説明

3−アルキル−4,4’−ビフェノールの製造方法及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物の製造方法

【課 題】高耐熱性かつ良成形性をもつ、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂原料、液晶表示素子、及びフォトレジスト等の高機能化合物原料等の用途に有用である3-アルキル-4,4’-ビフェノール及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物を工業的に容易に、高純度、高収率で得ることのできる製造方法の提供。
【解決手段】4,4’-ビフェノールに、2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノール又は3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの混合物を得、次いで混合物のアミノアルキル基を水素化触媒下に水素化分解して目的物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アルキル−4,4’−ビフェノールの製造方法及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物の製造方法に関する。
本発明は、さらに詳しくは、高耐熱性かつ良成形性をもつ、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂原料、液晶表示素子、及びフォトレジスト等の高機能化合物原料等として有用である3-アルキル-4,4’-ビフェノール及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとのモル比10〜95/90〜5の混合物を工業的に容易に、高純度、かつ高収率で得ることのできる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルキル置換-4,4’-ビフェノールの製造方法としては、例えば、特開平2−196745号公報に、2-メチル-6-ターシャリーブチルフェノールを原料とし、これを遷移金属化合物の存在下に、乾燥空気で酸化二量化させて、3,3’−ジメチル-5,5’-ジターシャリーブチル−4,4’-ビフェノールを得、次いで、芳香族溶媒中、p−トルエンスルホン酸の存在下に加熱還流することによりターシャリーブチル基を脱離除去して、3,3’−ジメチル−4,4’-ビフェノールを製造する方法が開示されている。
しかしながら、この方法によれば、マンガン等の有害な触媒の使用や、高温下での空気酸化二量化、高温下でのパラトルエンスルホン酸による脱ブチル化等の工業的に難易度の高い操作が必要であり、またそのための特別な装置も必要とする。さらに、目的物であるアルキル置換-4,4’-ビフェノールの収率も、2-メチル-6-ターシャリーブチルフェノールに対して30モル%以下であり、経済性が低く工業的に有利な製造方法ではない。
また、技術文献ZHIDKIE KRYSTALLY(119〜125、1977)には、3−メチル−4,4’−ベンジジンを合成し、これを3−メチル−4,4’−ビフェノールとする製造方法が記載されている。しかしながら、ベンジジン類は毒性が強い理由で取り扱いが難しく工業的に有利な製造方法ではない。
【0003】
【特許文献1】特開平2−196745号公報
【非特許文献1】ZHIDKIE KRYSTALLY(119〜125、1977)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、アルキル置換-4,4’-ビフェノールの製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、工業的に容易に入手し得る原料を用いると共に、工業的に実施の容易な反応条件下に反応を行って、アルキル置換-4,4’-ビフェノール、特に3−アルキル−4,4’−ビフェノールを高収率、高純度で製造する方法を提供することにある。更にまた、本発明は、前記3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物を高収率、高純度で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、4,4’-ビフェノールに、2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールを得(第一工程)、次いで得られた3-アミノアルキル-4,4’-ビフェノールのアミノアルキル基を水素化触媒の存在下に水素化分解する(第二工程)ことを特徴とする下記一般式(1)で表される3-アルキル-4,4’-ビフェノールの製造方法が提供される。
【0006】
【化3】

一般式(1)
(式中、Rは、炭素原子数1〜3のアルキル基を示す。)
【0007】
更にまた、本発明によれば、4,4’-ビフェノールに2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの混合物を得(第一工程)、次いで得られた3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの混合物のアミノアルキル基を水素化触媒の存在下に水素化分解する(第二工程)ことを特徴とする、上記一般式(1)で表される3−アルキル−4,4’−ビフェノールと下記一般式(2)で表される3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとのモル比10〜95/90〜5の混合物の製造方法が提供される。
【0008】
【化4】

一般式(2)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同一である。)
【0009】
本発明者らは、4,4’-ビフェノールに、2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、アミノアルキル置換-4,4’-ビフェノールを得る上記本発明の製造方法における第一工程の反応で、得られる2つの主な反応生成物の、モノアミノアルキル置換体である3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールとジ(アミノアルキル)置換体である3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールとの反応選択率が、2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比や、反応温度によって大きく異なってくる事を見出し、本発明の製造方法を完成した。
【0010】
即ち、原料4,4’-ビフェノールの反応率は広い温度範囲において、90%以上で良好である。2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比が低いと3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールの選択率が高くなり、モル比が高いと3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールの選択率が低くなり、3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの選択率が高くなる傾向がある。但し、低すぎると4,4’−ビフェノールの反応率や反応速度が低下する。
また、反応温度が低い場合は、3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールが高い反応選択率で生成し、反応温度が高くなるに従って、3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノール生成の反応選択率が大きくなる傾向があるので、例えば上記モル比が2.0以上でかつ反応温度80℃程度以上では、3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの反応選択率がさらに高くなり、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールの選択率はかなり低くなる。
また、反応温度0℃以下でも反応は可能であるが、反応速度が遅く、冷却装置なども必要となり工業的にあまり好ましくない。
従って、本発明の製造方法においては、例えば、第一工程における反応温度が0〜150℃程度で2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比が2〜3程度の範囲において、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールが、通常、モル比10〜95/90〜5程度の混合物として、収率よく得ることができ、上記モル比及び反応温度を変えることにより上記範囲の任意のモル比の混合物を容易に得ることができる。
具体的には、後述の実施例等に比べて、2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比又は/及び反応温度を低くすれば、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールのモル比をより大きくすることができ、逆に2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比又は/及び反応温度を高くすれば、3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールのモル比をより大きくすることができる。
さらに、本発明の製造方法における第二工程の反応においては、モノアミノアルキル置換体である3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールのアミノアルキル置換基及びジアミノアルキル置換体である3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールのアミノアルキル置換基の水素化分解は、共に高い反応選択率、収率で行われるので、通常、第一工程で得られた前記2つの主生成物混合物のモル比が維持されたまま、水素化分解され、3−アルキル-4,4’-ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールの、モル比10〜95/90〜5程度の混合物が得られる。
【0011】
一方また、第一工程の反応において得られた混合物は、例えば、そのまま第二工程の反応原料として用いるか、又は得られた混合物から3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールを分離精製などして純度を上げて第二工程の反応原料として用いて、更に、次の第二工程の反応の後では、得られた反応生成物から3−アルキル-4,4’-ビフェノールを、分離精製することによって、3−アルキル−4,4’−ビフェノールを高純度で得る事ができる。
特に、第一工程における反応温度を0〜50℃程度の範囲とすると、モノアミノアルキル置換体である3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールが高い選択率で生成し、例えば、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールとのモル比が50〜95/50〜5程度の混合物が得られるので、分離精製などの純度向上が容易であり、3−アルキル−4,4’−ビフェノールを高純度、高収率で容易に得る事ができる。
上記第一工程の反応及び第二工程の反応は、例えば、4,4’-ビフェノールにホルムアルデヒドとモルホリンを反応させた場合には、下記反応式で表される。
【0012】
【化5】

〈第一工程〉
【化6】

〈第二工程〉
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の製造方法によれば、3-アルキル-4,4’-ビフェノール及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとのモル比10〜95/90〜5の混合物を、工業的に容易に入手し得る4,4’−ビフェノールを出発原料にして、工業的に実施の容易な反応条件下に反応を行って、高収率、高純度に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の、3−アルキル−4,4’−ビフェノールの製造方法及び3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとのモル比10〜95/90〜5の混合物の製造方法によれば、出発原料として、4,4’-ビフェノールを用いる。
本発明の製造方法において、出発原料である4,4’-ビフェノールの純度は、特に制限はなく、工業製品純度のものでも、あるいはまた、例えば、95%以下80%以上の粗製品純度のものであってもよい。
また、本発明の製造方法によれば、4,4’−ビフェノールに、2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物を得る第一工程と、得られた混合物のアミノアルキル置換基を水素化触媒の存在下に水素化分解する第二工程を順次行って、目的とする3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとのモル比10〜95/90〜5の混合物を得る。また、高純度の3−アルキル−4,4’−ビフェノールを得る場合は、第一工程の反応において得られた混合物を、例えば、そのまま第二工程の反応原料として用いるか、又は得られた混合物から3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールを分離精製などして純度を上げて第二工程の反応原料として用いて、更に、次の第二工程の反応の後では、得られた反応生成物から3−アルキル-4,4’-ビフェノールを、分離精製することによって、3−アルキル−4,4’−ビフェノールを高純度で得る事ができる。
【0015】
上記第一工程の反応においては、用いられる低級アルキルアルデヒドとしては、炭素原子数1〜3の脂肪族アルキルモノアルデヒドであり、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドが挙げられる。好ましくはホルムアルデヒドである。また、ホルムアルデヒドを用いる場合は、35%ホルマリン或いはパラホルムアルデヒドとして用いるのが好ましい。このような低級アルキルアルデヒドは、通常、4,4’-ビフェノール1モルに対して、0.5〜5モル倍、好ましくは1.0〜4モル倍、更に好ましくは1.5〜3モル倍の範囲で用いられる。
本発明の製造方法においては、第一工程の反応に用いられるアルキルアルデヒドのアルキル基に対応して、目的物である、一般式(1)で表される、3-アルキル-4,4’-ビフェノールのアルキル基及び一般式(2)で表される、3,3’-ジアルキル-4,4’-ビフェノールのアルキル基が決定される。従って、アルキルアルデヒドとして、ホルムアルデヒドを用いた場合は、目的物である、一般式(1)で表される、3-アルキル-4,4’-ビフェノールのアルキル基及び一般式(2)で表される、3,3’-ジアルキル-4,4’-ビフェノールのアルキル基はメチル基であり、目的物は3-メチル-4,4’-ビフェノール及び3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノールとなる。
【0016】
同様に、アルキルアルデヒドとして、アセトアルデヒドを用いた場合は、アルキル基はエチル基であり、目的物は3-エチル-4,4’-ビフェノール及び3,3’-ジエチル-4,4’-ビフェノールであり、更に、アルキルアルデヒドとして、プロピオンアルデヒドを用いた場合は、n−プロピル基であり、目的物は3- n−プロピル-4,4’-ビフェノール及び3,3’-ジn−プロピル-4,4’-ビフェノールである。
また、2級アミンとしては、具体的には例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン等の鎖状2級アミン、ピペリジン、ピロリジン、エチレンイミン、モルホリン等の環状2級アミン、ジエタノールアミン等のアルコール性2級アミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-プロピルシクロヘキシルアミン、N-ブチルシクロヘキシルアミン、N-イソプロピルシクロヘキシルアミン、N-イソブチルシクロヘキシルアミン、N-sec-ブチルシクロヘキシルアミン、N-ヘキシルシクロヘキシルアミン、N-2-エチルヘキシルシクロヘキシルアミン等の脂環基含有2級アミン、ジフェニルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N-ブチルアニリン、N-イソプロピルアニリン、N-イソブチルアニリン、N-sec-ブチルアニリン、N-ヘキシルアニリン、N-2-エチルヘキシルアニリン等の芳香族2級アミンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、環状2級アミンであり、特に好ましくは、モルホリンである。
このような2級アミンは、通常4,4’-ビフェノール1モルに対して0.5〜5モル倍、好ましくは1.0〜4モル倍、更に好ましくは1.5〜3モル倍の範囲で用いられる。
【0017】
本発明の製造方法における第一工程の反応において、溶媒は用いても良いし、また用いなくても良い。例えば、反応液に流動性があれば溶媒を用いなくても良い。しかしながら溶媒を用いる場合は、溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールなどの多価アルコール類、水等が挙げられる。原料の4,4’−ビフェノールの溶解度が低くてもアミンとアルデヒドを加えて反応していけば良く、生成した目的物を析出させる溶媒が好ましい。
これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。このような溶媒は通常、4,4’-ビフェノール100重量部に対して、1〜1000重量部、好ましくは100〜500重量部、さらに好ましくは200〜400重量部の範囲で用いられる。
本発明の製造方法における上記第一工程の反応においては、例えば、メタノール等の脂肪族アルコール類溶媒を用いれば、反応終了後、目的物を濾別することなく、そのまま第二工程(水素化分解工程)に用いることができるほか、低温(0〜50℃)での反応においては炭化水素系溶媒よりも反応性がすぐれている。
上記、アミノアルキル化反応(第一工程の反応)においては、原料の添加順序に特に制限はないが、例えば、原料の4,4’-ビフェノールを不活性ガス雰囲気中で、メタノール等の有機溶媒中に添加した後、これに、撹拌下に、2級アミンを添加し、その後、温度を0〜150℃程度に維持して、アルキルアルデヒドを添加して、温度0〜150℃において撹拌下に反応を行うことにより、目的物である3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物を高選択率、高収率で得ることができる。目的物の選択率は、通常、70〜99%程度であり、トリアミノアルキル置換体等の副生物の生成は微乃至少量である。
【0018】
また、本発明の製造方法の第一工程の反応で得られる3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアミノアルキル-4,4’−ビフェノールの混合物は、通常、モル比10〜95/90〜5の混合物として得られる。当該混合物のモル比は、主として反応温度や2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比によって異なるが、例えば、2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比1〜3、温度0〜50℃程度においては、モル比60〜95/40〜5であり、また、例えば、2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比2〜4、温度50〜150℃程度では、モル比10〜60/90〜40である。
従って、本発明の製造方法においては、3-アルキル-4,4’−ビフェノールを目的物とする場合は、第一工程における2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比が1〜3程度で、反応温度を3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールのモル比が高い温度0〜50℃程度、好ましくは10〜40℃程度、特に好ましくは20〜30℃程度とするのが良い。また、3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールの混合物において、3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールのモル比が大きい混合物を収率良く得たい場合は、第一工程における2級アミン及びアルデヒドのビフェノールに対するモル比が3程度で、反応温度を50〜80℃程度、好ましくは60〜70℃程度とするのが良い。
【0019】
上記、第一工程の反応において得られた反応混合物は、そのまま次の第二工程の反応の原料として用いてもよいし、あるいはまた、反応混合物から、再結晶等の公知の方法により、反応生成物である、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物を、分離、精製して高純度品とした後、次の第二工程の反応の原料として用いてもよい。
特に、高純度の3-アルキル-4,4’−ビフェノールを目的物とする場合は、第一工程で得られた3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールとの反応生成混合物中、目的物3-アルキル-4,4’−ビフェノールの中間原料である3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールの純度を上げるために、例えばトルエン等の適宜の再結晶溶媒を用いて再結晶する等の方法により分離精製して、反応生成混合物中の3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールの純度を上げた後、これを次の第二工程の反応原料とするのが好ましく、次の第二工程の反応終了後にのみ、反応終了混合物から目的物の3-アルキル-4,4’−ビフェノールを分離精製する方法よりも、2段階で精製を行うので、高純度化が容易であり、好ましい。
【0020】
本発明の製造方法においては、上記第一工程の反応で得られた3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールのアミノアルキル置換基を、第二工程の反応において、触媒の存在下に水素化分解する。
本発明の製造方法における第二工程の反応においては、モノアミノアルキル置換体である3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールのアミノアルキル置換基とジアミノアルキル置換体である3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールのアミノアルキル置換基の水素化分解は、共に高い反応選択率、収率で行われるので、通常、第二工程の反応の原料として用いられる第一工程で得られた前記混合物のモル比が維持されたまま、水素化分解され、これにより、本発明の目的物である、3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールの混合物が高純度で、収率良く得られる。
得られる混合物の組成は、通常、3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールの合計が80〜100%、未反応のビフェノールやトリアルキル体等の副生物の合計が0〜20%である。上記組成において3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールのモル比は、10〜95/90〜5である。
更にまた、本発明の製造方法の今一つの目的物である高純度の3-アルキル-4,4’−ビフェノールを得るには、第一工程の反応において得られた混合物を、例えば、そのまま次の第二工程の反応原料として用いるか、又は得られた混合物から3−アミノアルキル-4,4’-ビフェノールを分離精製などして純度を上げて第二工程の反応原料として用いて、水素化分解反応を行い、更に、第二工程の反応の後では、得られた反応生成物から3−アルキル-4,4’-ビフェノールを、分離精製することによって、3−アルキル−4,4’−ビフェノールを高純度で収率よく得る事ができる。
【0021】
上記、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールを、水素化触媒の存在下に選択的水素化分解する第二工程の反応において、用いられる水素化触媒としては、従来より知られている水素化触媒を用いることができる。従って、例えば、ラネーニッケル、還元ニッケル、ニッケル担持触媒等のニッケル触媒、ラネーコバルト、還元コバルト、コバルト担持触媒等のコバルト触媒、ラネー銅等の銅触媒、酸化パラジウム、パラジウム黒、カーボン担持パラジウム触媒等のパラジウム触媒、プラチナ黒、カーボン担持プラチナ等のプラチナ触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、クロム触媒、銅クロム触媒等が用いられる。これらのなかでは、特に、パラジウム等の白金族触媒が好ましく、特にパラジウム触媒や、パラジウムとプラチナの混合触媒が好ましく用いられる。
【0022】
また、上記パラジウム触媒としては、具体的には、0.1〜10重量%程度のパラジウム金属をカーボン、アルミナ、活性白土等の担体に担持させたパラジウム担持触媒、助触媒としての酸成分をパラジウム成分と共に担体に担持させた酸成分含有パラジウム触媒、又は触媒成分としてのパラジウム成分を担体に担持させたパラジウム触媒と助触媒として酸成分とを組合わせたもの等、又は塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化トリス−トリフェニルフォスフィンロジウム等の、貴金属錯体触媒等を挙げることができる。本発明において用いられるパラジウム触媒は、その形態において、特に限定されるものではなく、粉末状、錠剤状等の適宜の形態のものが用いられる。
【0023】
本発明によれば、水素化触媒は、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノール100重量部に対して、通常、0.5〜10重量部、好ましくは、1.0〜5.0重量部の範囲で用いられる。
助触媒は、用いなくても良いが、好ましくは、助触媒として酸成分を用いることが好ましく、これらは通常、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノール100重量部に対して、0.01〜100重量部、好ましくは、0.05〜10重量部の範囲で用いられる。上記酸成分としては、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸等の有機酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸等の鉱酸が挙げられる。
このような水素化触媒の存在下、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールの選択的水素化分解を行うに際しては、系内を窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで置換した後、水素置換して行うことが望ましい。
【0024】
水素化反応は、通常、20〜180℃、好ましくは、60〜140℃の温度にて、1〜15kg/cm2(ゲージ圧)、好ましくは、2〜10kg/cm2(ゲージ圧)の水素圧の下、行なわれる。好ましくは、系内に水素を補充して、系内の水素圧を一定に保ちながら反応を行い、系内における水素の吸収が止んだ時点で反応を終了すればよい。反応時間は、通常、0.5〜20時間、好ましくは、2〜15時間の範囲である。
上記水素化反応に際して、溶媒は、必要に応じて用いても良い。溶媒を用いる場合、溶媒としては、水、アルコール、エステル、炭化水素、エーテル又は酢酸等の有機酸等、あるいはモルホリン等の有機アミン等が用いられる。
上記水素化反応工程においては、反応に際し、溶媒として有機酸又はアルコールを用いると、反応の選択性を高めることができ、しかも出発原料や生成目的物がこれらの溶媒に溶解しやすいので、反応操作に都合も良く、好ましい。
【0025】
このような溶媒としては、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール等の脂肪族アルコールを挙げることができる。これらのなかでは、特に酢酸等の低級飽和脂肪族カルボン酸、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一級飽和脂肪族アルコールが好ましく用いられる。これらの溶媒は、単独で、又は2種以上を組合わせて用いられる。
【0026】
このような溶媒は、通常、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノール100重量部に対して、50〜1000重量部、好ましくは、100〜300重量部の範囲で用いられる。
上記第二工程の水素化分解反応は、例えば、オートクレーブ中、第一工程で得られた、3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジ(アミノアルキル)-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アミノアルキル-4,4’−ビフェノール、溶媒及び水素化触媒を仕込み、温度90〜130℃において、容器内を1.0MPa程度の水素圧に保ちつつ、反応を行うことにより、3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールの混合物又は3-アルキル-4,4’−ビフェノールを得ることができる。反応の選択率は、通常90〜100%程度である。
【0027】
反応終了後、本発明の製造方法の目的物である、高純度の3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールとの混合物を得るには、前記で得られた反応混合物から、常法に従って、触媒を分離した後、必要に応じて、触媒を分離した反応液から、溶媒及び水素化分解反応で生成した2級アミンを、常圧又は減圧下に蒸留した後、残留反応液に晶析溶媒を加え、目的物の結晶を析出させ、その後、濾過等の方法によって目的物の高純度品を得るか、あるいはまた、触媒を分離した反応液から、溶媒を常圧又は減圧下に蒸留して除去した後、晶析溶剤を加えるかして、同時に、酢酸水等の酸を加えて脱離2級アミン塩基を中和した後、水層を分離し、得られた有機層から、目的物の結晶を析出させ、その後濾過等の方法によって、目的物の3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールとの混合物を分離、精製して、高純度品を得ることができる。また、前記混合物を晶析精製する場合に用いられる溶媒としては、例えば、トルエンのような芳香族炭化水素やメタノールのような低級脂肪族アルコールなどが好ましく用いられる。
本発明の製造方法では、このようにして、4,4’-ビフェノールから出発して、目的とする3-アルキル-4,4’−ビフェノールと3,3’-ジアルキル-4,4’−ビフェノールとの混合物を、通常、約60%又はそれ以上の収率、80%以上の純度で得ることができる。
【0028】
一方、本発明の製造方法の今ひとつの目的物である高純度の3-アルキル-4,4’−ビフェノールを得るには、反応終了後、前記で得られた反応混合物から、常法に従って、触媒を分離した後、必要に応じて、触媒を分離した反応液から、溶媒及び水素化分解反応で生成した2級アミンを、常圧又は減圧下に蒸留した後、残留反応液に晶析溶媒を加え、目的物の結晶を析出させ、その後、濾過等の方法によって目的物の高純度品を得るか、あるいはまた、触媒を分離した反応液から、溶媒を常圧又は減圧下に蒸留して除去した後、晶析溶剤を加えるかして、同時に、酢酸水等の酸を加えて脱離2級アミン塩基を中和した後、水層を分離し、得られた有機層から、目的物の結晶を析出させ、その後濾過等の方法によって、目的物の3-アルキル-4,4’−ビフェノールの高純度品を得る事ができる。前記混合物から目的物の3-アルキル-4,4’−ビフェノールを晶析分離精製する場合に用いられる溶媒としては、例えば、トルエンのような芳香族炭化水素やメチルイソブチルケトンのような脂肪族ケトンなどが好ましく用いられる。
本発明の製造方法では、このようにして、4,4’-ビフェノールから出発して、目的とする3-アルキル-4,4’−ビフェノールを、通常、約15%又はそれ以上の収率、80%以上の純度で得ることができる。
更に、本発明の製造法においては、上記の精製工程によって得られた留出液や晶析液からの、濾液に含まれる2級アミン含有液は、そのままあるいは、精留等の処理を行い、精製することで、第一工程の2級アミン原料として再度使うことができるため、2級アミンを循環使用することができる。
【0029】
かくして、本発明によれば、4,4’-ビフェノールに、2級アミン及び低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノール又は3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールとの混合物を得(第一工程)、次いで得られた生成物のアミノアルキル基を水素化触媒の存在下に水素化分解反応(第二工程)に付することによって、目的とする3−アルキル−4,4’−ビフェノール又は3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物を得ることができる。
【実施例1】
【0030】
(3−メチル−4,4’-ビフェノールの製造)
(第一工程)
撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、4,4’-ビフェノール(以下、BPと略称する場合もある)93.0g、メタノール279gを仕込み、25℃でモルホリン130.5gを30分かけて滴下した。その後、内温を20〜21℃に保ちながら35%ホルマリン128.6gを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに内温を23〜28℃に保ち、撹拌下に32時間反応を行った。
反応終了後、反応終了液を高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略称する場合もある)により分析したところ、BP反応率は97.8%、3−モルホリノメチル-4,4’-ビフェノール選択率(対ビフェノール)は65.9%、3,3’-ジ(モルホリノメチル)-4,4’-ビフェノール選択率(対ビフェノール)は26.1%であった。
ついで、反応終了液を徐々に冷却した。23℃まで冷却後、析出していた結晶を濾別し、粗結晶(溶媒付着したもの)を得た。この粗結晶をトルエン溶媒中でスラリーとして、撹拌、洗浄を行った後、濾過、減圧乾燥し、白色結晶の3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール62.5g(HPLCによる純度が89.8%)を得た。
【0031】
(第二工程)
次に、撹拌機、温度計を備えたオートクレーブに、得られた3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール60.0g、メタノール120g及び5%パラジウムカーボン(湿潤品)2.4gを仕込み、25℃で水素を吹き込み置換した。
その後、内温を95℃まで上昇させ、0.9〜1.0MPaを保つように水素を吹き込みながら、5時間撹拌し、さらに内温を110℃まで上昇させ、0.9〜1.0MPaを保つように水素を吹き込みながら、5時間撹拌し、反応を終了した。得られた反応終了液をHPLCにより分析したところ、3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール反応率は98.9%、反応終了液の組成は3−メチル-4,4’-ビフェノールが83.6%、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノールが13.2%であった。
その反応終了液から、触媒を濾別して除去した後、濾液を撹拌機、温度計、留出管を備えた四つ口フラスコに移した。次いで、窒素気流下に昇温してメタノール及びモルホリンを留去した後、これにメチルエチルケトンを添加し、次いで塩酸水で中和して、分液により、水層を取り除いた。得られた油層を水により2回水洗し、その後更に、窒素気流下に昇温してメチルエチルケトンを留去した後トルエンを追加添加した。得られた油層を徐々に22℃まで冷却し、析出してきた結晶を、濾過、乾燥してHPLCによる純度が88.1%の結晶16.5gを得た。
構造解析のため更にトルエンで再結晶、濾過、減圧乾燥を行い、プロトンNMR分析及び質量分析で解析した結果、得られた結晶は3−メチル−4,4’−ビフェノールであることを確認した。
【0032】
分子量(質量分析法) 199(M−H)−
プロトンNMR分析結果(400MHz、重DMSO溶媒)
【0033】
【化7】

【0034】
【表1】

【実施例2】
【0035】
(モノメチルビフェノールとジメチルビフェノールとの混合物の製造)
(第一工程)
撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、4,4’−ビフェノール46.5g及びメタノール150gを仕込み、温度25℃でモルホリン40.2gを50分かけて滴下した。その後、内温を60℃まで上昇させ、60℃を保ちながら35%ホルマリン38.6gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに内温を67〜68℃に保ちながら、撹拌下に33時間反応を行った。
反応終了後、反応終了液をHPLCにより分析したところ、BP反応率は99.4%、3,3’-ジ(モルホリノメチル)−4,4’−ビフェノール選択率(対ビフェノール)は52.5%、3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール選択率(対ビフェノール)は33.3%であった。
【0036】
(第二工程)
撹拌機、温度計を備えたオートクレーブに、上記第一工程で得られた反応液を移液し、5%パラジウムカーボン(湿潤品)3.8gを仕込み、25℃で水素を吹き込み置換した。
内温を110℃まで上昇させ、0.9〜1.0MPaを保つように水素を吹き込みながら、7時間撹拌し、反応を終了した。得られた反応終了液をHPLCにより分析したところ、反応率は100%、反応終了液の組成は3,3’-ジメチル−4,4’−ビフェノールが55.6%、3-メチル−4,4’−ビフェノールが28.0%であった。
その反応終了液から、触媒を濾別して除去した後、濾液を撹拌機、温度計、留出管を備えた四つ口フラスコに移した。窒素気流下に昇温してメタノール及びモルホリンを留去した後、メチルエチルケトンを添加し、次いで塩酸水で中和して、分液により水層を取り除いた。得られた油層を水により2回水洗し、その後更に、窒素気流下に昇温してメチルエチルケトンを留去した後トルエンを追加添加した。次いでこの油層を徐々に15℃まで冷却し、析出してきた結晶を濾過、減圧乾燥し、粉末結晶の3,3’-ジメチル−4,4’−ビフェノールと3-メチル−4,4’−ビフェノールの混合物44.1gを得た。
得られた混合物をHPLCで分析した組成は、3,3’-ジメチル−4,4’−ビフェノール56.1%、3-メチル−4,4’−ビフェノール28.3%であった。
【実施例3】
【0037】
(中間体3−モルホリノメチル−4,4’-ビフェノールの製造)
(第一工程)
撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、4,4’−ビフェノール2.0g、メタノール10gを仕込み、25℃でモルホリン0.8gを滴下した。その後、内温を35℃に保ちながら35%ホルマリン0.77gを滴下した。滴下終了後、さらに内温25〜30℃を保ちながら、撹拌下に56時間反応を行った。
反応終了後、反応終了液をHPLCにより分析したところ、BP反応率は54.4%、3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール選択率(対ビフェノール)は94%であった。
【実施例4】
【0038】
(中間体3−モルホリノメチル−4,4’-ビフェノールの製造)
(第一工程)
撹拌機、温度計、滴下ロートを備えた四つ口フラスコに、4,4’−ビフェノール(BP)2.0g及びメタノール10gを仕込み、25℃でモルホリン2.61gを滴下した。その後、内温を30℃に保ちながら35%ホルマリン2.57gを滴下した。滴下終了後、さらに内温を25〜30℃に保ちながら、撹拌下に24時間反応を行った。
反応終了後、反応終了液をHPLCにより分析したところ、BP反応率は90.9%、3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール選択率(対ビフェノール)は82.4%であった。
【実施例5】
【0039】
撹拌機、温度計、滴下ロート、ディーンスタークを備えた四つ口フラスコに、4,4’−ビフェノール93.0g、トルエン200gを仕込み、25℃でモルホリン95.7gを30分かけて滴下した。その後、内温を80℃まで上昇させ、80℃を保ちながら35%ホルマリン90.0gを1時間かけて滴下した。さらに水を留出させながら110℃まで内温を上昇させ、1時間撹拌を続けて反応を終了した。
その反応終了液をHPLCにより分析したところ、BP反応率は94.4%、3,3’−ジ(モルホリノメチル)−4,4’−ビフェノール(DAM−BP)選択率(対ビフェノール)は75.0%、3−モルホリノメチル−4,4’−ビフェノール(MAM−BP)選択率は13.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4’-ビフェノールに、2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールを得(第一工程)、次いで得られた3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールのアミノアルキル基を水素化触媒の存在下に水素化分解する(第二工程)ことを特徴とする下記一般式(1)で表される3−アルキル−4,4’−ビフェノールの製造方法。
【化1】

一般式(1)
(式中、Rは、炭素原子数1〜3のアルキル基を示す。)
【請求項2】
反応温度が、0〜80℃であることを特徴とする請求項1に記載の3−アルキル−4,4’−ビフェノールの製造方法。
【請求項3】
4,4’-ビフェノールに2級アミンの存在下、低級アルキルアルデヒドを反応させて、3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの混合物を得(第一工程)、次いで得られた3−アミノアルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジ(アミノアルキル)−4,4’−ビフェノールの混合物のアミノアルキル基を水素化触媒の存在下に水素化分解する(第二工程)ことを特徴とする、上記一般式(1)で表される3−アルキル−4,4’−ビフェノールと下記一般式(2)で表される3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物の製造方法。
【化2】

一般式(2)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同一である。)
【請求項4】
3−アルキル−4,4’−ビフェノールと3,3’−ジアルキル−4,4’−ビフェノールとの混合物のモル比が、10〜95/90〜5の混合物である請求項3の製造方法。

【公開番号】特開2007−210952(P2007−210952A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32931(P2006−32931)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】