説明

3−メチルブタン−1−オールの脱水による3−メチルブタ−1−エンの製造

本発明の対象は、気相中又は液/気混合相中で200〜450℃の温度範囲で3−メチルブタン−1−オールをアルミニウム含有酸化物で脱水することによって3−メチルブタ−1−エンを製造する方法において、a)マクロ細孔の相対割合が15%より小さく;b)細孔径の分布が3.6〜50nmのメソ細孔の範囲でモノモーダルの極大値を有し;c)メソ細孔及びマクロ細孔の範囲の全ての細孔の平均細孔径が5〜20nmであり;d)組成の80%より多くがγ−酸化アルミニウムから成る、主としてメソ細孔の細孔構造を有するアルミニウム含有酸化物が使用されることを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒としての均一な細孔構造を有するメソ細孔の酸化アルミニウムの存在下で3−メチルブタン−1−オールを脱水することにより3−メチルブタ−1−エンを製造することに関する。
【0002】
5オレフィン、殊にメチルブテンは、工業界で切望される供給原料である。特別な2−メチルブタ−1−エンは、香料工業界で、またイソプレンの製造のために頻繁に使用される供給原料である。3−メチルブタ−1−エンは、モノマー又はコモノマーとして、ポリマーもしくはコポリマーの製造のために利用することができる。原則的に3−メチルブタ−1−エンは、たしかにC5留分、例えば軽ベンジン中に含有されている。しかしながら、かかる留分中の3−メチルブタ−1−エンの含有率は、約1〜5質量%でしかない。加えて、かかる留分からの3−メチルブタ−1−エンの分離は、比較的煩雑である。
【0003】
公知技術には、3−メチルブタ−1−エンの製造法がいくつか記載されている。メチルブテンは、工業的に、例えばメタセシス反応によって製造することができる。そうして、DE19932060は、C4オレフィンを有する炭化水素流から出発する、ペンテン及びメチルブテンの製造を記載する。
【0004】
JP62−108827には、イソプレンの部分水素化による3−メチルブタ−1−エンの製造が記載される。
【0005】
US4,234,752には、触媒としてのKOH変性されたγ−酸化アルミニウムの存在下で3−メチルブタン−1−オールを脱水することにより3−メチルブタ−1−エンを製造することが記載される。該脱水は、気相中で330℃にて、キャリヤーガスとしての窒素の存在下で実施される。
【0006】
WO2008/006633には、3つの方法工程を介した、イソブテンを含有するオレフィン混合物を基礎とする3−メチルブタ−1−エンの製造が記載される。この方法の場合、まずイソブテンがヒドロホルミル化され、該ヒドロホルミル化生成物の3−メチルブタナールが3−メチル−ブタン−1−オールへと水素化され、引き続き、得られたアルコールから水が脱離される。3−メチル−ブタン−1−オールから3−メチルブタ−1−エンへの脱水には、好ましくは塩基性変性された酸化アルミニウムが使用される。例に記載される、気相中で340℃及び0.15MPaでの脱水の場合、触媒として、バリウム化合物1.5質量%(酸化バリウムとして計算)で変性されたγ−酸化アルミニウムが使用される。該生成物は、有価生成物としての3−メチルブタ−1−エン94.5質量%の外に、付加的に3−メチルブタ−2−エン、2−メチルブタ−1−エン及びジ−(3−メチルブチル)エーテルを副生成物として含有していた。
【0007】
公知技術に従って、例えば、US4,234,752、WO2005/080302及びWO2008/006633に説明されるように、3−メチルブタン−1−オールの脱水の際に使用される酸化アルミニウムの塩基性変性によって、3−メチルブタ−1−エンの収率の改善につながりうる。
【0008】
一般的に、未変性の酸性酸化アルミニウムも、アルコールからオレフィンへの開裂に使用できることが知られている。該アルコールの脱水によって得られる内部−及び末端オレフィン異性体の異性体分布は、触媒の酸性度が規準となって測定される。目的に合わせて塩基で酸化アルミニウムを変性することによって、第1級アルコールからの末端α−オレフィンの形成の選択率を改善することができる。
【0009】
公知技術に記載されるいずれの方法を用いても、簡単な仕方で、満足のいく反応率及び高い選択率で、3−メチルブタン−1−オールを基礎とする3−メチルブタ−1−エンを製造することは可能でない。
【0010】
したがって、本発明の課題は、未変性の酸化アルミニウムを用いて3−メチル−ブタン−1−オールを脱水することにより、3−メチルブタ−1−エンを簡単かつ経済的に製造する方法を見出すことであった。
【0011】
酸化アルミニウムは、該製造法及び温度処理に依存して、構造的に異なる形態をとっていてよい。一般的に、酸化アルミニウムは、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie(VCH Weinheim.Band 7,1974)に従って、3つの種類、すなわち、α変態、いわゆるγ型及び特殊型に細分される。熱力学的に最も安定な形態のα−酸化アルミニウム(コランダム)を除いて、その他の酸化アルミニウム変態は、表面積に富んだ酸化物である。γ−酸化アルミニウム型は、さらにγ群とδ群に区分される。η−酸化アルミニウムも含まれるγ群の最も重要な代表物質は、γ−酸化アルミニウムである。δ群は、高温型、例えばδ−及びρ−酸化アルミニウムを包含する。酸化アルミニウムの最も重要な特性は、原則的にどの酸化アルミニウム変態の場合でも見出すことができる酸性中心の存在に基づいている。そのうえまた、化学反応の反応率及び選択率は、酸化アルミニウムの細孔構造及び内部表面積によって影響を及ぼされる。
【0012】
ところで意想外にも、触媒として、均一な細孔構造を有するメソ細孔の酸化アルミニウムを使用することで、3−メチルブタ−1−エンを、特に簡単な仕方で、3−メチルブタン−1−オールの脱水によって製造できることが見出された。
【0013】
それにしたがって、本発明の対象は、気相中又は液/気混合相中で200〜450℃の温度範囲で3−メチルブタン−1−オールをアルミニウム含有酸化物で脱水することによって3−メチルブタ−1−エンを製造する方法において、
主としてメソ細孔の細孔構造を有するアルミニウム含有酸化物を使用し、該アルミニウム含有酸化物の:
a)マクロ細孔の相対割合が15%より小さく;
b)細孔径の分布が3.6〜50nmのメソ細孔の範囲でモノモーダルの極大値を有し;
c)メソ細孔及びマクロ細孔の範囲の全ての細孔の平均細孔径が5〜20nmであり;
d)組成の80%より多くがγ−酸化アルミニウムから成る、
ことを特徴とする方法である。
【0014】
同様に本発明の対象は、3−メチルブタ−1−エン及び2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンを含有する混合物であり、その際、3−メチルブタ−1−エンの質量割合は少なくとも90質量%であり、かつ、2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンの質量割合は10質量%未満である。
【0015】
本発明による方法は、以下の利点を有する:
a)市販の安価な、頻繁にすでに所望の形態で存在している酸化アルミニウムが、
b)後処理なしで使用することができる。
【0016】
それによって、費用面での利点が生じる。さらに、本発明により使用される触媒は、高い活性及び生成物選択性を有する。
【0017】
3−メチルブタノールを脱水して3−メチルブタ−1−エンを得る本発明による方法では、特別なγ−酸化アルミニウムが使用される。好ましくは、均一な細孔構造を有するメソ細孔の酸化アルミニウムが使用される。本発明により使用されるγ−酸化アルミニウムは、以下の特徴を有する:
Hgポロシメーターによって測定して、3.6nm〜100μmの細孔径範囲のマクロ細孔(50nm〜100μmの細孔径)の細孔容積の相対割合が15%より下である(マクロ細孔の相対細孔容積は、全細孔容積に対する全マクロ細孔範囲にわたった細孔容積の比率である)。殊に、この比率は、10%より下であり、極めて有利には5%より下である。
【0018】
好ましくは、3.6nm〜100μmの直径を有する全ての細孔の平均細孔径は、5nmから20nmまでの間に、極めて有利には6nmから12nmまでの間にある(Hgポロシメーターによって測定)。
【0019】
好ましくは、本発明により使用されるγ−酸化アルミニウムは、3.6〜50nmの細孔径範囲で(殊に5〜20nmの細孔径範囲で)(Hgポロシメーターによって測定して)モノモーダルの極大値を有する。
【0020】
X線回折分析(XRD)によって測定された本発明により使用される酸化アルミニウムの相組成は、80%を超えて、殊に85%を超えて、極めて有利には90%を超えてγ−酸化アルミニウムから成る。
【0021】
本発明により使用される酸化アルミニウムのBET表面積は、120〜360m2/gの範囲に、殊に150〜200m2/gの範囲にある。
【0022】
使用される触媒は、99質量%を超えて酸化アルミニウムから成る。さらに、触媒は、二酸化チタン、二酸化ケイ素及び0.2質量%までアルカリ金属酸化物を有してよい。
【0023】
多孔質材料、その中で、本発明による酸化アルミニウムの特性決定に際して、IUPAC基準(Manual on Catalyst Characterization in Pure & Appl.Chem.Vol.63,pp.1227,1991)に従って、2nmより小さい細孔径を有する細孔はミクロ細孔と呼ばれ、2〜50nmの範囲の細孔径を有する細孔はメソ細孔と呼ばれ、また50nmより大きい直径を有する細孔はマクロ細孔と呼ばれる。
【0024】
DIN66133に従ったメソ−及びマクロ細孔範囲の触媒の細孔半径分布PRV及び細孔容積PVの測定には、高圧式水銀ポロシメーターが適用される。この測定法は、液体の水銀が細孔表面を湿らさないことに基づく。それは外部圧力の作用下でのみ細孔に浸透する。この圧力は、細孔サイズの関数である。測定可能な非常に小さい細孔径は、適用される水銀最終圧力によって制限されている。
【0025】
ミクロ−及びメソ細孔範囲のBET表面積、細孔半径分布PRV及び細孔容積PVの測定には、77Kでの窒素吸着が適用される。その際、77Kでの一定温度での容量測定により、吸着の量(N2)が相対圧力に依存して測定される。得られたデータから、吸着−、もしくは脱着等温線が作成され、またBET表面積、細孔半径分布PRV及び平均細孔径が計算される。DIN66131に従ったBET表面積の測定には、0.1から0.3までの相対圧力範囲(p/po)のN2吸着等温線が考慮され、また該表面積は、Braunauer−Emmet−Tellerの式に従って測定される。評価は、粒子の内部表面積の単分子被覆の想定に基づいており、そこから該表面積の数字の上での大きさを計算することができる。本発明における酸化アルミニウムのBET表面積の計算に、Micrometics社のASAP 2400型の吸着装置を使用した。メソ−及びマクロ細孔範囲の細孔容積PV及び細孔半径分布PRVは、DIN66133に従ってPorotec社のPascal 140/440型のHgポロシメーターを用いて測定した。測定部の最大Hg圧力は、400MPa(4000bar)に制限されている。
【0026】
該装置は、3.6nm〜100μmの直径Dpを有する細孔の細孔容積PV及び細孔半径分布PRVを測定することを可能にする。測定された全細孔容積から、3.6〜50nmのDpを有するメソ細孔容積とDp>50nmを有するマクロ細孔容積の相対百分率を決定することができる。
【0027】
本発明による方法では、脱水は気相中又は液/気混合相中で実施することができる。方法は、連続的又は不連続的に、かつ、懸濁された又は塊状の、固定床に配置された触媒上で実施することができる。水脱離は、反応混合物からの反応生成物の簡単な分離ゆえに、有利には、固体触媒上で200〜450℃の温度範囲で気相中又は気/液混合層中で実施される。特に有利には、連続的な脱水は、固定床に配置された触媒上で実施される。
【0028】
触媒は、好ましくは、球、ペレット、シリンダー、ストランド押出物又はリングの形態で使用される。
【0029】
3−メチル−ブタン−1−オールの脱水は、例えば断熱的に、ポリトロープ的に又は実際に等温的に、すなわち、概して10℃より小さい温度差で実施してよい。方法工程は、単段式又は多段式で実施してよい。後者の場合、全ての反応器、目的に応じて管形反応器を、断熱的に又は実際に等温的に動かしてよい。同様に、1個以上の反応器を断熱的に、また他の反応器を実際に等温的に動かしてもよい。有利には、水脱離はシングルパスで行われる。しかしながら、それは生成物の返送下で行うこともできる。シングルパスで行われる場合、比触媒負荷量は、触媒1kg及び1時間当たり、アルコール0.01〜30kg、有利には0.1〜10kgである。水脱離に際して、触媒層の温度は、好ましくは200〜450℃、殊に250〜320℃である。水脱離(脱水)は、圧力を減少させて、過圧下で又は常圧で実施してよい。
【0030】
3−メチルブタ−1−エンを得るための可能な限り高い選択率を達成するために、使用されるアルコールの部分反応のみが追求される場合、好ましいことが判明した。有利には、反応はシングルパスで30〜90%に制限される。
【0031】
殊に本発明による方法に従って得られることができる、本発明による3−メチルブタ−1−エンは、好ましくは2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンを10質量%以下、有利には1質量%以下及び特に有利には0.001〜1質量%含有する。有利な混合物は、3−メチルブタ−1−エン及び2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンを含有し、その際、3−メチルブタ−1−エンの質量割合は少なくとも90質量%であり、かつ、2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンの質量割合は10質量%未満である。好ましくは、該混合物は、3−メチルブタ−1−エンを少なくとも99質量%及び特に有利には99.000〜99.999質量%有し、かつ、2−メチルブタ−1−エン及び/又は3−メチルブタ−2−エンを有利には1質量%以下及び特に有利には0.001〜1質量%有し、その際、割合は全て足して100%となる。
【0032】

以下の例は、本発明による方法を詳説するものである。
【0033】
3−メチルブタン−1−オールの実例の脱水用触媒として、商業的に得られる酸化アルミニウムを使用した。上記測定法に従った触媒の特性決定の結果は、第1表にまとめられている。
【0034】
【表1】

【0035】
第1表にリストアップされる酸化アルミニウムSP 537及びSP 538 Fは、本発明により使用された触媒の例である。第1表から読み取ることができるように、該触媒は、高い割合のメソ細孔を有する。細孔の大きさが3.6nm〜100μmの範囲の全細孔容積における相対マクロ細孔割合は5%を下回る。それに対して、本発明によらない酸化アルミニウムLD 350及びSA 31132双方は、高い割合のマクロ細孔にて、少ない割合のメソ細孔を有する。
【0036】
例1:3−メチルブタン−1−オールの脱水(本発明によらない)
99.81質量%の純度を有する3−メチルブタン−1−オールを、電気加熱される流通固定床反応器中で、0.59g/cm3の嵩密度を有する球形(2〜3mmの球)の酸化アルミニウム触媒LD 350上で反応させた。反応器に入る前に、液状の出発材料を、前接続された蒸発器中で220℃にて蒸発させた。反応温度300〜330℃で、1時間毎に3−メチルブタン−1−オール13.6gを、気相中で触媒23.7gに、0.57h-1のWHSV値に応じて導入した。比触媒負荷量WHSV(重量空間速度)は、1時間当たりの触媒1g当たりの出発材料(g)で示される。反応圧力は0.15MPaであった。ガス状の生成物を冷却器中で冷却し、そしてガラス受け器に収集した。生成物は水不含で計算して以下の組成を有していた:
【表2】

【0037】
第2表には、生成物の組成の外に、100%に規格化されたC5オレフィン異性体の分布が記載されている。選択された反応条件下で、反応温度330℃にて、約41.5質量%の3−メチルブタ−1−エンの含有率が達成された。反応温度の上昇とともに、有価生成物3−メチルブタ−1−エンの形成が増大する。3−メチルブタン−1−オールの開裂の副生成物として、主として3−メチルブタン−1−オールのエーテルのジ−3−メチルブチルエーテル(ジイソアミルエーテル)が形成される。
【0038】
例2:3−メチルブタン−1−オールの脱水(本発明によらない)
99.81質量%の純度を有する3−メチルブタン−1−オールを、電気加熱される流通固定床反応器中で、0.52g/cm3の嵩密度を有する酸化アルミニウム触媒SA 31132(直径3mm及び長さ3〜4mmの押出物)上で反応させた。
【0039】
反応器に入る前に、液状の出発材料を、例1のように、前接続された蒸発器中で220℃にて蒸発させた。反応温度300〜330℃で、1時間毎に3−メチルブタン−1−オール13.0gを、気相中で触媒22.0gに、0.57h-1のWHSV値に応じて導入した。反応圧力は0.15MPaであった。ガス状の生成物を冷却器中で冷却し、そしてガラス受け器に収集した。生成物は水不含で計算して以下の組成を有していた:
【表3】

【0040】
第3表には、生成物の組成の外に、100%に規格化されたC5オレフィン異性体の分布が記載されている。第3表から読み取ることができるように、本発明によらない触媒SA 31132上では、例1と比較可能な反応条件下で、比較可能な有価生成物3−メチルブタ−1−エンの含有率が達成された。3−メチルブタン−1−オールの開裂の選択率は、ジ−(3−メチルブチル)エーテルの形成によって減少する。
【0041】
選択された反応条件下で、反応温度330℃にて、約41.5質量%の含有率の3−メチルブタ−1−エンが達成された。
【0042】
例3:3−メチルブタン−1−オールの脱水(本発明による)
99.81質量%の純度を有する3−メチルブタン−1−オールを、電気加熱される流通固定床反応器中で、0.58g/cm3の嵩密度を有する球形(1.7〜2.1mmの小球)の酸化アルミニウム触媒SP 537上で反応させた。反応器に入る前に、液状の出発材料を、前接続された蒸発器中で220℃にて蒸発させた。反応温度250〜300℃で、1時間毎に3−メチルブタン−1−オール13.6gを、気相中で触媒26.0gに、0.52h-1のWHSV値に応じて導入した。反応圧力は、例1のように0.15MPaであった。ガス状の生成物を冷却器中で冷却し、そしてガラス受け器に収集した。生成物は水不含で計算して以下の組成を有していた:
【表4】

【0043】
第4表から読み取ることができるように、本発明による触媒では、260℃より高いすでに低い反応温度で56質量%を超える3−メチルブタ−1−エンの含有率が達成された。3−メチルブタ−1−エンの高い収率を達成するのに最適な温度範囲は、選択された触媒負荷の下で270〜280℃である。この温度範囲内では、86質量%を超える非常に高い3−メチルブタ−1−エンの含有率が達成された。280℃及びそれより高い反応温度の場合、出発材料の3−メチルブタン−1−オールは、本発明による触媒上で完全に反応してオレフィンと水が形成される。C5オレフィン混合物中の3−メチルブタ−1−エンの割合は、触媒負荷量を一定に維持した場合、温度を高めるにつれて、予期した通り、形成された3−メチルブタ−1−エンが異性化して内部C5オレフィン異性体を形成することに基づき減少する。第2表及び第3表での結果と第4表での結果を比較すると、本発明による触媒SP 537が、本発明によらない触媒と比較して明らかにより高い活性及び選択性を有していることがわかる。
【0044】
例4:3−メチルブタン−1−オールの脱水(本発明による)
99.81質量%の純度を有する3−メチルブタン−1−オールを、電気加熱される流通固定床反応器中で、0.55g/cm3の嵩密度を有する三葉形(1.8mmの三葉体)の酸化アルミニウム触媒SP 538 F上で反応させた。該SP触媒587 Fの細孔構造は、例3で使用される触媒SP 537の細孔構造と実質的に比較可能である(表を参照のこと)。反応器に入る前に、液状の出発材料を、前接続された蒸発器中で220℃にて蒸発させた。反応温度280〜300℃で、1時間毎に3−メチルブタン−1−オール13.6gを、気相中で触媒24.7gに、0.55h-1のWHSV値に応じて導入した。反応圧力は、先行する例のように0.15MPaであった。ガス状の生成物を冷却器中で冷却し、そしてガラス受け器に収集した。生成物は水不含で計算して以下の組成を有していた:
【表5】

【0045】
触媒SP 538 Fの触媒挙動、例えば活性及び選択性は、触媒SP 537の挙動に似ている。温度範囲280〜300℃では、比較可能な負荷量の場合、84質量%を超える非常に高い含有率の3−メチルブタ−1−エンが達成された。選択された条件下で、収率最大値は、反応温度290℃にて、3−メチルブタ−1−エンの含有率では約91.4質量%である。この温度の場合、3−メチルブタン−1−オールは、本発明による触媒SP 538 F上で完全に反応してC5オレフィンと水が形成される。例1及び2からの本発明によらないマクロ細孔の触媒とは異なり、290℃より高い温度で、ジ−(3−メチルブチル)エーテルは形成されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相中又は液/気混合相中で200〜450℃の温度範囲で、アルミニウム含有酸化物で3−メチルブタン−1−オールを脱水することによって3−メチルブタ−1−エンを製造する方法において、
主としてメソ細孔の細孔構造を有するアルミニウム含有酸化物を使用し、該アルミニウム含有酸化物の:
a)マクロ細孔の相対割合が15%より小さく;
b)細孔径の分布が3.6〜50nmのメソ細孔の範囲でモノモーダルの極大値を有し;
c)メソ細孔及びマクロ細孔の範囲の全ての細孔の平均細孔径が5〜20nmであり;
d)組成の80%より多くがγ−酸化アルミニウムから成る、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記マクロ細孔の相対割合が5%より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メソ細孔及びマクロ細孔の範囲の全ての細孔の平均細孔径が6〜12nmであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルミニウム含有酸化物の90%より多くがγ−酸化アルミニウムから成ることを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公表番号】特表2012−528096(P2012−528096A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512286(P2012−512286)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055670
【国際公開番号】WO2010/136289
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】