説明

3−シクロプロップ−I−エニル−プロパン酸塩を用いた、植物のエチレン応答を遮断するための組成物及び方法

本発明は、植物の少なくとも一部に、エチレン応答を阻害するのに有効な量の、H1−シクロプロペン−1−プロパン酸塩(CPAS)を適用することを含む、植物のエチレン応答を阻害する方法を開示する。切花に、寿命を延ばすのに有効な量のCPASを適用することを含む、切花の寿命を延ばす方法、及び、(i)4−ブロモ−4−ペンテン酸又はその誘導体を調製する工程と、(ii)1−シクロプロペン−1−プロパン酸を生成する工程と、(iii)この塩を、その水溶性塩、特にナトリウム塩に変換する工程と、を含む、CPASの生成方法を提示する。更に、植物のエチレン応答に対する、水溶性CPAS阻害剤の新規ファミリーを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、植物及び植物器官又は組織のエチレン応答を遮断する水溶性組成物並びに方法、具体的には、3−シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム(又は他の正に帯電した対イオン)塩(CPAS)を植物に適用することにより、植物における種々のエチレンに制御された、生長、再生及び生殖過程を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、多数の発生過程、具体的には果実の成熟、器官脱離(落果及び落葉)及び老化に関与する天然の植物成長調節因子である。エチレンの有害作用は、農業生産高に被害を与える。
【0003】
エチレン作用の拮抗剤は、農業利用に非常に有益であると考えられる、なぜなら、内因性及び外因性エチレンの双方から組織を保護するためである。エチレン拮抗剤(EA)は、その受容体部位を遮断することにより、分子レベルでエチレンの作用を阻害する。したがって、EAを適用することにより、作物の収穫期を延長する、果実、ハーブ及び葉菜の貯蔵性及び保存寿命を延ばす、並びに切花の花持ちを延長することを可能にできる。一部のEAの使用は特許により保護されている:ホスホン酸誘導体(米国特許第3879188号)、チオ硫酸銀(米国特許第5510315号)、有機ハロゲン化合物(米国特許第5679617号)、2,5−ノルボルナジエン(米国特許第5834403号)、1−メチルシクロプロペン(1-methylecyclopropene)(米国特許第619350号、同第6365549号)。
【0004】
エチレン応答を遮断する方法の進歩にもかかわらず、安全かつ便利な水溶性遮断剤に対する要求が依然として存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在利用可能な最も有望なエチレン拮抗剤である、1−メチルシクロプロペン(1−MCP)の使用は、主にそれが水に対して不溶性であるために制限されており、それ故密封した容器内でのみ揮発性形で使用されている。切花への浸漬負荷(dip loading)又は野外における噴霧による適用に使用することはできない。更に、エチレン拮抗剤の選択肢が増えることは、種々の期間エチレン受容体を遮断する阻害剤に対する強い要望を満たすために、商業的に望ましい。17種のエチレン作用のシクロプロペン推定阻害剤が合成され、エチレン拮抗剤としての効力についてスクリーニングされた。新規水かつ安定なシクロプロペン誘導体(CPAS)を更に合成するために、少なくとも12日間バナナの皮の催色を遅延させる、及び少なくとも5日間「ハス(Hass)」アボカド果実の色変化を遅延させる、少なくとも14日間カーネーション及びペチュニアの切花の花持ちを延ばす、並びに少なくとも7日間柑橘類の葉外植片の器官脱離を遅延させる等、農作物におけるエチレン誘導性の有害応答の有効な阻害剤であることが見出されている、最も有望なものを選択した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以後、植物のエチレン応答を阻害する方法を本明細書に開示する。本明細書によると、このような方法の1つは、植物に、エチレン応答を阻害するのに有効な量の、更に詳細に記載するCPASを適用することを含む。
【0007】
本発明の別の態様は、植物に、エチレン受容体を遮断するのに有効な量のCPASを適用することにより、植物のエチレン受容体を遮断する方法である。
【0008】
本発明の別の態様は、上記定義の方法により、植物のエチレン受容体を遮断する方法であって、前記方法は、表面活性CPAS含有水溶液が得られるように、有効な量のCPASを界面活性剤と混合する工程を更に含む。
【0009】
また、植物に、器官脱離を阻害するのに有効な量のCPASを適用することを含む、植物の器官脱離を阻害する方法を開示する。
【0010】
また、切花に、寿命を延ばすのに有効な量のCPASを適用することを含む、切花の寿命を延ばす方法を開示する。
【0011】
また、収穫した果実に、阻害に有効な量のCPASを適用することを含む、収穫した果実の成熟を阻害する方法を開示する。また、収穫した野菜に、阻害に有効な量のCPASを適用することを含む、収穫した野菜の成熟を阻害する方法を開示する。本明細書に記載する方法は、(i)水溶液若しくはエアゾール、若しくは懸濁液、若しくはエマルションの;(ii)又は植物、切花、摘み取った果実若しくは摘み取った野菜を、CPAS水溶液を含有する雰囲気中に導入することにより;(iii)又は粉末、微粒子、例えばナノ粉末、粒子状物質等のいずれかの、CPASで植物を処理することによる等の、多数の好適な方式で実施してよい。これらの及び他の好適な適用方法を以下に詳細に論じる。
【0012】
したがって、本発明の目的は、植物の少なくとも一部に、エチレン応答を阻害するのに有効な量の、式(1):
【化1】

(式中のナトリウム(Na)は以後、任意の好適な正に帯電した対イオンとして定義される)により定義される、シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム塩(CPAS)を適用することを含む、植物のエチレン応答を阻害する方法を開示することである。
【0013】
適用工程は、前記化合物を、前記化合物を含む水溶液に接触させることにより実施されると思われる。本発明によるCPASは、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム等、及び少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの組み合わせの群から非限定的な方式で選択された塩であり、特にナトリウム塩である。適用工程は、前記植物の少なくとも一部を溶液に浸漬する、溶液を噴霧する、かける又は液滴を放出する、接触させる、及びはけ塗りする、のうち1つ又はそれ以上の手順により実施されると思われる。エチレン応答は、果実の成熟、野菜の成熟、花の老化、器官脱離、収穫した果実、収穫した野菜又はこれらの組み合わせから、非限定的な方式で選択される。
【0014】
本発明の別の目的は、カットフルーツに、寿命を延ばすのに有効な量の、式(1)により定義される化合物を適用することを含む、収穫した果実の寿命を延ばす方法を開示することである。適用工程は、前記植物の少なくとも一部に、溶液を接触させる、浸漬する、噴霧する、かける又は液滴を放出する、はけ塗りする、のうち1つ又はそれ以上の手順により実施されると思われる。エチレン応答は、果実の成熟、野菜の成熟、花の老化、器官脱離、収穫した果実、収穫した野菜又はこれらの組み合わせから、非限定的な方式で選択される。
【0015】
本発明の別の目的は、切花に、寿命を延ばすのに有効な量の、式(1)により定義される化合物を適用することを含む、切花の寿命を延ばす方法を開示することである。適用工程は、前記植物の少なくとも一部に、溶液を接触させる、浸漬する、噴霧する、かける又は液滴を放出する、はけ塗りする、のうち1つ又はそれ以上の手順により実施されると思われる。
【0016】
本発明の別の目的は、式(1)により特徴付けられる、植物のエチレン応答のシクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム塩(CPAS)阻害剤を開示することである。CPAS阻害剤は、浸漬する、はけ塗りする、かける若しくは液滴を放出する、噴霧する又はこれらの任意の組み合わせの群から選択される、市販の手段により植物の少なくとも一部に適用するのに適合した、周囲条件(温度及び圧力)で優位に液体形であると思われる。あるいは又は更に、上記のいずれかで定義したようなCPASを、有効な量まで、水溶液に溶解、分散又は混合する。
【0017】
本発明の別の目的は、上記定義のようなCPASを開示することであって、前記CPASは表面活性CPAS含有水溶液が得られるように提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付図面を参照して、実施例を用いて、より詳細に記載される。
【0019】
【図1】CPAS処理した及び処理していないカーネーションの花弁の写真である。
【図2】CPAS処理した及び処理していないカーネーションの切花の写真である。
【図3】CPAS処理した及び処理していないペチュニアの切花の写真である。
【図4】CPAS処理した及び処理していないバナナの果実の写真である。
【図5】CPAS及びエチレン負荷に対する、バナナの果実の堅さ及び色の依存性を示す図である。
【図6】CPAS処理した及び処理していないアボカドの果実の写真である。
【図7】柑橘類の葉外植片の器官脱離の遅延に対する、CPASの効果を示す図である。
【図8】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマト植物体へのCPAS噴霧の効果を表す。
【図9】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマト植物体へのCPAS噴霧の効果を表す。
【図10】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、切り取ったトマト植物体へのCPAS負荷の効果を表す。
【図11】モモの果実へのCPAS噴霧の効果を表す。
【図12】カーネーションの切花の花序の直径に対する、CPAS負荷の効果を表す。
【図13】処理14日後の、切り取った花弁のエチレンに誘導される老化の遅延に対する、CPAS負荷の効果を表す。
【図14】切り取った花弁への、CPAS負荷に続く空気又はエチレン処理の効果を表す。
【図15】処理15日後の、ペチュニアの花のエチレンに誘導される老化の遅延に対する、CPAS負荷の効果を表す。
【図16】柑橘類の葉外植片のモデル系;(A)負荷:葉外植片に、葉柄の切断面を処理溶液に浸すことにより、種々の濃度のCPASを含有する水道水中で、6時間阻害剤を負荷する;(B)浸漬:葉外植片を種々の濃度のCPASとツイーン−20(0.025%)を含有する水道水に30秒間浸す、を表す。
【図17】柑橘類の葉外植片の器官脱離の遅延に対する、CPASの効果を表す。
【図18】柑橘類の葉外植片の器官脱離の遅延に対する、CPASの緩衝液の効果を表す。
【図19】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマト植物体へのCPAS噴霧の効果を表す;温室で育てた5週齢の植物に、0.025〜0.1%のL−77界面活性剤+CPASを含有する、リン酸カリウム緩衝液(pH7.8、10mM)を噴霧することにより、前処理し;18時間後、前処理した植物をエチレン3μL/Lに24時間曝露した。
【図20】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマト植物体へのCPAS噴霧の効果を表す;温室で育てた5週齢の植物に、0.025〜0.1%の「キネティック(Kinetic)」界面活性剤+CPASを含有する、リン酸カリウム緩衝液(pH7.8、10mM)を噴霧することにより、前処理し;18時間後、前処理した植物をエチレン3μL/Lに24時間曝露した。
【図21】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマト植物体へのCPAS噴霧の効果を表す。
【図22】エチレンに誘導される葉の葉柄の上偏生長に対する、トマトの枝へのCPAS負荷の効果を表す。
【図23】処理5日後のアボカド「ハス」品種のエチレンに誘導される成熟の遅延に対する、CPASのはけ塗りの効果を表す;緑の熟した「ハス」品種の果実を、CPASの水道水溶液(100μg/mL+界面活性剤としての0.1%「キネティック」)を、皮にそっとはけ塗りすることにより前処理した。18時間後、未処理の果実(A)及び前処理した果実(B)を、エチレン(250μL/L)に24時間曝露した。
【図24】処理10日後の、バナナのエチレンに誘導される成熟の遅延に対する、CPASのはけ塗りの効果を表す;緑のバナナ果実を、CPASの水道水溶液(+界面活性剤としての0.025%ツイーン−20)を、皮にそっとはけ塗りすることにより前処理した。18時間後、前処理した果実を、エチレン(250μL/L)に24時間曝露した。
【図25】処理10日後の、バナナのエチレンに誘導される成熟の遅延に対する、CPASの効果を表す;緑のバナナ果実を、CPASの水道水溶液(+界面活性剤としての0.025%ツイーン−20)を、皮にそっとはけ塗りすることにより前処理した。18時間後、前処理した果実を、エチレン(250μL/L)に24時間曝露した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するために用いてよいCPASは、式I:
【化1】

(ナトリウムは、本明細書では、正に帯電した対イオンとして提供される)により定義される。
【0021】
用語「植物」は、本明細書では一般的な意味で用いられ、草本性、並びに、木及び低木のような木質茎植物を含む。本明細書に記載の方法により処理される植物としては、植物全体、並びに、農作物、鉢植え植物、切花(茎及び花)及び収穫した果実及び野菜のようなその任意の一部が挙げられる。前記化合物で及び本発明の方法により処理された植物は、好ましくは、非植物毒性量のCPASで処理される。
【0022】
用語「水溶液」は、以後、少なくとも部分的に水に混和性である溶液を指す。上記にかかわらず、CPASは粉末形、錠剤、エアゾール、エマルション、懸濁液、水混和性若しくは水不混和性溶液、又は任意の他の農業的方式で提供されると思われる。
【0023】
本発明を使用して、様々な異なるエチレン応答を調整することができる。エチレン応答は、内因性及び外因性源のエチレンのいずれによっても開始され得る。エチレン応答としては、例えば、花、果実及び野菜の成熟及び/又は老化、葉、花及び果実の器官脱離、鉢植え植物、切花、植え込み、種子及び休眠中の苗のような観賞植物の寿命を縮める、一部の植物(例えばエンドウマメ)で生長を阻害する、並びに他の植物(例えば、イネ)で生長を刺激することが挙げられる。
【0024】
本発明のCPASにより阻害できる更なるエチレン応答又はエチレン型応答としては、直接又は間接的オーキシン活性、頂端生長の阻害、頂芽優勢の制御、分枝の増加、代謝産物及び副生成物の代謝及び濃度の増加又は減少、植物の生化学組成の変化(茎面積に対する葉面積の増加等)、開花及び種子の発生の失敗又は阻害、倒伏作用、種子の発芽の刺激及び休眠の中断、並びにホルモン又は上偏生長作用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の実施形態による方法は、野菜の成熟及び/又は老化を阻害する。本明細書で使用するとき、「野菜の成熟」とは、まだ植物に実っている状態の野菜の成熟及び野菜が実っている植物から収穫された後の野菜の成熟を含む。成熟及び/又は老化を阻害するために、本発明の方法により処理できる野菜としては、レタス(例えば、Lactuea sativa)、ホウレンソウ(Spinaca oleracea)、及びキャベツ(Brassica oleracea)のような葉物野菜、ジャガイモ(Solanum tuberosum)及びニンジン(Daucus)のような種々の根菜、タマネギ(Allium sp.)のような鱗茎、バジル(Ocimum basilicum)、オレガノ(Origanum vulgare)、ディル(Anethum graveolens)のようなハーブ、並びにダイズ(Glycine max)、ライマメ(Phaseolus limensis)、エンドウマメ(Lathyrus spp.)、トウモロコシ(Zea mays)、ブロッコリー(Brassica oleracea
italica)、カリフラワー(Brassica oleracea
botrytis)及びアスパラガス(Asparagus officinalis)が挙げられる。
【0026】
本発明の実施形態による方法は果実の成熟を阻害する。本明細書で使用するとき、「果実の成熟」とは、まだ植物に実っている状態の果実の成熟に加えて、果実が実っている植物から収穫された後の果実の成熟を含む。成熟を阻害するために本発明の方法により処理できる果実としては、トマト(Lycopersicon esculentum)、リンゴ(Malus domestica)、バナナ(Musa sapientum)、セイヨウナシ(Pyrus communis)、パパイヤ(Carica papaya)、マンゴー(Mangifera indica)、モモ(Prunus persica)、アプリコット(Prunus armeniaca)、ネクタリン(Prunus persica nectarina)、オレンジ(Citrus sp.)、レモン(Citrus limonia)、ライム(Citrus aurantifolia)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、タンジェリン(Citrus
nobilis deliciosa)並びに他の市販品種、雑種、及び新たに開発された品種、キウィ(Actinidia chinenus)、パイナップル(Aranas comosus)、カキ(Diospyros sp.)、アボカド(Persea americana)並びに他の市販品種、雑種及び新たに開発された品種が挙げられる。
【0027】
老化を阻害する並びに/又は花の寿命及び外観を長持ちさせる(黄変及び器官脱離を遅延させる)ために本発明の方法により処理できる観賞植物としては、鉢植え観賞植物及び切花が挙げられる。本発明で処理できる鉢植え観賞植物及び切花としては、ツツジ(Rhododendron spp.)、アジサイ(Mαcrophyllα hydrangea)、ハイビスカス(Hibiscus rosasanensis)、スナップドラゴン(Antirrhinum sp.)、ポインセチア(Euphorbia pulcherima)、サボテン(例えば、Cactaceae schlumbergera
truncata)、ベゴニア(Begonia sp.)、バラ(Rosa spp.)、チューリップ(Tulipa sp.)、スイセン(Narcissus spp.)、ペチュニア(Petunia hybrida)、カーネーション(Dianthus caryophyllus)、ユリ(例えば、Lilium sp.)、グラジオラス(Gladiolus sp.)、アルストロメリア(Alstoemeria brasiliensis)、アネモネ(例えば、Anemone
blanda)、オダマキ(Aquilegia sp.)、アラリア(例えば、Aralia chinensis)、シオン(例えば、Aster carolinianus)、ブーゲンビリア(Bougainvillea
sp.)、ツバキ(Camellia sp.)、ホタルブクロ(Campanula
sp.)、ケイトウ(celosia sp.)、フォールスサイプレス(Chamaecyparis sp.)、キク(Chrysanthemum sp.)、クレマチス(Clematis sp.)、シクラメン(Cyclamen sp.)、フリージア(例えば、Freesia refracta)、及びラン科のラン、並びに他の市販品種、雑種及び新たに開発された品種が挙げられる。
【0028】
葉、花及び果実の器官脱離を阻害するために本発明の方法により処理できる植物としては、リンゴ、セイヨウナシ、サクランボ(Prunus avium)、ペカン(Carva illinoensis)、ブドウ(Vitis vinifera)、オリーブ(例えば、Vitis vinifera及びOlea europaea)、コーヒー(Coffea arabica)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、オレンジ(Citrus sp.)、レモン(Citrus limonia)、ライム(Citrus
aurantifolia)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、タンジェリン(Citrus nobilis deliciosa)及び他の市販品種、雑種及び新たに開発された品種、並びにシダレガジュマル(Ficus benjamina)に加えて、リンゴ、観賞植物、低木及び苗木を含む種々の果樹のような休眠苗が挙げられる。更に、葉の器官脱離を阻害するために本発明により処理できる低木としては、イボタ(Ligustrum sp.)、カナメモチ(Photinia sp.)、モチノキ(Ilex sp.)、ウラボシ科のシダ、フカノキ(Schefflera sp.)、アグラオネマ(Aglaonema sp.)、コトネアスター(Cotoneaster sp.)、メギ(Berberis sp.)、ヤマモモ(Myrica sp.)、アベリア(Abelia sp.)、アカシア(Acacia sp.)及びパイナップル科のブロミリアド、並びに他の市販品種、雑種及び新たに開発された品種が挙げられる。
【0029】
CPASは、低濃度で適用されたときでさえ、植物、果実及び野菜に対するエチレン作用の予想以上に強力な阻害剤であることが証明されている。とりわけ、この化合物は、水に可溶性かつ安定性であり、そのため植物、カットフルーツ及びカット野菜、切花に活性物質を送達するための種々の方法の使用が可能になる。全ての対象に、CPAS水溶液をはけ塗り又は浸漬することができ、又はその溶液を噴霧することができ、界面活性剤の負荷は阻害剤の浸透を向上させることができる。更に、果実、野菜及び花の切断面を、一定の時間CPAS溶液に浸漬することができる。
【0030】
水溶性3−(1−シクロプロペニル)プロパン酸及びそのナトリウム又は他の正に帯電した(1価又は2価)対イオン塩の合成を以下に記載する。
【0031】
シクロプロペン化合物の最も簡単かつ最も信頼できる方法を示した参考文献の分析は、リチウム有機化合物の作用により、1,2,2−シクロプロパン又はその誘導体から3つの臭素原子を脱離させることである。1,2,2−トリブロモシクロプロパン化合物は、ジブロモカルベンと2−ブロモ−1−アルケン又はその誘導体との反応により調整される。それ故、市販の試薬から、規則化合物を生成する手順は、3つの主な合成工程から成る:第1は、4−ブロモ−4−ペンテン酸又はその誘導体の調製であり;第2工程は、3−(1−シクロプロペニル)プロパン酸の生成であり;第3工程は、この酸のナトリウム塩への変換である。リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム及び、例えば少なくとも1つの硫酸塩又はリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン塩のような他の塩も可能である。とりわけ正に帯電したアルキル含有化合物を含む有機塩もまた可能である。
【0032】
本発明の1つの実施形態による合成の全スキームは、以下の6つの段階を含み、ここでは、例として、非限定的な方式で、水溶性ナトリウムCPASの合成を提供する:
1. BrCH2CH2OH
+ CH2=CH-OC2H5 → BrCH2CH2OCH(CH3)OC2H5.

2a.
Mg + BrCH2CH2OR → BrMgCH2CH2OR
(式中、RはCH(CH3)OC2H5である)

2b.
BrMgCH2CH2OR + CH2=CBr-CH2Br → CH2=CBr-CH2CH2CH2OR

3a.
CHBr3 + NaOH → CBr2 + NaBr +H2O

3b.
【化2】

4.
【化3】

5.
【化4】

6.
【化5】

【0033】
得られる最終生成物の構造は、いくつかのスペクトル法:H、13C、23Na NMR、MS、赤外分光法により明らかになる。純度は、HPLC及びHPTLC方法により定められる。約0.2gの3−(1−シクロプロペニル)プロパン酸が得られ、その精製方法が開発されている。
【実施例】
【0034】
本発明は、以下の非限定的な実施例でより詳細に説明される。
【実施例1】
【0035】
エチレン作用の拮抗における水溶性CPASの最低有効濃度を決定するために、熟しているが成熟していない果実:緑のバナナ果実;緑のアボカド「ハス」果実;及び熟しているが成熟していないモモ果実、切花:カーネーション;カーネーションの花弁;及びペチュニアの花、トマト苗;及び柑橘類の葉外植片を用いて、試験を実施した。上記に列挙した植物材料をCPAS溶液±エチレン曝露で処理した。CPAS(μg/mL)の最低の見かけ上の濃度及びそれらの植物材料が保護された時間(日)を表1に示す。
【表1】

【0036】
各種類のモデル植物を、前処理として6〜18時間、様々な濃度の水溶液中のCPASに曝露し、続いて24時間様々な濃度のエチレンに曝露した。バナナ及びアボカド果実の場合、エチレン前処理として市販のツイーン−20界面活性剤(0.025%)の存在下で、様々な濃度のCPAS水溶液を皮にはけ塗りし、空気対照に対する、色が分解するまで(バナナでは緑から黄色に(表1、図4)、アボカドでは緑から黒に(表1、図6))に経過した遅延日数を、エチレン拮抗剤の効率の基準として記録した。モモ果実の場合は、界面活性剤BAS70(ドイツのBASFにより大量に供給されている)を用いた。制御条件下で2〜4日間インキュベートした後、結果を記録した(表1、図11)。切花モデルを用いたときは(図1〜3)、CPAS水溶液±界面活性剤を、エチレン処理前にCPAS水溶液中で18時間、切花又は分離した花弁のいずれかに負荷することにより適用した。花の視覚的しおれに従って、水対照に対する、試験した植物材料の老化の遅延日数を記録した。葉の葉柄のエチレン誘導性上偏生長を拮抗するために(表1、図8〜9)、CPAS溶液を噴霧する前又は下方茎切断面を介して切り取った苗によりCPAS負荷する前(表1、図10)、8〜10時間生育箱内で検定のために維持された、市販の「キネティック」オルガノシリコーン界面活性剤ブレンドの存在下で、CPAS水溶液をトマト苗に噴霧した。柑橘類の葉外植片の場合では、薄層器官脱離領域で、器官脱離を試験した。水溶液中のCPASは、17時間外植片の近位側に処理溶液を直接負荷することにより、又は市販のツイーン−20(登録商標)界面活性剤(0.025%)の存在下で30〜60秒間試験した溶液中に外植片全体を浸漬することにより、前処理した。全ての場合、検査した全ての植物系で、エチレンに誘導される応答の作用の著しい遅延が記録された(表1、図7)。更なる実施例では、CPAS水溶液濃度を、上記実験で得られた結果の範囲で用いた。
【実施例2】
【0037】
以下の試験は、水溶液中の水溶性CPASの、分離したカーネーションの花弁のエチレンに誘導される老化を遅延させる能力を更に定めるために設計した。実験は、最適な環境条件(光、温度及び相対湿度)を保証するために生育箱内で実施した。カーネーションの花弁は、その切断面を18時間、81μg/mLのCPASを含有する水溶液中に浸漬することにより、CPAS負荷した。未処理の花弁は水中に保持された。18時間後、処理した花弁を水に移した。その後、全ての花弁を24時間エチレン(5μl/L)に曝露した。処理の終わりに、その老化値を評価するために、水中に浸漬された切断面を有する花弁を、連続蛍光灯下で22℃及びRH80%に維持した。6日目に写真を撮影した(未処理−図1A、処理−図1B)。
【0038】
6日後に測定された水溶液中のCPASのエチレン拮抗効果は、非常に著しかった。実験の過程で、毒性症状は観察されなかった。
【実施例3】
【0039】
カーネーションの切花を、8μg/mLのCPASを含有する水溶液中に18時間切断面を浸漬することにより処理した。未処理の花は、水中に保持した。処理後、花持ちを評価するために、全ての花を、連続蛍光灯下にて、22℃及びRH80%で水中に維持した。14日目に写真を撮影した。得られた結果は、未処理の花に比べて(図2A)、水溶液中にCPASが存在する場合は(図2B)花持ちに関してカーネーションの切花の寿命増加を示す。
【実施例4】
【0040】
短茎ペチュニア切花を、98μg/mLのCPASを含有する水溶液中に18時間切断面を浸漬することにより、水溶性CPASを負荷した。未処理の花は水中に保持した。負荷の18時間後、処理した花を水に移動させた。次いで、花を24時間エチレン(5μl/L)に曝露して、花の老化を加速させた。処理の終わりに、切断面を水に浸漬した花を、花持ちを評価するために、連続蛍光灯下にて、22℃及びRH80%でインキュベートした。14日目に写真を撮影した(未処理−図3A、処理−図3B)。
【0041】
ペチュニアは、エチレンに感受性であることが既知であり、したがって、エチレン応答を研究するためのモデル系として用いられることが多い。この実験の結果は、前の実験に完全に一致し、水中に可溶性形で適用されるときの、エチレン拮抗剤としてのCPASの有効性を更に支持する。
【実施例5】
【0042】
バナナの果実を、水溶性CPASの水溶液(200μg/mL)ではけ塗りすることにより処理した。18時間後、全ての処理した及び未処理の果実を、エチレン(300μl/L)に曝露し、成熟を加速させた。全ての果実に酸素を供給し、成熟値を評価するために、22℃及びRH92%で空気中に保持した。12日目に写真を撮影した(未処理−図4A、処理−図4B)。
【0043】
更に、バナナ果実を、CPASの水溶液(0.6〜1000μg/μL、及び市販の界面活性剤ツイーン−20(0.025%))をはけ塗りすることにより処理し、18時間後エチレン(300μl/L)に24時間曝露して、成熟を加速させた。果実を24℃及びRH92%で保持した。果実を空気中に保持し、CPASのみで処理し、これを比較例とする。結果を7日目に収集した(図5A)。
【0044】
CPASの水溶液(1000μg/mL)は、果実の堅さの減少の遅延に関して効果がなく、これは果実の貯蔵寿命を延長しないことを意味する。それにもかかわらず、果実の色分解を著しく遅延させることは見出されていた(図4)。図5Aは、CPAS及びエチレン曝露に関して、バナナ果実の堅さ及び色の依存性を示す図を表す。ここに見られるように、それぞれ堅さ及び色に対して、水溶液中のCPASの二重の負及び正の効果が存在する。堅さは25Nを著しく下回るまで低下し、果実は、18時間の空気による前処理と、それに続く24時間のエチレンへの曝露後、十分食用に適していた。色分解のパターンはまさに逆であり、その時点でほぼ完了していた。CPASの負荷は、全ての濃度において、果実の堅さの低下をほとんど防がなかったが、一方色分解の防止については、高濃度で有効であった。
【実施例6】
【0045】
長い花柄を有する「ハス」アボカド果実を、100μg/mLのCPASを含有する水溶液中に30時間、花柄切断面を浸漬することにより、水溶性CPASを負荷した。未処理の花柄を有する果実は水に浸漬した。CPAS処理後、全ての果実を24時間エチレン(250μl/L)に曝露した。その後、果実を、成熟パラメータ(皮の色変化及び果肉の堅さ)及び花柄の器官脱離を評価するために、24℃及びRH92%で保持した。処理の5日後に写真を撮影した(未処理−図6A、処理−図6B)。
【0046】
成熟するにつれて、アボカドの緑の皮の色は紫〜黒になる。長い花柄を有する果実を、前処理として水溶液中のCPASに浸し、続いてエチレン処理した。拮抗剤によって、皮の色の進行及び花柄の器官脱離は著しく遅延したが、恐らく化合物の嵩高い(bulky)組織への浸透が制限されたため、果実の軟化に対してはほんの少しの遅延効果しか記録されなかった。
【0047】
したがって、得られた実験結果は、CPASが有効なエチレン拮抗剤であることを確認する。エチレン応答を阻害するのに有効な量のCPASの適用は、作物の収穫期を延長し、果実の貯蔵性及び保存寿命、並びに切花、また恐らくハーブ及び葉菜の花持ちを延ばすことを可能にする。しかしながら、CPASは、その水への溶解性、安定性、及び種々の条件下で種々の植物系のエチレン応答を阻害する高い効力のために、実用的に用いることができる唯一の化合物である。
【実施例7】
【0048】
6時間CPAS水溶液に葉柄切断面を浸漬することによる、又は外植片全体を30秒間、同じ処理溶液±界面活性剤に浸漬する、のいずれかである2種の適用方法を比較し、外因性エチレン誘導性器官脱離を拮抗する、水溶性CPASの柑橘類の葉外植片への適用を、空気下で研究した。この実験では、ツイーン−20(0.025%)を界面活性剤として選択したが、任意の非イオン性界面活性剤を選択してよい。実験は、予想通り、界面活性剤が植物組織への浸透を向上させることを示す。しかしながら、切花のように切断面を介した適用が好ましい場合、処理溶液に界面活性剤を負荷する必要はない(図7)。
【0049】
図7は、一連の3つの図を表し、ここでは外植片に、CPAS水溶液に6時間葉柄の切断面を浸漬することにより(A);同じ処理溶液に30秒間浸漬することにより(B);及びBと同様であるが、ツイーン−20(0.025%)を含む溶液により(C)、CPASを負荷する。
【実施例8】
【0050】
水溶液CPASの有効性を試験するために選択した別の植物モデルは、3週齢のトマトの苗であった。これらの苗は、若葉の上偏成長作用を誘導するエチレンに対して非常に感受性である(図8参照)。CPASが活性である場合、それはこの作用を拮抗するはずである。実験は、可溶性エチレン拮抗剤を噴霧により供給できるかどうかについても回答するように設計した。この理由のために、植物成長制御因子のような化学物質を用いるとき、野外で日常的に行われるのと同様に、界面活性剤を噴霧溶液に加えた。器官脱離の研究は(実施例7)、外植片を処理溶液に浸漬したとき、CPASの効果がより顕著であることを示した(図7)。実験の設計は、比較のための負荷処理を含んでいた(図9)。
【0051】
噴霧実験では(図8)、温室で育てたトマト植物体(3週齢)を、検定のために生育箱(8〜10時間、22℃及びRH80%、連続蛍光灯下)に運んだ。その後、植物全体に、界面活性剤として0.1%の「キネティック」を含有するリン酸緩衝液(pH7.8;10mM)に溶解したCPASを、0(A及びB)、80(C)、160(D)μg/mL噴霧した。緩衝液の使用は、pHの安定化を補助するが、必須ではない。水道水の使用も可能である。18時間後、前処理した植物(B、C及びD)を1μl/Lのエチレンに24時間曝露した。CPAS±エチレンを含まない同じ処理溶液を噴霧した植物(A及びB)は、空気又はエチレン対照として機能した。
【0052】
第2の実験では、上偏成長応答を表す、枝からの葉柄の角度の変化を算出した(図9)。実験条件は、CPASによる前処理後、トマト植物体を3μl/Lのエチレンに24時間曝露し、各葉の葉柄の上偏成長(apinasty)(枝と葉の葉柄との間の角度)を評価するために、処理の終わりに植物を棚に移動させたことを除き、図8に記載したものであった。値は、平均±標準誤差である(n=9〜12)。
【0053】
温室で育てたトマト植物体(4週齢)を、葉の葉柄のエチレンに誘導される上偏成長に対する、切り取ったトマト植物体(約15cm、長茎)へのCPAS負荷の効果を研究するために運んだ。ここで、切り取ったトマト植物体への、葉の葉柄のエチレンに誘導される上偏成長に対する、CPAS負荷の効果を表す図10を参照する。各葉の葉柄の上偏成長(枝と葉の葉柄との間の角度)を評価するために、処理の終わりに、切断面を水道水に漬けた状態の、切断された植物を棚に移動させたことを除き、他の詳細は全て実施例8に記載したものであり、値は、平均±標準誤差である(n=9〜12)。各植物を切断し、基部を前検定(上記定義のような)した後、直ちに水道水下でその切断面を新しくし、光及び湿潤条件下で、30mlの水道水中に8〜10時間定置した。その後、枝の切断面を0〜81μg/mLのCPASを含有する15mlのリン酸緩衝液(pH7.8;10mM)に浸漬した。18時間負荷した後、全ての前処理した枝を水道水に移し、24時間エチレン(3μl/L)に曝露した。CPASを含まない同じ処理溶液を負荷した外植片は、空気又はエチレン対照として機能した。
【0054】
これらの3つの実験は、CPASを水溶性噴霧農産品加工業的用具として用いることができ、界面活性剤の存在下では、CPASは植物器官のクチクラを介して組織に容易に浸透することを示す。
【実施例9】
【0055】
界面活性剤の使用についてはまた、熟しているが成熟していないモモ果実に噴霧することにより試験された(図11)。この実験はまた、水溶性CPASが、外因性エチレンのクライマクテリック上昇を拮抗し、したがって、果実の保存寿命を延長する(軟化を遅延させる)能力を研究するために設計した。追加のエチレン感受性クライマクテリック果実として、モモを選択した。この実験では、CPAS水溶液の浸透効率を更に研究した。
【0056】
モモ果実を収穫し、研究室に運び、直ちに様々な濃度のCPAS溶液を噴霧し(リン酸カリウム緩衝液、20mM、及び0.1%オルガノシリコーン界面活性剤、つまりドイツのBASFのBAS90370S)、22℃及びRH90%で4日間以下維持した。未処理果実は対照として機能した。続く処理は、(a)0時間に噴霧し、2日後堅さを検査する;(b)(a)と同じであるが、3日後に堅さを検査する;(c)(a)と同じであるが、2日目に2回目の噴霧を行い、3日後に堅さを検査する;及び(d)(c)と同じであるが、1日後に2回目の噴霧を行い、4日後に堅さを検査する、であった。堅さは、直接果実の果肉上で測定することを可能にするために、15mmの正方形の皮のストリップを取り除いた後、透過度計(chatillon、直径8mmのディスクを用いる)により記録した。
【0057】
この実験は、明らかに、CPASの、皮を介して果実の組織に浸透し、クライマクテリック型果実の保存寿命を延長する能力を示した。
【0058】
したがって、得られた実験結果は、CPASが有効なエチレン拮抗剤であることを確認する。エチレン応答を阻害するのに有効な量のCPASの適用は、作物の収穫期を延長する、果実の貯蔵性及び保存寿命並びに切花の花持ちを延ばす、葉の葉柄の上偏生長のようなエチレンの形態学的作用、また恐らくハーブ及び葉菜を可能にする。上記実施例に基づいて、CPASが、その水への溶解性、安定性、及び種々の条件下で種々の植物系のエチレン応答を阻害する高い効力に起因して、噴霧農産品加工業的用具として、又は水溶液に負荷若しくは浸漬処理するために、実用的に用いることができる化合物であると結論付けることが可能である。
【0059】
図12〜25は、阻害剤を噴霧により適用するときにも示されるように、とりわけ、浸漬及び負荷の両方により適用されるとき、エチレン拮抗剤として非常に有効であることを開示する。負荷は、界面活性剤のethCPASの水溶液への添加を必要としない。モモ果実への界面活性剤を含有するCPAS水溶液の噴霧は、阻害剤の適用が、果実の成熟に対するエチレンのクライマクテリック作用を遅延させ、結果として果実の保存寿命を延長できることを示した。
【0060】
CPASの有効量は、非限定的な方式で、約0.03〜約1000μg/μLであることが見出された。CPASは、例えば0.1〜200(μg/mL)に及ぶ有効な量まで、水溶液に溶解した。
【0061】
CPASの浸透(A)及び純度(B)
(A)界面活性剤を含む及び含まないCPAS水溶液の種々の植物への浸透を以下のように示した:a.バナナ果実(実施例5);b.柑橘類の葉外植片の器官脱離(実施例7);トマトの葉柄苗の上偏生長(実施例8);及びc.モモの堅さ(実施例9)。
【0062】
様々な非イオン性界面活性剤の使用が、CPASの組織への浸透を著しく向上させ、エチレン誘導性作用の拮抗が向上することが更に見出された。
【0063】
有効な量の界面活性剤は、非限定的な方式で、約0.025%(w/w)〜約0.1%(w/w)であることが見出された。
【0064】
(B)純度−前述のCPAS合成経路は、2つの異なるバッチで提供され、純度は約90%であった。以下の分析証明書を参照のこと。
【0065】
【表2】


【0066】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の少なくとも一部に、エチレン応答を阻害するのに有効な量の、式(1):
【化1】

により定義される、シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸塩(CPAS)を適用することを含む、植物のエチレン応答を阻害する方法。
【請求項2】
前記CPASが、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは(ii)少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの任意の組み合わせの群から選択される水溶性塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記適用工程が、前記化合物を、前記化合物を含む水溶液に接触させることにより実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記適用工程が、前記溶液に、前記植物の少なくとも一部を浸漬することにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記適用工程が、前記溶液を、前記植物の少なくとも一部に噴霧することにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記適用工程が、前記溶液を、前記植物の少なくとも一部にかける又は液滴を放出することにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記適用工程が、前記溶液を、前記植物の少なくとも一部にはけ塗りすることにより実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレン応答が果実の成熟である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記エチレン応答が野菜の成熟である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記エチレン応答が花の老化である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記エチレン応答が器官脱離である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記植物が収穫された果実である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記植物が収穫された野菜である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
切花に、寿命を延ばすのに有効な量の、式(1)により定義される化合物を適用することを含む、カットフルーツの寿命を延ばす方法。
【請求項15】
前記CPASが、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは(ii)少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの任意の組み合わせの群から選択される塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記適用工程が、前記植物を、前記化合物を含む水溶液に接触させることにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記適用工程が、前記溶液に、前記果実の少なくとも一部を浸漬することにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記適用工程が、前記溶液を、前記果実の少なくとも一部に噴霧することにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記適用工程が、前記溶液を、前記果実の少なくとも一部にはけ塗りすることにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記適用工程が、前記溶液を、前記果実物の少なくとも一部にかける又は液滴を放出することにより実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
表面活性CPAS含有水溶液が得られるように、CPASを、有効な量の界面活性剤と混合する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
切花に、寿命を延ばすのに有効な量の、式(1)により定義される化合物を適用することを含む、切花の寿命を延ばす方法。
【請求項23】
前記CPASが、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは(ii)少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの組み合わせの群から選択される塩である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記適用工程が、前記切花を、前記化合物を含む水溶液に接触させることにより実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記適用工程が、前記溶液に、前記切花の少なくとも一部を浸漬することにより実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記適用工程が、前記溶液を、前記切花の少なくとも一部に噴霧することにより実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記適用工程が、前記溶液を、前記切花の少なくとも一部にかける又は液滴を放出することにより実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記適用工程が、前記溶液を、前記切花の少なくとも一部にはけ塗りすることにより実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
式(1)により特徴付けられる、植物のエチレン応答に対する、水溶性シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸ナトリウム塩(CPAS)阻害剤。
【請求項30】
前記CPASが、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、若しくは(ii)少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの組み合わせの群から選択される水溶性塩である、請求項29に記載のシクロプロピル−1−エニル−プロパン酸塩(CPAS)。
【請求項31】
浸漬する、はけ塗りする、かける若しくは液滴を放出する、噴霧する、又はこれらの任意の組み合わせの群から選択される、市販の手段により、植物の少なくとも一部に適用するよう適合した、周囲条件(温度及び圧力)で優位に液体形である、請求項30に記載のCPAS阻害剤。
【請求項32】
有効な量まで、水溶液に溶解する、請求項30に記載のCPAS阻害剤。
【請求項33】
前記CPASが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、若しくは、少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む他の正に帯電した対イオン、又はこれらの組み合わせの群から選択される塩である、請求項30に記載のCPAS阻害剤。
【請求項34】
前記CPASが、表面活性CPAS含有水溶液が得られるよう提供される、請求項30に記載のCPAS阻害剤。
【請求項35】
(i)4−ブロモ−4−ペンテン酸又はその誘導体を調整する工程と、(ii)3−(1−シクロプロペニル)プロパン酸を生成する工程と、(iii)この酸を水溶性塩、特にそのナトリウム塩に変換する工程と、を含む、CPASの生成方法。
【請求項36】
工程(iii)が、シクロプロピル−1−エニル−プロパン酸を、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの群から選択される正に帯電した対イオン、若しくは少なくとも1つの硫酸塩若しくはリン酸塩分子を含む正に帯電した対イオン、又はこれらの組み合わせを含む塩に変換する工程である、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−533706(P2010−533706A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516652(P2010−516652)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000995
【国際公開番号】WO2009/010981
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(510016184)イッサム リサーチ デベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド (1)
【Fターム(参考)】