説明

2連式吐出器

【課題】コンパクトで操作性の良好な2連式吐出器を提供する。
【解決手段】2つの容器を横並びにし、口部に着脱自在なホルダー3、4と、吸入弁5、6を介して内容物を通過させる管体7、8とポンプ9と、吐出弁13、14とノズル15を備えた2連式吐出器に、吸排口S1〜S3と、同心2重の周壁で内側域P1及び外側領域P2を持つシリンダー9aと2つのピストン9b、9cを設ける。ピストン9b、9cは、その本体部分の後方側をシリンダー9aの開放端9a′から露出させて操作用の押しボタン部分9b2とする第1のピストン9bと、第1のピストン9bの内側に配置された第2のピストン9cで構成し、第1のピストン9bの外側に周壁11aの後端に一体連結する端壁11bとを有し、押しボタン部分のキャップ11を設ける。シリンダー9aの開放端9a′に嵌合する外周端12aを備え、破断可能な連結片12bを組立て時または押しボタン9b2の押圧で破断しピストン押さえとなる間欠部を形成した環状体12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの容器内に充填された種類の異なる内容物をポンプによってそれぞれの容器から同時に吐出させ、使用直前において混合するのに適した2連式吐出器に関するものであり、該吐出器の構造の簡素化、サイズのコンパクト化、操作性の改善を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、毛染め剤や洗顔フォーム、トリートメント等においては組成の異なる2種類の内容物を使用直前に混ぜて使用する商品が流通してきている。
【0003】
かかる商品は、それぞれの内容物をそれぞれ個別の容器に充填してそれを1セットにして販売されているのが普通であり、使用に際してはそれぞれの容器から所定の割合になるように内容物を個別に注出して混合する煩雑な作業が必要になっていた。
【0004】
上記のような従来の問題を解消したものとしては、各容器の口部にポンプ装置の吸引口を接続して該ポンプ装置を手で駆動することで各容器から同時に内容物を注出する吐出装置が知られている(例えば特許文献1参照)が、ポンプ装置を手で駆動する、とくに2連式の吐出器にあっては装置のサイズが大きくなるのが避けられず操作性の低下が生じることがあった。
【0005】
このため、ポンプに2つの空間領域を区画形成する同心2重の周壁を備えたシリンダーを設け、このシリンダーの空間領域内に操作レバーにより同時にスライドさせるピストンを組み込んで内容物の同時吐出を実現するとともに吐出装置のサイズの小型化、操作性の改善を図った提案がなされている(例えば特許文献2参照)ものの、この種の吐出器においては、製造コストの削減、操作性の、より一層の改善を図る観点から、構造のさらなる簡素化、サイズのコンパクト化が要求されている。
【特許文献1】特開2005-126144号公報
【特許文献2】特開2007-137465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、構造の簡素化、サイズのコンパクト化を図り、操作性のより一層改善された2連式吐出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器を横並び配列にしてその口部において着脱自在に連結保持するホルダーと、この各ホルダーの開口にそれぞれ吸入弁を介してつながり、容器内の内容物を通過させる送給通路を形成する管体と、この管体につながり、容器内の内容物を吸引、加圧、その出側へと圧送するポンプと、上記管体の出側に配置される吐出弁を有し、該吐出弁を通過させた内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出するノズルとを備えた2連式吐出器であって、
前記ポンプは、各管体の送給通路に個別につながる吸排口を有し、同心2重の周壁にて内側空間領域及び外側空間領域をそれぞれ形成したシリンダーと、このシリンダーの各空間領域にそれぞれ往復移動可能に配置され、シリンダー内で同時にスライドさせて各容器内の内容物を吸引、加圧、ノズルへ向けて圧送する2つのピストンとを備え、
前記ピストンは、外側空間領域内で往復移動可能な摺動部を有し、その本体部分の後方側をシリンダーの開放端から露出させて操作用の押しボタン部分とする第1のピストンと、内側空間領域内で往復移動可能な摺動部を有し、第1のピストンの内側に配置された第2のピストンからなり、
前記第1のピストンの外側に、本体部分を取り囲む周壁と、この周壁の後端に一体連結する端壁とを有し、前記押しボタン部分を被覆するキャップを設け、
該キャップは、その周壁の外表面に、シリンダーの開放端に嵌合する外周端を備え、破断可能な連結片を介して前記周壁とつながるが、組み立て時もしくは押しボタン部分による初期の押圧操作でもって破断されてピストン押さえとして機能する複数箇所に間欠部を形成した環状体を有することを特徴とする2連式吐出器である。
【発明の効果】
【0008】
操作レバーの配置を省略しピストンの後端部を押しボタンとしてそれを直接押し込むことでポンプのピストンを駆動するため、吐出器の構造の簡素化、サイズのコンパクト化が可能となり、また、サイズのコンパクト化に伴い操作も容易となり使い勝手が改善される。
【0009】
ピストンはもともとシリンダー内で高いシール性を維持することができるように軟質材にて形成されているので、ピストンの後端部を直接、押しボタンとして押し込む場合においてはピストンが斜めに押されてしまうことも懸念されるが、ピストンの外表面にキャップを配置することでピストンの斜め押しが回避され内容物の確実な排出が可能となる。
【0010】
ポンプの組み込み段階では、ピストン押さえとして機能する環状体はキャップの外表面に一体成形されているため(1部材)、キャップを別途に設けてもパーツ数の増加は伴わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
【0012】
図1〜4は本発明にしたがう2連式吐出器を容器に装着した状態で示した図であり、図1は外観斜図、図2は側面を断面で示した図、図3は背面を断面で示した図、そして、図4はA−A断面を示した図である。
【0013】
図において1、2は異なる内容物をそれぞれ充填したチューブタイプの容器、3、4は容器1、2をその口部において横並び姿勢で固定保持するホルダーである(ねじで係合する場合について示してあるが、アンダーカットにより係合させてもよい。)。このホルダー3、4には容器1、2の口部1a、2aと連通する開口3a、4aが設けられており(図2、図3参照)、その内周壁には係合部末端で口部1a、2aに設けられた傾斜付きの凹部1b、2bに適合して容器1、2のホルダー3、4に対する位置決めを行う突起3b、4bが形成されている(図2参照)。
【0014】
また、5、6はホルダー3、4の開口3a、4aに配置された吸入弁(逆止弁)、7、8は吸入弁5、6を介してホルダー3、4につながる管体である。
【0015】
この管体7、8は内容物の送給経路を形成するものであって、このうち管体7はストレート管7aと、このストレート管7aの後端に着脱可能に配置され、該ストレート管7aとホルダー3とを所定の角度をもって回転可能に連係する短管7b、7c(短管7bはホルダー3に連結される。)からなっており、また、管体8については、ポンプの周りを取り囲む環状管8aと、この入側、出側に一体的に設けられた短管8b、8c(短管8bはホルダー4に連結される。)からなっている。
【0016】
また、9は管体7、8につながり容器本体1、2内の内容物を吸引、加圧、圧送するポンプである。このポンプ9には管体7、8に個別につながる吸排口S〜Sを有し、同心2重の周壁(円筒形をなしている。)W、Wにて内側空間領域P及び外側空間領域Pをそれぞれ形成するシリンダー9aと、このシリンダー9aの各空間領域P、Pにそれぞれ往復移動可能に弾性支持され、各容器本体1、2内の内容物を同時に吸引、加圧、ノズルへ向けて圧送する2つのピストン9b、9cが備えられている。
【0017】
上記ピストン9b、9cのうち、ピストン9bを以下に第1のピストン9bとし、ピストン9cを以下に第2のピストン9cとして表示する。第1のピストン9bは本体部分の先端に外側空間領域P内で往復移動可能な摺動部9bを有しており、本体部分の後方側をシリンダー9aの開放端9a′から露出させてその部位そのものによって操作用の押しボタン9bを構成する。
【0018】
また、第2のピストン9cは本体部分の先端に内側空間領域P内で往復移動可能な摺動部9cを有しており、その本体部分の後端に設けられた環状筒体9cが第1のピストン9bの内側に設けられた凹部9bに抜け止め不能に嵌合保持されている。
【0019】
10は第2のピストン9cの環状溝9cとシリンダー9aの管体7側の端壁9aの相互間に配置され、第1のピストン9b及び第2のピストン9cを弾性支持するスプリング、11は第1のピストン9bの本体部分を被覆するキャップである。このキャップ11は、第1のピストン9bの本体部分の周りを取り囲む周壁11aと、この周壁11aの後端に一体連結する端壁11bからなっており、比較的剛性の高い素材にて構成される。
【0020】
12はキャップ11の周壁11aの外表面に設けられた2箇所の間欠部を形成した例で示した環状体である(図5参照)。この環状体12は図5(a)〜(c)に示すように、シリンダー9aの開放端9a′でアンダーカットの如き係合手段にて嵌合する外周端12aを有し、連結片12bを介して切り離し可能にキャップ11の周壁11aに連結保持されており、図6に示すように押しボタン9bをキャップ11とともに押し込んで該連結片12bを切り離したのちにおいてはピストン押さえとして機能する。ここに、ピストン押さえとして機能させる部材を環状体12として表示した例としたが、その形状、形態は適宜変更し得る。
【0021】
さらに、13、14は管体7、8の出側に配置された吐出弁(逆止弁)、15は吐出弁13、14を通過させた内容物を外界へ向けて排出するノズルである。
【0022】
ノズル15は吐出弁13、14の出側でそれぞれ排出空間m、mを形成するベース15aと、このベース15aに連結された管体15bと、この管体15bの外周にヒンジhを介して揺動可能に保持され、該管体15bの先端開口を開閉する蓋体15cからなる。
【0023】
16a、16bはベース15a及び管体15bのそれぞれの内側に設けられた仕切り板である。この仕切り板16a、16bはノズル15内を軸芯に沿って2分割するものであり、容器1、2から排出された内容物を個別に通す通路r、rを形成する。
【0024】
上記の構成になる2連式吐出器は、ポンプ9を構成するシリンダー9aが同心2重の周壁W、Wにより内側空間領域P、外側空間領域Pを形成し、このシリンダー9aに管体7、8を接続する(送給経路の短縮による内部構造の簡素化)とともに、ポンプ9を押しボタン部分9bの押し込み操作で直接駆動するようにしたので、サイズが非常にコンパクトであり、片手で把持しながら内容物の排出が簡単に行なえる。
【0025】
図7は本発明にしたがう吐出器の他の実施の形態を要部について示した図である。第1のピストン9bと第2のピストン9cとは一体成形による単一部材で構成することも可能であり、この場合、ピストンの後端部には凹部17が不可避的に形成されることからその部位を押しボタン部分9bとして利用し難くなることも懸念されるが、キャップ11がその機能を担うこととなる。
【0026】
第1のピストン9bとキャップ11とを連係するにあたっては、図7に示したように、第1のピストン9bの後端部に環状溝18を設け、キャップ11の内側に該環状溝18に適合する突起19を設け、この環状溝18と突起19によりピストンとキャップ11を連係すればよいが、その他の連係手段(例えば、接着剤、溶着等)を適用してもかまわない。
【0027】
かかる構成の吐出器を用いて容器1、2内の内容物を排出するには、押しボタン部分9bの押し込み操作(キャップ11とともに押し込む。)を複数回にわたって繰り返し行えばよい。押しボタン部分9bを押し込むと第1のピストン9b、第2のピストン9cはスプリング10の反発力に抗してシリンダー9a内でスライドしていき、その行き止まり状態で押し込みにかかる力を取り除く。そうするとスプリング10の復元力で押しボタン部分9bは第1のピストン9b、第2のピストン9cとともに初期位置へと復帰し、この時、シリンダー9a内が負圧となるため容器1、2内の内容物が吸入弁5、6を通って管体7、8、シリンダー9aへと吸引される。
【0028】
押しボタン部分9bの押し込み操作により再び第1のピストン9b、第2のピストン9cをスライドさせると管体7、8、シリンダー9a内に存在する内容物は加圧され、吐出弁13、14を経てノズル15へと圧送され、ノズル15へと圧送された内容物は各通路r1、rを経てその先端から外界へと排出されることとなり、上記の操作を複数回繰り返すことで内容物の連続的な排出が可能となる。
【0029】
本発明にしたがう吐出器は、管体7、8、ポンプ9のシリンダー9a、キャップ11をガスバリア性の高い素材にて構成することも可能(ガスバリア層を積層したものやコーティング層を形成したものでもよい。)であり、この場合、ガスの透過が抑制されるのでそこを通る内容物の品質を安定的に維持し得る。
【0030】
ガスバリア性を有する素材としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ナイロン樹脂(例えば、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂等)あるいは非晶質ポリエステル樹脂(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、その他ジール成分体等の共重合体、エチレンナフタレート-エチレンテレフタレート共重合体樹脂等)が適用される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
コンパクトで操作性のよい2連式吐出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にしたがう2連式吐出器の実施の形態を示した外観斜視図である。
【図2】図1に示した吐出器の側面を断面で示した図である。
【図3】図1に示した吐出器の背面を断面で示した図である。
【図4】図1に示した吐出器のA-A断面を示した図である。
【図5】(a)〜(c)はキャップを示した図である。
【図6】押しボタン部分の押し込み状況を示した図である。
【図7】本発明にしたがう吐出器の他の実施の形態を要部について示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 容器
1a 口部
2 容器
2a 口部
3 ホルダー
3a 開口
4 ホルダー
4a 開口
5 吸引弁
6 吸引弁
7 管体
7a ストレート管
7b 短管
7c 短管
8 管体
8a 環状管
8b 短管
8c 短管
9 ポンプ
9a シリンダー
9b 第1のピストン
9c 第2のピストン
10 スプリング
11 キャップ
11a 周壁
11b 端壁
12 環状体
12a 先端部
12b 連結片
13 吐出弁
14 吐出弁
15 ノズル
15a ベース
15b 筒体
15c 蓋体
16a 仕切り板
16b 仕切り板
17 凹部
18 環状溝
19 突起
S〜S 吸排口
P 内側空間領域
P外側空間領域
t、t 周壁
r、r 通路
h ヒンジ
W、W周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器を横並び配列にしてその口部において着脱自在に連結保持するホルダーと、この各ホルダーの開口にそれぞれ吸入弁を介してつながり、容器内の内容物を通過させる送給通路を形成する管体と、この管体につながり、容器内の内容物を吸引、加圧、その出側へと圧送するポンプと、上記管体の出側に配置される吐出弁を有し、該吐出弁を通過させた内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出するノズルとを備えた2連式吐出器であって、
前記ポンプは、各管体の送給通路に個別につながる吸排口を有し、同心2重の周壁にて内側空間領域及び外側空間領域をそれぞれ形成したシリンダーと、このシリンダーの各空間領域にそれぞれ往復移動可能に配置され、シリンダー内で同時にスライドさせて各容器内の内容物を吸引、加圧、ノズルへ向けて圧送する2つのピストンとを備え、
前記ピストンは、外側空間領域内で往復移動可能な摺動部を有し、その本体部分の後方側をシリンダーの開放端から露出させて操作用の押しボタン部分とする第1のピストンと、内側空間領域内で往復移動可能な摺動部を有し、第1のピストンの内側に配置された第2のピストンからなり、
前記第1のピストンの外側に、本体部分を取り囲む周壁と、この周壁の後端に一体連結する端壁とを有し、前記押しボタン部分を被覆するキャップを設け、
該キャップは、その周壁の外表面に、シリンダーの開放端に嵌合する外周端を備え、破断可能な連結片を介して前記周壁とつながるが、組み立て時もしくは押しボタン部分による初期の押圧操作でもって破断されてピストン押さえとして機能する複数箇所に間欠部を形成した環状体を有することを特徴とする2連式吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23689(P2009−23689A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188582(P2007−188582)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】