説明

3−(2−アルコキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸エステル類および嗅覚化合物の送達のための前駆体としてのこれらの使用

式(I)


式中、n、Y、R、R、RおよびRは、明細書中に示したものと同一の意味を有する、
で表される化合物、前駆体としてのこれらの使用およびこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−(2−アルコキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸エステル類および嗅覚化合物の送達のための前駆体としてのこれらの使用に関する。本発明はさらに、これらの製造方法およびこれらを含む消費者製品に関する。
【背景技術】
【0002】
臭気を消費者製品に付与するにあたり現在用いられている原理的な方法は、香料を直接製品中に混合することである。しかし、この方法にはいくつかの欠点がある。香料物質は、過度に揮発性および/または過度に水に溶解性であり、これにより、製造、貯蔵および使用中の香料の損失がもたらされ得る。多くの香料物質はまた、長時間にわたり不安定である。再び、これにより、貯蔵中の損失がもたらされる。多くの消費者製品において、香料が、長時間にわたりゆっくりと放出されるのが、望ましい。シクロデキストリンとのマイクロカプセル封入および包含複合体は、揮発性を低下させるのを補助し、安定性を改善し、ゆっくりとした放出の特性を付与するために、用いられている。しかし、これらの方法は、多くの理由により、しばしば功を奏しない。さらに、シクロデキストリンは、多くの用途において用いるには過度に高価であり得る。従って、香料化合物(1種または2種以上)を制御された方法で放出し、所望の臭気または芳香を長時間にわたり維持することができる香料送達系を有するのが、望ましい。
【0003】
香料化合物の送達のための前駆体を用いる原理は、数年前に文献中で初めて出現した。3−(2−ヒドロキシアリール)アクリル酸エステル(以下の化合物A)を用いることは、EP 0 936 211に記載されている。この送達系は、1種または2種以上の嗅覚化合物を、光への露光により放出する。この系を種々の消費者製品において用いることにより、香料化合物(1種または2種以上)の長時間の放出がもたらされる。不都合なことに、3−(2−ヒドロキシアリール)アクリル酸エステルを用いることにより、これを含む消費者製品、例えば洗濯物ケア製品、例えば織物軟化剤および洗浄剤の変色、例えば黄色変色がもたらされ得るのみならず、またこれにより、基材、例えば該製品を洗浄サイクルまたはすすぎサイクルの間に適用する織物の変色がもたらされ得る。製品、例えば織物の変色は、一般的には望ましくなく、従って1種または2種以上の嗅覚化合物を放出する有利な能力を有するが、変色を生じない前駆体についての必要性が、尚残留する。
【発明の開示】
【0004】
ここで、ある3−(2−アルコキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸エステル類は、変色を肉眼に視覚可能に示さずに、1種または2種以上の嗅覚化合物を放出する能力を有することが、見出された。驚異的なことに、あるフェノール保護基、特にエステルおよび炭酸塩は、従来技術の化合物(A)
【化1】

を、これらを含む消費者製品中で色を安定にする能力を有することが、見出された。
【0005】
従って、いかなる方法によっても本発明を限定せずに、例えばEP 0 936 211およびWO 03/022978に記載されている従来技術の化合物の遊離のフェノール性水酸基は、変色の原因であると、考えられる。
【0006】
従って、本発明の第1の観点は、式(I)
【化2】

式中、アクリル酸エステルの二重結合は、E立体配置にあり;
nは、0または1であり;
【0007】
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R、RおよびRは、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R、RおよびRは、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり、例えばYは、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルであり;あるいは
【0008】
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R、RおよびR10の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R、RおよびR10の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;
【0009】
およびRは、独立して水素、C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル;C〜Cアルコキシ残基、例えばメトキシ、エトキシ;−NO;−NH;−NHCOCH;−N(C〜Cアルキル)、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ;−N(ヒドロキシアルキル)、例えばジ(ヒドロキシエチル)アミノ、ジ(ヒドロキシプロピル)アミノ;−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)、例えば−NHC(O)−メチルまたは−NHC(O)−フェニルであり;あるいは
およびRは、位置C(6,7)、C(7,8)またはC(8,9)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
2または3位にあるRは、水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、tert−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばビニル、プロペニル;C〜Cシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル;または−CNであり;かつ
【0010】
nが0である場合には、Rは、C〜C24、好ましくはC〜C18炭化水素残基、例えばメチル、エチルもしくはフェニル;またはN、OおよびSiから選択された1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含むC〜C24、好ましくはC〜C18炭化水素残基であり;あるいは
nが1である場合には、Rは、C〜C25、好ましくはC〜C18炭化水素残基;N、O、SiおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C25炭化水素残基;または式N(R20で表され、ここでR20は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基の残基であるイオン性置換基、例えばトリメチルアンモニウムもしくはトリブチルアンモニウムにより置換された、C〜C25、好ましくはC〜C18炭化水素残基であり;あるいは
【0011】
Rは、式(i)
【化3】

式中、
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R14、R15およびR16は、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R14、R15およびR16は、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり、例えばXは、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルであり;あるいは
【0012】
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R17、R18およびR19の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R17、R18およびR19の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;
【0013】
12およびR13は、独立して水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル;C〜Cアルコキシ残基、例えばメトキシ、エトキシ;−NO;−NH;−NHCOCH;−N(C〜Cアルキル)、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ;N(ヒドロキシアルキル)、例えばジ(ヒドロキシエチル)アミノ、ジ(ヒドロキシプロピル)アミノ;−NHC(O)−(C〜Cアルキル);または−NHC(O)−(C〜Cアリール)、例えば−NHC(O)−メチルまたは−NHC(O)−フェニルであり;あるいは
12およびR13は、位置C(vi,vii)、C(vii,viii)またはC(viii,ix)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
iiまたはiii位にあるR11は、水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、tert−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばビニル、プロペニル;C〜Cシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル;または−CNである、
で表される1価の残基である、
で表される化合物の、嗅覚化合物のための前駆体としての使用に関する。
【0014】
式(I)で表される化合物に関して用いる「炭化水素残基」は、他に示さない限り、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルを表し、「O、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含む炭化水素残基」は、1個または2個以上の炭素原子が、O、Nおよび/またはC(O)により置換されている、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルを表す。
【0015】
本明細書中で用いる「嗅覚化合物」により、ヒトにより検出可能な臭気、好ましくは快い臭気を有する分子を意味する。本明細書中で用いる用語「嗅覚」および「芳香性」は、同義に用い、同一の化合物を表す。
【0016】
nが1であり、Yが、芳香性アルコールHO−CRの残基であるか、またはエノールの残基が、式O=(CH)−CHR10で表される芳香性アルデヒドを形成するか、またはエノールの残基が、式O=(CR)−CHR10で表される芳香性ケトンを形成し、かつRが、式(i)で表される1価の残基である場合には、Xは、芳香性アルコールHO−CR141516の残基であるか、またはエノールの残基が、式O=(CH)−CHR1819で表される芳香性アルデヒドを形成するか、またはエノールの残基が、式O=(CR17)−CHR1819で表される芳香性ケトンを形成する、式(I)で表される化合物が、好ましい。
【0017】
さらに一層好ましいのは、nが1であり、Yが、芳香性アルコールHO−CRの残基であるか、またはエノールの残基が、式O=(CH)−CHR10で表される芳香性アルデヒドを形成するか、またはエノールの残基が、式O=(CR)−CHR10で表される芳香性ケトンを形成し、かつRが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルから選択されているか、または芳香性アルコールの残基である、本発明の化合物である。
【0018】
本発明の目的のために、用語「芳香性アルコール」は、本明細書中では、46〜400、好ましくは100〜300の分子量を有するすべてのアルコールとして定義される。
【0019】
式HO−CRおよびHO−CR141516で表される芳香性アルコール類の例には、以下のものが含まれる:
アミルアルコール;ヘキシルアルコール;2−ヘキシルアルコール;ヘプチルアルコール;オクチルアルコール;ノニルアルコール;デシルアルコール;ウンデシルアルコール;ラウリルアルコール;ミリスチンアルコール;3−メチル−ブト−2−エン−1−オール;3−メチル−1−ペンタノール;シス−3−ヘキセノール;シス−4−ヘキセノール;3,5,5−トリメチル−ヘキサノール;3,4,5,6,6−ペンタメチルヘプタン−2−オール;シトロネロール;ゲラニオール;オクト−1−エン−3−オール;2,5,7−トリメチル−オクタン−3−オール;2−シス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール;6−エチル−3−メチル−5−オクテン−1−オール
【0020】
3,7−ジメチル−オクト−3,6−ジエノール;3,7−ジメチルオクタノール;7−メトキシ−3,7−ジメチル−オクタン−2−オール;シス−6−ノネノール;5−エチル−2−ノナノール;6,8−ジメチル−2−ノナノール;2,2,8−トリメチル−7(8)−ノネン−3−オール;ノナ−2,6−ジエン−1−オール;4−メチル−3−デセン−5−オール;デク−9−エン−1−オール**;ベンジルアルコール;2−メチル−ウンデカノール;10−ウンデセン−1−オール;1−フェニル−エタノール;2−フェニル−エタノール;2−メチル−3−フェニル−3−プロペノール;2−フェニル−プロパノール;3−フェニル−プロパノール;4−フェニル−2−ブタノール;2−メチル−5−フェニル−ペンタノール;2−メチル−4−フェニル−ペンタノール;3−メチル−5−フェニル−ペンタノール;2−(2−メチルフェニル)エタノール;4−(1−メチルエチル)ベンゼン−メタノール;4−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン−2−オン;2−フェノキシ−エタノール;4−(1−メチルエチル)−2−ヒドロキシ−1−メチルベンゼン;
【0021】
2−メトキシ−4−メチル−フェノール;4−メチル−フェノール;アニスアルコール;p−トリルアルコール;ケイ皮アルコール;バニリン;エチルバニリン;オイゲノール;イソオイゲノール;チモール;アネトール;デカヒドロ−2−ナフタレノール;ボルネオール;セドレノール;ファルネソール;フェンチルアルコール;メントール;3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール;アルファヨノール;テトラヒドロヨノール;2−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール;3−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール;4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール;4−イソプロピル−シクロヘキサノール;6,6−ジメチル−ビシクロ[3.3.1]ヘプト−2−エン−2−エタノール;6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−メタノール;p−メント−8−エン−3−オール;3,3,5−トリメチル−シクロヘキサノール;2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセニル−メタノール;4−(1−メチルエチル)シクロヘキシル−メタノール;4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール;2−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキサノール;2,2,6−トリメチル−アルファ−プロピル−シクロヘキサンプロパノール
【0022】
5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール;3−メチル−5−(2,2,3−トリメチルシクロペンチル−3−エニル)ペント−4−エン−2−オール;2−エチル−4−(2,2,3−トリメチルシクロペンチル−3−エニル)ブト−2−エン−1−オール;4−(5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)シクロヘキサノール;2−(2−メチルプロピル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピラン;2−シクロヘキシル−プロパノール;2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチル−シクロヘキサノール;1−(2−tert−ブチル−シクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール;1−(4−イソプロピル−シクロヘキシル)エタノール;2,6−ジメチル−オクト−7−エン−2−オール**;2,6−ジメチル−ヘプタン−2−オール**;および3,7−ジメチル−オクタ−1,6−ジエン−3−オール**
ここで、は、好ましいアルコール類を示し、**は、一層好ましいアルコール類を示す。
【0023】
本発明の目的のために、用語「芳香性アルデヒド」は、本明細書中では、100〜450、好ましくは120〜300の分子量を有するすべてのアルデヒドとして定義される。
【0024】
式O=(CH)−CHR10およびO=(CH)−CHR1819で表される芳香性アルデヒド類の例には、以下のものが含まれる:
2,6,10−トリメチルウンデク−9−エナール;1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−8,8−ジメチル−2−ナフタレンカルボキシアルデヒド;トリデカナール;2−[4−(1−メチルエチル)フェニル]エタナール;2,4−ジメチル−シクロヘクス−3−エン−1−カルボキシアルデヒド;4−カルボキシアルデヒド−1,3,5−トリメチル−シクロヘクス−1−エン;1−カルボキシアルデヒド−2,4−ジメチル−シクロヘクス−3−エン;1−カルボキシアルデヒド−4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)シクロヘクス−3−エン;3,5,5−トリメチル−ヘキサナール;ヘプタナール;2,6−ジメチル−ヘプト−5−エナール;デカナール**;デク−9−エナール;デク−4−エナール;2−メチルデカナール;ウンデク−10−エナール**;ウンデカナール;ドデカナール**;2−メチル−ウンデカナール**;トリデカナール;オクタナール**;ノナナール;3,5,5−トリメチルヘキサナール;ウンデク−9−エナール**;2−フェニル−プロパナール;4−メチル−フェニル−アセトアルデヒド;3,7−ジメチル−オクタナール;ジヒドロファルネサール**;7−ヒドロキシ−3,7−ジメチル−オクタナール;2,6−ジメチル−オクト−5−エナール;2−[4−(1−メチルエチル)フェニル]エタナール;3−(3−イソプロピル−フェニル)ブタナール**;2−(3,7−ジメチルオクト−6−エノキシ)エタナール;1−カルボキシアルデヒド−4−(4−メチル−3−ペンテニル)シクロヘクス−3−エン
【0025】
2,3,5,5−テトラメチル−ヘキサナール;ロンギホルアルデヒド;2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘクス−2−エン−1−イル)ブタナール;2−メチル−3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール**;4−(1,1−ジメチル−エチル)ベンゼン−プロパナール;2−[4−(1−メチル−エチル)−フェニル]プロパナール;アルファ−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−5−プロパナール;3,7−ジメチル−オクト−6−エナール;2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)−プロピオンアルデヒド;4−(4−ヒドロキシ−4−メチル−ペンチル)シクロヘクス−3−エン−1−カルボキシアルデヒド**;アルファ−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−5−プロパナール;1−カルボキシアルデヒド−4−(1,1−ジメチルエチル)−シクロヘキサン;4−(オクタヒドロ−4,7−メタノ−5H−インデン−5−イリデン)ブタナール;および[(3,7−ジメチル−6−オクテニル)−オキシ]アセトアルデヒド**
ここで、は、好ましいアルデヒド類を示し、**は、一層好ましいアルデヒド類を示す。
【0026】
本発明の目的のために、用語「芳香性ケトン」は、本明細書中では、100〜450、好ましくは120〜350の分子量を有するすべてのケトンとして定義される。
【0027】
式O=(CR)−CHR10およびO=(CR17)−CHR1819で表される芳香性ケトン類の例には、以下のものが含まれる:
2−ヘプチル−シクロペンタノン;2,2,6,10−テトラメチルトリシクロ−[5.4.0.0(6,10)]ウンデカン−4−オンベンジルアセトン;カルボン;1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメンチル−4H−インデン−4−オン;メチルヘプテノン;ジメチルオクテノン;2−(ブタン−2−イル)シクロヘキサノン;2−ヘキシル−シクロペント−2−エン−1−オン;2−(1−メチルエチル)−5−メチル−シクロヘキサノン;2−(2−メチルエチル)−5−メチル−シクロヘキサノン;3−メチル−シクロペンタデカノン;4−tert−ペンチル−シクロヘキサノン;3−オキソ−2−ペンチル−シクロペンタン−酢酸メチルエステル**;1−(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)エタノン;および3−メチル−5−プロピル−シクロヘクス−2−エン−1−オン
ここで、は、好ましいケトン類を示し、**は、一層好ましいケトン類を示す。
【0028】
他の態様は、nが1であり、RおよびYが上記に示したものと同一の意味を有し、
I)R、RおよびRが、Hであり;
II)RおよびRが、Hであり、Rが、C(2)もしくはC(3)においてメチルもしくは−CN、またはC(3)においてフェニルであり;
III)Rが、Hであり、Rが、C(6)〜C(8)のいずれかにおいてメチル、エチル、プロピル、もしくはイソプロピル、またはC(6)〜C(8)のいずれかにおいてメトキシ、エトキシ、プロピルオキシであり、Rが、C(2)もしくはC(3)においてH、メチルもしくは−CN、またはC(3)においてフェニルであり;
IV)RおよびRが、位置C(6,7)、C(6,8)、C(6,9)、C(7,8)もしくはC(8,9)においてメチルであり;またはRおよびRが、C(7,9)においてメトキシであり、かつRが、C(2)もしくはC(3)においてH、メチルもしくは−CN、またはC(3)においてフェニルであり;
V)Rが、C(2)もしくはC(3)においてH、メチルもしくは−CN、またはC(3)においてフェニルであり、かつRが、C(6)においてメチルであり、かつRが、C(9)においてイソプロピルであり、またはRが、C(6)においてイソプロピルであり、かつRが、C(9)においてメチルである、
式(I)で表される化合物に関する。
【0029】
nが1であり、RおよびYが上記に示したものと同一の意味を有し、Rが、位置C(2)もしくはC(3)において水素もしくはメチルであり、RおよびRが水素であるか、またはRが水素であり、Rが7−メトキシであるか、またはRが水素であり、Rが6−メチルであるか、またはRが水素であり、Rが7−メチルであるか、またはRが水素であり、Rが8−メチルであるか、またはRが水素であり、Rが6−tert−ブチルであるか、またはRが6−tert−ブチルであり、Rが8−tert−ブチルである、式(I)で表される化合物が、好ましい。
【0030】
活性物質の放出は、スキーム1に示すように、好ましくは酵素の存在下での加水分解、続いて光異性化/ラクトン化による2つの連続する工程において、起こる。2つの異なる連続的な切断機構により、本発明の化合物を付与する基材の乾燥プロセスの2つの異なる工程における嗅覚化合物の放出を制御することが、可能である。これは、例えば、第1の工程において織物を回転乾燥した後の、式ROH(IV)で表されるアルコールの放出並びに、ライン乾燥(line-drying)中にUV光、例えば日光に露光された際の、アルコール(III)、またはY=−CR=CR10について互変によるケトンもしくはアルデヒド、および式(IIa)で表されるクマリンの放出である。言い換えると、UV光に露光した場合には、芳香の第1の増大は、洗濯機が開放された際に感知可能であり、芳香の第2の増大は、ライン乾燥プロセスの間に感知可能である。
【0031】
スキーム1:
【化4】

【0032】
従って、本発明の他の観点は、嗅覚化合物を基材に付与する方法であって:
a)式(I)で表される化合物を、加水分解により切断し、式(Ia)で表される化合物を得る工程;続いて
b)工程aの式(Ia)で表される化合物を、活性化条件の下で、光の存在下で切断し、クマリン(IIa)を得る工程
を含む、前記方法である。
【0033】
好ましい態様において、少なくともクマリン(IIa)およびアルコール類(III、IV)の1種は、嗅覚化合物である。さらに一層好ましいのは、スキーム2に示すように、ここで、II型化合物と呼ぶ、2種のクマリン(IIa、IIb)、即ちnが1であり、Rが式(i)で表される1価の残基である、式(I)で表される化合物を放出することができる、本発明の化合物である。従って、式(I)で表されるII型化合物を、4種までの異なる嗅覚化合物の活性化条件の下で、得ることができる。
【0034】
スキーム2:
【化5】

【0035】
第1の切断工程をもたらす活性化条件は、20%より高い、好ましくは30%より高い相対湿度の存在および、好ましくは加水分解酵素、例えばリパーゼ、エステラーゼ、プロテアーゼまたはチトクロームP450の存在を含む。
【0036】
第2の切断工程をもたらす活性化条件は、200nm〜800nmの波長範囲を有する光の存在を含むが、このスペクトルにおいて250nm〜400nmの波長を有する光での照射が、好ましい。式IIa/IIbで表されるクマリンおよびアルコールYOH/XOH、またはY/X=−CR=CR10について互変によるケトンもしくはアルデヒドの放出が、例えば通常の窓を透過する日光への露光により生じる。言うまでもなく、これらの化合物の放出が、天然の、または人工的な源の室内灯への露光によるよりも迅速に、かつ大きい程度に発生するのは、特に屋外での明るい日光への露光による。式IaまたはIbで表される化合物の切断はまた、適切な人工的な光源、例えば日焼け(sun-tanning)ランプにより開始され得る。
式(I)で表される化合物は、事実上無臭かつ水に不溶であり、即ち水溶性は、10ppmに等しいか、またはこれより小さい。
【0037】
式(I)で表される化合物を用いることにより、変色の問題が解決されることが、見出された。さらに、本発明の化合物を用いることにより、また極めて高い沈積速度(deposition rate)がもたらされる。特に良好な結果は、本発明のII型化合物を用いることにより、得られる。R=R11、R=R13かつR=R12である本発明のII型化合物が、好ましい。これらの分子は、織物上に、すすぎサイクルに加えられた量に基づいて100重量%まで沈積する。
本発明の化合物のほとんどは、文献中に決して記載されておらず、従って独立して新規である。
【0038】
従って、本発明は、他の観点において、式(I)
【化6】

式中、アクリル酸エステルの二重結合は、E立体配置にあり;
nは、0または1であり;
【0039】
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R、RおよびRは、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく、少なくとも6であり、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10脂肪族残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R、RおよびRは、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり、例えばYは、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルであり;あるいは
【0040】
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R、RおよびR10の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R、RおよびR10の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;
【0041】
およびRは、独立して水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル;C〜Cアルコキシ残基、例えばメトキシ、エトキシ;−NO;−NH;−NHCOCH;−N(C〜Cアルキル)、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ;−N(ヒドロキシアルキル)、例えばジ(ヒドロキシエチル)アミノ、ジ(ヒドロキシプロピル)アミノ;−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)、例えば−NHC(O)−メチルまたは−NHC(O)−フェニルであり;あるいは
およびRは、位置C(6,7)、C(7,8)またはC(8,9)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
2または3位にあるRは、水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、tert−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばビニル、プロペニル;C〜Cシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル;または−CNであり;かつ
【0042】
nが0である場合には、Rは、C〜C24、好ましくはC〜C18炭化水素残基、例えばエチルもしくはフェニル;またはN、OおよびSiから選択された1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含むC〜C24、好ましくはC〜C18炭化水素残基であり;あるいは
nが1である場合には、Rは、C〜C25、好ましくはC〜C18炭化水素残基;N、O、SiおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C25炭化水素残基;または式N(R20で表され、ここでR20は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するアルキル基の残基であるイオン性置換基、例えばトリメチルアンモニウムもしくはトリブチルアンモニウムにより置換された、C〜C25、好ましくはC〜C18炭化水素残基であり;あるいは
【0043】
Rは、式(i)
【化7】

式中、
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R14、R15およびR16は、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは少なくとも1つの残基R14、R15およびR16は、水素ではなく、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり、例えばXは、2−(2−ブトキシ−エトキシ)−エチルであり;あるいは
【0044】
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R17、R18およびR19の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18、好ましくはC〜C10炭化水素残基であり、このうち、好ましくは残基R17、R18およびR19の少なくとも1つは、水素ではなく、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく、好ましくはすべての炭素原子の合計は、6〜15であり;
【0045】
12およびR13は、独立して水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル;C〜Cアルコキシ残基、例えばメトキシ、エトキシ;−NO;−NH;−NHCOCH;−N(C〜Cアルキル)、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ;N(ヒドロキシアルキル)、例えばジ(ヒドロキシエチル)アミノ、ジ(ヒドロキシプロピル)アミノ;−NHC(O)−(C〜Cアルキル);または−NHC(O)−(C〜Cアリール)、例えば−NHC(O)−メチルまたは−NHC(O)−フェニルであり;あるいは
12およびR13は、位置C(vi,vii)、C(vii,viii)またはC(viii,ix)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
iiまたはiii位にあるR11は、水素;C〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、tert−ブチル;C〜Cアルケニル、例えばビニル、プロペニル;C〜Cシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル;または−CNである、
で表される1価の残基である、
で表される化合物に関する。
【0046】
式(Ia)で表される化合物に関して用いる「炭化水素残基」は、他に示さない限り、脂肪族残基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、および脂環式残基、例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルを表し、「O、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含む炭化水素残基」は、1個または2個以上の炭素原子が、O、Nおよび/またはC(O)により置換されている、脂肪族残基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、および脂環式残基、例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルケニルシクロアルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルを表す。
【0047】
式(I)で表される化合物を、有利には、対応するE−3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸エステルから調製し、これを次に、例えば以下の方法により調製することができる。
最初の工程において、対応するアルコールHO−C(R)を、このLi、NaまたはK塩、好ましくはこのNa塩に、当業者に知られている手順により変換し、次に式IIaまたはIIbで表される対応するクマリンを加え、混合物を、高温(20〜120℃、好ましくは50〜100℃)でクマリンが完全に変換されるまで反応させる。標準的な酸加水分解および精製操作(workup)により、対応するE−3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸エステルが、Ganguly, N.ら;Synthetic Communications 2001, 31(2), 301〜309頁に記載されている一般的手順により得られる。
【0048】
あるいはまた、サリチルアルデヒドを、対応するクロロまたはブロモ酢酸エステル類とリン酸トリアルキルエステルとの間のArbuzov反応により調製した、HO−C(R)で表されるジアルコキシホスホリル酢酸エステルと、当業者に知られているHorner反応の条件下で反応させる。
式IIaまたはIIbで表されるクマリンの調製は、当業者に十分知られており、例えばA.G. Osborneら、J. Chem. Research (S), 2003, 114 - 115に記載されている。
次に、上記した方法の1つにより調製した、得られたE−3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸エステルを、第2工程において、活性化された酸誘導体、例えば酸ハロゲン化物もしくは酸無水物、または対応するクロロギ酸塩で、有機合成の経験がある当業者に十分知られている標準的な条件の下で、アシル化する。
【0049】
式(I)で表される化合物を、前述の芳香性化合物の長時間にわたる、かつ規定された放出が所望されるすべての製品において、用いることができる。従って、これらの化合物は、機能的香水類において、適用中または適用後に(日)光に露光される製品において、特に有用である。
【0050】
式(I)で表される化合物は、機能的および上質香水類において、即ち上質の香料、工業的な、施設の、家庭の、およびパーソナルケア製品において、香料前駆体として作用し得る。式(I)で表される化合物を加えることができる、工業的な、施設の、および家庭の洗浄製品には、すべての種類の洗浄剤、窓クリーナー、塗装面クリーナー、万能クリーナーおよび家具光沢剤が含まれる。好ましくは、製品は、液体、例えば織物コンディショナー組成物である。式(I)で表される化合物を含む製品で処理した基材、例えば織物は、新鮮な、および/または清浄な臭気を、切断条件下で、慣用の製品で処理した場合よりもはるかに長期間にわたり、拡散させる。このような織物柔軟剤で洗浄した織物または布は、数週間にわたり暗所、例えば洋服ダンス中に貯蔵した後にさえも、クマリン類およびアルコール類、アルデヒド類またはケトン類を放出する。
【0051】
式(I)で表される化合物はまた、すべての種類のボディケア製品における適用に有用である。特に興味深い製品は、ヘアケア製品、例えばシャンプー、コンディショナーおよびヘアスプレー、並びにスキンケア製品、例えば化粧品製品および特に日焼け防止製品である。
【0052】
前述の例は、当然例示的であるに過ぎず、非限定的である。式(I)で表される化合物を加えることができる多くの他の製品には、石鹸、浴用およびシャワー用ジェル、消臭剤並びにさらに香水およびコロンが含まれる。
【0053】
式(I)で表される化合物を、単独で、または当業者に知られている他の香料成分、溶媒またはアジュバントと組み合わせて、用いることができる。このような成分は、例えば、"Perfume and Flavor Chemicals", S. Arctander編、Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 2003中に記載されており、天然または合成起源の香料化合物およびエッセンシャルオイルを含む。
【0054】
式(I)で表される化合物を、種々の前述の製品中に導入する量は、広範囲内で変化する。この量は、放出されるべきクマリン類およびアルコール類の性質、式(I)で表される化合物を加える製品の性質および所望される嗅覚効果に依存する。用いる量はまた、式(I)で表される化合物を芳香性共成分(co-ingredient)、溶媒またはアジュバントとの混合物で用いる場合の所定の組成物中の共成分に依存する。典型的な濃度は、製品の重量の0.01%〜5%の程度である。
【0055】
以下の非限定的な例は、本発明の態様をさらに例示する。
例1:3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステルの調製
NaH(鉱油中の60%分散体114g、2.85mol)をトルエン(500ml)に懸濁させた懸濁液に、室温で、シトロネロール(468g、3.0mol)をトルエン(800ml)に溶解した溶液を、50分にわたり、滴下漏斗を介して加える。温度を、85℃(浴)に、60分にわたり上昇させ、攪拌を、さらに45分間継続する。次に、クマリン(219g、1.5mol)をトルエン(800ml)に溶解した溶液を、75分にわたり加える。80℃(内側温度)でさらに90分間攪拌した後に、深いオレンジ色の懸濁液を、55℃に冷却し、2.5kgの破砕した氷および280mlの37%水性HCl溶液の混合物上に注入する。反応フラスコを、500mlのトルエンで2回洗浄する。10分間攪拌することにより、有機層の色は、淡い黄色に薄くなる。有機層を、水で2回、次にブライン/水1:1で洗浄し、MgSO上で乾燥する。ロータリーエバポレータ中で濃縮した後に、過剰のシトロネロールを、短経路装置(110〜125℃/0.03mbar、ヘッド82℃)を用いて蒸留して除去して、240gのシトロネロールおよび463gの茶色がかった残留物が得られる。後者を、18mlのアセトンを含む600mlのヘキサンに溶解し、−25℃で結晶化する。濾過および乾燥後に、320g(71%)の生成物が、白色結晶として得られる。融点37〜39℃。
【0056】
【化8】

【0057】
例2:3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステルの調製
NaH(鉱油中の60%分散体271g、6.81mol)をトルエン(1200ml)に懸濁させた懸濁液に、室温で、9−デセン−1−オール(1060g、6.81mol)をトルエン(1500ml)に溶解した溶液を、75分にわたり、滴下漏斗を介して加える。10分間攪拌した後に、クマリン(495g、3.39mol)をトルエン(1800ml)に溶解した溶液を、75分にわたり加える。温度を、85℃(浴)に、45分にわたり上昇させる。80℃(内側温度)でさらに90分間攪拌した後に、深いオレンジ色の懸濁液を、50℃に冷却し、4lの10%水性HSO溶液および2lのMTBEの混合物上に注入する。有機層を、飽和水性NaHCO溶液、続いて水およびブラインで洗浄する。i.RVで濃縮した後に、過剰の9−デセン−1−オールを、薄膜蒸発(130℃、0.05mbar)により除去して、1064gの残留物が得られ、これを、5℃でヘキサンから結晶化する。これから、775g(75%)の生成物が、淡い黄色の結晶として得られる。融点58℃。
【0058】
【化9】

【0059】
例3:3−{2−[2−(2−デク−9−エニルオキシカルボニル−ビニル)フェノキシカルボニルオキシ]フェニル}アクリル酸デク−9−エニルエステル
NaH(鉱油中の60%分散体14.9g、0.31mol;1.1当量、油を、アルゴン雰囲気下でヘキサンで洗浄除去した)をトルエン(93ml)に懸濁させた懸濁液に、室温で、9−デセン−1−オール(53.2g、0.341mol、1.1当量)をトルエン(93ml)に溶解した溶液を加える。次に、クマリン(45.3g、0.31mol、1.0当量)をトルエン(93ml)に溶解した溶液を、30分以内に、滴下漏斗を介して加える。油浴の温度を、ゆっくりと85℃に30分以内に上昇させ、これにより水素の定常的な発生が観察される。以下の85℃での3時間の攪拌の間に、ゼラチン状のオレンジ色の混合物が生成し、次にこれを、室温に冷却する。ホスゲンをトルエンに溶解した溶液(20%、100ml、0.18mol、0.6当量)を、45分にわたり加える。添加の間に、ゲルは、再び液体となり、反応を、氷浴で冷却する。混合物を、16時間室温で放置して攪拌し、次に過剰のホスゲンを、アルゴンをパージすることにより除去する。混合物を、200mlの2N水性HClおよび200gの氷上に注入する。相を分離し、有機層を、各々水および水/ブライン1:1で3回洗浄する。MgSO上で乾燥した後に、揮発性物質を、i.RVで除去し、残留物を、0.05mbar/50℃で30分間乾燥する。これから、107.1gの生成物が、淡い黄色の油状物として得られ、これは、数種の混合炭酸塩類に加えて、83%の表題化合物を含む(=90%の収率)。試料をさらに、ヘキサン/MTBE4:1で溶離させて、SiO上でのカラムフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、分析的に純粋な生成物を、無色油状物として単離する。
【0060】
【化10】

【0061】
例4:3−(2−デク−9−エニルオキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル
a)3−(2−クロロカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル
3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル(例2において調製した、47.1g、156mmol)をトルエン(550ml)に溶解した溶液を、氷浴で冷却し、次にホスゲンを、滴下漏斗を介して(20%溶液100ml、188mmol、1.2当量)、続いてN,N−ジエチルアニリン(27.5ml、169mmol)を導入する。得られた混濁液を、室温で16時間攪拌し、その後過剰のホスゲンを、アルゴンでの大規模なパージングにより除去する。白色懸濁液を、2Nの水性HCl溶液と氷との混合物上に注入し、相を分離し、水性層を、さらにトルエンで抽出する。有機層を、2Nの水性HCl溶液で、次にブラインで3回洗浄し、混ぜ合わせる。MgSO上で乾燥した後に、溶媒を除去し、残留物を、0.05mbar/50℃で20分間乾燥する。これから、57.2g(100%)の生成物が、淡い黄色の油状物として得られ、これをさらには精製しなかった。
【0062】
【化11】

【0063】
b)3−(2−デク−9−エニルオキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル
トルエン(10ml)中の上記で調製したクロロギ酸塩(3.65g、10mmol)を、9−デセン−1−オール(1.56g、10mmol)およびピリジン(2.0ml、25mmol)をトルエン(20ml)に溶解した溶液に、外部から氷冷しながら滴加する。得られた白色懸濁液を、室温に加温し、4時間攪拌し、次に2Nの水性HCl溶液(20ml)を加え、攪拌を、5分間継続した。次に、混合物を、分液漏斗中に移送し、相を分離し、水性層を、さらにMTBEで抽出する。有機層を、ブライン/HO 1:1で洗浄し、MgSO上で乾燥する。溶媒の除去および0.05mbar(室温において)での乾燥により、粗製物が得られ、これを、MTBE/ヘキサン4:1で溶離させて、SiO上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。これから、3.89g(80%)の生成物が、無色粘性油状物として得られる。
【0064】
【化12】

【0065】
例5:3−[2−(3,7−ジメチル−オクト−6−エニルオキシカルボニルオキシ)フェニル]アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステル
3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステル(6.04g、20mmol、例1において調製した)およびピリジン(4.0ml、50mmol)をトルエン(40ml)に溶解した溶液を、氷浴で冷却し、クロロギ酸シトロネリル(5.06g、22mmol)をトルエン(20ml)に溶解した溶液を、滴下漏斗を介して20分にわたり滴加する。得られた懸濁液を、室温で3日間攪拌し、次に2〜3℃で2Nの水性HCl溶液を加えることにより反応停止する。抽出、相の分離、有機層のブラインでの洗浄およびMgSO上での乾燥、続いて溶媒の除去および残留物の高度の真空下での乾燥により、9.7g(100%)の分析的に純粋な生成物が、淡い黄色の油状物として得られた。
【0066】
【化13】

【0067】
例6:3−(2−ヘクス−3−エニルオキシカルボニルオキシ−フェニル)アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステル
3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステル(6.04g、20mmol)、ピリジン(4.0ml、50mmol)およびクロロギ酸シス−3−ヘキセニル(3.58g、22mmol)を用いて例5の手順を繰り返すことにより、8.60g(100%)の分析的に純粋な生成物が、淡い黄色の油状物として得られる。
【0068】
【化14】

【0069】
例7:3−(2−アセトキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル
トルエン(40ml)中の3−(2−ヒドロキシ−フェニル)アクリル酸デク−9−エニルエステル(6.07g、20mmol、例2において調製した)を、NaH(鉱油中の60%分散体840mg、20mmol、1当量)をトルエン(60ml)に懸濁させた懸濁液に加える。黄色の懸濁液を、30分間RTで攪拌し、次に塩化アセチル(1.96g、25mmol、1.25当量)を加える。得られた無色の溶液を、さらに60分間RTで攪拌し、次にHO(100ml)上に注入する。有機層を分離し、水性層を、MTBEで抽出する。有機層を、1N水性NaHCO溶液、次に水およびブラインで洗浄する。MgSO上で乾燥した後に、溶媒を除去して、6.85g(99%)の生成物が、無色油状物として得られる。
【0070】
【化15】

【0071】
例8:3−(2−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸フェネチルエステル
この化合物を、例2に記載した手順に従って、水素化ナトリウムの存在下でのクマリンのフェニルエタノールとの反応により、調製する。表題化合物が、白色固体として単離される。融点40℃。
【0072】
【化16】

【0073】
例9:3−(2−フェネチルオキシカルボニルオキシ−フェニル)−アクリル酸フェネチルエステル
3−(2−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸フェネチルエステル(1.61g、6.0mmol)をトルエン(15ml)に溶解した溶液を、室温で、トルエン(10ml)中のクロロギ酸フェネチルエステル(1.22g、6.6mmol、1.1当量)およびピリジン(0.97ml、12.0mmol、2.0当量)から形成された懸濁液に滴加する。混合物を、さらに室温で16時間攪拌し、次に例5に記載した一般的手順に従って精製操作し、ヘキサン/MTBE4:1で溶離させて、SiO上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。表題化合物(1.61g、64%収率)が、無色の粘性油状物として得られる。
【0074】
【化17】

【0075】
例10:3−[2−(3−メチル−5−フェニル−ペンチルオキシカルボニルオキシ)−フェニル]−アクリル酸フェネチルエステル
例9に記載した一般的手順に従って、表題化合物を、3−(2−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸フェネチルエステル(1.61g、6.0mmol)、クロロギ酸3−メチル−5−フェニル−ペンチルエステル(1.59g、6.6mmol、1.1当量)およびピリジン(0.97ml、12.0mmol、2.0当量)を用いて調製する。3−[2−(3−メチル−5−フェニル−ペンチルオキシカルボニルオキシ)−フェニル]−アクリル酸フェネチルエステル(1.65g、58%収率)が、無色の粘性油状物として得られる。
【0076】
【化18】

【0077】
例11〜15
表1中に列挙した他の化合物を、明細書中に記載した一般的手順により調製した。
【0078】
【表1】

【0079】
例16:3−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−アクリル酸3,7−ジメチル−オクト−6−エニルエステル
この化合物を、例2に記載した手順に従って、水素化ナトリウムの存在下での7−メトキシクマリンのシトロネロールとの反応により、調製する。表題化合物を、粘性の無色油状物として単離する。
【化19】

【0080】
例17:3−(2−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)−アクリル酸2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−シクロペント−3−エニル)−ブト−2−エニルエステル
この化合物を、例2に記載した手順に従って、水素化ナトリウムの存在下での6−メチルクマリンの2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−シクロペント−3−エニル)−ブト−2−エン−1−オールとの反応により、調製する。化合物を、粘性のわずかに黄色の油状物として単離する。
【化20】

【0081】
例18:3−(2−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)−アクリル酸3−メチル−5−フェニル−ペンチルエステル
この化合物を、例2に記載した手順に従って、水素化ナトリウムの存在下での7−メトキシクマリンのシトロネロールとの反応により、調製する。化合物を、白色固体として単離する。融点70〜73℃。
【化21】

【0082】
例19:
例16、17および18の化合物を、本発明のさらなる化合物A、BおよびCの調製のための中間体として用いることができる。これらの調製を、例9の一般的手順に従って、対応するクロロギ酸塩類を用いて行うことができる。
【0083】
【化22】

【0084】
例20:UVスペクトル比較(織物コンディショナーの存在下での保護されている/保護されていない香料)
溶液A〜D、各々5mlを、溶媒としてCHCN/HO(3:2)を用いて調製し、これらの色を、視覚的に判定した。
【表2】

【0085】
織物コンディショナーを、保護されていない香料前駆体を含む溶液(溶液A/B)に加えた後、溶液は、明るい黄色に変化し、一方保護されている香料前駆体を含む溶液(溶液C/D)は、無色のままである。
溶液A〜DのUVスペクトルを記録し、図1に示す。これらは、織物コンディショナーを加えることにより、326nm(UV)における最も高いλmaxが、394nm(可視光)に移動し、一方保護されている香料前駆体の最も高いλmaxは、織物コンディショナーを加えることにより、270nmにおいて不変のままであることを示す。
【0086】
例21:織物コンディショナーにおける適用
式(I)で表される化合物の綿(白色タオル)上での典型的な洗浄/すすぎサイクルにおける沈積および切断を、以下に記載するように決定する。式(I)で表される化合物を含む試料のすべての取扱を、可能な限り小さい光への露光を用いて行う。
【0087】
12.7% wt/wtの活性カチオン性界面活性剤および0.5% wt/wtの式(I)で表される化合物を含む、水性織物コンディショナーエマルジョンを、調製する。遊離のo−クマリン酸塩類を含む試料は、黄色に変化する一方、保護されたo−クマリン酸塩類を含む試料は、白色のままであった。標準的な洗濯機における洗浄/すすぎサイクル(40℃プログラム)を、25枚のコットンテリータオルからなる1kgの洗濯負荷を用いて、以下のもの:
1)洗浄サイクルのための、プロテアーゼ、セルラーゼおよびリパーゼを含む標準的な濃縮された非芳香性の洗浄粉末62g
2)すすぎサイクルのための、前述のようにして調製した織物コンディショナー16g(表2に示す、式(I)で表される化合物80mg、例6、5、3、4もしくは14の化合物、または表2に示す、比較としての、式(A)で表される化合物、即ち例1もしくは2の化合物を含む)
を加えて行う。
【0088】
タオルを、洗濯機から取り出し、暗中で24時間、室温および40%相対湿度において乾燥する。3枚のタオル(各々合計の洗濯負荷の4%を表す)を取り出し、個別に0.5lの塩化メチレンを含むソックスレー装置中に配置し、5時間抽出する。溶媒を、ロータリーエバポレータ中で注意深く除去し、残留物を、10mlのアセトニトリル溶液に標準化する。これらの溶液を、HO/アセトニトリル勾配および258nmにおけるUV検出を用いて、RP−HPLCにより分析する。試料あたりの「保護されている」および「保護されていない」香料前駆体の濃度を、外部較正により決定し、平均値を、3枚のタオルから計算する。これから、平均の沈積率を、2種の前駆体タイプについての織物コンディショナーにより適用される保護された前駆体のモル量と比較しての理論値の%において計算する。結果を、表2に列挙する。
【0089】
リパーゼによる最良の切断速度が、短鎖第一級アルコール類から誘導された炭酸エステル類(例6の化合物)および(例14の化合物)について、観察される。最良の組み合わされた沈積/切断結果は、対称的な炭酸エステル(例3の化合物)から得られる。この化合物を用いた遊離の前駆体の最終的な沈積は、対応する「保護されていない」3−(2−ヒドロキシ−フェニル)−アクリル酸エステル(例2の化合物)の使用によるよりも、高い。
【0090】
本明細書中で用いる「保護されていない香料前駆体」は、水酸基を含む化合物、即ち従来技術の化合物(A)を意味し、「保護されている香料前駆体」は、本発明の式(I)で表される化合物を意味する。
【0091】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】溶液AのUVスペクトルを示す図である。
【図1B】溶液BのUVスペクトルを示す図である。
【図1C】溶液CのUVスペクトルを示す図である。
【図1D】溶液DのUVスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、アクリル酸エステルの二重結合は、E立体配置にあり;
nは、0または1であり;
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく;あるいは
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく;
およびRは、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ残基、−NH、−NO、−NHCOCH、−N(C〜Cアルキル)、−N(ヒドロキシアルキル)、−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)であり;あるいは
およびRは、位置C(6,7)、C(7,8)またはC(8,9)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
2または3位にあるRは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキルまたは−CNであり;かつ
a)nが0である場合には、Rは、C〜C24炭化水素残基、またはN、OおよびSiから選択された1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含むC〜C24炭化水素残基であり;あるいは
b)nが1である場合には、Rは、C〜C25炭化水素残基、N、O、SiおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C25炭化水素残基、または式N(R20で表され、ここでR20は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基の残基であるイオン性置換基により置換された、C〜C25炭化水素残基であり;あるいは
Rは、式(i)
【化2】

式中、
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく;
12およびR13は、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ残基、−NO、−NH、−NHCOCH、−N(C〜Cアルキル)、−N(ヒドロキシアルキル)、−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)であり;あるいは
12およびR13は、位置C(vi,vii)、C(vii,viii)またはC(viii,ix)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
iiまたはiii位にあるR11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキルまたは−CNである、
で表される1価の残基である、
で表される化合物の、嗅覚化合物のための前駆体としての使用。
【請求項2】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物を含む、消費者製品。
【請求項3】
活性化により嗅覚化合物を提供する組成物の製造方法であって、組成物中に、請求項1に記載の式(I)で表される化合物を導入することを含む、前記方法。
【請求項4】
嗅覚化合物を基材に付与する方法であって:
a)請求項1に記載の式(I)で表される化合物を、加水分解により切断し、式(Ia)で表される化合物を得る工程;続いて
b)工程aの式(Ia)で表される化合物を、活性化条件の下で、光の存在下で切断し、クマリン(IIa)を得る工程
を含む、前記方法。
【請求項5】
式(I)
【化3】

式中、アクリル酸エステルの二重結合は、E立体配置にあり;
nは、0または1であり;
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく、少なくとも6であり;あるいは
Yは、−CRであり、ここで、R、RおよびRは、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18脂肪族残基であり、すべての炭素原子の合計(R+R+R)は、18よりも大きくなく;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく;あるいは
Yは、−CR=CR10であり、ここで、R、RおよびR10は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R+R+R10)は、18よりも大きくなく;
およびRは、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ残基、−NH、−NO、−NHCOCH、−N(C〜Cアルキル)、−N(ヒドロキシアルキル)、−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)であり;あるいは
およびRは、位置C(6,7)、C(7,8)またはC(8,9)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
2または3位にあるRは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキルまたは−CNであり;かつ
a)nが0である場合には、Rは、C〜C24炭化水素残基、またはN、OおよびSiから選択された1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含むC〜C24炭化水素残基であり;あるいは
b)nが1である場合には、Rは、C〜C25炭化水素残基、N、O、SiおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C25炭化水素残基、または式N(R20で表され、ここでR20は、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基の残基であるイオン性置換基により置換された、C〜C25炭化水素残基であり;あるいは
Rは、式(i)
【化4】

式中、
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR141516であり、ここで、R14、R15およびR16は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、すべての炭素原子の合計(R14+R15+R16)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく;あるいは
Xは、−CR17=CR1819であり、ここで、R17、R18およびR19は、独立して、水素またはO、NおよびC(O)から選択された1個もしくは2個以上の原子/基を含むC〜C18炭化水素残基であり、エノール二重結合の配置は、EまたはZであり、すべての炭素原子の合計(R17+R18+R19)は、18よりも大きくなく;
12およびR13は、独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ残基、−NO、−NH、−NHCOCH、−N(C〜Cアルキル)、−N(ヒドロキシアルキル)、−NHC(O)−(C〜Cアルキル)または−NHC(O)−(C〜Cアリール)であり;あるいは
12およびR13は、位置C(vi,vii)、C(vii,viii)またはC(viii,ix)において結合しており、これらが結合する炭素原子と共に、ジオキソラン環またはジオキサン環を形成し;
iiまたはiii位にあるR11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cシクロアルキルまたは−CNである、
で表される1価の残基である、
で表される化合物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【公表番号】特表2007−522154(P2007−522154A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552445(P2006−552445)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000074
【国際公開番号】WO2005/077881
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】