説明

2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法、及びそれに用いられる新規化合物

【課題】2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で得ることが可能な新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた該フラン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1):


[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される新規化合物を分子内環化反応させて2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオフェン骨格を有する新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランの製造方法として、2−メトキシカルボニル−3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシエチルチオフェンを閉環反応させた後に脱メトキシカルボニル化させて得る方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、350℃の高温で加熱する必要があり安全性やエネルギー効率の面で問題があった。また、出発原料のα−ヒドロキシメチレンブチロラクトンからの収率が2%以下であり、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランを収率よく得る方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭48−14067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で得ることが可能な新規化合物及びその製造方法、並びにそれを用いた該フラン誘導体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、下記一般式(1):
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を提供することによって解決される。
【0006】
また、上記課題は、下記一般式(2):
【化2】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を提供することによって解決される。
【0007】
更に、上記課題は、下記一般式(3):
【化3】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を提供することによって解決される。
【0008】
また、上記課題は、下記一般式(1):
【化4】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を分子内環化反応させる、下記一般式(4):
【化5】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
また、上記課題は、下記一般式(2):
【化6】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物をアルカリ加水分解させる、下記一般式(1):
【化7】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法を提供することによって解決される。
【0010】
また、上記課題は、下記一般式(3):
【化8】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を脱臭素化反応させる、下記一般式(2):
【化9】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法を提供することによって解決される。
【0011】
また、上記課題は、下記一般式(5):
【化10】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物に対して臭素及び酢酸を反応させる、下記一般式(3):
【化11】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の新規化合物を用いることにより、2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を温和な条件かつ高収率で提供することができる。こうして得られる2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体は、医薬・農薬等の中間体や香味剤組成物への添加剤として用いられるだけでなく、導電性材料やエレクトロクロミック材料等として有用な重合体の原料として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、一般式(1)、(2)及び(3)で示される化合物、並びにこれらを中間体として用いて一般式(4)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法が提供される。一般式(1)、(2)及び(3)で示される化合物は新規化合物である。以下詳細について述べる。
【0014】
【化12】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0015】
【化13】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
【0016】
【化14】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
【0017】
【化15】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
【0018】
上記一般式(1)〜(4)で示される化合物において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0019】
置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基は、例えば、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基等が挙げられる。
【0020】
置換基を有してもよいアルキル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0021】
置換基を有してもよいアルケニル基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0022】
置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタニル基、シクロオクタニル基、シクロノナニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル基、シクロドデカニル基等が挙げられる。
【0024】
上述のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などのアルキルチオ基;ヒドロキシ基;チオール基などが挙げられる。また、後述の工程4における分子内環化反応の反応速度を考慮すると、R又はRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R及びRの両方ともが水素原子であることがより好ましい。即ち、一般式(1)で示される化合物が第1級アルコール又は第2級アルコールであることが好ましく、第1級アルコールであることがより好ましい。
【0025】
一般式(3)で示される新規化合物は、下記化学反応式(I)で示される工程1のように、一般式(5)で示される化合物を出発化合物として、臭素及び酢酸と反応させることにより得られる。
【0026】
【化16】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0027】
上記化学反応式(I)で示される工程1は、一般式(5)で示される化合物に対して臭素及び酢酸を反応させる工程である。この反応により、一般式(5)で示される化合物におけるチオフェン骨格の2位、4位及び5位が臭素で置換されるとともに、ヒドロキシ基がアセチル基に置換されて一般式(3)で示される化合物を得ることができる。上記一般式(5)で示される化合物におけるR、R、R及びRとしては、上述の一般式(1)〜(4)で示される化合物の説明のところで例示されたものと同様のものを用いることができる。
【0028】
上記工程1における臭素の使用量は特に限定されず、一般式(5)で示される化合物1モルに対して、3〜12モルであることが好ましい。臭素の使用量が3モル未満の場合、臭素の置換反応が不十分となるおそれがある。一方、臭素の使用量が12モルを超える場合、チオフェン骨格の2位、4位及び5位以外への置換反応が起こるおそれがあり、6モル以下であることがより好ましい。また、上記工程1における酢酸の使用量は特に限定されず、一般式(5)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。
【0029】
上記工程1における反応温度としては特に限定されず、20〜100℃であることが好ましい。反応温度が20℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、40℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が100℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、80℃以下であることがより好ましい。こうして得られる一般式(3)で示される化合物は、好適には単離することなく次の工程2における脱臭素化反応の出発化合物として用いることができる。
【0030】
一般式(2)で示される新規化合物は、下記化学反応式(II)で示される工程2のように、上記工程1により得られた一般式(3)で示される化合物を脱臭素化反応させることにより得られる。
【0031】
【化17】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0032】
上記化学反応式(II)で示される工程2は、一般式(3)で示される化合物を脱臭素化反応させる工程である。この反応により、一般式(3)で示される化合物におけるチオフェン骨格の2位及び5位の臭素が脱臭素化されて一般式(2)で示される化合物を得ることができる。
【0033】
上記工程2の好適な実施態様は、酢酸存在下で亜鉛粉末を用いて脱臭素化反応させる方法である。上記工程2における亜鉛粉末の使用量としては特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1モルに対して、2〜20モルであることが好ましい。亜鉛粉末の使用量が2モル未満の場合、脱臭素化反応が不十分となるおそれがあり、3モル以上であることがより好ましい。一方、亜鉛粉末の使用量が20モルを超える場合、4位での脱臭素化反応が起こるおそれがあり、10モル以下であることがより好ましく、6モル以下であることが更に好ましい。また、上記工程2における酢酸の使用量は特に限定されず、一般式(3)で示される化合物1質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましい。
【0034】
上記工程2における反応温度としては特に限定されず、80〜140℃であることが好ましい。反応温度が80℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、90℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が140℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、120℃以下であることがより好ましい。こうして得られる一般式(2)で示される化合物は、好適には単離することなく次の工程3におけるアルカリ加水分解反応の出発化合物として用いることができる。
【0035】
一般式(1)で示される新規化合物は、下記化学反応式(III)で示される工程3のように、上記工程2により得られた一般式(2)で示される化合物をアルカリ加水分解させることにより得られる。
【0036】
【化18】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0037】
上記化学反応式(III)で示される工程3は、一般式(2)で示される化合物をアルカリ加水分解させる工程である。アルカリ加水分解は、溶媒の存在下で塩基を用いて反応させる方法により好適に行われる。アルカリ加水分解で用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属水酸化物が好ましく用いられ、水酸化ナトリウムが特に好ましく用いられる。用いられる塩基の使用量は特に限定されず、一般式(2)で示される化合物1モルに対して、0.001〜1モルであることが好ましい。
【0038】
工程3で用いられる溶媒としては、水、アルコールなどが好ましく用いられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は特に限定されず、一般式(2)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。また、アルカリ加水分解させる際の反応温度については特に限定されず、0〜60℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、10℃以上であることがより好ましい。一方、反応温度が60℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、40℃以下であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明は、下記化学反応式(IV)で示される工程4のように、上記工程3により得られた一般式(1)で示される化合物を分子内環化反応させることにより、一般式(4)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を得ることを特徴とする。
【0040】
【化19】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
【0041】
上記工程4の好適な実施態様は、金属水素化物及び銅試薬を用いて分子内環化反応させる方法である。上記工程4で用いられる金属水素化物としては特に限定されず、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化物;水素化カルシウム、水素化マグネシウム等のアルカリ土類金属水素化物などが挙げられる。中でも、反応性が良好である観点からアルカリ金属水素化物が好適に用いられる。金属水素化物の使用量としては特に限定されず、一般式(1)で示される化合物1モルに対して、1〜10モルであることが好ましい。
【0042】
また、上記工程4で用いられる銅試薬としては特に限定されず、銅粉末;塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等のハロゲン化銅などが挙げられる。反応性が良好である観点からハロゲン化銅が好適に用いられ、中でも臭化銅(I)が特に好適に用いられる。銅試薬の使用量としては特に限定されず、一般式(1)で示される化合物1モルに対して、0.01〜1モルであることが好ましい。
【0043】
上記工程4の分子内環化反応で用いられる溶媒としては特に限定されず、非プロトン性極性溶媒が好適に用いられる。具体例としては、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。かかる溶媒の使用量は特に限定されず、一般式(1)で示される化合物1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。
【0044】
分子内環化反応させる際の反応温度については特に限定されず、50〜200℃であることが好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応速度が極めて遅くなるおそれがあり、70℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが更に好ましい。一方、反応温度が200℃を超える場合、生成物の分解を促進するおそれがあり、180℃以下であることがより好ましい。また、反応後に必要に応じて単離・精製を行ってもよい。具体例としては、反応混合物に水と、トルエン、酢酸エチル及び塩化メチレンなどの有機溶媒とを添加し、分液漏斗を用いて有機相と水相とに分離し、有機相を無水硫酸ナトリウムなどで乾燥後に濃縮し、得られた粗生成物を再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィなどにより精製する方法等が挙げられる。このことにより、純度の高い一般式(4)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体を得ることができる。
【0045】
以上説明したように、上記一般式(1)、(2)及び(3)で示される本発明の新規化合物を用いて得られる一般式(4)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体は、例えば、医薬・農薬等の中間体や、特公昭48−14067号公報に記載されているような、食品、飲料、動物飼料、薬剤および煙草、もしくは芳香味剤組成物への添加剤として用いられるだけでなく、導電性材料、エレクトロクロミック材料、光電変換材料、エレクトロルミネッセンス材料、非線形光学材料、電界効果トランジスタ材料、RF−ID材料、メモリ材料、センサー材料、導電性プリントペースト、インクジェット塗料等に好適に用いられる重合体、特に好適には導電性ポリマーの原料モノマーとして有用である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0047】
実施例1
[式(3a)で示される1−アセチル−2−(2,4,5−トリブロモチオフェン−3−イル)−エタンの合成]
温度計および滴下漏斗を備えた200mlの三口フラスコに、式(5a)で示される2−(チオフェン−3−イル)−エタン−1−オール15.0g(117mmol)および酢酸27mlを加えた。系内を窒素置換して50℃に加熱した後、臭素56.1g(351mmol)を30分かけて添加した。その後、反応容器を遮光し、50℃で15時間撹拌した。反応終了後、ヘキサン200ml、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液200mlおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mlを添加した。有機相と水相を分離し、水相を200mlのヘキサンで抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、式(3a)で示される1−アセチル−2−(2,4,5−トリブロモチオフェン−3−イル)−エタンの粗生成物を得た。化学反応式を以下に示す。
【0048】
【化20】

【0049】
式(3a)で示される1−アセチル−2−(2,4,5−トリブロモチオフェン−3−イル)−エタンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:4.22(t,2H,J=6.8Hz)、3.01(t,2H,J=6.8Hz)、2.05(s,3H)
【0050】
実施例2
[式(2a)で示される1−アセチル−2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタンの合成]
温度計および滴下漏斗を備えた300mlの三口フラスコに、酢酸30ml、亜鉛粉末30.6g(469mmol)を加えた。系内を窒素置換し70℃に加熱した後、酢酸20mlで希釈した実施例1で得られた式(3a)で示される1−アセチル−2−(2,4,5−トリブロモチオフェン−3−イル)−エタンの粗生成物を全量1時間かけて添加した。その後、系内を100℃に加熱し、3時間撹拌した。反応終了後、系内を室温に冷却した後、ヘキサン200mlと飽和食塩水200mlを添加した。有機相と水相を分離し、水相を200mlのヘキサンで抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、式(2a)で示される1−アセチル−2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタンの粗生成物を得た。化学反応式を以下に示す。
【0051】
【化21】

【0052】
式(2a)で示される1−アセチル−2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタンのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:7.24(d,1H,J=3.5Hz)、7.06(d,1H,J=3.5Hz)、4.29(t,2H,J=7.0Hz)、2.94(t,2H,J=7.0Hz)、2.04(s,3H)
【0053】
実施例3
[式(1a)で示される2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタン−1−オールの合成]
温度計を備えた200mlの三口フラスコに、35wt%水酸化ナトリウム水溶液50mlおよびエタノール50mlを加えた。系内に実施例2で得られた式(2a)で示される1−アセチル−2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタンの粗生成物を全量添加し、室温(20℃)で10分間撹拌した。反応終了後、トルエン100mlおよび飽和食塩水100mlを加え、有機相と水相を分離し、水相を100mlのトルエンで3回抽出した。合わせた有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することにより、式(1a)で示される2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタン−1−オールの粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記の物性を有する式(1a)で示される2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタン−1−オール13.2g(63.7mmol、式(5a)で示される化合物からの単離収率54.5%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0054】
【化22】

【0055】
式(1a)で示される2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタン−1−オールのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:7.25(d,1H,J=3.5Hz)、7.10(d,1H,J=3.5Hz)、3.85(t,2H,J=6.5Hz)、2.88(t,2H,J=6.5Hz)、1.70(br,1H)
【0056】
実施例4
[式(4a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランの合成]
温度計を備えた内容積50mlの三口フラスコに、式(1a)で示される2−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−エタン−1−オール5.40g(26.1mmol)およびN−メチルピロリジノン10mlを加えた。系内を窒素で置換した後、水素化ナトリウム(60%)1.25g(31.3mmol)を添加し、室温にて20分撹拌した。系内を95℃に加熱した後、臭化銅(I)0.47g(3.3mmol)を添加し、2分間撹拌した。反応終了後、反応容器を氷冷した後、蒸留水10mlおよびトルエン30mlを添加し、有機相と水相を分離し、水相を30mlのトルエンで抽出した。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で濃縮することにより粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製することにより、下記の物性を有する式(4a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン250mg(1.98mmol、単離収率7.6%)を得た。化学反応式を以下に示す。
【0057】
【化23】

【0058】
式(4a)で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フランのNMRデータは以下のとおりであった。
H−NMR(270MHz、CDCl、TMS) δ:6.72(d−d,1H,J=2.4Hz,1.4Hz)、6.01(d,1H,J=2.4Hz)、4.89(t,2H,J=7.8)、2.99(d−t,2H,J=1.4Hz,7.8Hz)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物。
【請求項2】
下記一般式(2):
【化2】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物。
【請求項3】
下記一般式(3):
【化3】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物。
【請求項4】
下記一般式(1):
【化4】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を分子内環化反応させる、下記一般式(4):
【化5】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される2,3−ジヒドロ−チエノ[3,4−b]フラン誘導体の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(2):
【化6】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物をアルカリ加水分解させる、下記一般式(1):
【化7】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法。
【請求項6】
下記一般式(3):
【化8】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物を脱臭素化反応させる、下記一般式(2):
【化9】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(5):
【化10】

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。]
で示される化合物に対して臭素及び酢酸を反応させる、下記一般式(3):
【化11】

[式中、R、R、R及びRは、前記と同義である。]
で示される化合物の製造方法。


【公開番号】特開2010−202589(P2010−202589A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50309(P2009−50309)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】