説明

2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法

【課題】高純度の2,6−ジフェニルフェノールを従来法に比し高収率で製造する方法の提供。
【解決手段】次の反応式(7)
[化1]


(ただし、Rは、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)に示す通り、2−アルキルフェノール(4)とシクロヘキセンとをアルミニウム系触媒の存在下で反応させて、2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を製造する第1工程と、
次いで、得られた2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下、脱水素反応させて2,6−ジフェニルフェノール(6)を得る第2工程とを有することを特徴とする2,6−ジフェニルフェノールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法に関し、特に高純度の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体を高収率で製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6−ジフェニルフェノールは、香料l−メントールの前駆体であるl−イソプレゴールを合成する際に使用される触媒の原料として、またアクリル系ブロック共重合体を製造する際に使用される触媒の原料として有用であることが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
また、2,6−ジフェニルフェノールの重合体は、高い耐熱性と低い誘電率、低い吸水性を持つことがMacromolecules4,5,643(1971)に開示されている。このような特性から電気、電子材料として高いポテンシャルを有しており、半導体装置の絶縁皮膜の原料としても有用であることが知られている(例えば、特許文献3,4,5参照。)。
【0004】
前記触媒の原料として、また半導体装置の絶縁皮膜として有用な2,6−ジフェニルフェノール重合体を構成するモノマーとして使用される、2,6−ジフェニルフェノールを製造する方法としては、シクロヘキサノンの脱水縮合により三量体を合成し、それを脱水素反応させて2,6−ジフェニルフェノールを得る方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【特許文献1】特開2002−212121号公報
【特許文献2】特開平11−335432号公報
【特許文献3】特開平9−223739号公報
【特許文献4】特開平11−326947号公報
【特許文献5】特開2000−186140号公報
【特許文献6】米国特許第3972951号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献6に開示された従来の製造方法では、1段目反応での三量体選択率が40%以下であり、また脱水素反応の選択率も42%程度であることから、2,6−ジフェニルフェノールの収率の悪さに問題があった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、高純度の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体を従来法に比し高収率で得ることが可能な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、次式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(ただし、Rは、水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良い、フェニル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは、六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される化合物(1)と、シクロヘキセン又は水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されたシクロヘキセン誘導体とを反応させることにより、次式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは、シクロヘキシル基の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で表される化合物(2)を得る第1工程と、
次いで、得られた化合物(2)を脱水素反応させ、次式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体(3)を得る第2工程と、を有することを特徴とする2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法では、前記第1工程において化合物(1)とシクロヘキセン又はその誘導体とを反応させる際、アルミニウム系触媒を用いることが好ましい。
【0015】
前記アルミニウム系触媒は、アルミニウムアリールオキサイドであることが好ましい。
【0016】
本発明の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法では、前記第1工程において化合物(1)とシクロヘキセン又はその誘導体との反応を160℃から210℃までの温度範囲で行うことが好ましい。
【0017】
本発明の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法では、前記第2工程において化合物(2)を、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下で脱水素反応させることが好ましい。
【0018】
本発明の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法では、前記化合物(2)の脱水素反応を、240℃から400℃までの温度範囲で行うことが好ましい。
【0019】
また本発明は、次の反応式(7)
【0020】
【化4】

【0021】
(ただし、Rは、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)に示す通り、2−アルキルフェノール(4)とシクロヘキセンとをアルミニウム系触媒の存在下で反応させて、2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を製造する第1工程と、
次いで、得られた2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下、脱水素反応させて2,6−ジフェニルフェノール(6)を得る第2工程とを有することを特徴とする2,6−ジフェニルフェノールの製造方法を提供する。
【0022】
前記第1工程で用いる前記アルミニウム系触媒は、アルミニウムアリールオキサイドであることが好ましい。
【0023】
本発明の2,6−ジフェニルフェノールの製造方法では、前記第1工程において化合物(4)とシクロヘキセンとの反応を160℃から210℃までの温度範囲で行うことが好ましい。
【0024】
本発明の2,6−ジフェニルフェノールの製造方法では、前記化合物(5)の脱水素反応を、240℃から400℃までの温度範囲で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、香料l−メントールの合成前駆体であるl−イソプレゴールを合成する際に使用される触媒の原料として、またアクリル系ブロック共重合体の製造に用いられる触媒の原料として、更に半導体装置の絶縁皮膜の原料としても有用である2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体を、高純度で、しかも従来法に比し高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法は、次式(1)
【0027】
【化5】

【0028】
(ただし、Rは、水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良い、フェニル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは、六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される化合物(1)と、シクロヘキセン又は水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されたシクロヘキセン誘導体とを反応させることにより、次式(2)
【0029】
【化6】

【0030】
(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは、シクロヘキシル基の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で表される化合物(2)を得る第1工程と、
次いで、得られた化合物(2)を脱水素反応させ、次式(3)
【0031】
【化7】

【0032】
(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体(3)を得る第2工程と、を有することを特徴とする。
【0033】
本発明の製造方法において用いる、式(1)で表される2−アルキルフェノール(以下、これを「原料フェノール」と略記する)としては、2−シクロヘキシルフェノール、2−フェニルフェノール、式(1)中のR,Rで示す六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換された2−シクロヘキシルフェノール誘導体又は2−フェニルフェノール誘導体からなる群から選択される化合物が挙げられる。前記炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。本発明において、特に好ましい前記原料フェノールとしては、2−シクロヘキシルフェノール、2−フェニルフェノールが挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法において、前記原料フェノールとともに用いる、シクロヘキセン又はシクロヘキセン誘導体(以下、これを「原料シクロヘキセン」と略記する)としては、シクロヘキセン、水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されたシクロヘキセン誘導体からなる群から選択される化合物が挙げられる。前記炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。本発明において、特に好ましい前記原料シクロヘキセンとしては、シクロヘキセンが挙げられる。
【0035】
前記第1工程における原料フェノールと原料シクロヘキセンとの使用割合は、特に制限されるものではなく、原料フェノールの使用量が過剰であるほうが生成目的物である式(2)で表される化合物(2)の選択率が向上するが、目的物の生産性を考慮すれば、原料フェノールと原料シクロヘキセンとをモル比で1:1〜10:1の範囲で用いることが望ましい。
【0036】
前記第1工程では、原料フェノールと原料シクロヘキセンとを、触媒、好ましくはアルミニウム系触媒の存在下、160℃から210℃までの温度で反応させ、式(2)で表される化合物(2)を製造する。この時の反応温度は170℃から210℃までとすることがより好ましい。反応温度が210℃以上であると、副反応による高沸点物の割合が増加し、化合物(2)の収率が低下する。また反応温度が160℃以下であると、反応速度が極端に遅くなるため、経済的でない。
【0037】
この第1工程において好適に使用されるアルミニウム系触媒は、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムフェノキサイド、アルミニウムクレゾキサイド等のアルミニウムアリールオキサイド、アルミニウムモノメチルジクロライド、アルミニウムジメチルモノクロライド、アルミニウムモノエチルジクロライド、アルミニウムジエチルモノクロライド等が挙げられる。これらのアルミニウム系触媒の中でも、特に触媒活性に優れ、また選択性に優れる点から、アルミニウムアリールオキサイドが好ましい。
【0038】
この第1工程において、触媒の使用量は特に制限されるものではないが、原料フェノール及び原料シクロヘキセン、アルミニウム系触媒の総質量に対し1質量%から30質量%の範囲とすることが、触媒の均一性並びに触媒活性の点から好ましい。
【0039】
この第1工程にあっては、過剰量の原料フェノールにアルミニウムを反応させ、原料フェノールと該フェノールのアルミニウム塩との混合として、本発明における第1工程の反応に供することが好ましい。さらに具体的には、原料フェノールと、アルミニウムを150℃から250℃の温度条件下で反応させて、アルミニウムアリールオキサイドを含有する2−アルキルフェノール溶液とすることができる。ここでアルミニウムの使用量としては、特に制限されるものではないが、原料フェノールに対しアルミニウムとして10%以下、好ましくは0.5%から5%である。
【0040】
反応終了後は、次亜リン酸と亜リン酸二水素ナトリウムの混合水溶液でアルミニウム系触媒を分解し、析出したアルミ残渣をろ過により除去する。次いで減圧下の蒸留操作により容易に高純度の式(2)で表される化合物(2)を取り出すことが可能であり、未反応の原料フェノールの回収も容易である。
【0041】
前記第1工程で製造された前記式(2)(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは、シクロヘキシル基の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で表される化合物(2)は、次いでパラジウムまたは白金触媒の存在下、脱水素反応させる第2工程を行って、前記式(3)(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で表される2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体(3)を製造する。
【0042】
この第2工程で用いる触媒は、パラジウムまたは白金を担体に担持させた触媒を使用でき、その担体としては活性炭、アルミナ等が挙げられる。またそれらを塩基、硫黄化合物等で添加物処理することも可能である。担体へのパラジウムまたは白金の担持量は1%から20%、好ましくは2%から10%である。これらの触媒の中でも、特に触媒活性に優れ、また選択性に優れる点からパラジウム活性炭、より好ましくはそれらを硫黄化合物で処理したものが好ましい。
【0043】
この触媒の使用量は、反応原料に対して質量比で0.1%〜10%、好ましくは1%から5%である。因みに11%以上使用しても使用量に比例した効果が得られないことから、経済的でない。また0.1%未満になると反応効率が低下するという問題がある。
【0044】
この第2工程の脱水素反応のための反応温度は、240℃から400℃までの範囲とし、好ましくは280℃から340℃までの範囲である。因みに400℃を超えると副反応によりm−ターフェニルなどの割合が増加し、また240℃以下だと反応の進行が極端に遅くなるという問題がある。不純物の生成を抑えて、反応速度を適性に保つことを考えると280℃から340℃が好ましい温度である。
【0045】
この第2工程において、脱水素反応させた後の反応混合物は、有機溶媒で希釈後、触媒を除去し、冷却により結晶を析出させることで、高純度の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体(3)を、高い収率で得ることができる。さらに、必要であれば再結晶等により精製を行う。
【0046】
本発明の製造方法の特に好ましい実施形態は、次の条件(a)〜(f)を満たし、反応式(7)に従って2,6−ジフェニルフェノールを製造する場合である。
(a) 式(1)で表される原料フェノールが、反応式(7)中の化合物(4)(ただし、Rは、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)で表される2−シクロヘキシルフェノール又は2−フェニルフェノールであること。
(b) 原料シクロヘキセンが、シクロヘキセンであること。
(c) 第1工程で用いる触媒が、アルミニウム系触媒であること。
(d) 式(2)で表される第1工程の反応生成物(化合物(2))が、反応式(7)中の化合物(5)(ただし、Rは、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)で表される2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノールであること。
(e) 化合物(5)を脱水素反応させる第2工程において用いる触媒が、パラジウムまたは白金を担体に担持させた触媒であること。
(f) 式(3)で表される、第2工程の反応生成物(化合物(3))が、反応式(7)中の化合物(6)で表される2,6−ジフェニルフェノールであること。
【0047】
【化8】

【0048】
反応式(7)の実施形態において、化合物(4)とシクロヘキセンとを反応させる第1工程での反応温度は、160℃から210℃までの温度とし、170℃から210℃までとすることがより好ましい。
また、第1工程で用いるアルミニウム系触媒としては、例えば、アルミニウムフェノキサイド、アルミニウムクレゾキサイド等のアルミニウムアリールオキサイド、アルミニウムモノメチルジクロライド、アルミニウムジメチルモノクロライド、アルミニウムモノエチルジクロライド、アルミニウムジエチルモノクロライド等が挙げられる。これらのアルミニウム系触媒の中でも、特に触媒活性に優れ、また選択性に優れる点から、アルミニウムアリールオキサイドが好ましい。
反応式(7)の実施形態において、化合物(5)を脱水素反応させる第2工程での反応温度は、240℃から400℃までの範囲とし、好ましくは280℃から340℃までの範囲である。
【0049】
この反応式(7)の実施形態によれば、香料l−メントールの合成前駆体であるl−イソプレゴールを合成する際に使用される触媒の原料として、またアクリル系ブロック共重合体の製造に用いられる触媒の原料として、更に半導体装置の絶縁皮膜の原料としても有用である2,6−ジフェニルフェノールを、高純度で、しかも従来法に比し高収率で得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明に係る実施例1〜17の結果を表1に示し、従来法に係る比較例1〜2の結果を表2に示す。
【0051】
[実施例1]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して1.5時間撹拌し、2−フェニルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を180℃に下げ、シクロヘキセン51.1g(0.63mol)を9時間かけて滴下し、さらに180℃を維持して2時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液8.7gとリン酸二水素ナトリウム0.7gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、その反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下で低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを20.7g回収、中留分を7.8g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを120.9g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は96.7%であった。蒸留釜残は17.7gであった。
【0052】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。反応液を110℃まで冷却し、n−デカン100gで希釈後、触媒をろ過して除去し、冷却再結晶させる事により結晶を析出させ、次いで結晶をろ過、乾燥させて2,6−ジフェニルフェノールを32.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は62.4%であった。
【0053】
[実施例2]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して1.5時間撹拌し、2−フェニルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を200℃に下げ、シクロヘキセン56.6g(0.69mol)を5時間かけて滴下し、さらに200℃を維持して3時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液8.7gとリン酸二水素ナトリウム0.7gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、その反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下で低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを7.1g回収、中留分を17.1g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを117.7g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は95.7%であった。蒸留釜残は31.1gであった。
【0054】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを30.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は52.0%であった。
【0055】
[実施例3]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して1.5時間撹拌し、2−フェニルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を180℃に下げ、シクロヘキセン28.3g(0.35mol)を4時間かけて滴下し、さらに180℃を維持して4時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液8.7gとリン酸二水素ナトリウム0.7gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、その反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下で低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを65.0g回収、中留分を8.3g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを67.8g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は98.6%であった。蒸留釜残は3.8gであった。
【0056】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。反応液を110℃まで冷却し、n−デカン100gで希釈後、触媒をろ過して除去し、冷却再結晶させる事により結晶を析出させ、次いで結晶をろ過、乾燥させて2,6−ジフェニルフェノールを32.2g得た。その純度は99.9%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は63.4%であった。
【0057】
[実施例4]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)の熔融液を70℃に昇温し、エチルアルミニウムジクロライド1mol/Lヘキサン溶液(東京化成工業(株)製)20mlを滴下した。ヘキサンを留去させながら180℃に昇温した後、180℃を維持してシクロヘキセン51.1g(0.63mol)を8時間かけて滴下し、さらに180℃を維持して3時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液9.6gとリン酸二水素ナトリウム0.8gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、この反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下で低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを15.2g回収、中留分を11.0g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを110.1g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は95.7%であった。蒸留釜残は30.2gであった。
【0058】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2,6−ジシクロヘキシルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを29.7g得た。その純度は99.9%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は52.7%であった。
【0059】
[実施例5]
〔2−シクロヘキシルフェノールのアルキル化〕
2−シクロヘキシルフェノール(2−CHP)120g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して2時間撹拌し、2−シクロヘキシルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を180℃に下げ、シクロヘキセン51.1g(0.63mol)を8時間かけて滴下し、さらに180℃を維持して2時間反応させた。
実施例1と同様の操作で精製を行い、未反応2−シクロヘキシルフェノールを21.1g回収し、2,6−ジシクロヘキシルフェノールを120.5g得た。得られた2,6−ジシクロヘキシルフェノールの純度は96.5%であった。
【0060】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2,6−ジシクロヘキシルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを29.0g得た。その純度は99.9%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は56.3%であった。
【0061】
[実施例6]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を300℃で反応させたところ、12時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを27.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は52.6%であった。
【0062】
[実施例7]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−0.2%S−活性炭触媒(5%Pd−0.2%S−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.88g(固形分0.4g)を300℃で反応させたところ、20時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを31.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は60.4%であった。
【0063】
[実施例8]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−0.2%S−活性炭触媒(5%Pd−0.2%S−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.88g(固形分0.4g)を280℃で反応させたところ、50時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを30.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は58.5%であった。
【0064】
[実施例9]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−0.2%S−活性炭触媒(5%Pd−0.2%S−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を300℃で反応させたところ、12時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを32.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は62.4%であった。
【0065】
[実施例10]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%白金−活性炭−塩基処理触媒(5%Pt−C(B))(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)0.42g(固形分0.2g)を300℃で反応させたところ、25時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを28.3g得た。その純度は100.0%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は55.2%であった。
【0066】
[実施例11]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%白金−活性炭−塩基処理触媒(5%Pt−C(B))(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.2g(固形分2.0g)を300℃で反応させたところ、12時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを26.7g得た。その純度は100.0%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は52.0%であった。
【0067】
[実施例12]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して1.5時間撹拌し、2−フェニルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を220℃に保ったまま、シクロヘキセン51.8g(0.63mol)を4時間かけて滴下し、さらに220℃を維持して2時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液8.7gとリン酸二水素ナトリウム0.7gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、この反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下で低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを19.3g回収、中留分を20.2g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを103.8g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は93.5%であった。蒸留釜残は19.4gであった。
【0068】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを29.2g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は48.9%であった。
【0069】
[実施例13]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)を常圧下撹拌しながら220℃に昇温し、粒状アルミニウム0.4gを投入して1.5時間撹拌し、2−フェニルフェノールアルミニウム塩との混合液を調整した。その後液温を150℃に下げ、シクロヘキセン51.1g(0.63mol)を17時間かけて滴下し、さらに150℃を維持して8時間反応させたがシクロヘキセンが十分に消費されなかったので反応を終了させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液8.7gとリン酸二水素ナトリウム0.7gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し触媒を失活させた。
次に、この反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを54.3g回収、中留分を8.3g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを90.2g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は96.3%であった。蒸留釜残は12.9gであった。
【0070】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを32.0g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は46.5%であった。
【0071】
[実施例14]
〔2−フェニルフェノールのアルキル化〕
2−フェニルフェノール(2−PP)117g(0.69mol)の熔融液を70℃に昇温し、エチルアルミニウムジクロライド1mol/Lヘキサン溶液(東京化成工業(株)製)20mlを滴下した。ヘキサンを留去させながら220℃に昇温した後、220℃を維持してシクロヘキセン51.1g(0.63mol)を8時間かけて滴下し、さらに220℃を維持して3時間反応させた。
その反応液を80℃まで冷却し、30%次亜リン酸水溶液9.6gとリン酸二水素ナトリウム0.8gの混合水溶液を滴下後、80℃で1時間熟成し、触媒を失活させた。
次に、この反応液にトルエン40mlを入れ、水を共沸脱水した後、冷却ろ過してアルミニウム塩を除去し、粗2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールのトルエン溶液を得た。
得られた溶液は、20mmHg減圧下低沸点留分の除去及びトルエンの回収を行った後、1mmHgの減圧下、2−フェニルフェノールを15.2g回収、中留分を11.0g留出させ、次いで2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールを101.1g留出させた。得られた2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノールの純度は92.7%であった。蒸留釜残は40.2gであった。
【0072】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを29.7g得た。その純度は99.9%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は48.4%であった。
【0073】
[実施例15]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を360℃で反応させたところ、4時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを24.0g得た。その純度は97.4%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は46.8%であった。
【0074】
[実施例16]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を280℃で反応させたところ、48時間で転化率が90%以上に達した。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを24.3g得た。純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は47.4%であった。
【0075】
[実施例17]
実施例1と同様の操作で得た2−シクロヘキシル−6−フェニルフェノール40g、5%白金−活性炭触媒(5%Pt−C)(川研ファインケミカル(株)製)4.5g(固形分2.0g)を270℃で反応させたところ、7時間で転化率が約80%であった。その後は実施例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを20.9g得た。その純度は99.8%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は40.7%であった。
【0076】
[比較例1]
〔シクロヘキサノン縮合反応〕
シクロヘキサノン152g(1.55mol)と48%水酸化ナトリウム水溶液3.9gを反応器内に仕込んだ後、常圧下で180℃まで昇温させ、次いで180℃を維持して550mmHgの減圧下で脱水を行った。次いで、これを110℃に冷却後、水30gを投入し、水洗後水層を分液除去し、次いで10%食塩水22gを投入し、水洗後水層を分液除去し、粗2,6−ジシクロヘキセニルシクロヘキサノンを得た。20mmHgの減圧下で低沸点留分の除去に続き未反応シクロヘキサノンを7g回収し、次いで1mmHgの減圧下で中間体のシクロヘキセニルシクロヘキサノン等を36g回収し、次いで2,6−ジシクロヘキセニルシクロヘキサノンを59g留出させた。2,6−ジシクロヘキセニルシクロヘキサノンの純度は96.0%であった。
【0077】
〔脱水素反応〕
前段階反応で得た2,6−ジシクロヘキセニルシクロヘキサノン40g、5%パラジウム−活性炭触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.4g(固形分2.0g)を340℃で反応させたところ、6時間で転化率が90%以上に達した。110℃まで冷却後にn−デカン100gで希釈した後、触媒をろ過して除去し、冷却再結晶させる事により結晶を析出させ、結晶をろ過、乾燥させて2,6−ジフェニルフェノールを29.0g得た。得られた結晶の純度は99.8%であった。
また、シクロヘキサノン基準での収率は33.3%であった。
【0078】
[比較例2]
比較例1と同様の操作で得た2,6−ジシクロヘキセニルシクロヘキサノン40g、5%白金−活性炭−塩基処理触媒(5%Pd−C)(エヌ・イー・ケムキャット(株)製)4.2g(固形分2.0g)を300℃で反応させたところ12時間で転化率が90%以上に達した。後は比較例1と同様の操作を行い、2,6−ジフェニルフェノールを27.2g得た。純度は100.0%であった。
また、シクロヘキセン基準での収率は32.8%であった。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
表1に示した本発明に係る実施例1〜17の結果と、表2に記した従来法に係る比較例1〜2の結果を比較すると、本発明に係る実施例1〜17は、従来法である比較例1〜2よりも高い収率で2,6−ジフェニルフェノールを製造できることがわかる。
これらの実施例の中でも、実施例1〜11は、50%以上のより高い収率で2,6−ジフェニルフェノールを製造することができ、特に、実施例1,3,7及び9では、60%以上のさらに高い収率で製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、高純度の2,6−ジフェニルフェノールを従来法に比し高収率で製造する方法として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(1)
【化1】

(ただし、Rは、水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良い、フェニル基又はシクロヘキシル基を表し、Rは、六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される化合物(1)と、シクロヘキセン又は水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されたシクロヘキセン誘導体とを反応させることにより、次式(2)
【化2】

(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは、シクロヘキシル基の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で表される化合物(2)を得る第1工程と、
次いで、得られた化合物(2)を脱水素反応させ、次式(3)
【化3】

(ただし、R及びRは前記定義と同じであり、Rは六員環の水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜4の炭化水素基により置換されていても良いことを表す。)で示される2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体(3)を得る第2工程と、を有することを特徴とする2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程において化合物(1)とシクロヘキセン又はその誘導体とを反応させる際、アルミニウム系触媒を用いることを特徴とする請求項1に記載の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記アルミニウム系触媒がアルミニウムアリールオキサイドであることを特徴とする請求項2に記載の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程において化合物(1)とシクロヘキセン又はその誘導体との反応を160℃から210℃までの温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程において化合物(2)を、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下で脱水素反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記化合物(2)の脱水素反応を、240℃から400℃までの温度範囲で行うことを特徴とする請求項5に記載の2,6−ジフェニルフェノール又はその誘導体の製造方法。
【請求項7】
次の反応式(7)
【化4】

(ただし、Rは、フェニル基又はシクロヘキシル基を表す。)に示す通り、2−アルキルフェノール(4)とシクロヘキセンとをアルミニウム系触媒の存在下で反応させて、2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を製造する第1工程と、
次いで、得られた2−シクロヘキシル−6−アルキルフェノール(5)を、パラジウム触媒又は白金触媒の存在下、脱水素反応させて2,6−ジフェニルフェノール(6)を得る第2工程とを有することを特徴とする2,6−ジフェニルフェノールの製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム系触媒がアルミニウムアリールオキサイドであることを特徴とする請求項7に記載の2,6−ジフェニルフェノールの製造方法。
【請求項9】
前記第1工程において化合物(4)とシクロヘキセンとの反応を160℃から210℃までの温度範囲で行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の2,6−ジフェニルフェノールの製造方法。
【請求項10】
前記化合物(5)の脱水素反応を、240℃から400℃までの温度範囲で行うことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の2,6−ジフェニルフェノールの製造方法。

【公開番号】特開2009−269868(P2009−269868A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122702(P2008−122702)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(391052574)三光株式会社 (16)
【Fターム(参考)】