説明

2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法

【課題】触媒に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性、色調が優れた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記の課題は、チタン化合物と特定のリン化合物を添加することを特徴とする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法により達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色調、熱安定性に優れた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法に関するものである。更に詳しくは、重合時に使用した触媒に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性・色調が改善された2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表されるポリエステルは、その優れた力学特性、熱安定性、耐候性、耐電気絶縁性および耐薬品性を有することから、フィルム、繊維またはボトルなどの成形品として広く使用されている。中でもポリエチレン−2,6−ナフタレートは、優れた力学特性、ガスバリア性、耐電気絶縁性を有しており、フィルムや電子部品素材として好ましく用いられる。
【0003】
一般にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートは、その高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
【0004】
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
【0005】
上記のような背景からアンチモンを含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は埋蔵量も少なく希少価値であることから汎用的に用いることは難しい。
【0006】
この問題に対して重合用触媒としてチタン化合物を用いる検討が盛んに行われている。チタン化合物はアンチモン化合物に比べて触媒活性が高いため、少量の添加で所望の触媒活性を得ることができるため、異物粒子の発生や口金汚れを抑制することができる。しかし、チタン化合物を重合触媒として用いると、その活性の高さゆえに熱分解反応や酸化分解反応などの副反応も促進するため、熱安定性が悪くなりポリマーが黄色く着色するという課題が生じる。ポリマーが黄色味を帯びるということは、商品価値を損なうので好ましくない。かかる問題に対して、チタン化合物とともにリン化合物を添加することでポリマーの熱安定性や色調を向上させる検討が広くなされている。この方法は、リン化合物により高すぎるチタンの活性を抑制して、ポリマーの熱安定性や色調を向上させるというものである。例えば、チタン化合物を触媒として用いるポリエステルの製造方法において、リン化合物としてリン酸や亜リン酸を添加する方法(特許文献1)や、リン化合物としてホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物を添加する方法(特許文献2、3)について明示されている。しかしながら、これらの方法を用いると、確かにポリマーの熱安定性に一定の向上は見られるものの、一定量以上のリン化合物を加えるとチタン化合物の重合活性が抑えられ過ぎて、目標の重合度まで到達しなかったり、重合反応時間が遅延するので結果としてポリマーの色調が悪化するといった問題が発生した。それに対して、チタン化合物とリン化合物のモル比(Ti/P)をある一定の範囲とする方法(特許文献4、特許文献5)が検討されているが、この方法においても、確かにチタン化合物の触媒の失活は防げるものの、ある一定レベル以上の熱安定性や色調のポリエステルを得ることはできない。また、チタン化合物とリン化合物の添加間隔を離す方法も検討されている(特許文献6)が、重合反応系中においてリン化合物によるチタン化合物の失活が進行してしまい、依然としてリン化合物の添加量が多いときには触媒の失活が起こってしまう。上記の通り、チタン化合物の重合反応活性を損なうことなく、副反応を抑制するという矛盾した課題を解決する必要があった。
【0007】
そこで、本発明では上記課題を改善することについて鋭意検討した結果、チタン系化合物を重合触媒として用いて2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を製造する工程において、特定のリン化合物を添加することにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
【特許文献1】特開平6−100680号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−292657号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−15630号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2005−25630号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2003−113234号(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2004−124067号号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記従来の問題を解消、つまり、触媒に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性、色調が飛躍的に優れた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後、減圧下で重縮合反応してポリエステルを製造する方法において、チタン系化合物を重縮合触媒として用い、かつポリエステルを製造するまでの間に下記式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加することを特徴とする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法により達成できる。
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式1〜式3中、R〜Rは、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表しており、a,bは0〜5の整数、mは0または1。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の、チタン化合物の存在下に重縮合させて2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を得る方法において、式1〜式3で表されるリン化合物を添加することで、従来品に比べて飛躍的に色調と熱安定性が向上した2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を得ることができる。この2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、フィルム用、ボトル用等の成形体の製造において、触媒起因の異物粒子の析出、色調悪化、口金汚れ、濾圧上昇等の問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、80重量%以上、好ましくは85重量%以上が2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂からなるものであり、2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂以外の他の樹脂を、混合したものであっても良い。また、本発明における2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂とは、2,6−エチレンナフタレート成分を主たる繰返し単位とするポリエステルである。なおここでいう主たる繰り返し単位とは、全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは85モル%以上を意味する。2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂が2,6−エチレンナフタレート成分以外の第3成分を共重合したものである場合、第3成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の如き2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の如き脂環族ジカルボン酸、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコールが例示でき、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後、重縮合させ合成されるものである。
【0015】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法は、リン化合物として式1〜式3で表されるリン化合物を任意の時点で添加することが必須である。
【0016】
チタン化合物の存在下に重縮合させて2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を得る方法において、式1〜式3で表されるリン化合物を添加すると、驚くべきことに、得られるポリマーの色調と熱安定性が飛躍的に改善される。ポリエステルの着色や熱安定性の悪化は、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社、初版、P.178〜198)に明示されているように、ポリエステル重合の副反応によって起こる。このポリエステルの副反応は、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることにより、ビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生する。このような副反応を契機としてポリマーが黄色に着色し、また、アルデヒド成分が発生するために、主鎖エステル結合が切断されるため、熱安定性が劣ったポリマーとなる。特にチタン化合物を重合触媒として用いると、熱による副反応の活性化が強いために、ビニル末端基成分やアルデヒド成分が多く発生し、黄色に着色した熱安定性が劣ったポリマーとなる。従来のリン化合物は、このチタン化合物にリン化合物を適度に相互作用させることにより、チタン触媒の活性を調節していた。しかし従来のリン化合物では、チタン化合物の副反応の活性とともに重合活性も低下させることは避けられなかった。ところが、本発明の式1〜式3に示されるリン化合物では、チタン化合物の重合活性を十分に保持したままに、副反応活性のみを極めて小さく抑えることができる。この効果のメカニズムは現在のところ完全には明らかになっていないが、これは従来のリン化合物のチタン化合物への効果とは、本質的に異なったもの、あるいは少なくとも従来のリン化合物では十分に達成し得なかったものである。
【0017】
式1で表されるリン化合物としては、具体的には、フェニルホスホナイト、2−カルボキシフェニルホスホナイト、3−カルボキシフェニルホスホナイト、4−カルボキシフェニルホスホナイト、2,3−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,6−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、フェニルホスホナイトジメチル、フェニルホスホナイトジエチル、フェニルホスホナイトジフェニル、フェニルホスホナイトジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホナイトジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホナイトジエチル等のホスホン酸系化合物、フェニルホスホネート、2−カルボキシフェニルホスホネート、3−カルボキシフェニルホスホネート、4−カルボキシフェニルホスホネート、2,3−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,6−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、フェニルホスホネートジメチル、フェニルホスホネートジエチル、フェニルホスホネートジフェニル、フェニルホスホネートジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホネートジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホネートジエチル等の亜ホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0018】
式2で表されるリン化合物としては、具体的には、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−ホスホナイトなどのホスホン酸系化合物、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−ホスホネートなどの亜ホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0019】
式3で表されるリン化合物としては、具体的には、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイトなどの亜ホスホン酸系化合物、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネートなどの亜ホスホン酸系化合物などが挙げられる。
【0020】
中でも、式4で表されるリン化合物を用いると、リン化合物の熱安定性や耐加水分解性が高いため好ましく使用される。
【0021】
【化2】

【0022】
(上記式4中、R〜R11は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表しており、c+d+eは0〜5の整数、mは0または1である。)
上記式4にて表されるリン化合物としては、例えばc=2、d=0、e=0、R=tert−ブチル基、R=2,4位、m=0の化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、c=2、d=1、e=0、R=tert−ブチル基、R10=メチル基、R=2,4位、R10=5位、m=0の化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどが挙げられる。
【0023】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法に用いられるリン化合物は、リン化合物を単独で添加してもよく、ジオール成分に溶解させた状態または分散させて添加してもよい。
【0024】
本発明のポリエステルの製造方法は、艶消し剤の目的で添加する酸化チタン粒子をのぞくチタン化合物を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で1〜30ppmとなるように添加することが好ましい。3〜25ppmであると触媒起因の異物粒子の析出がほとんどなく、またポリマーの熱安定性や色調がより良好となり好ましい。更に好ましくは5〜20ppmである。また、本発明のポリエステルの製造方法は、チタン化合物と共にリン化合物をポリエステルに対してリン原子換算で1〜500ppmとなるように添加することが好ましい。なお、製糸や製膜時におけるポリエステルの熱安定性や色調の観点からリン添加量は、5〜250ppmが好ましく、さらに好ましくは10〜100ppmである。また、チタン化合物のチタン原子はリン化合物中のリン原子としてモル比率でTi/P=0.01〜1.5であるとポリエステルの熱安定性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.03〜0.75であり、さらに好ましくはTi/P=0.05〜0.5である。
【0025】
マグネシウム化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加すると、反応活性やポリマーの色調が良好となり好ましい。マグネシウム化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種は、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルトのポリエステルに対する原子換算の合計として1〜100ppmとなるように添加すると好ましい。マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルトのポリエステルに対する原子換算の合計が1ppm未満では効果が十分でなく、100ppmを超えるとでは熱安定性、色調の改善が十分ではない。より好ましくは、3〜75ppm、特に好ましくは5〜50ppmである。この時、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルトの原子換算の合計とリン化合物のリン原子のモル比率(Mg+Mn+Ca+Co)/Pが0.01〜5であることが、色調、熱安定性の面から好ましい。より好ましくは、0.1〜4であり、さらに好ましくは、0.3〜3である。特にマグネシウムのポリエステルに対する原子換算量が5〜25ppm、また、マグネシウムの原子換算の合計とリン化合物のリン原子のモル比率Mg/Pが0.3〜3である時、色調、熱安定性共に良好である。この場合に用いるマグネシウム化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。マンガン化合物としては、具体的には、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン等が挙げられる。カルシウム化合物としては、具体的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。コバルト化合物としては、具体的には、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。この中でも、色調、重合活性の面からマグネシウム化合物が好ましく、特に酢酸マグネシウムが好ましい。
【0026】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法において、重合用触媒のチタン化合物は、多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または含窒素カルボン酸がキレート剤とするチタン錯体であることが、触媒に起因する異物析出抑制、ポリマーの熱安定性及び色調の観点から好ましい。チタン化合物のキレート剤としては、多価カルボン酸として、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトライミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても併用して用いてもよい。
【0027】
なお、本発明で用いられる重縮合触媒とは、一般にジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体からポリエステルを合成する一連の反応である、(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応、あるいは(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応、および(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られた低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応、の少なくとも一つの反応促進に寄与する効果を持っているものを指す。従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の重縮合触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
【0028】
本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法においては、重合用触媒や添加物はポリエステルの反応系にそのまま添加してもよいが、予め該化合物をエチレングリコールやプロピレングリコール等のポリエステルを形成するジオール成分を含む溶媒と混合し、溶液またはスラリーとし、必要に応じて該化合物合成時に用いたアルコール等の低沸点成分を除去した後、反応系に添加すると、ポリマー中での異物生成がより抑制されるため好ましい。添加時期は、エステル化反応触媒やエステル交換反応触媒として原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて触媒を添加する方法がある。重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。チタン化合物、リン化合物、およびマグネシウム化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物、コバルト化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の反応系への添加順序は特に限ったものではない。
【0029】
また本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法において、式1〜式3で表されるリン化合物の添加を、重縮合触媒を添加した後に反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてから重合が目標とする重合度に到達するまでの間に行うことにより、色調が良好でかつ熱安定性に優れた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物が得られる。上記の方法でリン化合物を添加する場合では、エチレングリコール等のジオール成分を多量に持ち込んで添加を行うと、ポリエステルの解重合(ポリエステル主鎖の切断反応)が進行してしまうため、リン化合物を単独で添加するか、高濃度にリンを含有したマスターペレットを添加する方法が好ましい。この時、リン化合物は、数回に分割して添加してもよく、フィーダーなどで継続的に添加を行っても良い。また、上記のリン化合物の添加方法は、重合系に溶解又は溶融可能でありかつ、本発明で得られる重合体と実質的に同一成分の重合体から成る容器に充填して添加することが好ましい。上記のような容器にリン化合物を入れて添加を行うと、減圧条件下での重合反応器に添加を行うことで、リン化合物が飛散して、減圧ラインにリン化合物が流出を防止することができるとともに、リン化合物をポリマー中に所望量添加することができる。本発明でいう容器とは、リン化合物がまとめられるものであればよく、例えば、ふたや栓を有する射出成形容器、あるいはシートやフィルムをシールあるいは縫製などで袋状にしたものなどが含まれる。上記の容器は、空気抜きを作ることがさらに好ましい。空気抜きを作った容器にリン化合物を入れて添加すると、真空条件下で重合反応器に添加しても、空気膨張により容器が破裂してリン化合物が減圧ラインに流出したり、重合反応器の上部や壁面に付着することがなく、ポリマー中にリン化合物を所望量添加することができる。この容器の厚さは、厚すぎると溶解、溶融時間が長くかかるため厚さは薄いほうがよいが、リン化合物の封入・添加作業の際に破裂しない程度の厚さを確保する。そのためには10〜500μm厚さで均一で偏肉のないものが好ましい。特に、重合反応器内の減圧を開始する前に式1〜式3のリン化合物を、得られるポリエステルに対してリン原子換算で0〜50ppm添加し、かつ重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に式1〜式3のリン化合物を、得られるポリエステルに対して10〜500ppm添加すると、色調が特に良好でかつ重合遅延を極めて小さくすることができる。またリン化合物を添加する方法としてはその他にも、式1〜式3で表されるリン化合物を、重縮合反応終了後のポリエステルに二軸押出機で溶融混練する方法、高濃度にリンを含有したマスターペレットを二軸押出機で溶融混練する方法などが挙げられる。
【0030】
また、本発明の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法では、色調調整剤として青系調整剤および/または赤系調整剤を添加してもよい。
【0031】
本発明の色調調整剤とは樹脂等に用いられる染料のことであり、COLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 122,SOLVENT BLUE 45等の青系の色調調整剤、SOLVENT RED 111,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,PIGMENT RED 263,VAT RED 41等の赤系の色調調整剤,DESPERSE VIOLET 26,SOLVENT VIOLET 13,SOLVENT VIOLET 37,SOLVENT VIOLET 49等の紫系色調調整剤があげられる。なかでも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での熱安定性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104,SOLVENT BLUE 45,SOLVENT RED 179,SOLVENT RED 195,SOLVENT RED 135,SOLVENT VIOLET 49が好ましく用いられる。
【0032】
本発明の製造方法により得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、オルソクロロフェノールを溶媒として35℃で測定したときの固有粘度([η])が、0.4〜0.8dlg−1であると、成型加工品の強度とポリマー製造に要する経済性のバランスが良く好ましい。0.5〜0.7dlg−1であるのがさらに好ましい。
【0033】
本発明の製造方法により得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、チップ形状での色調がハンター値でそれぞれL値が60〜95、b値が−3〜7の範囲にあることが、成型品の色調の点から好ましい。さらに好ましいのは、L値が65〜90、b値が0〜5の範囲である。
【0034】
本発明の製造方法により得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下で290℃で60分間の溶融熱処理によって変化する固有粘度の変化が、0.01〜0.15の範囲であることが、溶融成型後の強度を維持出来るため好ましい。より好ましくは0.01〜0.10の範囲であり、特に好ましくは0.01〜0.07である。
【0035】
本発明の製造方法により得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物は、例えば溶融成形等によってフィルムとして有用なものとなる。この時、フィルムの製膜工程あるいはその後のフィルムの加工工程での取り扱い性を向上させるために、平均粒径0.03〜5.0μmの不活性粒子を滑剤として0.05〜5.0重量%程度添加することが好ましい。透明性を維持する点からは、添加する不活性粒子は粒径の小さいものが好ましいが、平均粒径が小さすぎても不活性粒子が凝集しやすくなるので、平均粒径は0.05〜0.5μmであることが好ましい。添加する不活性粒子としては、コロイダルシリカ、多孔質シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、カオリン、複合酸化物粒子、架橋ポリスチレン、アクリル系架橋粒子、メタクリル系架橋粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。また、フィルム、繊維、ボトルなど各成形品の要求に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、可塑剤、色相改良剤、核剤、紫外線吸収剤などの各種機能剤を加えてもよい。
【0036】
本発明により得られる2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物をポリエステルフィルムに製造する方法は特に制限されないが、例えば、以下の方法で製造できる。まず、乾燥した2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を、融点〜融点+70℃の温度範囲でシート状に回転冷却ドラム上に溶融押出し、急冷固化して未延伸フィルム(シート)を得る。次いで、該未延伸フィルムを縦方向(フィルムの製膜方向)に延伸した後、横方向(フィルムの製膜方向および厚み方向に直交する方向で、フィルムの巾方向と称することもある。)に延伸する、いわゆる、縦・横逐次二軸延伸法(縦方向と横方向の延伸の順序は逆でもよく、また、さらに縦方向または横方向に再度延伸するものでもよい。)、または、縦方向と横方向に同時に延伸する、いわゆる、同時二軸延伸法で延伸する。この際の延伸温度は70〜180℃の範囲が好ましく、また、延伸倍率は面積延伸倍率で9〜35倍の範囲が好ましい。このポリエステルフィルムは、粒子径1μm以上の凝集粒子の個数が200個/mm以下であるとフィルム表面の平坦性を向上させるため好ましい。より好ましくは100個/mm以下である。
【実施例】
【0037】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として35℃で測定した。
(2)ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値として測定した。
(3)ポリマーの熱安定性
150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下で290℃で60分間の溶融熱処理を行ったサンプルの固有粘度を測定し、熱処理を行う前の固有粘度から熱処理を行った後の固有粘度を引いた値を算出した。
(4)フィルム中の凝集粒子数
フィルムを走査型電子務徴鏡用試料台に固定し、エイコーエンジニアリング(株)製スパッターリング装置(1B−2型イオンコーター装置)を用いてフィルム表面に下記条件にてイオンエッチング処理を施す。条件は、シリンダージャー内に試料を設置し、約6.65Pa(5×10-2Torr)の真空状態まで真空度を上げ、電圧0.45kV、電流5mAにて約15分間イオンエッチングを実施する。更に同装置にてフィルム表面に金スパッターを施し、走査型電子縮微鏡(株式会社日立製作所製 S3100)にて5000倍における視野範囲を観察し、面積から求めた円換算の粒径が1μm以上の凝集粒子数をカウントした。
【0038】
実施例1
2,6−ジメチルナフタレート10kgとエチレングリコール6kgの混合物にポリマーに対してチタン原子換算で15ppm相当のクエン酸キレートチタン化合物を加圧反応が可能なSUS(ステンレス)製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、ポリマーに対して483ppm(リン原子換算で25ppm)相当のテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製)を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0039】
その後得られたエステル交換反応生成物を重縮合槽に移し、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクの85%となった時点で、反応缶上部より、ポリマーに対して483ppm(リン原子換算で25ppm)相当のテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製)を、厚さ0.2mmの2,6−ポリエチレンナフタレートボトルに詰めて後添加した。その後反応を継続し、所定の攪拌トルク(目標とする重合度をIV=0.62とした)に到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてペレット状の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物を得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間47分であった。
【0040】
得られたペレットを、150℃で15時間真空乾燥した後、ペレットを280℃で溶融状態とし、回転しているキャスティングドラムに溶融状態のポリエチレン−2,6−ナフタレート組成物を押出して、シート状物を得た。なお、キャスティングドラムは溶融物がキャストされる直前の表面温度が30℃で、その後表面温度は徐々に40℃まで上がっており、また、キャスティングドラムに溶融物がキャストされた直後に、シート状物のキャスティングドラムとは異なる側の位置に、ワイヤー状の電極があり、該電極によってシート状物を静電印加させ、キャスティングドラムに密着させている。このシート状物を135℃で縦方向に3.6倍、155℃で横方向に3.9倍に延伸し、その後230℃で5秒間熱固定処理して二軸配向2,6−ポリエチレンナフタレートフィルムを得た。
【0041】
2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物及びこれを用いて得られたフィルムの特性を表1に示す。得られたポリマーは、色調、熱安定性に優れたものであり、また得られたフィルムは凝集異物が少なかった。
【0042】
実施例2〜8
リン化合物を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、実施例7,8では若干熱安定性が悪かったが、その以外の水準では、色調、熱安定性に優れていた。また得られたフィルムは凝集異物が少なかった。
【0043】
実施例9〜11
チタン化合物を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調、熱安定性ともに良好であった。また、得られたフィルムは凝集異物が少なかった。
【0044】
実施例12
実施例1で重合中に添加していたリン化合物の添加を、エステル交換反応終了後に添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合時間が長くなり、得られたポリマーの色調はやや黄色味を帯びていたが、熱安定性は良好であった。また、得られたフィルムは凝集異物が少なかった。
【0045】
実施例13〜16
リン化合物の添加量を変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、実施例13,14ではやや黄色味を帯びており、またやや熱安定性が悪かったが、その以外の水準では、色調、熱安定性に優れていた。また得られたフィルムは、若干凝集異物が見られたが操業上全く問題のないレベルであった。
【0046】
実施例17〜20
チタン化合物の添加量を変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、実施例18〜20では若干色調が黄色味を帯びており、また実施例19、20ではやや熱安定性が悪かった。また得られたフィルムは、実施例19、20では、若干凝集異物が見られたが操業上全く問題のないレベルであった。
実施例21〜22
目標とする重合度を変更した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調、熱安定性ともに良好であった。また、得られたフィルムは凝集異物が少なかった。
実施例23
実施例1で重合中に添加していたリン化合物の添加を、重縮合反応後、ベント式2軸押出機において温度290℃滞留時間5分となるよう溶融混練添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。重合時間は短縮されたが、得られたポリマーの色調はやや黄色味を帯びていたが、熱安定性は良好であった。また、得られたフィルムは、若干凝集異物が見られたが操業上全く問題のないレベルであった。
【0047】
【表1】

【0048】
比較例1
リン化合物を添加しない以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。
【0049】
比較例2〜3
リン化合物として、リン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0050】
比較例4
リン化合物として、ホスホン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0051】
比較例5〜6
リン化合物として、ホスフィン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0052】
比較例7〜8
リン化合物として、ホスフィンオキサイド系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0053】
比較例9〜10
リン化合物として、亜リン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0054】
比較例11
リン化合物として、式1で示される構造を取らない亜ホスホン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0055】
比較例12〜13
リン化合物として、亜ホスフィン酸系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0056】
比較例14〜15
リン化合物として、ホスフィン系化合物を添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、色調は黄色味が強く、また熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0057】
比較例16
重縮合触媒として、チタン化合物の代わりにアンチモン化合物の酸化アンチモンを添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたポリマーは、熱安定性が劣っていた。また得られたフィルムは、凝集異物が多く見られた。
【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後、減圧下で重縮合反応してポリエステルを製造する方法において、チタン系化合物を重縮合触媒として用い、かつポリエステルを製造するまでの間に下記式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加することを特徴とする2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【化1】

(上記式1〜式3中、R〜Rは、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜20の炭化水素基を表しており、a,bは0〜5の整数、mは0または1。)
【請求項2】
チタン系化合物のチタン原子と式1〜式3で表されるリン化合物中のリン原子のモル比率Ti/Pが0.01〜1.5であることを特徴とする請求項1記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
リン化合物が式4で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【化2】

(上記式4中、R〜R11は、それぞれ独立に、水酸基または炭素数1〜10の炭化水素基を表しており、c+d+eは0〜5の整数、mは0または1である。)
【請求項4】
チタン系化合物が、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つをキレート剤とするチタン錯体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
リン化合物の添加が、重合反応器内の減圧を開始する前に得られるポリエステルに対してリン原子換算で0〜50ppm、かつ重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に得られるポリエステルに対して10〜500ppm添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
リン化合物の添加が、ポリエステルが目標とする重合度に到達した後、ポリエステルに対して10〜1000ppm溶融混練しながら添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の方法により得られた2,6−ポリエチレンナフタレート樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項8】
粒子径1μm以上の凝集粒子の個数が200個/mm以下であることを特徴とする請求項7記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−108280(P2009−108280A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284812(P2007−284812)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】