説明

2重壁ブロー成形体

【課題】2重壁の間に複数列の補強用のリブが形成された2重壁ブロー成形体。種々の方向の荷重に対する剛性が高く、反りの発生が抑えられ、外観性も優れる2重壁ブロー成形体を提供する。
【解決手段】2重壁1,2の間に複数列の凹状リブ5と、複数列の隠しリブ6が交互に配置されている。凹状リブ5は壁1から連続して壁2に向けて延びており、列の長さ方向に交互に配置されかつ長さ方向に連続した第1リブ7と第2リブ8からなる。第1リブ7は断面略台形状をなし、その頂面部12が壁2の内側に溶着している。第2リブ8は台形部16とパリソンが2重に溶着した板状部17からなる。隠しリブ6は壁2から連続して壁2に向けて延び、その頂部が壁1の内側に溶着し、かつ全体が互いに溶着して板状をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重壁の間に複数列の補強用のリブが形成された2重壁ブロー成形体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2重壁の間に種々の形態の補強用のリブが形成されたボード状の2重壁ブロー成形体が記載されている。
特許文献1の図1には、2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる複数列の凹状リブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。前記凹状リブは列の長さ方向に交互に配置されかつ長さ方向に連続した第1リブと第2リブからなる。第1リブは、両側面部と狭くなった頂面部で構成された断面台形状の部分からなり、その頂面部が前記他方の壁の内側に溶着している。第2リブは、断面台形状の部分と互いに溶着した板状部分からなり、その頂部は前記他方の壁との間に隙間を有する。
【0003】
特許文献1の図4には、2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる凹状リブと、2重壁の前記他方の壁から連続して前記一方の壁に向けて延びる凹状リブが、2重壁の間に交互に形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。どちらの凹状リブも、図1の凹状リブと同じ断面形状である。
特許文献1の図5には、2重壁の一方の壁及び他方の壁から連続して対向する壁に向けて延びる複数列の凹状リブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。前記凹状リブは、特許文献1の図1の凹状リブが半分の高さで一対対向配置され、台形状部の頂面部同士が溶着した形態を有する。
【0004】
特許文献1の図7には、2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる複数列の凹状リブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。この凹状リブは長さ方向に一定な断面形状(両側面部と狭くなった頂面部で構成された断面台形状)を有する。
特許文献1の図8には、2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる複数列の隠しリブが形成された2重壁ブロー成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−165152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図1に記載された2重壁ブロー成形体は、前記他方の壁(第1リブの頂面部が溶着する壁)の平均肉厚が大きく、逆に前記一方の壁(凹状リブの凹部が形成されている壁)の平均肉厚が小さくなるという問題がある。これは、前記一方の壁のパリソンが、金型に形成された突起に最初に接触して冷却し、以後ほとんど薄肉化しないまま前記他方の壁のパリソンに向けて押し込まれて溶着し、かつ、前記一方の壁のパリソンは押し込まれた分だけブロー成形時に膨張し薄肉化するためである。このため、2重壁ブロー成形体の剛性が低下する、ブロー成形時の収縮が両壁で異なり反りが発生するなどの問題がある。
【0007】
特許文献1の図4に記載された2重壁ブロー成形体は、2重壁の両壁から対向する壁に向けて延びるリブを形成しているため、同図1に記載された2重壁ブロー成形体に生じる問題点は解消される。しかし、両方の壁に凹状リブの凹部が露出しているため、外観性が劣る(片面だけでも平らな方がよい)という問題がある。
特許文献1の図5に記載された2重壁ブロー成形体は、同図4に記載された2重壁ブロー成形体と同じ問題がある。また、2重壁の中央にパリソンの材料が集まり、2重壁の両壁が薄肉化して、断面2次モーメントが小さくなり曲げ剛性が低いという問題がある。
【0008】
特許文献1の図7に記載された2重壁ブロー成形体は、同図1に記載された2重壁ブロー成形体に生じる問題点と同様の問題点があり、かつ凹状リブの長さ方向に沿って曲げるように掛かる荷重に対しては、凹状リブがない場合よりかえって剛性が低いという問題点がある。
特許文献1の図8に記載された2重壁ブロー成形体は、同図1に記載された2重壁ブロー成形体に生じる問題点と同様の問題点があり、かつ隠しリブの長さ方向に沿って曲げるように掛かる荷重に対して剛性が低いという問題がある。また、隠しリブは板状であるため荷重により倒れや座屈が発生しやすく(特に隠しリブに対し横方向から斜めに掛かる荷重に対して弱い)、せん断剛性が低いという問題点がある。
【0009】
本発明は、2重壁の間に複数列の補強用のリブが形成された2重壁ブロー成形体についてのこのような問題点を解決するためになされたもので、種々の方向の荷重に対する剛性が高く、反りの発生が抑えられ、外観性も優れる2重壁ブロー成形体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る2重壁ブロー成形体は、2重壁の間に1列又は複数列の凹状リブと、1列又は複数列の板状リブが交互に配置され、前記凹状リブは列の長さ方向に交互に配置されかつ長さ方向に連続した第1リブと第2リブからなり、前記第1リブは、前記2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる両側面部と頂面部で構成された断面略台形状をなす部分であり、前記第2リブは、前記一方の壁から連続して前記他方の壁に向けて延び、その頂部を含む全部又は大部分が互いに溶着して板状をなす部分であり、前記板状リブは前記他方の壁から連続して前記一方の壁に向けて延び、その頂部が前記一方の壁の内側に溶着するとともに全体が互いに溶着して板状をなす隠しリブであることを特徴とする。
上記2重壁ブロー成形体において、好ましくは、前記第1リブの頂面部が前記他方の壁の内側に溶着し又は前記他方の壁の内側近傍に達し、前記第2リブの頂部が前記他方の壁との間に隙間を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る2重壁ブロー成形体は、2重壁の間に形成された補強用のリブが、2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる凹状リブと、前記他方の壁から前記一方の壁に向けて延びる隠しリブからなるので、種々の方向の荷重に対する剛性が高く、反りの発生が抑えられ、外観性も優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る2重壁ブロー成形体をリブに対し垂直に切断したものの斜視図である。
【図2】図1の2重壁ブロー成形体の切断面を中心とした一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1,2を参照して、本発明に係る2重壁ブロー成形体について説明する。
この2重壁ブロー成形体はボード状で、略平面状の一方の壁1と平面状の他方の壁2、前記壁1,2の四方を囲む側壁(側壁3,4のみ示す)、及び補強のため壁1から壁2に向けて連続的に延びる凹状リブ5と、壁2から壁1に向けて連続的に延びる板状リブ(隠しリブ)6からなる。凹状リブ5と隠しリブ6は互いに平行であり、2重壁(壁1,壁2)の間で交互に配置されている。
【0014】
凹状リブ5は、長さ方向に交互に配置された第1リブ7と第2リブ8からなる。第1リブ7と第2リブ8は凹状リブ5の長さ方向に連続している。隣接して配置された凹状リブ5,5は互いに長さ方向に半ピッチ(第1リブ7と第2リブ8の合計長さの半分)ずれている。
第1リブ7は、壁1から連続して壁2に向けて延びる両側面部9,11と頂面部12からなり、断面が略台形状をなしている。頂面部12は壁2の内側に溶着している。
第2リブ8は、壁1から連続して壁2に向けて延びる両側面部13,14と頂面部15からなる断面が台形状の台形部16と、台形部16の頂面部15から壁2に向けて延びる板状部17からなる。板状部17はパリソンが2重に溶着した部分であり、その頂部18は壁2との間に若干の隙間19を有する。
この凹状リブ5は、特許文献1の段落0007〜0009及び図1〜3に記載された方法で形成することができる。
【0015】
隠しリブ6は、壁2から連続して壁1に向けて延び、その頂部21が壁1の内側に溶着し、かつ全体としてパリソンが2重に溶着して板状となっている。壁2側に隠しリブ16の痕跡がスジとなって表れているが、凹状リブ5と異なり凹部が露出せず、壁2は基本的に平らである。
この隠しリブ6は、キャビティ内に突出可能なスライド金型を設置した金型(スライド金型は突出していないとき頂部が金型のキャビティ面と面一の位置にあり、突出したとき頂部が対向する金型のキャビティ面近傍に達する)を用いて形成することができる。その方法自体周知である。
【0016】
上記2重壁ブロー成形体では、特定の断面構造を有する第1リブ7と第2リブ8からなる凹状リブ5を壁1から壁2に向かうように形成しているため、特許文献1に記載された2重壁ブロー成形体と同様に、基本的に高い曲げ剛性、せん断剛性及び圧縮剛性を有する。そして、上記2重壁ブロー成形体は、さらに隠しリブ6を壁2から壁1に向かうように形成している。壁1は隠しリブ6の頂部21が溶着することで、壁2は凹状リブ5の第1リブ7の頂面部12が溶着することで、共に平均肉厚が大きくなる。このため、両壁1,2の間に大きい肉厚差が付くことに伴う剛性の低下がなく、また、断面2次モーメントが大きくなることで曲げ剛性が高くなる。なお、凹状リブ5の第2リブ8の板状部17の頂部18が厚肉で壁2の近傍に達することから、これも断面2次モーメントの増大に寄与している。また、両壁1,2の平均厚さに大きい差が付かないため、反りの発生なども抑制できる。
さらに、上記2重壁ブロー成形体は、片面(壁2)に凹部が形成されないから、外観性にも優れる。
【0017】
なお、上記の例では、凹状リブ5の第1リブ7の頂面部12が壁2の内側に溶着していたが、これは必須ではない。しかし、溶着していない場合でも、前記頂面部12が壁2の内側近傍に位置していることが望ましい。
上記の例では、凹状リブの第2リブ8が台形部16と板状部17からなるが、台形部16が形成されず、板状部17のみが形成されていてもよい。
また、上記の例では、凹状リブ5と隠しリブ6は互いに平行に形成されていたが、これは必須ではない。例えば凹状リブ5と隠しリブ6が平面視で互いに傾斜し(平面視でハの字形)、あるいは端部で接続した(Vの字形)形態も考えられる。凹状リブ5同士、隠しリブ6同士が平面視で互いに傾斜して配置されていてもよい。さらに凹状リブ5と隠しリブ6はそれぞれ平面視で湾曲した形態も取り得る。
【符号の説明】
【0018】
1,2 2重壁の壁
5 凹状リブ
6 隠しリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重壁の間に1列又は複数列の凹状リブと、1列又は複数列の板状リブが交互に配置され、前記凹状リブは列の長さ方向に交互に配置されかつ長さ方向に連続した第1リブと第2リブからなり、前記第1リブは、前記2重壁の一方の壁から連続して他方の壁に向けて延びる両側面部と頂面部で構成された断面略台形状をなす部分であり、前記第2リブは、前記一方の壁から連続して前記他方の壁に向けて延び、その頂部を含む全部又は大部分が互いに溶着して板状をなす部分であり、前記板状リブは前記他方の壁から連続して前記一方の壁に向けて延び、その頂部が前記一方の壁の内側に溶着するとともに全体が互いに溶着して板状をなす隠しリブであることを特徴とする2重壁ブロー成形体。
【請求項2】
前記第1リブの頂面部が前記他方の壁の内側に溶着し又は前記他方の壁の内側近傍に位置し、前記第2リブの頂部が前記他方の壁との間に隙間を有することを特徴とする2重壁ブロー成形体。

【図1】
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【図2】
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