24時間後にはいずれも塗装不可能になった。表6から明らかなように、実施例7〜12においては水性塗料の種類を変更したが、いずれも高い光沢及び塗膜表面の親水化を示した。表から明らかなように、本発明の実施例1〜12では塗膜表面親水化剤に、塗膜の耐水性を低下させる親水成分たるポリオキシアルキレン鎖含有化合物や乳化剤を使用していないことから、耐水性改善効果が期待出来る。また、水性塗料と塗膜表面親水化剤を混合後十分な可使時間を有しているが、翌日になると粘度が大幅に上昇し、接触角低下能が低下する前に使用不能となるようゲル化性が付与されている。
一方、表7に示されるように、シリケート40単独の塗膜表面親水化剤を使用した比較例1では、塗膜表面の親水化を発現しなかった。さらに、光沢も低かった。また、同一分子中にメチル基70%、n−ブチル基30%含有するシリケートであるMS58B30単独の塗膜表面親水化剤を使用した比較例2では、塗膜表面の親水化は発現されるものの、光沢は極めて低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)水性塗料と(2)塗膜表面親水化剤よりなり、
(1)水性塗料が水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする塗料であり、
(2)塗膜表面親水化剤がテトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)を含有する、
ことを特徴とする、2液水性塗料組成物。
【請求項2】
前記酸性リン化合物(B)が炭素数12以下のアルキル基、アルキレン基またはアラルキル基より選択される炭化水素基を有する酸性リン酸エステル、ホスホン酸又は酸性ホスホン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の2液水性塗料組成物。
【請求項3】
前記テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)が炭素数2以上のアルキル基を含む、請求項1または2に記載の2液水性塗料組成物。
【請求項4】
前記(1)水性塗料が加水分解性シリル基含有アクリル系重合体を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の2液水性塗料組成物。
【請求項5】
前記(1)水性塗料に前記(2)塗膜表面親水化剤を添加し、混合後、被塗物に塗装する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の2液水性塗料組成物の塗装方法。
【請求項6】
テトラアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物(A)と酸性リン化合物(B)をあらかじめ混合し、これを水溶性樹脂および/または水性エマルジョンを塗膜形成成分とする水性塗料に添加してなる塗料組成物。

【公開番号】特開2008−156434(P2008−156434A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345380(P2006−345380)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】