説明

3−イソクロマノンを調製するためのプロセス

【課題】 化学的プロセスに関し、より詳細には特定の農業製品の製造において有用である3−イソクロマノンを調製するためのプロセスに関する。
【解決手段】 触媒およびヒンダードアミン塩基の存在下で、水および第3級アルコールを含む液体媒体中でo−キシレン−α,α’−ジハライドを一酸化炭素と接触させる工程を包含する、3−イソクロマノンの調製のためのプロセスである。1つの実施形態では、o−キシレン−α,α’−ジハライドがo−キシレン−α,α’−ジクロリドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的プロセスに関し、より詳細には特定の農業製品の製造において有用である3−イソクロマノンを調製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
3−イソクロマノンは周知の化合物であり、その調製のための多くの方法が化学文献に記載される。特に、触媒およびハロゲン化水素捕捉剤の存在下にて有機溶媒中でo−キシレン−α,α’−ジハライド誘導体を一酸化炭素および水と反応させ、続いて酸で処理する工程を包含するプロセスがWO97/00850に記載される。このプロセスにおいて、ハロゲン化水素捕捉剤は、好ましくは無機塩基である。パラジウム触媒カルボニル化反応でのアミンの使用は、J.Org.Chem.[1993]58,1538−45および米国特許第4,713,484号で議論される。しかし、これらの引用文献は、アリルホスフェートおよびアセテートのアルコキシカルボニル化ならびにカルボン酸塩の調製に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
従って、本発明によれば、触媒およびヒンダードアミン塩基(hindered amine base)の存在下にて、水および第3級アルコールを含む液体媒体中で、o−キシレン−α,α’−ジハライドを一酸化炭素と接触させる工程を包含する、3−イソクロマノンの調製のための改良されたプロセスが提供される。
【0004】
o−キシレン−α,α’−ジハライド開始物質は、一般式(I)を有し:
【0005】
【化2】

ここで、Xは塩素、臭素またはヨウ素のようなハロゲン原子であり、特に塩素または臭素である。o−キシレン−α,α’−ジクロリドは、特に好都合な開始物質である。
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)3−イソクロマノンの調製のためのプロセスであって、触媒およびヒンダードアミン塩基の存在下で、水および第3級アルコールを含む液体媒体中でo−キシレン−α,α’−ジハライドを一酸化炭素と接触させる工程を包含する、プロセス。
(項目2)o−キシレン−α,α’−ジハライドがo−キシレン−α,α’−ジクロリドである、項目1に記載のプロセス。
(項目3)前記第3級アルコールが以下の式(II)のアルコールであり:
【化1】


ここで、R1、R2およびR3が、独立してC1-8アルキルであり、該R1、R2およびR3の1つ以上が、必要に応じてフェニル環またはヒドロキシル基で置換され、該ヒドロキシル基が1個の炭素原子に結合され、該炭素原子自体は3つの他の炭素原子に直接結合されている、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)前記第3級アルコールが第3級アミルアルコールまたは第3級ブタノールである、項目3に記載のプロセス。
(項目5)水:第3級アルコールのモル比が1:50〜50:1の範囲内である、項目3または4に記載のプロセス。
(項目6)水:o−キシレン−α,α’−ジハライドのモル比が100:1〜1:1の範囲内である、項目3または4に記載のプロセス。
(項目7)前記アミン塩基が式R123Nのアミンであり、ここで、R1、R2およびR3が独立してC1-10アルキル、C3-6シクロアルキル、アリールまたはアリール(C1-4)アルキルであるか、あるいはR1、R2およびR3の2つまたは3つは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、必要に応じて縮合されそして必要に応じて第2の環窒素原子を含む1つ、2つまたは3つの5、6または7員環の脂環式環を形成する、項目1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目8)アミン塩基:o−キシレン−α,α’−ジハライドのモル比が10:1〜1:1の範囲内にある、項目1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目9)無機塩基が前記アミン塩基とともに使用され、使用される塩基の全体量がo−キシレン−α,α’−ジハライドの1モルあたり少なくとも1モルである、項目1〜7のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目10)前記触媒がパラジウム触媒である、項目1〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目11)前記触媒が前記o−キシレン−α,α’−ジハライドの0.000001〜0.5モル当量の量で存在する、項目1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目12)トリフェニルホスフィン配位子が前記パラジウム触媒とともに使用され、パラジウムに対してリンが1〜200モル当量の範囲である、項目10に記載のプロセス。
(項目13)前記トリフェニルホスフィン配位子およびパラジウム触媒が予備形成された混合物で使用される、項目12に記載のプロセス。
(項目14)相間移動触媒が存在する、項目1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
(項目15)20℃〜200℃の温度で実施される、項目1〜14のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のプロセスは、水および第3級アルコールを含む液体媒体中で実施される。適切な第3級アルコールは、式(II)の一価、二価または多価アルコールであり:
【0007】
【化3】

ここで、R1、R2およびR3は、独立してC1-8アルキル(適切にはC1-6アルキルおよび代表的にはC1-4アルキル)であり、1つ以上のR1、R2およびR3は、必要に応じてフェニル環またはヒドロキシル基によって置換され、ヒドロキシル基は1個の炭素原子に結合され、この炭素原子自体が3つの他の炭素原子に直接結合されている。
【0008】
特に関心があるのは、式(II)の脂肪族の一価および二価の第3級アルコールであり、ここで、R1、R2およびR3は、独立してC1-4アルキルであり、ここでC1-4アルキルとして、メチル、エチル、n−およびイソ−プロピルならびにn−、イソ−、第2級および第3級ブチルが挙げられ、R1、R2およびR3のうちの1つは、炭素原子に結合したヒドロキシル基で必要に応じて置換され、この炭素原子自体は、3つの他の炭素原子に直接結合されている。例は、2−メチルプロパン−2−オール(第3級ブタノール)、2−メチルブタン−2−オール(第3級アミルアルコール)、2,3−ジメチルブタン−2−オール、2−メチルペンタン−2−オール、2−メチルヘキサン−2−オールおよび3−メチルヘキサン−3−オール、2,3−ジメチルブタン−2,3−ジオール(ピナコール)および2,4−ジメチルペンタン−2,4−ジオールである。最も関心があるのは、式(II)の一価アルコールであり、ここで、R1、R2およびR3は、独立してC1-4アルキルである。市販の目的の場合のみ、第3級ブタノールおよび第4級アミルアルコールが好ましい。
【0009】
液体媒体は、通常二相からなり、この反応の少なくとも一部は第3級アルコールの水溶性に依存する。二相が存在する場合、激しい撹拌が所望される。
【0010】
適切には、水:第3級アルコールのモル比は、1:50〜50:1の範囲にあり、好ましくは、1:1〜20:1、そして代表的には1:1〜10:1の範囲にあり、例えば、約2:1〜7:1の範囲にある。
【0011】
通常、o−キシレン−α,α’−ジハライド開始物質の量に対して使用される過剰モルの水が存在する。好ましくは、水:o−キシレン−α,α’−ジハライドのモル比は、100:1〜1:1、代表的には50:1〜4:1の範囲内にあり、例えば、約30:1〜5:1の範囲内にある。
【0012】
一酸化炭素は、通常、大気圧または100気圧までの圧力(例えば、1〜10気圧)のいずれかにおいて、液体媒体中に分散される。選択される圧力は、反応が実施される装置ならびに要求される反応速度および収率に依存する。
【0013】
任意の適切なカルボニル化触媒、特にVIII族(第1、第2および第3トリアド)金属触媒(例えば、パラジウム、コバルトまたは鉄触媒)が、本発明のプロセスにおいて使用され得る。特に適切なのは、パラジウム触媒であり、例えば、パラジウム(0)およびパラジウム(II)触媒であり、これらは水溶性であっても非水溶性であってもよく、炭素、シリカまたは炭酸カルシウム、ポリマーまたは他の不活性固体のようなキャリアに担持されても担持されなくてもよい。担持される触媒は、触媒回収および再利用を容易にするという利点を有する。トリフェニルホスフィンのような配位子は、特定のパラジウム触媒とともに使用され得るか、あるいは水素または別の適切な還元剤によって触媒を予め還元することが有利であり得る。
【0014】
ホスフィン錯体の形態である適切な水溶性パラジウム触媒が、例えば、J.Kijiら、Chem.Lett.,957−960(1988)に記載される。適切な非水溶性パラジウム錯体として、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドおよびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられ、これらはL.Cassarら、J.Organometallic
Chem.,121(1976),C55−56、DE−A−2526046およびX.Huangら、Chem.&Ind.,3Sep1990,548に記載される。パラジウム(II)で触媒されるカルボニル化反応はまた、V.Grushinら、Organometallics,12(5),1890−1901(1993)に議論される。パラジウムブラックの形態で担持されるカルボニル化触媒の使用は、T.Itoら、Bull.Chem.Soc.Japan,48(7),2091−2094(1975)に記載される。パラジウム触媒を活性化させるための可溶性トリフェニルホスフィン配位子の使用は、D.Bergbreiterら、J.Mol.Catalysis,74(1992),409−419に記載される。適切な触媒の代表的な例は、パラジウムクロリド(固体としてまたは塩酸溶液中で、あるいは塩化ナトリウム水溶液として)、ジヒドロテトラクロロパラジウム、ジナトリウムテトラクロロパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウム/炭素、炭酸カルシウム担持パラジウムおよびMontmorilloniteTM担持パラジウムである。他の適切な触媒および配位子(水溶性のものを含む)は、WO97/00850に記載される。この配位子は、パラジウムの1000モル当量までの量で使用され得、適切にはパラジウムの1〜200モル当量の範囲内で、例えば、10〜30モル当量の範囲内で使用され得る。使用されるパラジウム触媒の量は、o−キシレン−α,α’−ジハライドの0.000001〜0.5モル当量の範囲内であり得る。
【0015】
トリフェニルホスフィンのような配位子がパラジウム触媒とともに使用される場合、この配位子は触媒とともに反応混合物に添加され得るか、または触媒−配位子混合物がこの反応における使用のために予備形成され得る。例えば、トリフェニルホスフィンおよびパラジウムクロリド(PdCl2)またはナトリウムクロロパラダイト(Na2PdCl4)の溶解物が凝固され得、反応における使用のために粉末に粉砕され得る。予備形成された触媒−配位子混合物が反応中に一酸化炭素の取り込みを加速し得、収率の利益を提供し得ることが発明された。典型的には、パラジウム対リンのモル比は1:10〜1:30、例えば1:11または1:22である。
【0016】
ヒンダードアミン塩基は、通常、少なくとも2種類の脂肪族(好ましくは、分枝した脂肪族)または環状脂肪族基を有する塩基、あるいは、環状脂肪族もしくは芳香族環中で、N原子がN原子の周りに立体的な嵩高さ(crowding)を導入する様式で置換された塩基である。典型的に、この塩基は、低水溶性であり、約10の共役酸のpKaを有する。従って、この塩基は、ピリジンまたは置換ピリジンのような複素環式芳香族塩基(例えば、2,6−ジメチルピリジン)であり得る。あるいは、この塩基は、十分に立体的に嵩高い場合、第2級アミンであり得る。適切な第2級アミンの例として、2,2,6,6−テトラメチルピぺリジンがある。しかし、好ましくは、これは、式R123Nの第3級アミンであり、ここで、R1、R2およびR3は、独立して、C1-10アルキル(特にC1-6アルキル)C3-6シクロアルキル、アリール(特に、フェニル、およびピリジル)もしくは、アリール(C1-4)アルキル(特に、ベンジル)であるか、あるいはここで、R1、R2およびR3の中で2または3個は、それらと連結する窒素原子と互いに結合して、必要に応じて融合しそして必要に応じて第2環窒素原子を含む、1、2または3個の5−,6−,7−員脂環式環を形成する。
【0017】
アルキル基は、直鎖または分枝鎖であり、そして他に言及がなければ、1〜10個、特に1〜6個、特に1〜4個の炭素原子を含む。例として、メチル、エチル、iso−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。シクロアルキル基は、3〜6個の炭素原子を含み、必要に応じて、C1-6アルキルによって置換される。例として、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシルおよび2−エチルシクロヘキシルが挙げられる。
【0018】
式R123Nの適切な第3級アミンには、例えば、以下が挙げられる:N,N−ジイソプロピルエチルアミン(Hunigの塩基)、N,N−ジメチルアニリン、トリエチルアミン、t−ブチルジメチルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルイソブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、N−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタンまたは2−もしくは4−ジメチルアミノピリジン。
【0019】
通常、o−キシレン−α,α’−ジハライド出発物質の量と比較して使用される、過剰のモルのヒンダードアミン塩基が存在する。好ましくは、アミン:o−キシレン−α,α’−ジハライドのモル比は、10:1〜1:1、代表的に5:1〜2:1、例えば、4:1〜2.5:1の範囲である。しかし、アミン:o−キシレン−α,α’−ジハライドの比を、1:1より低く、さらに約1:100ほど低くに減少させることが可能であり得る。ただし、アルカリ金属水酸化物のような無機塩(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)がさらに使用される。塩基の総量が、o−キシレン−α,α’−ジハライド1mol当たり1mol、および好ましくは、2mol以上で維持しなければならない。
【0020】
このプロセスが2相系で実施される場合、相間移動触媒を含むことが有利であり得る。用語「相間移動触媒」とは、第1相(通常、有機相)に少なくとも部分的に存在するか、または第1相によって浸けられている物質であり、第1相での反応物と、第2相(通常、水相、しかししばしば固相)から第1相に移動する反応物との間の反応を促進する物質を意味する。反応の後、相間移動触媒を、さらなる反応物を移動するために除去する。相間移動触媒については、E.V.Dehmlow in Angewante Chemie(International Edition)13(3)、170(1974)により総説される。他に、Jozef Dockx in Synthesis(1973)、441−456およびC.M.Starks in JACS.、(93)1、1971年1月13日、195−199により総説される。
【0021】
適切にこの相間移動触媒は、好ましくは、有機相に溶解させるために嵩高い有機基(通常、アルキルまたはアラルキル基)を含む、第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム塩である。相間触媒は、テトラアルキルまたはアラルキル(例えば、ベンジル)トリアルキルアンモニウムまたはホスホニウム塩であるのが好ましく、各窒素原子または硫黄原子に付着する炭素原子の総数は、少なくとも4個である。その数が70を超えるものは、ほとんど利点がない。この数が16〜40の範囲内であるのが特に好ましい。
【0022】
第4級アンモニウム塩の例には、以下が挙げられる:テトラメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリブチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(AliquatTM336として入手可能である)、ベンジルジメチルラウリルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびジエイコシルジメチルアンモニウムクロリド。第4級ホスホニウム塩の例には、セチルトリプロピルホスホニウムブロミドおよびトリフェニルエチルホスホニウムブロミドが挙げられる。他の適切であり得る相間移動触媒には、クラウンエーテルおよびポリエチレングリコール改変体が挙げられる。使用される場合、この相間移動触媒は、o−キシレン−α,α’−ジハライドの0.001〜0.5モル当量の範囲の量で存在し得る。
【0023】
このプロセスは、20℃〜120℃、好ましくは、60℃〜100℃、代表的に70℃〜90℃の範囲内、例えば約70℃の任意の適切な温度で実施され得る。
【0024】
反応の完了後、3−イソクロマノンは水性塩基を添加することによって抽出することで、対応するヒドロキシ酸の塩を形成し得る。残りの有機相から第3級アルコールおよびアミンが蒸留により回収され得、この残渣は再生利用のための触媒源を提供する。水相から3−イソクロマノンを適切なpH調節(例えば、例えば塩酸を用いた酸性化)によって再生成させ得、キシレンのような適切な溶媒に抽出させる。不活性ガス(例えば、窒素または一酸化炭素)のブランケット下、脱気した水性塩基を用いて塩基性化を実施することで、タリー(tarry)材料の形成を減少し得る。第4級アルコールおよびアミンを、例えば、3−イソクロマノンの再生成の前に水性塩基層から蒸留することにより再使用のために回収し得る。この触媒をまた、再使用のために回収し得る。
【0025】
3−イソクロマノンを蒸留による反応の最後に回収し得る。従って、第1の方法において、この反応混合物を水酸化アルカリ金属のような塩基で処理し、水相を分配し、3−イソクロマノンをpHの調節により再生成し、そして上記のように、キシレンのような適切な溶媒中に抽出させる。次いで、この有機抽出物を蒸留し、溶媒を除去し、そして3−イソクロマノンを回収する。あるいは、第2の方法では、終わりの反応混合物を水相にアミンを移動させるために酸性化する。次いで、3−イソクロマノン、第3級アルコールおよび触媒を含む得られた有機相を蒸留し、第3級アルコールおよび3−イソクロマノンを別個に回収する。この触媒をさらに残渣から回収し得るか、触媒の塩(例えば、パラジウム塩)を酸性化中に沈殿させ、そして蒸留の前に濾過によって回収することが可能である。
【0026】
3−イソクロマノンが、特に、農業産物の製造における中間体、特にストロビルリン(strobilurin)型の殺菌剤として有用であり、例えば、このことはEP−A−278595に記載される。
【0027】
本発明は、以下の実施例によって例示され、ここで:
g=グラム gc=ガスクロマトグラフィー
mmol=ミリモル ℃=摂氏度
psi=ポンド/平方インチ JRV=ジャケット付き反応容器である。
「bar.g」単位で表示される圧力はゲージ測定であり、絶対値ではない。従って、例えば4bar.gは、5bar絶対値に等しい。
【0028】
(実施例1)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(7.0g、39.9mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(15.63g、119.7mmol)、パラジウムクロリド(PdCl2)触媒(0.021g、0.1197mmol)、水(7.18g、399mmol)およびトリフェニルホスフィン(0.47g、1.76mmol)およびtert−ブタノール(11.9g、159.6mmol)を100ml丸底フラスコに装填し、そしてシリンジ針で一酸化炭素をバブリングした。この反応混合物を、一酸化炭素をバブリングしつつ、速く攪拌しながら70℃に加熱した。3時間後、定性gc分析によって試験したサンプルは、反応が完了したことを示した。
【0029】
水酸化ナトリウム(100%強度で6.38g)および水(16.5g)を、この反応混合物に添加し、次いで、この反応混合物を60℃で1時間攪拌した後、有機層A(26.66g)および水層を分離した。濃塩酸(35.5%強度で12.31g)およびo−キシレン(21g)を水層に添加し、この水層を60℃で1時間攪拌した後、キシレン溶液B(26.94g)および水層C(40.35g)を分離した。定量gc分析は、以下のように存在する3−イソクロマノンを示した:
有機層A0.04%(収率0.18%)
キシレン溶液B15.01%(収率68.48%)
水層C0.2%(収率1.4%)
3−イソクロマノンの総収率70.06%
(実施例2)
パラジウムクロリド(0.043g、0.24mmol)、トリフェニルホスフィン(0.93g、4mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(31g、240mmol)、水(14.4g、800mmol)、o−キシレン−α,α’−ジクロリド(14g、80mmol)およびtert−アミルアルコール(33.8g、384mmol)を、攪拌器および一酸化炭素装填システムを取付けた310mlPARR反応器に装填した。温度が70℃に調節した後、攪拌器のスイッチを入れ、そして圧力を4bar.g(60psig)に増加した。容器圧力を、一酸化炭素を使用して60psigに維持し、そして温度を、加熱/冷却によって70〜75℃に維持した。一酸化炭素取り込みが中断された場合、圧力を大気に対して解放し、そして3−イソクロマノン生成物を水性水酸化ナトリウム(100%強度で12.8g、320mmol)を使用して、有機相から抽出した。この3−イソクロマノンを、塩酸(35.5%強度で7.3g、200mmol)の添加によって再生成し、o−キシレン(42.5g、400mmol)中に抽出した。得られた溶液を3−イソクロマノンに対して分析し、そして16.8%w/wを含むことが見出された。このことは、キシレン−α,α’ジクロリドからの3−イソクロマノンの収率が75.4%であることを示す。
【0030】
(実施例3)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(95%強度で14.7g、80mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99%強度で31.4g、250mmol)、ジヒドロテトラクロロパラジン(H2PdCl4)触媒(53.8%強度で0.1271g、0.27mmol)の水溶液、tert−アミルアルコール(95%強度で28.2g、300mmol)、水(14.4g、800mmol)およびトリフェニルホスフィン(99%強度で0.93g、3.5mmol)を、300ml Inconel(登録商標)オートクレーブに装填した。このオートクレーブを、5bar.gで、一酸化炭素ガスを用いて3回パージし、その後、最終的に、約4bar.gに加圧した。この反応混合物を、活発に攪拌し(約900rpm)、70℃に加熱した。一旦この温度に達したら、この反応混合物を70℃で約4時間攪拌し、圧力を約4bar.gに維持し、一酸化炭素の取り込みの速度を記録した。この反応はさらに一酸化炭素が、消費されないようになった場合に、完了であるとした。次いで、この反応混合物を40℃より低く急速に冷却し、そして出発物質の存在をgcによって試験するためにサンプリングした。水(33g)および水酸化ナトリウム(47%強度で27.4g)を、開いたオートクレーブに1回で装填し、次いで、これをシールし、そして一酸化炭素ガスを用いて5bar.gで、3回パージした後、最終的に、1bar.gの加圧した。次いで、この反応混合物を、1〜2bar.g(CO圧力)下、60℃で約1時間攪拌した。次いで、2相を、熱分離器(空気中)に移し、そして60℃で分離し、水相を、さらなる処理のために抜き出した。
【0031】
この水相を、60℃で、o−キシレン(41.4g)および濃塩酸(36%強度で19.8g)の保存溶液に注意深く添加した(空気中)。この混合物を、次いで、60℃で1時間攪拌した後、分離して、水性廃物流および生成物3−イソクロマノンを含むキシレン溶液を得た;収率83.7%。
【0032】
繰返しの実験により、83.9%の収率を得た。
【0033】
(実施例4)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(95%強度で14.7%、80mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99%強度で25.5g、200mmol)、ジヒドロテトラクロロパラジウム(H2PdCl4)触媒(53.8%で0.0586、0.126mmol)の水溶液、tert−アミルアルコール(14.1g、163mmol)、水(28.8g、1600mmol)およびトリフェニルホスフィン(95%強度で2.1g、8.0mmol)を、300ml Inconol(登録商標)オートクレーブに装填した。このオートクレーブを、一酸化炭素を用いて、5bar.gで3回パージした後、最終的に約4bar.gに加圧した。この反応混合物を、活発に攪拌し(約900rpm)、70℃に加熱した。一旦この温度になると、この反応混合物を70℃で約4時間攪拌し、圧力を約4bar.gに維持し、そして一酸化炭素の取り込みの速度を記録した。さらに一酸化炭素が消費されなくなった場合に、この反応は完了したとした。次いで、この反応混合物を40℃より低く急速に冷却し、出発物質の存在をgcによって試験するためにサンプリングした。水(33g)および水酸化ナトリウム(47%強度で27.4g)を、開いたオートクレーブに1回で装填し、次いで、このオートクレーブをシールし、そして一酸化炭素ガスを用いて、5bar.gで3回パージした後、最終的に、1bar.gに加圧した。次いで、この反応混合物を1〜2bar.g(CO圧力)下、60℃で約1時間攪拌した。次いで、2つの相を熱分離器(空気中)に移動し、そして60℃で分離し、水相をさらなる処理のために抜き出した。
【0034】
この水相を、60℃(空気中)で、o−キシレン(41.4g)および濃塩酸(36%強度で19.8g)の攪拌溶液に注意深く添加した。この混合物を、次いで、60℃で1時間攪拌した後、分離して、水性廃物流および生成物3−イソクロマノンを含むキシレン溶液を得た;収率75.8%。
【0035】
(実施例5)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(95%強度で14.7g、80mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99%強度で29.24g、224mmol)、ジヒドロテトラクロロパラジウム(H2PdCl4)触媒(53.8%強度で0.075g、0.16mmol)の水溶液、tert−アミルアルコール(99%強度で21.37g、240mmol)、水(25.2g、1400mmol)およびトリフェニルホスフィン(99%強度で2.11g、8mmol)を、攪拌器および一酸化炭素装填システムを取付けた310ml PARRオートクレーブに装填した。このオートクレーブを、一酸化炭素を用いて、60psiに加圧し、そしてこの圧力に反応を通して維持し、この反応を70℃で、実施した。さらに一酸化炭素が消費されなくなったとき、この反応が完了したと見なした。
【0036】
オートクレーブの内容物を、ビーカーに移し、ここで反応混合物のサンプルを回収した。このオートクレーブを取り除き、反応混合物を、真空置換によってオートクレーブに再装填した。水酸化ナトリウム溶液を、真珠状の水酸化ナトリウム(100%強度で12.8g)および水(22.32g)を用いて、同じビーカーに調製した。これをまた、真空置換によってオートクレーブに移した。ここで、この混合物を、15psiにおいて、60℃で1時間攪拌した後、この内容物を分液ロートに移した。この2相を分離し、水層(この水層は、後に酸処理した)および46.99gの有機層を得た。この水層を、60℃で、キシレン(42.46g)および濃塩酸(35.5%強度で20.56g)の攪拌混合物に添加した。この混合物を、60℃で1時間攪拌した後、分離して、水層(77.56g)およびキシレン溶液(53.25g)を得た。定量分析は、有機層に0.03%で46.99gの3−イソクロマノン(収率0.12%)、水層に0.19%で77.56gの3−イソクロマノン(収率0.25%)、およびキシレン溶液に18.04%で53.25gの3−イソクロマノン(収率81.13%)を示した:全収率82.5%。
【0037】
(実施例6)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(95%強度で14.7g、80mmol)、N,N−ジイソプロピル−エチルアミン(99%強度で31.4g、240mmol、窒素脱気)、tert−アミルアルコール(100%強度で33.8g、384mmol、窒素脱気)、塩化パラジウム(PdCl2)触媒(99%強度で0.043g、0.24mmol)、トリフェニルホスフィン(99%強度で2.12g、8mmol)、および水(14.4g、800mmol、窒素脱気)を、310 InconelTMオートクレーブに充填した。このオートクレーブを一酸化炭素(テクニカルグレード)を用いて5bar.gで3回パージし、その後、最後に4bar.gに加圧した。反応溶液を1000rmで攪拌し、70℃まで加熱した。反応温度を70℃に約4時間維持し、反応時間を通じて一酸化炭素の圧力を約4bar.gに維持し、一酸化炭素の取り込み速度を書き留めた。さらなる一酸化炭素の消費が見られない時に反応が完了したと見なした。反応溶液の攪拌したサンプルをオートクレーブから除き、o−キシレン−α,α’−ジクロリドの存在についてgcによって試験した。
【0038】
このオートクレーブを60℃まで冷却し、攪拌を止め、オートクレーブを約1bar.gまで排気した。この残りの圧力は、反応溶液(透明、琥珀色,単一相)をジャケット付きの反応容器(JRV)(これは、先に、60℃に上げられ、窒素でパージされている)に排出するために使用された。酸素の流入を排除するために、JRV中のワークアップ中を通じて、窒素のポジティブな流れを維持した。水性水酸化ナトリウム(21%強度で60.9g、窒素脱気)を、窒素でパージされている平衡滴下ロート(balanced dropping funnel)を介して、攪拌された反応溶液に加えた。得られた溶液を、約1時間攪拌し、次いで相分離が行われ得るように静置させた。これは、上部透明赤色有機相、低部透明赤色水性塩基相および界面に配置されるわずかに黒い分散物から構成される。低部の水性塩基相を重さで分離し、後でのワークアップのために保存した。黒色の分散物が、低部相の排出時に、JRVの壁に接着するのが観測された。次いで、空気を攪拌した上部有機相に吹き込み空気を流入させた。1〜2分以内で、有機相の深刻なタール化(tarring)が観察され、タール化を避けるためには、ワークアップの間、酸素排除が実際必要とされることが確認された。次いで、有機相を排出した。水性の塩基相を、JRVをきれいにするために空気中で再導入し、これを60℃まで加熱し、400rpmで攪拌した。
【0039】
o−キシレン(100%強度で42.5g、400mmol)を、JRVに導入し、続いて、塩酸(36%強度で20.3g、0.2mmol)を注意深く添加した。煙の発生(fuming)が明らかであり、この溶液を約1時間攪拌した。次いで、この溶液を60℃で静置し、2相に分かれさせた。低部の透明な酸性水相を重さで分離し、続いて上部の透明な赤色/琥珀色の3−イソクロマノンのo−キシレン溶液(約18%w/w)を分離した。先に回収された有機相、酸性水相およびo−キシレン溶液を、3−イソクロマノンについてgcで分析した;収率:有機相0.37%、酸性水相1.56%、o−キシレン溶液73.9%:合計75.8%。
【0040】
(実施例7)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(95%強度で7.35g、40mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99%強度で15.7g、120mmol)、ジヒドロテトラクロロパラジウム(H2PdCl4)触媒(53.8%強度で0.0651g、0.14mmol)の水溶液、tert−アミルアルコール(95%強度で14.1g、150mmol)、水(14.4g、800mmol)およびトリフェニルホスフィン(99%強度で1.1g、4mmol)を、100ml丸底フラスコに充填した。この容器を密閉し、一酸化炭素ガスで3回減圧パージした。この反応容器の内容物を、一酸化炭素をこの混合物に通して安定してバブリングしながら、勢い良く攪拌(約900rpm)し、70℃に加熱した。一旦その温度になると、安定してバブリングを維持しながら、この反応混合物を70℃で約2.25時間攪拌した。この反応混合物を、出発物質の存在をgcで試験するためにサンプリングした。
【0041】
水酸化ナトリウム溶液(21%強度で30.2g)を一度でこのフラスコに充填し、これを密閉した。次いで、一酸化炭素を再びこの混合物を通してバブリングした。この反応混合物を約一時間安定してバブリングしながら60℃で攪拌した。この2相をホットセパレーターに(空気中で)移し、60℃で分離し、水相をさらなるワークアップのために排出した(drawn off)。この有機相をリサイクル反応のために保持した(リサイクル1を参照のこと)。
【0042】
この水相を、キシレン(20.7g)および濃塩酸(36%強度で9.9g)の攪拌溶液に60℃(空気中)で注意深く添加した。この混合物を1時間60℃で攪拌し、その後、分離して、水性廃物流および生成物3−イソクロマノンを含むキシレン溶液を得た。
【0043】
(リサイクル1)
上で得た有機相を、100ml丸底フラスコに充填した。上と同じ量のo−キシレン−α,α’−ジクロリド、トリフェニルホスフィン、水およびパラジウム触媒を、同じフラスコに充填した。この容器を密閉し、一酸化炭素ガスで3回減圧パージした。反応容器の内容物を、一酸化炭素をこの混合物に通して安定してバブリングしながら、勢い良く攪拌し(約900rpm)、70℃に加熱した。一旦その温度になると、安定してバブリングを維持しながら、この反応混合物を70℃で約2時間攪拌した。この反応混合物を、出発物質の存在をgcで試験するためにサンプリングした。
【0044】
水酸化ナトリウム溶液(21%強度で30.2g)を一度でこのフラスコに充填し、これを密閉した。一酸化炭素ガスを再びこの混合物を通してバブリングした。この反応混合物を約一時間安定してバブリングしながら60℃で攪拌した。この2相をホットセパレーターに(空気中で)移し、60℃で分離し、水相をさらなるワークアップのために排出した(drawn off)。この有機相をリサイクル反応のために保持した(リサイクル2を参照のこと)。
【0045】
この水相を、キシレン(20.7g)および濃塩酸(36%強度で9.9g)の攪拌溶液に60℃(空気中)で注意深く添加した。この混合物を1時間60℃で攪拌し、その後、分離して、水性廃物流および生成物3−イソクロマノンを含むキシレン溶液を得た。
【0046】
(リサイクル2)
リサイクル1で得た有機相を、100ml丸底フラスコに充填した。上と同じ量のo−キシレン−α,α’−ジクロリド、トリフェニルホスフィン、および水を、同じフラスコに充填した。この容器を密閉し、一酸化炭素ガスで3回減圧パージした。反応容器の内容物を、一酸化炭素をこの混合物に通して安定してバブリングしながら、勢い良く攪拌し(約900rpm)、70℃に加熱した。一旦その温度になると、安定してバブリングを維持しながら、この反応混合物を70℃で約2時間攪拌した。この反応混合物を、出発物質の存在をgcで試験するためにサンプリングした。
【0047】
水酸化ナトリウム溶液を、一度にフラスコに充填し、これを密封した。一酸化炭素ガスを、この混合物を通して再びバブリングした。この反応混合物を、一様にバブリングしながら、60℃で、約1時間撹拌した。2つの相を熱分離器に移し(空気中)、そして60℃で分離し、水相は、さらなる後処理のために流し出した(注:この時点でタール化が観測される)。
【0048】
この水相を、キシレン(20.7g)および濃塩酸(36%の強度で9.9g)の撹拌溶液に、60℃(空気中)で慎重に添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌し、その後分離して、水性廃物流、および生成物である3−イソクロマノン(isochromanone)を含むキシレン溶液を得た。
収率:最初の実験 82.3%;リサイクル1 69.9%;リサイクル2 73.7%。
【0049】
(実施例8)
o−キシレン−α,α’−ジクロリド(98.3%強度で14.24g、80mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99%強度で31.33g、240mmol)、t−アミルアルコール(99%強度で21.37、240mmol)、水(28.8g、1600mmol)、および下記のように予備生成触媒混合物(3.52mmolのトリフェニルホスフィンおよび0.16mmolの触媒を与える、1.065g)を、310ml HastelloyTMオートクレーブに充填した。このオートクレーブを、一酸化炭素(高級グレード)で3回、75psiでパージし、その後、最終的に30psiまで加圧した。この反応溶液を、70まで加熱しながら、1000rpmで撹拌した。反応の間中、反応温度は70℃に維持し、圧力は30psiに維持した。反応は、一酸化炭素の取り込みが終わった時に完了したと判断した。容器を開放して約15psiにし、そしてこの混合物を100℃まで加熱して、パラジウムの沈殿を促進した。この反応系を、500rpm、100℃で、1時間撹拌し、その後、窒素でブランケットしたJRVに移した。このJRVに、水酸化ナトリウム水溶液(21%強度で60.59g)を添加し、窒素ブランケットを維持しながら、60℃で1時間撹拌した。分離を行って、下の水層(これは、さらなる後処理のために残した)および上の有機層(48.32g)を得た。この水相を、キシレン(42.46g)および濃塩酸(35.5%強度で20.56g)と共に、容器に再充填した。この混合物を、60℃で1時間撹拌し、その後、分離して下の水層(97.0g;3−イソクロマノン強度0.22%;1.8%収率)、および上の3−イソクロマノンのキシレン溶液(52.59g;3−イソクロマノン強度17.84%;79.15%収率)を得た。定量gc分析による全化学収率、80.95%。
【0050】
(予備生成触媒混合物の調製)
トリフェニルホスフィン(10.1010g、38.1mmol)を、100mlの3つ口丸底フラスコに充填し、急速に撹拌しながら90℃まで加熱して、溶解物を生成させた。この溶解物に、ナトリウムクロロパラダイト(chloropalladite)(Na2PdCl4)溶液(1.4594g、1.732mmol)を滴下し、触媒混合物が黄色のスラリーとして生じるまで、この反応混合物を撹拌した。この混合物を冷却し、触媒を固化させた。この固体をフラスコから取り出し、そして乳鉢および乳棒を使用して粉末化した。この触媒は、上記のカルボニル化反応に直接使用した。100%の定量的な化学収率を仮定すると、触媒は、1.60%w/wのパラジウム強度(1:22のパラジウム対亜リン酸のモル比)を有した。
【0051】
(実施例9)
反応器を、1barG圧の窒素を使用して、4回パージおよび排気した。第3級アミルアルコール(48kg、0.55kgmol)、脱イオン水(92kg、5kgmol)、o−キシレン−α,α’−ジクロリド(45kg、0.25kgmol)、残りのo−キシレン−α,α’−ジクロリドのためのライン洗浄液としての第3級アミルアルコール(10kg、0.11kgmol)、および添加する前に以下の方法を使用して生成した塩化パラジウム−トリフェニルホスフィン触媒化学種を、この反応器に充填した。
【0052】
(触媒の調製)
トリフェニルホスフィン(1.50kg、0.0057kgmol)を2リットルの反応器に充填し、急速に撹拌しながら90℃まで加熱して、溶解物を生成させた。この溶解物に、塩化パラジウム(0.125kg、0.00025kgmol)の塩酸溶液を滴下し、触媒が黄色のスラリーとして生成するまで、この反応混合物を撹拌した。この2リットルの反応器を、熱源から取り外し、黄色のスラリーを耐熱皿に注ぎ入れた。触媒はすぐに固化し、続いて、この反応において粉末として使用するために、乳鉢および乳棒を使用して砕いた。上記のプロセスを、トリフェニルホスフィン(1.5kg、0.0057kgmol)の2度目の充填について繰り返し、100%の定量的な化学収率を仮定すると、触媒は1.66%のパラジウム強度を有した。
【0053】
反応器を、1barG圧の窒素を使用して、4回パージおよび排気した。この反応器に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(99kg、0.75kgmol)、および残りのN,N−ジイソプロピルエチルアミンのライン洗浄液としての第3級アミルアルコール(10kg、0.11kgmol)を充填した。この反応器を、1barG圧の窒素を使用して、4回パージおよび排気し、続いて、4barG圧の一酸化炭素を使用して、2回パージおよび排気を行った。この反応器を、一酸化炭素下、3〜3.5barGの圧力で、40℃まで加熱した。この反応系からの発熱は、バッチ温度を70℃まで上げた。次いで、このバッチを、一酸化炭素の取り込みが終わるまで(約10kg)、加圧熱水を使用して70℃から+/−5℃内で制御した。一酸化炭素を大気に排気することによって、反応器の圧力を下げ、反応器の温度を、40℃まで下げた。この反応器を、1barG圧の窒素を使用して、4回パージおよび排気を行った。反応器の内容物を、gcにより、反応の終結について分析した。
【0054】
この反応器を、4barG圧の一酸化炭素を使用して、2回パージおよび排気を行い、そして、一酸化炭素を使用して、1barG圧で、静置した。この反応器を100℃まで加熱し、この温度で1時間維持し、そして一酸化炭素を大気に排気することによって、この反応器の圧力を下げた。この反応器を55〜60℃まで冷却し、1barG圧の窒素を使用して、4回パージおよび排気を行った。この反応器に、脱イオン水(108kg、6kgmol)および47%水酸化ナトリウム(87kg、1.025kgmol)を充填した。この反応器を55〜60℃で30分間維持し、次いで、撹拌を止めた後、その内容物を1時間静置した。下側の水相を分離し、Pallスクリーニングカートリッジで濾過し、撹拌を始めた後、有機相を接地ドラムに排出した。
【0055】
水相を、蒸留物の外見の変化が見られるまで、55℃の温度、50mmHgの真空下で蒸留した。次いで、この蒸留物を、接地ドラムに排出した。残りの水相に、添加の過程にわたって、反応器を55〜60℃の温度に維持したまま、o−キシレン(130kg、1.28kgmol)および塩酸(65kg、0.64kgmol)を充填した。この反応器を55〜60℃で1時間撹拌し、次いで、pH(<2)について分析した。次いで、撹拌を止めた後、この内容物を1時間静置し、水相およびo−キシレン相を、別個の接地ドラムに分けた。o−キシレン(166.5kg)中の3−イソクロマノンの溶液を、18.37%w/w/強度(100重量%で30.59kg)として分析した。これは、82.58%の単離収率を表す。このプロセスの化学収率は、84.53%と分析された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明

【公開番号】特開2010−180246(P2010−180246A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110670(P2010−110670)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【分割の表示】特願2000−574096(P2000−574096)の分割
【原出願日】平成11年8月23日(1999.8.23)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】